「チャレンジャー海淵」の版間の差分
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[[ファイル:Mariana trench location.jpg|right|300px|thumb|チャレンジャー海淵の位置]] |
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[[ファイル:Cross section of mariana trench He.jpg|right|250px|thumb|[[太平洋プレート]](右側)が[[フィリピン海プレート]](左側)の下にもぐり込む様子]] |
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'''チャレンジャー海淵'''(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)は、北西[[太平洋]]の[[マリアナ諸島]]の東、{{Coord|11|22.4|N|142|35.5|E}}に位置する、水深1万メートルを超える[[マリアナ海溝]]の最深部である。[[地球]]にある[[海洋]]の[[海底]]最深部でもある。 |
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[[File:Научно-исследовательское судно Витязь в музее мирового океана в Калининграде (2011).jpg|thumb|ロシアの調査船''ヴィチャージ'']] |
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'''チャレンジャー海淵'''(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)は、北西[[太平洋]]の[[マリアナ諸島]]の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する、[[マリアナ海溝]]の最深部である。[[地球]]にある[[海洋]]の[[海底]]最深部でもある。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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チャレンジャー海淵 は、かなり大きな三日月形の海溝の底にある比較的小さな溝状の窪みで、長さ約11km、幅1.6kmの底部は、穏やかな傾斜面となっている<ref>All Things Considered (9 March 2012). [https://www.npr.org/2012/03/09/148317355/film-director-to-travel-to-bottom-of-mariana-trench "Diving Back to the Bottom of the Mariana Trench"]. NPR. Retrieved 26 March 2012.</ref>。チャレンジャー海淵 に最も近い陸地は、南西287kmにある[[ファイス島]]([[ヤップ州]]の離島の1つ)で、北東304kmに[[グアム島]]がある。グアム付随の海域境から1.6km(1マイル)離れた、[[ミクロネシア連邦]]の海域に属している<ref>[[コルベア・リポート]], airdate: 2012 April 12, interview with James Cameron.</ref> 。 |
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チャレンジャー海淵の深さについてはいくつかの計測結果があるが、最新の計測では水面下10,911mとされ、[[地球]]上で最も深い海底凹地([[海淵]])である。これは仮に[[海面]]を基準にして世界[[最高峰]][[エベレスト]]をひっくり返しても、その[[頂上|山頂]]が海底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。 |
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海淵の名前は、[[イギリス海軍|イギリス王立海軍]]の調査船[[チャレンジャー (コルベット)|HMSチャレンジャー号]]([[チャレンジャー号探検航海|1872年-1876年の探検航海]]で最初にその深さの測量を行った)にちなんで名づけられた。 |
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== 調査の歴史と生物 == |
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マリアナ海溝の測深は、イギリスの[[チャレンジャー号探検航海]] (1872 – 1876) の海洋調査によって初めて行われた。[[1875年]]、この時の[[測鉛線]]による測深記録は、8,184mであった。当時の最深を記録したこの地点は、現在のチャレンジャー海淵であった<ref name="ChallengerReport">{{Cite book | url = http://www.19thcenturyscience.org/HMSC/HMSC-Reports/1895-Summary/htm/doc877.html | title = Report on the scientific results of the voyage of H.M.S. Challenger during the years 1872-76 | }}</ref>。[[1899年]]、調査船 [[:en:USS Nero (AC-17)|USS Nero]] は、9,636mを記録した<ref name="Theberge">{{Cite journal|url=http://www.hydro-international.com/issues/articles/id1049-Thirty_Years_of_Discovering_the_Mariana_Trench.html|title=Thirty Years of Discovering the Mariana Trench|last=Theberge|first=A.|date=2008-10-15|journal=Hydro International|volume=12|issue=8|pages=}}</ref>。 |
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チャレンジャー海淵の深さについてはいくつかの計測結果がある(後述)が、[[大洋水深総図]](GEBCO)2011年8月版によると、チャレンジャー海淵の位置および深さは{{Coord|11|22.4|N|142|35.5|E}} 、水深10920 m±10 mとされていて<ref name="GEBCO">{{Cite news|url=http://www.gebco.net/data_and_products/undersea_feature_names/#feature_links4|title=IHO-IOC GEBCO Gazetteer of Undersea Feature Names, August 2011 version|date=August 2011|publisher=GEBCO|accessdate=20 March 2012}}</ref>、地球上で最も深い海底凹地([[海淵]])である。これは仮に[[海面]]を基準にして世界[[最高峰]][[エベレスト]]をひっくり返しても、その山頂が海底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。 |
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[[日本]]によるマリアナ海溝の調査は、[[20世紀]]に入って行われた。[[1925年]]、[[日本]]の[[測量]]艦「[[満州 (通報艦)|満州]]」が[[重り]]のついた[[ケーブル]]をおろして測定する方法(鋼索測深)でマリアナ海溝の水深を測定したところ、9,814mを記録。この海域が世界で最も深い部分であることを世界に知らしめた。 |
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この深度の高水圧では、探査船の設計および運用が困難であり、わずか4回の潜航が達成されたのみである。最初の潜航は、1960年に[[バチスカーフ]]の[[トリエステ (潜水艇)|トリエステ号]]によって行われた。その後は1995年に無人型[[ROV]]の[[かいこう]]が、2009年に[[ネーレウス (無人潜水機)|ネーレウス]]が続いた。2012年3月には、映画監督[[ジェームズ・キャメロン]]による[[深海探査艇]]の[[ディープシーチャレンジャー]]での有人単独潜航が行われた<ref name="NGS-20120325">{{cite web |last=Than|first=Ker |title=James Cameron Completes Record-Breaking Mariana Trench Dive|url=http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120325-james-cameron-mariana-trench-challenger-deepest-returns-science-sub/|date=25 March 2012 |publisher=[[National Geographic Society]]|accessdate=25 March 2012 }}</ref><ref name="NYT-20120325">{{cite news |last=Broad|first=William J. |title=Filmmaker in Submarine Voyages to Bottom of Sea|url=https://www.nytimes.com/2012/03/26/science/james-camerons-submarine-trip-to-challenger-deep.html|date=25 March 2012 |work=New York Times |accessdate=25 March 2012 }}</ref><ref name="MSNBC-20120325">{{cite web |author=AP Staff |title=James Cameron has reached deepest spot on Earth |url=http://www.msnbc.msn.com/id/46850002/ns/technology_and_science-science |date=25 March 2012 |publisher=[[MSNBC]] |accessdate=25 March 2012 }}</ref>。 |
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その後、マリアナ海溝の本格的な深度調査を行ったのは[[イギリス海軍]]の測量艦「{{仮リンク|チャレンジャー (測量艦)|en|HMS Challenger (1931)|label=チャレンジャー8世号}}」である。[[1951年]]に「チャレンジャー」が測定に成功した最深部分は、その艦名にちなんで「チャレンジャー海淵」と呼ばれることになった。この時、「チャレンジャー」は反響した[[音波]]を測定する方法(音響測深)で北緯11度19分、東経142度15分において10,900mを計測した。しかし、この方法は手動計測であったため誤差があり、現在ではより厳密な10,863mという値に修正されている。 |
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==水深測量の歴史== |
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[[1957年]]、[[ロシア海軍|ソ連海軍]]艦艇「{{仮リンク|ヴィチャージ|ru|Витязь (судно, 1949—1979)}}」(Vityaz)が深度11,034mの計測に成功したと発表し、「ヴィチャージ(ビチアス)海淵」と名づけた。この記録は長らくマリアナ海溝の深度の公式記録とされていたが、その後、何度調査を行ってもこれほどの深度は測定されなかった。現在ではこの記録の正確性に疑問が持たれており、公式記録としては認められていない。 |
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長年にわたり、多くの様々な船が最深度地点の調査に携わっている<ref name="Bathy">{{cite web |last=Nakanishi|first=Masao |title=A precise bathymetric map of the world’s deepest seafloor, Challenger Deep in the Mariana Trench |url=http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/25460/1/MGR_Hashimoto.pdf |date=10 April 2011 |publisher=Faculty of Fisheries, Nagasaki University |accessdate=30 March 2012 }}</ref>。 |
