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'''ヘッジファンド'''({{lang-en|Hedge fund}})は、[[金融派生商品]]など複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとする[[代替投資]]の一つ<ref name="kotobank">{{cite web|url=https://kotobank.jp/word/ヘッジファンド-156505 |title=ヘッジファンド|publisher=コトバンク|accessdate=2017-04-08}}</ref>。[[投資信託]]そのもののみならず、[[投資信託]]を運用する基金や組織を指すこともある。ヘッジファンドも機関投資家の一種である<ref name="170405nikkei" />。 |
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{{出典の明記|date=2016年8月}}{{独自研究|date=2016年8月}} |
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'''ヘッジファンド'''({{lang-en|[[:en:Hedge fund|Hedge fund]]}})は、[[代替投資]]の一つ。[[機関投資家]]や富裕層の投資対象であり、下落相場などの市場環境に左右されず、絶対収益を狙う、[[私募]][[ファンド]]のこと。 |
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通常の投資信託がベンチマーク対比でのリターン(相対リターン)を目指すのに対して、ヘッジファンド(運用業者)は実際に資金がどれだけ増えたか(絶対リターン)を目指す。機関投資家によるヘッジファンドへの投資が拡大傾向にあり、国内残高2.2兆円、年間投資額2,794億円(金融庁/ファンドモニタリング調査2014)。成功したヘッジファンド・マネージャー(運用責任者)の年収は3500億円を超える<ref> [http://media.yucasee.jp/posts/index/14092 ヘッジファンド報酬ランキング、テッパー氏が2年連続3度目 ]</ref> |
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== ヘッジファンド需要の拡大 == |
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ヘッジファンドに対する投資家の需要は過去20年間(1990~2013)右肩上がりで、ヘッジファンドの運用残高は263兆円に達し<ref>Hedge fund reserch 2013 </ref>。その規模は、日本の資産運用市場全体と同規模である。世界の機関投資家がヘッジファンドへの投資を拡大する理由は、金融情勢が不透明になり、世界同時株安等で損失が出る可能性が意識される中、モダンポートフォリオ理論に則り、伝統的資産との相関が低いアセットクラスを組み入れることで、理論的にリスクを下げたいとの投資家の意向が高まるからである。日本の投資家によるヘッジファンドへの投資残高は2.2兆円(年間純増2,794億円)<ref>金融庁ファンドモニタリング調査2014</ref>と、世界におけるヘッジファンド投資の1/10の規模であり今後、日本でも金融理論が普及し金融リテラシーが高まるに伴い、世界水準に近づく形で日本の投資家のヘッジファンドへの投資が拡大することが予想する専門家もいる<ref> [https://hedgefund-direct.co.jp/column/ 初心者でも分かる「資産運用業界との付き合い方」とその未来(高岡壮一郎)] </ref>。個人投資家においてもヘッジファンドの需要が拡大しており、日本経済新聞において「代替投資を加えるとリスクが下がり、リターンが上がることも」とヘッジファンド投資が紹介されるようになっている<ref>日本経済新聞2015年10月14日</ref> |
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== 特徴 == |
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== ヘッジファンドの購入方法 == |
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ヘッジファンドの運用コストは高く、預かり残高の2%相当の手数料のほか、成功報酬として運用益の20%を追加で請求されることが一般的である<ref name="170405nikkei" />。2016年の運用成績の悪化により、一部では手数料を引き下げる動きがある<ref name="170405nikkei" />。 |
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公募によって一般から広く小口の資金を集めて大規模なファンドを形成することを目指す通常の[[投資信託]]とは異なり、世界のヘッジファンドは大部分が[[オフショア金融センター|オフショア]]籍であるため、日本の証券会社や銀行は販売できない。そのため、日本国内に居住する個人投資家がヘッジファンドを購入するには以下の3類型となる<ref>[https://books.google.co.jp/books?id=7WcuDNW-NUMC&pg=PR2&lpg=PR2&dq=%E5%B2%A9%E5%B4%8E%E5%8D%9A%E5%85%85%E3%80%8E%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%B5%B7%E5%A4%96%E8%B3%87%E7%94%A3%E9%81%8B%E7%94%A8%E8%A1%93%E3%80%8F%E7%BF%94%E6%B3%B3%E7%A4%BE&source=bl&ots=E_9opJSWmq&sig=OU9qVyqJQL9vCc4jhnQTbttlqFU&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwi4zrvMvrbOAhULpJQKHcMtB5sQ6AEIMjAE#v=onepage&q=%E5%B2%A9%E5%B4%8E%E5%8D%9A%E5%85%85%E3%80%8E%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%B5%B7%E5%A4%96%E8%B3%87%E7%94%A3%E9%81%8B%E7%94%A8%E8%A1%93%E3%80%8F%E7%BF%94%E6%B3%B3%E7%A4%BE&f=false 岩崎博充『日本人が知らなかった海外資産運用術』P133 翔泳社]</ref><ref>「世界の好成績ヘッジファンドにアクセスしたいなら」ダイヤモンドZAI 2012年4月号</ref>。 |
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# 海外のヘッジファンドを日本の投信形式に仕立てたものを、国内の証券会社で購入する方法。 |
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# プライベートバンク(外資系証券会社の日本支店での投資一任勘定の中で、株式や債券等に加えて、ヘッジファンドに投資することが可能。 |
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# 投資助言会社などのサポートを経て、海外のヘッジファンドに直接投資する方法。 |
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最低金額は数千万円からの投資金額が一般的だが、近年は小口化したヘッジファンドが[[投資信託]]で募集されるようになり、個人投資家も参入できる環境である<ref name="170403gentosha">{{cite web |author = 冨中則文 |url=http://gentosha-go.com/articles/-/8626|title=「絶対的リターン」を目指すヘッジファンド投資の概要|newspaper=[[幻冬舎]] ゴールドオンライン|date=2017-04-03 |accessdate=2017-04-09}}</ref>。また、投資対象は、株式等よりは[[商品先物取引|商品先物]]や[[金融先物取引|金融先物]]が多く、買いのみではなく売りの活用、レバレッジの活用など多くの手法を複雑に組み合わせて、市場の下落局面であっても損失を回避しプラスの収益(絶対的リターン)を目指す投資手法が特徴であるという<ref name="170403gentosha" />。 |
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最低投資単価は通常はUSD1M(約1億円)だが、500万円から投資できるヘッジファンドもある<ref>[https://hedgefund-direct.co.jp/qaa ヘッジファンドダイレクト]</ref>。一般の投資信託は、投資対象や投資手法などが規制され、情報の開示などが義務付けられているが、ヘッジファンドは一般的に私募による投資信託なので、同様の規制は受けず、自由な運用が可能となっている(当然、四半期や月次ベースでの投資家に対するリポーティングは行われる)<ref> |
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「40兆円の男たち ──神になった天才マネジャーたちの素顔と投資法」マニート・アフジャ</ref>。ヘッジファンドは、その投資戦略にもよるが、[[空売り]]を積極的に利用するものや、[[金融派生商品]]等のリスクの高い金融商品に投資するものも多い。公募の投資信託は、<!--機関投資家だけでなく-->投資に明るくない個人も投資するので、[[投資家]]保護のため、運用には様々な法規制がある(多くの国では[[空売り]]や[[金融派生商品]]への投資などに制限がかけられている)。このため、多くのヘッジファンドは、公募ではなく私募形式を採用している。 |
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なお、「絶対収益」や「絶対的リターン」を目指す投資手法という意味における、「絶対」という単語は、「絶対に儲かる」という意味ではなく<ref name="151204gentosha">{{cite web |author = 福田猛 |url=http://gentosha-go.com/articles/-/1305|title=「テーマ型」「絶対収益型」――2つの投資信託の特徴とは?|newspaper=[[幻冬舎]] ゴールドオンライン|date=2015-12-04 |accessdate=2017-04-09}}</ref>、単に、市場が不況である場合に利益が減る伝統的な投資手法(相対収益型)とは対称的に、好況でも不況でも、市況によらずにハイリスクをとって利益を目指すという意味における「絶対」である<ref name="151204gentosha" />。 |
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== 絶対的収益の追求 == |
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ほとんどのヘッジファンドは、絶対的収益の追求を目標としている。「絶対的収益の追求」とは、投資信託等の伝統的な運用形態のほとんどが、[[東証株価指数|TOPIX]]や[[S&P 500]]等の[[ベンチマーク]]を上回る運用成績を目標としていることに対する用語である。例えば、投資信託等の伝統的な運用形態では、不況期の下げ相場の環境では、伝統的資産運用の実績がマイナス20%でも、同じ期間のベンチマークのパフォーマンスがマイナス25%ならば、ベンチマークを5%だけアウトパフォームしたといい、マイナスの運用実績でも「良好」な運用成績とされる。こうした伝統的な運用形態のパフォーマンス計測に対し、ヘッジファンドは、[[不況]]などのどんな環境下でもプラスの運用実績を目指すことを究極的な目標としている。 |
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== 所在地 == |
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ヘッジファンドは、一部では[[ケイマン諸島]]や[[ヴァージン諸島|ブリティッシュバージン諸島]]などのいわゆる[[オフショア金融センター|オフショア]]地域に書類上の本籍を置く一方、運用担当者は[[東京]]、[[ニューヨーク]]、[[香港]]、[[ロンドン]]などの[[金融センター]]にいることがある(米国のヘッジファンドはニューヨーク近郊の[[コネチカット州]][[グリニッジ (コネチカット州)|グリニッジ]]にも相当の集積が見られる)。その理由としては、法規制が厳しくない地域での運用を求める場合もあるが、実際には海外の投資家向けにアクセスを提供することを目的としている場合が多い<ref>ヘッジファンドに限らず、一般の投資信託においても、オフショア地域にファンドの籍を置くことが多い。</ref>。海外の投資家の場合、オフショア以外の地域に籍をおくファンドでは、税務上不利となるからである。ファンド自体で課される[[税金]]に加え、投資家の居住国でも課税され、かつ控除が認められないことが多いので、[[二重課税]]となってしまう。ただし、アメリカのヘッジファンドの大半は、アメリカに籍を置き、アメリカで運用し、かつアメリカの投資家だけにアクセスを提供している。 |
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監督官庁に届け出る義務や規制がなく、投資対象や投資手法に規制や制限がかからない私募形式によるファンドに資金を集め、ハイリスク・ハイリターンを目指して運用されることが一般的である<ref name="kotobank" /><ref>「40兆円の男たち ──神になった天才マネジャーたちの素顔と投資法」マニート・アフジャ</ref>。 |
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== 機関投資家 == |
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ヘッジファンドへの投資家は、[[年金]]基金や退職金基金、[[銀行]]、[[投資顧問]]などの機関投資家が中心。ハーバード大学年金基金は、ポートフォリオの30%をヘッジファンドを含むオルタナティブ投資に振り分けている。 |
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日本の年金基金でもヘッジファンドをポートフォリオに組み込む動きを強まっている。 |
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45日前までに解約を通告しなければならないのが一般的であり、解約までの期間が伝統的な[[投資ファンド]]よりも長い<ref name="170403gentosha" />。 |
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他方で、ヘッジファンドのデューディリジェンスの能力を単独でもちうる年金基金はあまりないため、ゲートキーパーと呼ばれるヘッジファンド専門の投資顧問が運用するファンド・オブ・ヘッジファンズ (Fund of Hedge Funds、FoHF) への投資という形態をとっていることが多い。FoHFでは、一つのファンドに投資するだけで様々な運用戦略のヘッジファンドに分散投資する効果が得られる。さらに、有力FoHFの場合は、投資家層を非常に絞っており、投資が容易でない人気ファンドへのアクセスを売りにしている。つまり、単独では投資できないファンドに間接的に投資できるという効果もある。一方で、FoHFの投資先である個別ファンドとFoHFへ二重に信託報酬を支払うことにもなり、ヘッジファンドの平均リターンがようやくプラスという状況では、信託報酬の分だけ、最終投資家へのリターンが減少することになる。 |
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== 歴史と動向 == |
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アメリカの[[狂騒の20年代]]と呼ばれた[[1920年代]]において、資産家にのみ提供される投資商品が数多く存在した。そのうち現代でもっともよく知られているのが、[[ベンジャミン・グレアム]]とジェリー・ニューマン({{lang|en|Jerry Newman}})によるグレアム=ニューマン・パートナーシップであり、これは2006年の[[ウォーレン・バフェット]]による{{仮リンク|アメリカ金融博物館|en|Museum of American Finance}}への書簡で初期のヘッジファンドとして言及された<ref name="bloomberg.com">{{cite web|author=Chet Currier |url=https://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a1UhnH5DkE34 |title=Buffett Says Hedge Funds Are Older Than You Think: Chet Currier |publisher=Bloomberg |date=29 September 2006 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20131025132323/http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a1UhnH5DkE34|archivedate=2013-10-25 |accessdate=2017-04-09}}</ref>。 |
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一般の投資信託は空売りができないので、下げ相場では買持ちしている資産の価値が低下し、運用利回りがマイナスとなる場合が多い。空売りを積極的に利用できるヘッジファンドの場合は、上げ相場でも下げ相場でも利益を上げる機会があり、実際に下げ相場を得意とするヘッジファンドもある。 |
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ヘッジドファンド({{lang|en|Hedged fund}})という語は社会学者の{{仮リンク|アルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズ|en|Alfred Winslow Jones}}によってはじめて使われ<ref name="Ubide">{{cite news |title=Demystifying Hedge Funds |first=Angel |last=Ubide |url=http://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2006/06/basics.htm |magazine=Finance & Development |publisher=International Monetary Fund |date = June 2006|accessdate=2017-04-09}}</ref><ref name="Ineichen">{{cite book |title=Absolute Returns: the risks and opportunities of hedge fund investing |first=Alexander|last=Ineichen |year=2002 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn=0-471-25120-8 |pages=8–21}}</ref>、1949年に同氏によりはじめて設立されたと言われるが、異説もある<ref name="Anson">{{cite book |title=The Handbook of Alternative Assets |last=Anson |first=Mark J.P. |year=2006 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn= 0-471-98020-X |page=36}}</ref>。 |
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リスクヘッジのために開発された各種の[[金融派生商品]](デリバティブ)を駆使して[[投機]]的に高い運用利益を上げようとする投資手法をとる場合もある。デリバティブは原資産の将来の値動きに対するリスクヘッジ手段として開発されたものが多く、一般的なデリバティブ取引では、満期日における原資産の価格と、デリバティブ契約上の取決め価格との差額分だけを決済する。したがって、原資産取引でいう“元本”部分を準備する必要はなく、低額な証拠金(通常は原資産取引元本の3~10%程度)を準備するだけで、原資産取引と同規模の取引が可能となる。この場合、実際の投下資金に対しての運用利回りは、原資産取引の10~30倍程度になる([[レバレッジ]])。利益だけでなく損失も同様に10~30倍となり、ハイリスク・ハイリターンの取引となる。 |
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ジョーンズは自らのファンドが「ヘッジド」({{lang|en|Hedged}}、「リスク{{仮リンク|ヘッジ (金融)|en|Hedge (finance)|label=ヘッジ}}が行われた」の意)としたが、これは当時金融市場での変動による投資リスクの管理を指す用語として[[ウォール街]]でよく使われていた<ref name="Lhabitant">{{cite book |title=Handbook of Hedge Funds |last=Lhabitant |first=François-Serge |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-470-02663-4 |page=10}}</ref>。 |
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ただし、かつての[[ロングターム・キャピタル・マネジメント]] (LTCM) のように、デリバティブのレバレッジ特性を最大限に活用した超レバレッジ型のヘッジファンドは、もはや一般的ではない。大半のヘッジファンドでは、デリバティブを機動的なリスク管理や、高い流動性を維持しながらの現物資産への連動性確保などに使っている。これは、大半のヘッジファンドには主な取引執行相手となるプライムブローカーが存在し、そのプライムブローカー側がLTCMの崩壊後、ヘッジファンド側のレバレッジ上限を規制するなどのリスク管理を強化するようになったことにもよる。 |
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多くのヘッジファンドが{{仮リンク|1969年-1970年の不況|en|Recession of 1969–70}}と{{仮リンク|1973年-1974年の株価暴落|en|1973–74 stock market crash}}で大損を出して廃業に追い込まれたが、ヘッジファンド1980年代後期に再び脚光を浴びた<ref name="Ineichen" />。1990年代、ヘッジファンドの数が大幅に上昇したが、これは[[インターネット・バブル]]による株価上昇で増えた資金によって支えられ<ref name="Ubide" />、信託報酬が運用成績と連動したのと運用成績自体がよかったため多くの関心を集めた<ref>{{cite book |title=Hedge funds of funds investing: an investor's guide |last=Nicholas |first=Joseph G. |year=2004 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=1-57660-124-2 |page=11}}</ref>。実際この時期には年率20から30パーセントなど、高リターンを達成することも珍しくはなかった<ref name="170405nikkei" />。その後の10年間、クレジット・アービトラージ、ディストレスト証券戦略、債券アービトラージ、定量戦略などの新しい投資戦略、さらには複数の投資戦略を使うヘッジファンドが現れた<ref name="Ineichen" />。 |
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一見華々しく見えるが、その裏では熾烈な生き残りをかけた競争があり、米国の[[サブプライムローン]]問題に端を発した世界的な金融危機の影響によって、多くのヘッジファンドが資金難に陥っている。 |
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また、金融危機を招いた原因の一端もまたヘッジファンドであったことから、[[2009年]]3月の[[第2回20か国・地域首脳会合|G20サミット]]の結論によっては、ヘッジファンドの取引に厳しい制限が課せられることもありうる<!--どうなった?-->。 |
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21世紀のはじめ、ヘッジファンドは世界中で人気を集め、2008年にはヘッジファンドの{{仮リンク|運用資産|en|Assets under management}}総計が1.93兆[[アメリカ合衆国ドル|米ドル]]に上った<ref name="110119Reuters">{{cite news |title=Hedge fund industry assets swell to $1.92 trillion |first=Svea |last=Herbst-Bayliss |url=http://www.reuters.com/article/2011/01/19/us-hedgefunds-assets-idUSTRE70I6JY20110119 |work=Reuters |date=19 January 2011 |accessdate=2017-04-09}}</ref>。しかし、[[世界金融危機 (2007年-)|2008年の金融危機]]では多くのヘッジファンドが解約を制限した結果、その人気も運用資産も減退した<ref name="WSJ">Wall Street Journal 6 December 2010, Hedge-Fund Firms Woo the Little Guy, Jaime Levy Pessin</ref>。しかし、運用資産の総額は後に上昇に転じ、2011年4月には2兆米ドル近くになったと概算された<ref name="WSJ 2011">{{cite news |url=https://www.wsj.com/article/SB10001424052702304887904576399983107988642.html |title=Bridgewater Goes Large |last1=Corkery |first1=Michael |date=2011-06-22 |accessdate=2017-04-09}}</ref><ref>{{cite news |url=https://www.wsj.com/article/SB10001424052748704204604576269114056530484.html |title=Hedge Funds Bounce Back |last1=Strasberg |first1=Jenny |last2=Eder |first2=Steve |date=18 April 2011 |work=Wall Street Journal Online |accessdate=2017-04-09}}</ref>。また2011年2月時点ではヘッジファンドへの投資のうちの61パーセントは機関投資家によるものであり、2008年末時点の45パーセントと比べて大幅に上昇していた<ref name="Williamson">{{cite web |url=http://www.pionline.com/article/20110210/DAILYREG/110219980 |title=Institutional Share Growing For Hedge Funds |date=10 February 2011 |work=FINalternatives|publisher= |accessdate=2017-04-09}}</ref>。2011年6月時点で運用資産が最も大きいヘッジファンドは上から順に{{仮リンク|ブリッジウォーター・アソシエーツ|en|Bridgewater Associates}}(589億米ドル)、[[マン・グループ]](393億米ドル)、{{仮リンク|ポールソン・アンド・カンパニー|en|Paulson & Co.}}(352億米ドル)、{{仮リンク|ブレバン・ハワード|en|Brevan Howard}}(310億米ドル)、{{仮リンク|オク=ジフ・キャピタル・マネジメント|en|Och-Ziff Capital Management}}(294億米ドル)であった<ref>{{cite web|url=http://www.pionline.com/article/20110919/PRINTSUB/110919925 |title=Updated The biggest hedge funds – Pensions & Investments |publisher=Pionline.com |date= |accessdate=2017-04-09}}</ref>。このうち、1位のブリッジウォーター・アソシエーツは運用資産をさらに増やし、2012年3月1日時点で700億米ドルになった<ref>{{cite news |title=Dalio Earns $3.9bn to Top Hedge Fund Pay List |first=Dan |last=McCrum |url=http://www.cnbc.com/id/46901989/Dalio_Earns_3_9bn_to_Top_Hedge_Fund_Pay_List |newspaper=The Financial Times|date=30 March 2012 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130527033012/http://www.cnbc.com/id/46901989/Dalio_Earns_3_9bn_to_Top_Hedge_Fund_Pay_List|archivedate=2013-05-27|accessdate=2017-04-09}}</ref><ref>{{cite news |title=The 40 Highest-Earning Hedge Fund Managers |first=Nathan |last=Vardi |url=http://www.forbes.com/sites/nathanvardi/2012/03/01/the-40-highest-earning-hedge-fund-managers-3/2/ |work=Forbes |date=3 March 2012 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170405171342/https://www.forbes.com/sites/nathanvardi/2012/03/01/the-40-highest-earning-hedge-fund-managers-3/2/#38d6e2d54e14|archivedate=2017-04-05|accessdate=2017-04-09}}</ref>。2012年末時点ではアメリカの最大手ヘッジファンド会社241社の運用資産総計は1.335兆米ドルであった<ref>{{cite news |title=Billion dollar club |first=Amel |last=Robleh |url=https://www.hedgefundintelligence.com/Article/2988498/Billion-Dollar-Club.html?ArticleId=2988498 |work=Absolute Return |date=5 March 2012 |accessdate=2017-04-09}}</ref>。2012年4月、ヘッジファンドの運用資産総計が史上最高の2.13兆米ドルに上った<ref name="Chung">{{cite news |title=Hedge-Fund Assets Rise to Record Level |last=Chung |first=Juliet |url=https://www.wsj.com/article/SB10001424052702304331204577354043852093400.html?mod=googlenews_wsj |newspaper=The Wall Street Journal |date=19 April 2012 |accessdate=14 June 2012}}</ref>。 |
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レバレッジの下降と[[世界金融危機]]での苦悩は[[ミューチュアル・ファンド]]も味わった。ヘッジファンドは2003年にミューチュアル・ファンドと不正競争を摘発され、国家的スキャンダルに発展している。 |
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運用資産が増えた一方、ヘッジファンドの運用成績は2009年から2016年まで連続してS&P500指数(アメリカ)の騰落率にも及ばない成績を記録しており、2016年は再びヘッジファンド運用成績が8年ぶりに大きく悪化して大規模な資金流出が起こった<ref name="170405nikkei">{{cite news |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14964270V00C17A4EE9000/|title=ヘッジファンドに陰り、資金流出11カ月で6.7兆円|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2017-04-05 |accessdate=2017-04-08}}</ref>。2016年には、2008年の金融危機が起こったとき以上に多数のヘッジファンドが閉鎖している<ref name="170405nikkei" />。 |
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== 投資手法 == |
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ヘッジファンドの採用する投資戦略は多岐にわたる。よく知られるものとして、以下の戦略がある。 |
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2016年には大手投資家の引き上げが増加し、[[カルパース|カリフォルニア州職員退職年金基金]]もヘッジファンドから撤退している<ref name="170405nikkei" />。 |
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*ロング・ショート |
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*アービトラージ |
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*マーケット・タイミング |
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*レラティブ・バリュー |
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*イベント・ドリブン |
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*マーケット・ニュートラル |
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*グローバル・マクロ |
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[[日本経済新聞]]は、世界的な「カネ余り」で資産規模が膨れあがったために運用が困難となっているのに加え、英国による欧州連合(EU)離脱や米大統領選などの政治状況に市場が振り回されて2016年の運用成績が大幅下落したことを受け、ヘッジファンドの影響力が世界的に「徐々に縮小していく可能性」があると報じている<ref name="170405nikkei" />。また、大手投資家はヘッジファンドから資金を引き揚げ、より低コストな投資商品に資金が流出していると報じられている<ref name="170405nikkei" />。 |
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以下は、ヘッジファンドとしてではなく、代替投資の種類として語られることが多い。 |
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*マネージド・フューチャーズ |
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*プライベート・エクイティ |
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[[ブルームバーグ]]は、「ヘッジファンドが商品市場で危険地帯にいる5つの理由」として、「原油のポジション減少」、「株式の売り建玉」、「パラジウムのシグナル」、「金属価格のモメンタム」、「綿花の乖離(かいり)」をあげている<ref>{{cite news |url=https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-06/ONYVU56TTDS201|title=ヘッジファンドが商品市場で危険地帯にいる5つの理由|newspaper=[[ブルームバーグ]]|date=2017-04-06|accessdate=2017-04-08}}</ref>。 |
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=== [[:en:Long/short equity|ロング・ショート]] === |
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現在のヘッジファンドでもっとも運用残高の多い投資戦略である。 |
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== 投資戦略 == |
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ロング・ショートという名前からもわかるように、株式等の有価証券のロング(買い持ち)とショート(売り持ち)の双方のポジションを同時に取るものである。アナリストまたはファンドマネージャーが割安つまり過小評価されていると判断した銘柄については一般的な投資信託と同じく買い(ロング)のポジションを取り、逆に割高つまり過大評価されていると判断した銘柄については売り(ショート)のポジションを取る。 |
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=== グローバル・マクロ === |
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{{Main|{{仮リンク|グローバル・マクロ|en|Global macro}}}} |
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グローバル・マクロ戦略を採用するヘッジファンドは世界経済の動きを予想して株式、債券、または為替市場で大きな{{仮リンク|ポジション (金融)|en|Position (finance)|label=ポジション}}を取ることでリスク調整後リターンを得ようとする<ref name="Coggan" />。ファンド・マネージャーは世界経済の事象やトレンドに基づき[[マクロ経済学|マクロ経済]]を分析することで投資機会を見つけようとする。グローバル・マクロ戦略はレバレッジが使えるため柔軟な戦略ではあるが、高水準のリスク調整後リターンを得るためには戦略を実行する売買タイミングが大事である<ref name="Bartolo">{{cite web |url=http://www.cai.emory.edu/documents/HF_Strategies.pdf |title=Hedge Fund Strategies Guide |first=Michael |last=Bartolo |date=September 2008 |work=Goizueta Business School |publisher=Emory University |archiveurl=https://web.archive.org/web/20091128042720/http://cai.emory.edu/documents/HF_Strategies.pdf|archivedate=2009-11-28|accessdate=2017-04-13}}</ref>。グローバル・マクロ戦略はいわゆる相場志向型({{lang|en|Directional}})とされることが多い<ref name="Coggan">{{cite book |title=Guide to Hedge Funds |last=Coggan |first=Philip |year=2011 |publisher=The Economist Newspaper Ltd |edition=2nd}}</ref>。 |
