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「精神科の薬」の版間の差分

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'''精神科の薬'''(せいしんかのくすり、psychiatric medication)は、[[脳]]の様々な回路と神経系に対して化学的に作用をもたらす目的で摂取される、認可された[[向精神薬]]である。つまり[[精神疾患]]の治療に用いられる薬である。通常、[[精神医学|精神科]]の機関おいて処方されるこれらの薬の大半は[[化学合成|合成]][[化合物]]だが、一部は天然由来か天然にも存在する物質である。20世紀半ばから、こうした薬は多様な精神疾患の治療を開拓し、長期入院が減った結果、精神保健看護にかかる負担を低下させた<ref>T.L. Brink. (2008) Psychology: A Student Friendly Approach. "Unit 11: Clinical Psychology." pp. 226 [http://www.saylor.org/site/wp-content/uploads/2011/01/TLBrink_PSYCH11.pdf]</ref>。
'''精神科の薬'''(せいしんかのくすり、{{lang-en|psychiatric medication}})は、[[脳]]の様々な回路と神経系に対して化学的に作用をもたらす目的で摂取される、認可された[[向精神薬]]である。[[精神医学|精神科]]で処方される薬の大半は[[化学合成|合成]][[化合物]]だが、一部は天然由来か天然にも存在する物質である。[[ハイリスク薬]]も多い<ref>{{cite report ja |author=日本薬剤師会|title=薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン|edition=第2版|publisher=日本薬剤師会 |date=2011-04-15|url=http://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2011/05/high_risk_guideline_2nd.pdfline.pdf|format=pdf|accessdate=2014-05-22}}</ref><ref>{{cite report ja |author=日本病院薬剤師会|title=ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver.2.1)|publisher=日本病院薬剤師会 |date=2013-02-09|url=http://www.jshp.or.jp/cont/13/0327-1.pdf|format=pdf|accessdate=2014-05-22}}</ref>。20世紀半ばから、こうした薬は多様な精神障害の治療を開拓し、長期入院が減った結果、精神保健看護にかかる負担を低下させた<ref>T.L. Brink. (2008) Psychology: A Student Friendly Approach. "Unit 11: Clinical Psychology." pp. 226 [http://www.saylor.org/site/wp-content/uploads/2011/01/TLBrink_PSYCH11.pdf]</ref>。

[[File:Venlafaxine_structure.svg|thumb|right|120px|1993年にアメリカで認可された抗うつ薬である[[ベンラファキシン]]]]
[[File:Desvenlafaxine.svg|thumb|right|120px|2007年にアメリカで認可された抗うつ薬である{{仮リンク|デスベンラファキシン|en|Desvenlafaxine}}]]

[[製薬会社]]は、商業的に成功した医薬品の類似の化学構造を持つあるいは似たような作用をもたらす医薬品を[[医薬品設計]]し、特許を取得しなおし販売してきた<ref name="pmid20671165"/><ref name="SavingNormal">{{Cite book|和書|author=アレン・フランセス|authoerlink=アレン・フランセス|others=青木創(翻訳)|editor=大野裕(監修)|title=〈正常〉を救え―精神医学を混乱させるDSM-5への警告|publisher=講談社|date=2013-10|isbn=978-4062185516|pages=69-70、155、158-160}}、Saving Normal, 2013</ref>。{{要検証範囲|date=2023年1月|1=製薬会社は、[[病気喧伝]]を通して市場を拡大してきており、生物学的検査の不要な精神科はこの境界の操作に弱かった<ref name="SavingNormal"/> }}。

国際的に[[過剰摂取]]による死亡が増加している<ref name="IOAD_facts">{{cite web |author= |title=Overdose Basics |url=http://www.overdoseday.com/facts-stats/overdose-basics/ |date= |publisher=International Overdose Awareness Day |accessdate=2014-01-20}}</ref>。

睡眠薬や抗不安薬のような[[抑制剤]]は[[習慣性医薬品]]や[[麻薬及び向精神薬取締法]]における[[向精神薬]]に指定されている{{要出典|date=2023年1月}}。

日本では、1990年代より適正な薬剤の使用法が模索されており{{sfn|風祭元|2008|pp=124,129}}{{sfn|姫井昭男|2008|pp=106-110}}、[[診療ガイドライン]]が活用されている<ref>{{Cite press release|和書|author=厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム|title=過量服薬への取組-薬物治療のみに頼らない診療体制の構築に向けて|date=2010-09-09|url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T101006I0020.pdf|format=pdf|accessdate=2013-03-15|page=7-8}}</ref>。

