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(ただ、日本においてはより少なく元々は年間1400μSv(= 1.4 mSv)とされている(1988年推定)<ref name="KEK">[http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-41.pdf 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構>放射線科学センター >暮らしの中の放射線>自然放射線の量]</ref>。) |
(ただ、日本においてはより少なく元々は年間1400μSv(= 1.4 mSv)とされている(1988年推定)<ref name="KEK">[http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-41.pdf 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構>放射線科学センター >暮らしの中の放射線>自然放射線の量]</ref>。) |
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自然放射線のうち、自然放射性核種(天然放射性核種)からのものに着目すると、《体内被曝》および《地殻からの体外被曝》がそれに相当し<ref name="ichikawa1999 />、その大部分は[[カリウム40]]によるものである。カリウムという元素は環境中に多量に存在していて生物にとって重要な元素であり、カリウム40は天然に存在するカリウムのうちの0.01%強を占めているため、生物がカリウムを取り込む時に必ずカリウム40が体内に摂取される<ref name="ichikawa1999" />。カリウム40に次ぐ被曝をもたらしている自然放射性核種は、ラドンの核種<ref group="注">ここで言うラドンの核種には、ウラン238の崩壊系列で生じる[[ラドン222]]と、[[トリウム232]]の崩壊系列で生じる[[ラドン220]]が存在する</ref>である<ref name="ichikawa1999" />。 |
自然放射線のうち、自然放射性核種(天然放射性核種)からのものに着目すると、《体内被曝》および《地殻からの体外被曝》がそれに相当し<ref name="ichikawa1999" />、その大部分は[[カリウム40]]によるものである。カリウムという元素は環境中に多量に存在していて生物にとって重要な元素であり、カリウム40は天然に存在するカリウムのうちの0.01%強を占めているため、生物がカリウムを取り込む時に必ずカリウム40が体内に摂取される<ref name="ichikawa1999" />。カリウム40に次ぐ被曝をもたらしている自然放射性核種は、ラドンの核種<ref group="注">ここで言うラドンの核種には、ウラン238の崩壊系列で生じる[[ラドン222]]と、[[トリウム232]]の崩壊系列で生じる[[ラドン220]]が存在する</ref>である<ref name="ichikawa1999" />。 |
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== 宇宙線によるもの == |
== 宇宙線によるもの == |
2017年7月29日 (土) 00:28時点における版
自然放射線(しぜんほうしゃせん)とは、人間の活動が無くても自然界にもともと存在している放射線の総称である[1]。自然放射線による被曝の内、人間の活動により増幅された放射線による被曝は人工被曝に分類される場合もある。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)による被曝の分類を参照。
概説
自然放射線の分類方法は幾通りもある。例えば、その起源に着目して分類するならば、(1)宇宙線 (2)天然放射性核種(主に原始放射性核種)からの放射線の二つに分類することができる[1]。
人間が受ける自然の放射線による被曝の内訳は、宇宙線から年間ほぼ390 μSv(=マイクロシーベルト・= 0.39 mSv)、地殻・建材などからの自然放射性核種から年間480 μSv(= 0.48 mSv)の外部被曝を受けている[2][3]。そして体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から年間ほぼ290 μSv(= 0.29 mSv)の内部被曝を受けている。これらに加え、空気中に含まれているラドンから年間約1260μSv(= 1.26 mSv)の被曝を受けている。合わせて世界平均として自然界から年間2400μSv(= 2.4 mSv)前後の被曝を受けていることになる[4][5]。
(ただ、日本においてはより少なく元々は年間1400μSv(= 1.4 mSv)とされている(1988年推定)[6]。)
自然放射線のうち、自然放射性核種(天然放射性核種)からのものに着目すると、《体内被曝》および《地殻からの体外被曝》がそれに相当し[2]、その大部分はカリウム40によるものである。カリウムという元素は環境中に多量に存在していて生物にとって重要な元素であり、カリウム40は天然に存在するカリウムのうちの0.01%強を占めているため、生物がカリウムを取り込む時に必ずカリウム40が体内に摂取される[2]。カリウム40に次ぐ被曝をもたらしている自然放射性核種は、ラドンの核種[注 1]である[2]。
宇宙線によるもの
宇宙から飛来する放射線の量とされる数値は資料によって異なっており、市川の文献では年間ほぼ300 μSv(= 0.3 mSv)、ジョゼフ・ヴァイスの文献では年間2.5 mSv(= 2,500 μSv)[7]、『放射線利用の基礎知識』では0.39 mSv(= 390 μSv)[8]などとされる。
