「新居関所」の版間の差分

履歴の双方向閲覧

← 古い編集新しい編集 →

削除された内容追加された内容

ビジュアルウィキテキスト

インライン

2016年11月29日 (火) 00:38時点における版

主要カテゴリ > 技術・社会・歴史 > 交通 > テーマ史・技術史・交通史 > 各国の交通史 > 日本の交通史 > 街道 > 関所 > 新居関所

新居関所

新居関所（あらいせきしょ）は正式名称が「今切関所」、江戸時代の東海道の関所である。現在、静岡県湖西市新居町新居に相当する。

概要

新居関所は、「今切関所」が正式名称である。五街道のなかでも最も往来の多かった東海道に設けられ、舞坂宿（静岡県浜松市西区）と新居宿（静岡県湖西市）の間にある。浜名湖西岸の今切口に面した標高約2mの低地に立地し^{[注釈 1]}、新居宿（正式名称は「荒井宿」）に隣接し、浜名湖口に面していた。現在の静岡県湖西市新居町新居に相当する。

主要街道の関所建物は、唯一現存する建物である^{[注釈 2]}。

現在、浜名湖の埋立てのため、新居関所及び今切口周辺の地形が当時とは大きく変化している^{[注釈 3]}。新居関所は、「新居関跡（あらいのせきあと）」として、1921年（大正10年）に史跡に指定、1955年（昭和30年）に国の特別史跡に指定された。隣接地に新居関所史料館がある。

背景と地名

新居の地名の由来は、「明応7年8月の地震津波以前の湖口」の絵図によると、阿礼の崎（あれのみさき）に荒井の集落があり、舞坂は当時前沢と呼ばれていた^[1]。

浜名川の浜名橋に橋本があり、東海道が交差した港湾都市であった。鎌倉時代には東海道の要衝として宿が置かれ、応永9年（1402年）には足利義満により橋本、天龍、大井、富士河、木瀬河は、今川泰範を「奉行職」として管理されていた^[2]。

明応7年（1498年）8月25日^{[注釈 5]}に、明応地震が起こり、遠州灘沿岸は津波に襲われた。津波により浜名湖開口部が沈下し、今切口が決壊して、湖に海水が流入し、浜名湖は塩水湖となった^[4]。また、明応地震により橋本は壊滅し、住民は今切・新居地区（荒井）に移転した^[5]。

また、翌明応8年（1499年）6月10日の暴風雨・大洪水によって湖口は破壊の度合いを増した。『遠江国風土記伝』など、浜名湖周辺における津波を記した史料は、何れも津波の日付を「明応八年六月十日」としている^[6]。さらに『岳南史』など、永正7年（1510年）8月27日に遠江国を海嘯が襲い、今切はこの時に生じたとする史料も存在する^[7]。

そのため、浜名湖の今切口を通過するための舞坂ー新居間を結ぶ渡船の今切の渡しが置かれた^[8]。

沿革

関所の設置と管理

新居関所の創設は、慶長5年（1600年）と伝えられる^{[注釈 6]}。新居関所は江戸幕府設置から慶長6年（1601年）以前に設置した^[9]。新居付近は幕領となり、新居（今切）関所は、幕府から派遣された新居奉行が管理した^[10]。元禄15年（1702年）、三河吉田藩（愛知県豊橋市）の藩主久世重之が自預五万石の内五千石を幕領であった新居付近と交換し関所の管理が命ぜられ、以後今切関所は幕府直轄から吉田城主に移った^[11]。

高潮・地震の被害と関所の移転

→「新居宿」も参照

新居関所は、現在よりも東の向島の地に建てられたが、元禄12年（1699年）に高潮被害のため西に移転した^[12]、^{[注釈 7]}。そのため、浜名湖を通過するための舞坂ー新居間を結ぶ今切の渡船は、約4㎞近い長い航路となっていた^[14]。

宝永4年（1707年）には宝永地震があり、静岡県西部の被害は大きく新居関所や白須賀宿、袋井宿、掛川宿、島田宿、浜松宿などで倒壊と津波の被害をうけた^{[注釈 8]}。新居では、宝永地震の被害は戸数665軒の、120軒流失し、1丈程（3m）の津波が3回あり、「関所跡かたなし」との記事が残っている^[16]。

新居関所の津波による被害は『関守富永某手記』によると、「御関所潰れ津浪来ること丈計り」との記録が残されている。地震・津波のため新居関所は建物が全壊し流されたため、翌宝永5年（1708年）に更に西の現在地に移転した^[17]。新居関所の更なる移転により今切の渡しの航路がさらに長くなり不便になった^[18]。新居関所は移転後も浜名湖の湖口に面し、船着場も併設されていた。

宝永地震（宝永4年（1707年））による新居の被害
地名	死者	家屋倒壊数	土蔵	推定震度	津波の波高	その他
静岡県^{[注釈 9]}	死亡者121、負傷18		全壊106、半壊・破損208、流出116			破堤73,264間、田畑25,348石、橋64、船舶382
新居	溺死者24人^[19]	850のうち半壊502、流出241^[19]^{[注釈 10]}、		6-7^[16]	3～5m^[16]	船舶90流出、船199破損^[19]
新居	溺死者24人^[19]	850のうち半壊502、流出241^[19]^{[注釈 10]}、		6-7^[16]	3～5m^[16]	今切湊は関所が潰れ、3度の津波のため4-5日の渡航ができなかった^[19]。