[[薬物乱用]]の危険性がある医薬品は[[向精神薬に関する条約]]により国際的管理下にあり、[[批准]]する各国は同様の法律を有する。

中には身体に離脱症状を生じる[[身体的依存]]を示す薬物があり<ref name="apa1-58562-276-4"/>、大量又は長期間の投薬は危険性を増加させるため慎重を要する<ref>{{Cite book|和書|author=Robert S. Porter編|coauthor=Justin L. Kaplan編|title=メルクマニュアル|chapter=抗不安薬と鎮静薬―薬物使用と薬物依存
|publisher=|date=2005-11|url=http://merckmanual.jp/mmpej/sec15/ch198/ch198e.html}}</ref>。しかしながら、処方薬に対する[[薬物依存症]]の増加の問題や<ref>{{Cite web|和書|author= |title=向精神薬依存:8割、投薬治療中に発症 「医師の処方、不適切」−−専門機関調査 |url=http://mainichi.jp/select/news/20130619mog00m040012000c.html |date=2013-06-19 |publisher= |accessdate=2013-06-21}}</ref>、離脱症状について知らない医師が存在することが報告されており<ref name="厚生省依存症検討会会議1"/>、薬物依存症についての知識が欠けていることが指摘されている{{sfn|The National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University|2012}}。


==歴史==
==歴史==
===近代===
近代的な[[精神薬理学]]は、1949年の[[ジョン・ケイド]]によるリチウムの治療作用の発見、あるいは1952年の抗精神病薬の[[クロルプロマジン]]の治療効果の発見からはじまるとされる。
20世紀前半までは、[[スコポラミン]]、[[アトロピン]]、[[抱水クロラール]]や[[バルビツール酸]]系、[[モルヒネ]]などの[[カクテル療法|カクテル]]が用いられたが、治療薬とまではみなされず間に合わせの薬であった{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=20}}。


[[1884年]]には、精神科医の[[ジークムント・フロイト]]は患者とその家族に[[コカイン]]を投与した結果の論文を書いた<ref name="ラング"/>。フロイトの同僚のケラーがコカインの麻酔作用を発見した<ref name="ラング">{{Cite book|和書|author=H.P.ラング、M.M.デール、J.M.リッター、R.J.フラワー|coauthor=樋口宗史(監訳)、前山一隆(翻訳)ら|title=カラー版ラング・デール薬理学|publisher=西村書店|date=2011|isbn=978-4890134113|pages=592-597}}、''Rang and Dale's pharmacology'', 6ed.の邦訳書。</ref>。1930年代にも、フロイトは『文明とそれの不満』において、躁病を示す体外物質のようなものが体内にもあると考えるようになったと記している{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=12}}。
しかしながら、[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)の所長の[[トーマス・インセル]]によれば、およそ60年にわたって同じような薬ばかり作っており、単に販売手法に秀でていたにすぎない<ref>{{cite news |author= |title=New psychiatric drugs low priority for pharmaceutical firms: Huge unmet need for better drugs for people with depression |url=http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/10/12/psychiatric-drugs.html |date=2012-10-14 |newspaper=CBC News |accessdate=2013-03-20}}</ref>。新世代の薬は、従来の薬を上回る有効性を示すことができず{{sfn|Insel TR|2009}}、模倣薬([[:en:Pharmaceutical industry#"Me-too" drugs|me too drug]])を合成し続ける戦略は限界を迎え、2010年にはグラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退を始めた<ref name="pmid20671165">{{cite journal|last1=Miller|first1=G.|title=Is Pharma Running Out of Brainy Ideas?|journal=Science|volume=329|issue=5991|pages=502–504|year=2010|month=July|pmid=20671165|doi=10.1126/science.329.5991.502|url=http://ic.ucsc.edu/~drsmith/metx270/html/Miller%202010.pdf|format=pdf}}</ref>。大手製薬会社の似たような傾向が続いた<ref>{{cite news|title=Insight: Research into brain disorders under threat as drug firms pull out|newspaper=The Guardian|date=13 June 2011|url=http://www.guardian.co.uk/science/2011/jun/13/research-brain-disorders-under-threat|accessdate=2013-01-29}}</ref><ref>{{cite news|title=Insight: Antidepressants give drugmakers the blues|author=Kate Kelland|author2=Ben Hirschler|newspaper=Reuters|date=2012-03|url=http://www.reuters.com/article/2012/03/23/us-depression-drugs-idUSBRE82M0MK20120323|accessdate=2013-01-29}}</ref>。

1930年代には、バルビツール酸によって持続的に睡眠状態にする治療は、統合失調症に対する唯一の多少有効な治療法であった{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=20}}。しかしこの治療による死亡率は約5%であった<ref name="pmid18568113">{{cite journal||title=The history of barbiturates a century after their clinical introduction|journal=Neuropsychiatr Dis Treat|issue=4|pages=329–43|year=2005|pmid=18568113|pmc=2424120|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2424120/}}</ref>。

