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諸待遇については、業務の特殊性から専門行政職俸給表の適用を受ける。ただし、航空保安大学校での基礎研修受講中および修了後に各官署の先任航空管制官付として転任し、技能証明取得によって正式に航空管制官として任用されるまでの間は、[[行政職]](一)俸給表の適用を受ける。 |
諸待遇については、業務の特殊性から専門行政職俸給表の適用を受ける。ただし、航空保安大学校での基礎研修受講中および修了後に各官署の先任航空管制官付として転任し、技能証明取得によって正式に航空管制官として任用されるまでの間は、[[行政職]](一)俸給表の適用を受ける。 |
2016年11月29日 (火) 00:16時点における版
航空管制官(こうくうかんせいかん、英語: Air Traffic Controller)は、航空交通管制業務を行う者のことである。世界的には、民間企業の場合と公的機関に所属している場合とがあるが、民間企業であっても公的な性格は強い。日本では、国土交通省等に所属する国家公務員である。
航空機に管制指示等を与えることにより、航空機の異常接近・衝突を防ぎ空域の航空交通管理をおこない、安全で円滑な航空機の運航を支えるのが主な業務である。
概要
航空管制官は下記の機関で管制業務を行う
- 航空交通管理センター
- 航空交通管理管制業務
- 管制区管制所(Area Control Center)
- ターミナル管制所(Approach/Departure/Radar)
- 進入管制業務(航空交通管制部でおこなうものを除く)
- ターミナルレーダー管制業務
- ターミナルコントロールエリア(TCA)が指定されているところではTCAアドバイザリー業務(呼出符号はTCA)
- 飛行場管制所(Tower/Ground/Delivery)の業務
- 飛行場管制業務
- 着陸誘導管制所(GCA)の業務
- 着陸誘導管制業務
それぞれの管制業務については航空交通管制を参照のこと。
日本
日本では、国土交通省航空局の国家公務員または防衛省の各自衛隊に所属する特別職国家公務員、もしくはアメリカ軍所属の軍人である。
国土交通省に所属する航空管制官は、航空管制官採用試験(大卒程度)により国家公務員として任用され、航空保安大学校での研修を受ける。その後、日本各地の空港[注 1]や航空交通管制部、航空交通管理センターなどで勤務し、現場での訓練を経て技能証明を取得する。かつては、航空保安大学校の学生採用試験(高等学校卒業程度)により任用される道もあったが、平成21年(2009年)度に廃止された[注 2]。
諸待遇については、業務の特殊性から専門行政職俸給表の適用を受ける。ただし、航空保安大学校での基礎研修受講中および修了後に各官署の先任航空管制官付として転任し、技能証明取得によって正式に航空管制官として任用されるまでの間は、行政職(一)俸給表の適用を受ける。
国家公務員であることから、全国規模での異動があるほか、現場で一定の経験を積んだ後、国土交通省航空局(本省内部部局)や地方航空局(地方支分部局)に勤務し、企画立案や管理部門においてデスクワークをおこなう航空管制官、航空保安大学校(本校および岩沼研修センター)で教官業務に従事する航空管制官、あるいは国際民間航空機関への出向や、国際協力機構による派遣で海外機関で勤務する航空管制官もいる。全体として空港勤務よりも航空交通管制部や航空交通管理センター等で勤務する航空管制官の方が多い。
航空管制官が実施する業務は、飛行場管制業務、進入・ターミナルレーダー管制業務、航空路管制業務に区分され、それぞれ勤務地に応じて必要な資格を取得する。[注 3]
航空自衛隊・海上自衛隊・陸上自衛隊に所属する航空管制官は、専任の自衛官であり、特別職の国家公務員として任用されている。 養成教育は、航空自衛隊第5術科学校が一括して実施し、技能証明取得の際の技能試験は国土交通省航空局の試験官が実施している。なお、各自衛隊所属の航空管制官は、それぞれについて採用試験が異なり、航空自衛隊、海上自衛隊においては、入隊後の基礎的教育訓練期間中(自衛官候補生時)に希望や適正試験により術科学校の入校が選抜され、術科学校卒業により航空管制部門への配属が決定して部隊でのOJTが行なわれる。陸上自衛隊においては、希望する隊員に対して適性試験により選抜を実施している。
日本航空機駿河湾上空ニアミス事故
航空機同士が異常接近して、乗客57人が重軽傷を負った事故を巡り、国土交通省東京航空交通管制部の指導担当管制官と管制官が起訴された。第1審の東京地方裁判所判決は無罪であったが、2008年(平成20年)4月11日、東京高等裁判所は一審判決を破棄し、指導担当管制官を禁錮1年6か月・執行猶予3年、管制官を禁錮1年・執行猶予3年とする有罪判決を言い渡し、2010年(平成22年)10月26日、最高裁判所第1小法廷は、上告を棄却した。両被告人は、禁錮以上の刑が確定したため、国家公務員法第76条により失職した。なお、この判決に対して国際航空管制官連盟(IFATCA)は「航空安全管理システムの前提であり、第37回ICAO議会にて日本が賛同した安全文化 (Just Culture) の確立に反する。日本の航空の安全性に悪影響を及ぼす判決である。」として非難している。
法体系上の地位