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*最初の測量調査はイギリスの[[チャレンジャー号探検航海]] (1872 – 1876) の海洋調査によって初めて行われた。1875年1875年3月23日、[[測鉛線]]による測深記録は8184mであった<ref>{{cite web|url=http://www.19thcenturyscience.org/HMSC/HMSC-Reports/1895-Summary/htm/doc877.html |title=Report on the scientific results of the voyage of H.M.S. Challenger during the years of 1872-76 (page 877) |publisher=19thcenturyscience.org |accessdate=26 March 2012}}</ref> 。測量地点は{{Coord|11|24|N|143|16|E}}、測量を2度行っている。 |
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[[1962年]]には調査船「スペンサー・ベアード号」が10,915mの測定に成功している。しかしマリアナ海溝の最深部については米ソの測定値をめぐって議論が続いたため、[[1984年]]に日本の測量船「[[拓洋 (測量船・2代)|拓洋]]」が最新式のナローマルチビーム測深機を用いて測定を行い、10,924m(厳密には10,920m±10m)という値を得た。現在のところ、多くの深度測定値の中で確実に裏づけがとられたものは[[1995年]]5月に日本の[[遠隔操作無人探査機|無人探査機]]「[[かいこう]]」が記録した10,911mが最大(最深)であり、それ以上の値はまだ確実とは言いがたい。2008年6月3日に「''かいこう''」の後継機として製造された[[ABISMO]]がチャレンジャー海淵で最大潜航深度10,258mに到達した<ref>https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20080616/ プレスリリース</ref>。2009年5月アメリカの[[ウッズホール海洋研究所]]の無人探査機「[[ネーレウス (無人潜水機)|ネーレウス]]」が10,902mに到達した。 |
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*1912年の[[ジョン・マレー]]の著書『海洋の深さ(The Depths of the Ocean)』では、チャレンジャー海淵 の深さを9636 mと記しており、1899年に海軍の石炭船[[:en:USS Nero|USS Nero]]により更新されたと報告されている<ref name="Theberge">{{cite web|url=http://www.hydro-international.com/issues/articles/id1049-Thirty_Years_of_Discovering_the_Mariana_Trench.html|title=Thirty Years of Discovering the Mariana Trench|last=Theberge|first=A.|date=24 March 2009|work=Hydro International|accessdate=31 July 2010}}</ref> 。 |
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*[[日本]]によるマリアナ海溝の調査は、[[20世紀]]に入って行われた。1925年、日本の測量艦「[[満州 (通報艦)|満州]]」が重りのついた[[ケーブル]]をおろして測定する方法(鋼索測深)でマリアナ海溝の水深を測定したところ、9814mを記録。この海域が世界で最も深い部分であることを世界に知らしめた。 |
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*1951年にマリアナ海溝の本格的な深度調査を行ったのは[[イギリス海軍]]の測量艦「{{仮リンク|チャレンジャー (測量艦)|en|HMS Challenger (1931)|label=チャレンジャー8世号}}」である。この時、「チャレンジャー」は反響した[[音波]]を測定する方法(音響測深)で、{{Coord|11|19|N|142|15|E}}において水深10900mを計測した。音響測深は以前(75年前)の探検で使用された測鉛線よりも正確で簡単な深度測定方法である。 |
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[[File:Научно-исследовательское судно Витязь в музее мирового океана в Калининграде (2011).jpg|thumb|ロシアの調査船''ヴィチャージ'']] |
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*チャレンジャー海淵の最大水深は、1957年にソ連海軍艦艇「ヴィチャージ(ロシア語版)」(Vityaz)が計測した水深11034m±50mで、場所は{{Coord|11|20.9|N|142|11.5|E}}地点と報告された<ref name="Bathy"/>。この値は、[[ブリタニカ百科事典]]<ref> [https://www.britannica.com/place/Mariana-Trench "Mariana Trench|Facts,Maps,&Pictures"],Encyclop?dia Britannica.</ref> と[[ナショナルジオグラフィック]]<ref name="ngnews">[http://news.nationalgeographic.com/news/2005/02/0203_050203_deepest.html "Life Is Found Thriving at Ocean's Deepest Point"], National Geographic News, 3 February 2005</ref> の記事や地図を含む、多くの文献に掲載されている。この水深の圧力は大気圧の約1099倍、111MPaである<ref name="Akimoto">{{Cite journal| author=Akimoto | title=The deepest living foraminifera, Challenger Deep, Mariana Trench | journal=Marine Micropaleontology | volume=42 | year=2001 | page=95 | doi=10.1016/S0377-8398(01)00012-3|display-authors=etal| bibcode=2001MarMP..42...95A }}</ref>。ただし、後年の調査でこれほどの水深は一度も測定されず、2014年時点で公式記録としては認められていない(後述)。 |
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*1959年、米海軍の調査船''Stranger''が爆音を使用する調査で、最大深度10915m±10mを計測、その場所は{{Coord|11|20.0|N|142|11.8|E}}だった<ref name="GEBCO"/><ref name="Bathy"/>。 |
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*1962年、米海軍の調査船'' Spencer F. Baird''が、周波数操作深度記録計を使った調査で、同じ {{Coord|11|20.0|N|142|11.8|E}}地点で最大深度10915m±10mを計測した<ref name="Bathy"/>。 |
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*1975年と1980年に、米国海軍の調査船'' Thomas Washington''が、衛星測位による精密深度記録計を使って調査したところ、 またも{{Coord|11|20.0|N|142|11.8|E}}地点で最大深度10915m±10mを計測した<ref name="Bathy"/>。 |
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*1984年、日本の[[海洋調査船]][[拓洋 (測量船・2代)|拓洋]]が、ナローマルチビーム音響測深機([[:en:Multibeam echosounder|MBES]])を使用して得た数値は、{{Coord|11|22.4|N|142|35.5|E}}地点で水深10924m±10mだった<ref name="GEBCO"/><ref name="Bathy"/><ref name="deepest">{{cite web|url=http://www.noc.soton.ac.uk/OTHERS/CSMS/OCHAL/deep.htm|title=The deepest depths|last=Ritchie|first=Steve|accessdate=4 July 2007 |archiveurl = https://web.archive.org/web/20071027092319/http://www.noc.soton.ac.uk/OTHERS/CSMS/OCHAL/deep.htm <!-- Bot retrieved archive --> |archivedate = 27 October 2007}}</ref>。 |
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[[File:JAMSTEC Deep Sea Research Ship Kairei.jpg|right|thumb|日本の深海探査研究船「かいれい」]] |
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*1998年、[[海洋研究開発機構]](JAMSTEC)の深海探査研究船[[かいれい]]がシービーム2112型マルチビーム音響測深機(MBES)を使用して、チャレンジャー海淵の地域的測度調査を実施した。1998年に得られたデータから作成された地域水深図は、 東側・中央・西側の窪みの最大深度が10922m±74 m・10898m±62m・10908m±36mで、東側の窪みが最も深かった<ref name="Bathy"/>。 |
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*1999年と2002年に、かいれいはチャレンジャー海淵を再訪した。1999年に実施されたかいれいのクロストラック調査{{Refnest|group="注釈"|観測を行う衛星の進行方向とは垂直になる方向のことをクロストラックと呼ぶ<ref>[http://www.gosat.nies.go.jp/jp/glossary/page1.htm 用語略語集 - Gosatプロジェクト -] 国立環境研究所</ref>。}}では、東側・中央・西側の最大深度が10920 m±10 m・10894m±14m・10907m±13mで、1998年調査の結果を支持するものとなった。2002年の詳細な[[グリッド]]調査では最も深い場所が東側窪みの東部{{Coord|11|22.260|N|142|35.589|E}}にあり、水深10920 m±5 mと示された。これは1984年に拓洋が示した最深場所の南東約290m、1998年のかいれいが示した最深場所の東約240mだった<ref name="Bathy"/>。 |