1941年ごろから日本では[[メタンフェタミン]]が、精神科の方面から仕事の能率を高めるなどとして宣伝され乱用を経て、1951年には[[覚醒剤取締法]]が制定される<ref>{{Cite book|和書|author=立津政順、後藤彰夫、藤原豪共著|title=覚醒剤中毒|publisher=医学書院|date=1956|pages=1、8-9、17}}</ref>。この乱用は国際的にも著名なものであった<ref name="pmid1046373">{{cite journal |author=Smart RG|title=Effects of legal restraint on the use of drugs: a review of empirical studies|journal=U.N. Bulletin on Narcotics|volume=28|issue=1|pages=55–65 |year=1976 |pmid=1046373 |url=http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/bulletin/bulletin_1976-01-01_1_page006.html }}</ref>。

サンド社による[[LSD (薬物)|LSD]]は1943年に合成され、このころはまだ[[精神分析]]が全盛であり分析を補助する目的にて用いられた{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=15}}。他にもアルコール依存症の治療などに用いられた。また1960年代に規制されるまで乱用され、[[サマー・オブ・ラブ]]といったヒッピー・ムーブメントを生み出した。

===近代的な精神薬理学のはじまりと限界===
近代的な[[精神薬理学]]は、1949年の[[ジョン・ケイド]]による[[リチウム塩|リチウム]]の治療作用の発見、あるいは1952年の[[抗精神病薬]]の[[クロルプロマジン]]の治療効果の発見からはじまるとされる。

その発見は偶然であり、ベンゾジアゼピンとリチウムの鎮静作用は動物にて偶然見つかり、抗結核薬はヒトで偶然に気分を改善し抗うつ薬となり、鎮静剤としてのクロルプロマジンは統合失調症に効果を現し抗精神病薬となった<ref name="pmid25391924">{{cite journal|last1=Nutt|first1=David|authorlink1=デビッド・ナット|title=Help luck along to find psychiatric medicines|journal=Nature|volume=515|issue=7526|pages=165–165|year=2014|pmid=25391924|doi=10.1038/515165a|url=http://www.nature.com/news/help-luck-along-to-find-psychiatric-medicines-1.16311}}</ref>。

フランスの外科医、[[アンリ・ラボリ]]は、麻酔科医のユグナーと共に遮断カクテル(カクテル・リティック)を用い、致死性の手術後ショック反応を減らすという目的で[[バルビツール酸系]]の作用を増強することであり、[[プロメタジン]]が試された後に、さらなる効果を求めてクロルプロマジンを試しクロルプロマジンを麻酔薬とみなした{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=29-31}}。その内容の一例は、クロルプロマジン、プロメタジン、メペリドンといった組み合わせであった<ref>G.ツビンデン、L.O.ランドール、中村圭二『向精神薬の薬理 トランキライザーのすべて』朝倉書店、1971年</ref>。

そして、これとは別にパリにあるサンタンヌ病院のジャン・ドレとピエール・ドニケルは1952年の5月から7月にかけて、麻酔薬の増強といったことにも用いられているが、クロルプロマジンを単独で用いても妄想を緩和したりするといった一連の研究論文を公開する{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=32}}。1970年代には、抗精神病薬による[[遅発性ジスキネジア]]の副作用のために各社は訴えられ、100万ドル規模の和解金を支払い、その後20年新しい抗精神病薬の登場はなかった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2015|p=48}}。

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File:Phenothiazin.svg|[[フェノチアジン]]は、殺菌剤や精神科治療薬の基礎となる構造を持つ。
File:Methylene_blue-2d-skeletal.svg|[[メチレンブルー]]は、合成染料の1つである。
File:Chlorpromazin.svg|[[クロルプロマジン]]は、最初の抗精神病薬。その化学構造。
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File:Clomipramine.svg|[[クロミプラミン]]は、初期の[[三環系抗うつ薬]]。3つの環が特徴とされる。
File:Carbamazepine.svg|[[カルバマゼピン]]は抗てんかん薬である。気分安定薬としても用いられる。
File:Oxcarbazepine.svg|[[オクスカルバゼピン]]。このように単純な化学構造の違いによっても、別の医薬品として特許が取得しなおされる。
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1955年に発売されたのは、トランキライザー(精神安定剤)の[[メプロバメート]]であり、その商品名はミルタウンである{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|p=73}}。多くの雑誌が、ハッピーピル、心の平和の薬などとしてとりあげ、爆発的に販売された{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=72-74}}。薬局は「ミルタウン売り切れ」「ミルタウン明日入荷」といった張り紙さえした<ref name="精神医学の歴史メプロバメート">{{Cite book|和書|author=エドワード・ショーター|others=木村定(翻訳)|title=精神医学の歴史|publisher=青土社|date=1999-10|isbn=978-4791757640|page=374}}、A History of Psychiatry: From the Era of the Asylum to the Age of Prozac, 1997</ref>。日本の新聞においても、文化病・都会病、ノイローゼの薬として広告され、主婦のイライラや赤子の夜泣きへの効能が謳われている<ref>{{Cite journal |和書|author=松枝亜希子|date=2010|title=トランキライザーの流行―市販向精神薬の規制の論拠と経過|url=http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ce/2010/ma01.pdf|format=pdf|journal=Core Ethics|volume=6|pages=385-399}}</ref>。世界保健機関による薬物の専門委員会の1957年の、報告書では静穏剤(Traquilizing Drug)、アタラシックなどが非常に急速に使用量が増えて、[[バルビツール酸系]]と似た離脱症状が生じているという報告がなされている<ref name="who.int.dep07">{{Cite report|df=ja |author=世界保健機関|authorlink=世界保健機関|title=WHO Expert Committee on Addiction-Producing Drugs - Seventh Report / WHO Technical Report Series 116|publisher=World Health Organization|date=1957|url=http://whqlibdoc.who.int/trs/WHO_TRS_116.pdf|format=pdf|pages=9-10}}</ref>。乱用の後に市場から姿を消した。

