「樽見鉄道ハイモ230-300形気動車」の版間の差分
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== 概要 == |
2017年7月29日 (土) 00:30時点における版
樽見鉄道ハイモ230-300形気動車 | |
---|---|
ハイモ230-301 2006年4月 | |
基本情報 | |
運用者 | 樽見鉄道 |
製造所 | 富士重工業[1] |
製造初年 | 1985年[1] |
製造数 | 2両[2] |
運用開始 | 1985年10月6日[3] |
廃車 | 2009年[4] |
主要諸元 | |
軌間 | 1,067[5] mm |
車両定員 |
116名 (座席44名)[6] |
自重 | 23.5 t[6] |
全長 | 15,500[5] mm |
車体長 | 15,000[5] mm |
全幅 | 3,040[5] mm |
車体幅 | 2,700[5] mm |
全高 | 3,550[5] mm |
車体高 | 3,550[5] mm |
床面高さ | 1,300 mm[5] |
車体 | 普通鋼 |
台車 |
枕ばね:上枕空気ばね 軸箱支持:軸ばね式 FU34D/T[7][6] |
車輪径 | 762 mm[5] |
固定軸距 | 1,800 mm[5] |
台車中心間距離 | 10,000 mm[5] |
機関 | 日産ディーゼル製PE6HT03ディーゼルエンジン[6][8] |
機関出力 | 169 kW (230 PS) / 1,900 rpm[6][8] |
変速機 | 液体式(SCAR0.91B) [6] |
歯車比 | 3.22[6] |
制動装置 | SME[6] |
保安装置 | ATS-S[9] |
樽見鉄道ハイモ230-300形気動車 (たるみてつどうハイモ230-300がたきどうしゃ)は、1985年(昭和60年)・1987年(昭和62年)に各1両が製造された[10][11]樽見鉄道の気動車である[3]。本項では1988年(昭和63年)・1992年(平成4年)に各1両が製造された増備車で扉構造が異なる樽見鉄道ハイモ230-310形気動車(たるみてつどうハイモ230-310がたきどうしゃ)[12][13]についても併せて記載する。
概要
1984年(昭和59年)10月に日本国有鉄道樽見線を第三セクターに転換して開業した樽見鉄道[14]が、増発、延伸などの車両需要増に対応して1985年(昭和60年)から1992年(平成4年)にかけて4両を製造した気動車である[15][2]。形式名「ハイモ」は「ハイスピードモーターカー」の略、230は馬力表示の機関出力を意味している[16]。開業時に投入したハイモ180-100形・ハイモ180-200形では、保守、運用の経済性を重視し、地方交通線用としてバスの部品を多用して富士重工業が開発したLE-Car IIの標準寸法を採用した[14]が、ハイモ230-300形では車体長、幅が拡大され、ボギー車となった[17]。引き続き車体にはバス用の部品が多用されている[17]。エンジンはハイモ180-100形・200形のPE6Hをターボチャージャー付きとして出力を向上したPE6HT03が採用された[18]。4両とも正面貫通式、両運転台、トイレなし、ロングシート [19][3]で、最初の1両は客用扉が折り戸、2両目以降は引き戸となり、ハイモ230-310形に形式が区分された[20]。2両目はハイモ230-302として落成し、ハイモ230-313登場時にハイモ230-312に改番されている[21]。 ハイモ295-610形、ハイモ330-700形に置き換えられ、ハイモ230-301が2009年(平成21年)、ハイモ230-312が2011年(平成23年)、ハイモ230-314が2015年(平成27年)に廃車された[4][22][23]。ハイモ230-312は廃車後ミャンマーに輸出、ハイモ230-314はJR貨物北陸ロジスティクスに譲渡された[22][23]。
車体
富士重工業製のレールバスLE-Car IIとして15 m級の車体を初めて採用、台車もボギー式となった[17]。LE-Carシリーズではバス用構体を流用したため全幅が2,440 mmとなっていたが、ハイモ230-300形では2台分の垂木を接合することで2,700 mmとなり、以降のLE-Carシリーズの標準寸法となった[17]。前面は貫通式、乗務員室は左側に設けられ、ハイモ230-301には乗務員用扉が設けられた[5]が、それ以外の車両では乗務員扉は省略された[16]。ハイモ230-302以降の車両は前照灯と尾灯が角形となり、一体のケースに入れられている[20]。ハイモ230-301では折り戸の、それ以外の車両では引き戸の客用扉が片側2か所、両車端に設けられた[20][5]。扉間には中央部に下半分が引き違い式、上半分が平面窓固定式の幅1,600 mmの窓6組と運転台がない側の扉寄りに1,060 mmの同構造の窓1組が設けられた[5]。引き戸が採用された車両では扉に隣接する窓は固定式となった[21]。ハイモ230-301、302、313の外部塗装はハイモ180-100形・200形同様ブルーをベースに樽見鉄道の頭文字であるTを図案化した赤と白のストライプが窓下に描かれたもの[14][3]で、ハイモ230-314は池田満寿夫がデザインしたものとなった[21]。