今切口の被害と本坂通への回避

→「気賀関所」および「本坂通」も参照

元禄12年（1699年）に高潮の被害、宝永4年（1707年）宝永地震・津波による静岡県西部の今切関所や白須賀宿、袋井宿、掛川宿、島田宿、浜松宿などで被害は大きかった^[20]。今切口の復興と今切関所の流出と移転によって、舞坂宿と荒井宿を結ぶ航路であった今切の渡しが27丁（2.9㎞）から1里（約4km）の延長により渡航が不便になったため、東海道の利用を避け本坂道に回避した^[21]。

宝永地震から1年以上経過した後も、東海道に利用者はもどらず復興もままならないことから、宝永6年3月（1709年）に浜松宿を始め、舞阪・新居・白須賀・二川・吉田の6宿は、公的旅行では東海道を利用するよう嘆願書が出された。10年後の享保2年（1717年）11月になり、本坂道の通行差留となった^[22]。その後、明和元年（1769年）に、幕府は本坂道を道中奉行の管轄とし、東海道の一定の大通行に耐えうる付属街道に位置づけた^[23]

安政元年（1854年）11月4日には安政東海地震があり、新居・舞坂は津波による被害をうけた。新居は関所が大破し、付近の家屋は10軒全壊し、31軒を半壊・破損し、溺死者14人出した^[24]。新居関所は翌安政2年（1855年）12月に改築された。

新居関所の検閲

近世関所には、「入鉄砲に出女」を改める意図のもとに設置された^[25]。

新居関所の規定や検閲は、寛文7年（1667年）、『今切御関所改次第』の「女丼鉄砲を第一改可申侯」によると検閲を14条の大綱にて、番人の勤仕法や夜間通行・廻船の検閲などが示され、東海道の通行だけでなく、今切港の検閲もした^[26]。長持（近世の収納箱・木箱）も検閲の対象とし、関東方面への通過・関西方面への通過に対し婦女子・手負人・死骸等の手形を調査した^[27]。

「入鉄砲出女」では、近世の関所に共通として女人の通過が検閲の対象であった。しかし武器・武具搬送の検閲については、無条件で通過が許可される関所もあったが、鉄砲証文で高札が掲げられていたのは新居関所だけであった^[28]。

「入り鉄炮」の通関に老中証文が必要であった^[29]。東海道に設置された今切関所では、寛文7年5月の関所高札、正徳元年5月の高札で鉄炮を関所で改める方針が示され、江戸へ入る下りの鉄炮は老中証文が必要とした。しかし、江戸から出る鉄炮は改めなかった^[30]。

新居関所の建物

新居関所の建物は、宝永4年（1707年）の宝永地震の被害による移転され、安政元年（1854年）の安政東海地震の被害により、翌安政2年（1855年）12月の改築になる関所建物が現存している。母屋は南に正面を向いた平屋建てで、構造は入母屋造、屋根は本瓦葺である。形状は東西に長く、前面が「上之間」「中之間」「次之間」に分かれ、奥には「御書院間」「御用達場」「上番勝手台所」があった。さらに、「下番勝手同休息所」として桟瓦葺の3棟が取り付いていた。

今日では「御用達場」と「上番勝手台所」の棟は失われており、それ以外にも部分的な改変の跡が確認されている。

関所廃止以降

建物の利用

新居関所は、明治2年1月20日（1869年 3月2日）の関所廃止令で廃止されたが、その中心をなす面番所の建物は、小学校の校舎、また役場庁舎として1951年（昭和26年）まで現役として地域で使用されつづけてきた^{[注釈 11]}。箱根関所や小仏関所などでは建物が失われており、主要街道の関所建物としては、唯一の遺存例としてきわめて重要である^{[注釈 12]}。

史跡指定と保存活動

1921年（大正10年）3月3日、江戸時代の交通政策を考慮していくうえでも重要な遺跡であるとして、「新居関跡」（あらいのせきあと）の名称で国の史跡に指定され、1955年（昭和30年）8月22日には特別史跡の指定を受けた。

1971年（昭和46年）には、建物が解体修理されたのち、新居関所の当時をしのぶ遺構として保存されている。

1998年（平成10年）12月、関所建物の西側にあった「船会所」「女改め長屋」「大門」のあった箇所、および東側「船着場」の一帯が一括して追加指定を受けており、史跡のトータルな保存と活用がめざされている^{[注釈 13]}。

2002年（平成14年）、古絵図・発掘調査に基づき渡船場の一部を復元・護岸整備が行われた。

2014年（平成26年）10月6日、発掘調査によって大御門や土塁の遺構が出土した桝形広場が、特別史跡に追加指定された^[31] ^{[注釈 14]}。

特別史跡「新居関跡」ギャラリー

新居関跡入口
新居関跡（1）
新居関跡（2）
新居関跡（3）
新居関跡・内部の様子
新居関所史料館

略年表

慶長5年（1600年）今切口（浜名湖の太平洋への開口部）近くに設置。
寛文7年（1667年）　『今切御関所改次第』の「女丼鉄砲を第一改可申侯」により検閲の14条大綱の指定。
元禄12年（1699年）　高潮被害のため西へ移転。
元禄15年（1702年）　今切関所の管理が新居奉行（幕府直轄）から吉田城主に委託。
宝永4年（1707年）宝永地震により建物が全壊。翌年、西の現在地に移転。
嘉永7年（1854年）安政東海地震により大破、翌年改築される。これが現存の建物である。
明治2年（1869年）関所、廃止される。

隣の宿

東海道: 舞阪宿 -　今切関所（新居関所）　- 新居宿

脚注

注釈

[脚注の使い方]