1960年代には、効果の似た[[ベンゾジアゼピン系]]の薬剤が登場する。ベンゾジアゼピン系は「[[精神安定剤]]」として家庭の常備薬のように販売された{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2015|p=51}}。[[トリアゾラム]](ハルシオン)は国際的には1977年、日本では1982年に発売された<ref name="トリアゾラム物語">{{Cite journal |和書|author=村崎光邦|date=1999-05|title=精神医学用語解説 トリアゾラム物語|journal=臨床精神医学|volume=28|issue=5|pages=587-589}}</ref>。(以前の睡眠薬と比較して短時間作用のため)翌日への持ち越し効果がなく処方は増加したが<ref name="トリアゾラム物語"/>、世界中での乱用にもつながった<ref name="睡眠薬の乱用">{{Cite journal |和書|author=村崎光邦|date=1998|title=睡眠薬の乱用|journal=臨床精神医学|volume=27|issue=4|pages=381-388|naid=}}</ref>。データのねつ造および副作用の虚偽の報告がなされていることが発覚し<ref name="患者用説明書の要望書">{{cite report|df=ja |author=薬害オンブズパースン会議|title=ハルシオンの患者用説明書についての要望書 |date=2002-08-27|url=https://www.yakugai.gr.jp/topics/file/harusion_req_20020827.pdf|format=pdf|accessdate=2016-6-15}}</ref>、イギリスの保健省はトリアゾラムの販売を中止した<ref name="トリアゾラム物語"/>。

抗精神病薬の[[クロザピン]]には致命的な副作用があったが、遅発性ジスキネジアがないためクロザピンの受容体結合特性を模倣した[[リスペリドン]](リスパダール)、[[ジプラシドン]](ジオドン)、クロザピンの分子構造を若干修正した[[クエチアピン]](セロクエル)、[[オランザピン]](ジプレキサ)が合成され、90年代以降に市場に出ることになる{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|p=223-225}}。

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File:Clozapine.svg|1970年代に認可された抗精神病薬の[[クロザピン]]。抗精神病薬のなかでも有効性が高いとみられている。しかし、致命的な[[無顆粒球症]]の副作用があるため一度市場から撤退した。[[治療薬物モニタリング]]の技術の向上により、1990年代に再度市場に登場した。
File:Olanzapine.svg|1990年代に認可された抗精神病薬の[[オランザピン]]。クロザピンと同じ有効性をもちながら無顆粒球症がない薬を探索して開発された。しかし、従来の抗精神病薬と有効性に違いはなかった{{sfn|Insel TR|2009}}。
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1980年代には依存と離脱症状の問題があらわとなったベンゾジアゼピン系にかわり、その市場に新しい抗うつ薬である[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]] (SSRI) が参入した{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2015|p=51}}。そして、それも2003年から2004年にかけて、欧米で(SSRIのひとつ)[[パロキセチン]]が小児の自殺を誘発するという試験が隠蔽されていたという話題が持ち上がると、[[双極性障害]]の[[病気喧伝|売り込み]]へと変わっていった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=251-253}}。

[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)の所長の[[トーマス・インセル]]によれば、およそ60年にわたって同じような薬ばかり作っており、単に販売手法に秀でていたにすぎない<ref name="cbc20121014">{{cite news |author= |title=New psychiatric drugs low priority for pharmaceutical firms: Huge unmet need for better drugs for people with depression |url=http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/10/12/psychiatric-drugs.html |date=2012-10-14 |newspaper=CBC News |accessdate=2013-03-20}}</ref>。新世代の薬は、従来の薬を上回る有効性を示すことができていない{{sfn|Insel TR|2009}}。
{{Quotation|市場性のある既成の医薬品の修正を基にした新規医薬品の開発では、精神障害を有するほとんどの人々に対して現状打破をもたらさないでしょう。|[[トーマス・インセル]]、''Journal of Clinical Investigation''、2009年4月{{sfn|Insel TR|2009}}}}