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グローバル・マクロ戦略は裁量的({{lang|en|Discretionary}})と系統的({{lang|en|Systematic}})な手法に分けることができる。裁量的な手法では投資マネージャーが銘柄を選ぶ一方、{{仮リンク|系統的取引|en|Systematic trading}}は数学モデルによって決定され、[[ソフトウェア]]によって実行されるものであり、人間が介在するのはプログラミングとソフトウェアのアップデートのみに留まる。また{{仮リンク|トレンドフォロー|en|Trend following}}と反トレンド({{lang|en|Counter-trend}})の手法に分けることもでき、この場合はファンドがトレンドに乗じて利益を得ようとするか、トレンドの逆転を予想して利益を得ようとするかで分類する<ref name="Ineichen192">{{cite book |title=Absolute Returns: the risks and opportunities of hedge fund investing |first=Alexander|last=Ineichen |year=2002 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn=0-471-25120-8 |page=192}}</ref>。 |
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不況等の相場全体が下げの環境下では積極的に空売りを仕掛けることで、絶対的な収益を生み出すことが可能になる。逆に、好況期の相場全体が上げの環境下では、相場全体について行けずインデックス以下またはマイナスの運用実績しか上げられず苦戦しているファンドも多い。マイナスの運用成績は問題であるが、そもそもヘッジファンドの本質は相場環境にかかわらず長期的に安定的にプラスのリターンを達成し続けることにあるので、好況期にインデックスに対して勝った負けたと議論するのはナンセンスであるとの論もある。 |
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また、グローバル・マクロ戦略をさらに細かく分類して「系統的分散」({{lang|en|Systematic diversified}}、投資先を広く分散する手法)や「系統的為替」({{lang|en|Systematic currency}}、主に[[外国為替市場]]に投資する手法)に分けることもできる<ref name="wavetheory_2010">{{cite book |title=Wave Theory for Alternative Investments |first=Stephen |last=Walker |year=2010 |publisher=McGraw-Hill Companies |location= |isbn=0-07-174286-7}}</ref>{{rp|348}}。ほかには{{仮リンク|商品取引投資顧問|en|Commodity trading advisor}}(CTA)が使用する、{{仮リンク|コモディティ|en|Commodity|preserve=1}}の[[商品先物取引|先物取引]]や[[オプション取引]]やスワップに投資する手法もある<ref>{{cite book |title=Investment strategies of hedge funds |first=Filippo |last=Stefanini |year=2006 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn= 0-470-02627-8 |page=223}}</ref>。この手法は「マネージド・フューチャーズ」({{lang|en|Managed futures}})と呼ばれる<ref name="Coggan" />。CTAは[[金]]などの商品や[[株価指数]]などの[[金融商品]]に投資し、買い建てと売り建てを両方使うことで上げ相場でも下げ相場でも利益を得ることができる<ref>{{cite book |title=Evaluating hedge fund performance |last=Tran |first=Vinh Q. |year=2006 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-471-68171-7 |page=54}}</ref>。 |
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また、売りと買いの両方を仕掛けているので、相場全体の動きがどちらに進んでも、片方の玉がヘッジ(保険つなぎ)となり、損失は最小になるとの考えもあり、'''ヘッジファンド'''の名前はこの点に由来する。しかし、買建て玉が下がり、売建て玉が上がる場合も当然ありうるので、このような状況が生じると莫大な損失を出す可能性を秘めている。同方式は、思惑売買を売り買い両面で仕掛けているにすぎず、売建て玉と買建て玉の価格連動性も考慮していないので、本来の意味でのヘッジにはなっていない。このような売買手法に対して、ヘッジファンドという名称を付けたのは、一種の誤解に基づくものといえる。ただし、売建て玉を利用できる点については相場技法上、多大なメリット(特に短期売買の場合には顕著)がある。近年では、売立て玉と買建て玉の価格連動性を考慮した方式が取られる場合も多い。 |
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=== ディレクショナル === |
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近年、このロング・ショートの手法を採用した一般個人投資家向けの投資信託も出現している。 |
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ディレクショナル戦略において、ヘッジファンドは市場の動き、トレンドや不一致を察知して世界中の株を選ぶ。コンピュータのモデルを使う場合とファンド・マネージャーが自ら株選びに加わる場合がある。この戦略はマーケット・ニュートラル戦略と比べて市場の変動に影響される恐れが大きい<ref name="Connor">{{cite web |url = https://www.iam.uk.com/Portals/0/pdf/lse-publications/An-Introduction-to-Hedge-Fund-Strategies.pdf|title = An Introduction to Hedge Fund Strategy|first1 = Gregory|last1 = Connor|first2 = Teo|last2 = Lasarte|work = The London School of Economics and Political Science|publisher = International Asset Management Ltd.|accessdate = 17 March 2011}}</ref><ref name="Coggan" />。ディレクショナル戦略の一例として{{仮リンク|ロング・ショート・エクイティ|en|Long/short equity}}という戦略があり、これは株の{{仮リンク|ロング (金融)|en|Long (finance)|label=ロング}}・ポジションを株の[[空売り]]や株価指数の[[オプション取引|オプション]]でヘッジするという戦略である。 |
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ディレクショナル戦略をさらに細かく分類すると、中国やインドなどの[[新興国]]市場に集中して投資する「[[エマージング・マーケット]]」戦略<ref name="wavetheory_2010" />{{rp|351}}やヘルスケア、バイオテクノロジーなど株式市場全般より成長寄りとされる特定の[[産業]]に投資する「ファンダメンタル・グロース」({{lang|en|Fundamental growth}}) 、株価が会社の価値と比べて低い会社に投資する「ファンダメンタル・バリュー」({{lang|en|Fundamental value}})<ref name="wavetheory_2010" />{{rp|344}}、トレーディングに計量的手法や{{仮リンク|金融信号処理|en|Financial signal processing}}を取り入れた「クオンティテーティブ・ディレクショナル」({{lang|en|Quantitative directional}})<ref name="wavetheory_2010" />{{rp|345}}、株価の下落を利用して空売りで利益を得る「ショート・バイアス」({{lang|en|Short bias}})などがある<ref>{{cite book |title=Create Your Own ETF Hedge Fund |first=David |last=Fry |year=2008 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn= 0-470-13895-5 |page=68}}</ref>。 |
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なお、株式ロング・ショートのヘッジファンドには、特定の業種・セクターに絞った運用をするものが多い。一般的な株式投資信託では広範な業種の銘柄を買いながら、その銘柄選択効果でTOPIX等の市場インデックスを上回ることを追求するのに対し、ロング・ショートでは買い・売り双方の機会を求め、特定業種・セクターにおける、より徹底したボトムアップ調査を基に運用することに起因する。したがって、多くの株式ロング・ショートヘッジファンドの運用成績は、その専門分野におけるボトムアップ調査・運用能力に比例すると考えられる。なお、経験測では多くのロング・ショートファンドにおいてネット・ロング(買いポジション>売りポジション)の状態にいるケースが多いことが確認されている。 |
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=== イベント・ドリブン === |
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{{Main|{{仮リンク|イベント・ドリブン投資|en|Event-driven investing}}}} |
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上記の原始的なヘッジファンドの次に誕生したのが、いわゆる鞘取りで利益を稼ぎ出す売買手法を取るものである。最もよく知られているのは、[[裁定取引]](アービトラージ)を利用したものであろう。 |
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イベント・ドリブン戦略をとるヘッジファンドは投資機会とそのリスクが何らかの事件(イベント)に関連する状況に着目する<ref>{{cite book |title=Absolute Returns: the risks and opportunities of hedge fund investing |first=Alexander|last=Ineichen |year=2002 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn=0-471-25120-8 |page=182}}</ref>。このようなヘッジファンドは連結、買収、資本再編、[[倒産]]、清算など会社再編に関連する事件に機会を見出す。事件の前後で証券の評価に不一致が生じることを利用し、証券価格の動きを予想してポジションを取る。ヘッジファンドのような巨大機関投資家は伝統的な株式投資家よりイベント・ドリブン戦略をとる可能性が高いが、これは機関投資家のほうが会社再編を分析し、投資機会を見出す専門知識と資源を有するからである<ref name="Bartolo" /><ref>{{Cite news|url=https://pugvestor.com/ways-invest-money-stocks/|title=Different ways to invest money in stocks – Pugvestor|date=2017-03-30|work=Pugvestor|access-date=2017-04-14|language=en-US}}</ref><ref name="Event-Driven">{{cite web |url=http://www.barclayhedge.com/research/educational-articles/hedge-fund-strategy-definition/hedge-fund-strategy-event-driven.html |title=Understanding Event-Driven Investing |publisher=BarclayHedge LTD. |accessdate=17 March 2011}}</ref>。 |
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会社再編に関連する事件は一般的には{{仮リンク|ディストレスト証券|en|Distressed securities}}、{{仮リンク|リスク・アービトラージ|en|Risk arbitrage}}、{{仮リンク|スペシャル・シチュエーション|en|Special situation|label=スペシャル・シチュエーションズ}}の3種類がある<ref name="Bartolo" />。ディストレスト証券は事業再編、資本再編、倒産などの事件を含む<ref name="Bartolo" />。ディストレスト証券の投資戦略をとるヘッジファンドは[[倒産]]に直面しているか厳しい経営難に陥った会社の債券やローンに投資する。このような会社の債券やローンは額面と比べての割引率が大きく、ヘッジファンドは安い価格に利益を見出そうとする。ヘッジファンドがディストレスト証券を購入することは銀行の担保権執行の阻止につながるため、会社が倒産を免れる可能性がある<ref name="Coggan" />。イベント・ドリブン投資は一般的には{{仮リンク|上げ相場|en|Bull market}}で活躍するが、ディストレスト証券だけは{{仮リンク|下げ相場|en|Bear market}}のほうが有利である<ref name="Event-Driven" />。 |
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同一の取引銘柄が、複数の市場に上場されている場合、同じ銘柄であるにもかかわらず、価格に乖離が生じることがある。この場合、一時的にバイアスがかかっても、長期的には必ず乖離が修正されるので、高いほうを売って、安いほうを買っておき、乖離が修正された時点で反対の売買を行えば、安全かつ確実に利益を出すことができる。また、市場間のバイアスを利用した取引なので、上げ下げには依存せず相場に動きがない局面でも利益を生み出せる。 |
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{{仮リンク|リスク・アービトラージ|en|Risk arbitrage}}、または「合併アービトラージ」({{lang|en|Merger arbitrage}})は[[M&A]]、清算、敵対的買収などを含む<ref name="Bartolo" />。リスク・アービトラージ戦略では合併する会社の株式を取引し、株価と買収価格の間の不一致を利用する。この戦略のリスクはM&Aが予想通りに進まないことにあり、ファンド・マネージャーは研究と分析で事件が本当に起こるかを判断する<ref name="Event-Driven" /><ref>{{cite web |url=http://www.barclayhedge.com/research/educational-articles/hedge-fund-strategy-definition/hedge-fund-strategy-merger-arbitrage.html |title=Understanding Merger Arbitrage |publisher=BarclayHedge LTD. |accessdate=17 March 2011}}</ref>。 |
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ただし、裁定取引での投下資金に対する利益は1/1000~1/10000程度(0.1~0.01%)と極めて微小なものとなる。したがって、レバレッジ比率と売買頻度を高めなければ、高い利回りは望めない。一般的にヘッジファンドのレバレッジ比率は、3~5倍程度といわれている。 |
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スペシャル・シチュエーションズとは、会社の株価に影響する事件。これには事業再編、分社化、自社株買い戻し、証券の発行と買い戻し、資産売却などを含む。スペシャル・シチュエーションズ戦略をとるファンド・マネージャーは事件が株価と株式に関連する証券の価格にどう影響するか見極めなければならない<ref name="Strategy Definitions">{{cite web |url= http://www.hedgefundresearch.com/index.php?fuse=indices-str#2703|title=HFR I Strategy Definitions |publisher=Hedge Fund Research Inc. |accessdate=17 March 2011}}</ref>。 |
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=== マーケット・タイミング === |
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マーケット・タイミングは伝統的なロング・オンリー運用と異なり、ロング(買い)ポジションに入るタイミングを見計らいながら、それまでは主に現金や短期金融資産等で安全運用を行う戦略である。一般的には株式相場全体の上昇基調入りを見計らいながら、下げ相場では現金運用を行い、上昇期にはインデックス運用を行うタイプが多い。トップダウン型の一種であり、金融政策や財政、主要な経済指標などを分析しマクロ経済のサイクルを見計らうアプローチが取られる。 |
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イベント・ドリブン戦略は上記のほかには{{仮リンク|確定利付き証券|en|Fixed income}}に集中するクレジット・アービトラージ戦略、株式を大量に購入して経営に参与する[[アクティビスト (株主)|アクティビスト]]戦略、[[製薬|製薬会社]]の[[医薬品開発]]で製品が承認される可能性を予想する戦略、訴訟に巻き込まれている会社に集中するリーガル・キャタリスト戦略({{lang|en|Legal catalyst}})がある。 |
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マーケット・タイミングは、その特性上、一般的な株式投資信託よりもリスクが低い運用手法と考えられる。 |
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=== レラティブ・バリュー === |
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{{Main|{{仮リンク|相対価値 (経済学)|en|Relative value (economics)}}}} |
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上述の裁定取引(アービトラージ)と混同して議論されることが多いが、レラティブバリューは、広義では相対的な割安・割高を収益機会と捉える手法である。裁定取引は厳密には市場における完全なミスプライス(全く同じ経済効果をもたらす複数の資産やポートフォリオの間で異なる価格が存在している状態)を収益機会と捉えるのに対し、レラティブ・バリューではあくまで相対的な割安・割高をもって収益機会と捉える点で異なる(なお、実運用においては完全なミスプライス状態はそうそう頻出するものではないので、ほぼ完全なミスプライス状態をもって裁定機会と捉えるアービトラージャーが多い)。 |
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レラティブ・バリュー戦略は相対的に割高・割安となっている証券の間の価格差を利用して収益を上げる手法である。この価格差は関連した2つの証券の間、デリバティブとその{{仮リンク|対象証券|en|Underlying}}の間、または証券と市場全体の間で発生することがある。ファンド・マネージャーは数学モデル、[[テクニカル分析]]、[[ファンダメンタル分析]]を利用してこのような価格差を見つけ出す<ref>{{cite web |url=http://www.barclayhedge.com/research/definitions/Relative-Value-Arbitrage-definition.html |title=Relative Value Arbitrage definition |publisher=BarclayHedge LTD. |accessdate=20 March 2011}}</ref>。レラティブ・バリュー戦略は市場全体の動きへのエクスポージャーが少ない、または全くないため、{{仮リンク|マーケット・ニュートラル|en|Market neutral}}と同義とされることが多い<ref>{{cite book |title=Absolute Returns: the risks and opportunities of hedge fund investing |first=Alexander|last=Ineichen |
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|year=2002 |publisher=John Wiley & Sons |location= |isbn=0-471-25120-8 |page=181}}</ref>。 |
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レラティブ・バリューを細かく分類して下記に分けることができる: |
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LTCMの運用手法は裁定取引型と表現されるケースもあるが、むしろレラティブバリュー型の方が実態に近かったと考えられる。 |
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*{{仮リンク|確定利付の裁定取引|en|Fixed income arbitrage}}:確定利付き証券の間の価格差を利用する。[[資産担保証券]]を利用する戦略と別に分ける場合もある。 |
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=== [[:en:Event-driven investing|イベント・ドリブン]] === |
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*エクイティ・マーケット・ニュートラル({{lang|en|Equity market neutral}}):同じ国、同じ業界、時価総額の近い2銘柄でそれぞれ{{仮リンク|ロング (金融)|en|Long (finance)|label=ロング}}と{{仮リンク|ショート (金融)|en|Short (finance)|label=ショート}}のポジションをとり、その価格差を利用する一方、市場の動きへのエクスポージャーはヘッジされる。債券でも同じ戦略をとることが可能であり、その場合はクレジット・ロング・ショート({{lang|en|Credit long / short}})と呼ばれる。 |
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イベント・ドリブン型は、主に企業の買収・合併等のイベント発生時における市場でのミスプライスを収益機会と捉える手法である。例えばある企業同士の合併が公表されてから、実際に合併が成立するまでの間に発生する各企業の株価の差異を、合併成立に伴って収斂するものと考えてポジションを構築する。イベントが正確に市場価格に反映されるまでにタイムラグがあることによって、収益機会が生まれる。 |
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*{{仮リンク|転換社債の裁定取引|en|Convertible arbitrage}}:[[転換社債型新株予約権付社債|転換社債]]とその対象[[株式]]の間の価格差を利用する。 |
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*{{仮リンク|統計学上の裁定取引|en|Statistical arbitrage}}:数学モデルを駆使して証券の間の価格差のうち利用できるものを探す。 |
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*変動率の裁定取引({{lang|en|Volatility arbitrage}}:価格差ではなく、{{仮リンク|予想変動率|en|implied volatility}}の差を利用する。 |
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*イールド・オルタナティブズ({{lang|en|Yield alternatives}}):価格差ではなく利回りの差を利用する、{{仮リンク|確定利付の裁定取引|en|Fixed income arbitrage}}とは違う戦略。 |
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*規制の裁定取引({{lang|en|Regulatory arbitrage}}):いくつかの市場における規制の差異を利用する。 |
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*{{仮リンク|リスクの裁定取引|en|Risk arbitrage}}:[[M&A]]での買収価格と株式の価格の差を利用する。 |
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== リスク == |
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ただし、リスクとして合併が不成立となる場合などがあり、その場合には大きな損失を発生しかねない運用手法でもある。 |
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すでに大量の株式と債券を所持している投資家はヘッジファンドに投資することでリスクを分散し、ポートフォリオのリスクを低減させることができる可能性がある<ref name="Davidoff">{{cite news |url=http://www.dealbook.nytimes.com/2009/09/17/to-reduce-hedge-fund-risk-let-everyone-in/ |title=To Reduce Hedge Fund Risk, Let Everyone In |last1=Davidoff |first1=Steven M. |last2= |first2= |date=17 September 2009 |work=The New York Times |publisher= |accessdate=27 March 2011}}</ref>。ヘッジファンドのマネージャーは特定の取引戦略と金融商品を使って市場リスクを減らし、投資家の要望したリスクの水準まで減らすとともにリスク調整後収益を上げようとする<ref name="Jones" />。そのため、理想的なヘッジファンドは市場の指数との相関が低い<ref name="Lo">{{cite journal |last=Lo |first=Andrew |year=2001 |title=Risk Management for Hedge Funds: Introduction and Overview |journal=Financial Analysts Journal |volume=57 |issue=6 |pages=16–33 |publisher=CFA Institute |url=http://www.alphasimplex.com/pdfs/RiskMgmtForHF.pdf |accessdate=29 March 2011 |doi=10.2469/faj.v57.n6.2490}}</ref>。{{仮リンク|ヘッジ (金融)|en|Hedge (finance)|label=ヘッジ}}することで投資のリスクを減らせるが、他の投資と同じく、ヘッジファンドは無リスクにはならない。ヘネシー・グループの報告によると、1993年から2010年までの間、ヘッジファンドのボラティリティは[[S&P 500]]より3分の1ほど低い<ref>{{cite web |url=http://www.thehedgefundjournal.com/news/2010/07/22/hennessee-protecting-capital-during-market-downturns.php |title=Hennessee: Protecting capital during market downturns |date=22 July 2010 |work=Hedge Fund Journal |accessdate=30 March 2011}}</ref>。 |
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=== リスクマネジメント === |
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=== [[:en:Market neutral|マーケット・ニュートラル]] === |
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ほとんどの国はヘッジファンドの投資家になるための要件として適格投資家であることを規定している。これにより、ヘッジファンドの投資家は投資リスクを知っていて、リターンとリスクを比較した結果リスクを受け入れていると仮定されている。ファンド・マネージャーは全面的な{{仮リンク|金融リスクマネジメント|en|Financial risk management|label=リスク管理}}戦略を採用してファンドと投資家を守ることができる。[[フィナンシャル・タイムズ]]紙によると、「大きいヘッジファンドには資産管理業において最も高度で、厳しいリスクマネジメント慣行がある」という<ref name="Jones">{{cite news |title=Hedge funds: Stringent controls on losses and investment |first=Sam |last=Jones |url=http://www.ft.com/cms/s/0/5f253ab8-5371-11e0-86e6-00144feab49a.html#ixzz1ICqUvUmv |newspaper=Financial Times |date=21 March 2011 |accessdate=30 March 2011}}</ref>。大量のポジションを短期間のみ維持するファンド・マネージャーは全面的なリスクマネジメント・システムを取り入れていることが多く、また独立したリスク管理者を持つこともすでに慣習になっている。リスク管理者はリスクを精査・管理するが、取引には関与しない<ref name="Cassar">{{cite web |url=http://efmaefm.org/0EFMSYMPOSIUM/Toronto-2011/papers/Gerakos.pdf |title=How Do Hedge Funds Manage Portfolio Risk? |first1=Gavin |last1=Cassar |first2=Joseph |last2=Gerakos |work=EFM Symposium |publisher=European Financial Management Association |format=PDF |accessdate=17 March 2011}}</ref>。ヘッジファンドのレバレッジ、流動性や投資戦略に基づいてリスクを概算するモデルやテクニックがたくさん考案された<ref name="Lo" /><ref>Jaeger, Robert. A. (2003) Mcgraw Hill, All About Hedge Funds "A hedge fund is an actively managed investment fund"</ref>。[[バリュー・アット・リスク]]など伝統的なリスク分析手法はリターンが正規分布に従う必要がある、{{仮リンク|ボラティリティ・クラスタリング|en|Volatility clustering}}やトレンドを考慮しないなどの弱点があるため、{{仮リンク|ドローダウン (経済学)|en|Drawdown (economics)|label=ドローダウン}}(下落幅)などの手法を使うこともある<ref name="risk">{{Citation|title=López de Prado, M. and A. Peijan: Measuring Loss Potential of Hedge Fund Strategies| work=Journal of Alternative Investments|volume= 7|issue= 1 |pages= 7–31|year=2004|ssrn=641702}}</ref>。 |
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マーケット・ニュートラル(市場中立型)とは、その名のとおり市場に対して中立なポジションを取る運用手法である。一般的な株式投資信託では、株式市場全体の動き(TOPIXなど)をベンチマークとし、そのベンチマークに対するポートフォリオの感応度をベータ、ベンチマークの動きにかかわらず生じる収益をアルファと表現する。ベータのリスクを排除した運用手法ともいえる。 |
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投資による市場リスクのほか、投資家は{{仮リンク|業務デューディリジェンス|en|Operational due diligence}}を行ってヘッジファンドによるミスや詐欺により投資家が損失を出すリスクを精査する。業務デューディリジェンスでは、ヘッジファンドの企業形態、投資戦略の持続可能性、ファンドが会社として成長する能力などが考慮される<ref>{{cite book |title=Hedge funds: crossing the institutional frontier |last=Jaffer |first=Sohail |year=2006 |publisher=Euromoney Books |isbn=1-84374-268-3 |pages=113–4}}</ref>。 |
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マーケットニュートラルでは、市場全体の値動きに左右されず、銘柄選定効果(アルファ)だけを積み上げていくリターン特性をもつので、ヘッジファンドの中で最もリスクが低く安定した運用手法の一つである。また、伝統的な資産クラスとの相関が低いので、既存の伝統的ポートフォリオに追加した際に得られる分散効果が最も高いともいわれている。 |
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=== 透明性と規制 === |
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=== [[:en:Global macro|グローバル・マクロ]] === |
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ヘッジファンドは非公開企業であり、開示の義務が少ないため、{{仮リンク|透明性 (市場)|en|Transparency (market)|label=透明性}}を欠けるとみなされることがある<ref name="IneichenRisk">{{cite book |title=Absolute Returns: the risks and opportunities of hedge fund investing |first=Alexander |last=Ineichen |year=2002 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-471-25120-8 |pages=441–4}}</ref>。またヘッジファンドに対するよく見られる認識の1つとしては、ヘッジファンドのマネージャーは規制当局による監視と登録の義務が少ないため、スタイル・ドリフト、欠陥のある運営、詐欺などマネージャーの固有リスクの危険性がより大きい、というものがある<ref name="Jaeger" />。2010年にアメリカと欧州連合が新しい規制を導入したため、ヘッジファンド・マネージャーの報告義務が大きく拡大され、透明性が高められる結果となった<ref name="Chay" />。さらに、投資家(特に機関投資家)はヘッジファンドの内部慣習の改善と規制を推進している<ref name="Jones" />。機関投資家の影響力が大きくなったことはヘッジファンドが投資家に評価方法、ポジションとレバレッジのエクスポージャーを開示し、透明性を高める結果につながった<ref>{{cite web |url=http://www.benefitscanada.com/investments/other-investments/institutional-investors-changing-the-rules-of-hedge-fund-investing-9126 |title=Institutional investors changing the rules of hedge fund investing |last1=White |first1=Jody |date=25 January 2010 |work=BenefitsCanada.com |accessdate=30 March 2011}}</ref>。 |
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グローバル・マクロは、実質的には特定の運用手法を指すものではなく、多種多様な市場において多種多様な資産を多種多様な手法で運用するファンドの総称である。その多くが、世界のマクロ経済動向見通しをベースにしたトップダウンアプローチに基づき、世界各市場で多種多様なポジションを張っている。有名なものでは[[ジョージ・ソロス]]のクオンタムファンドがこの分類に入る。一時期はヘッジファンド=グローバルマクロというようなイメージで語られることもあったが、機関投資家側のヘッジファンドに対するニーズが具体化・特定化している現在においては、主要な地位を占める戦略ではなくなっている。 |
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=== ほかの投資と共通のリスク === |
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=== マネージド・フューチャーズ === |
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ヘッジファンドはほかの投資と多くのリスクを共有する。例としては{{仮リンク|流動性リスク|en|Liquidity risk}}とマネージャー・リスクがある<ref name="Jaeger">{{cite web |url=http://www.math.ethz.ch/~embrechts/RM/jaeger.pdf |title=Risk Management for Hedge Fund Portfolios |first=Lars |last=Jaeger |date=28 April 2005 |work=Presentation at ETHZ [Eidgenössische Technische Hochschule Zürich] |publisher=Partners Group |format=PDF |accessdate=17 March 2011}}</ref>。[[流動性 (経済学)|流動性]]とは資産の取引や現金と容易に交換できるかの度合いを指す。[[プライベート・エクイティ・ファンド]]と同じく、ヘッジファンドは解約を禁止されるロックアップ期間を指定することが多い<ref name="Coggan" /><ref name="What is a Hedge Fund" />。マネージャー・リスクはファンド・マネジメントにより発生するリスク、およびスタイル・ドリフト(ファンド・マネージャーが専門とする投資戦略から離れて取引してしまうこと)のリスクを指す。マネージャー・リスクは{{仮リンク|評価リスク|en|Valuation risk}}、キャパシティ・リスク、{{仮リンク|集中リスク|en|Concentration risk}}、レバレッジ・リスクを含む<ref name="IneichenRisk" />。評価リスクは{{仮リンク|純資産額|en|Net asset value}}の計算が不正確である可能性を指し<ref name="Strachman">{{cite book |title=Fund of Funds Investing: A Roadmap to Portfolio Diversification |last1=Strachman |first1=Daniel A. |last2=Bookbinder |first2=Richard S. |year=2009 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-470-25876-4 |pages=120–1}}</ref>、キャパシティ・リスクは1つの戦略に資金を多く投資しすぎてファンド全体のパフォーマンスを悪化させてしまうリスクを指し<ref name="Avellanda">{{cite web |url= http://math.nyu.edu/faculty/avellane/HFCapacity.pdf |title=What is a Hedge Fund |last1=Avellanda |first1=Marco |last2=Besson |first2=Paul |publisher=New York University |accessdate=28 March 2011}}</ref>、集中リスクはファンドのエクスポージャーが1つの投資、業界、戦略、または相関したファンドのグループに集中しているリスクを指す<ref name="Concentration Risk">{{cite web |url= http://knowledgebase.abcquant.com/index.php?option=com_kb&task=article&article=11 |title=Concentration Risk |year=2008 |publisher=Quant Risk Group |accessdate=29 March 2011}}</ref>。これらのリスクは利益相反への規制<ref name="Strachman" />、資金の配分の制限<ref name="Avellanda" />、戦略へのエクスポージャーの限度の指定<ref name="Concentration Risk" />によってある程度軽減できる。 |