^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ 矢田俊文(2005)の図2を基に作成。
^ 公家飛鳥井雅康の和歌集体の紀行文『富士歴覧記』は明応8年としている。多くの史料を検証した結果では明応地震発生の日付は、明応7年8月25日とされている^[3]
^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ 渡辺によると、元禄14年（1701年）に移転したとある^[13]
^ 原文では横須賀宿とあったが、宝永地震の被害を受けた静岡県西部の宿場町は白須賀宿であるため修正。^[15]
^ 静岡県のデータは、内閣府(2014)『1707　宝永地震　報告書』表2-1に拠る。
^ 羽鳥(2014)によると、戸数665のうち流出120という。^[16]
^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。
^ “新居関所”. 湖西市観光振興協議会. 2016/11/１閲覧。
^ “新居関所”. 湖西市観光振興協議会. 2016/11/１閲覧。

出典

^ 都司（1979年a）18頁。
^ 矢田（2005）、10頁。
^ 都司（1979年a）19頁。
^ 都司（1979年a）19頁。
^ 矢田（2005）、11頁。
^ 都司（1979b）,pp67-70.
^ 都司（1979b）, pp73-82.
^ 都司（1979a）、15頁。
^ 渡辺（1971）、18頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 松浦（2014）、25頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 松浦（2014）、25頁。
^ 松浦（2014）、25頁。
^ ^a ^b ^c ^d 羽鳥（2014）、35頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 松浦（2014）、25頁。
^ ^a ^b ^c ^d 飯田（1982）、152頁。
^ 松浦(2014)、25頁。
^ 都司(1979a)、16頁。
^ 松浦(2014)、25頁。
^ 渡辺(2012)、21頁。
^ 都司（1979a）、15頁.
^ 金井（2000）、58頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 渡辺（1971）、22頁。
^ 渡辺（1971）、23頁。
^ 金井（2000）、58頁。
^ 金井（2000）、59頁。
^ 平成26年10月6日文部科学省告示第139号

参考文献

和書

飯田汲事「歴史地震の研究 (5) 宝永 4 年 10 月 4 日(1707 年 10 月 28 日)の地震及び津波災害について」『愛知工業大学研究報告』第17号B、愛知工業大学、1982年、143-157頁。

金井達雄「鉄砲証文-老中裏印証文及び留守居断状の存在と役割: 房川渡中田 (栗橋) 関所を事例として」、『駒澤史学』第56巻、駒澤大学、2000年、 58-87頁。
都司嘉宣(1979a)「浜名湖今切口の変遷」.『防災科学技術』 35、15-20頁.
都司嘉宣(1979b), 東海地方地震津波史料（1・上巻）－静岡県・山梨県・長野県南部編 (PDF) , 科学技術庁, 国立防災科学技術センター
羽鳥徳太郎「第2章　宝永地震による被害とその後、第3節津波災害の概観」、『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書　 1707 宝永地震 』、内閣府(防災担当)、2014年、28-38頁。
松浦律子「第2章　宝永地震による被害とその後、第2節　各地の被害と救援や復興策」、『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書　 1707 宝永地震 』、内閣府(防災担当)、2014年、23-27頁。
矢田俊文「[講演記録] 1498 年明応東海地震の津波被害と中世安濃津の被災」、『歴史地震』第20号、歴史地震研究会、2005年、 9-12 頁。
渡辺和敏「近世関所の諸形態」『法政史学』第23巻、法政大学史学会、1971年、17-26頁。
渡辺和敏「江戸時代後期における三河・遠江間の内陸交通」『地域政策学ジャーナル』第1巻第1号、愛知大学地域政策学部　地域政策学センター、2012年、19-31頁。

ウェブ

“新居関所”. 湖西市観光振興協議会. 2016年11月1日閲覧。
“国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財”. 史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説. 文化庁. 2016年11月11日閲覧。
“ふじのくに静岡県公式ホームページ”. 新居関所現存する日本唯一の関所建物. 静岡県. 2016年11月13日閲覧。

外部リンク

国指定文化財等データベース - 文化庁ホームページ
新居関所現存する日本唯一の関所建物 - 静岡県ホームページ
新居関所/湖西市 - 湖西市ホームページです。
新居関所 - 株式会社エンターマテリアルホームページ

座標: 北緯34度41分41秒東経137度33分41秒 / 北緯34.694795度東経137.561366度 / 34.694795; 137.561366

この項目は、日本の歴史に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（P:日本/P:歴史/P:歴史学/PJ日本史）。

この項目は、古道に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（プロジェクト:古道/Portal:交通史）。

[1] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[2] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[3] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[4] 矢田俊文(2005)の図2を基に作成。

[8] 公家飛鳥井雅康の和歌集体の紀行文『富士歴覧記』は明応8年としている。多くの史料を検証した結果では明応地震発生の日付は、明応7年8月25日とされている^[3]

[14] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[20] 渡辺によると、元禄14年（1701年）に移転したとある^[13]

[23] 原文では横須賀宿とあったが、宝永地震の被害を受けた静岡県西部の宿場町は白須賀宿であるため修正。^[15]

[27] 静岡県のデータは、内閣府(2014)『1707　宝永地震　報告書』表2-1に拠る。

[29] 羽鳥(2014)によると、戸数665のうち流出120という。^[16]

[41] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[42] 国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。

[43] “新居関所”. 湖西市観光振興協議会. 2016/11/１閲覧。

[45] “新居関所”. 湖西市観光振興協議会. 2016/11/１閲覧。

[5] 都司（1979年a）18頁。

[6] 矢田（2005）、10頁。

[7] 都司（1979年a）19頁。

[9] 都司（1979年a）19頁。

[10] 矢田（2005）、11頁。

[Tsuji1979-11] 都司（1979b）,pp67-70.