模倣薬([[:en:Pharmaceutical industry#"Me-too" drugs|me too drug]])を合成し続ける戦略は限界を迎え、2010年にはグラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退を始めた<ref name="pmid20671165">{{cite journal|last1=Miller|first1=G.|title=Is Pharma Running Out of Brainy Ideas?|journal=Science|volume=329|issue=5991|pages=502–504|year=2010|month=July|pmid=20671165|doi=10.1126/science.329.5991.502|url=http://ic.ucsc.edu/~drsmith/metx270/html/Miller%202010.pdf|format=pdf}}</ref>。大手製薬会社の似たような傾向が続いた<ref name="pmid22158218">{{cite journal|last1=Abbott|first1=Alison|title=Novartis to shut brain research facility|journal=Nature|volume=480|issue=7376|pages=161–162|year=2011|month=December|pmid=22158218|doi=10.1038/480161a|url=http://www.nature.com/news/novartis-to-shut-brain-research-facility-1.9547}}</ref><ref>{{cite news|title=Research into brain disorders under threat as drug firms pull out|newspaper=The Guardian|date=13 June 2011|url=http://www.guardian.co.uk/science/2011/jun/13/research-brain-disorders-under-threat|accessdate=2013-01-29}}</ref><ref>{{cite news|title=Insight: Antidepressants give drugmakers the blues|author=Kate Kelland|author2=Ben Hirschler|newspaper=Reuters|date=2012-03|url=http://www.reuters.com/article/2012/03/23/us-depression-drugs-idUSBRE82M0MK20120323|accessdate=2013-01-29}}</ref>。この分野の薬は、承認まで平均18年かかる<ref name="NoNewMeds">{{cite news |author=Laura Sanders |title=No New Meds |url=http://www.sciencenews.org/view/feature/id/348115/description/No_New_Meds |date=February 7, 2013 |newspaper=ScienceNews |accessdate=2013-03-24}}</ref>。


偶然の発見からはじまった精神薬理学は、疾患と製薬開発の科学的な基礎となる根本的なデータを欠如したまま60年が経過し頓挫したのである。
偶然の発見からはじまった精神薬理学は、疾患と製薬開発の科学的な基礎となる根本的なデータを欠如したまま60年が経過し頓挫したのである。
{{Quotation|精神薬理学は危機に陥っている。データが届き、大規模な実験が失敗したことが明白である…抗うつ薬、抗精神病薬、そして抗不安薬と、精神科の薬の主な3種類の発見はすべて、偶然の臨床観察に基づいてきた。発見の時点では、これらの分子が生じさせる作用の機序は不明だったが、後に抗精神病薬はD2受容体拮抗薬、抗うつ薬はモノアミン再取り込み阻害剤、抗不安薬はGABA受容体モジュレーターであることが明らかになった。…たとえば、ドーパミンD2受容体が抗精神病性の活性の標的だということを示す遺伝的または前臨床データは存在するでしょうか?目下、精神病性障害において、この受容体の発現あるいは機能の異常を示唆する遺伝的なデータは存在しません。…精神病のようにまったく同じことが、うつ病に関するモノアミントランスポーターについても言え、病態生理学に基づく動物モデルは存在せず、抗うつ薬のための潜在的な標的であることを示す説得力のある前臨床データも存在しない。…現在の着想では精神疾患に関する合理的な医薬品設計の試みは時期尚早である。|H. C. Fibiger - ''Schizophrenia Bulletin'', June, 2012 <ref name="pmid22837348">{{cite journal|last1=Fibiger|first1=H. C.|title=Psychiatry, The Pharmaceutical Industry, and The Road to Better Therapeutics|journal=Schizophrenia Bulletin|volume=38|issue=4|pages=649-650|year=2012|month=June|pmid=22837348|doi=10.1093/schbul/sbs073|url=http://schizophreniabulletin.oxfordjournals.org/content/38/4/649.full}}</ref>}}
{{Quotation|精神薬理学は危機に陥っている。データが届き、大規模な実験が失敗したことが明白である…抗うつ薬、抗精神病薬、そして抗不安薬と、精神科の薬の主な3種類の発見はすべて、偶然の臨床観察に基づいてきた。発見の時点では、これらの分子が生じさせる作用の機序は不明だったが、後に抗精神病薬はD2受容体拮抗薬、抗うつ薬はモノアミン再取り込み阻害剤、抗不安薬はGABA受容体モジュレーターであることが明らかになった。…たとえば、ドーパミンD2受容体が抗精神病性の活性の標的だということを示す遺伝的または前臨床データは存在するでしょうか?目下、精神病性障害において、この受容体の発現あるいは機能の異常を示唆する遺伝的なデータは存在しません。…精神病のようにまったく同じことが、うつ病に関するモノアミントランスポーターについても言え、病態生理学に基づく動物モデルは存在せず、抗うつ薬のための潜在的な標的であることを示す説得力のある前臨床データも存在しない。…現在の着想では精神障害に関する合理的な医薬品設計の試みは時期尚早である。|H. C. Fibiger - ''Schizophrenia Bulletin'', June, 2012 <ref name="pmid22837348">{{cite journal|last1=Fibiger|first1=H. C.|title=Psychiatry, The Pharmaceutical Industry, and The Road to Better Therapeutics|journal=Schizophrenia Bulletin|volume=38|issue=4|pages=649-650|year=2012|month=June|pmid=22837348|doi=10.1093/schbul/sbs073|url=http://schizophreniabulletin.oxfordjournals.org/content/38/4/649.full}}</ref>}}