車内は全席ロングシートである[21]。
走行装置
エンジンは、ハイモ180-100形・200形用のものにターボチャージャーを搭載して出力を向上した日産ディーゼル製PE6HT03ディーゼルエンジン(定格出力169 kW / 1,900 rpm)を1基搭載[18]、動力は神鋼造機製SCAR0.91B液体変速機を介して2軸駆動の台車に伝達される[17][6]。台車は上枕空気ばね、軸ばね式FU34D/Tが採用された[6][7]。制動装置はSME三管式直通ブレーキが採用された[6]。
空調装置
暖房装置はエンジン排熱を利用した温風式である。冷房装置はバス用のものを流用した能力25.6 kW(22,000 kcal/h)のICP023が設置された[16]。
車歴
形式 | 車両番号 | 製造 | 新番号 | 改番 | 廃車 |
---|---|---|---|---|---|
ハイモ230-300 | 301 | 1985年9月[1] | - | - | 2009年度[4] |
ハイモ230-300 | 302 | 1987年9月[24] | 312[12] | 1988年12月[12] | 2011年3月[25] |
ハイモ230-310 | 313 | 1988年12月[26] | - | - | - |
ハイモ230-310 | 314 | 1992年9月[27] | - | - | 2015年12月[28] |
-
ハイモ230-301
-
ハイモ230-312
-
ハイモ230-313
-
ハイモ230-314
運用
樽見鉄道開業1周年の1985年(昭和60年)10月6日から運転を開始した[3]。LE-Car IIの標準寸法を採用したハイモ180-100形・200形に対し、全長、全幅とも拡大され、当初は混雑時の列車を中心に運用された[17][21]。LE-Car IIシリーズとして初めて15 m級の全長、2,700 mmの車体幅、FU34系ボギー台車を採用し、以降の他社車両でも標準的な寸法、仕様となった[17]。当初は樽見線大垣駅 – 神海駅間で運用されたが、路線延伸に伴って運用範囲も拡大されている[29]。1987年(昭和62年)には扉構造を変更した1両が増備され、1989年(平成元年)の神海駅 - 樽見駅間延伸開業に備えてさらに同構造の1両が追加されたが、この時から形式がハイモ230-310形に変更され、1987年(昭和62年)製の1両についても改番されている[11][12]。1992年(平成4年)には最終製造となる1両が追加されたが、外部塗装が池田満寿夫デザインによるものに変更されている[13][21]。301は2004年(平成16年)から窓下に沿線の子供の絵画を貼り付けて運転、312は2007年(平成19年)から本巣市のPR塗装、313は旧根尾村の広告塗装、314は2006年(平成18年)からモレラ岐阜の広告塗装となった[21][9]。新造車両に代替され、2009年(平成21年)が始まっている[4]。ハイモ230-312は廃車後ミャンマーに輸出[22]され、ハイモ230-314はJR貨物 北陸ロジスティクスに譲渡されている[23]。
出典
- ^ a b c 『新車年鑑1986年版』p163
- ^ a b 『私鉄気動車30年』p169
- ^ a b c d e 『新車年鑑1986年版』p120
- ^ a b c d 『鉄道車両年鑑2010年版』p133
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p47
- ^ a b c d e f g h i j k 『新車年鑑1986年版』p161
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻515号p15
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p52
- ^ a b 『樽見鉄道の車両』
- ^ 『新車年鑑1986年版』p91
- ^ a b 『新車年鑑1988年版』p125
- ^ a b c d 『新車年鑑1989年版』p140
- ^ a b 『新車年鑑1993年版』p103
- ^ a b c 『新車年鑑1985年版』p98
- ^ 『レイルマガジン』通巻250号p28
- ^ a b c 『レイルマガジン』通巻230号付録p16
- ^ a b c d e f g 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p46