[12] 都司（1979b）, pp73-82.

[13] 都司（1979a）、15頁。

[15] 渡辺（1971）、18頁。

[16] 渡辺（1971）、22頁。

[17] 渡辺（1971）、22頁。

[18] 松浦（2014）、25頁。

[19] 渡辺（1971）、22頁。

[21] 松浦（2014）、25頁。

[22] 松浦（2014）、25頁。

[:0-24] 羽鳥（2014）、35頁。

[25] 渡辺（1971）、22頁。

[26] 松浦（2014）、25頁。

[:3-28] 飯田（1982）、152頁。

[30] 松浦(2014)、25頁。

[31] 都司(1979a)、16頁。

[32] 松浦(2014)、25頁。

[33] 渡辺(2012)、21頁。

[34] 都司（1979a）、15頁.

[35] 金井（2000）、58頁。

[36] 渡辺（1971）、22頁。

[37] 渡辺（1971）、22頁。

[38] 渡辺（1971）、23頁。

[39] 金井（2000）、58頁。

[40] 金井（2000）、59頁。

[44] 平成26年10月6日文部科学省告示第139号

[注釈 1]

[注釈 2]

[注釈 3]

[注釈 4]

[1]

[2]

[注釈 5]

[4]

[5]

[6]

[7]

[8]

[注釈 6]

[9]

[10]

[11]

[12]

[注釈 7]

[14]

[注釈 8]

[16]

[17]

[18]

[注釈 9]

[19]

[注釈 10]

[20]

[21]

[22]

[23]

[24]

[25]

[26]

[27]

[28]

[29]

[30]

[注釈 11]

[注釈 12]

[注釈 13]

[31]

[注釈 14]

[3]

[13]

[15]