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*2009年6月1日に、[[キロ・モアナ (T-AGOR-26)|キロ・モアナ]] ([[ネーレウス (無人潜水機)|ネーレウス]]の母艦)に搭載した深海マッピング(300-11000m)用のKongsberg Simrad製EM120ソナーマルチビーム測深システム(SMBS)による調査で、チャレンジャー海淵のソナーマップは水深10971m を示した。同ソナーシステムは[[位相]]と[[振幅]]のボトム検出を使用しており、水深で0.2%-0.5%の精度が検知面全体で可能である<ref name="Bathy"/><ref name="KILO ">[http://www.soest.hawaii.edu/UMC/cms/ship-daily-reports/ "Daily Reports for R/V KILO MOANA June and July 2009"]. University of Hawaii Marine Center. 4 June 2009. Retrieved 4 June 2009. </ref><ref>{{cite web|url=http://www.kongsberg-simrad.de/pdf/faecherlot_em120_eng_broch.pdf|title=kongsberg-simrad.de|author=|accessdate=2018.10.11|website=www.kongsberg-simrad.de}}</ref> 。2014年でも、このソナーマッピングによる地形データは非公開のため、そのデータを他の音響測深との比較には使用できない<ref name="SoHow">[http://ccom.unh.edu/sites/default/files/publications/Gardner-et-al-2014-Challenger-Deep.pdf "So, How Deep Is the Mariana Trench?"] (PDF). Center for Coastal & Ocean Mapping-Joint Hydrographic Center (CCOM/JHC), Chase Ocean Engineering Laboratory of the University of New Hampshire. 5 March 2014. Retrieved 20 May 2014.</ref>。 |
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*2010年10月7日、またもチャレンジャー海淵地域のソナーマッピングが、[[サムナー (海洋観測艦)|海洋観測艦サムナー]] に搭載のもので、米国{{仮リンク|沿岸・海洋地図センター|en|Center for Coastal & Ocean Mapping}}/共同水路測量センター(CCOM/JHC)によって実施された。この結果は2011年12月、[[アメリカ地球物理学連合]] の秋季会議で報告された。50 cmの精度で緯度経度を決定できる {{仮リンク|コングスベルグ・マリティム|en|Kongsberg Maritime}}製EM122マルチビーム音響測深システムを使用することで、CCOM/JHCチームはチャレンジャー海淵の最大水深を10994m±40m([[標準偏差]] 95.4%)、その位置を{{Coord|11.326344|N|142.187248|E|scale:100000}}と測定した<ref>Amos, Jonathan (7 December 2011). [https://www.bbc.com/news/science-environment-15845550 "Oceans' deepest depth re-measured"]. BBC News. Retrieved 7 December 2011. </ref>。2番目に深い場所は水深10951m、マリアナ海溝の中で約44km離れた{{Coord|11.369639|N|142.588582|E|scale:100000}} の位置だった<ref>Armstrong, Andrew A. (2011-12-22). [http://ccom.unh.edu/sites/default/files/publications/Armstrong_2011_cruise_report_SU10-02_Marianas.pdf "Cruise Report - UNH-CCOM/JHC Technical Report 11-002"] (PDF). NOAA/UNH Joint Hydrographic Center University of New Hampshire. p. 12. Retrieved 2012-05-01.</ref><ref>[http://www.km.kongsberg.com/ks/web/nokbg0240.nsf/AllWeb/01FB0F22974EA50FC125715E002B2143?OpenDocument EM 122 Multibeam echosounder]</ref><ref>{{cite web|url=http://www.km.kongsberg.com/ks/web/nokbg0397.nsf/AllWeb/E016DF00EBFC2964C12571B1003F9DDA/$file/306105aa_em122ds_lr.pdf?OpenElement|title=EM 122 sonar multibeam bathymetry system brochure|author=|accessdate=2018.10.12|website=kongsberg.com}}</ref><ref>[http://www.ldeo.columbia.edu/res/pi/MB-System/formatdoc/EM_Datagram_Formats_RevP.pdf?OpenElement Instruction manual EM Series (EM 120 & EM 122) Multibeam echo sounders] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20140102191111/http://www.ldeo.columbia.edu/res/pi/MB-System/formatdoc/EM_Datagram_Formats_RevP.pdf?OpenElement |date=2 January 2014 }}</ref> |
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[[ファイル:Bathyscaphe Trieste.jpg|thumb|right|200px|バチスカーフ・トリエステ号]] |
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[[1960年]][[1月23日]]、[[オーギュスト・ピカール]]が開発し[[アメリカ海軍]]が運航する潜水艇([[バチスカーフ]])「[[トリエステ (潜水艇)|トリエステ]]号」に{{仮リンク|ドン・ウォルシュ|en|Don Walsh}}大尉とオーギュストの息子[[ジャック・ピカール]]が搭乗してマリアナ海溝深部を目指した。バチスカーフは鋼鉄の重りと[[ガソリン]]の浮力装置を用いて深度を調整できるよう設計されていた。二人は人類の到達した最深記録を達成した。世界記録であることは間違いないが、その正確な深度については諸説あり、確証が得られていない。二人は海溝の底に到達したといい、その時バチスカーフ内部の水深計が示していたのは{{convert|37800|ft|0|abbr=on}}(後に{{convert|35800|ft|0|abbr=on}}と修正)だったと主張している<ref name="NOAA">{{Cite web | author = [[アメリカ海洋大気庁|NOAA]] | url = http://oceanexplorer.noaa.gov/history/quotes/soundings/soundings.html | title = Soundings, Sea-Bottom, and Geophysics | work = Ocean Explorer | date = March 08, 2011 | accessdate = 2011-09-22 }}</ref>。さらに二人は海溝の底で[[ヒラメ]]や[[エビ]]などの生物が生息しているのを発見して驚いたという。 |
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2014年に、これまで収集されたデータと2010年の観測艦サムナー調査によるマリアナ海溝のソナーマップに基づき、チャレンジャー海淵の深さと場所の決定に関する研究が行われた。CCOM/JHCチームや[[ニューハンプシャー大学]]海洋研究所が携わった同研究は、測量試行の歴史を3つのグループに分けた。初期のシングルビームエコー音響(1950-1970年代)、初期のマルチビームエコー音響(1980年代-21世紀)、現代(すなわち、ポスト[[GPS]]、高解像度)のマルチビームエコー音響である。 |
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2012年に、映画監督の[[ジェームズ・キャメロン]]が潜水艇「[[ディープシーチャレンジャー]]」で同じチャレンジャー海淵最深部に潜った。 |
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水深測定と位置推定の不確実性を考慮して、8測量線からの205万1371回の音響探査に基づく2010年のサムナーによるチャレンジャー海淵付近の水深測量生データが分析された。分析した結果、深度不確定性±25m([[信頼区間|信頼水準]]95%)と位置不確定性±20-25mがあるものの、2010年マッピングで記録されたチャレンジャー海淵の最大水深は、「 {{Coord|11.329903|N|142.199305|E|scale:100000}}の位置にて、水深10984m」と定められた。水深測定の不確実性には、水中を通る音速の空間的変動における測定不確実性、マルチビームシステムの[[レイトレーシング]]とボトム検出の[[アルゴリズム]]、[[モーション]]センサや[[ナビゲーション]]システムの精度と[[較正]]、天体の広がり推定 {{Refnest|group="注釈"|地球自体の膨張というよりは、地球と月との重力影響で起こる海面水位の影響(いわゆる[[潮汐]])を指している。}}、水量全体にわたる音響減衰、などの複合がある<ref name="SoHow" />。 |
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2009年5月-6月にネーレウスが探査中に実施した一連の潜航では、2009年と2010年の最大深度は確認されなかった。海底から報告された4度の直接潜航測定値は、水深10916m(トリエステ)から10911m(かいこう)、10902m(ネーレウス)、10,898 m(ディープシーチャレンジャー)までの狭い範囲にかたまっている。場所を関連付ける試みがなされたが、ソナー/エコー音源によってネーレウス(または他の潜航物)が、以前のマッピング調査で最大水深とされた地点と正確に同一ポイントに達したのか、絶対的な確信が得られなかった。 |
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2017年8月27日、日本の[[日本放送協会|NHK]]は、[[海洋研究開発機構]](JAMSTEC)のチャレンジャー海淵調査時の映像を[[テレビ番組]]「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」で放映した。チャレンジャー海淵の底ではナマコ類や[[ヨコエビ]]類は記録されたものの、魚類は写っていなかった<ref>[https://www.nhk.or.jp/darwin/feature/deepsea/deepocean3/ 「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」]NHKホームページ</ref>。 |
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==潜航== |
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===有人潜航=== |
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{{multiple image |
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| align = right |
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| direction = horizontal |
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| header = |
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| image1 = Bathyscaphe Trieste.jpg |
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| caption1 = バチスカーフ「トリエステ号」。球形の船員室は、ガソリンで満たされたタンクの底に設置されており、ガソリンは船舶の浮力用フロートとして機能する。 |
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| width1 = 300 |
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| image2 = Bathyscaphe Trieste Piccard-Walsh.jpg |