- ^ a b 『私鉄気動車30年』p105
- ^ 『新車年鑑1986年版』p119
- ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p29
- ^ a b c d e f g 『私鉄気動車30年』p106
- ^ a b c 『鉄道車両年鑑2011年版』p141
- ^ a b c 『鉄道車両年鑑2016年版』p111
- ^ 『新車年鑑1988年版』p218
- ^ 『鉄道車両年鑑2011年版』p220
- ^ 『新車年鑑1989年版』p235
- ^ 『新車年鑑1993年版』p190
- ^ 『鉄道車両年鑑2016年版』p223
- ^ 『新車年鑑1990年版』p71
参考文献
書籍
- 寺田 祐一『私鉄気動車30年』JTBパブリッシング、2006年。ISBN 4-533-06532-5。
雑誌記事
- 『鉄道ピクトリアル』通巻448号「新車年鑑1985年版」(1985年5月・電気車研究会)
- 樽見鉄道(株)運輸部次長兼機関区長 大橋 邦典「樽見鉄道 ハイモ180-100形・ハイモ180-200形」 pp. 98-99
- 『鉄道ピクトリアル』通巻464号「新車年鑑1986年版」(1986年5月・電気車研究会)
- 藤井 信夫、大幡 哲海、岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 84-96
- 鉄道ピクトリアル編集部「明知鉄道 アケチ1形」 pp. 119
- 鉄道ピクトリアル編集部「樽見鉄道 ハイモ230-300形」 pp. 120
- 「民鉄車両諸元表」 pp. 161-162
- 「竣工月日表」 pp. 162-172
- 『鉄道ピクトリアル』通巻496号「新車年鑑1988年版」(1988年5月・電気車研究会)
- 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 118-133
- 「竣工月日表」 pp. 216-226
- 『鉄道ピクトリアル』通巻515号「<特集> 台車」(1989年8月・電気車研究会)
- 吉川文夫「日本の鉄道車両 台車の歴史過程」 pp. 10-15
- 『鉄道ピクトリアル』通巻534号「新車年鑑1990年版」(1990年10月・電気車研究会)
- 藤井 信夫・大幡 哲海・岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 68-72
- 『鉄道ピクトリアル』通巻582号「新車年鑑1993年版」(1993年10月・電気車研究会)
- 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 96-110
- 「1992年度車両動向」 pp. 187-209* 『鉄道ピクトリアル』通巻612号「新車年鑑1995年版」(1995年10月・電気車研究会)
- 藤井 信夫、大幡 哲海、岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 86-101
- 『鉄道ピクトリアル』通巻658号「<特集> レールバス」(1998年9月・電気車研究会)
- 「第三セクター・私鉄向け 軽快気動車の発達 富士重工業」 pp. 28-31
- 高嶋修一「第三セクター・私鉄向け軽快気動車の系譜」 pp. 42-55
- 『レイルマガジン』通巻230号付録(2002年11月・ネコ・パブリッシング)
- 岡田誠一「民鉄・第三セクター鉄道 現有気動車ガイドブック2002」 pp. 1-32
- 『レイルマガジン』通巻250号(2004年7月・ネコ・パブリッシング)
- 寺田 祐一「私鉄・三セク気動車 141形式・585輌の今!」 pp. 4-50
- 『鉄道ピクトリアル』通巻840号「鉄道車両年鑑2010年版」(2010年10月・電気車研究会)
- 岸上 明彦「2009年度民鉄車両動向」 pp. 116-142
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 212-225
- 『鉄道ピクトリアル』通巻855号「鉄道車両年鑑2011年版」(2011年10月・電気車研究会)
- 岸上 明彦「2010年度民鉄車両動向」 pp. 123-154
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 210-222
- 『鉄道ピクトリアル』通巻923号「鉄道車両年鑑2016年版」(2016年10月・電気車研究会)
- 岸上 明彦「2015年度民鉄車両動向」 pp. 93-123
- 「車両データ 2015年度民鉄車両」 pp. 215-227
Web資料
- “樽見鉄道の車両”. 樽見鉄道. 2017年6月25日閲覧。