@@ 1行目: / 1行目: @@
+{{Pathnav|主要カテゴリ|[[:Category:技術|技術]]・[[:Category:社会|社会]]・[[:Category:歴史|歴史]]|交通|[[:Category:テーマ史|テーマ史]]・[[:Category:技術史|技術史]]・[[:Category:交通史|交通史]]|[[:Category:各国の交通史|各国の交通史]]|[[:Category:日本の交通史|日本の交通史]]|[[:Category:街道|街道]]|[[:Category:関所|関所]]|frame=1}}
-{{mapplot|137.5610|34.6946|新居関跡}}
+[[Image:Arai (5759536868).jpg|thumb|right|250px|[[歌川広重]]「東海道五十三次・荒井（新居）」]]
-[[画像:Araisekisho.JPG|thumb|240px|right|新居関所（2006年12月撮影）]]
+{{mapplot|137.5610|34.6946|新居関所}}'''新居関所'''（あらいせきしょ）は正式名称が「'''今切関所」'''、[[江戸時代]]の[[東海道]]の[[関所]]である。現在、[[静岡県]][[湖西市]][[新居町]]新居に相当する。
-[[画像:Arai_no_Seki_interior_01.JPG|thumb|240px|right|内部の様子]]
-'''新居関所'''（あらいせきしょ）旧名「荒井」は、[[静岡県]][[湖西市]]旧[[新居町]]に所在する[[江戸時代]]の[[東海道]]の[[関所]]。[[浜名湖]]西岸の標高約2mの低地に立地し、主要街道の関所建物としては、現存する唯一の建物である。正式名称は'''今切関所'''。
-[[久世重之]]が[[三河吉田藩]]（[[愛知県]][[豊橋市]]）の藩主を務めた[[元禄]]・[[宝永]]年間（[[1697年]]～[[1705年]]）に同藩の管轄下に入り、宝永4年（[[1707年]]）の[[地震]]・[[津波]]後には現在地に移転して、[[明治維新]]をむかえた。国の[[史跡#特別史跡|特別史跡]]に指定されている。隣接地に新居関所史料館がある。
 == 概要 ==
-新居関所は、[[五街道]]のなかでも最も往来の多かった東海道に設けられ、[[舞坂宿]]（静岡県[[浜松市]][[西区 (浜松市)|西区]]）と[[新居宿]]（静岡県湖西市）の間に位置していた。
+新居関所は、「今切関所」が正式名称である。[[五街道]]のなかでも最も往来の多かった東海道に設けられ、[[舞坂宿]]（静岡県[[浜松市]][[西区 (浜松市)|西区]]）と[[新居宿]]（静岡県湖西市）の間にある。[[浜名湖]]西岸の今切口に面した標高約2mの低地に立地し{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}、新居宿（正式名称は「荒井宿」）に隣接し、浜名湖口に面していた。現在の静岡県湖西市新居町新居に相当する。
-尚、読み方は同一であるが、旧来の地名が「荒井」で、現在の地名が「新居」である。明治期以降に字体が改められた。
+主要街道の関所建物は、唯一現存する建物である{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}。
-関所の創設は、[[慶長]]5年（[[1600年]]）と伝えられる。当初は現在よりも東の向島の地に建てられたが、元禄年間に[[津波]]のため移転、さらに宝永4年の大地震・大津波（[[宝永地震]]）のため建物が全壊し、翌宝永5年（[[1708年]]）に現在地に移転したものである。移転後も浜名湖の湖口に面し、船着場も併設されていたが、今日では浜名湖の埋立てのため、当時とは周辺地形が大きく変化している。
+現在、浜名湖の埋立てのため、新居関所及び今切口周辺の地形が当時とは大きく変化している{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}。新居関所は、「新居関跡（あらいのせきあと）」として、[[1921年]]（[[大正]]10年）に史跡に指定、[[1955年]]（昭和30年）に国の[[史跡#特別史跡|特別史跡]]に指定された。隣接地に新居関所史料館がある。
-[[安政東海地震]]翌年の[[安政]]2年（[[1855年]]）12月の改築になる関所建物が現存している。[[母屋]]は南に正面を向いた平屋建てで、構造は[[入母屋造]]、[[屋根]]は[[瓦葺|本瓦葺]]である。形状は東西に長く、前面が「上之間」「中之間」「次之間」に分かれ、奥には「御書院間」「御用達場」「上番勝手台所」があった。さらに、「下番勝手同休息所」として桟瓦葺の3棟が取り付いていた。
+== 背景と地名 ==
+[[File:明応地震前の浜名湖図(lake of Hamanako was damaged by tsunami in Meiou - Toukai earthquake in 1498.).png|thumb|right|250px|明応地震により消滅した浜名湖の陸地{{Refnest|group="注釈"|矢田俊文(2005)の図2を基に作成。}}]]新居の地名の由来は、「明応7年8月の地震津波以前の湖口」の絵図によると、阿礼の崎（あれのみさき）に荒井の集落があり、舞坂は当時前沢と呼ばれていた<ref>都司（1979年a）18頁。</ref>。
+浜名川の浜名橋に橋本があり、東海道が交差した港湾都市であった。鎌倉時代には東海道の要衝として宿が置かれ、[[応永]]9年（1402年）には[[足利義満]]により橋本、天龍、大井、富士河、木瀬河は、[[今川泰範]]を「奉行職」として管理されていた<ref>矢田（2005）、10頁。</ref>。
+[[明応]]7年（1498年）8月25日{{Refnest|group="注釈"|公家飛鳥井雅康の和歌集体の紀行文『富士歴覧記』は明応8年としている。多くの史料を検証した結果では明応地震発生の日付は、明応7年8月25日とされている<ref>都司（1979年a）19頁。</ref>}}に、[[明応地震]]が起こり、遠州灘沿岸は津波に襲われた。津波により浜名湖開口部が沈下し、今切口が決壊して、湖に海水が流入し、浜名湖は塩水湖となった<ref>都司（1979年a）19頁。</ref>。また、明応地震により橋本は壊滅し、住民は今切・新居地区（荒井）に移転した<ref>矢田（2005）、11頁。</ref>。
+また、翌明応8年（1499年）6月10日の暴風雨・大洪水によって湖口は破壊の度合いを増した。『遠江国風土記伝』など、浜名湖周辺における津波を記した史料は、何れも津波の日付を「明応八年六月十日」としている<ref name="Tsuji1979">都司（1979b）,pp67-70.</ref>。さらに『岳南史』など、永正7年（1510年）8月27日に遠江国を海嘯が襲い、今切はこの時に生じたとする史料も存在する<ref>都司（1979b）, pp73-82.</ref>。