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| caption2 = トリエステ内のウォルシュ(下)とジャック・ピカール(中央) |
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| width2 = 150 |
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| footer = |
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}} |
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====トリエステ号==== |
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{{Main|トリエステ (潜水艇)}} |
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1960年1月23日、スイスで設計されイタリアで製造されて米海軍が取得したトリエステ号は、[[ジャック・ピカール]](父親の[[オーギュスト・ピカール]]と共にこの潜水艦を共同設計した)と米海軍の{{仮リンク|ドン・ウォルシュ|en|Don Walsh}}大尉を乗せて、海溝の底へと潜航した。彼らの乗員区画は球形の圧力容器の内側で、ドイツの[[クルップ]]社が製造した(元来はイタリアの)頑丈な交換部材だった。 |
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彼らの潜航は約5時間かかり、2人が海底で過ごしたのはわずか20分、そして浮上に3時間15分を要した。海底からの彼らの早期出発は、潜航中の温度差によって引き起こされた外壁窓の亀裂に関する懸念からであった<ref>{{cite web |url=http://deepseachallenge.com/the-expedition/1960-dive/ |title=Archived copy |accessdate=2012-04-10 |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120414093239/http://deepseachallenge.com/the-expedition/1960-dive/ |archivedate=14 April 2012 |df=dmy-all }}</ref> 。底部の水深は、10916 m±5 mと[[マノメータ]]で測定された<ref name="Bathy"/><ref name=usn1960>{{cite web |
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|author=Press Release, Office of Naval Research |
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|date=1 February 1960 |
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|url=http://www.onr.navy.mil/focus/ocean/vessels/submersibles11.htm |
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|title=Research Vessels: Submersibles ? ''Trieste'' |
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|publisher=United States Navy |
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|accessdate=16 May 2010 |
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|deadurl=yes |
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|archiveurl=https://web.archive.org/web/20020418105908/http://www.onr.navy.mil/focus/ocean/vessels/submersibles11.htm |
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|archivedate=18 April 2002 |
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|df=dmy-all |
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}}</ref>。 |
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====ディープシーチャレンジャー号==== |
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[[File:Deepsea Challenger Panorama.jpg|thumb|深海探査艇、ディープシーチャレンジャー号]] |
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{{Main|ディープシーチャレンジャー}} |
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2012年3月26日、カナダの映画監督ジェームズ・キャメロンが深海探査艇[[ディープシーチャレンジャー]]号でチャレンジャー海淵の底まで単独での有人潜航をした<ref name="NGS-20120325"/><ref name="NYT-20120325"/><ref name="MSNBC-20120325"/><ref>{{cite web|last=Prince |first=Rosa |url=https://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/australiaandthepacific/guam/9166425/James-Cameron-becomes-first-solo-diver-to-visit-Earths-deepest-point.html |title=James Cameron becomes first solo diver to visit Earth's deepest point |publisher=The Telegraph |date=25 March 2012 |accessdate=26 March 2012}}</ref>。 |
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3月26日の約5時15分([[チャモロ標準時]])に潜航が始まり<ref name="J Cam">{{cite web |author=National Geographic |title=James Cameron Begins Descent to Ocean's Deepest Point |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120325-james-cameron-mariana-trench-dive-deepest-science-sub-descent/ |date=25 March 2012 |publisher=National Geographic Society |accessdate=25 March 2012 }}</ref>、7時52分にチャレンジャー海淵の底に到着、2時間36分かかった。記録された深さは10898.4mだった<ref name="J Cam2">{{cite web |author=National Geographic |title=James Cameron Now at Ocean's Deepest Point |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120325-james-cameron-mariana-trench-challenger-deep-deepest-science-sub/ |date=25 March 2012 |publisher=National Geographic Society |accessdate=25 March 2012 }}</ref>。 |
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キャメロンは海底で約6時間過ごす計画だったが、わずか2時間34分後に浮上を開始することに決めた<ref name="Camon">{{cite web |author=National Geographic |title=Cameron's Historic Dive Cut Short by Leak; Few Signs of Life Seen |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120326-james-cameron-mariana-trench-fluid-leak-fish-science-sub/ |date=26 March 2012 |publisher=National Geographic Society |accessdate=26 March 2012 }}</ref>。[[マニピュレータ]]アームを制御するライン内の液体漏れが、唯一の視認ポートの視界を汚してしまい、時間が短縮された。また、探査艇の右舷[[スラスター]]の欠損も起こった<ref name="Camon" /> 。ディープシーチャレンジャーのウェブサイトでは、 探査艇が90分かけて水面に再浮上したと報告されているが<ref>{{cite web |author=www.deepseachallenge.com |title=We Just Did the Impossible |url=http://deepseachallenge.com/expedition-journal/we-just-did-the-impossible/ |date=25 March 2012 |publisher=www.deepseachallenge.com |accessdate=26 March 2012 |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120329093127/http://deepseachallenge.com/expedition-journal/we-just-did-the-impossible/ |archivedate=29 March 2012 |df=dmy-all }}</ref> 、[[ポール・アレン]]のツイートはわずか67分の浮上だとしている<ref>{{cite web |author=https://twitter.com/PaulGAllen |title=Paul Allen Tweets from Challenger Deep |url=https://twitter.com/PaulGAllen/ |date=27 March 2012 |publisher=twitter.com/PaulGAllen |accessdate=27 March 2012 }}</ref>。 |
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潜航後の記者会見でキャメロンは「私は非常に柔らかい、ほとんどゼラチン質の平野に着陸しました。いったん位置確認をして、私はかなりの距離を運転し...そして最後に坂の上を歩いていました」と語った。キャメロンが言うには、全ての時間で全長1インチ(約2.54cm)以上の魚や生き物を見ておらず、「私が見た自由に泳ぎ回る唯一のものは[[端脚類]]だった」。これはエビに似た海底の捕食生物である<ref>{{cite web |author=National Geographic |title=James Cameron on Earth's Deepest Spot: Desolate, Lunar-Like |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120326-james-cameron-mariana-trench-challenger-deepest-lunar-sub-science/ |date=27 March 2012 |publisher=National Geographic Society |accessdate=27 March 2012 }}</ref>。 |
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====計画されている有人潜航==== |