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マネージド・フューチャーズは、取引所に上場している先物に投資する運用手法。カテゴリーとしてはヘッジファンドではなくコモディティ投資とする見解が多く、広義では代替投資の一つである。元来は商品に限らず各種金融資産、通貨等も含めた先物全体を活用した運用手法で、運用者はコモディティ・トレーディング・アドバイザー(CTA)と呼ばれ、米国ではCFTCの管轄下である。投資対象の定義を除けば、ロング・ショート・タイミングなどの具体的な戦略を特定するものではない。 |
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多くの投資ファンドは[[レバレッジ]]、[[債務|借金]]、[[信用取引]]、[[デリバティブ]]を使って、投資家の資本以上の市場エクスポージャーを得る。レバレッジは得られる利益を増大させることができるものの、同時に損失を増大させる危険性もある<ref name="What is a Hedge Fund" />。レバレッジを使うヘッジファンドは全面的なリスクマネジメント戦略を採用することが多い<ref name="Cassar" /><ref name="IneichenRisk" />。ヘッジファンドのレバレッジは投資銀行のそれより低い。[[全米経済研究所]]の論文によると、投資銀行の平均レバレッジが14.2倍のに対し、ヘッジファンドは1.5倍から2.5倍までの間である<ref>{{cite journal |last1=Ang |first1=Andrew |last2=Gorovyy |first2=Sergiy |last3=van Inwegen |first3=Gregory |year=2011 |title=Hedge Fund Leverage: NBER Working Paper No. 16801 |journal= |volume= |issue= |pages= |publisher=NBER |doi= |url=http://www.nber.org/papers/w16801.pdf |accessdate=4 April 2011}}</ref>。 |
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=== [[:en:Private equity fund|プライベート・エクイティ]] === |
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未上場企業に投資する[[ベンチャー・キャピタル]]や、企業の買収、再生、売却を通じて収益を上げる[[プライベート・エクイティ・ファンド|バイアウト・ファンド]]などの総称。一投資家に過ぎない一般的な株式投資と異なり、大株主として企業の経営に対しより直接的な関与をし、企業価値を向上させながら最終的に[[株式公開|IPO]]や[[M&A]]による売却など(Exit、エグジット)を目指す。その特性から、中長期的な投資が多く、流動性も低い投資手法である。 |
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[[レバレッジ]]など利益を最大化する手法を自由に使って運営される。しばしば、[[ヘッジ]]と呼ばれる手法を大規模に使うので、'''ヘッジファンド''' と呼ばれる。 |
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ヘッジファンドなど一部の投資ファンドは利益を最大化するためにリスクの選好度合いが高いと認識されている<ref name="What is a Hedge Fund">{{cite web |url=http://www.barclayhedge.com/research/educational-articles/hedge-fund-strategy-definition/what-is-a-hedge-fund.html |title=What is a Hedge Fund |publisher=BarclayHedge LTD |accessdate=28 March 2011}}</ref>(ただし、投資家とファンド・マネージャーが指定した限度内)。マネージャー自らがファンドに投資していると、リスク監査を強化するインセンティブがさらに高くなる<ref name="Cassar" />。 |
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[[ヘッジ]]自体は[[リスク]]を避けるための一般的な手法で、通常の投資信託でも[[為替ヘッジ]]を使用するので、ヘッジを使ったからといって'''ヘッジファンド''' というわけではない。 |
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=== 有名なヘッジファンド破綻 === |
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したがって'''ヘッジファンド'''と呼ぶより私募ファンドと呼んだほうが適切である。ただし、最近では高度なストラクチャリングによりレバレッジの規制(ファンドレベルで10%超のレバレッジ水準とならないこと等)により公募の形式でも販売されることがある。 |
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* [[ロングターム・キャピタル・マネジメント]](LTCM) - 1994年、[[ジョン・メリウェザー]]により創設された。1997年の[[アジア通貨危機]]と1998年の[[ロシア財政危機]]と立て続けに金融危機がおきたため、LTCMは4か月以下の期間で46億米ドルの損失を出した。破綻の主な理由はロシアの[[債務不履行]]と損失が着実に増大していたにもかかわらずポジションを維持すべきとのモデルの間違いである。 |
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* {{仮リンク|タイガー・マネージメント|en|Tiger Management}} - 1980年、{{仮リンク|ジュリアン・ロバートソン|en|Julian Robertson}}によって創設。創設時点の資産は8百万米ドルだったが、1997年までには10.5億ドルまで増え、世界中で2番目に大きいヘッジファンドとなった<ref>{{cite news |url=http://www.businessweek.com/1997/34/b3541191.htm |title=The Hedge Funds: The Rich Get a Little Richer |work= BusinessWeek |date= August 25, 1997 |accessdate= August 29, 2013 }}</ref>。その1年後には22億ドルまで増えた<ref>{{Cite news| url = https://www.bloomberg.com/news/2014-06-03/robertson-s-stock-picker-singh-said-to-become-newest-tiger-cub.html|title= Robertson’s Stock Picker Singh Said to Become Newest Tiger Cub |author= Kelly Bit |publisher=Bloomberg News |date = June 3, 2014}}</ref>が、[[USエアウェイズ]]などの投資ミスにより損失を出し、タイガー社は2000年にファンドを畳んだ。 |
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* アッティカス・グローバル({{lang|en|Atticus Global}}) - 1995年、[[アクティビスト (株主)|物言う株主]]のティム・バラケット({{lang|en|Tim Barakett}})によって6百万米ドルの資金で創設された。2007年までに運用資産が20億米ドルに増え、世界最大のヘッジファンドの1つとなった。その間、バラケットは市場を上回る利益率を出し続けたが、2008年の金融危機で2年連続で大損失を出し、2009年にたたまれた。2007年までの利益率は年率19.3パーセントで、[[S&P 500]]の年率3.9パーセントを大幅に上回るものであった<ref>{{Cite web|url=http://www.usatoday.com/money/|title=Financial, Economic and Money News - USATODAY.com|website=USA TODAY|language=en|access-date=2017-03-21}}</ref>。 |
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== 手数料と報酬 == |
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「ヘッジ」とは「(リスクを)支える」、「ファンド」とは「資本」を意味し、損失の危険の高い小規模資本による投資ではなく、顧客から集めた資金を合わせて超大規模資本を形成し、様々な専門知識や金融技術を駆使して、リスクを抑えて高い利益を出している。その主な手法は、購入した財を担保に入れて融資を受け、その資金で購入した財をさらに担保に入れて融資を受ける…といった多重抵当設定によって(無論、信用と実績のある投資会社でなければ銀行は多重抵当を認めない)、実資本の数十倍の外国為替・金融先物などの取引を行い、高い利益を上げる。これらは総称して[[デリバティヴ]](金融派生商品)と呼ばれる。 |
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=== ヘッジファンドへの手数料 === |
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ヘッジファンド運用会社は一般的には投資家から{{仮リンク|運用手数料|en|Management fee}}と{{仮リンク|運用報酬|en|Performance fee}}を徴収する。 |
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運用手数料は{{仮リンク|純資産額|en|Net asset value}}に定率をかけることで計算される。毎年1パーセントから4パーセント徴収することが多いが、その中でも2パーセントとするのが最も一般的である<ref>{{cite news |url=http://www.ft.com/cms/s/0/cf7f91e2-f3f0-11dd-9c4b-0000779fd2ac.html |title=Hedge fund investors have a great chance to cut fees |work=[[Financial Times]] |date=6 February 2009 |accessdate=14 August 2010}}</ref><ref>{{cite news |last=Hulbert |first=Mark |url=https://www.nytimes.com/2007/03/04/business/yourmoney/04stra.html |title=2 + 20, And Other Hedge Math |work=[[The New York Times]] |date=4 March 2007 |accessdate=26 November 2011}}</ref><ref>{{cite web |url=http://www.businessweek.com/magazine/content/07_20/b4034053.htm |title=Hedge Fund Fees: The Pressure Builds |publisher=Businessweek.com |date=4 March 2007 |accessdate=26 November 2011}}</ref>。また表示上は年率であることがほとんどであるが、実際の計算と徴収は毎月か四半期ごとに行われることが多い。運用手数料を徴収する目的は営業経費を賄うことにあり、一方運用報酬はファンド・マネージャーが出した利益に対する報酬である。しかし、[[規模の経済]]があるため規模の大きいヘッジファンドは運用手数料の徴収で収益を大きく得ることができる。このため、[[カルパース|カリフォルニア州職員退職年金基金]]など一部の公的年金基金はヘッジファンドの手数料が高すぎると批判している<ref>Imogen Rose-Smith, [http://www.institutionalinvestor.com/Popups/PrintArticle.aspx?ArticleID=2850765 "Public Pension Plans Bet Their Future On Hedge Funds,"] Institutional Investor, 20 June 2011</ref>。 |
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== 日本のヘッジファンド == |
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{{仮リンク|運用報酬|en|Performance fee}}はヘッジファンドの利益の2割を徴収することが一般的だが、1割から5割までを徴収するものもみられる。運用報酬の目的はファンド・マネージャーが利益を出すことにインセンティブを与えることにある<ref>{{cite web|url=http://www.eipny.com/pdf/HedgeFundMathWhyFeesMatter110907.pdf |title=Hedge Fund Math: Why Fees Matter (Newsletter), Epoch Investment Partners Inc. |format=PDF |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref><ref>{{cite news|url=http://www.forbes.com/lists/2006/54/biz_06rich400_Steven-A-Cohen_PZMO.html |title=Forbes 400 Richest Americans: Stephen A. Cohen |publisher=Forbes.com |date=19 September 2006 |accessdate=14 August 2010}}</ref>。[[ウォーレン・バフェット]]はヘッジファンドが儲けているときには報酬を徴収して利益を得るが、運用損失を出しているときは報酬が得られないだけで損するわけではないため、運用報酬はファンド・マネージャーにハイリスクな投資戦略をとるよう誘導するものとして批判した。2008年の金融危機以降、運用報酬の割合は2割から下がっている<ref>{{cite web |url=http://www.opalesque.com/IndustryUpdates/691/HFR_Hedge_fund_liquidations_fall_to_levels217.html |title= Incentive fees fall since start of the financial crisis |date=10 March 2010|author=Opalesque|accessdate=2017-04-21}}</ref>。 |
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経産省が公表しているものには次のようなものがある<ref>[[経済産業省]][[経済産業政策局]]調査課[http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004464/g80422a01j.pdf 「国内外で存在感を高めるヘッジファンドの実態調査(概要)」]、2008年4月。</ref><ref>[[経済産業省]][[経済産業政策局]]調査課[http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004464/g80422a02j.pdf 「国内外で存在感を高めるヘッジファンドの実態調査 報告書」]、2008年4月。</ref><ref>[[若林秀樹]]『ヘッジファンドの真実』[[洋泉社]]、2007年、p.267。</ref>。 |
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ヘッジファンドの運用報酬はほぼ確実に「ハイ・ウォーター・マーク条項」({{lang|en|High water mark}}、「最高値」という意味。「損失繰り越し条項」({{lang|en|Loss carryforward provision}})とも)が含まれている。この条項は運用報酬が純利益(利益から過去の損失を差し引いた値)から徴収されることを意味する。これは業績の変動が激しい場合に運用報酬を支払わなくてもすむようにするためである。しかし、ヘッジファンドが大損失を出した場合、ファンド・マネージャーは損失を数年かけて補填する(しかも、その間には運用報酬は支払われない)よりファンドを畳んで新しいヘッジファンドを立ち上げることを選ぶこともある<ref>{{cite web|url=http://www.businessweek.com/bwdaily/dnflash/aug2005/nf2005088_1711_db042.htm |title=Hedge Funds: Fees Down? Close Shop |publisher=Businessweek.com |date=8 August 2005 |accessdate=14 August 2010}}</ref>。 |
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一部のヘッジファンドは目標比率({{lang|en|Hurdle rate}})を指定して、利益率が目標比率(比率は固定値か、[[LIBOR]]などのベンチマークを基準に指定される)を上回る場合のみ運用報酬を徴収することを定めている<ref name="Roadmap">{{cite web|url=http://www.aima.org/download.cfm/docid/6133E854-63FF-46FC-95347B445AE4ECFC |title=AIMA Roadmap to Hedge Funds |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref>。なお、目標比率にはソフトとハードの2種類があり、ハードの場合は運用報酬が利益から目標利益を差し引いた余りから徴収される一方、ソフトの場合は目標利益が差し引かれない<ref>Cathleen M. Rittereiser, Lawrence E. Kochard, [https://books.google.com/books?id=VXwKDSqr8UwC&pg=PA110&lpg=PA110&dq=hedge+fund+fee+hard+hurdle&source=bl&ots=44-wFvHigv&sig=oT-vDViKoerKzaLGCbcb6mgTZd4&hl=en&sa=X&ei=Ci_3T4XcIqq80QGjqaT6Bg&ved=0CJMEEOgBMAk#v=onepage&q=hedge%20fund%20fee%20hard%20hurdle&f=false A "Top Hedge Fund Investors: Stories, Strategies, and Advice"], John Wiley & Sons, 20 July 2010 p. 110</ref>。目標比率を指定する理由は、投資家が他所で投資した場合の利益と比べてファンド・マネージャーが出した利益が上回る場合のみマネージャーが運用報酬をもらえるようにするためである。 |
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また早期解約(1年以内を早期とすることが多い)や引き出し金額が投資額の一定比率を上回る場合、手数料を徴収することもある<ref>{{cite web|url=http://www.hedgeworld.com/education/index.cgi?page=hedge_fund_basics |title=Hedge Funds | HedgeWorld | The Definitive Hedge Fund Community |publisher=HedgeWorld |date= |accessdate=26 November 2011}}</ref>。これは短期投資家を退けるとともに回転率を下げ、運用成績が悪い時期に解約を減らすためである。なお、運用手数料と運用報酬はファンド・マネージャーがもらうことが多いが、解約料はファンドが保持することが多い。 |
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* [[スパークス・アセット・マネジメント]][http://www.sparx.co.jp/] |
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*: 設立:2006年10月、戦略:マルチ・ストラテジー |
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* タワー投資顧問 |
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* ファンネックス・アセット・マネジメント |
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* アクシーズ投資顧問 |
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*: 設立:1996年10月、戦略:ロング・ショート |
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* シンプレクス・アセット・マネジメント[http://www.simplexasset.com/] |
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*: 設立:1999年11月、戦略:金利裁定取引、アクティビスト、マーケット・ニュートラル |
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* GCIアセットマネジメント[http://www.gci.jp/] |
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*: 設立:2000年4月、戦略:ロング・ショート、金利裁定取引 |
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* あすか・アセット・マネジメント[http://www.asuka-advisory.com/index.html] |
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*: 設立:2002年7月、戦略:ロング・ショート、アクティビスト |
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* ムーンライト・キャピタル[http://www.moonlightcap.co.jp/] |
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*: 設立:2003年1月、戦略:ロング・ショート |
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* ミョウジョウ・アセット・マネジメント[http://www.myojoam.co.jp/index.html] |
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*: 設立:2003年4月、戦略:ロング・ショート |
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* アルフェックス・インベストメンツ |
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*: 設立:2004年7月、戦略:ロング・ショート |
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* プラウド投資顧問 |
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*: 設立:2004年8月、戦略:マーケット・ニュートラル |
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* ユナイテッド・マネジャーズ・ジャパン[http://www.umj-jp.com/] |
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*: 設立:2004年12月、戦略:ロング・ショート、アクティビスト、クオンツ、為替トレーディング |
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* 21世紀アセットマネジメント[http://www.21st-asset.com/] |
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*: 設立:2005年2月、戦略:グローバル・マクロ |
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* エピック・パートナーズ・インベストメンツ[http://www.epic-partners.jp/] |
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*: 設立:2005年4月、戦略:マーケット・ニュートラル |
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* スタッツ・インベストメント・マネジメント[http://www.stats.co.jp/] |
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*: 設立:2005年4月、戦略:マーケット・ニュートラル、ロング・ショート |
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* ガイア・キャピタル・マネジメント[http://www.gaiacm.com/] |
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*: 設立:2005年9月、戦略:マルチ・ストラテジー |
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* モントレー・アセット・マネジメント |
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*: 設立:2006年3月、戦略:ロング・ショート |
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* ルート・アセット・マネジメント |
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*: 設立:2006年4月、戦略:ロング・ショート |
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* フィノウェイブインベストメンツ[http://www.finnowave.com/] |
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*: 設立:2005年9月、戦略:ロング・ショート |
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* クラッシーキャピタルマネジメント |
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*: 設立:2013年1月、戦略:アクティビスト |
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=== ファンドマネージャーへの報酬 === |
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==関連項目== |
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ヘッジファンド運用会社は一般的にはその投資マネージャーが所有しているため、彼らは運用会社の利益を懐に入れる権利がある。運用手数料は会社の営業経費を賄うことが目的なので、運用報酬(と手数料の余剰金)は利益として会社の所有者に分配されることが多い。ヘッジファンド運用会社が役員報酬などを公開することはまれなので、「収入の最も高いファンド・マネージャーの一覧」といったリストはヘッジファンドが徴収する手数料とファンドに投資された資金を概算することによって推測されているものである<ref name="Goldstein">{{cite news |title=Paulson, at $4.9 billion, tops hedge fund earner list |author=Matthew Goldstein |url=http://www.reuters.com/article/2011/04/01/us-hedgefunds-richlist-idUSTRE7304N320110401 |work=Reuters |date=1 April 2011 |accessdate=26 July 2012}}</ref>。多くのファンド・マネージャーは自らのファンドに持ち分を積み上げているため、業績が良い年には収入の最も高いファンド・マネージャーが40億米ドルを儲ける可能性もある<ref name="Schwartz">{{cite news |title=Pay of Hedge Fund Managers Roared Back Last Year |author=Nelson D. Schwartz |url=https://www.nytimes.com/2010/04/01/business/01hedge.html |newspaper=New York Times |date=31 March 2010 |accessdate=8 August 2012}}</ref><ref>{{cite book |title=Chasing Alpha |last=Augar |first=Philip |year=2009 |publisher=Bodley Head |location=London |isbn=9781847920362 |page=65}}</ref>。 |
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*[[投資信託]] |
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*[[投資ファンド]] |
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収入の最も高いファンド・マネージャーたちは金融業界で最も高い収入を得ており<ref name="bbchedge">{{cite news |url=http://www.bbc.co.uk/news/business-11942117 |title=Masters of the universe: meet the world's best-paid men |author=Richard Anderson |date=2 February 2011 |publisher=BBC |accessdate=28 July 2012}}</ref>、収入の最も高いファンド・マネージャーのうち1位から25位までの総収入は[[S&P 500]]に含まれる銘柄の[[最高経営責任者]]500人の総収入よりも高い<ref>{{cite web |url=https://ssrn.com/abstract=2134208 |title=Executive Compensation and Corporate Governance in the U.S.: Perceptions, Facts and Challenges |author=Kaplan, Steven N. |date=22 August 2012 |work=Chicago Booth Research Paper No. 12-42; Fama-Miller Working Paper |publisher=Social Science Research Network |accessdate=8 September 2012}}</ref>。しかし、ほとんどのヘッジファンド・マネージャーはそれ以下の収入であり、運用報酬を得ていない場合は雀の涙の収入しかもらえない可能性もある<ref name="bbchedge" />。 |
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*[[ポンド危機]] |
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*[[アジア通貨危機]] |
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2011年、収入の最も高いファンド・マネージャーは30億米ドル、10位は2億1千万米ドル、30位は8千万米ドルを儲けた<ref>{{cite news |url=http://www.forbes.com/lists/2012/hedge-fund-managers-12_land.html |title=The 40 Highest-Earning Hedge Fund Managers |author=Nathan Vardi |date=3 January 2012 |work=Forbes |publisher= |accessdate =12 July 2012}}</ref>。2011年、アメリカのファンド・マネージャーのうち収入の最も高い1位から25位までの平均収入は5億7,600万米ドルであり<ref name="Westbrook">{{cite news |title=Pay For Top-Earning U.S. Hedge Fund Managers Falls 35%, AR Says |author=Jesse Westbrook |url=https://www.bloomberg.com/news/2012-03-30/pay-for-top-earning-u-s-hedge-fund-managers-falls-35-ar-says.html |work=Bloomberg |date=30 March 2012 |accessdate=8 August 2012}}</ref>、一方ヘッジファンド投資専門家全体の平均は690,786米ドル、中央値は312,329米ドルであり、ヘッジファンドの[[最高経営責任者]]の間では平均が1,037,151米ドル、中央値が600,000米ドルであり、ヘッジファンドの{{仮リンク|最高投資責任者|en|Chief investment officer}}の間では平均が1,039,974米ドル、中央値が300,000米ドルである<ref name="Tunick">{{cite news |title=Compensation Survey:Banking on the Back Office |author=Britt Erica Tunick |url=http://www.absolutereturn-alpha.com/Article/3036783/Compensation-Survey-Banking-on-the-Back-Office.html |magazine=Absolute Return + Alpha |date=1 June 2012 |accessdate=8 August 2012}}</ref>。 |
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*[[ロシア財政危機]] |
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*[[ジョージ・ソロス]] |
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[[フォーブス (雑誌)|フォーブス]]による2012年の世界長者番付では1,226人がランクインした<ref>{{cite news |url=http://www.forbes.com/billionaires/list/ |title=The World's Billionaires |date=March 2012 |publisher=Forbes |accessdate=9 August 2012}}</ref>が、このうち36人は財産の大部分をヘッジファンドのマネージメントから獲得したという<ref>{{cite news |url=http://www.forbes.com/sites/edwindurgy/2012/03/09/billionaire-hedge-fund-managers/ |title=Billionaire Hedge Fund Managers |author=Edwin Durgy |date=9 March 2012 |work=Forbes |accessdate=9 August 2012}}</ref>。また[[サンデー・タイムズ]]の2012年イギリス長者番付上位1,000位では、ヘッジファンドのファンドマネージャー54人がランクインした<ref>{{cite web |url=http://hereisthecity.com/2012/04/27/alan-howard-tops-hedge-fund-rich-list-with-personal-fortune-of-1/ |title=Sunday Times Hedge Fund Rich List 2012 |author= |date=April 2012 |work=HITC Business |publisher=Here Is The City |accessdate=12 July 2012}}</ref>。 |
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== 構造 == |
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ヘッジファンドは[[投資ファンド]]の一種であり、一般的にはオフショアの[[コーポレーション]]、[[合資会社]]、または[[LLC]]の会社形態をとる<ref>Gerald T. Lins, Thomas P. Lemke, Kathryn L. Hoenig & Patricia Schoor Rube, ''Hedge Funds and Other Private Funds: Regulation and Compliance'' §§ 2:7 - 2:12 (2013 - 2014 ed.).</ref>。ヘッジファンドは{{仮リンク|投資マネジメント|en|Investment management|label=投資マネージャー}}組織または会社によって管理されるが、マネージャーの組織は法的にも財政上もヘッジファンド、およびその資産とは完全に分離されている<ref name="BusinessKnowledge">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=uI-cJ0ZAf5sC&pg=PA122&dq=hedge+fund+no+employees&hl=en&sa=X&ei=ZqWOUOi-L-eOiAKC5YC4DA&ved=0CDkQ6AEwAA#v=onepage&q=hedge%20fund%20no%20employees&f=false |title=Business Knowledge for IT in Hedge Funds |year=2008 |isbn=0955412455 |publisher=Essvale Corporation Limited |page=122}}</ref><ref name="StrachmanBook2">{{cite book |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |location=Hoboken, New Jersey |page=47 }}</ref>。多くの投資マネージャーは営業上の支援に外部のサービス業者を雇っている<ref name="StrachmanBook3">{{cite book |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |location=Hoboken, New Jersey |page=23 }}</ref>。ここでいうサービス業者には{{仮リンク|プライム・ブローカー業務|en|Prime brokerage|label=プライム・ブローカー}}、銀行、[[管理者]]、販売業者、[[監査法人]]などを含む。 |
