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2006年4月7日 (金) 03:16時点における版

ヒト

宇宙探査機パイオニア11に搭載されたヒトの両性の画像
分類
界: 動物界
門: 脊索動物門
亜門: 脊椎動物亜門
綱: 哺乳綱
目: サル目
亜目: 真猿亜目
下目: 狭鼻下目
上科: ヒト上科 Catarrhini
科: ヒト科 Hominidae
属: ヒト属 Homo
種: sapiens
学名
Homo sapiens

ヒトとは、狭義にはホモ・サピエンス Homo sapiens を指す。広義にはヒト科ヒト属 (Homo) に属する動物の総称である。より具体的には、現生人とチンパンジーの共通祖先から分岐して以降の現生人に近いグループを指す。これは進化論提唱以降、人間とサルの生物分類学的区別の議論の中から生じた概念である。初期人類の化石の出土がアフリカに集中していることから、人類発祥の地はアフリカであることがほぼ定説となっている。

社会との関係等は人間の項目を、法的な定義はの項目を参照。 関連項目:

生物学的な人類の定義

現存するヒト科の種は現生人 Homo sapiens 一種だが、かつては複数種の種が存在した。考古学上の発見は近年目覚ましく、次々新種が発見されている。化石として発見された人類を化石人類と呼ぶこともある。現生する動物の中では、人類にもっとも近い動物はチンパンジーである。チンパンジーと分岐して以降の種を人類と呼ぶ。次に近縁の種はゴリラオランウータンである。これら3つは類人猿と呼ばれ、かつてはまとめてショウジョウ科に分類されていたが、ミトコンドリアDNA (mtDNA) 分析の発達により分岐順がはっきりしてきたこと、また mtDNA 上の差異がわずかであることから、より近親に分類される方向に変化してきている。通説では人類とチンパンジーの mtDNA は98.5%以上一致するとされる。ただし塩基対の挿入や消去が未考慮であるため、これらを考慮すると共通部分は95%にすぎないとの指摘もある。

チンパンジーと分岐して以降の種を人類と呼ぶため、人類の起源の探究は人類とチンパンジーの直近の共通祖先探しを意味することになる。チンパンジーとの分岐が注目されるのは、たまたま現存する最近親種であるからにすぎないともいえるが、人類の生物学的特徴の定義については、過去に数多くの議論がなされてきた。初期の議論では主に脳の容積や脳に関連が深いと思われる道具の使用等が注目されていたが、近年の研究成果によればそれらは人類誕生後かなり後になって獲得された性質であることが判明しており、現在の学説では、直立二足歩行犬歯の縮小が人類の特徴とされている。

特に重要なのは直立二足歩行であるが、その起源についてはさまざまな仮説があり、定説といえるものはない。少し前までは乾燥化への適応説が有力であったが、近年発見されたトゥーマイ猿人ラミダス猿人の生息地域は森林であったと想定されることから、別の要因の検討も盛んである。そのひとつとして、近年、チンパンジーの木登りと人間の直立二足歩行に共通してみられる腰の筋肉の使用方法に着目が集まってきている。この説によれば、樹上生活への適応の一形態として直立二足歩行の下地が成立したことになる。

人類の起源と進化

人類と類人猿の分岐

アフリカで生息していた人類の祖先が類人猿(チンパンジー属)と分岐したのは、分子進化の研究から約600万年前といわれている。

分岐の原因仮説として有名な「イーストサイド・ストーリー仮説」(イヴ・コパンス, 1983年)がある。

東アフリカは直下にホット・プルームを持つため東西に分裂しつつあるが、この過程で生まれた大地溝帯により類人猿が2つのグループに分断された。その後、東側が乾燥化し森林が後退したため、サバンナへの適応として直立二足歩行型へ進化したとする。

コパンスの説は論理的整合性の鮮やかさから広く受け入れられたが、「人類の定義」の項で述べたように、初期人類が森林に生息していた可能性が高いこと、またサヘラントロプス(トゥーマイ猿人)(600~700万年前)が中央アフリカのチャドで発見されたことから、見直しの機運が高まりつつある。(トゥーマイが人類化石かどうかはまだ議論がある)