+そのため、[[浜名湖]]の今切口を通過するための[[舞阪宿|舞坂]]ー[[新居宿|新居]]間を結ぶ渡船の今切の渡しが置かれた<ref>都司（1979a）、15頁。</ref>。
+== 沿革 ==
+=== 関所の設置と管理 ===
+新居関所の創設は、[[慶長]]5年（[[1600年]]）と伝えられる{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}。新居関所は江戸幕府設置から慶長6年（[[1601年]]）以前に設置した<ref>渡辺（1971）、18頁。</ref>。新居付近は[[天領|幕領]]となり、新居（今切）関所は、幕府から派遣された新居奉行が管理した<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>。[[元禄]]15年（[[1702年]]）、[[三河吉田藩]]（[[愛知県]][[豊橋市]]）の藩主[[久世重之]]が自預五万石の内五千石を幕領であった新居付近と交換し関所の管理が命ぜられ、以後今切関所は幕府直轄から[[吉田城 (三河国)|吉田城]]主に移った<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>。
+=== 高潮・地震の被害と関所の移転 ===
+{{See also|新居宿}}
+新居関所は、現在よりも東の向島の地に建てられたが、元禄12年（1699年）に[[高潮]]被害のため西に移転した<ref>松浦（2014）、25頁。</ref>、{{refnest|group=注釈|渡辺によると、元禄14年（[[1701年]]）に移転したとある<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>}}。そのため、[[浜名湖]]を通過するための[[舞阪宿|舞坂]]ー[[新居宿|新居]]間を結ぶ今切の渡船は、約4㎞近い長い航路となっていた<ref>松浦（2014）、25頁。</ref>。
+[[宝永]]4年（[[1707年]]）には[[宝永地震]]があり、静岡県西部の被害は大きく新居関所や[[白須賀宿]]、[[袋井宿]]、[[掛川宿]]、[[島田宿]]、[[浜松宿]]などで倒壊と[[津波]]の被害をうけた{{Refnest|group="注釈"|原文では横須賀宿とあったが、宝永地震の被害を受けた静岡県西部の宿場町は白須賀宿であるため修正。<ref>松浦（2014）、25頁。</ref>}}。新居では、宝永地震の被害は戸数665軒の、120軒流失し、1丈程（3m）の津波が3回あり、「関所跡かたなし」との記事が残っている<ref name=":0">羽鳥（2014）、35頁。</ref>。
+新居関所の津波による被害は『関守富永某手記』によると、「御関所潰れ津浪来ること丈計り」との記録が残されている。[[地震]]・津波のため新居関所は建物が全壊し流されたため、翌宝永5年（[[1708年]]）に更に西の現在地に移転した<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>。新居関所の更なる移転により今切の渡しの航路がさらに長くなり不便になった<ref>松浦（2014）、25頁。</ref>。新居関所は移転後も浜名湖の湖口に面し、船着場も併設されていた。
+{| class="wikitable sortable"
+|+宝永地震（宝永4年（1707年））による新居の被害
+!地名
+!死者
+!家屋倒壊数
+!土蔵
+!推定震度
+!津波の波高
+!その他
+|-
+|静岡県{{refnest|group="注釈"|静岡県のデータは、内閣府(2014)『1707　宝永地震　報告書』表2-1に拠る。|}}
+|死亡者121、負傷18
+|
+|全壊106、半壊・破損208、流出116
+|
+|
+|破堤73,264間、田畑25,348石、橋64、船舶382
+|-
+| rowspan="2" |新居
+| rowspan="2" |溺死者24人<ref name=":3">飯田（1982）、152頁。</ref>
+| rowspan="2" |850のうち半壊502、流出241<ref name=":3" />{{refnest|group ="注釈"|羽鳥(2014)によると、戸数665のうち流出120という。<ref name=":0" />}}、
+| rowspan="2" |
+| rowspan="2" |6-7<ref name=":0" />
+| rowspan="2" |3～5m<ref name=":0" />
+|船舶90流出、船199破損<ref name=":3" />
+|-
+|今切湊は関所が潰れ、3度の津波のため4-5日の渡航ができなかった<ref name=":3" />。
+|}
+=== 今切口の被害と本坂通への回避 ===
+[[File:本坂通と東海道.png|thumb|250px|right|新居関所と浜名湖周辺の東海道]]
+[[Image:GojūSanTsugi-MeishoZu'e, Arai by Hiroshige.jpg|thumb|right|250px|『五十三次名所図会　丗二　荒井』、渡舟着岸 御関所]]{{See also|気賀関所|本坂通}}
+元禄12年（1699年）に高潮の被害、宝永4年（1707年）宝永地震・津波による静岡県西部の今切関所や白須賀宿、袋井宿、掛川宿、島田宿、浜松宿などで被害は大きかった<ref>松浦(2014)、25頁。</ref>。今切口の復興と今切関所の流出と移転によって、舞坂宿と荒井宿を結ぶ航路であった[[渡し船#日本の例#現在も運航されている渡船#今切の渡し(静岡県湖西市)|今切の渡し]]が27丁（2.9㎞）から1里（約4km）の延長により渡航が不便になったため、東海道の利用を避け[[姫街道 (東海道)|本坂道]]に回避した<ref>都司(1979a)、16頁。</ref>。
+宝永地震から1年以上経過した後も、東海道に利用者はもどらず復興もままならないことから、宝永6年3月（1709年）に浜松宿を始め、舞阪・新居・白須賀・二川・吉田の6宿は、公的旅行では東海道を利用するよう嘆願書が出された。10年後の享保2年（1717年）11月になり、本坂道の通行差留となった<ref>松浦(2014)、25頁。</ref>。その後、明和元年（1769年）に、幕府は本坂道を道中奉行の管轄とし、東海道の一定の大通行に耐えうる付属街道に位置づけた<ref>渡辺(2012)、21頁。</ref>
+[[安政]]元年（[[1854年]]）11月4日には[[安政東海地震]]があり、新居・舞坂は津波による被害をうけた。新居は関所が大破し、付近の家屋は10軒全壊し、31軒を半壊・破損し、溺死者14人出した<ref>都司（1979a）、15頁.</ref>。新居関所は翌安政2年（1855年）12月に改築された。
+=== 新居関所の検閲 ===
+近世関所には、「[[入鉄砲に出女]]」を改める意図のもとに設置された<ref>金井（2000）、58頁。</ref>。