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プライム・ブローカーは取引の{{仮リンク|決済 (金融)|en|Clearing (finance)|label=決済}}を行い、レバレッジと短期融資を提供する<ref name="Anson3" /><ref name="Stowell">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=B5624MOzmHwC&pg=PT275&lpg=PT275&dq=prime+broker+hedge+funds+investment+banks&source=bl&ots=i3yVkdAjvZ&sig=ucPuFSD3M3UV_5_mjifN1TmK52U&hl=en&sa=X&ei=5hVvUOXdCO3kiwLd9ICoBQ&ved=0CFQQ6AEwBQ |author=David Stowell |title=Investment Banks, Hedge Funds, and Private Equity |year=2012 |publisher=Academic Press |isbn=012415820X}}</ref>。プライム・ブローカーは大手投資銀行の一部門であることが多い<ref name="Stowell4">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=5G5pj7SRIwMC&pg=PA101&dq=Prime+brokers+are+usually+divisions+of+large+investment+banks&hl=en&sa=X&ei=R6WSUNmaCqXBiwLx_YDgDQ&ved=0CDkQ6AEwAQ#v=onepage&q=Prime%20brokers%20are%20usually%20divisions%20of%20large%20investment%20banks&f=false |author=David Stowell |title=An Introduction to Investment Banks, Hedge Funds, and Private Equity|year=2010 |isbn=0123745039 |publisher=Academic Press |page=101}}</ref>。プライム・ブローカーは[[デリバティブ]]の取引相手役を担当し、{{仮リンク|ロング・ショート・エクイティ|en|Long/short equity}}や{{仮リンク|転換社債の裁定取引|en|Convertible arbitrage}}などの戦略をとるヘッジファンドには証券を貸す業務も行っている<ref name="Athanassiou">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zcgH-EBCa48C&pg=PA283&dq=prime+broker+counterparty+derivative+contracts&hl=en&sa=X&ei=RsyjUN5qg-aLAsemgagL&ved=0CDoQ6AEwATgK#v=onepage&q=prime%20broker%20counterparty%20derivative%20contracts&f=false |author=Phoebus Athanassiou |title=Research Handbook on Hedge Funds, Private Equity and Alternative Investments |year=2012 |publisher=Edward Elgar Publishing |page=283 |isbn=1849802785}}</ref><ref name="Fabozzi">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=7LOD1CmBD-cC&pg=PA749&dq=prime+broker+lending+securities&hl=en&sa=X&ei=Mc6jULutEsbliwL48IGgCQ&ved=0CD0Q6AEwAg#v=onepage&q=prime%20broker%20lending%20securities&f=false |author=Frank J. Fabozzi |title=Handbook of Finance, Financial Markets and Instruments |year=2008 |publisher=Wiley |page=749 |isbn=0470078146}}</ref>。またヘッジファンド資産の管理([[カストディアン|カストディ]])サービス、取引の執行と精算サービスをヘッジファンド・マネージャーに提供する<ref name="Lhabitant3">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA4-PA2&lpg=SA4-PA2&dq=Prime+broker+maintain+a+securities-lending,+comprising+banks,+large+institutional+holders+and+other+broker-dealers,+and+act+again+as+intermediaries%E2%80%94most+institutional+securities+lenders+would+not+accept+the+credit+risk+of+dealing+directly+with+hedge+funds+whereas+they+are+more+than+happy+to+take+exposure+to+the+prime+broker.&source=bl&ots=qXa9IXEiMU&sig=FZf7fVF5bSgYA1UkaOLg9RU5gXA&hl=en&sa=X&ei=wxJvUJ2KKOvRiAKGgIGwBw&ved=0CC0Q6AEwAA#v=snippet&q=prime%20broker%20custodial&f=false |title=Handbook of Hedge Funds |pages=1–4 |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。 |
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ヘッジファンドの管理者は[[オペレーション・マネジメント]]、[[会計]]、{{仮リンク|評価 (金融)|en|Valuation (finance)|label=資産の評価}}業務を行う。管理者は{{仮リンク|事務部門|en|Back office}}としてファンド・マネージャーをサポートすることで、取引に専念させることができる<ref name="Lhabitant2">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA4-PA7&lpg=SA4-PA7&dq=hedge+fund+administrator+back+office&source=bl&ots=qXa9HZDfN-&sig=ql40KOmqXKMou204Y0nQ2qnhiAA&hl=en&sa=X&ei=QdVtUKWCJaamiQL3yYGoCA&ved=0CDQQ6AEwAA#v=onepage&q=hedge%20fund%20administrator%20back%20office&f=false |title=Handbook of Hedge Funds |pages=4-2 |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。管理者はまた{{仮リンク|申込 (金融)|en|Subscription (finance)|label=申込}}と償還({{lang|en|Redemption}})の事務処理を行い、 株式事務を代行する<ref name="BusinessKnowledge2">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=uI-cJ0ZAf5sC&pg=PA121&dq=hedge+fund+administrator+subscription&hl=en&sa=X&ei=iM-jULvbD8zkigKcq4DIAg&sqi=2&ved=0CD0Q6AEwAg#v=onepage&q=hedge%20fund%20administrator%20subscription&f=false |title=Business Knowledge for IT in Hedge Funds |year=2008 |isbn=0955412455 |publisher=Essvale Corporation Limited |page=121}}</ref><ref name="Vishwanath">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=oowq_PkME3UC&pg=PA596&dq=hedge+fund+administrator+subscription&hl=en&sa=X&ei=rN6jUM2SKOTAiwLO7oDoAw&ved=0CEAQ6AEwAzgK#v=onepage&q=hedge%20fund%20administrator%20subscription&f=false |last1=Vishwanath |first1=Ramanna |last2=Krishnamurti |first2=Chandrasekhar |title=Investment Management: A Modern Guide to Security Analysis and Stock Selection |year=2009 |isbn=3540888012 |publisher=Springer |page=596}}</ref>。アメリカのヘッジファンドは管理者を任命する義務がなく、上記の事務処理を全てファンド・マネージャーが行うこともできる<ref name="Nelken">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=Hn_Qg43bKX8C&pg=PA51&lpg=PA51&dq=hedge+fund+administrator+NAV+US+investment+manager&source=bl&ots=15dJKBef0E&sig=aLsvJ_ZLZzM2xcxVSK5qH6-3T_A&hl=en&sa=X&ei=OCRvUMWVAYn3iwKd94DwDw&ved=0CDcQ6AEwAA#v=onepage&q=hedge%20fund%20administrator%20NAV%20US%20investment%20manager&f=false |title=Hedge Fund Investment Management |author=Izzy Nelken |isbn=0750660074 |publisher=Butterworth-Heinemann |year=2005 |page=51}}</ref>。しかし、ファンド・マネージャーが自ら事務処理を行うと、{{仮リンク|純資産額|en|Net asset value}}の評価など、利益相反がおこる状況に陥りやすい<ref name="Jorian">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=bGQxlDjujmMC&pg=PA421&lpg=PA421&dq=Hedge+fund+NAV+outside+of+US+investment+manager&source=bl&ots=3kQ02G_EES&sig=n64LHjNOsDtN6KtCkqXPyBlsnVA&hl=en&sa=X&ei=Ey5vUOHNDquUigLCx4CADg&ved=0CFwQ6AEwBw#v=onepage&q=Hedge%20fund%20NAV%20outside%20of%20US%20investment%20manager&f=false |title=Financial Risk Manager Handbook |author=Philippe Jorion |publisher=Wiley |year=2009 |isbn=0470479612 |page=421}}</ref>。そのため、一部のヘッジファンドは自ら進んで外部監査人を雇い、透明度を高めている<ref name="Nelken" />。 |
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販売業者とは証券の販売を務める[[引受|引受業者]]、[[仲立人]]、取引業者などのことである<ref name="FATCA">{{cite web |url=http://www.pwc.com/en_US/us/asset-management/investment-management/publications/assets/pwc-fatca-proposed-regulations.pdf |title=Foreign Account Tax Compliance Act (FATCA) Proposed Treasury Regulations |publisher=PricewaterhouseCoopers LLP |accessdate=31 October 2012 |page=153}}</ref>。販売業者はまた、ファンドの潜在的な投資家に向けて[[マーケティング]]をする。多くのヘッジファンドは販売業者を雇わず、ファンド・マネージャー自らが証券の販売やヘッジファンドのマーケティングをするが、販売業者や仲立人・取引業者を雇うヘッジファンドも多い<ref>{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=mCRSNZ40v6MC&pg=PT158&lpg=PT158&dq=placement+agents+hedge+fund&source=bl&ots=VGuE9dtIES&sig=J6G1hfmA9FhMVwu-04q2jdXz5xI&hl=en&sa=X&ei=u511ULT5KqL1iQKptoDICg&ved=0CEkQ6AEwBDgK |title=AARP Getting Started in Hedge Funds: From Launching a Hedge Fund to New Regulation, the Use of Leverage, and Top Manager Profiles |author=Daniel A. Strachman |year=2011 |publisher=Wiley |page=93}}</ref><ref name="Nelken2">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=Hn_Qg43bKX8C&pg=PA93&lpg=PA93&dq=hedge+fund+marketing+investor+broker&source=bl&ots=15dJODko0z&sig=_tH2j1zHFXKkcB6kjzBPlXnhYp8&hl=en&sa=X&ei=xqd1UI7OO8bSigKPwoHQDg&ved=0CEwQ6AEwBA#v=onepage&q=hedge%20fund%20marketing%20investor%20broker&f=false |title=Hedge Fund Investment Management |author=Izzy Nelken |year=2005 |isbn=0750660074 |publisher=Butterworth-Heinemann |page=51}}</ref>。 |
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多くのヘッジファンドはファンドの会計や税務サービスを独立監査人会社に任せている。年末会計はファンドの所在地の[[会計基準]]、または[[国際財務報告基準]]に準拠することが多い<ref name="StrachmanAudit">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA187 |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |page=187}}</ref>。監査人はヘッジファンドの純資産額や運用資産を検証することがある<ref name="Agarwal">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=IvWcNW4r4PUC&pg=PA66 |title=The Future of Hedge Fund Investing: A Regulatory and Structural Solution for a Fallen Industry |author=Monty Agarwal |isbn=0470537442 |publisher=Wiley |year=2009 |pages=65–66}}</ref><ref>{{cite book |url= https://books.google.com/books?id=32cGd1V4A5sC&pg=PT32 |title= Hedge Fund Operational Due Diligence: Understanding the Risks |author= Jason A. Scharfman |isbn= 0470372346 |publisher= Wiley |year=2009}}</ref>が、一部の監査人は「純資産額ライト」({{lang|en|NAV lite}})のサービス、すなわち独立した評価の代わりにファンド・マネージャーの評価をそのまま使う検証サービスしか提供していない<ref name="StrachmanHedgeNAV">{{cite book |url= https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA187&dq=hedge+fund+auditor+all+NAVs&hl=en&sa=X&ei=6uejUKzaDYuvqAGjuoDwCw&ved=0CEYQ6AEwBA#v=onepage&q=hedge%20fund%20auditor%20all%20NAVs&f=false |author= Daniel A. Strachman |title= The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher= Wiley |page=187}}</ref>。 |
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=== 本拠地と税金 === |
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ヘッジファンドの法的構造、特にその{{仮リンク|本籍 (法律)|en|Domicile (law)|label=本拠地}}や[[法人]]の種類は、投資家の税金に関する予想によって決定される。また、[[#規制|規制]]の状況にも影響される。多くのヘッジファンドは外国や免税の投資家にとっての税務上の悪影響を避けるために設立地に[[オフショア金融センター]]を選んでいる<ref name="Fraser-Sampson">{{cite book |url= https://books.google.com/books?id=AA017P5CIssC&pg=PA112&lpg=PA112&dq=hedge+fund+legal+structure+offshore&source=bl&ots=e8lBIV0w2H&sig=aL4vpXHhaXkBZG9CWq7C_l0gbNc&hl=en&sa=X&ei=Fg13UOWZBK3MigKOvYDwBg&ved=0CDMQ6AEwADgK#v=onepage&q=hedge%20fund%20legal%20structure%20offshore&f=false |author= Guy Fraser-Sampson |title= Alternative Assets: Investments for a Post-Crisis World |year=2010 |isbn= 0470661372 |publisher= Wiley |page=112}}</ref><ref name="Anson2">{{cite book |url= https://books.google.com/books?id=Hqgyll9MgkcC&pg=PA174&lpg=PA174&dq=hedge+fund+domicile+legal+structure&source=bl&ots=gMnEYDEBHr&sig=h3fqjYRYhjVCwOjVuGUEvh7gwXk&hl=en&sa=X&ei=y_Z2UK6_MonMigKW14FI&ved=0CDMQ6AEwADgK#v=onepage&q=hedge%20fund%20domicile%20legal%20structure&f=false |author=Mark J. P. Anson |title=CAIA Level I: An Introduction to Core Topics in Alternative Investments |year=2009 |isbn=0470447028 |publisher=Wiley |pages=174–175}}</ref>。アメリカの証券に投資する{{仮リンク|オフショア・ファンド|en|Offshore fund}}は投資収入の一部に源泉徴収税を支払わなければならないが、アメリカの[[譲渡所得]]税は支払わないことが多い。しかし、投資した資産の価値が上昇した場合、ヘッジファンドの投資家は自らの所在地で税金を支払う必要がある<ref name="StrachmanHedge">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA88&lpg=PA88&dq=Offshore+funds+withholding+taxes+capital+gains&source=bl&ots=AdrvABfDc1&sig=e17eW_tPMTdSS4a--87uSgt-mNo&hl=en&sa=X&ei=SC94UM7uKKTmiwLh-oDQDQ&ved=0CGcQ6AEwCA#v=onepage&q=Offshore%20funds%20withholding%20taxes%20capital%20gains&f=false |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |pages=88–89}}</ref><ref name="StrachmanHedge2">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA54&lpg=PA54&dq=offshore+funds+pension+plan+endowment&source=bl&ots=AdrvABhzc0&sig=TFJAHQRME8rFCYGr_U5gDCZNsA0&hl=en&sa=X&ei=hzV4UKf5C6rUigLsyoCwDg&ved=0CDQQ6AEwAA#v=onepage&q=offshore%20funds%20pension%20plan%20endowment&f=false |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |pages=52–54}}</ref>。これは複数の法域が同時に課税することを避けているので、クロスボーダー投資を推進する結果となる<ref name="Muraleedharan">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=RX_dLGtIE3AC&pg=PA162&dq=Muraleedharan+offshore+funds+cross-border&hl=en&sa=X&ei=MG_CUL_KEerkiwKGvYHgCw&ved=0CDoQ6AEwAA#v=onepage&q=Muraleedharan%20offshore%20funds%20cross-border&f=false |author=D. Muraleedharan |title=Modern Banking: Theory and Practice |year=2009 |isbn=8120336550 |publisher=Wiley |page=162}}</ref>。 |
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[[年金]]や[[基金]]などアメリカにおいて税が免除される機関投資家は免税である状態を維持するためにオフショアのヘッジファンドに投資し、本業と関係のない{{仮リンク|課税所得|en|Taxable income}}をできるだけ抑えようとする<ref name="StrachmanHedge2" />。ファンド・マネージャー自身は[[金融センター]]に本拠地を置くことが多く、運用手数料による所得税は当地の[[租税法]]に従って支払う<ref name="Stowell2">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=5G5pj7SRIwMC&pg=PA267&lpg=PA267&dq=offshore+funds+tax+fee+investment+manager&source=bl&ots=-7Ej1Ieqpo&sig=QbpuiWGO-Ym4RzPLTq_27DBisoI&hl=en&sa=X&ei=BT54UP_uC6z8iQK75IDQCg&ved=0CEQQ6AEwAw#v=onepage&q=offshore%20funds%20tax%20fee%20investment%20manager&f=false |author=David Stowell |title=An Introduction to Investment Banks, Hedge Funds, and Private Equity|year=2010 |isbn=0123745039 |publisher=Academic Press |page=267 |quote=For offshore funds, the fund pays management and incentive feeds to the management company (which is taxed as ordinary income.)}}</ref>。2011年時点では、ヘッジファンドの登録地は約半分がオフショアで残り半分がオンショアである。オフショア地に登録しているヘッジファンドのうち、主流は[[ケイマン諸島]]であり、ヘッジファンド全体の34パーセントを占めている。そのほか、アメリカが24パーセント、[[ルクセンブルク]]が10パーセント、[[アイルランド]]が7パーセント、[[イギリス領ヴァージン諸島]]が6パーセント、[[バミューダ諸島]]が3パーセントである<ref name="TheCityUk">{{cite web |url=http://www.thecityuk.com/assets/Uploads/Hedge-Funds-2012-F.pdf |author=TheCityUK |title=Hedge Funds: March 2012 |year=2012 |publisher=Jersey Finance |page=4 |accessdate=12 October 2012}}</ref>。 |
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=== バスケット・オプション === |
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{{quote|source=|[[ドイツ銀行]]と[[バークレイズ]]は顧客であるヘッジファンドのために特別なオプション口座を開設している。この口座は銀行の名の下にあり、銀行は資産を所持していることを主張しているものの、実際にはヘッジファンドがその資産を完全な支配下に置き、収益を上げている。そして、ヘッジファンドは取引をする - その多くは数秒で終わる - が、ちょうど1年間経つまで待ってからオプションを行使することで、[[譲渡所得|譲渡所得税]]をより低い長期税率に抑えることができる。| アレクサンドラ・スティーブンソン、2015年7月8日、[[ニューヨーク・タイムズ]]紙にて<ref name="NYT_2015_07" />}} |
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{{仮リンク|カール・レヴィン|en|Carl Levin}}が委員長を務めた{{仮リンク|アメリカ合衆国上院国土安全保障委員会常設調査小委員会|en|United States Senate Homeland Security Permanent Subcommittee on Investigations|label=アメリカ上院常設調査小委員会}}は2014年の報告でヘッジファンドが1998年から2013年までバスケット・オプションを使って数十億米ドル規模の[[脱税]]をしたと発表した。[[アメリカ合衆国内国歳入庁|アメリカ内国歳入庁]]は2009年に{{仮リンク|ルネサンス・テクノロジーズ|en|Renaissance Technologies}}に対する調査を開始した<ref name="NYT_2015_dec_30">{{cite web | url=https://www.nytimes.com/2015/12/30/business/economy/for-the-wealthiest-private-tax-system-saves-them-billions.html?emc=edit_na_20151229&nlid=50121183&ref=headline&_r=0 | title=For the Wealthiest, a Private Tax System That Saves Them Billions: The very richest are able to quietly shape tax policy that will allow them to shield billions in income | publisher=New York Times | date=29 December 2015 | accessdate=31 December 2015 | author1=Scheiber, Noam | author2=Cohendec, Patricia}}</ref>が、レヴァンは内国歳入庁が調査に6年もかかっていることを批判した。ルネサンス社はバスケット・オプションを使って「10年以上の間、60億米ドル以上の税」を回避したという<ref name="NYT_2015_07" />。 |
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{{quote|source=|これらの銀行とヘッジファンドは怪しげな仕組み商品を使用して、巨大な「レッツ・プリテンド」(訳注:{{lang-en-short|Let's pretend}}、「装いましょう」の意)のごっこ遊びで[[アメリカ合衆国財務省|財務省]]に数十億米ドルの損害を出させ、経済を銀行の貸し出し過剰による株式投機から防ぐためのセーフガードをバイパスしている。|{{仮リンク|カール・レヴィン|en|Carl Levin}}、2014年、{{仮リンク|アメリカ合衆国上院国土安全保障委員会常設調査小委員会|en|United States Senate Homeland Security Permanent Subcommittee on Investigations|label=アメリカ上院常設調査小委員会}}後の記者会見にて<ref>{{cite news|title=Senate report: Barclays and Deutsche Bank helped hedge funds skirt $6 billion in taxes|newspaper=The Washington Post|date=2014-04-21|accessdate=2017-04-29|author=Douglas, Danielle|url=https://www.washingtonpost.com/business/economy/senate-report-barclays-and-deutsche-bank-helped-hedge-funds-skirt-6-billion-in-taxes/2014/07/21/d732664a-10e5-11e4-8936-26932bcfd6ed_story.html}}</ref>}} |
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[[ドイツ銀行]]と[[バークレイズ]]が提供したバスケット・オプションを利用したヘッジファンドは{{仮リンク|ルネサンス・テクノロジーズ|en|Renaissance Technologies}}のほかにもいくつかあった<ref name="NYT_2015_07">{{cite web | url=https://www.nytimes.com/2015/07/09/business/dealbook/irs-cracks-down-on-hedge-fund-tax-strategy.html?action=click&contentCollection=Economy&module=RelatedCoverage®ion=Marginalia&pgtype=article | title=I.R.S. Cracks Down on Hedge Fund Tax Strategy | publisher=New York Times | date=8 July 2015 | accessdate=31 December 2015 | author=Stevenson, Alexandra}}</ref>。ルネサンス社はバスケット・オプションがヘッジファンドに「借金によるリターン増加のチャンスを与え、またモデリングやプログラミングのミスから保護する」こともできるため、「非常に重要である」と主張した<ref name="NYT_2015_07" />。2015年7月、内国歳入庁はヘッジファンドがバスケット・オプションを利用して「短期取引の脱税」をしたと定め、バスケット・オプションはこれ以降確定申告しなければならない項目になり、申告しなかった場合はペナルティが与えられるとした<ref name="NYT_2015_07" />。 |
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=== ファンド・マネージャーの所在地 === |
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ファンド自体と違い、ファンド・マネージャーはオンショアに留まることが多い。2011年末時点では[[アメリカ]]が依然として最大の投資センターであり、アメリカ所在のヘッジファンドが運用資産の70パーセントを占めている<ref name="TheCityUk" />。2012年4月時点では[[証券取引委員会|アメリカ証券取引委員会]]に登録し、私募ヘッジファンドを管理している投資顧問は約3,990名いる<ref name="SECDoddFrank">{{cite web |url=http://www.sec.gov/divisions/investment/imissues/df-iaregistration.pdf |title=Dodd-Frank Act Changes to Investment Adviser Registration Requirements – Preliminary Results |publisher=Securities and Exchange Commission |year=2012 |accessdate=18 October 2012}}</ref>。アメリカ国内において、ヘッジファンドのマネージャーが最も多いのは[[ニューヨーク|ニューヨーク市]]と[[コネチカット州]]の{{仮リンク|ゴールド・コースト (コネチカット州)|en|Gold Coast (Connecticut)|label=ゴールド・コースト}}地域である<ref name="Satyajit">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=P1_mrWcDdxgC&pg=PA80&lpg=PA80&dq=hedge+fund+new+york+connecticut&source=bl&ots=ko5NbOXpUe&sig=O_r4CI8tBn9rndUgtf_IMcZ_KU0&hl=en&sa=X&ei=aYuBUMnpM7HmiwLFiYHYCg&ved=0CGkQ6AEwCTgU#v=onepage&q=hedge%20fund%20new%20york%20connecticut&f=false |title=Extreme Money: Masters of the Universe and the Cult of Risk |author=Satyajit Das |year=2011 |publisher=FT Press |isbn= 0132790076 |pages=79–80}}</ref><ref name="Sohail">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=6gNbUBk_-J0C&pg=PA120&lpg=PA120&dq=world's+hedge+fund+new+york+connecticut&source=bl&ots=99Kyhkn5Ov&sig=OPuw2CbmOXPq4o0Dt6VQLf0aYrE&hl=en&sa=X&ei=aoyBUNn3BKfDiwK9qoH4Bw&ved=0CEkQ6AEwBQ#v=onepage&q=world's%20hedge%20fund%20new%20york%20connecticut&f=false |title=Hedge Funds: Crossing the Institutional Frontier |editor= Sohail Jaffer |author=Andrew Shrimpton |year=2006 |publisher=Euromoney Institutional Investor |isbn=1843742683 |page=120}}</ref>。 |
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[[ヨーロッパ]]では[[ロンドン]]所在のファンド・マネージャーが最もおおい。ユーロヘッジ社({{lang|en|EuroHedge}})のデータによると、2011年時点ではイギリス所在のヘッジファンド800社が全ヨーロッパのヘッジファンド運用資産の約85パーセントを占めている<ref name="TheCityUk" />。アジアでも2003年以降には日本、[[香港]]、[[シンガポール]]などでヘッジファンドに対する投資意欲が高じている<ref name="Lhabitant5">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA2-PA59&dq=asia+hedge+funds&hl=en&sa=X&ei=-sqKUKrMJ4byqwGM4ICYAQ&ved=0CEgQ6AEwAzgK |title=Handbook of Hedge Funds |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。しかし、アジアのヘッジファンド資産は未だにイギリスとアメリカで運用されることが多い<ref name="TheCityUk" />。 |
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=== 法人格 === |
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ヘッジファンドの法人格は所在地と投資家によって異なることが多い。例えば、アメリカに所在するヘッジファンドでアメリカの課税投資家の投資を呼び込もうとしている場合は[[パートナーシップ|リミテッド・パートナーシップ]]か[[LLC]]の形態をとることが多い。リミテッド・パートナーシップなどの{{仮リンク|フロー・スルー実体|en|Flow-through entity}}をとることで企業と個人とで二重課税されることを防ぐことができる<ref name="Lhabitant3" />。リミテッド・パートナーシップには{{仮リンク|無限責任組合員|en|General partner}}(ジェネラル・パートナー)が1人いる必要があり(個人でも法人でも可)、このジェネラル・パートナーはリミテッド・パートナーシップを管理し、[[無限責任]]を負う<ref name="Anson3">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=ic75IjNy4mQC&printsec=frontcover&dq=hedge+fund+limited+partnership&source=bl&ots=bFEi3lK8Jx&sig=a9hK7lYvUMTXnskZdSQkyrFvkOo&hl=en&sa=X&ei=RTuAUJCVMofeigLVw4G4CA&ved=0CEwQ6AEwBTgU#v=snippet&q=limited%20partnership%20general%20partner%20manages%20assets&f=false |author=Mark J. P. Anson |title=CAIA Level I: An Introduction to Core Topics in Alternative Investments |year=2009 |isbn=0470447028 |publisher=Wiley |pages=22–23}}</ref><ref name="Nichols">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=t7RFuEqfipwC&pg=PA40&lpg=PA40&dq=hedge+fund+limited+partnership+US&source=bl&ots=xfoDgDc7fK&sig=XSjvVRpcGN7uYnM4FPz6POrLjPo&hl=en&sa=X&ei=Kj-AUPaEHc3aigL3kIHYAQ&ved=0CDcQ6AEwATgK#v=onepage&q=entity%20level%20tax&f=false |title=Investing in Hedge Funds, Revised and Updated Edition |author= Joseph G. Nicholas |year=2005 |publisher=Bloomberg Press |pages=40–41|isbn=978-1-57660-184-6}}</ref>。一方リミテッド・パートナー(有限責任組合員)はファンドの投資家であり、管理や投資戦略に関する義務はない。リミテッド・パートナーの責任はパートナーシップへの投資分までである<ref name="Nichols" /><ref name="Lhabitant411">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA2-PA64&dq=limited+liability+entity+hedge+fund+partner&hl=en&sa=X&ei=mIb5UM7pMYiLiAKF84CYCw&ved=0CDwQ6AEwAQ#v=onepage&q=limited%20liability%20entity%20hedge%20fund%20partner&f=false |title=Handbook of Hedge Funds |page=4.1.1 |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。アメリカのヘッジファンドはリミテッド・パートナーシップの代わりに[[LLC]]の形態をとることができ、投資家はLLCの株主となり、[[有限責任]]しか負わない<ref name="BusinessKnowledge124">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=uI-cJ0ZAf5sC&pg=PA124&dq=limited+liability+entity+hedge+fund+partner&hl=en&sa=X&ei=mIb5UM7pMYiLiAKF84CYCw&ved=0CFQQ6AEwBQ#v=onepage&q=limited%20liability%20entity%20hedge%20fund%20partner&f=false |title=Business Knowledge for IT in Hedge Funds |year=2008 |isbn=0955412455 |publisher=Essvale Corporation Limited |page=124}}</ref>。 |