初期の発見に基づいて多くの薬剤が開発されてきたが、それらは神経科学の進歩ではなく、新たにケタミンが気分を改善したり、シロシビンが長期的な気分の改善を生じさせるという偶然の発見が得られている<ref name="pmid25391924"/>。

このためこれまで異なった作用機序を持つ、従来からある医薬品に再び焦点が当たっている。アメリカでは麻酔薬の[[ケタミン]]を治療抵抗性のうつ病に投与するクリニックが登場している。イギリスでは、医学研究審議会(MRC)の資金提供を受け、2015年に(マジックマッシュルームの成分)[[シロシビン]]を治療抵抗性うつ病の治療に用いる研究が開始され<ref name="pmid25391924">{{cite journal|last1=Nutt|first1=David|authorlink1=デビッド・ナット|title=Help luck along to find psychiatric medicines|journal=Nature|volume=515|issue=7526|pages=165–165|year=2014|pmid=25391924|doi=10.1038/515165a|url=http://www.nature.com/news/help-luck-along-to-find-psychiatric-medicines-1.16311}}</ref>、結果は12人の約半分は服用体験から3週間後に寛解に達した(うつ病の基準を満たさなかった)<ref name="pmid27210031"/>。[[メチレンジオキシメタンフェタミン|MDMA]]を用いた心理療法の治験が進行しており<ref>{{cite journal|last1=Danforth|first1=Alicia L.|last2=Struble|first2=Christopher M.|last3=Yazar-Klosinski|first3=Berra|last4=Grob|first4=Charles S.|title=MDMA-assisted therapy: A new treatment model for social anxiety in autistic adults|journal=Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry|volume=64|pages=237–249 |date=2016|pmid=25818246 |doi=10.1016/j.pnpbp.2015.03.011 |url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278584615000603 }}</ref>、また[[医療大麻|大麻]]の成分である[[カンナビジオール]] (CBD) は、抗精神病薬の特性が報告されている<ref name="pmid27877130">{{cite journal|last1=Rohleder|first1=Cathrin|last2=Müller|first2=Juliane K.|last3=Lange|first3=Bettina|coauthors=et al.|title=Cannabidiol as a Potential New Type of an Antipsychotic. A Critical Review of the Evidence|journal=Frontiers in Pharmacology|volume=7|pages=422|date=2016 |pmid=27877130|pmc=5099166|doi=10.3389/fphar.2016.00422 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5099166/ }}</ref>。

健康の権利に関する[[国連特別報告者]]である{{仮リンク|ダイニウス・プラス|lt|Dainius Pūras}}は、2017年の国連人権理事会への報告書<ref>{{cite report|df=ja |title=Report of the Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health (A/HRC/35/21) |url=https://ap.ohchr.org/documents/dpage_e.aspx?si=A/HRC/35/21 | date=2017-03-28 |publisher=世界保健機関}}</ref>でも強調してきたことだが、生物医学的な解釈が乱用され過剰に生物医学的に医療化されることで、精神保健の問題を解決するには、問題が起きた脳に対し投薬が必要というように考えられがちになり危機に陥っているが、心理社会的な側面、貧困や暴力からの解放は重要であり、これこそが人権に基づく手法であることを強調してきた<ref>{{Cite web |author=Ana Florence |date=2020-5-27 |url=https://www.madinamerica.com/2020/05/bringing-human-rights-mental-health-care-interview-dainius-puras/ |title=Bringing Human Rights to Mental Health Care: An Interview with UN Envoy Dainius Pūras |publisher=Mad in America |accessdate=2021-02-13}}</ref>。