直立二足歩行

しかしながら、初期の分岐過程の経緯はともかくとして、直立二足歩行という特殊な進化が真にその効力を発揮したのは、サバンナにおいてであった。サバンナにおける直立二足歩行の優位論はさまざまあるが、主なものは下記の通りである。

  • 顔が高い位置にくるため視界が広く、様々なものをすばやく見つけられたとする説
  • 移動時に手が空くことから、食物や子供の輸送に適していたとする説
  • 直射日光の当たる面積が少ないことにより、体温調節が容易だったとする説
  • 低速移動時のエネルギー消費効率がよいため、森林に比べ広範囲に食物を求める必要がある草原では有利だったとする説

なおエネルギーの効率とはナックルウォークとの対比の話であり、四足歩行との比較ではない。また、サバンナに限らない普遍的な特徴として、頭部が身体の重心線上に位置するため、脳の巨大化を可能としたことが挙げられる。ただし、直立二足歩行は巨大化の必要条件であって、十分条件ではない。

数多くのメリットが挙げられる直立二足歩行ではあるが、一方で構造上不可避なデメリットも存在する。最大の問題点は難産である。二足歩行により下半身にかかる内臓の負荷を受け止めるため、骨盤が御椀型となったが、必然的に産道が狭隘化し、出産(特に頭部の排出)が困難となる。こうした構造的な要因もあるため、一般的な認識とは異なり、初期人類は直立二足歩行へ進化を踏み出した後も、類人猿に比べて脳はそれほど大きくはならなかった。

猿人

なお、原始的人類は「猿人」と呼ばれるが、猿人は大きく分けて2種類が存在する。まず最初に、華奢(きゃしゃ)型猿人(アウストラロピテクス属)が登場する。華奢型猿人の身体は、類人猿的な上半身と二足歩行適用した下半身をくっつけたイメージを想像すればよい。華奢型猿人はしばらくの間栄えたが、250万年前頃に頑丈型猿人(パラントロプス属)が現れた時期を境に、化石から姿を消している。頑丈型猿人は華奢型猿人に比べて大臼歯が巨大でエナメル質が厚く、頭蓋骨に矢状稜と呼ばれる隆起があるのが特徴である。矢状稜は咀嚼筋を付着させるために発達した。頑丈型猿人が現れた時代はアフリカの乾燥化が進んだ頃と一致しており、繊維質の多い植物を摂取するために適応したと想定される。頑丈型猿人は、ほぼ同時期に出現したホモ属としばらく共存していたが、約100万年前頃に絶滅した。

ホモ属

頑丈型猿人がサバンナ化への適用として硬い植物へ適応したのに対し、別の進化を遂げたグループが存在した。すなわち我々の祖先となるホモ属の誕生である。

肉食化

ホモ属はサバンナ化に対し、肉食化(より正確には動物性食物比率の向上)という形で対応した。肉食といっても、初期ホモ属の採取方法は狩猟ではなく、死肉漁りだったと考えられている。サバンナには大型肉食獣がおり、森林に比べ草食動物が捕食される可能性が高い。また死肉にはハゲタカが集まり、視界も開けているため、遠方からの発見も比較的容易である。そしてこの人類の肉食化は、進化の面でも劇的な変化をもたらした。

  1. 動物性食物は、植物性食物に比べ、はるかにカロリー密度が高い。また、植物性食物は消化に長い腸を必要とするが、動物性食物はずっと短い腸でこと足りる。腸はカロリー消費の大きい器官の一つであるため、これが縮小できるということは身体のカロリー消費効率が高まるということを意味する。
  2. このため、ホモ属は他の器官にあてられる余剰なエネルギーを手にすることができた。この余剰の獲得は、人体で最大の高エネルギー消費器官である脳が巨大化できるための、2番目の前提条件が整ったことを意味している。
  3. 一方、脳の巨大化の副作用である難産に対しては、早産を行うことで対処した。早産により、脳が体内で一定以上に成長する前に体外に娩出される。

このようにして、人類の進化において、直立二足歩行・肉食による余剰エネルギーの獲得・早産という、脳の巨大化を可能にする3つの必要条件がはじめて整ったが、これらの条件は同時に、脳が巨大化を要する必然性をももたらした。