高度が高くなると宇宙からの放射線は空気という遮蔽物が減るために、1,500mごとに約2倍になる。国際線のジェット機では国内線より長時間高高度を飛行するために比較的強く放射を受ける。通常の飛行高度は1万m程度なので[9]、これらの値から計算してみれば
と地上の約100倍もの放射線量に被曝することになる。
東京-ニューヨーク間の往復の飛行では、0.11~0.16 mSv(= 110~160 μSv)の放射線を受けるといわれている[10]。また、成田-ニューヨーク間を搭乗する航空機乗務員に実際に被ばく線量計を装着させて実測したところ、年に800-900時間搭乗すると被ばく線量は年間約3 mSv(= 3,000 μSv)になるという報告がある[11]。
地球磁気圏内である高度400km前後の上空で周回する国際宇宙ステーション滞在中の宇宙飛行士の被曝線量は、1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度となる[12]。地球磁気圏外の宇宙空間でも同様に被曝線量は1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度と言われている[13]。
宇宙飛行士のワレリー・ポリャコフは、1994年1月8日にソユーズTM-18で打ち上げられ、ミールLD-4に437.7日間滞在し、単一ミッションでの最長宇宙滞在時間の記録を有する[14](宇宙飛行の記録一覧も参照)。この宇宙飛行での被曝線量は400mSvを超えていると推定される。
太陽フレアが発生すると、多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される(コロナル・マス・エジェクション(CME))ことが多い。また地球磁気圏外(例えば月面滞在や火星有人飛行時)では、フレア時のX線、ガンマ線による被曝が、人の致死量を超えることもある[15]。
天然放射性核種(自然放射性核種)からのもの
地殻中の自然放射性核種からの放射線
地下からは大地に含まれる放射性物質から、年間0.48 mSv(= 480 μSv)程度[8]の放射線が発生している。これは地下になると強まるために、例えばトンネル内では放射線が僅かに強くなる。
地中の放射線物質は花崗岩に多く含まれており、この岩石の多い地域では自然放射線が強くなる。大地からの放射線は、地域により放射線の強弱が出る主要な要因である。
飲食物
人が日ごろ口にする水や食物にも極微量の放射性核種が含まれているために、常に体内被曝しているといえる。この被曝量は市川の文献では、年間ほぼ250 μSv(= 0.25 mSv)である[2]、『放射線利用の基礎知識』では年間0.29 mSv(= 290 μSv)程度[8]とされている。
主な内部被曝源としてはカリウム40や炭素14のような天然に存在する放射性同位体がある。体重60kgの人体にも、カリウム40で4,000ベクレル、炭素14で2,500ベクレルの天然の放射線物質があると言われている[16]。
食品の種類によって放射性物質の量は異なりバナナ、ジャガイモ、インゲン豆、ナッツ、ヒマワリの種は自然放射能をやや多く持っている[17]。最も自然放射能が多いのはブラジルナッツで、1kgあたり244.2ベクレルもあるが[18]毎日食べても人体に影響の無いレベルにすぎない。
大気中の放射線源
空気からも年間1.26 mSv(= 1,260 μSv)[8]の被曝がある。地球内部から漏れ出て自然に存在するラドンなどの気体がその微弱な放射源である。空気中からのラドンなどの放射性物質の摂取は、呼吸器系に影響を及ぼし、肺癌などのリスク要因になりうるとして、世界保健機関では屋内ラドン濃度が100ベクレル/m3未満に低減するよう注意を呼びかけている[19]。
自然放射線の高さによって知られる地域
脚注
注釈
出典
- ^ a b 原子力百科事典ATOMICA【自然放射線(能)】
- ^ a b c d e 市川定夫『環境学-遺伝子破壊から地球規模の環境破壊まで』藤原書店、1999年、232-235頁。ISBN 4-89434-130-1。
- ^ アーカイブ 2016年3月4日 - ウェイバックマシン
- ^ 中部電力|日常生活と放射線 - 放射線のはなし
- ^ 国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告(「原子力・エネルギー」図面集2009)
- ^ 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構>放射線科学センター >暮らしの中の放射線>自然放射線の量
- ^ ジョゼフ・ヴァイス著・本多力訳 『核融合エネルギー入門』 白水社、2004年5月30日。ISBN 4-560-05875-X
- ^ a b c d 東嶋和子著 『放射線利用の基礎知識』 講談社、2006年12月20日。ISBN 4-06-257518-3
- ^ 飯田博美編『放射線概論』 通商産業研究社、2005年7月20日。ISBN 4-86045-101-5
- ^ “自然放射線”. 電気事業連合会. 2017年6月30日閲覧。
- ^ http://tech.eng.niigata-u.ac.jp/pdf4/014.pdf[リンク切れ]
- ^ 放射線被ばく管理 - JAXA
- ^ 宇宙放射線による年間被ばく - ATOMICA
- ^ Encyclopedia Astronautica
- ^ 太陽フレア
- ^ 自然科学研究機構-核融合科学研究所[リンク切れ]
- ^ Internal Exposure from Radioactivity in Food and Beverages (PDF) (2008年9月24日時点のアーカイブ)
- ^ Brazil Nuts - ORAU
- ^ “WHO HANDBOOK ON INDOOR RADON”. World Health Organization (2009年). 2011年5月28日閲覧。 国立保健医療科学院による邦訳:WHO 屋内ラドンハンドブック