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他にもいくつかの有人潜航が予定されており、以下のものがある<ref>{{cite web |publisher= BBC News |url= https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-17041435 |title= Race to the bottom of the ocean |date= 22 February 2012 |accessdate=22 March 2012 }}</ref>。 |
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*トリトン・サブマリーンズ(Triton Submarines)社。[[フロリダ]]に拠点を置く潜水艦を設計、製造する民間企業で、同社のTriton 36000/3は3人の乗組員を120分で海底に運ぶ予定である<ref>{{cite web |url= http://tritonsubs.com/submersibles/triton-360003/ |title= Triton 36,000 Full Ocean Depth Submersible |publisher= Triton Submarines |accessdate= 25 March 2012 |deadurl= yes |archiveurl= https://web.archive.org/web/20120329032435/http://tritonsubs.com/submersibles/triton-360003/ |archivedate= 29 March 2012 |df= dmy-all }}</ref>。 |
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*[[ヴァージン・オーシャニック]](Virgin Oceanic)社。[[リチャード・ブランソン]]により創設された[[ヴァージン・グループ]]のひとつで、{{仮リンク|グラハム・ハークス|en|Graham Hawkes}}が設計した深海潜水艇{{仮リンク|ディープフライトチャレンジャー|en|DeepFlight Challenger}}を開発<ref >Virgin Oceanic, [http://www.virginoceanic.com/team/operations-team/ Operations Team] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110927011151/http://www.virginoceanic.com/team/operations-team/ |date=27 September 2011 }} (Retrieved 25 March 2012)</ref> 、単独パイロットで海底到着まで140分かかる予定である<ref>{{cite web|url=http://www.virginoceanic.com |title=Virgin Oceanic |publisher=Virgin Oceanic |accessdate=1 March 2012}}</ref>。 |
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*[[:en:DOER Marine|DOER Marine]](Deep Ocean Exploration and Research)社。1992年に設立されたサンフランシスコの会社で、[[Google]]の[[エリック・シュミット]]からの支援を得てディープサーチ(とOcean Explorer HOV Unlimited)という探査船を開発、2-3人の乗組員が90分かけて海底に到達するディープサーチプログラムを実施予定である<ref>{{cite web |url= http://www.doermarine.com/?page_id=704 |title= Deep Search |publisher= DOER Marine |accessdate=25 March 2012 }}</ref>。なお、日本の[[東陽テクニカ]]がDOER Marineと協業している<ref>「[https://www.toyo.co.jp/kaiyo/maker/detail/id=4065 DOER Marine (Deep Ocean Exploration and Research)] 」東陽テクニカ(海洋/特機)HP、2018年10月12日閲覧。</ref>。 |
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===無人潜航=== |
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====かいこう==== |
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{{Main|かいこう}} |
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1995年3月24日、日本のロボット深海探査機かいこうは、チャレンジャー海淵の海底近くまで接近した時に、無人探査の深さ記録を更新した。日本[[海洋研究開発機構]](JAMSTEC)(当時は海洋科学技術センター)が製作したもので、6000メートル以上の深海潜水調査が可能な無人深海探査機の一つである。 |
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チャレンジャー海淵の{{Coord|11|22.39|N|142|35.54|E}}においてマノメータで測定された水深10911m±3 mは<ref>{{cite web|url=http://www.jamstec.go.jp/e/about/equipment/ships/kaiko7000.html |title=Kaiko 7000II |publisher=Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |accessdate=26 March 2012}}</ref>、これまでに計測された最も正確な測定値だと信じられている <ref name="Bathy"/> 。かいこうはまた、深海底から海洋生物を含む堆積物コアを収集した<ref name="ngnews"/><ref name="Akimoto"/> 。かいこうは1995年、1996年、1998年と3回の探査期間中にマリアナ海溝へ沢山の無人潜航を行った<ref>{{cite web|url=https://www.mbari.org/wp-content/uploads/2016/01/Barry-and-Hashimoto-Challenger-deep-2009.pdf |title=Revisiting the Challenger Deep using the ROV Kaiko |publisher=Winter 2009 Volume 43, Number 5 |accessdate=15 December 2016}}</ref> 。かいこうによって1996年に測定された最大水深は{{Coord|11|22.10|N|142|25.85|E}} 地点での10898mであり、1998年には{{Coord|11|22.95|N|142|12.42|E}}地点で10907mとなった<ref name="Bathy"/> 。2003年5月29日、台風を受けて子機ビークルを四国の海域で喪失した。 |
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====ABISMO==== |
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{{Main|ABISMO}} |
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2008年6月3日、日本のロボット深海探査機「ABISMO」(Automatic Bottom Inspection and Sampling Mobile)がチャレンジャー海淵の東約150kmのマリアナ海溝の底に達し、深海底堆積物のコア試料と水柱の水試料を採取した。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が製作したABISMOは当時、10000mより深く潜水することができる唯一の無人深海探査機であった。ABISMOの海溝潜航中の最深はマノメータで計測された10258m±3mである<ref>http://www.jamstec.go.jp/e/about/press_release/20080616/ “ABISMO", Automatic Bottom Inspection and Sampling Mobile, Succeeds in World’s First Multiple Vertical Sampling from Mid-ocean, Sea Floor and Sub-seafloor over Depth of 10,000 m in Mariana Trench June 16, 2008 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology</ref>。 |
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====ネーレウス==== |
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[[File:Nereus (underwater vehicle) hydro20100720-full.jpg|thumb|無人潜水機ネーレウス]] |
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{{Main|ネーレウス (無人潜水機)}} |
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2009年5月31日、米国はハイブリッドROV(HROV)ネーレウス をチャレンジャー海淵に送った<ref name="Robo">{{Cite news|url=http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8080324.stm|title=Robot sub reaches deepest ocean|date=3 June 2009|accessdate=3 June 2009|publisher=BBC News}}</ref>。ネーレウスは1998年以来マリアナ海溝に到達した(米国で)最初の潜水機となり、プロジェクト主幹で開発者のAndy Bowenはこの成果を「海洋探査の新しい時代の始まりだ」と語った<ref name="Robo" />。ネーレウス は、かいこうと違って、海面上の船に接続されたケーブルで動力を与えたり制御したりする必要がなかった<ref name="Nereus">{{cite web|url=http://www.physorg.com/news163167519.html|title='Nereus' reaches deepest part of the ocean|date=2 June 2009|accessdate=2 June 2009|publisher=physorg.com}}</ref>。 |
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ネーレウスはチャレンジャー海淵の底で10時間以上を過ごし、{{Coord|11|22.1|N|142|35.4|E}},地点で水深10902 mを測定した。ほかライブビデオとデータを母艦[[キロ・モアナ (T-AGOR-26)|キロ・モアナ]]に送り返し、 さらなる科学的分析のための地質学的および生物学的サンプルを同海淵の底からマニピュレータ・アームで収集した<ref name="KILO " /><ref name="Nereus" /><ref>{{Cite news|url=http://www.soest.hawaii.edu/UMC/cms/ship-daily-reports/|title=Daily Reports for R/V KILO MOANA April and May 2009|date=31 May 2009|publisher=University of Hawaii Marine Center|accessdate=31 May 2009}}</ref> |
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<ref>{{Cite news|url=http://www.whoi.edu/page.do?pid=7545&tid=282&cid=57586&ct=162 |title=Hybrid Remotely Operated Vehicle "Nereus" Reaches Deepest Part of the Ocean|date=2 June 2009|publisher= Woods Hole Oceanographic Institution|accessdate=2 June 2009}}</ref>。 |