死肉を漁るといっても、肉や内臓の部分はすでに肉食獣によって大半が食い荒らされてしまっているはずである。よって、初期のホモ属は残されたわずかな栄養源である骨髄を主に食べていたと考えられるが、骨髄はミネラル等の栄養価に富む反面、硬い骨を割る必要が生じる。幸い二足歩行により両手が自由になっていた人類は、ここではじめて道具を使うことを覚えた。石器の誕生である。

石器の使用

オルドヴァイ文化(250万年前~120万年前)と呼ばれる最初期の石器群は、自然石を打ち欠いてできるチョッパーと剥離片で構成されたごく単純なものであったが、縮小した犬歯の代わりに肉や骨を解体するには十分な道具となった。道具の発明は、高度な知能が前提となる。道具の製造・使用には、手を器用に扱う必要もある。よって、脳の巨大化は必然でもあった。さらに、早産は子育てに大きな労力が要求される。幸い、動物性食物を多く摂取することで食事にかける時間は短縮されるため、余暇は多くなった。また、養育過程の変化は、家族的な生態を促進したことだろう。高度な知能を伴った人類は、より「人間的な」生き方へと変化を遂げたに違いない。

こうして人類は、約250万年前のホモ属誕生を境に、劇的に脳の巨大化を推し進めていくこととなる。

ファイル:Human mtDNA migration.png
人類拡散の歴史 ミトコンドリアDNAの分析による。単位は年

人類の出アフリカ記

アフリカで誕生したホモ・サピエンスが、十数万年前から世界中に拡散し生存域を拡大していった。この種が現生人類であり、我々の直接の祖先である。 人類の起源について、全人類はアフリカに出現した単一の先祖集団に由来するというアフリカ単一起源説と100万年前にアフリカを出て世界中に広がっていったヒトの祖先種であるホモ・エレクタスが各地で独自に進化したとする多地域並行進化説の2つが唱えられてきた。近年のミトコンドリアDNA(母系)およびY染色体(父系)の分析からはアフリカ単一起源説が強く示唆されている。 (ただし異説も少なくない。)

分類

分類学上の研究が進むにつれて見直しがされつつあるため、下表の考古学的人類種分類リストは暫定的なものである。

分類の一例(現生種のみ)

注)この分類の場合、ヒト上属が人類となる。また、ヒト上科のうち人類を除く霊長類は類人猿とよばれる。

人類種(ヒト亜科)の一覧

  • サヘラントロプス属 (Sahelanthropus) - ヒト科の分類に異説あり
    • チャンデス (tchadensis) - トゥーマイ猿人
  • オルロリン属 (Orrorin) - ヒト科の分類に異説あり
    • ツゲネンシス (tugenensis)
  • アルディピテクス属 (Arudipithecus)
    • ラミダス・ラミダス (ramidus ramidus) - ラミダス猿人
    • ラミダス・カダバ (ramidus kadabba) - ラミダス猿人の亜種、ただし別種の可能性あり
  • ケニアントロプス属 (Kenyanthropus)
    • プラティオプス (K.platyops)
    • ルドルェンシス (K.rrudolfensis)
  • アウストラロピテクス属 (Australopithecus) - 華奢型猿人
    • アナメンシス (A.anamensis)
    • アファレンシス (A.afarensis) - アファール猿人(ルーシー)
    • バーエルガザーリ (A.bahrelghazali)
    • アフリカヌス (A.africanus) - アフリカヌス猿人
    • ガルビ (A.Garhi)
  • パラントロプス属 (Paranthropus) - 頑丈型猿人
    • エチオピクス (P.aethiopicus)
    • ボイセイ (P.boisei)
    • ロブストス (P.robustus)
  1. 猿人>原人>旧人>新人のステレオタイプな人類進化構図は過去のものである。旧人等の誤解を招く呼称も現在は使われない。
  2. 北京原人およびジャワ原人は過去それぞれ独立な属の一種 Sinanthropus pekinensisPithecanthropus erectusとされたが、現在の分類ではいずれもホモ・エレクトスの1亜種とされている。
  3. ネアンデルタール人は過去、現生人の亜種とする説があったが、現在はmtDNA分析の結果から別種とされている。
  4. ホモ・サピエンス・イダルツはエチオピアで発見された約16万年前の化石人類。現生人類にきわめて近い特徴をもつため、ホモ・サピエンスの亜種と分類されている。

関連項目

[[pl:Cz%B3owiek]]