コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「抗コリン薬」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
1行目: 1行目:
{{Otheruses|抗コリン薬全般|抗精神病薬の副作用に対して用いられる抗コリン作用のあるパーキンソン病薬|抗パーキンソン病薬}}
{{Otheruses|抗コリン薬全般|抗精神病薬の副作用に対して用いられる抗コリン作用のあるパーキンソン病薬|抗パーキンソン病薬}}
'''抗コリン薬'''(こうこりんやく、{{lang-en-short|anticholinergic agent}})は、[[アセチルコリン]]がアセチルコリン[[受容体]]に結合するのを[[阻害]]する薬物のことである。'''抗コリン作動薬'''とも呼ばれる。この[[抗コリン作用]]によって[[副交感神経]]が抑制される。'''副交感神経遮断薬'''とも言われていたが、コリン作動性線維は副交感神経節後線維だけではない。代表的なものに、[[アトロピン]]や[[スコポラミン]]がある。これと逆の作用を示すのは[[コリン作動薬]]である。
'''抗コリン薬'''(こうこりんやく、{{lang-en-short|anticholinergic agent}})は、[[アセチルコリン]]がアセチルコリン[[受容体]]に結合するのを[[阻害]]する薬物のことである。'''抗コリン作動薬'''とも呼ばれる。この[[抗コリン作用]]によって[[副交感神経]]が抑制される。'''副交感神経遮断薬'''とも言われていたが、コリン作動性線維は副交感神経節後線維だけではない。代表的なものに、[[アトロピン]]や[[スコポラミン]]があり、[[せん妄]]誘発剤として[[デリリアント]]と呼ばれる。これと逆の作用を示すのは[[コリン作動薬]]である。


[[過剰摂取]]や、あるいは他の[[抗コリン作用]]のある薬物[[三環系抗うつ薬]]との併用により、コリン中毒による[[せん妄]]、[[昏睡]]、[[けいれん]]、[[高熱]]などが生じることがある<ref name="seiwaqa12"/>。
[[過剰摂取]]や、あるいは他の[[抗コリン作用]]のある薬物[[三環系抗うつ薬]]との併用により、コリン中毒による[[せん妄]]、[[昏睡]]、[[けいれん]]、[[高熱]]などが生じることがある<ref name="seiwaqa12"/>。

2016年9月4日 (日) 04:37時点における版

抗コリン薬(こうこりんやく、: anticholinergic agent)は、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害する薬物のことである。抗コリン作動薬とも呼ばれる。この抗コリン作用によって副交感神経が抑制される。副交感神経遮断薬とも言われていたが、コリン作動性線維は副交感神経節後線維だけではない。代表的なものに、アトロピンスコポラミンがあり、せん妄誘発剤としてデリリアントと呼ばれる。これと逆の作用を示すのはコリン作動薬である。

過剰摂取や、あるいは他の抗コリン作用のある薬物三環系抗うつ薬との併用により、コリン中毒によるせん妄昏睡けいれん高熱などが生じることがある[1]

歴史

ベラドンナの果実

ベラドンナは、学名Atropa belladonnaと呼ばれ、古くから用いられてきた。ベラドンナには、アトロピンスコポラミンといった成分が含まれ、これらは抗コリン薬として用いられる。

機序

アセチルコリンは神経伝達物質として、身体の様々な機能に関わっている。このアセチルコリンが作用するときに結合する部位が、アセチルコリン受容体である。さらにアセチルコリン受容体には、ムスカリン受容体ニコチン受容体が存在する。抗コリン薬は、このうちムスカリン受容体にアセチルコリンが結合して作用するのを阻害する。つまり、アンタゴニストである。

用途

胃腸の過活動、失禁、吐き気の抑制

スコポラミン(ブスコパン)のような抗コリン薬は、胃腸の過活動による、胃痛や腹痛、また乗り物酔いの抑制などにも用いられる。

抗コリン性抗パーキンソン病薬

代表的には、ビペリデン(アキネトン、タスモリン)や、トリヘキシフェニジル(アーテン)のような抗コリン性抗パーキンソン病薬が存在する[1]。1960年代にはパーキンソン病の治療にドーパミン補充療法が登場し、現在は抗コリン性抗パーキンソン病薬は、主に抗精神病薬との併用において用いられてきた[1]。しかし、そのような併用は避けることが推奨されている[1]

抗コリン作用の強い他の薬物

抗コリン中毒

抗コリン剤の過剰摂取や、抗コリン作用のある三環系抗うつ薬との併用によって生じる中毒状態であり、せん妄昏睡けいれん幻覚低血圧高熱などの症状が生じる救急状態である[1]

認知症リスクの増加

抗コリン作用のある薬剤を長期間、摂取するとアルツハイマー病などの認知症の発症リスクが高まる可能性があることが報告され、10年間で91日分から365日分の使用では1.19倍、1095日まででは1.23倍、1096日以上では1.54倍であった[4][5]

禁忌

抗コリン薬は前立腺肥大症や尿路に閉塞性疾患がある場合には投与が禁忌になっている。これらの持つ人に抗コリン薬を投与すると、排尿障害を来たすおそれがある。抗コリン薬には、膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿排泄を悪くする作用がある[6][出典無効]

脚注

  1. ^ a b c d e 山田武史 著「12 抗コリン性抗パーキンソン薬について教えて下さい。抗コリン性パーキンソン病を併用することによるデメリットはどのようなものがあるでしょうか?本当に認知機能に影響するのでしょうか?」、藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力) 編『統合失調症の薬物療法100のQ&A』星和書店、2008年5月、35-37頁。ISBN 978-4791106677 
  2. ^ a b Church, Diana S.; Church, Martin K. (2011). “Pharmacology of Antihistamines”. World Allergy Organization Journal 4 (Supplement): S22–S27. doi:10.1097/WOX.0b013e3181f385d9. PMC 3666185. PMID 23282332. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23282332. 
  3. ^ 精神医学講座担当者会議(監修)、佐藤光源、丹羽真一、井上新平(編集)『統合失調症治療ガイドライン』(第2版)医学書院、2008年、124頁。ISBN 978-4-260-00646-0 
  4. ^ “風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告 10年間に飲んだ薬の蓄積次第でリスク高まる”. Medエッジ. (2015年2月7日). http://www.mededge.jp/a/drge/8260 2015年3月1日閲覧。 
  5. ^ Gray, Shelly L.; Anderson, Melissa L.; Dublin, Sascha; Hanlon, Joseph T.; Hubbard, Rebecca; Walker, Rod; Yu, Onchee; Crane, Paul K. et al. (2015). “Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia”. JAMA Internal Medicine. doi:10.1001/jamainternmed.2014.7663. PMID 25621434. 
  6. ^ 前立腺肥大症に抗コリン薬は禁忌?-薬剤師のブログ-

関連項目