航空法では、航空交通の安全に係る操縦士の要求に基づく管制業務上の指示・承認及び許可は、国土交通大臣の行う法律事項(航空法第94条ないし99条)として定められている。なお、航空法第96条では「航空機は、航空交通管制区又は航空交通管制圏においては国土交通大臣が安全かつ円滑な航空交通の確保を考慮して離陸若しくは着陸の順序、時機若しくは方法又は飛行の方法について与える指示に従って航行しなければならない」と規定してあり、条文上は「大臣が行なう法律事項」であって「航空管制官」が直接行なうとは規定していないし、航空法にも「航空管制官」という言葉はない。
航空法施行規則第240条において「国土交通大臣の権限で次に掲げるものは、地方航空局長に行なわせる」として、同条第33号において「法第96条第1項及び第2項の規定による指示並びに同条第3項の規定による連絡に関する業務で飛行場管制業務、ターミナル・レーダー管制業務及び着陸誘導管制業務に係るもの」、また同施行規則第242条の2において「国土交通大臣の権限で次に掲げるものは、航空交通管制部長に行なわせる」として、同条第6号において「法第96条第1項の規定による指示及び同条第3項の規定による連絡に関する業務で進入管制業務に係るもの」の規定により国土交通大臣の権限を地方航空局長並びに航空交通管制部長に職権を委任している。
更に、地方航空局組織規則第55条第1項には「管制部に、航空管制官(…)を置く」とし、同条第2項は「航空管制官は、次に掲げる事務をつかさどる」と規定してあり、具体的には、
- 第1号 飛行場管制業務及びターミナル・レーダー管制業務に関すること
- 第2号 航空法第95条ただし書の規定による許可に関すること
- 第3号 航空路管制業務を行なう機関と航空機との航空交通管制及び航空機の位置情報に関する連絡に関すること(航空路管制業務を行なう機関又は航空機からの要請により行なうものに限る)
- 第4号 進入管制業務に関すること(航空交通管制部長が空港事務所長に委任した場合に限る)
- 第5号 航空路管制業務に関すること(航空交通管制部長が空港事務所長に委任した場合に限る)
という規定により、条文上初めて「航空管制官」と航空管制官が行なうべき具体的所掌事務が規定されている(航空路管制業務については、「航空交通管制部組織規則」第7条を参照)。 航空自衛隊、海上自衛隊、陸上自衛隊が行う航空管制業務は、航空法第137条の規定に基づいて国土交通大臣から防衛大臣に職権の委任が行われているものである。
外国
日本では航空管制業務は国家公務員により提供されているが、多くの国家では航空管制業務が民営化もしくは国有企業により提供されている[2]。
また、ヨーロッパにおいては、41箇国が参加するユーロコントロールにおいて全ヨーロッパの航空交通管制の管理と計画を行っている。政府機関、航法サービス提供組織、民間航空会社、軍、空港、その他の組織と協力して活動している。[3]
アメリカ合衆国のビジネスインサイダー誌によると、航空管制官の仕事は、最もストレスの高い職業のひとつであるという[4]。
管制官を扱った作品
- 映画
- 「グランドコントロール 乱気流」(1998年) 主演 キーファー・サザーランド
- 「キーファー・サザーランド IN エアポート24時」(上記作品の新DVDタイトル)
- 「狂っちゃいないぜ」(1999年) 主演 ジョン・キューザック
- 「ユナイテッド93」(2006年) 当時実際に勤務していた管制官が本人役として出演
- 「ハッピーフライト」(2008年)
- 「グランドコントロール 乱気流」(1998年) 主演 キーファー・サザーランド
- ドラマ
- 「TOKYO コントロール」東京航空交通管制部を舞台にした連続ドラマ。航空路管制業務・進入管制業務が主題。
- 「TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜」羽田空港管制部を舞台にした連続ドラマ 上記作品の続編で、こちらは飛行場管制業務・ターミナルレーダー管制業務が主題。
- ドキュメンタリー
- 「プロフェッショナル 仕事の流儀 第110回 空を守る、不動の男 航空管制官・堀井不二夫」(2009年 NHK)
- 「FLY! FLY! FLY!」航空業界を扱ったドキュメンタリー。管制についての作品あり。
- ゲームソフト
- パソコンゲーム
- 「コントローラー」CSK、1984年、PC-8800シリーズ。
脚注
注釈
- ^ 航空管制官が配置されている空港は全国32空港であり、すべての空港に配置されているわけではない
- ^ 航空保安大学校学生採用試験のうち、航空管制科の試験は平成20年度を最後に廃止。よって平成21年度より航空管制官への進路は、航空管制官採用試験のみとなっている[1]。
- ^ 例えば採用後、福岡航空交通管制部に配属された場合、航空路管制業務と福岡航空交通管制部での限定資格を取得する。その後、成田国際空港に転勤した場合、新たに飛行場管制業務の資格と成田国際空港の資格を取得する必要がある。さらにその後、大阪国際空港に転勤した場合、既に飛行場管制業務は保持しているが、新たに大阪国際空港の限定資格を取得する必要がある。
出典
関連項目
- 航空管制技術官
- 航空管制運航情報官
- 航空保安大学校
- 航空交通管制
- 航空無線通信士
- 飛行情報区
- 成田空港管制塔占拠事件 - 勤務中の航空管制官が襲撃に遭い、警視庁のヘリコプターで救出された。
- 日本航空機駿河湾上空ニアミス事故
- リー・ハーヴェイ・オズワルド - 厚木海軍飛行場で航空管制官として勤務していた。
外部リンク
- 航空管制官公式サイト - 国土交通省航空局
- 航空保安大学校
- 航空管制官の1日 - 航空自衛隊静浜基地