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ネーレウスは[[ウッズホール海洋研究所]](WHOI)によって運用されていた。2014年5月10日 、[[ケルマデック海溝]]で9900mの水深で潜航している最中に機体を喪失した<ref>{{cite web|url=https://www.bbc.com/news/science-environment-27374326|title=Deep-sea sub 'implodes' 10km-down|first=Jonathan|last=Amos|date=12 May 2014|publisher=|via=www.bbc.com|accessdate=2018.10.12}}</ref>。 |
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====蛟龙1号==== |
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2016年5月23日、中国の潜水艦「蛟龙1号」([[蛟竜 (深海探査艇)|蛟竜]]、Haidou-1)がマリアナ海溝で10767mの深さまで潜航した。この自律的ROVの設計深度は11000 m である<ref>{{cite web|url=http://www.chinadailyasia.com/nation/2016-08/23/content_15483551.html|title=Nitrogen experiment among breakthroughs 丨 Nation|author=|date=|website=chinadailyasia.com|accessdate=2018.10.12}}</ref>。 |
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==海底の生物== |
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HMSチャレンジャー探検航海の概要レポートでは、チャレンジャー海淵が初めて発見された時に採取されたサンプルからの[[放散虫]]が掲載されている<ref>[http://www.19thcenturyscience.org/HMSC/HMSC-Reports/1895-Summary/htm/doc878.html], entry on 23 March 1875.</ref> 。これら({{仮リンク|ナッセラリア目|en|Nassellaria}}と{{仮リンク|スプメラリア目|en|Spumellaria}})は[[エルンスト・ヘッケル]]によって書かれた「放散虫レポート」(1887年)<ref>[http://www.19thcenturyscience.org/HMSC/HMSC-Reports/Zool-40/README.htm], Report on the Radiolaria collected by H.M.S. Challenger |
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by Ernst Haeckel.</ref> にて報告されている。 |
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1960年の潜航でトリエステの乗組員は、海底は[[珪藻土]]から成り、海底に横たわっている「ある種のヒラメ」を観察したことを記述した<ref>[http://www.americanheritage.com/articles/magazine/it/1992/1/1992_1_28.shtml "To the bottom of the sea"] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20081203173230/http://www.americanheritage.com/articles/magazine/it/1992/1/1992_1_28.shtml |date=3 December 2008 }}, T. A. Heppenheimer, AmericanHeritage.com</ref>。 |
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{{quote |最後の水深測量を終える際、私は素晴らしいものを見た。靴底に似た、長さ約1フィート(30cm)、幅が約6インチ(15cm)のある種のヒラメが海底に横たわっているではないか。私が彼を見ると、頭の上にある彼の2つの丸い目が私たちを盗み見た 。 鉄の怪物 (トリエステ号)は、 彼の静かな領域に侵入していった。目?彼に目が要るのか?単に[[燐光]]を見るため?彼に浴びせた投光照明は、水深6000mを超えるこの超深海(hadal)領域に入る最初の光だった。この瞬間が、生物学者が何十年も求めてきた答えとなった。海の最深部に生命は存在しうるのか?出来た!それだけでなく、ここは紛れもなく真実なのだが、骨のない[[真骨類]]の魚であり、原始的な[[エイ]]上目や[[板鰓亜綱]]ではなかった。ええ、高度に進化した脊椎動物で、(進化の)時間軸でいえばヒトに非常に近いです。ゆっくり、とてもゆっくりと、このヒラメは泳ぎ去った。片方を泥にもう片方を水中に、海底伝いに動き、彼は暗闇へと消えた。とてもゆっくりと 、 恐らく海底では全てが遅く 、 ウォルシュと私は手を振った。<ref>Seven Miles Down: The Story of the Bathyscaph Trieste (1961) by J. Piccard and R. S. Dietz. pp. 172-174. Published by the Putnam, New York.</ref>}} |
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多くの海洋生物学者は現在、この真偽不明の目撃について懐疑的であり、その生物は[[ナマコ]]かもしれないと指摘されている<ref>[https://www.theguardian.com/environment/2011/jan/18/james-cameron-dives-deep-avatar "James Cameron dives deep for Avatar"], ''Guardian'', 18 January 2011</ref><ref>[http://www.nature.com/news/james-cameron-heads-into-the-abyss-1.10246 "James Cameron heads into the abyss"], ''Nature'', 19 March 2012</ref>。探査機かいこうに搭載のビデオカメラは、海底でナマコ、{{仮リンク|ウロコムシ|en|Polynoidae}}、[[ヨコエビ]]を捉えており<ref>[https://www.newscientist.com/article/mg15220548.100-mission-to-marianas--if-mount-everest-was-dropped-into-the-worlds-deepest-trench-it-woulddrown-kaiko-hit-bottom----and-came-back-to-tell-the-tale.html "Mission to Marianas"], ''New Scientist'', 2 November 1996</ref><ref>[http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,983295-6,00.html "The last frontier"], ''Time'', 14 August 1995</ref>、日本の[[日本放送協会|NHK]]が2017年8月27日、「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」でその映像を放映した<ref>[https://www.nhk.or.jp/darwin/feature/deepsea/deepocean3/ 「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」]NHKホームページ</ref>。探査機ネーレウスは、長さ約3cmの[[多毛類|ゴカイ類(多足動物)]]を捉えた<ref>[http://ns.gov.gu/geography.html Accessed 8 Oct 2009] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/19961027163532/http://ns.gov.gu/geography.html |date=1996-10-27 }} Geography of the ocean floor near Guam with some notes on exploration of the Challenger Deep.</ref>。 |
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かいこうが採取した堆積物サンプルを分析したところ、10900 mので多数の単純生物が見つかった<ref>{{Cite journal|last=Todo |first=Yuko |year=2005 |title=Simple Foraminifera Flourish at the Ocean's Deepest Point |journal=[[Science (journal)|Science]] |volume=307 |issue=5710 |page=689 |doi=10.1126/science.1105407 |url= |quote= |pmid=15692042 |display-authors=etal}}</ref>。同様の生命体が浅い海溝(7000m以上)と水深4000~6000mの深海層で存在することが知られているが、チャレンジャー海淵で発見された生命体には、より浅い生態系のそれとは異なる分類区別を示す可能性がありうる。 |
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採集された生物の大半は、単純で柔らかい[[有孔虫]](ナショナル・ジオグラフィックによると432種<ref>{{Cite news|first=John |last=Roach |title=Life Is Found Thriving at Ocean's Deepest Point |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2005/02/0203_050203_deepest.html |work=National Geographic News |date=3 February 2005 }}</ref>)であり、他の4種は複雑な種、多室の[[レプトハリシス属]]と[[レオファクス属]]である(どちらも有孔虫の一種)。標本の85%が有機の柔らかい殻を持つ{{仮リンク|アログロミイダ|en|Allogromiida}}であり、これは有機壁の有孔虫の割合が5%から20%の範囲にある他の深海環境からの堆積で暮らす生物のサンプルと比べても稀である。圧力がかかった水中における炭酸カルシウムの高い溶解度のため、硬い石灰質の殻を持つ小さい生物は極端な深度で成長するのが困難であり、チャレンジャー海淵における柔らかい殻を持つ生物の偏重は、今よりもチャレンジャー海淵が浅かった頃の一般的な[[生物圏]]から生じたのかもしれない、と科学者たちは理論づけをしている。600万から900万年超の間、チャレンジャー海淵が現在の深さへと成長するにつれ、堆積物に存在する多くの種が死滅したか、水圧上昇と環境の変化に適応できなくなった<ref>{{cite web|last1=Roach|first1=John|title=Life If Found Thriving at Ocean's Deepest Point|url=http://news.nationalgeographic.com/news/2005/02/0203_050203_deepest.html|website=National Geographic|publisher=National Geographic Society|accessdate=17 February 2015}}</ref>。深さの変化でも生き残った種が、チャレンジャー海淵の現在の生息生物の祖先と言えるのかもしれない。 |