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一方、[[オフショア金融センター]]で設立されたヘッジファンドはアメリカ以外の投資家を対象とする。中でも[[タックス・ヘイヴン]]で設立された場合、企業レベルで課税されない<ref name="Fraser-Sampson" />。オフショア・ヘッジファンドのマネージャーは{{仮リンク|年金基金|en|Pension fund}}、[[基金|機関基金]]、{{仮リンク|公益信託|en|Charitable trust}}などアメリカの免税投資家による投資を許可することが多い<ref name="Nichols" />。別の法人格としてはオープン・エンド型の[[ユニット・トラスト]]があり、これは非法人の[[ミューチュアル・ファンド]]という形態である<ref name="FundAssociates">{{cite web |url=http://fundassociates.com/pdfs/Offshore_vs_Onshore_Funds_Whitepaper.pdf |title=Offshore Hedge Funds vs. Onshore Hedge Funds |format=PDF |year=2008 |publisher=Fund Associates|accessdate=2017-04-29}}</ref>。例えば、日本の投資家はケイマン諸島などで設立されたユニット・トラストを好む<ref name="StrachmanHedgeJapan">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA43&lpg=PA43&dq=hedge+fund+unit+trusts+japanese&source=bl&ots=AdrvFEkwe0&sig=7DfIjTIg5dKkyoaVwWJ9B6E1OaA&hl=en&sa=X&ei=d1aAUMKzDO3liwLU2YG4Cg&ved=0CDMQ6AEwAA#v=onepage&q=hedge%20fund%20unit%20trusts%20japanese&f=false |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |page=3 |quote=If you are marketing to Japanese investors; you must have a Cayman-based unit trust. This group of investors rarely, if ever, invests in a hedge fund that is not set up as a unit trust.}}</ref>。 |
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ヘッジファンドを管理するファンド・マネージャーはリミテッド・パートナーシップのジェネラル・パートナーか企業化したファンドの「創業者株式」を所持することで会社の所有権を保持することができる<ref name="LhabitantInvestor">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA2-PA68&lpg=SA2-PA68&dq=investment+manager+hedge+fund+founder+shares&source=bl&ots=qXb0J_GlJ-&sig=6QiZmZLqdoVRHrgP0qGA09tVni0&hl=en&sa=X&ei=uVmAUMOmBsn5iwKA-oHACA&ved=0CEgQ6AEwBA#v=onepage&q=investment%20manager%20hedge%20fund%20founder%20shares&f=false |title=Handbook of Hedge Funds |page=4.2.1 |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。企業として設立されたオフショアのヘッジファンドの場合は[[取締役会]]を任命することができる。取締役会の目的は株主を代表して業務の監督を行うことにある<ref name="LhabitantBoard">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=zVubHUSOxpoC&pg=SA2-PA68&lpg=SA2-PA68&dq=investment+manager+hedge+fund+founder+shares&source=bl&ots=qXb0J_GlJ-&sig=6QiZmZLqdoVRHrgP0qGA09tVni0&hl=en&sa=X&ei=uVmAUMOmBsn5iwKA-oHACA&ved=0CEgQ6AEwBA#v=onepage&q=investment%20manager%20hedge%20fund%20founder%20shares&f=false |title=Handbook of Hedge Funds |page=4.2.2 |author= François-Serge Lhabitant |year=2007 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0470026634}}</ref>。しかし、実際には取締役員が監督に要する専門知識が持たないこともある。取締役員にファンドとの関係が薄い独立取締役とヘッジファンドの従業員でもある常務取締役の2種類を含む場合がある<ref name="LhabitantBoard" />。 |
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=== ファンドの種類 === |
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*{{仮リンク|オープンエンド型投資信託|en|Open-end fund|label=オープンエンド型}} - 新しく加入する投資家にヘッジファンドの株を発行し、株の持つ{{仮リンク|純資産額|en|Net asset value}}に基づく引き出しを定期に許可する。 |
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*{{仮リンク|クローズドエンド型投資信託|en|Closed-end fund|label=クローズドエンド型}} - 数が限定され、取引できる株を設立時に発行する<ref>{{cite web |url=http://www.sec.gov/rules/proposed/ia-2266.htm#P300_115564 |title=Registration Under the Advisers Act of Certain Hedge Fund Advisers: footnote 141 |work=Securities and exchange Commission |accessdate=22 April 2011}}</ref><ref>{{cite journal |last1=Ineichen |first1=Alexander M. |year=2002 |title=Funds of Hedge Funds: Industry Overview |journal=Journal of Wealth Management |volume=47 |issue=4}}</ref>。 |
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*[[上場]]ヘッジファンドの株は[[アイルランド証券取引所]]などの[[証券取引所]]で取引され、非適格投資家でも購入できる<ref>{{cite news|last=Clarke|first=Geordie|title=Listed hedge funds: Lifting the smokescreen|url=http://www.ftadviser.com/2012/04/18/investments/investment-trusts/listed-hedge-funds-lifting-the-smokescreen-whvwTCj5PEeC10zwQRChvO/article.html|accessdate=Feb 22, 2013|newspaper=Financial Times|date=April 18, 2012}}</ref>。 |
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=== サイドポケット === |
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サイドポケットとは、流動性の低い資産や確かな評価の難しい資産をファンドから分離する構造である<ref name="Travers">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=fOUKPCVl29QC&pg=SA7-PA98&lpg=SA7-PA98&dq=hedge+fund+side+pocket&source=bl&ots=X4nWAKSZzQ&sig=uZsG90gDITnXr0-ixzErJKr7siU&hl=en&sa=X&ei=-cKGUNWzLYGGjALcuYGgCw&ved=0CEcQ6AEwAw#v=onepage&q=hedge%20fund%20side%20pocket&f=false |title=Hedge Fund Analysis: An In-Depth Guide to Evaluating Return Potential and Assessing Risks |author=Frank J. Travers |year=2012 |publisher=Wiley |isbn=1118175468}}</ref>。サイドポケットに入れられた資産はヘッジファンドのほかの資産とは別に評価される<ref name="StrachmanBook">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=4YsogxfEsNQC&pg=PA63&dq=hedge+fund+side+pocket&hl=en&sa=X&ei=HyNsUfuhBoKQiAKKoIDAAw&ved=0CEkQ6AEwAg#v=onepage&q=hedge%20fund%20side%20pocket&f=false |author=Daniel A. Strachman |title=The Fundamentals of Hedge Fund Management |year=2012 |isbn= 1118151399 |publisher=Wiley |location=Hoboken, New Jersey |pages=63–64}}</ref>。サイドポケットは流動性の低い投資を入れるために作られているので、ヘッジファンドの他の資産と違い、投資家は投資から撤退するときにサイドポケットの資産からの払い戻しを受ける権利がない<ref name="StrachmanBook" />。サイドポケットの資産からの利益や損失はその資産がサイドポケットに入れられた時点での投資家にのみ比例按分で分配され、それ以降に参入した投資家には分配されない<ref name="StrachmanBook" /><ref name="Duc">{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=jQ_W-2vqw-4C&pg=PA16&lpg=PA16&dq=hedge+fund+side+pocket&source=bl&ots=OYVN7mmwDO&sig=1RoTU77zJ9zccGPaR6-F0nNcLNw&hl=en&sa=X&ei=y8aGUIjPMYP6iwLz34HoBw&ved=0CFMQ6AEwBQ#v=onepage&q=hedge%20fund%20side%20pocket&f=false |title=Market Risk Management for Hedge Funds: Foundations of the Style and Implicit Value-at-Risk |last1=Duc |first1=Francois |last2=Schorderet |first2=Yann |year=2008 |publisher=Wiley |pages=15–17 |isbn=0470722991}}</ref>。サイドポケットの資産は確かな評価が難しいため、手数料や純資産額の計算では 取得原価で評価される。これはファンド・マネージャーによる頻繁な評価を避けるためである<ref name="Duc" />。 |
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サイドポケットは2008年の金融危機において、解約要求が数多く発生した中、ヘッジファンドに広く使用されている。サイドポケットを利用することで流動性の低い投資を流動性が改善するまで売却しないで済み、損失を低減させることができる。しかし、サイドポケットの使用は投資家の解約を阻むため、不人気であることが多く、また悪用されているや利用が不公平であるとの指摘も多い<ref name="SECprobes">{{cite news |url=http://www.reuters.com/article/2010/04/28/hedgefunds-sec-idUSN2713105420100428 |title=SEC probes hedge funds' use of side pockets-WSJ |publisher=Reuters |date=27 April 2010 |accessdate=15 April 2013 |first=Joseph A. |last=Giannone}}</ref><ref name="ForSale">{{cite news |url=https://dealbook.nytimes.com/2011/03/28/for-sale-illiquid-assets-hard-to-value/ |title=For Sale: Illiquid Assets, Hard to Value |author=Azam Ahmed |publisher=The New York Times |date=28 March 2011 |accessdate=15 April 2013}}</ref><ref>{{cite news |url=https://www.wsj.com/article/SB115465505123626547.html |title='Side-Pocket' Accounts Of Hedge Funds Studied |last1=Zuckerman |first1=Gregory |last2=Patterson |first2=Scott |date=4 August 2006 |work=The Wall Street Journal |accessdate=18 April 2013}}</ref>。SECはサイドポケットの積極的な使用に懸念を示しており、サイドポケットを悪用したファンド・マネージャーに対しては制裁で対処した<ref>Gerald T. Lins, Thomas P. Lemke, Kathryn L. Hoenig & Patricia Schoor Rube, ''Hedge Funds and Other Private Funds: Regulation and Compliance'' § 5:23 (2013 - 2014 ed.).</ref>。 |
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== 規制 == |
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ヘッジファンドはその所在地の本国法、連邦法、州法による規制を遵守しなければならない。例えば、アメリカでは[[ミューチュアル・ファンド]]とヘッジファンドに対する規制が異なっている<ref>{{cite web|url=http://www.ici.org/investor_ed/brochures/faqs_hedge |title=The Differences Between Mutual Funds and Hedge Funds, April 2007 |publisher=ICI |date= |accessdate=26 November 2011}}</ref>。ミューチュアル・ファンドはヘッジファンドやほかの非公開ファンドと違い、{{仮リンク|1940年投資会社法|en|Investment Company Act of 1940}}の詳しく、広範囲にわたる規制を受けなければならない<ref>Lemke, Lins & Smith, ''Regulation of Investment Companies'' (Matthew Bender, 2014 ed.).</ref>。[[証券監督者国際機構]]の報告によると、ヘッジファンドに対する規制でもっともよく見られるのは詐欺を防止するために、投資顧問とファンド・マネージャーを規制することである。一方、アメリカのヘッジファンドは適格投資家の投資しか受け付けないため、登記や報告の要件を免除されている<ref name="Coggan" />。2010年、アメリカの[[ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法|ドッド=フランク法]]と欧州連合の{{仮リンク|2011年オルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令|en|Alternative Investment Fund Managers Directive 2011|label=オルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令}}の成立により、ヘッジファンドの報告に関する規制が強化された。<ref name="Ismail">{{cite news |title=Institutions Damp Hedge Fund 'Startup Spirit,' Citi's Roe Says |first=Netty |last=Ismail |url=http://www.businessweek.com/news/2011-02-21/institutions-damp-hedge-fund-startup-spirit-citi-s-roe-says.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110225001817/http://www.businessweek.com/news/2011-02-21/institutions-damp-hedge-fund-startup-spirit-citi-s-roe-says.html |newspaper=Bloomberg Businessweek |date=21 February 2011 |archivedate=25 February 2011 |accessdate=9 January 2015}}</ref><ref name="Regulators" />。 |
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2007年、自己規制の一環として主要なファンド・マネージャー14名が「ヘッジファンド標準」({{lang|en|Hedge Fund Standards}})というベストプラクティスの[[国際規格|国際標準]]を発表し、その目的はヘッジファンド業界における「透明性、誠実性、良いコーポレート・ガバナンスのフレームワーク」を作り上げるためであるとした<ref name="HFSB001">{{cite web |url= http://www.hfsb.org/about-us/mission/ |title=Mission |author=Hedge Fund Standards Board |access-date=27 September 2016}}</ref>。同年、基準の宣伝とメンテナンスを目的とする{{仮リンク|ヘッジファンド標準委員会|en|Hedge Fund Standards Board}}が設立され、2016年までにヘッジファンド・マネージャー約200名と投資総額3兆米ドルを有する機関投資家が標準の支持を表明した<ref name="HFSB002">{{cite web |url=http://www.hfsb.org/about-us/history/|title=History |author=Hedge Fund Standards Board |access-date=27 September 2016}}</ref>。 |
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=== アメリカ === |
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アメリカのヘッジファンドは当局によって規制され、報告と文書記録保管の義務を課されている<ref name="Overview">{{cite web |url=http://www.gao.gov/htext/d09677t.html |title=Hedge Funds: Overview of Regulatory Oversight, Counterparty Risks, and Investment Challenges |first=Orice M. |last= Williams |date=7 May 2009 |publisher=U.S. Government Accountability Office |accessdate=14 March 2011}}</ref>。また多くのヘッジファンドは{{仮リンク|アメリカ商品先物取引委員会|en|Commodity Futures Trading Commission}}の規制も受け、詐欺と市場操作を禁じた{{仮リンク|1936年商品取引所法|en|Commodity Exchange Act}}を守らなければならない<ref name="Brown-Hruska">{{cite web |url=http://www.cftc.gov/opa/speeches04/opabrown-hruska-22.htm |title=Securities Industry Association Hedge Funds Conference |first= Sharon |last=Brown-Hruska |date=30 November 2004 |work=Securities Industry Association Hedge Funds Conference Keynote Address|publisher=U.S Commodity Futures Trading Commission |accessdate=16 March 2011}}</ref>。[[1933年証券法]]に基づき、ヘッジファンド会社は[[証券取引委員会]](SEC)に届出書を提出して、SECの[[私募]]に関する規約を守らなければ証券の募集を行うことができない<ref>{{cite web |url=http://www.sec.gov/about/laws.shtml#secact1933 |title=The Laws That Govern the Securities Industry: The Securities Act of 1933 |publisher=Securities and Exchange Commission |date= |accessdate=29 March 2011}}</ref>。[[1934年証券取引所法]]の規制により、投資家の人数が500以上のヘッジファンドはSECに届出書を提出しなければならない<ref>{{cite book |title=Hedge funds:risk and regulation |last1=Baums |first1=Theodor |last2=Cahn |first2=Andreas |year=2004 |publisher=Walter de Gruyter |isbn=3-89949-149-1 |pages=64–65}}</ref><ref name="SEA1934">{{cite web |url=http://www.sec.gov/about/laws.shtml#secexact1934 |title=The Laws That Govern the Securities Industry: The Securities Exchange Act of 1934 |publisher=Securities and Exchange Commission |date= |accessdate=29 March 2011}}</ref><ref name="Skeel2005">Skeel D. (2005). [http://www.legalaffairs.org/issues/November-December-2005/feature_skeel_novdec05.msp Behind the Hedge]. ''Legal Affairs''.</ref>。さらに、{{仮リンク|1940年投資顧問法|en|Investment Advisers Act of 1940}}はヘッジファンドのマネージャーと顧問を規制し、投資家の種類と人数を限定し、公募を禁止した。ただし、投資資産が5百万米ドル以上の適格投資家からの投資のみ受ける場合は、SECへの届出を免除した<ref name="Coggan" /><ref>{{cite web |author=Marx Law Library, University of Cincinnati College of Law |url=http://www.law.uc.edu/CCL/InvCoAct/sec3.html |title=The Investment Company Act of 1940 |publisher=Law.uc.edu |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref><ref>{{cite web |url=http://www.sglawyers.com/hedgefundworld/forming-a-hedgefund/exemption-from-registration.aspx |title=Forming A Hedge Fund |work=SGLawyers.com |accessdate=29 March 2011}}</ref>。投資資産が2,500万米ドル以上の機関投資家に関しても同じ扱いである<ref>{{cite web|author=Marx Law Library, University of Cincinnati College of Law |url=http://www.law.uc.edu/CCL/InvCoAct/sec2.html |title=The Investment Company Act of 1940 |publisher=Law.uc.edu |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref>。 |
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2004年12月以降、SECはヘッジファンドの運用資産が2,500万以上かつ投資家の人数が14人以上の場合、投資顧問の届け出を義務付けた<ref>{{cite web |url=http://sec.gov/rules/final/ia-2333.htm |title=Registration Under the Advisers Act of Certain Hedge Fund Advisers |last1= |first1= |last2= |first2= |date=7 December 2004 |work=U.S. Securities and Exchange Commission |publisher= |accessdate=17 March 2011}}</ref>。SECは急成長しているヘッジファンド産業に対する規制において、「リスクに基づくアプローチ」を使用しているとした<ref>{{cite web |url=http://sec.gov/rules/final/ia-2333.htm#P78_37183 |title=Registration Under the Advisers Act of Certain Hedge Fund Advisers: Footnote 42 |last1= |first1= |last2= |first2= |date=7 December 2004 |work=U.S. Securities and Exchange Commission |publisher= |accessdate=17 March 2011}}</ref>。この新しい規制は賛否両論であり、SEC委員のうち2人が反対し<ref>{{cite web |url=http://www.seclaw.com/docs/NewHedgeFundAdvisorRule.htm |title=Registration of Hedge Fund Managers: Bureaucracy Without Benefit |last1=Astarita |first1=Mark J |last2= |first2= |date= |work=SECLaw.com |publisher= |accessdate=17 March 2011}}</ref>、1人のヘッジファンド・マネージャーが法院に告訴した。2006年6月、{{仮リンク|合衆国コロンビア特別巡回区控訴裁判所|en|United States Court of Appeals for the District of Columbia Circuit}}は新規制を無効とし、SECに規制を再び検討するよう命じた<ref>{{cite court |litigants=Goldstein vs. SEC |vol=04-1434 |reporter= |opinion= |pinpoint= |court=D.C. App. |date=23 June 23, 2006 |url=http://www.seclaw.com/docs/ref/GoldsteinSEC04-1434.pdf |quote=}}</ref>。これにより、SECは2007年にルール206(4)-8を採用した。このルールは前の規制と違い、届け出を必要としないが、過失や詐欺的行為に対する処分の可能性を上げたという<ref>Adelfio NE, Griffin N. (2007). [http://www.mondaq.com/article.asp?articleid=51202 United States: SEC Affirms Its Enforcement Authority With New Anti-Fraud Rule Under the Advisers Act]. Mondaq.</ref>。運用資産が1億米ドル以上のファンド・マネージャーは四半期ごとに登録株の所持を開示しなければならず、なんらかの登録株を5パーセント以上所持している場合も開示しなければならない<ref name="SEA1934" />。登録投資顧問は事業慣行と懲戒処分記録をSECとヘッジファンドの投資家に報告しなければならず、書面でのコンプライアンス方針と{{仮リンク|最高コンプライアンス責任者|en|Chief compliance officer}}を置く必要もある。これらの記録と商習慣はSECの監査を受ける<ref name="Overview" />、 |
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2010年7月に成立した[[ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法|ドッド=フランク法]]<ref name="Ismail" /><ref name="Chay">{{cite web |url=http://www.asiaone.com/Business/News/My%2BMoney/Story/A1Story20101129-249737.html |title=Call For Joint Effort to Protect Hedge Fund Business |first= Felda |last=Chay |date=27 November 2010 |work=The Business Times Singapore |publisher=Singapore Press Holdings |accessdate=8 March 2011}}</ref>により、運用資産が1.5億米ドル以上の私募ファンドの顧問はSECに届け出て登録しなければならず<ref name="Chalmers">{{cite web |url=http://www.regulatorycompliance.com/newsletter/2010/April/financial_regulatory_reform.html |title=Financial Regulatory Reform – What Does it Mean for You? |last1=Chalmers |first1=Geoffrey T. |date = April 2010|work=RegulatoryCompliance.com |publisher=Regulatory Compliance, LLC |accessdate=15 March 2011}}</ref><ref>{{cite news |title=Hedge funds register, wait for SEC to visit |first1=Svea |last1=Herbst-Bayliss |first2=Katya |last2=Wachtel |url=http://www.reuters.com/article/2012/03/28/us-hedgefunds-registration-idUSBRE82R1FH20120328 |work=Reuters |date=28 March 2012 |accessdate=2 July 2012}}</ref>、フォームADV、およびファンドの運用資産と売買ポジションをSECに提出する必要がある<ref>Lemke & Lins, ''Regulation of Investment Advisers'' (Thomson West, 2014 ed.).</ref>。ドッド=フランク法成立以前、投資家の数が15人以下の場合は登録を免除されていたが、多くのファンド・マネージャーはすでに機関投資家の求めに応じてSECに登録していた<ref name="Orol">{{cite web |url=http://articles.marketwatch.com/2010-11-19/economy/30713275_1_fund-managers-hedge-fund-hedge-funds |title=SEC: Hedge funds must open up their books |last1=Orol |first1=Ronald D. |date=19 November 2010 |work=MarketWatch |accessdate=13 March 2013}}</ref>。ドッド=フランク法により、運用資産が1億米ドル未満の投資顧問は州法による規制を受けるようになり<ref name="Chalmers" />、これにより州法による規制を受けるヘッジファンドの数が増えた<ref name="Brief_Summary" />。海外のファンド・マネージャーでも運用資産が2,500万米ドル以上の場合はSECに登録する必要がある<ref>{{cite news |url=https://www.bloomberg.com/news/2011-02-23/asia-s-cash-starved-small-hedge-funds-face-tsunami-of-u-s-registration.html |title=Asia's Cash-Poor Small Hedge Funds |first= Netty |last=Ismail |date=23 February 2011 |work=Bloomberg |publisher=Bloomberg L.P. |accessdate=8 March 2011}}</ref>。同法はさらにヘッジファンドにそのポートフォリオと取引に関する情報を新しく設立された{{仮リンク|金融安定監督評議会|en|Financial Stability Oversight Council}}などの規制機関に提出する義務を課した<ref name="Brief_Summary">{{cite web | url=http://banking.senate.gov/public/_files/070110_Dodd_Frank_Wall_Street_Reform_comprehensive_summary_Final.pdf |title=Brief Summary of the Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act |format=PDF |work=banking.senate.gov |publisher=United States Senate |accessdate=8 March 2008}}</ref>。例えば、SECに対しては投資ファンドの活動とポジションの詳細をフォームPFに記入して提出しなければならない<ref name="Lins">Gerald T. Lins, Thomas P. Lemke, Kathryn L. Hoenig & Patricia Schoor Rube, ''Hedge Funds and Other Private Funds: Regulation and Compliance'' § 5:23 (2013 - 2014 ed.).</ref>。同法が採用した{{仮リンク|ボルカー・ルール|en|Volcker Rule|preserve=1}}により、規制機関は銀行とその関連会社や持株会社に対して自己売買業務を禁じ、ヘッジファンドとの関係、投資、後援を限定するよう規制を実施する義務を課された<ref name="Brief_Summary" /><ref>{{cite web |url=http://www.sec.gov/news/press/2011/2011-133.htm |title=SEC Adopts Dodd-Frank Act Amendments to Investment Advisers Act |date=22 June 2011 |work=Securities and Exchange Commission |accessdate=2 July 2012}}</ref><ref>{{cite web|author=Marx Law Library, University of Cincinnati College of Law |url=http://www.mmwr.com/home/publications/default.aspx?d=2889 |title=Dodd-Frank Changes to Adviser Regulation |work=Montgomery McCracken |date=18 October 2010 |accessdate=29 March 2011}}</ref>。 |
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=== ヨーロッパ === |
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[[欧州連合]]のヘッジファンドへの規制はマネージャーを通じて行われることが多い<ref name="Coggan" />。例えば、欧州連合のヘッジファンドの8割を占める[[イギリス]]<ref>{{cite news |url=http://www.bbc.co.uk/news/business-11577887 |title=EU finance ministers agree new hedge fund curbs |last1=Shore |first1=Ben |date=19 October 2010 |website=BBC News Business |accessdate=18 July 2013}}</ref>ではファンド・マネージャーが{{仮リンク|金融行動監視機構|en|Financial Conduct Authority}}の認証と規制を受ける<ref name="Regulators">{{cite news |url=http://www.reuters.com/article/2011/02/25/us-finance-summit-reforms-idUSTRE71O41P20110225?pageNumber=1 |title=Regulators Crack Down on Banks, Markets |date=25 February 2011 |work=Reuters |accessdate=8 March 2011 |first=Kevin |last=Drawbaugh}}</ref>。具体的な規制は国によって違う。例えば、[[ポルトガル]]では[[デリバティブ]]の使用が、[[フランス]]ではレバレッジの使用が規制されている<ref name="Coggan" />。 |