+新居関所の規定や検閲は、[[寛文]]7年（[[1667年]]）、『今切御関所改次第』の「女丼鉄砲を第一改可申侯」によると検閲を14条の大綱にて、番人の勤仕法や夜間通行・廻船の検閲などが示され、[[東海道]]の通行だけでなく、今切港の検閲もした<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>。[[長持]]（近世の収納箱・木箱）も検閲の対象とし、関東方面への通過・関西方面への通過に対し婦女子・手負人・死骸等の手形を調査した<ref>渡辺（1971）、22頁。</ref>。
+「[[入鉄炮出女|入鉄砲出女]]」では、近世の関所に共通として女人の通過が検閲の対象であった。しかし武器・武具搬送の検閲については、無条件で通過が許可される関所もあったが、鉄砲証文で[[高札]]が掲げられていたのは新居関所だけであった<ref>渡辺（1971）、23頁。</ref>。
+「入り鉄炮」の通関に老中証文が必要であった<ref>金井（2000）、58頁。</ref>。東海道に設置された今切関所では、寛文7年5月の関所高札、正徳元年5月の高札で鉄炮を関所で改める方針が示され、江戸へ入る下りの鉄炮は老中証文が必要とした。しかし、江戸から出る鉄炮は改めなかった<ref>金井（2000）、59頁。</ref>。
+=== 新居関所の建物 ===
+新居関所の建物は、宝永4年（1707年）の宝永地震の被害による移転され、安政元年（1854年）の安政東海地震の被害により、翌[[安政]]2年（[[1855年]]）12月の改築になる関所建物が現存している。[[母屋]]は南に正面を向いた平屋建てで、構造は[[入母屋造]]、[[屋根]]は[[瓦葺|本瓦葺]]である。形状は東西に長く、前面が「上之間」「中之間」「次之間」に分かれ、奥には「御書院間」「御用達場」「上番勝手台所」があった。さらに、「下番勝手同休息所」として桟瓦葺の3棟が取り付いていた。
 今日では「御用達場」と「上番勝手台所」の棟は失われており、それ以外にも部分的な改変の跡が確認されている。
 == 関所廃止以降 ==
+[[画像:Araisekisho.JPG|thumb|240px|right|新居関跡（2006年12月撮影）]]
+=== 建物の利用 ===
-新居関所は、[[明治]]2年[[1月20日 (旧暦)|1月20日]]（[[1869年]][[3月2日]]）の関所廃止令で廃止されたが、その中心をなす面番所の建物は、[[小学校]]の校舎、また[[役場]]庁舎として[[1951年]]（昭和26年）まで現役として地域で使用されつづけてきた。[[箱根関|箱根関所]]や[[小仏関所]]などでは建物が失われており、主要街道の関所建物としては、唯一の遺存例としてきわめて重要である。
+新居関所は、[[明治]]2年[[1月20日 (旧暦)|1月20日]]（[[1869年]][[3月2日]]）の関所廃止令で廃止されたが、その中心をなす面番所の建物は、[[小学校]]の校舎、また[[役場]]庁舎として[[1951年]]（昭和26年）まで現役として地域で使用されつづけてきた{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}。[[箱根関|箱根関所]]や[[小仏関所]]などでは建物が失われており、主要街道の関所建物としては、唯一の遺存例としてきわめて重要である{{refnest|group=注釈|国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財　史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説　文化庁　閲覧日2016年11月11日。|}}。
+=== 史跡指定と保存活動 ===
-[[1921年]]（[[大正]]10年）[[3月3日]]、江戸時代の交通政策を考慮していくうえでも重要な[[遺跡]]であるとして、「'''新居関跡'''」（あらいせきあと）の名称で国の[[史跡]]に指定され、[[1955年]]（昭和30年）[[8月22日]]には[[特別史跡]]の指定を受けた。
+[[1921年]]（[[大正]]10年）[[3月3日]]、江戸時代の交通政策を考慮していくうえでも重要な[[遺跡]]であるとして、「'''新居関跡'''」（あらいのせきあと）の名称で国の[[史跡]]に指定され、[[1955年]]（昭和30年）[[8月22日]]には[[特別史跡]]の指定を受けた。
 [[1971年]]（昭和46年）には、建物が解体修理されたのち、新居関所の当時をしのぶ[[遺構]]として保存されている。
-[[1998年]]（[[平成]]10年）12月、関所建物の西側にあった「船会所」「女改め長屋」「大門」のあった箇所、および東側「船着場」の一帯が一括して追加指定を受けており、史跡のトータルな保存と活用がめざされている。
+[[1998年]]（[[平成]]10年）12月、関所建物の西側にあった「船会所」「女改め長屋」「大門」のあった箇所、および東側「船着場」の一帯が一括して追加指定を受けており、史跡のトータルな保存と活用がめざされている{{refnest|group=注釈|{{Cite web|url=http://kosaicity.com/araiseki.html|title=新居関所|accessdate=2016/11/１|date=|work=|publisher=湖西市観光振興協議会}}|}}。
 [[2002年]]（平成14年）、古絵図・発掘調査に基づき渡船場の一部を復元・護岸整備が行われた。
-[[2014年]]（平成26年）[[10月6日]]、発掘調査によって大御門や土塁の遺構が出土した桝形広場が、特別史跡に追加指定された<ref>平成26年10月6日文部科学省告示第139号</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.woodc.co.jp/03_jisseki/03_12_araiseki_2.html|title=特別史跡新居関跡保存整備|work=有限会社ウッドサークルホームページ|date=|accessdate=2014/06/22}}</ref>。
+[[2014年]]（平成26年）[[10月6日]]、発掘調査によって大御門や土塁の遺構が出土した桝形広場が、特別史跡に追加指定された<ref>平成26年10月6日文部科学省告示第139号</ref>
+{{refnest|group=注釈|{{Cite web|url=http://kosaicity.com/araiseki.html|title=新居関所|accessdate=2016/11/１|date=|work=|publisher=湖西市観光振興協議会}}|}}。
+== 特別史跡「新居関跡」ギャラリー ==
-== 沿革 ==
+<gallery caption>
+File:Entrance to Arai no Seki.JPG|新居関跡 入口
+File:Arai Checking Station.JPG|新居関跡（1）
+File:Arai no Seki 02.JPG|新居関跡（2）