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2013年3月17日、研究者らは、微生物の生命形態がチャレンジャー海淵で繁栄することを示唆するデータを報告した<ref name="LS-20130317">{{cite web |last=Choi |first=Charles Q. |title=Microbes Thrive in Deepest Spot on Earth |url=http://www.livescience.com/27954-microbes-mariana-trench.html |date=17 March 2013 |publisher=[[LiveScience]] |accessdate=17 March 2013 }}</ref><ref>Glud Ronnie,et al.[https://www.nature.com/articles/ngeo1773 "High rates of microbial carbon turnover in sediments in the deepest oceanic trench on Earth"]. Nature Geoscience. 6 (4):</ref>。他の研究者らは、米国北西部海岸の海底8500フィート(約2591m)から1900フィート(579m)までの岩石内部で微生物が増殖するという関連研究を報告している<ref name="LS-20130317" /><ref name="LS-20130314">{{cite web |last=Oskin |first=Becky |title=Intraterrestrials: Life Thrives in Ocean Floor |url=http://www.livescience.com/27899-ocean-subsurface-ecosystem-found.html |date=14 March 2013 |publisher=[[LiveScience]] |accessdate=17 March 2013 }}</ref>。ある研究者によれば、「どこでも微生物は発見できる。彼らは状況への適応が極端で、どんな場所でも生き延びる。<ref name="LS-20130317" />」 |
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== 注釈== |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{Reflist|2}} |
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* [[ヤップ海溝]] |
* [[ヤップ海溝]] |
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* [[フィリピン海溝]] |
* [[フィリピン海溝]] |
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* {{仮リンク|シレナ海淵|en|Sirena Deep}} |
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* {{仮リンク|ホライゾン海淵|en|Horizon Deep}} |
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==外部リンク== |
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* [http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/SODAN/faq/deepest_sea.html 世界の一番深い海 - 海上保安庁 海洋情報部] |
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*[https://web.archive.org/web/20020418105908/http://www.onr.navy.mil/focus/ocean/vessels/submersibles11.htm "Official press release regarding Challenger Deep operation"]ウェブアーカイブより(オリジナルは2002年4月18日) |
|||
*[https://web.archive.org/web/20090403201531/http://www.marianatrench.com/default.htm Mariana Trench] |
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* [http://oregonstate.edu/ua/ncs/archives/2016/mar/mariana-trench-seven-miles-deep-ocean-still-noisy-place Mariana Trench: Seven miles deep, the ocean is still a noisy place] |
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* [http://deepseamap.com/#?l=11.1682,142.8059,9,oceans,0,9 Location of Challenger Deep] インタラクティブ地図(英語) |
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{{プレートテクトニクス}} |
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2018年10月13日 (土) 01:38時点における版
チャレンジャー海淵(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)は、北西太平洋のマリアナ諸島の東、北緯11度22.4分 東経142度35.5分 / 北緯11.3733度 東経142.5917度に位置する、水深1万メートルを超えるマリアナ海溝の最深部である。地球にある海洋の海底最深部でもある。
概要
チャレンジャー海淵 は、かなり大きな三日月形の海溝の底にある比較的小さな溝状の窪みで、長さ約11km、幅1.6kmの底部は、穏やかな傾斜面となっている[1]。チャレンジャー海淵 に最も近い陸地は、南西287kmにあるファイス島(ヤップ州の離島の1つ)で、北東304kmにグアム島がある。グアム付随の海域境から1.6km(1マイル)離れた、ミクロネシア連邦の海域に属している[2] 。
海淵の名前は、イギリス王立海軍の調査船HMSチャレンジャー号(1872年-1876年の探検航海で最初にその深さの測量を行った)にちなんで名づけられた。
チャレンジャー海淵の深さについてはいくつかの計測結果がある(後述)が、大洋水深総図(GEBCO)2011年8月版によると、チャレンジャー海淵の位置および深さは北緯11度22.4分 東経142度35.5分 / 北緯11.3733度 東経142.5917度 、水深10920 m±10 mとされていて[3]、地球上で最も深い海底凹地(海淵)である。これは仮に海面を基準にして世界最高峰エベレストをひっくり返しても、その山頂が海底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。
この深度の高水圧では、探査船の設計および運用が困難であり、わずか4回の潜航が達成されたのみである。最初の潜航は、1960年にバチスカーフのトリエステ号によって行われた。その後は1995年に無人型ROVのかいこうが、2009年にネーレウスが続いた。2012年3月には、映画監督ジェームズ・キャメロンによる深海探査艇のディープシーチャレンジャーでの有人単独潜航が行われた[4][5][6]。
水深測量の歴史
長年にわたり、多くの様々な船が最深度地点の調査に携わっている[7]。
- 最初の測量調査はイギリスのチャレンジャー号探検航海 (1872 – 1876) の海洋調査によって初めて行われた。1875年1875年3月23日、測鉛線による測深記録は8184mであった[8] 。測量地点は北緯11度24分 東経143度16分 / 北緯11.400度 東経143.267度、測量を2度行っている。
- 1912年のジョン・マレーの著書『海洋の深さ(The Depths of the Ocean)』では、チャレンジャー海淵 の深さを9636 mと記しており、1899年に海軍の石炭船USS Neroにより更新されたと報告されている[9] 。
- 日本によるマリアナ海溝の調査は、20世紀に入って行われた。1925年、日本の測量艦「満州」が重りのついたケーブルをおろして測定する方法(鋼索測深)でマリアナ海溝の水深を測定したところ、9814mを記録。この海域が世界で最も深い部分であることを世界に知らしめた。
- 1951年にマリアナ海溝の本格的な深度調査を行ったのはイギリス海軍の測量艦「チャレンジャー8世号」である。この時、「チャレンジャー」は反響した音波を測定する方法(音響測深)で、北緯11度19分 東経142度15分 / 北緯11.317度 東経142.250度において水深10900mを計測した。音響測深は以前(75年前)の探検で使用された測鉛線よりも正確で簡単な深度測定方法である。
- チャレンジャー海淵の最大水深は、1957年にソ連海軍艦艇「ヴィチャージ(ロシア語版)」(Vityaz)が計測した水深11034m±50mで、場所は北緯11度20.9分 東経142度11.5分 / 北緯11.3483度 東経142.1917度地点と報告された[7]。この値は、ブリタニカ百科事典[10] とナショナルジオグラフィック[11] の記事や地図を含む、多くの文献に掲載されている。この水深の圧力は大気圧の約1099倍、111MPaである[12]。ただし、後年の調査でこれほどの水深は一度も測定されず、2014年時点で公式記録としては認められていない(後述)。
- 1959年、米海軍の調査船Strangerが爆音を使用する調査で、最大深度10915m±10mを計測、その場所は北緯11度20.0分 東経142度11.8分 / 北緯11.3333度 東経142.1967度だった[3][7]。
- 1962年、米海軍の調査船 Spencer F. Bairdが、周波数操作深度記録計を使った調査で、同じ 北緯11度20.0分 東経142度11.8分 / 北緯11.3333度 東経142.1967度地点で最大深度10915m±10mを計測した[7]。
- 1975年と1980年に、米国海軍の調査船 Thomas Washingtonが、衛星測位による精密深度記録計を使って調査したところ、 またも北緯11度20.0分 東経142度11.8分 / 北緯11.3333度 東経142.1967度地点で最大深度10915m±10mを計測した[7]。
- 1984年、日本の海洋調査船拓洋が、ナローマルチビーム音響測深機(MBES)を使用して得た数値は、北緯11度22.4分 東経142度35.5分 / 北緯11.3733度 東経142.5917度地点で水深10924m±10mだった[3][7][13]。
- 1998年、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の深海探査研究船かいれいがシービーム2112型マルチビーム音響測深機(MBES)を使用して、チャレンジャー海淵の地域的測度調査を実施した。1998年に得られたデータから作成された地域水深図は、 東側・中央・西側の窪みの最大深度が10922m±74 m・10898m±62m・10908m±36mで、東側の窪みが最も深かった[7]。
- 1999年と2002年に、かいれいはチャレンジャー海淵を再訪した。1999年に実施されたかいれいのクロストラック調査[注釈 1]では、東側・中央・西側の最大深度が10920 m±10 m・10894m±14m・10907m±13mで、1998年調査の結果を支持するものとなった。2002年の詳細なグリッド調査では最も深い場所が東側窪みの東部北緯11度22.260分 東経142度35.589分 / 北緯11.371000度 東経142.593150度にあり、水深10920 m±5 mと示された。これは1984年に拓洋が示した最深場所の南東約290m、1998年のかいれいが示した最深場所の東約240mだった[7]。
- 2009年6月1日に、キロ・モアナ (ネーレウスの母艦)に搭載した深海マッピング(300-11000m)用のKongsberg Simrad製EM120ソナーマルチビーム測深システム(SMBS)による調査で、チャレンジャー海淵のソナーマップは水深10971m を示した。同ソナーシステムは位相と振幅のボトム検出を使用しており、水深で0.2%-0.5%の精度が検知面全体で可能である[7][15][16] 。2014年でも、このソナーマッピングによる地形データは非公開のため、そのデータを他の音響測深との比較には使用できない[17]。