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ファンド・マネージャーは欧州連合の{{仮リンク|2011年オルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令|en|Alternative Investment Fund Managers Directive 2011|label=オルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令}}を守らなければならない。欧州連合によると、この指令の目的はオルタナティブ投資ファンドに対する監視とコントロールの強化である<ref>{{cite web |url=http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/10/572&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en |title=Directive on Alternative Investment Managers ('AIFMD'): Frequently Asked Questions |date=11 November 2010 |work=Europa |publisher=European Union |accessdate=8 March 2008}}</ref>。指令は欧州連合におけるファンド・マネージャーに加盟国の規制機関に登録すること<ref>{{cite web|url=https://ssrn.com/abstract=2383445 |ssrn=2383445 |title=Varieties of Regulation: How States Pursue and Set International Financial Standards |last1=Prabhakar |first1=Rahul |date=1 June 2013 |publisher=Oxford University GEG |accessdate=7 August 2015}}</ref>と、より頻繁に以前の規定より詳細な情報開示を行うことを義務づけている。また、資本比の要求も上げた。さらに、欧州連合加盟国のうち、1か国でも認証を受けた場合、全加盟国で活動できる「パスポート」のシステムを導入した<ref name="Chay" /><ref name="Regulators" />。指令の規制範囲は欧州連合加盟国に駐在するファンド・マネージャーのほか、ヨーロッパの投資家にファンドへの投資を宣伝する海外のファンド・マネージャーも含む<ref name="Chay" />。指令はまた、ヘッジファンド業界の慣習であるボーナス繰り延べと報酬返還の条項を制限している<ref>{{cite web |url= http://www.ft.com/cms/s/0/a766a03e-e47d-11e1-affe-00144feab49a.html#axzz2466ka3Qi |title=EU hedge funds face pay threat - FT.com |first1=Alex |last1=Barker |first2=Sam |last2=Jones |work=ft.com |year=2012 |accessdate=20 August 2012}}</ref>。 |
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=== その他 === |
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ヘッジファンドの一部は[[ケイマン諸島]]、[[ダブリン]]、[[ルクセンブルク]]、[[イギリス領ヴァージン諸島]]、[[バミューダ諸島]]などの[[オフショア金融センター]]で設立されたが、これらの法域は非適格投資家の扱い、顧客の機密性、ファンド・マネージャーの独立性<ref name="Ismail" /><ref name="Regulators" />に関する規制がそれぞれ違う<ref>{{cite news |title=TalkingPoint: Outlook For Offshore-registered Hedge Funds In 2011|first= |last= |url=http://www.financierworldwide.com/article_printable.php?id=7809 |work=Financier Worldwide |date = February 2011|accessdate=16 March 2011}}</ref>。 |
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[[南アフリカ共和国]]において、投資ファンドのマネージャーは{{仮リンク|金融サービス委員会 (南アフリカ)|en|Financial Services Board (South Africa)|label=金融サービス委員会}}に届け出て、許可を得る必要がある<ref>{{cite web |url=http://www.hedgefund-sa.co.za/HF.pdf |title=Hedge Fund SA |work=Industry Overview |publisher=Hedge Fund SA |accessdate=15 December 2011}}</ref>。 |
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== 業績 == |
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=== 業績の測定 === |
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ヘッジファンドは業績を何らかの中央レポジットリーに報告する必要がなく、投資の公募と宣伝が規制されているため、多くのファンド・マネージャーは業績の公開を拒否しており、そのため個別のヘッジファンドの投資実績統計を獲得するのは至難の業である。しかし、個別ではなく全体の要約は業界誌<ref>{{cite web|last=Willoughby |first=Jack |url=http://online.barrons.com/article/SB119101983536943198.html?mod=b_hps_9_0001_b_this_weeks_magazine_home_top |title=High Performance – Barron's Online |publisher=Online.barrons.com |date=1 October 2007 |accessdate=14 August 2010}}</ref><ref>{{cite news| url=https://www.wsj.com/public/resources/documents/BA_HedgeFund50_071001.pdf |title=Here They Are—The Hedge Fund 50 |work=The Wall Street Journal}}</ref>やデータベース<ref name="Or">{{cite news |url=https://www.wsj.com/article/BT-CO-20110304-711526.html |title=Hedge Fund Assets Near $2.5 Trillion in 2010 |first=Amy |last=Or |work=The Wall Street Journal |publisher=Dow Jones & Company, Inc. |date=4 March 2011 |accessdate=3 April 2011}}</ref>や投資コンサルタント会社<ref name="Lost Decade">{{cite web |url=http://www.hennesseegroup.com/releases/release20100119.html |title=Hedge Funds Out Perform In The "Lost Decade" |publisher=Hennessee Group LLC |date=19 January 2010 |accessdate=3 April 2011}}</ref>が提供することもある。 |
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ヘッジファンド8,400社のデータに基づき、ヘッジファンドの平均利益率を毎年11.4パーセントとする概算があり、これは市場全体の手数料差引前利益より6.7パーセント上である<ref name="mallaby" /><ref name="Coggan" />。またもう1つの概算では2000年1月から2009年12月まで株価は平均で毎年2.62パーセント下落した一方、ヘッジファンドは6.54パーセント上がった上、[[ボラティリティ]]もより低いという<ref name="Lost Decade" />。しかし、より新しいデータを使った概算では、ヘッジファンドの業績は下がり、市場全体よりも下となった<ref>{{Cite news|url=https://www.bloomberg.com/gadfly/articles/2016-03-24/hedge-funds-have-a-performance-problem|title=Just Look at Those Subpar Returns!|last=Kaissar|first=Nir|date=2016-03-24|work=Bloomberg Gadfly|accessdate=2017-04-14}}</ref>。 |
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ヘッジファンド業績の測定ではリターンとリスクの概算が比較される<ref name="Bollen">{{cite journal |last1=Bollen |first1=Nicolas P.B. |last2=Whaley |first2=Robert E. |date=April 2009 |title=Hedge Fund Dynamics: Implications |journal=The Journal of Finance |volume=LXIV |issue=2 |pages=985–1035 |publisher=Blackwell Publishing |url=http://www.afajof.org/afa/forthcoming/4944.pdf |format=PDF |accessdate=3 April 2011 |doi=10.1111/j.1540-6261.2009.01455.x}}</ref>。よく使われる測定値には[[シャープ・レシオ]]<ref>{{cite book |title=Evaluating hedge fund performance |last=Tran |first=Vinh Q. |year=2006 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-471-68171-7 |page=181}}</ref>、[[トレイナー・レシオ]]、[[アルファ値 (金融経済)|ジェンセンのアルファ]]などがある<ref>{{cite book |title=Hedge fund alpha |last=Longo |first=John M.|year=2009 |publisher=World Scientific Publishing |isbn=981-283-465-6 |pages=203–4}}</ref>。これらの測定値はリターンが[[正規分布]]に従い、[[自己相関]]がない場合に最も役に立つが、実際にはリターンがどちらの仮定にも満たさない場合が多い<ref name="CTA22">{{cite book |title=Commodity Trading Advisors: Risk, Performance Analysis, and Selection |last1=Christopherson |first1=Robert |last2=Gregoriou |first2=Greg N. |year=2004 |publisher=John Wiley & Sons |isbn=0-471-68194-6 |pages=377–384}}</ref>。 |
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理論上の問題がある伝統的な測定値に代わり、新しい測定値の導入が試みられた。例としてはシャープ・レシオを修正したもの<ref name="CTA22" /><ref>{{cite book |title=Encyclopedia of alternative investment |last=Gregoriou |first=Greg N. |year=2008 |publisher=Taylor & Francis Inc. |isbn=1-4200-6488-6 |page=303}}</ref>、キーティングとシャードウィックが2002年に発表した{{仮リンク|オメガ・レシオ|en|Omega ratio}}<ref>{{cite book |title=Hedge fund alpha |last=Longo |first=John M.|year=2009 |publisher=World Scientific Publishing |isbn=981-283-465-6 |page=205}}</ref>、シャルマが2004年に発表したAIRAP<ref>{{cite book |title=Hedge Funds: Insights in Performance Measurement, Risk Analysis, and Portfolio Allocation |last=Sharma |first=Milind |year=2005 |publisher=Wiley, John & Sons Incorporated |isbn=0-471-73743-7 |pages=403–434}}</ref>、カプランとノウルズが2004年に発表したカッパ<ref>{{cite book |title=High-Frequency Trading |last=Aldridge |first=Irene |year=2009 |publisher=Wiley, John & Sons Incorporated |isbn=0-470-56376-1 |page=56}}</ref>などがある。 |
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=== セクター・サイズの効果 === |
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ヘッジファンドの[[アルファ値 (金融経済)|アルファ値]](業績のうち、マネージャーのスキルにあたる部分)がヘッジファンド業界の拡張により薄められたという主張がある。この主張がなされた理由は2つある。1つはヘッジファンドの業績は[[アノマリー (市場)|市場の変則性]]に基づくものだが、売買高が増えたことで変則性が少なくなった可能性、もう1つはヘッジファンド業界の報酬モデルが大変魅力的なので、多くのファンド・マネージャーがこぞって参入し、これにより人材が相対的に少なくなった可能性である<ref>{{cite book |last=Lack |first=Simon |title=The Hedge Fund Mirage: The Illusion of Big Money and why it's Too Good to be True |url=https://books.google.com/books?id=VLNomI8ahVQC&pg=PT18&dq=%22a+small+hedge+fund+industry+has+done+better+than+a+large+one%22&hl=en&sa=X&ei=5koyUZLbPKqb0QW7-oDABA&ved=0CDkQ6AEwAA |accessdate=6 March 2013 |year=2012 |publisher=John Wiley & Sons |location=New Jersey, USA |isbn=9781118164310 |page=7}}</ref><ref>{{cite book |title=The Right Place for Alternative Betas in Hedge Fund Performance: an Answer to the Capacity Effect Fantasy |last1=Géhin |first1=Walter |last2=Vaissié |first2=Mathieu |url=http://faculty-research.edhec.com/servlet/com.univ.collaboratif.utils.LectureFichiergw?ID_FICHIER=1328885973094 |year=June 2005|journal=The Journal of Alternative Investments |volume=9 |issue=1 |pages=9–18 |publisher=EDHEC Risk and Asset Management Research Centre |accessdate=28 February 2013 |doi=10.3905/jai.2006.640263}}</ref>。 |
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=== ヘッジファンド指数 === |
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ヘッジファンドの業績を追跡する指数の種類は創設順に投資不可能、投資可能、クローンという3種類がある。指数は伝統的投資の市場では基準となるポートフォリオを代表するものとして重要な役割を果たしており、株価指数や債券指数の[[インデックスファンド]]の登場によりこれらの市場への投資が容易になっている。一方、ヘッジファンドは積極的に運用されているため、トラックするのは不可能である。いわゆる「投資不可能」なヘッジファンド指数({{lang|en|Non-investable hedge fund index}})はヘッジファンドを代表できるかもしれないが、その基準となるヘッジファンドの業績は多くが非公開となっている。そのため、このような指数でヘッジファンドの業績を概算すると、バイアスがかかってしまう可能性がある。この問題を解決する試みとして、業績に直接基づかず、ヘッジファンドの統計学上の特性を再現するというクローン指数が作られた。しかし、いずれも業績が実際に公開されている株価指数や債券指数ほどの正確さには至っていない<ref>一部のヘッジファンドの業績記録は [https://www.cambridgeassociates.com/foundations_endowments/working_together/specialized_expertise/alternative_assets/indicies_benchmarking.html Cambridge Associates Private Equity Index]にある。</ref>。 |
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=== 2016年の不振 === |
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2017年3月、ヘッジファンド・リサーチ社({{lang|en|Hedge Fund Research}})が2009年の景気後退期より2016年に運用終了したヘッジファンドのほうが多いことを報じた。報道によると、手数料が高いにもかかわらず運用成績が平均以下だったためいくつかの大きい年金基金はヘッジファンドへの投資を引き揚げた<ref name="170317NYPost">{{Cite web|url=http://nypost.com/2017/03/17/hedge-funds-close-at-faster-pace-in-2016-than-2009-recession/|title=Hedge funds close at faster pace in 2016 than 2009 recession|last=English|first=Carleton|date=2017-03-18|website=New York Post|access-date=2017-03-21}}</ref> |
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2016年、ヘッジファンド業界の運用資産が史上初の3兆米ドルに達した一方、新しく創設されたヘッジファンドの数は低迷し、2008年の金融危機の最中の数よりも下回った。2016年に創設されたヘッジファンドの数は729であり、一方2009年は784、2015年は968であった<ref name="170317NYPost" />。 |
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== 批判 == |
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[[ウォーレン・バフェット]]は、ヘッジファンドの投資によって、世界の投資家は「過去10年で1000億ドルは浪費している」と批判している<ref name="170405nikkei" />。 |
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=== システミック・リスク === |
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[[システミック・リスク]]とは、(1会社だけの不安定と対比して)金融システム全体が不安定になるリスクのことである。システム全体を不安定にする大事件のほか、金融機関1社が不安定になるとき、その危機が当該会社と取引している他の金融機関に波及する可能性もシステミック・リスクを引き起こす<ref name="NBER">{{cite web |url=http://www.nber.org/papers/w11200 |title=Systemic Risk and Hedge Funds |last1=Chan |first1=Nicholas |last2=Getmansky |first2=Mila |last3=Haas |first3=Shane M |last4=Lo |first4=Andrew W |date = March 2005|work=National Bureau of Economic Research |accessdate=27 March 2011}}</ref>。[[全米経済研究所]]<ref name="NBER" />や[[欧州中央銀行]]などはヘッジファンドが金融業界のシステミック・リスクを増大させていることを指摘し<ref>{{cite web|url=http://www.ecb.int/pub/pdf/other/financialstabilityreview200606en.pdf |title=Financial Stability Review June 2006 |format=PDF |date = June 2006|accessdate=14 August 2010}}</ref><ref>{{cite news|url=http://business.timesonline.co.uk/tol/business/economics/article670960.ece |title=ECB warns on hedge fund risk|author=Gary Duncan|publisher=The Times|date=2 June 2006|accessdate=1 May 2007 | location=London}}</ref>、特に[[ロングターム・キャピタル・マネジメント]](LTCM)が1998年に破綻した後はヘッジファンドの破綻がその取引相手の破綻を招くというシステミック・リスクに注目が集まった。(アメリカの[[連邦準備制度]]はLTCMを救済しなかったため、アメリカの納税者が直接費用を負担することはなかった<ref>{{cite news|last=Bookstaber |first=Richard |url=http://www.time.com/time/business/article/0,8599,1653556,00.html |title=Blowing up the Lab on Wall Street |publisher=Time.com |date=16 August 2007 |accessdate=14 August 2010}}</ref>が、代わりに銀行14社がLTCMの救済にあたった。 |
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しかし、金融業界においてこの指摘に反対する声も多い<ref>{{cite web|url=http://www.edhec-risk.com/edito/RISKArticleEdito.2006-07-27.4050/attachments/EDHEC%20response%20to%20ECB%20statement%20on%20HFs.pdf |title=A reply to the ECB's statement on hedge funds by the EDHEC Risk and Asset Management Research Centre |
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|work=edhec-risk.com |format=PDF |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref>。反対側の主張はヘッジファンドの大半は運用資産が少なく、レバレッジも低いため、いわゆる{{仮リンク|Too big to fail|en|Too big to fail}}(潰すには大き過ぎ)にはならず、ヘッジファンドが1つ潰れても経済システムにさほど影響しない、というものである<ref name="mallaby">{{cite book |title=More Money Than God: Hedge Funds and the Making of a New Elite |last=Mallaby |first=Sebastian |year=2010 |publisher=Penguin Group |isbn=1-59420-255-9}}</ref><ref>{{cite news |title=No Threats Here, Firms Tell the U.S. |first=Ben |last=Protess |url=https://dealbook.nytimes.com/2010/11/19/no-threats-here-financial-firms-tell-u-s/ |newspaper=The New York Times |date=19 November 2010 |accessdate=28 March 2011}}</ref>。2008年の金融危機以前とその最中におけるヘッジファンドのレバレッジ使用の研究<ref name="NBER1">{{cite web |url=http://www.nber.org/papers/w16801.pdf |last1=Ang |first1=Andrew |last2=Gorovyy |first2=Sergiy |last3=VanInwegen |first3=Greg |title=Hedge Fund Leverage |publisher=National Bureau of Economic Research |date=February 2011 |pages=28–29 |accessdate=2017-04-22 |quote=This paper presents, to our knowledge, the first formal analysis of hedge fund leverage using actual leverage ratios. Our unique dataset from a fund-of-hedge funds provides us with both a time series of hedge fund leverage from December 2004 to October 2009, which includes the worst periods of the financial crisis, and a cross section to investigate the determinants of the dynamics of hedge fund leverage.}}</ref>によると、ヘッジファンドのレバレッジは低く、投資銀行などと比べてレバレッジの使用が反循環的である<ref name="NBER2">{{cite web |url=http://www.nber.org/papers/w16801.pdf |last1=Ang |first1=Andrew |last2=Gorovyy |first2=Sergiy |last3=VanInwegen |first3=Greg |title=Hedge Fund Leverage |publisher=National Bureau of Economic Research |date=February 2011 |pages=28–29 |accessdate=2017-04-22 |quote=[H]edge fund leverage is fairly modest, especially compared with the listed leverage of broker/dealers and investment banks.}}</ref><ref name="NBER3">{{cite web |url=http://www.nber.org/papers/w16801.pdf |last1=Ang |first1=Andrew |last2=Gorovyy |first2=Sergiy |last3=VanInwegen |first3=Greg |title=Hedge Fund Leverage |publisher=National Bureau of Economic Research |date=February 2011 |pages=28–29 |accessdate=2017-04-22 |quote=[H]edge fund leverage is counter-cyclical to the market leverage of listed financial intermediaries. In particular, hedge fund leverage decreases prior to the start of the financial crisis in mid-2007, where the leverage of investment banks and the finance sector continues to increase. At the worst periods of the financial crisis in late 2008, hedge fund leverage is at its lowest while the leverage of investment banks is at its highest.}}</ref>。例えば、2008年の金融危機以前、ヘッジファンドにおけるレバレッジが下がった一方、それ以外の金融機関では上がる一方であった<ref name="NBER3" />。ヘッジファンドの破綻は通常でも起こりうることであり、金融危機の最中には数多くのヘッジファンドが破綻した<ref>{{cite news |title=Hedge fund graveyard: 693 and counting |first=Ben |last=Rooney |url=http://money.cnn.com/2008/12/18/news/economy/hedge_fund_liquidations/?postversion=2008121817 |work=CNNMoney.com |date=18 December 2008 |accessdate=5 April 2011}}</ref>。2009年、[[連邦準備制度|連邦準備制度理事会]]議長[[ベン・バーナンキ]]は{{仮リンク|アメリカ合衆国下院財政委員会|en|United States House Committee on Financial Services}}への証言で「どんなヘッジファンドや[[プライベート・エクイティ・ファンド]]でも1社がシステム上重大な会社になるとは考えない」と述べた<ref>[http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CHRG-111hhrg55809/pdf/CHRG-111hhrg55809.pdf ''Federal Reserve Perspectives on Financial Regulatory Reform Proposals: Hearing Before the H. Comm. on Financial Services''], 111th Cong. 25 (2009) (testimony of Ben S. Bernanke, Chairman, Board of Governors of the Federal Reserve System).</ref>。 |
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いずれにせよ、ヘッジファンドはリスク対リターンの比率をできるだけ下げる努力をしているが、何らかのリスクは必ず残る<ref>{{cite book| last = Coggan| first = Philip| title = Guide to Hedge Funds| origyear = 2008| year = 2010| publisher = The Economist| isbn = 978-1-84668-382-4| pages = 85–89}}</ref>。群集心理による行動があった場合、金融危機におけるシステミック・リスクが大きくなる。例えば、多くのヘッジファンドが似たような取引をしている場合、このような取引が損失を出しているときは大勢のヘッジファンドが同じように損失を出す。さらに、ヘッジファンドの大半はレバレッジがそれほど高くないが、銀行や[[ミューチュアル・ファンド]]と違ってレバレッジ使用の規制がないため、極めて高いレバレッジを投資戦略に組み込むヘッジファンドも存在する。金融危機のとき、極めて高いレバレッジがヘッジファンドを清算に追い込む可能性があり、特に流動性に乏しい資産に投資しているヘッジファンドは清算の危険性がより大きい。ヘッジファンドと投資銀行などプライム・ブローカー業務を提供する会社の間の緊密な関係は金融危機におけるドミノ現象を引き起こす可能性もあり、取引相手の銀行が潰れるとヘッジファンドが凍結してしまう可能性もある。ヘッジファンドが金融市場において大きな役割を果たしていることがこれらシステミック・リスクに対する懸念を増大させている。2008年時点ではヘッジファンドの{{仮リンク|運用資産|en|Assets under management}}総計が2兆米ドル近くになっていた<ref name="110119Reuters" />が、これはレバレッジ効果により増大させた市場リスクを算入していない値であり、実際のリスクはさらに大きいものになっている。 |
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{{仮リンク|金融サービス機構|en|Financial Services Authority}}が2012年8月に行った調査によると、リスクは限定的で、取引相手による保証金の要求が上がったためリスク自体が低下した。しかし、市場のストレス時に投資者が資金を引き出すと、ヘッジファンドが資産を売却することを余儀なくされる可能性があり、特にレバレッジの大きいヘッジファンド会社でおこった場合や同様のことが数社同時におこった場合、流動性と価格決定の問題を引き起こす可能性があるという<ref>{{cite web|url = http://www.fsa.gov.uk/static/pubs/other/hedge-fund-report-aug2012.pdf|title = Assessing the possible sources of systemic risk from hedge funds|author = Financial Services Authority|date = August 2012 |accessdate=2017-04-22}}</ref>。 |
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=== ヘッジファンドの不透明さ === |
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ファンド・マネージャーが規制を受ける一方、一般的なヘッジファンドの構造は直接な規制を免れるよう仕組まれており、一般投資家以上に投資活動を開示する必要はない。これは規制を受けて開示をする必要のある[[ミューチュアル・ファンド]]や[[上場投資信託]]と違う。ヘッジファンドに投資している投資家は小口投資ファンドの投資家と違い、ファンド・マネージャーに直接連絡でき、具体的な報告を受けることができる。しかし、投資家以外が同程度の報告を受けることは不可能であり、これがヘッジファンドは秘密的という評判に繋がっている。なお、ヘッジファンドの一部は投資家に対してすら不透明になっている<ref>Carrie Johnson, [http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/28/AR2006062801909.html "Scrutiny Urged for Hedge Funds"] ''The Washington Post'' (29 June 2006). Retrieved 1 March 2011</ref>。 |
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ヘッジファンドは投資を募集するために情報を公開することがある。しかし、情報を統合したデータベースでの情報は自己申告に基づくものであり、検算されていない<ref>Cassar, G., & Gerakos, J. (2009). Determinants of Hedge Fund Internal Controls and Fees. Retrieved from [http://www.hbs.edu/units/am/pdf/Gerakos.pdf]</ref>。ヘッジファンドのデータを記録している主要な2データベースを調査、比較した結果、どちらにも含まれているヘッジファンド465社の申告内容(利益、開始日、純資産価額、運用手数料、運用報酬、投資戦略など)が両データベースの間で違い、特に465社のうち5パーセントは利益と純資産価額が両データベースの間で大きく違う<ref>{{cite journal | last1 = Liang | first1 = B | year = 2000 | title = Hedge Funds: The Living and the Dead | url = | journal = Journal of Financial & Quantitative Analysis | volume = 35 | issue = 3| pages = 309–326 | doi=10.2307/2676206}}</ref>。このように公開されているデータが限定的なので、投資家は自分で調査しなければならず、小さいヘッジファンドに対する調査コストは5万米ドルに上る可能性がある<ref>{{cite journal | last1 = Stulz | first1 = R | year = 2007 | title = Hedge Funds Past, Present, and Future | url = | journal = Journal of Economic Perspectives | volume = 21 | issue = 2| pages = 175–194 | doi = 10.1257/jep.21.2.175 }}</ref>。 |