+File:Arai no Seki 01.JPG|新居関跡（3）
+File:Arai_no_Seki_interior_01.JPG|新居関跡・内部の様子
+File:Araisekisho Historical Museum.JPG|新居関所史料館
+</gallery>
+== 略年表 ==
 *[[慶長]]5年（[[1600年]]）  今切口（[[浜名湖]]の[[太平洋]]への開口部）近くに設置。
-*[[宝永]]4年（[[1707年]]） [[宝永地震]]により全壊。翌年現在地に移転。
+*[[寛文]]7年（[[1667年]]）　『今切御関所改次第』の「女丼鉄砲を第一改可申侯」により検閲の14条大綱の指定。
+*元禄12年（1699年）　高潮被害のため西へ移転。
+*元禄15年（1702年）　今切関所の管理が新居奉行（幕府直轄）から吉田城主に委託。
+*[[宝永]]4年（[[1707年]]） [[宝永地震]]により建物が全壊。翌年、西の現在地に移転。
 *[[嘉永]]7年（[[1854年]]） [[安政東海地震]]により大破、翌年改築される。これが現存の建物である。
 *[[明治]]2年（[[1869年]]） 関所、廃止される。
+== 隣の宿 ==
+; 東海道
+: [[舞阪宿]] -　'''今切関所（新居関所）'''　- [[新居宿]]
 == 脚注 ==
+=== 注釈 ===
 {{脚注ヘルプ}}
-<references />
+<references group="注釈"/>
+=== 出典 ===
+{{Reflist|3}}
+== 参考文献 ==
+和書
+* 飯田汲事「歴史地震の研究 (5) 宝永 4 年 10 月 4 日(1707 年 10 月 28 日)の地震及び津波災害について」『愛知工業大学研究報告』第17号B、愛知工業大学、1982年、143-157頁。
+* 金井達雄「鉄砲証文-老中裏印証文及び留守居断状の存在と役割: 房川渡中田 (栗橋) 関所を事例として」、『駒澤史学』第56巻、駒澤大学、2000年、 58-87頁。
+* [[都司嘉宣]](1979a)「浜名湖今切口の変遷」.『防災科学技術』 35、15-20頁.
+* 都司嘉宣(1979b), {{PDFlink|[http://dil-opac.bosai.go.jp/publication/nied_tech_note/pdf/KJ-01_035.pdf 東海地方地震津波史料（1・上巻）－静岡県・山梨県・長野県南部編]}}, 科学技術庁, 国立防災科学技術センター
+* [[羽鳥徳太郎]] 「第2章　宝永地震による被害とその後、第3節 津波災害の概観」、『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書　 '''1707 宝永地震''' 』、内閣府(防災担当)、2014年、28-38頁。
+* 松浦律子「第2章　宝永地震による被害とその後、第2節　各地の被害と救援や復興策」、『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書　 '''1707 宝永地震''' 』、内閣府(防災担当)、2014年、23-27頁。
+* [[矢田俊文 (歴史学者)|矢田俊文]]「[講演記録] 1498 年明応東海地震の津波被害と中世安濃津の被災」、『歴史地震』第20号、歴史地震研究会、2005年、 9-12 頁。
+* {{Cite journal|和書|author=渡辺和敏|year=1971|title=近世関所の諸形態|journal=法政史学|volume=23|page=|pages=17-26|publisher=[[法政大学|法政大学史学会]]}}
+* {{Cite journal|和書|author=渡辺和敏|year=2012|title=江戸時代後期における三河・遠江間の内陸交通|journal=地域政策学ジャーナル|volume=第1巻第1号|page=|pages=19-31|publisher=[[愛知大学|愛知大学地域政策学部　地域政策学センター]]}}
+ウェブ
+* {{Cite web|url=http://kosaicity.com/araiseki.html|title=新居関所|accessdate=2016年11月1日|publisher=湖西市観光振興協議会}}
+* {{Cite web|url=http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/explanation.asp|title=国指定文化財等データベース・・・国宝、重要文化財|accessdate=2016年11月11日|work=史跡名勝天然記念物：新居関跡　詳細解説|publisher=文化庁}}
+* {{Cite web|url=https://www.pref.shizuoka.jp/j-no1/m_araiseki.html|title=ふじのくに静岡県公式ホームページ|accessdate=2016年11月13日|work=新居関所現存する日本唯一の関所建物|publisher=静岡県}}
 == 関連項目 ==
 {{Commonscat|Arai no Seki}}
+{{osm box|r|2642316809}}
 * [[中部の史跡一覧]]
 * [[新居奉行]]
+* [[東海道]]
+* [[宝永地震]]
+* [[安政東海地震]]
+* [[浜名湖]]
+* [[本坂道]]・[[姫街道 (東海道)|姫街道]]
 == 外部リンク ==
@@ 53行目: / 169行目: @@
 {{coord|34.694795|137.561366|region:JP-22_type:landmark|format=dms|display=title}}<!--座標出典：国指定文化財等データベース「>> 	新居関跡」-->
 {{DEFAULTSORT:あらいせきしよ}}
+{{東海道}}
+{{japanese-history-stub}}
+{{History of transportation-stub}}
+[[Category:東海道]]
 [[Category:特別史跡]]
 [[Category:静岡県にある国指定の史跡]]
@@ 60行目: / 180行目: @@
 [[Category:江戸時代]]
 [[Category:三河吉田藩]]
+[[Category:静岡県の交通史]]
-{{Japanese-history-stub}}

表話編歴東海道
（江戸：日本橋）品川川崎神奈川保土ヶ谷戸塚藤沢平塚大磯小田原箱根三島沼津原吉原蒲原由比興津江尻府中鞠子岡部藤枝島田金谷日坂掛川袋井見附浜松舞阪新居白須賀二川吉田御油赤坂藤川岡崎池鯉鮒鳴海宮桑名四日市石薬師庄野亀山関坂下土山水口石部草津大津（京：三条大橋）
関所	箱根関所今切関所（新居関所）
京街道	（京：三条大橋）伏見淀枚方守口（大坂：高麗橋）
脇街道	中原街道矢倉沢往還本坂通美濃路佐屋路
関連項目	五街道日光街道奥州街道中山道甲州街道東海道五十三次東海道新幹線東海道本線国道1号東名高速道路名神高速道路
カテゴリ