- 2010年10月7日、またもチャレンジャー海淵地域のソナーマッピングが、海洋観測艦サムナー に搭載のもので、米国沿岸・海洋地図センター/共同水路測量センター(CCOM/JHC)によって実施された。この結果は2011年12月、アメリカ地球物理学連合 の秋季会議で報告された。50 cmの精度で緯度経度を決定できる コングスベルグ・マリティム製EM122マルチビーム音響測深システムを使用することで、CCOM/JHCチームはチャレンジャー海淵の最大水深を10994m±40m(標準偏差 95.4%)、その位置を北緯11度19分35秒 東経142度11分14秒 / 北緯11.326344度 東経142.187248度と測定した[18]。2番目に深い場所は水深10951m、マリアナ海溝の中で約44km離れた北緯11度22分11秒 東経142度35分19秒 / 北緯11.369639度 東経142.588582度 の位置だった[19][20][21][22]
2014年に、これまで収集されたデータと2010年の観測艦サムナー調査によるマリアナ海溝のソナーマップに基づき、チャレンジャー海淵の深さと場所の決定に関する研究が行われた。CCOM/JHCチームやニューハンプシャー大学海洋研究所が携わった同研究は、測量試行の歴史を3つのグループに分けた。初期のシングルビームエコー音響(1950-1970年代)、初期のマルチビームエコー音響(1980年代-21世紀)、現代(すなわち、ポストGPS、高解像度)のマルチビームエコー音響である。
水深測定と位置推定の不確実性を考慮して、8測量線からの205万1371回の音響探査に基づく2010年のサムナーによるチャレンジャー海淵付近の水深測量生データが分析された。分析した結果、深度不確定性±25m(信頼水準95%)と位置不確定性±20-25mがあるものの、2010年マッピングで記録されたチャレンジャー海淵の最大水深は、「 北緯11度19分48秒 東経142度11分57秒 / 北緯11.329903度 東経142.199305度の位置にて、水深10984m」と定められた。水深測定の不確実性には、水中を通る音速の空間的変動における測定不確実性、マルチビームシステムのレイトレーシングとボトム検出のアルゴリズム、モーションセンサやナビゲーションシステムの精度と較正、天体の広がり推定 [注釈 2]、水量全体にわたる音響減衰、などの複合がある[17]。
2009年5月-6月にネーレウスが探査中に実施した一連の潜航では、2009年と2010年の最大深度は確認されなかった。海底から報告された4度の直接潜航測定値は、水深10916m(トリエステ)から10911m(かいこう)、10902m(ネーレウス)、10,898 m(ディープシーチャレンジャー)までの狭い範囲にかたまっている。場所を関連付ける試みがなされたが、ソナー/エコー音源によってネーレウス(または他の潜航物)が、以前のマッピング調査で最大水深とされた地点と正確に同一ポイントに達したのか、絶対的な確信が得られなかった。
潜航
有人潜航
トリエステ号
1960年1月23日、スイスで設計されイタリアで製造されて米海軍が取得したトリエステ号は、ジャック・ピカール(父親のオーギュスト・ピカールと共にこの潜水艦を共同設計した)と米海軍のドン・ウォルシュ大尉を乗せて、海溝の底へと潜航した。彼らの乗員区画は球形の圧力容器の内側で、ドイツのクルップ社が製造した(元来はイタリアの)頑丈な交換部材だった。
彼らの潜航は約5時間かかり、2人が海底で過ごしたのはわずか20分、そして浮上に3時間15分を要した。海底からの彼らの早期出発は、潜航中の温度差によって引き起こされた外壁窓の亀裂に関する懸念からであった[23] 。底部の水深は、10916 m±5 mとマノメータで測定された[7][24]。
ディープシーチャレンジャー号
2012年3月26日、カナダの映画監督ジェームズ・キャメロンが深海探査艇ディープシーチャレンジャー号でチャレンジャー海淵の底まで単独での有人潜航をした[4][5][6][25]。 3月26日の約5時15分(チャモロ標準時)に潜航が始まり[26]、7時52分にチャレンジャー海淵の底に到着、2時間36分かかった。記録された深さは10898.4mだった[27]。 キャメロンは海底で約6時間過ごす計画だったが、わずか2時間34分後に浮上を開始することに決めた[28]。マニピュレータアームを制御するライン内の液体漏れが、唯一の視認ポートの視界を汚してしまい、時間が短縮された。また、探査艇の右舷スラスターの欠損も起こった[28] 。ディープシーチャレンジャーのウェブサイトでは、 探査艇が90分かけて水面に再浮上したと報告されているが[29] 、ポール・アレンのツイートはわずか67分の浮上だとしている[30]。
潜航後の記者会見でキャメロンは「私は非常に柔らかい、ほとんどゼラチン質の平野に着陸しました。いったん位置確認をして、私はかなりの距離を運転し...そして最後に坂の上を歩いていました」と語った。キャメロンが言うには、全ての時間で全長1インチ(約2.54cm)以上の魚や生き物を見ておらず、「私が見た自由に泳ぎ回る唯一のものは端脚類だった」。これはエビに似た海底の捕食生物である[31]。
計画されている有人潜航
他にもいくつかの有人潜航が予定されており、以下のものがある[32]。
- トリトン・サブマリーンズ(Triton Submarines)社。フロリダに拠点を置く潜水艦を設計、製造する民間企業で、同社のTriton 36000/3は3人の乗組員を120分で海底に運ぶ予定である[33]。
- ヴァージン・オーシャニック(Virgin Oceanic)社。リチャード・ブランソンにより創設されたヴァージン・グループのひとつで、グラハム・ハークスが設計した深海潜水艇ディープフライトチャレンジャーを開発[34] 、単独パイロットで海底到着まで140分かかる予定である[35]。
- DOER Marine(Deep Ocean Exploration and Research)社。1992年に設立されたサンフランシスコの会社で、Googleのエリック・シュミットからの支援を得てディープサーチ(とOcean Explorer HOV Unlimited)という探査船を開発、2-3人の乗組員が90分かけて海底に到達するディープサーチプログラムを実施予定である[36]。なお、日本の東陽テクニカがDOER Marineと協業している[37]。
無人潜航
かいこう
1995年3月24日、日本のロボット深海探査機かいこうは、チャレンジャー海淵の海底近くまで接近した時に、無人探査の深さ記録を更新した。日本海洋研究開発機構(JAMSTEC)(当時は海洋科学技術センター)が製作したもので、6000メートル以上の深海潜水調査が可能な無人深海探査機の一つである。 チャレンジャー海淵の北緯11度22.39分 東経142度35.54分 / 北緯11.37317度 東経142.59233度においてマノメータで測定された水深10911m±3 mは[38]、これまでに計測された最も正確な測定値だと信じられている [7] 。かいこうはまた、深海底から海洋生物を含む堆積物コアを収集した[11][12] 。かいこうは1995年、1996年、1998年と3回の探査期間中にマリアナ海溝へ沢山の無人潜航を行った[39] 。かいこうによって1996年に測定された最大水深は北緯11度22.10分 東経142度25.85分 / 北緯11.36833度 東経142.43083度 地点での10898mであり、1998年には北緯11度22.95分 東経142度12.42分 / 北緯11.38250度 東経142.20700度地点で10907mとなった[7] 。2003年5月29日、台風を受けて子機ビークルを四国の海域で喪失した。
ABISMO
2008年6月3日、日本のロボット深海探査機「ABISMO」(Automatic Bottom Inspection and Sampling Mobile)がチャレンジャー海淵の東約150kmのマリアナ海溝の底に達し、深海底堆積物のコア試料と水柱の水試料を採取した。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が製作したABISMOは当時、10000mより深く潜水することができる唯一の無人深海探査機であった。ABISMOの海溝潜航中の最深はマノメータで計測された10258m±3mである[40]。
ネーレウス
2009年5月31日、米国はハイブリッドROV(HROV)ネーレウス をチャレンジャー海淵に送った[41]。ネーレウスは1998年以来マリアナ海溝に到達した(米国で)最初の潜水機となり、プロジェクト主幹で開発者のAndy Bowenはこの成果を「海洋探査の新しい時代の始まりだ」と語った[41]。ネーレウス は、かいこうと違って、海面上の船に接続されたケーブルで動力を与えたり制御したりする必要がなかった[42]。
ネーレウスはチャレンジャー海淵の底で10時間以上を過ごし、北緯11度22.1分 東経142度35.4分 / 北緯11.3683度 東経142.5900度,地点で水深10902 mを測定した。ほかライブビデオとデータを母艦キロ・モアナに送り返し、 さらなる科学的分析のための地質学的および生物学的サンプルを同海淵の底からマニピュレータ・アームで収集した[15][42][43] [44]。
ネーレウスはウッズホール海洋研究所(WHOI)によって運用されていた。2014年5月10日 、ケルマデック海溝で9900mの水深で潜航している最中に機体を喪失した[45]。
蛟龙1号
2016年5月23日、中国の潜水艦「蛟龙1号」(蛟竜、Haidou-1)がマリアナ海溝で10767mの深さまで潜航した。この自律的ROVの設計深度は11000 m である[46]。
海底の生物
HMSチャレンジャー探検航海の概要レポートでは、チャレンジャー海淵が初めて発見された時に採取されたサンプルからの放散虫が掲載されている[47] 。これら(ナッセラリア目とスプメラリア目)はエルンスト・ヘッケルによって書かれた「放散虫レポート」(1887年)[48] にて報告されている。
1960年の潜航でトリエステの乗組員は、海底は珪藻土から成り、海底に横たわっている「ある種のヒラメ」を観察したことを記述した[49]。
最後の水深測量を終える際、私は素晴らしいものを見た。靴底に似た、長さ約1フィート(30cm)、幅が約6インチ(15cm)のある種のヒラメが海底に横たわっているではないか。私が彼を見ると、頭の上にある彼の2つの丸い目が私たちを盗み見た 。 鉄の怪物 (トリエステ号)は、 彼の静かな領域に侵入していった。目?彼に目が要るのか?単に燐光を見るため?彼に浴びせた投光照明は、水深6000mを超えるこの超深海(hadal)領域に入る最初の光だった。この瞬間が、生物学者が何十年も求めてきた答えとなった。海の最深部に生命は存在しうるのか?出来た!それだけでなく、ここは紛れもなく真実なのだが、骨のない真骨類の魚であり、原始的なエイ上目や板鰓亜綱ではなかった。ええ、高度に進化した脊椎動物で、(進化の)時間軸でいえばヒトに非常に近いです。ゆっくり、とてもゆっくりと、このヒラメは泳ぎ去った。片方を泥にもう片方を水中に、海底伝いに動き、彼は暗闇へと消えた。とてもゆっくりと 、 恐らく海底では全てが遅く 、 ウォルシュと私は手を振った。[50]
多くの海洋生物学者は現在、この真偽不明の目撃について懐疑的であり、その生物はナマコかもしれないと指摘されている[51][52]。探査機かいこうに搭載のビデオカメラは、海底でナマコ、ウロコムシ、ヨコエビを捉えており[53][54]、日本のNHKが2017年8月27日、「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」でその映像を放映した[55]。探査機ネーレウスは、長さ約3cmのゴカイ類(多足動物)を捉えた[56]。
かいこうが採取した堆積物サンプルを分析したところ、10900 mので多数の単純生物が見つかった[57]。同様の生命体が浅い海溝(7000m以上)と水深4000~6000mの深海層で存在することが知られているが、チャレンジャー海淵で発見された生命体には、より浅い生態系のそれとは異なる分類区別を示す可能性がありうる。
採集された生物の大半は、単純で柔らかい有孔虫(ナショナル・ジオグラフィックによると432種[58])であり、他の4種は複雑な種、多室のレプトハリシス属とレオファクス属である(どちらも有孔虫の一種)。標本の85%が有機の柔らかい殻を持つアログロミイダであり、これは有機壁の有孔虫の割合が5%から20%の範囲にある他の深海環境からの堆積で暮らす生物のサンプルと比べても稀である。圧力がかかった水中における炭酸カルシウムの高い溶解度のため、硬い石灰質の殻を持つ小さい生物は極端な深度で成長するのが困難であり、チャレンジャー海淵における柔らかい殻を持つ生物の偏重は、今よりもチャレンジャー海淵が浅かった頃の一般的な生物圏から生じたのかもしれない、と科学者たちは理論づけをしている。600万から900万年超の間、チャレンジャー海淵が現在の深さへと成長するにつれ、堆積物に存在する多くの種が死滅したか、水圧上昇と環境の変化に適応できなくなった[59]。深さの変化でも生き残った種が、チャレンジャー海淵の現在の生息生物の祖先と言えるのかもしれない。
2013年3月17日、研究者らは、微生物の生命形態がチャレンジャー海淵で繁栄することを示唆するデータを報告した[60][61]。他の研究者らは、米国北西部海岸の海底8500フィート(約2591m)から1900フィート(579m)までの岩石内部で微生物が増殖するという関連研究を報告している[60][62]。ある研究者によれば、「どこでも微生物は発見できる。彼らは状況への適応が極端で、どんな場所でも生き延びる。[60]」
注釈
脚注
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