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投資家や独立監査人による検証が行われていないため、結果的に詐欺行為を助長してしまうこともあった<ref name="Kochan09">{{cite news |title=Hedge Fund Fraud: Hedge of darkness |author=Nick Kochan |url=http://www.risk.net/operational-risk-and-regulation/feature/1516866/hedge-fund-fraud-hedge-darkness |work=Risk |date=1 July 2009 |accessdate=21 April 2014}}</ref>。2000年代、インターナショナル・マネージメント・アソシエイツ社({{Lang|en|International Management Associates}})のカーク・ライト({{lang|en|Kirk Wright}})はメール詐欺などの不正を疑われ<ref name="FieldsWhite06">{{cite news |title=NFL Stars, Charmed by Kirk Wright, Lose Millions in Hedge Fund |author=Monee Fields-White |url=https://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=asENn6__scdM |work=Bloomberg |date=23 August 2006 |accessdate=28 April 2014}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.sec.gov/litigation/litreleases/lr19581.htm |title=SEC v. Kirk S. Wright, International Management Associates, LLC; International Management Associates Advisory Group, LLC; International Management Associates Platinum Group, LLC; International Management Associates Emerald Fund, LLC; International Management Associates Taurus Fund, LLC; International Management Associates Growth & Income Fund, LLC; International Management Associates Sunset Fund, LLC; Platinum II Fund, LP; and Emerald II Fund, LP, Civil Action |publisher=Sec.gov |date= |accessdate=14 August 2010}}</ref>、1億8千万米ドル近く騙し取ったとされた<ref>{{cite news|author=Amanda Cantrell, CNNMoney.com staff writer |url=http://money.cnn.com/2006/03/30/markets/wright_charged/index.htm |title=Hedge fund manager faces fraud charges |publisher=Money.cnn.com |date=30 March 2006 |accessdate=14 August 2010}}</ref>。2008年12月、[[バーナード・L・マドフ]]が500億米ドル規模の[[ポンジ・スキーム]]を行ったとして逮捕された<ref>{{cite news| url=http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article5331997.ece | work=The Times | location=London | title=Wall Street legend Bernard Madoff arrested over 50 billion Ponzi scheme | date=12 December 2008 | accessdate=4 May 2010 | first=Deirdre | last=Hipwell}}</ref>。マドフのスキームはヘッジファンドと似ているが違うものであり<ref>Daniel A. Strachman, ''The Fundamentals of Hedge Fund Management: How to Successfully Launch and Operate a Hedge Fund'' 168 (2012).</ref>、これを混同して記述されたものもあった<ref>{{cite book |last=Henriques |first=Diana |date=2011 |title=Bernie Madoff, the Wizard of Lies: Inside the Infamous $65 Billion Swindle |location=Oxford, UK |publisher=Oneworld |pages=36–209 |isbn=9781851689033}}</ref><ref>{{cite news |title=Madoff brother to plead guilty |author= |url=http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/world-news/madoff-brother-to-plead-guilty-16179138.html |newspaper=Belfast Telegraph |date=29 June 2012 |accessdate=28 June 2012}}</ref><ref>{{cite news |title=U.S. Attorneys Recover Again for South American Investors |author= |url=http://www.businesswire.com/news/home/20120626006758/en/U.S.-Attorneys-Recover-South-American-Investors |newspaper=Business Wire |date=26 June 2012 |accessdate=28 June 2012}}</ref>。いくつかの{{仮リンク|フィーダー・ファンド|en|Feeder fund}}はマドフに騙されて「投資」していたが、中でも最大なのが{{仮リンク|フェアフィールド・グリニッジ・グループ|en|Fairfield Greenwich Group}}の運営するフェアフィールド・セントリー・ファンド({{lang|en|Fairfield Sentry Fund}})であった。マドフの詐欺が発覚すると、米国[[証券取引委員会]]は2009年12月に改革を実施し、{{仮リンク|登録投資顧問|en|Registered Investment Adviser}}が運営するヘッジファンドは資産を[[カストディアン]]の管理下に置かなければならず、監査を受けなければならないことを規定した<ref>Securities and Exchange Commission, [http://www.sec.gov/rules/final/2009/ia-2968fr.pdf Custody of Funds or Securities of Clients by Investment Advisers, Release No. IA–2968] (Dec. 30, 2009), 75 Fed. Reg. 1456 (Jan. 11, 2010).</ref>。 |
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ヘッジファンドと投資家のマッチングは伝統的に不透明であり、投資が個人的な関係やポートフォリオ・マネージャーによる推薦に基づくことが多い<ref>{{cite web|url=http://rfs.oxfordjournals.org/content/early/2013/12/21/rfs.hht079|title=Opaque Trading, Disclosure, and Asset Prices: Implications for Hedge Fund Regulation|work=oxfordjournals.org|accessdate=2017-04-22}}</ref>。ヘッジファンドの多くは所持証券、投資戦略、過去の業績とマーケット指数との比較を開示し、投資家にヘッジファンドの投資についてある程度情報を提供しているが、所持証券の詳細は開始されないことが多い<ref>{{cite web|url=http://www.hmc.harvard.edu/docs/Final_Annual_Report_2013.pdf |format=PDF |title=Harvard Management Company Endowment Report |date=September 2013 |publisher=Hmc.harvard.edu |accessdate=2015-10-09}}</ref>。投資家はヘッジファンドの利益率の高さにつれられて投資するか、市場の[[ボラティリティ]]をヘッジするためにヘッジファンドに投資することが多い。一方、ヘッジファンドの複雑さと手数料の高さにより一部の投資家はヘッジファンド投資から撤退している。例えば、アメリカ最大の年金基金である[[カルパース|カリフォルニア州職員退職年金基金]]は2014年にヘッジファンド投資からの撤退計画を発表した<ref>{{cite web|url=http://www.hedgeweek.com/2015/03/09/219658/will-entrepreneurs-save-hedge-fund-industry|title=Will entrepreneurs save the hedge fund industry|date=9 March 2015|work=Hedgeweek|accessdate=2017-04-22}}</ref>。またヘッジファンドと投資家のマッチングを改善する動きもあり、例えばHedgeZ社はヘッジファンドを検索とソートできるシステムを提供しており<ref>{{cite web|url=https://www.bloomberg.com/bw/articles/2013-10-30/a-dating-service-for-those-who-love-hedge-funds|title=A Dating Service for Those Who Love Hedge Funds|author=Kirsten Salyer|work=Businessweek.com|accessdate=2017-04-22}}</ref>、iMatchative社は投資家の目標と行動プロファイルに基づくアルゴリズムでマッチングを行い、ヘッジファンドと投資家の両方にそれぞれの見方と目標が投資にどう影響するかわからせようとしている<ref>{{cite web|url=http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2014/10/28/imatchative-raises-20m-to-help-match-investors.html|title=IMatchative raises $20M to help match investors, hedge funds|date=28 October 2014|work=Silicon Valley Business Journal|accessdate=2017-04-22}}</ref>。 |
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=== インサイダー取引疑惑 === |
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2006年6月、[[証券取引委員会|アメリカ証券取引委員会]](SEC)で働く{{仮リンク|ガーリー・アギーレ|en|Gary J. Aguirre}}からの手紙により、{{仮リンク|アメリカ合衆国上院司法委員会|en|United States Senate Committee on the Judiciary}}はヘッジファンドと独立証券アナリストの間の関連を調査した。しかし、アギーレ氏が捜査主任として{{仮リンク|ピーコット・キャピタル・マネジメント|en|Pequot Capital Management}}の[[内部者取引|インサイダー取引]]疑惑を調査しているとき、[[モルガン・スタンレー]]が[[最高経営責任者]]として雇うことを検討していた{{仮リンク|ジョン・マック (銀行役員)|en|John J. Mack|label=ジョン・マック}}を取り調べようとした廉でSECから解雇された<ref>{{cite news|url=http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/28/AR2006062801909.html |title=Scrutiny Urged for Hedge Funds |publisher=Washingtonpost.com |date= 29 June 2006|accessdate=14 August 2010}}</ref>。上院司法委員会と{{仮リンク|アメリカ合衆国上院財政委員会|en|United States Senate Committee on Finance|label=財政委員会}}は解雇がマックの追及への違法な報復であるとして、2007年にこれを非難する報告を発表した<ref>Liz Noyer, [http://blogs.forbes.com/streettalk/2010/05/27/scales-of-justice-look-skewed-for-rajaratnam-samberg/ "Scales Of Justice Look Skewed For Rajaratnam, Samberg"] ''Forbes'' magazine (27 May 2010). Retrieved 21 February 2011</ref>ため、SECは2009年にピーコット社への調査の再開を余儀なくされた。ピーコット社は2,800万米ドルを支払うことでSECと和解、またピーコット社の{{仮リンク|最高投資責任者|en|Chief investment officer}}であった{{仮リンク|アーサー・サムバーグ|en|Arthur J. Samberg}}は投資顧問の職につくことを禁止された<ref>[http://www.whistleblower.org/press/press-release-archive/633-sec-settles-with-aguirre "SEC Settles with Aguirre"] Government Accountability Project (29 June 2010) Retrieved 21 February 2011</ref>。調査の圧力により、ピーコット社は営業を停止した<ref>Larry Edelman and Saijel Kishan, [https://www.bloomberg.com/apps/news?sid=adzQGDVos7OQ&pid=20601087 "Pequot Capital to Shut Amid SEC Insider-Trading Probe"] Bloomberg News. (28 May 2009). Retrieved 19 February 2011</ref>。 |
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2012年7月、[[ニューヨーク・タイムズ]]はヘッジファンド業界では市場調査の一環として株式アナリストへ[[アンケート]]を送ることが恒常的に行われていることを報じた。報道によると、アンケートを配る目的はアナリストの公開されていない主観を知ることで、あわよくば市場の短期間の動きに影響するアナリストの推奨を早く察知することにある<ref name="NYT71512">{{cite news |title=Surveys Give Big Investors an Early View From Analysts |url=https://www.nytimes.com/2012/07/16/business/in-surveys-hedge-funds-see-early-views-of-stock-analysts.html |accessdate=16 July 2012 |newspaper=The New York Times |date=15 July 2012 |author=Gretchen Morgenson |quote=The questions are vague but collectively give us a good sense of the analyst’s overall sentiment towards the company," the report concluded. "We find that this sentiment manifests itself in future analyst upgrades}}</ref>。 |
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=== 分散投資に適するかの論争 === |
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[[現代ポートフォリオ理論]]によると、合理的な投資家は平均分散分析に基づく最適なポートフォリオ(1単位のリスクに対し最も高いリターンを与えるポートフォリオ)に投資しようとする。ヘッジファンド(特に{{仮リンク|マーケット・ニュートラル|en|Market neutral}}なヘッジファンド)の魅力の1つは株式などの伝統的投資との[[相関係数|相関]]が少なく、従ってポートフォリオ全体のリスクを低減させるための[[分散投資]]の投資先に適することである<ref name="Roadmap" />。 |
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いくつかの研究ではヘッジファンドが分散投資の投資先として適するという結果を出していたが、逆の結果を出した研究もある。例えば、マーク・クリッツマンによる研究では株価インデックスファンド、債券インデックスファンド、そして10の仮想上のヘッジファンドで平均分散分析を行い<ref>''Portfolio Efficiency with Performance Fees'', Economics and Political Strategy (newsletter), February 2007, Peter L. Bernstein Inc.</ref><ref>{{cite news|last=Hulbert |first=Mark |url=https://www.nytimes.com/2007/03/04/business/yourmoney/04stra.html |title=2 + 20, and Other Hedge Fund Math |newspaper=The New York Times |date=4 March 2007 |accessdate=26 November 2011}}</ref>、分析結果である平均分散最適ポートフォリオは運用報酬が高いためヘッジファンドが含まれなかった。クリッツマンが次に運用報酬なしでの仮定で再び分析を行うと、ヘッジファンドが平均分散最適ポートフォリオの74パーセントを占めた。 |
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分散投資先としての魅力さを低減させるもう1つの理由は分散投資が最も必要とされる下げ相場のとき、ヘッジファンドのパフォーマンスが市場よりも悪い傾向にあることである<ref name="Roadmap" />。例えば、2008年1月から9月までの間、クレディ・スイス/トレモント・ヘッジファンド指数は9.87パーセント下落した<ref>{{cite web|url=http://www.hedgeindex.com/hedgeindex/en/default.aspx?cy=USD |title=Credit Suisse/Tremont Hedge Index web page |website=HedgeIndex.com |accessdate=14 August 2010}}</ref>。この指数のうち、ショート・バイアス戦略のサブ指数ですら2008年9月中に6.08パーセント下落した。つまり、相関係数が平均的に低いことは魅力的に見えるが、[[リーマン・ブラザーズ]]が破綻した2008年9月など金融危機の時期には役に立たない可能性もある。 |
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== 日本 == |
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日本では、高額な手数料をとられるにもかかわらず、それに見合った運用成績をあげることが難しくなっているため、ヘッジファンド投資は減少傾向にある<ref name="170405nikkei" />。 |
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2014年の調査では、日本の投資家によるヘッジファンドへの投資残高は2.2兆円(年間純増2,794億円)であった<ref>金融庁ファンドモニタリング調査2014</ref>。 |
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=== 海外ファンドへの投資 === |
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公募によって一般から広く小口の資金を集めて大規模なファンドを形成することを目指す通常の[[投資信託]]とは異なり、世界のヘッジファンドは大部分が[[オフショア金融センター|オフショア]]籍であるため、日本の証券会社や銀行は販売できない。そのため、日本国内に居住する個人投資家がヘッジファンドを購入するには以下の3つの方法がある<ref>岩崎博充『日本人が知らなかった海外資産運用術』P133 翔泳社</ref><ref>「世界の好成績ヘッジファンドにアクセスしたいなら」ダイヤモンドZAI 2012年4月号。</ref>。 |
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# 国内の証券会社で海外のフィーダーファンド([[投資信託]])を購入 |
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# 外資系証券会社の日本支店からオリジナルファンドに投資 |
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# [[投資顧問会社]]を通して海外のオリジナルファンドに直接投資 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{Reflist}} |
{{Reflist|3}} |
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== 参考文献 == |
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*Thomas P. Lemke, Gerald T. Lins, Kathryn L. Hoenig & Patricia S. Rube, ''Hedge Funds and Other Private Funds: Regulation and Compliance'' (Thomson West 2014 ed.). |
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*Thomas P. Lemke & Gerald T. Lins, ''Regulation of Investment Advisers'' (Thomson West 2014 ed.). |
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*Thomas P. Lemke, Gerald T. Lins & A. Thomas Smith, III, ''Regulation of Investment Companies'' (Matthew Bender 2014 ed.). |
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*Frank S. Partnoy & Randall S. Thomas, 'Gap Filling, Hedge Funds, and Financial Innovation' (2006) [http://ssrn.com/abstract-931254 Vanderbilt Law & Econ. Research Paper No. 06-21] |
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*Marcel Kahan & Edward B. Rock, 'Hedge Funds in Corporate Governance and Corporate Control' (2007) 155 University of Pennsylvania Law Review 1021 |
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*Makrem Boumlouka, 'Regulation and Transparency in US OTC Derivative Markets', ''Original Thoughts Series #1'', August 2010, Hedge Fund Society [http://hedgefundsregulation.com Hedge Fund Society] |
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*{{cite journal | last1 = Boyson | first1 = Nicole M. | last2 = Stahel | first2 = Christof W. | last3 = Stulz | first3 = Rene M. | year = 2010 | title = Hedge Fund Contagion and Liquidity Shocks | url = | journal = The Journal of Finance | volume = 65 | issue = | pages = 1789–1816 | doi=10.1111/j.1540-6261.2010.01594.x}} |
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*{{cite book | author=David Stowell | title=An Introduction to Investment Banks, Hedge Funds, and Private Equity: The New Paradigm | publisher=Academic Press | year=2010}} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [http://www.mof.go.jp/international_policy/oration/ko036.htm ヘッジファンドと国際金融市場] - 財務省 |
* [http://www.mof.go.jp/international_policy/oration/ko036.htm ヘッジファンドと国際金融市場] - 財務省 |
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[[Category:投資信託]] |
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2017年5月26日 (金) 11:33時点における版
ヘッジファンド(英語: Hedge fund)は、金融派生商品など複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとする代替投資の一つ[1]。投資信託そのもののみならず、投資信託を運用する基金や組織を指すこともある。ヘッジファンドも機関投資家の一種である[2]。
特徴
ヘッジファンドの運用コストは高く、預かり残高の2%相当の手数料のほか、成功報酬として運用益の20%を追加で請求されることが一般的である[2]。2016年の運用成績の悪化により、一部では手数料を引き下げる動きがある[2]。
最低金額は数千万円からの投資金額が一般的だが、近年は小口化したヘッジファンドが投資信託で募集されるようになり、個人投資家も参入できる環境である[3]。また、投資対象は、株式等よりは商品先物や金融先物が多く、買いのみではなく売りの活用、レバレッジの活用など多くの手法を複雑に組み合わせて、市場の下落局面であっても損失を回避しプラスの収益(絶対的リターン)を目指す投資手法が特徴であるという[3]。
なお、「絶対収益」や「絶対的リターン」を目指す投資手法という意味における、「絶対」という単語は、「絶対に儲かる」という意味ではなく[4]、単に、市場が不況である場合に利益が減る伝統的な投資手法(相対収益型)とは対称的に、好況でも不況でも、市況によらずにハイリスクをとって利益を目指すという意味における「絶対」である[4]。
監督官庁に届け出る義務や規制がなく、投資対象や投資手法に規制や制限がかからない私募形式によるファンドに資金を集め、ハイリスク・ハイリターンを目指して運用されることが一般的である[1][5]。
45日前までに解約を通告しなければならないのが一般的であり、解約までの期間が伝統的な投資ファンドよりも長い[3]。
歴史と動向
アメリカの狂騒の20年代と呼ばれた1920年代において、資産家にのみ提供される投資商品が数多く存在した。そのうち現代でもっともよく知られているのが、ベンジャミン・グレアムとジェリー・ニューマン(Jerry Newman)によるグレアム=ニューマン・パートナーシップであり、これは2006年のウォーレン・バフェットによるアメリカ金融博物館への書簡で初期のヘッジファンドとして言及された[6]。
ヘッジドファンド(Hedged fund)という語は社会学者のアルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズによってはじめて使われ[7][8]、1949年に同氏によりはじめて設立されたと言われるが、異説もある[9]。
ジョーンズは自らのファンドが「ヘッジド」(Hedged、「リスクヘッジが行われた」の意)としたが、これは当時金融市場での変動による投資リスクの管理を指す用語としてウォール街でよく使われていた[10]。
多くのヘッジファンドが1969年-1970年の不況と1973年-1974年の株価暴落で大損を出して廃業に追い込まれたが、ヘッジファンド1980年代後期に再び脚光を浴びた[8]。1990年代、ヘッジファンドの数が大幅に上昇したが、これはインターネット・バブルによる株価上昇で増えた資金によって支えられ[7]、信託報酬が運用成績と連動したのと運用成績自体がよかったため多くの関心を集めた[11]。実際この時期には年率20から30パーセントなど、高リターンを達成することも珍しくはなかった[2]。その後の10年間、クレジット・アービトラージ、ディストレスト証券戦略、債券アービトラージ、定量戦略などの新しい投資戦略、さらには複数の投資戦略を使うヘッジファンドが現れた[8]。
21世紀のはじめ、ヘッジファンドは世界中で人気を集め、2008年にはヘッジファンドの運用資産総計が1.93兆米ドルに上った[12]。しかし、2008年の金融危機では多くのヘッジファンドが解約を制限した結果、その人気も運用資産も減退した[13]。しかし、運用資産の総額は後に上昇に転じ、2011年4月には2兆米ドル近くになったと概算された[14][15]。また2011年2月時点ではヘッジファンドへの投資のうちの61パーセントは機関投資家によるものであり、2008年末時点の45パーセントと比べて大幅に上昇していた[16]。2011年6月時点で運用資産が最も大きいヘッジファンドは上から順にブリッジウォーター・アソシエーツ(589億米ドル)、マン・グループ(393億米ドル)、ポールソン・アンド・カンパニー(352億米ドル)、ブレバン・ハワード(310億米ドル)、オク=ジフ・キャピタル・マネジメント(294億米ドル)であった[17]。このうち、1位のブリッジウォーター・アソシエーツは運用資産をさらに増やし、2012年3月1日時点で700億米ドルになった[18][19]。2012年末時点ではアメリカの最大手ヘッジファンド会社241社の運用資産総計は1.335兆米ドルであった[20]。2012年4月、ヘッジファンドの運用資産総計が史上最高の2.13兆米ドルに上った[21]。
運用資産が増えた一方、ヘッジファンドの運用成績は2009年から2016年まで連続してS&P500指数(アメリカ)の騰落率にも及ばない成績を記録しており、2016年は再びヘッジファンド運用成績が8年ぶりに大きく悪化して大規模な資金流出が起こった[2]。2016年には、2008年の金融危機が起こったとき以上に多数のヘッジファンドが閉鎖している[2]。
2016年には大手投資家の引き上げが増加し、カリフォルニア州職員退職年金基金もヘッジファンドから撤退している[2]。
日本経済新聞は、世界的な「カネ余り」で資産規模が膨れあがったために運用が困難となっているのに加え、英国による欧州連合(EU)離脱や米大統領選などの政治状況に市場が振り回されて2016年の運用成績が大幅下落したことを受け、ヘッジファンドの影響力が世界的に「徐々に縮小していく可能性」があると報じている[2]。また、大手投資家はヘッジファンドから資金を引き揚げ、より低コストな投資商品に資金が流出していると報じられている[2]。
ブルームバーグは、「ヘッジファンドが商品市場で危険地帯にいる5つの理由」として、「原油のポジション減少」、「株式の売り建玉」、「パラジウムのシグナル」、「金属価格のモメンタム」、「綿花の乖離(かいり)」をあげている[22]。
投資戦略
グローバル・マクロ
グローバル・マクロ戦略を採用するヘッジファンドは世界経済の動きを予想して株式、債券、または為替市場で大きなポジションを取ることでリスク調整後リターンを得ようとする[23]。ファンド・マネージャーは世界経済の事象やトレンドに基づきマクロ経済を分析することで投資機会を見つけようとする。グローバル・マクロ戦略はレバレッジが使えるため柔軟な戦略ではあるが、高水準のリスク調整後リターンを得るためには戦略を実行する売買タイミングが大事である[24]。グローバル・マクロ戦略はいわゆる相場志向型(Directional)とされることが多い[23]。
グローバル・マクロ戦略は裁量的(Discretionary)と系統的(Systematic)な手法に分けることができる。裁量的な手法では投資マネージャーが銘柄を選ぶ一方、系統的取引は数学モデルによって決定され、ソフトウェアによって実行されるものであり、人間が介在するのはプログラミングとソフトウェアのアップデートのみに留まる。またトレンドフォローと反トレンド(Counter-trend)の手法に分けることもでき、この場合はファンドがトレンドに乗じて利益を得ようとするか、トレンドの逆転を予想して利益を得ようとするかで分類する[25]。
また、グローバル・マクロ戦略をさらに細かく分類して「系統的分散」(Systematic diversified、投資先を広く分散する手法)や「系統的為替」(Systematic currency、主に外国為替市場に投資する手法)に分けることもできる[26]:348。ほかには商品取引投資顧問(CTA)が使用する、コモディティの先物取引やオプション取引やスワップに投資する手法もある[27]。この手法は「マネージド・フューチャーズ」(Managed futures)と呼ばれる[23]。CTAは金などの商品や株価指数などの金融商品に投資し、買い建てと売り建てを両方使うことで上げ相場でも下げ相場でも利益を得ることができる[28]。
ディレクショナル
ディレクショナル戦略において、ヘッジファンドは市場の動き、トレンドや不一致を察知して世界中の株を選ぶ。コンピュータのモデルを使う場合とファンド・マネージャーが自ら株選びに加わる場合がある。この戦略はマーケット・ニュートラル戦略と比べて市場の変動に影響される恐れが大きい[29][23]。ディレクショナル戦略の一例としてロング・ショート・エクイティという戦略があり、これは株のロング・ポジションを株の空売りや株価指数のオプションでヘッジするという戦略である。
ディレクショナル戦略をさらに細かく分類すると、中国やインドなどの新興国市場に集中して投資する「エマージング・マーケット」戦略[26]:351やヘルスケア、バイオテクノロジーなど株式市場全般より成長寄りとされる特定の産業に投資する「ファンダメンタル・グロース」(Fundamental growth) 、株価が会社の価値と比べて低い会社に投資する「ファンダメンタル・バリュー」(Fundamental value)[26]:344、トレーディングに計量的手法や金融信号処理を取り入れた「クオンティテーティブ・ディレクショナル」(Quantitative directional)[26]:345、株価の下落を利用して空売りで利益を得る「ショート・バイアス」(Short bias)などがある[30]。
イベント・ドリブン
イベント・ドリブン戦略をとるヘッジファンドは投資機会とそのリスクが何らかの事件(イベント)に関連する状況に着目する[31]。このようなヘッジファンドは連結、買収、資本再編、倒産、清算など会社再編に関連する事件に機会を見出す。事件の前後で証券の評価に不一致が生じることを利用し、証券価格の動きを予想してポジションを取る。ヘッジファンドのような巨大機関投資家は伝統的な株式投資家よりイベント・ドリブン戦略をとる可能性が高いが、これは機関投資家のほうが会社再編を分析し、投資機会を見出す専門知識と資源を有するからである[24][32][33]。
会社再編に関連する事件は一般的にはディストレスト証券、リスク・アービトラージ、スペシャル・シチュエーションズの3種類がある[24]。ディストレスト証券は事業再編、資本再編、倒産などの事件を含む[24]。ディストレスト証券の投資戦略をとるヘッジファンドは倒産に直面しているか厳しい経営難に陥った会社の債券やローンに投資する。このような会社の債券やローンは額面と比べての割引率が大きく、ヘッジファンドは安い価格に利益を見出そうとする。ヘッジファンドがディストレスト証券を購入することは銀行の担保権執行の阻止につながるため、会社が倒産を免れる可能性がある[23]。イベント・ドリブン投資は一般的には上げ相場で活躍するが、ディストレスト証券だけは下げ相場のほうが有利である[33]。
リスク・アービトラージ、または「合併アービトラージ」(Merger arbitrage)はM&A、清算、敵対的買収などを含む[24]。リスク・アービトラージ戦略では合併する会社の株式を取引し、株価と買収価格の間の不一致を利用する。この戦略のリスクはM&Aが予想通りに進まないことにあり、ファンド・マネージャーは研究と分析で事件が本当に起こるかを判断する[33][34]。
スペシャル・シチュエーションズとは、会社の株価に影響する事件。これには事業再編、分社化、自社株買い戻し、証券の発行と買い戻し、資産売却などを含む。スペシャル・シチュエーションズ戦略をとるファンド・マネージャーは事件が株価と株式に関連する証券の価格にどう影響するか見極めなければならない[35]。
イベント・ドリブン戦略は上記のほかには確定利付き証券に集中するクレジット・アービトラージ戦略、株式を大量に購入して経営に参与するアクティビスト戦略、製薬会社の医薬品開発で製品が承認される可能性を予想する戦略、訴訟に巻き込まれている会社に集中するリーガル・キャタリスト戦略(Legal catalyst)がある。
レラティブ・バリュー
レラティブ・バリュー戦略は相対的に割高・割安となっている証券の間の価格差を利用して収益を上げる手法である。この価格差は関連した2つの証券の間、デリバティブとその対象証券の間、または証券と市場全体の間で発生することがある。ファンド・マネージャーは数学モデル、テクニカル分析、ファンダメンタル分析を利用してこのような価格差を見つけ出す[36]。レラティブ・バリュー戦略は市場全体の動きへのエクスポージャーが少ない、または全くないため、マーケット・ニュートラルと同義とされることが多い[37]。
レラティブ・バリューを細かく分類して下記に分けることができる:
- 確定利付の裁定取引:確定利付き証券の間の価格差を利用する。資産担保証券を利用する戦略と別に分ける場合もある。
- エクイティ・マーケット・ニュートラル(Equity market neutral):同じ国、同じ業界、時価総額の近い2銘柄でそれぞれロングとショートのポジションをとり、その価格差を利用する一方、市場の動きへのエクスポージャーはヘッジされる。債券でも同じ戦略をとることが可能であり、その場合はクレジット・ロング・ショート(Credit long / short)と呼ばれる。
- 転換社債の裁定取引:転換社債とその対象株式の間の価格差を利用する。
- 統計学上の裁定取引:数学モデルを駆使して証券の間の価格差のうち利用できるものを探す。
- 変動率の裁定取引(Volatility arbitrage:価格差ではなく、予想変動率の差を利用する。
- イールド・オルタナティブズ(Yield alternatives):価格差ではなく利回りの差を利用する、確定利付の裁定取引とは違う戦略。
- 規制の裁定取引(Regulatory arbitrage):いくつかの市場における規制の差異を利用する。
- リスクの裁定取引:M&Aでの買収価格と株式の価格の差を利用する。
リスク
すでに大量の株式と債券を所持している投資家はヘッジファンドに投資することでリスクを分散し、ポートフォリオのリスクを低減させることができる可能性がある[38]。ヘッジファンドのマネージャーは特定の取引戦略と金融商品を使って市場リスクを減らし、投資家の要望したリスクの水準まで減らすとともにリスク調整後収益を上げようとする[39]。そのため、理想的なヘッジファンドは市場の指数との相関が低い[40]。ヘッジすることで投資のリスクを減らせるが、他の投資と同じく、ヘッジファンドは無リスクにはならない。ヘネシー・グループの報告によると、1993年から2010年までの間、ヘッジファンドのボラティリティはS&P 500より3分の1ほど低い[41]。
リスクマネジメント
ほとんどの国はヘッジファンドの投資家になるための要件として適格投資家であることを規定している。これにより、ヘッジファンドの投資家は投資リスクを知っていて、リターンとリスクを比較した結果リスクを受け入れていると仮定されている。ファンド・マネージャーは全面的なリスク管理戦略を採用してファンドと投資家を守ることができる。フィナンシャル・タイムズ紙によると、「大きいヘッジファンドには資産管理業において最も高度で、厳しいリスクマネジメント慣行がある」という[39]。大量のポジションを短期間のみ維持するファンド・マネージャーは全面的なリスクマネジメント・システムを取り入れていることが多く、また独立したリスク管理者を持つこともすでに慣習になっている。リスク管理者はリスクを精査・管理するが、取引には関与しない[42]。ヘッジファンドのレバレッジ、流動性や投資戦略に基づいてリスクを概算するモデルやテクニックがたくさん考案された[40][43]。バリュー・アット・リスクなど伝統的なリスク分析手法はリターンが正規分布に従う必要がある、ボラティリティ・クラスタリングやトレンドを考慮しないなどの弱点があるため、ドローダウン(下落幅)などの手法を使うこともある[44]。
投資による市場リスクのほか、投資家は業務デューディリジェンスを行ってヘッジファンドによるミスや詐欺により投資家が損失を出すリスクを精査する。業務デューディリジェンスでは、ヘッジファンドの企業形態、投資戦略の持続可能性、ファンドが会社として成長する能力などが考慮される[45]。
透明性と規制
ヘッジファンドは非公開企業であり、開示の義務が少ないため、透明性を欠けるとみなされることがある[46]。またヘッジファンドに対するよく見られる認識の1つとしては、ヘッジファンドのマネージャーは規制当局による監視と登録の義務が少ないため、スタイル・ドリフト、欠陥のある運営、詐欺などマネージャーの固有リスクの危険性がより大きい、というものがある[47]。2010年にアメリカと欧州連合が新しい規制を導入したため、ヘッジファンド・マネージャーの報告義務が大きく拡大され、透明性が高められる結果となった[48]。さらに、投資家(特に機関投資家)はヘッジファンドの内部慣習の改善と規制を推進している[39]。機関投資家の影響力が大きくなったことはヘッジファンドが投資家に評価方法、ポジションとレバレッジのエクスポージャーを開示し、透明性を高める結果につながった[49]。
ほかの投資と共通のリスク
ヘッジファンドはほかの投資と多くのリスクを共有する。例としては流動性リスクとマネージャー・リスクがある[47]。流動性とは資産の取引や現金と容易に交換できるかの度合いを指す。プライベート・エクイティ・ファンドと同じく、ヘッジファンドは解約を禁止されるロックアップ期間を指定することが多い[23][50]。マネージャー・リスクはファンド・マネジメントにより発生するリスク、およびスタイル・ドリフト(ファンド・マネージャーが専門とする投資戦略から離れて取引してしまうこと)のリスクを指す。マネージャー・リスクは評価リスク、キャパシティ・リスク、集中リスク、レバレッジ・リスクを含む[46]。評価リスクは純資産額の計算が不正確である可能性を指し[51]、キャパシティ・リスクは1つの戦略に資金を多く投資しすぎてファンド全体のパフォーマンスを悪化させてしまうリスクを指し[52]、集中リスクはファンドのエクスポージャーが1つの投資、業界、戦略、または相関したファンドのグループに集中しているリスクを指す[53]。これらのリスクは利益相反への規制[51]、資金の配分の制限[52]、戦略へのエクスポージャーの限度の指定[53]によってある程度軽減できる。
多くの投資ファンドはレバレッジ、借金、信用取引、デリバティブを使って、投資家の資本以上の市場エクスポージャーを得る。レバレッジは得られる利益を増大させることができるものの、同時に損失を増大させる危険性もある[50]。レバレッジを使うヘッジファンドは全面的なリスクマネジメント戦略を採用することが多い[42][46]。ヘッジファンドのレバレッジは投資銀行のそれより低い。全米経済研究所の論文によると、投資銀行の平均レバレッジが14.2倍のに対し、ヘッジファンドは1.5倍から2.5倍までの間である[54]。
ヘッジファンドなど一部の投資ファンドは利益を最大化するためにリスクの選好度合いが高いと認識されている[50](ただし、投資家とファンド・マネージャーが指定した限度内)。マネージャー自らがファンドに投資していると、リスク監査を強化するインセンティブがさらに高くなる[42]。
有名なヘッジファンド破綻
- ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM) - 1994年、ジョン・メリウェザーにより創設された。1997年のアジア通貨危機と1998年のロシア財政危機と立て続けに金融危機がおきたため、LTCMは4か月以下の期間で46億米ドルの損失を出した。破綻の主な理由はロシアの債務不履行と損失が着実に増大していたにもかかわらずポジションを維持すべきとのモデルの間違いである。
- タイガー・マネージメント - 1980年、ジュリアン・ロバートソンによって創設。創設時点の資産は8百万米ドルだったが、1997年までには10.5億ドルまで増え、世界中で2番目に大きいヘッジファンドとなった[55]。その1年後には22億ドルまで増えた[56]が、USエアウェイズなどの投資ミスにより損失を出し、タイガー社は2000年にファンドを畳んだ。
- アッティカス・グローバル(Atticus Global) - 1995年、物言う株主のティム・バラケット(Tim Barakett)によって6百万米ドルの資金で創設された。2007年までに運用資産が20億米ドルに増え、世界最大のヘッジファンドの1つとなった。その間、バラケットは市場を上回る利益率を出し続けたが、2008年の金融危機で2年連続で大損失を出し、2009年にたたまれた。2007年までの利益率は年率19.3パーセントで、S&P 500の年率3.9パーセントを大幅に上回るものであった[57]。
手数料と報酬
ヘッジファンドへの手数料
ヘッジファンド運用会社は一般的には投資家から運用手数料と運用報酬を徴収する。
運用手数料は純資産額に定率をかけることで計算される。毎年1パーセントから4パーセント徴収することが多いが、その中でも2パーセントとするのが最も一般的である[58][59][60]。また表示上は年率であることがほとんどであるが、実際の計算と徴収は毎月か四半期ごとに行われることが多い。運用手数料を徴収する目的は営業経費を賄うことにあり、一方運用報酬はファンド・マネージャーが出した利益に対する報酬である。しかし、規模の経済があるため規模の大きいヘッジファンドは運用手数料の徴収で収益を大きく得ることができる。このため、カリフォルニア州職員退職年金基金など一部の公的年金基金はヘッジファンドの手数料が高すぎると批判している[61]。
運用報酬はヘッジファンドの利益の2割を徴収することが一般的だが、1割から5割までを徴収するものもみられる。運用報酬の目的はファンド・マネージャーが利益を出すことにインセンティブを与えることにある[62][63]。ウォーレン・バフェットはヘッジファンドが儲けているときには報酬を徴収して利益を得るが、運用損失を出しているときは報酬が得られないだけで損するわけではないため、運用報酬はファンド・マネージャーにハイリスクな投資戦略をとるよう誘導するものとして批判した。2008年の金融危機以降、運用報酬の割合は2割から下がっている[64]。
ヘッジファンドの運用報酬はほぼ確実に「ハイ・ウォーター・マーク条項」(High water mark、「最高値」という意味。「損失繰り越し条項」(Loss carryforward provision)とも)が含まれている。この条項は運用報酬が純利益(利益から過去の損失を差し引いた値)から徴収されることを意味する。これは業績の変動が激しい場合に運用報酬を支払わなくてもすむようにするためである。しかし、ヘッジファンドが大損失を出した場合、ファンド・マネージャーは損失を数年かけて補填する(しかも、その間には運用報酬は支払われない)よりファンドを畳んで新しいヘッジファンドを立ち上げることを選ぶこともある[65]。
一部のヘッジファンドは目標比率(Hurdle rate)を指定して、利益率が目標比率(比率は固定値か、LIBORなどのベンチマークを基準に指定される)を上回る場合のみ運用報酬を徴収することを定めている[66]。なお、目標比率にはソフトとハードの2種類があり、ハードの場合は運用報酬が利益から目標利益を差し引いた余りから徴収される一方、ソフトの場合は目標利益が差し引かれない[67]。目標比率を指定する理由は、投資家が他所で投資した場合の利益と比べてファンド・マネージャーが出した利益が上回る場合のみマネージャーが運用報酬をもらえるようにするためである。
また早期解約(1年以内を早期とすることが多い)や引き出し金額が投資額の一定比率を上回る場合、手数料を徴収することもある[68]。これは短期投資家を退けるとともに回転率を下げ、運用成績が悪い時期に解約を減らすためである。なお、運用手数料と運用報酬はファンド・マネージャーがもらうことが多いが、解約料はファンドが保持することが多い。
ファンドマネージャーへの報酬
ヘッジファンド運用会社は一般的にはその投資マネージャーが所有しているため、彼らは運用会社の利益を懐に入れる権利がある。運用手数料は会社の営業経費を賄うことが目的なので、運用報酬(と手数料の余剰金)は利益として会社の所有者に分配されることが多い。ヘッジファンド運用会社が役員報酬などを公開することはまれなので、「収入の最も高いファンド・マネージャーの一覧」といったリストはヘッジファンドが徴収する手数料とファンドに投資された資金を概算することによって推測されているものである[69]。多くのファンド・マネージャーは自らのファンドに持ち分を積み上げているため、業績が良い年には収入の最も高いファンド・マネージャーが40億米ドルを儲ける可能性もある[70][71]。
収入の最も高いファンド・マネージャーたちは金融業界で最も高い収入を得ており[72]、収入の最も高いファンド・マネージャーのうち1位から25位までの総収入はS&P 500に含まれる銘柄の最高経営責任者500人の総収入よりも高い[73]。しかし、ほとんどのヘッジファンド・マネージャーはそれ以下の収入であり、運用報酬を得ていない場合は雀の涙の収入しかもらえない可能性もある[72]。
2011年、収入の最も高いファンド・マネージャーは30億米ドル、10位は2億1千万米ドル、30位は8千万米ドルを儲けた[74]。2011年、アメリカのファンド・マネージャーのうち収入の最も高い1位から25位までの平均収入は5億7,600万米ドルであり[75]、一方ヘッジファンド投資専門家全体の平均は690,786米ドル、中央値は312,329米ドルであり、ヘッジファンドの最高経営責任者の間では平均が1,037,151米ドル、中央値が600,000米ドルであり、ヘッジファンドの最高投資責任者の間では平均が1,039,974米ドル、中央値が300,000米ドルである[76]。
フォーブスによる2012年の世界長者番付では1,226人がランクインした[77]が、このうち36人は財産の大部分をヘッジファンドのマネージメントから獲得したという[78]。またサンデー・タイムズの2012年イギリス長者番付上位1,000位では、ヘッジファンドのファンドマネージャー54人がランクインした[79]。
構造
ヘッジファンドは投資ファンドの一種であり、一般的にはオフショアのコーポレーション、合資会社、またはLLCの会社形態をとる[80]。ヘッジファンドは投資マネージャー組織または会社によって管理されるが、マネージャーの組織は法的にも財政上もヘッジファンド、およびその資産とは完全に分離されている[81][82]。多くの投資マネージャーは営業上の支援に外部のサービス業者を雇っている[83]。ここでいうサービス業者にはプライム・ブローカー、銀行、管理者、販売業者、監査法人などを含む。
プライム・ブローカーは取引の決済を行い、レバレッジと短期融資を提供する[84][85]。プライム・ブローカーは大手投資銀行の一部門であることが多い[86]。プライム・ブローカーはデリバティブの取引相手役を担当し、ロング・ショート・エクイティや転換社債の裁定取引などの戦略をとるヘッジファンドには証券を貸す業務も行っている[87][88]。またヘッジファンド資産の管理(カストディ)サービス、取引の執行と精算サービスをヘッジファンド・マネージャーに提供する[89]。
ヘッジファンドの管理者はオペレーション・マネジメント、会計、資産の評価業務を行う。管理者は事務部門としてファンド・マネージャーをサポートすることで、取引に専念させることができる[90]。管理者はまた申込と償還(Redemption)の事務処理を行い、 株式事務を代行する[91][92]。アメリカのヘッジファンドは管理者を任命する義務がなく、上記の事務処理を全てファンド・マネージャーが行うこともできる[93]。しかし、ファンド・マネージャーが自ら事務処理を行うと、純資産額の評価など、利益相反がおこる状況に陥りやすい[94]。そのため、一部のヘッジファンドは自ら進んで外部監査人を雇い、透明度を高めている[93]。
販売業者とは証券の販売を務める引受業者、仲立人、取引業者などのことである[95]。販売業者はまた、ファンドの潜在的な投資家に向けてマーケティングをする。多くのヘッジファンドは販売業者を雇わず、ファンド・マネージャー自らが証券の販売やヘッジファンドのマーケティングをするが、販売業者や仲立人・取引業者を雇うヘッジファンドも多い[96][97]。
多くのヘッジファンドはファンドの会計や税務サービスを独立監査人会社に任せている。年末会計はファンドの所在地の会計基準、または国際財務報告基準に準拠することが多い[98]。監査人はヘッジファンドの純資産額や運用資産を検証することがある[99][100]が、一部の監査人は「純資産額ライト」(NAV lite)のサービス、すなわち独立した評価の代わりにファンド・マネージャーの評価をそのまま使う検証サービスしか提供していない[101]。
本拠地と税金
ヘッジファンドの法的構造、特にその本拠地や法人の種類は、投資家の税金に関する予想によって決定される。また、規制の状況にも影響される。多くのヘッジファンドは外国や免税の投資家にとっての税務上の悪影響を避けるために設立地にオフショア金融センターを選んでいる[102][103]。アメリカの証券に投資するオフショア・ファンドは投資収入の一部に源泉徴収税を支払わなければならないが、アメリカの譲渡所得税は支払わないことが多い。しかし、投資した資産の価値が上昇した場合、ヘッジファンドの投資家は自らの所在地で税金を支払う必要がある[104][105]。これは複数の法域が同時に課税することを避けているので、クロスボーダー投資を推進する結果となる[106]。
年金や基金などアメリカにおいて税が免除される機関投資家は免税である状態を維持するためにオフショアのヘッジファンドに投資し、本業と関係のない課税所得をできるだけ抑えようとする[105]。ファンド・マネージャー自身は金融センターに本拠地を置くことが多く、運用手数料による所得税は当地の租税法に従って支払う[107]。2011年時点では、ヘッジファンドの登録地は約半分がオフショアで残り半分がオンショアである。オフショア地に登録しているヘッジファンドのうち、主流はケイマン諸島であり、ヘッジファンド全体の34パーセントを占めている。そのほか、アメリカが24パーセント、ルクセンブルクが10パーセント、アイルランドが7パーセント、イギリス領ヴァージン諸島が6パーセント、バミューダ諸島が3パーセントである[108]。
バスケット・オプション
ドイツ銀行とバークレイズは顧客であるヘッジファンドのために特別なオプション口座を開設している。この口座は銀行の名の下にあり、銀行は資産を所持していることを主張しているものの、実際にはヘッジファンドがその資産を完全な支配下に置き、収益を上げている。そして、ヘッジファンドは取引をする - その多くは数秒で終わる - が、ちょうど1年間経つまで待ってからオプションを行使することで、譲渡所得税をより低い長期税率に抑えることができる。—アレクサンドラ・スティーブンソン、2015年7月8日、ニューヨーク・タイムズ紙にて[109]
カール・レヴィンが委員長を務めたアメリカ上院常設調査小委員会は2014年の報告でヘッジファンドが1998年から2013年までバスケット・オプションを使って数十億米ドル規模の脱税をしたと発表した。アメリカ内国歳入庁は2009年にルネサンス・テクノロジーズに対する調査を開始した[110]が、レヴァンは内国歳入庁が調査に6年もかかっていることを批判した。ルネサンス社はバスケット・オプションを使って「10年以上の間、60億米ドル以上の税」を回避したという[109]。
ドイツ銀行とバークレイズが提供したバスケット・オプションを利用したヘッジファンドはルネサンス・テクノロジーズのほかにもいくつかあった[109]。ルネサンス社はバスケット・オプションがヘッジファンドに「借金によるリターン増加のチャンスを与え、またモデリングやプログラミングのミスから保護する」こともできるため、「非常に重要である」と主張した[109]。2015年7月、内国歳入庁はヘッジファンドがバスケット・オプションを利用して「短期取引の脱税」をしたと定め、バスケット・オプションはこれ以降確定申告しなければならない項目になり、申告しなかった場合はペナルティが与えられるとした[109]。
ファンド・マネージャーの所在地
ファンド自体と違い、ファンド・マネージャーはオンショアに留まることが多い。2011年末時点ではアメリカが依然として最大の投資センターであり、アメリカ所在のヘッジファンドが運用資産の70パーセントを占めている[108]。2012年4月時点ではアメリカ証券取引委員会に登録し、私募ヘッジファンドを管理している投資顧問は約3,990名いる[112]。アメリカ国内において、ヘッジファンドのマネージャーが最も多いのはニューヨーク市とコネチカット州のゴールド・コースト地域である[113][114]。
ヨーロッパではロンドン所在のファンド・マネージャーが最もおおい。ユーロヘッジ社(EuroHedge)のデータによると、2011年時点ではイギリス所在のヘッジファンド800社が全ヨーロッパのヘッジファンド運用資産の約85パーセントを占めている[108]。アジアでも2003年以降には日本、香港、シンガポールなどでヘッジファンドに対する投資意欲が高じている[115]。しかし、アジアのヘッジファンド資産は未だにイギリスとアメリカで運用されることが多い[108]。
法人格
ヘッジファンドの法人格は所在地と投資家によって異なることが多い。例えば、アメリカに所在するヘッジファンドでアメリカの課税投資家の投資を呼び込もうとしている場合はリミテッド・パートナーシップかLLCの形態をとることが多い。リミテッド・パートナーシップなどのフロー・スルー実体をとることで企業と個人とで二重課税されることを防ぐことができる[89]。リミテッド・パートナーシップには無限責任組合員(ジェネラル・パートナー)が1人いる必要があり(個人でも法人でも可)、このジェネラル・パートナーはリミテッド・パートナーシップを管理し、無限責任を負う[84][116]。一方リミテッド・パートナー(有限責任組合員)はファンドの投資家であり、管理や投資戦略に関する義務はない。リミテッド・パートナーの責任はパートナーシップへの投資分までである[116][117]。アメリカのヘッジファンドはリミテッド・パートナーシップの代わりにLLCの形態をとることができ、投資家はLLCの株主となり、有限責任しか負わない[118]。
一方、オフショア金融センターで設立されたヘッジファンドはアメリカ以外の投資家を対象とする。中でもタックス・ヘイヴンで設立された場合、企業レベルで課税されない[102]。オフショア・ヘッジファンドのマネージャーは年金基金、機関基金、公益信託などアメリカの免税投資家による投資を許可することが多い[116]。別の法人格としてはオープン・エンド型のユニット・トラストがあり、これは非法人のミューチュアル・ファンドという形態である[119]。例えば、日本の投資家はケイマン諸島などで設立されたユニット・トラストを好む[120]。
ヘッジファンドを管理するファンド・マネージャーはリミテッド・パートナーシップのジェネラル・パートナーか企業化したファンドの「創業者株式」を所持することで会社の所有権を保持することができる[121]。企業として設立されたオフショアのヘッジファンドの場合は取締役会を任命することができる。取締役会の目的は株主を代表して業務の監督を行うことにある[122]。しかし、実際には取締役員が監督に要する専門知識が持たないこともある。取締役員にファンドとの関係が薄い独立取締役とヘッジファンドの従業員でもある常務取締役の2種類を含む場合がある[122]。
ファンドの種類
- オープンエンド型 - 新しく加入する投資家にヘッジファンドの株を発行し、株の持つ純資産額に基づく引き出しを定期に許可する。
- クローズドエンド型 - 数が限定され、取引できる株を設立時に発行する[123][124]。
- 上場ヘッジファンドの株はアイルランド証券取引所などの証券取引所で取引され、非適格投資家でも購入できる[125]。
サイドポケット
サイドポケットとは、流動性の低い資産や確かな評価の難しい資産をファンドから分離する構造である[126]。サイドポケットに入れられた資産はヘッジファンドのほかの資産とは別に評価される[127]。サイドポケットは流動性の低い投資を入れるために作られているので、ヘッジファンドの他の資産と違い、投資家は投資から撤退するときにサイドポケットの資産からの払い戻しを受ける権利がない[127]。サイドポケットの資産からの利益や損失はその資産がサイドポケットに入れられた時点での投資家にのみ比例按分で分配され、それ以降に参入した投資家には分配されない[127][128]。サイドポケットの資産は確かな評価が難しいため、手数料や純資産額の計算では 取得原価で評価される。これはファンド・マネージャーによる頻繁な評価を避けるためである[128]。
サイドポケットは2008年の金融危機において、解約要求が数多く発生した中、ヘッジファンドに広く使用されている。サイドポケットを利用することで流動性の低い投資を流動性が改善するまで売却しないで済み、損失を低減させることができる。しかし、サイドポケットの使用は投資家の解約を阻むため、不人気であることが多く、また悪用されているや利用が不公平であるとの指摘も多い[129][130][131]。SECはサイドポケットの積極的な使用に懸念を示しており、サイドポケットを悪用したファンド・マネージャーに対しては制裁で対処した[132]。
規制
ヘッジファンドはその所在地の本国法、連邦法、州法による規制を遵守しなければならない。例えば、アメリカではミューチュアル・ファンドとヘッジファンドに対する規制が異なっている[133]。ミューチュアル・ファンドはヘッジファンドやほかの非公開ファンドと違い、1940年投資会社法の詳しく、広範囲にわたる規制を受けなければならない[134]。証券監督者国際機構の報告によると、ヘッジファンドに対する規制でもっともよく見られるのは詐欺を防止するために、投資顧問とファンド・マネージャーを規制することである。一方、アメリカのヘッジファンドは適格投資家の投資しか受け付けないため、登記や報告の要件を免除されている[23]。2010年、アメリカのドッド=フランク法と欧州連合のオルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令の成立により、ヘッジファンドの報告に関する規制が強化された。[135][136]。
2007年、自己規制の一環として主要なファンド・マネージャー14名が「ヘッジファンド標準」(Hedge Fund Standards)というベストプラクティスの国際標準を発表し、その目的はヘッジファンド業界における「透明性、誠実性、良いコーポレート・ガバナンスのフレームワーク」を作り上げるためであるとした[137]。同年、基準の宣伝とメンテナンスを目的とするヘッジファンド標準委員会が設立され、2016年までにヘッジファンド・マネージャー約200名と投資総額3兆米ドルを有する機関投資家が標準の支持を表明した[138]。
アメリカ
アメリカのヘッジファンドは当局によって規制され、報告と文書記録保管の義務を課されている[139]。また多くのヘッジファンドはアメリカ商品先物取引委員会の規制も受け、詐欺と市場操作を禁じた1936年商品取引所法を守らなければならない[140]。1933年証券法に基づき、ヘッジファンド会社は証券取引委員会(SEC)に届出書を提出して、SECの私募に関する規約を守らなければ証券の募集を行うことができない[141]。1934年証券取引所法の規制により、投資家の人数が500以上のヘッジファンドはSECに届出書を提出しなければならない[142][143][144]。さらに、1940年投資顧問法はヘッジファンドのマネージャーと顧問を規制し、投資家の種類と人数を限定し、公募を禁止した。ただし、投資資産が5百万米ドル以上の適格投資家からの投資のみ受ける場合は、SECへの届出を免除した[23][145][146]。投資資産が2,500万米ドル以上の機関投資家に関しても同じ扱いである[147]。
2004年12月以降、SECはヘッジファンドの運用資産が2,500万以上かつ投資家の人数が14人以上の場合、投資顧問の届け出を義務付けた[148]。SECは急成長しているヘッジファンド産業に対する規制において、「リスクに基づくアプローチ」を使用しているとした[149]。この新しい規制は賛否両論であり、SEC委員のうち2人が反対し[150]、1人のヘッジファンド・マネージャーが法院に告訴した。2006年6月、合衆国コロンビア特別巡回区控訴裁判所は新規制を無効とし、SECに規制を再び検討するよう命じた[151]。これにより、SECは2007年にルール206(4)-8を採用した。このルールは前の規制と違い、届け出を必要としないが、過失や詐欺的行為に対する処分の可能性を上げたという[152]。運用資産が1億米ドル以上のファンド・マネージャーは四半期ごとに登録株の所持を開示しなければならず、なんらかの登録株を5パーセント以上所持している場合も開示しなければならない[143]。登録投資顧問は事業慣行と懲戒処分記録をSECとヘッジファンドの投資家に報告しなければならず、書面でのコンプライアンス方針と最高コンプライアンス責任者を置く必要もある。これらの記録と商習慣はSECの監査を受ける[139]、
2010年7月に成立したドッド=フランク法[135][48]により、運用資産が1.5億米ドル以上の私募ファンドの顧問はSECに届け出て登録しなければならず[153][154]、フォームADV、およびファンドの運用資産と売買ポジションをSECに提出する必要がある[155]。ドッド=フランク法成立以前、投資家の数が15人以下の場合は登録を免除されていたが、多くのファンド・マネージャーはすでに機関投資家の求めに応じてSECに登録していた[156]。ドッド=フランク法により、運用資産が1億米ドル未満の投資顧問は州法による規制を受けるようになり[153]、これにより州法による規制を受けるヘッジファンドの数が増えた[157]。海外のファンド・マネージャーでも運用資産が2,500万米ドル以上の場合はSECに登録する必要がある[158]。同法はさらにヘッジファンドにそのポートフォリオと取引に関する情報を新しく設立された金融安定監督評議会などの規制機関に提出する義務を課した[157]。例えば、SECに対しては投資ファンドの活動とポジションの詳細をフォームPFに記入して提出しなければならない[159]。同法が採用したボルカー・ルールにより、規制機関は銀行とその関連会社や持株会社に対して自己売買業務を禁じ、ヘッジファンドとの関係、投資、後援を限定するよう規制を実施する義務を課された[157][160][161]。
ヨーロッパ
欧州連合のヘッジファンドへの規制はマネージャーを通じて行われることが多い[23]。例えば、欧州連合のヘッジファンドの8割を占めるイギリス[162]ではファンド・マネージャーが金融行動監視機構の認証と規制を受ける[136]。具体的な規制は国によって違う。例えば、ポルトガルではデリバティブの使用が、フランスではレバレッジの使用が規制されている[23]。
ファンド・マネージャーは欧州連合のオルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令を守らなければならない。欧州連合によると、この指令の目的はオルタナティブ投資ファンドに対する監視とコントロールの強化である[163]。指令は欧州連合におけるファンド・マネージャーに加盟国の規制機関に登録すること[164]と、より頻繁に以前の規定より詳細な情報開示を行うことを義務づけている。また、資本比の要求も上げた。さらに、欧州連合加盟国のうち、1か国でも認証を受けた場合、全加盟国で活動できる「パスポート」のシステムを導入した[48][136]。指令の規制範囲は欧州連合加盟国に駐在するファンド・マネージャーのほか、ヨーロッパの投資家にファンドへの投資を宣伝する海外のファンド・マネージャーも含む[48]。指令はまた、ヘッジファンド業界の慣習であるボーナス繰り延べと報酬返還の条項を制限している[165]。
その他
ヘッジファンドの一部はケイマン諸島、ダブリン、ルクセンブルク、イギリス領ヴァージン諸島、バミューダ諸島などのオフショア金融センターで設立されたが、これらの法域は非適格投資家の扱い、顧客の機密性、ファンド・マネージャーの独立性[135][136]に関する規制がそれぞれ違う[166]。
南アフリカ共和国において、投資ファンドのマネージャーは金融サービス委員会に届け出て、許可を得る必要がある[167]。
業績
業績の測定
ヘッジファンドは業績を何らかの中央レポジットリーに報告する必要がなく、投資の公募と宣伝が規制されているため、多くのファンド・マネージャーは業績の公開を拒否しており、そのため個別のヘッジファンドの投資実績統計を獲得するのは至難の業である。しかし、個別ではなく全体の要約は業界誌[168][169]やデータベース[170]や投資コンサルタント会社[171]が提供することもある。
ヘッジファンド8,400社のデータに基づき、ヘッジファンドの平均利益率を毎年11.4パーセントとする概算があり、これは市場全体の手数料差引前利益より6.7パーセント上である[172][23]。またもう1つの概算では2000年1月から2009年12月まで株価は平均で毎年2.62パーセント下落した一方、ヘッジファンドは6.54パーセント上がった上、ボラティリティもより低いという[171]。しかし、より新しいデータを使った概算では、ヘッジファンドの業績は下がり、市場全体よりも下となった[173]。
ヘッジファンド業績の測定ではリターンとリスクの概算が比較される[174]。よく使われる測定値にはシャープ・レシオ[175]、トレイナー・レシオ、ジェンセンのアルファなどがある[176]。これらの測定値はリターンが正規分布に従い、自己相関がない場合に最も役に立つが、実際にはリターンがどちらの仮定にも満たさない場合が多い[177]。
理論上の問題がある伝統的な測定値に代わり、新しい測定値の導入が試みられた。例としてはシャープ・レシオを修正したもの[177][178]、キーティングとシャードウィックが2002年に発表したオメガ・レシオ[179]、シャルマが2004年に発表したAIRAP[180]、カプランとノウルズが2004年に発表したカッパ[181]などがある。
セクター・サイズの効果
ヘッジファンドのアルファ値(業績のうち、マネージャーのスキルにあたる部分)がヘッジファンド業界の拡張により薄められたという主張がある。この主張がなされた理由は2つある。1つはヘッジファンドの業績は市場の変則性に基づくものだが、売買高が増えたことで変則性が少なくなった可能性、もう1つはヘッジファンド業界の報酬モデルが大変魅力的なので、多くのファンド・マネージャーがこぞって参入し、これにより人材が相対的に少なくなった可能性である[182][183]。
ヘッジファンド指数
ヘッジファンドの業績を追跡する指数の種類は創設順に投資不可能、投資可能、クローンという3種類がある。指数は伝統的投資の市場では基準となるポートフォリオを代表するものとして重要な役割を果たしており、株価指数や債券指数のインデックスファンドの登場によりこれらの市場への投資が容易になっている。一方、ヘッジファンドは積極的に運用されているため、トラックするのは不可能である。いわゆる「投資不可能」なヘッジファンド指数(Non-investable hedge fund index)はヘッジファンドを代表できるかもしれないが、その基準となるヘッジファンドの業績は多くが非公開となっている。そのため、このような指数でヘッジファンドの業績を概算すると、バイアスがかかってしまう可能性がある。この問題を解決する試みとして、業績に直接基づかず、ヘッジファンドの統計学上の特性を再現するというクローン指数が作られた。しかし、いずれも業績が実際に公開されている株価指数や債券指数ほどの正確さには至っていない[184]。
2016年の不振
2017年3月、ヘッジファンド・リサーチ社(Hedge Fund Research)が2009年の景気後退期より2016年に運用終了したヘッジファンドのほうが多いことを報じた。報道によると、手数料が高いにもかかわらず運用成績が平均以下だったためいくつかの大きい年金基金はヘッジファンドへの投資を引き揚げた[185]
2016年、ヘッジファンド業界の運用資産が史上初の3兆米ドルに達した一方、新しく創設されたヘッジファンドの数は低迷し、2008年の金融危機の最中の数よりも下回った。2016年に創設されたヘッジファンドの数は729であり、一方2009年は784、2015年は968であった[185]。
批判
ウォーレン・バフェットは、ヘッジファンドの投資によって、世界の投資家は「過去10年で1000億ドルは浪費している」と批判している[2]。
システミック・リスク
システミック・リスクとは、(1会社だけの不安定と対比して)金融システム全体が不安定になるリスクのことである。システム全体を不安定にする大事件のほか、金融機関1社が不安定になるとき、その危機が当該会社と取引している他の金融機関に波及する可能性もシステミック・リスクを引き起こす[186]。全米経済研究所[186]や欧州中央銀行などはヘッジファンドが金融業界のシステミック・リスクを増大させていることを指摘し[187][188]、特にロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が1998年に破綻した後はヘッジファンドの破綻がその取引相手の破綻を招くというシステミック・リスクに注目が集まった。(アメリカの連邦準備制度はLTCMを救済しなかったため、アメリカの納税者が直接費用を負担することはなかった[189]が、代わりに銀行14社がLTCMの救済にあたった。
しかし、金融業界においてこの指摘に反対する声も多い[190]。反対側の主張はヘッジファンドの大半は運用資産が少なく、レバレッジも低いため、いわゆるToo big to fail(潰すには大き過ぎ)にはならず、ヘッジファンドが1つ潰れても経済システムにさほど影響しない、というものである[172][191]。2008年の金融危機以前とその最中におけるヘッジファンドのレバレッジ使用の研究[192]によると、ヘッジファンドのレバレッジは低く、投資銀行などと比べてレバレッジの使用が反循環的である[193][194]。例えば、2008年の金融危機以前、ヘッジファンドにおけるレバレッジが下がった一方、それ以外の金融機関では上がる一方であった[194]。ヘッジファンドの破綻は通常でも起こりうることであり、金融危機の最中には数多くのヘッジファンドが破綻した[195]。2009年、連邦準備制度理事会議長ベン・バーナンキはアメリカ合衆国下院財政委員会への証言で「どんなヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドでも1社がシステム上重大な会社になるとは考えない」と述べた[196]。
いずれにせよ、ヘッジファンドはリスク対リターンの比率をできるだけ下げる努力をしているが、何らかのリスクは必ず残る[197]。群集心理による行動があった場合、金融危機におけるシステミック・リスクが大きくなる。例えば、多くのヘッジファンドが似たような取引をしている場合、このような取引が損失を出しているときは大勢のヘッジファンドが同じように損失を出す。さらに、ヘッジファンドの大半はレバレッジがそれほど高くないが、銀行やミューチュアル・ファンドと違ってレバレッジ使用の規制がないため、極めて高いレバレッジを投資戦略に組み込むヘッジファンドも存在する。金融危機のとき、極めて高いレバレッジがヘッジファンドを清算に追い込む可能性があり、特に流動性に乏しい資産に投資しているヘッジファンドは清算の危険性がより大きい。ヘッジファンドと投資銀行などプライム・ブローカー業務を提供する会社の間の緊密な関係は金融危機におけるドミノ現象を引き起こす可能性もあり、取引相手の銀行が潰れるとヘッジファンドが凍結してしまう可能性もある。ヘッジファンドが金融市場において大きな役割を果たしていることがこれらシステミック・リスクに対する懸念を増大させている。2008年時点ではヘッジファンドの運用資産総計が2兆米ドル近くになっていた[12]が、これはレバレッジ効果により増大させた市場リスクを算入していない値であり、実際のリスクはさらに大きいものになっている。
金融サービス機構が2012年8月に行った調査によると、リスクは限定的で、取引相手による保証金の要求が上がったためリスク自体が低下した。しかし、市場のストレス時に投資者が資金を引き出すと、ヘッジファンドが資産を売却することを余儀なくされる可能性があり、特にレバレッジの大きいヘッジファンド会社でおこった場合や同様のことが数社同時におこった場合、流動性と価格決定の問題を引き起こす可能性があるという[198]。
ヘッジファンドの不透明さ
ファンド・マネージャーが規制を受ける一方、一般的なヘッジファンドの構造は直接な規制を免れるよう仕組まれており、一般投資家以上に投資活動を開示する必要はない。これは規制を受けて開示をする必要のあるミューチュアル・ファンドや上場投資信託と違う。ヘッジファンドに投資している投資家は小口投資ファンドの投資家と違い、ファンド・マネージャーに直接連絡でき、具体的な報告を受けることができる。しかし、投資家以外が同程度の報告を受けることは不可能であり、これがヘッジファンドは秘密的という評判に繋がっている。なお、ヘッジファンドの一部は投資家に対してすら不透明になっている[199]。
ヘッジファンドは投資を募集するために情報を公開することがある。しかし、情報を統合したデータベースでの情報は自己申告に基づくものであり、検算されていない[200]。ヘッジファンドのデータを記録している主要な2データベースを調査、比較した結果、どちらにも含まれているヘッジファンド465社の申告内容(利益、開始日、純資産価額、運用手数料、運用報酬、投資戦略など)が両データベースの間で違い、特に465社のうち5パーセントは利益と純資産価額が両データベースの間で大きく違う[201]。このように公開されているデータが限定的なので、投資家は自分で調査しなければならず、小さいヘッジファンドに対する調査コストは5万米ドルに上る可能性がある[202]。
投資家や独立監査人による検証が行われていないため、結果的に詐欺行為を助長してしまうこともあった[203]。2000年代、インターナショナル・マネージメント・アソシエイツ社(International Management Associates)のカーク・ライト(Kirk Wright)はメール詐欺などの不正を疑われ[204][205]、1億8千万米ドル近く騙し取ったとされた[206]。2008年12月、バーナード・L・マドフが500億米ドル規模のポンジ・スキームを行ったとして逮捕された[207]。マドフのスキームはヘッジファンドと似ているが違うものであり[208]、これを混同して記述されたものもあった[209][210][211]。いくつかのフィーダー・ファンドはマドフに騙されて「投資」していたが、中でも最大なのがフェアフィールド・グリニッジ・グループの運営するフェアフィールド・セントリー・ファンド(Fairfield Sentry Fund)であった。マドフの詐欺が発覚すると、米国証券取引委員会は2009年12月に改革を実施し、登録投資顧問が運営するヘッジファンドは資産をカストディアンの管理下に置かなければならず、監査を受けなければならないことを規定した[212]。
ヘッジファンドと投資家のマッチングは伝統的に不透明であり、投資が個人的な関係やポートフォリオ・マネージャーによる推薦に基づくことが多い[213]。ヘッジファンドの多くは所持証券、投資戦略、過去の業績とマーケット指数との比較を開示し、投資家にヘッジファンドの投資についてある程度情報を提供しているが、所持証券の詳細は開始されないことが多い[214]。投資家はヘッジファンドの利益率の高さにつれられて投資するか、市場のボラティリティをヘッジするためにヘッジファンドに投資することが多い。一方、ヘッジファンドの複雑さと手数料の高さにより一部の投資家はヘッジファンド投資から撤退している。例えば、アメリカ最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金は2014年にヘッジファンド投資からの撤退計画を発表した[215]。またヘッジファンドと投資家のマッチングを改善する動きもあり、例えばHedgeZ社はヘッジファンドを検索とソートできるシステムを提供しており[216]、iMatchative社は投資家の目標と行動プロファイルに基づくアルゴリズムでマッチングを行い、ヘッジファンドと投資家の両方にそれぞれの見方と目標が投資にどう影響するかわからせようとしている[217]。
インサイダー取引疑惑
2006年6月、アメリカ証券取引委員会(SEC)で働くガーリー・アギーレからの手紙により、アメリカ合衆国上院司法委員会はヘッジファンドと独立証券アナリストの間の関連を調査した。しかし、アギーレ氏が捜査主任としてピーコット・キャピタル・マネジメントのインサイダー取引疑惑を調査しているとき、モルガン・スタンレーが最高経営責任者として雇うことを検討していたジョン・マックを取り調べようとした廉でSECから解雇された[218]。上院司法委員会と財政委員会は解雇がマックの追及への違法な報復であるとして、2007年にこれを非難する報告を発表した[219]ため、SECは2009年にピーコット社への調査の再開を余儀なくされた。ピーコット社は2,800万米ドルを支払うことでSECと和解、またピーコット社の最高投資責任者であったアーサー・サムバーグは投資顧問の職につくことを禁止された[220]。調査の圧力により、ピーコット社は営業を停止した[221]。
2012年7月、ニューヨーク・タイムズはヘッジファンド業界では市場調査の一環として株式アナリストへアンケートを送ることが恒常的に行われていることを報じた。報道によると、アンケートを配る目的はアナリストの公開されていない主観を知ることで、あわよくば市場の短期間の動きに影響するアナリストの推奨を早く察知することにある[222]。
分散投資に適するかの論争
現代ポートフォリオ理論によると、合理的な投資家は平均分散分析に基づく最適なポートフォリオ(1単位のリスクに対し最も高いリターンを与えるポートフォリオ)に投資しようとする。ヘッジファンド(特にマーケット・ニュートラルなヘッジファンド)の魅力の1つは株式などの伝統的投資との相関が少なく、従ってポートフォリオ全体のリスクを低減させるための分散投資の投資先に適することである[66]。
いくつかの研究ではヘッジファンドが分散投資の投資先として適するという結果を出していたが、逆の結果を出した研究もある。例えば、マーク・クリッツマンによる研究では株価インデックスファンド、債券インデックスファンド、そして10の仮想上のヘッジファンドで平均分散分析を行い[223][224]、分析結果である平均分散最適ポートフォリオは運用報酬が高いためヘッジファンドが含まれなかった。クリッツマンが次に運用報酬なしでの仮定で再び分析を行うと、ヘッジファンドが平均分散最適ポートフォリオの74パーセントを占めた。
分散投資先としての魅力さを低減させるもう1つの理由は分散投資が最も必要とされる下げ相場のとき、ヘッジファンドのパフォーマンスが市場よりも悪い傾向にあることである[66]。例えば、2008年1月から9月までの間、クレディ・スイス/トレモント・ヘッジファンド指数は9.87パーセント下落した[225]。この指数のうち、ショート・バイアス戦略のサブ指数ですら2008年9月中に6.08パーセント下落した。つまり、相関係数が平均的に低いことは魅力的に見えるが、リーマン・ブラザーズが破綻した2008年9月など金融危機の時期には役に立たない可能性もある。
日本
日本では、高額な手数料をとられるにもかかわらず、それに見合った運用成績をあげることが難しくなっているため、ヘッジファンド投資は減少傾向にある[2]。
2014年の調査では、日本の投資家によるヘッジファンドへの投資残高は2.2兆円(年間純増2,794億円)であった[226]。
海外ファンドへの投資
公募によって一般から広く小口の資金を集めて大規模なファンドを形成することを目指す通常の投資信託とは異なり、世界のヘッジファンドは大部分がオフショア籍であるため、日本の証券会社や銀行は販売できない。そのため、日本国内に居住する個人投資家がヘッジファンドを購入するには以下の3つの方法がある[227][228]。
脚注
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外部リンク
- ヘッジファンドと国際金融市場 - 財務省