===日本===
===日本===
1894年(明治27年)呉秀三の『精神病学集要』には、[[麻酔剤]]として[[モルヒネ]]、[[あへん]]、カンナビノン、[[催眠剤]]として[[抱水クロラール]]や[[クロロホルム]]といったものが挙げられる{{sfn|松下正明(総編集)|1999|p=284}}。1955年ころまで、主に[[鎮静剤|鎮静]][[催眠剤]]が主であった{{sfn|松下正明(総編集)|1999|p=285}}。
日本では向精神薬が導入されてから、1955年に精神病院の病床数が44,250床であったものが、1960年には95,667床、1970年には170,000床、2000年には358,153床と増大していき、その一端に[[多剤大量処方]]があるとされる{{sfn|風祭元|2008|pp=20,27}}。


1965年の第2回精神病理・精神療法学会シンポジウムでは、[[レボメプロマジン]](ヒルナミン、レボトミン)や[[ジアゼパム]](セルシン)や[[LSD (薬物)|LSD]]による薬物精神療法が提唱された<ref name="日本近代精神科162">{{Cite book|和書|author=風祭元|title=日本近代精神科薬物療法史|publisher=アークメディア |date=2008 |isbn=978-4875831211|pages=162}}</ref>。LSDによる精神分析の翻訳書も出版されている<ref>{{Cite book|和書|author=C.A.ニューランド|translator=川口正吉|title=私の自己と私―LSD-25の精神分析|publisher=河野心理教育研究所出版部|date=1977|page=xiv}} ''My Self and I'', 1962.</ref>。1964年の『精神科治療学集大成』では100-200ミリグラムとされた抗精神病薬の維持量は、1970年代に200-300ミリグラムの例が多くなり、1993年では平均1000ミリグラムを超えた<ref name="日本近代精神科186">{{Cite book|和書|author=風祭元|title=日本近代精神科薬物療法史|publisher=アークメディア |date=2008 |isbn=978-4875831211|pages=186}}</ref>。
==違法マーケティング==
この領域の薬の販売拡大は違法なマーケティング活動によって支えられていた<ref name="top10Settlements">{{cite news|author=Maia Szalavitz Sept |url=http://healthland.time.com/2012/09/17/pharma-behaving-badly-top-10-drug-company-settlements/ |title=Top 10 Drug Company Settlements |publisher=TIME.com |date=September 17, 2012|accessdate=2013-02-23}}</ref>。


* 2012年、[[グラクソ・スミスクライン]]、30億ドル(アメリカ)-パキシルについて、同社は子供への有効性を示すのに失敗したというデータにも関らずパキシルの子供や青年への適応外用途をうたった―抗うつ薬のウェルブトリン(Wellbutrin)の、体重減少、物質乱用と性的機能不全を含む適応外用途のマーケティングのため。抗てんかん薬のラミクタールの適応外用途のマーケティング。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2012/July/12-civ-842.html |title=USDOJ: GlaxoSmithKline to Plead Guilty and Pay $3 Billion to Resolve Fraud Allegations and Failure to Report Safety Data |publisher=Justice.gov |date=2012-07-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>
* 2012年、[[ジョンソン・エンド・ジョンソン]]、15億ドルから20億ドル。リスパダールの子供や認知症の高齢者への適応外用途のマーケティングによる<ref name="top10Settlements"/>。
* 2012年、[[アボット・ラボラトリーズ]]。15億ドル。デパコートを、同薬のその用途について有効という証拠がないにも関わらず知的障患者の興奮や攻撃性に用いるための適応外用途のマーケティング。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2012/October/12-civ-1195.html |title=USDOJ: Abbott Laboratories Sentenced for Misbranding Drug |publisher=Justice.gov |date=2012-10-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>
*2009年、[[イーライリリー・アンド・カンパニー|イーライリリー]]、14億ドル。ジプレキサの子供と高齢認知症患者に対する適応外用途のマーケティングによる。それは統合失調症と双極性障害対する治療にしか認可されていない<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/usao/pae/News/Pr/2009/jan/lillyrelease.pdf |format=pdf |title=Pharmaceutical Company Eli Lilly to Pay Record $1.415 Billion for Off-Label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2009-01-15 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2010年、[[アストラゼネカ]]、5.2億ドル。セロクエルの子供や高齢者への適用外用途のマーケティングによる。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2010/April/10-civ-487.html |title=Pharmaceutical Giant AstraZeneca to Pay $520 Million for Off-label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2010-04-27 |accessdate=2013-02-23}}</ref>
* 2009年、[[ファイザー]]、3.01億ドル。ジオドン(Geodon)の適用外用途のマーケティングによる。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2010/April/10-civ-487.html |title=Pharmaceutical Company Pfizer, Inc. To Pay $301 Million for Off-Label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2009-09-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>
* 2007、[[ブリストル・マイヤーズ スクイブ]]、5.15億ドル。エビリファイの子供と青年、認知症を患う高齢患者に対する適用外用途のマーケティングによる。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2007/September/07_civ_782.html |title=#07-782: 09-28-07 Bristol-Myers Squibb to Pay More Than $515 Million to Resolve Allegations of Illegal Drug Marketing and Pricing |publisher=Justice.gov |date=2007-09-28 |accessdate=2013-02-23}}</ref>
* 2004年、ファイザー、4.3億ドル。ニューロンチンの適用外用途のマーケティングによる。<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2004/May/04_civ_322.htm |title=#322: 05-13-04 WARNER-LAMBERT TO PAY $430 MILLION TO RESOLVE CRIMINAL & CIVIL HEALTH CARE LIABILITY RELATING TO OFF-LABEL PROMOTION |publisher=Justice.gov |date=2004-05-13 |accessdate=2013-02-23}}</ref>


厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームは診療ガイドラインの活用を提唱しており{{sfn|厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム|2010|p=9}}2013年に「統合失調症に対する抗精神病薬多剤処方の是正に関するガイドライン」が公開された<ref name="SCAPNews">{{Cite press release |和書 |title=抗精神病薬減量法ガイドラインを発表 -多剤大量処方から少しずつ最適な処方への工夫|url=http://www.ncnp.go.jp/press/press_release131004.html |publisher=独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |date=2013-10-04}}</ref><ref name="SCAPabout">{{Cite report |df=ja |author=SCAP group|date=2013-07-12 |title=SCAP 法による抗精神病薬減量支援シート|url=http://www.ncnp.go.jp/nimh/syakai/file/20130927scap/scap_introduction.pdf|publisher=国立精神・神経医療研究センター |format=pdf |accessdate=2013-10-04}}</ref>。
== 管理 ==

大部分の精神科の薬は[[処方せん医薬品]]であり、入手には[[精神科医]]や精神科正看護師(psychiatric nurse practitioner:PMHNP)のような[[医師]]による処方せんが必要である。[[アメリカ合衆国]]と[[アメリカ合衆国の海外領土|その領土]]の一部では、{{仮リンク|心理学者のための処方権運動|en|prescriptive authority for psychologists movement}}の創出を受けて、{{仮リンク|医療心理学|en|medical psychology}}に関する追加の専門教育と訓練を受けた[[臨床心理学者]]に処方特権が与えられた。<ref name=Bridget>{{cite web |last=Murray |first=Bridget |title=A Brief History of RxP |publisher=APA Monitor |date=October 2003 |url=ttp://www.apa.org/monitor/oct03/rxp.html|accessdate=4/11/2007 }}
2016年には日本精神薬学会が発足し、[[多剤大量処方]]を改善するための「向精神薬減量ガイドライン」の策定を計画している<ref name="減量ガイドライン策定">{{Cite web|和書|url=http://www.qlifepro.com/news/20170213/to-establish-psychotropic-drug-reduction-guidelines.html |title=【日本精神薬学会】向精神薬減量ガイドライン策定へ |publisher=QLifePro |date=2017-02-13 |accessdate=2017-02-19}}</ref>。
</ref>

==違法なマーケティング==
この領域の薬の販売拡大は、違法なマーケティング活動によって支えられていた<ref name="top10Settlements">{{cite news|author=Maia Szalavitz Sept |url=http://healthland.time.com/2012/09/17/pharma-behaving-badly-top-10-drug-company-settlements/ |title=Top 10 Drug Company Settlements |publisher=TIME.com |date=September 17, 2012|accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2012年、[[グラクソ・スミスクライン]]、30億ドル([[アメリカ合衆国]])- [[パキシル]]について、同社は子供への有効性を示すのに失敗したというデータにもかかわらずパキシルの子供や青年への適応外用途をうたった― 抗うつ薬のウェルブトリン(Wellbutrin)の、体重減少、物質乱用と性的機能不全を含む適応外用途のマーケティングのため。抗てんかん薬[[ラミクタール]]の適応外用途のマーケティング<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2012/July/12-civ-842.html |title=USDOJ: GlaxoSmithKline to Plead Guilty and Pay $3 Billion to Resolve Fraud Allegations and Failure to Report Safety Data |publisher=Justice.gov |date=2012-07-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2012年、[[ジョンソン・エンド・ジョンソン]]、15億ドルから20億ドル。[[リスパダール]]の子供や認知症の高齢者への、適応外用途のマーケティングによる。<ref name="top10Settlements"/>
* 2012年、[[アボット・ラボラトリーズ]]。15億ドル。デパコートを、同薬のその用途について有効という証拠がないにも関わらず、知的障患者の興奮や攻撃性に用いるための適応外用途のマーケティング<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2012/October/12-civ-1195.html |title=USDOJ: Abbott Laboratories Sentenced for Misbranding Drug |publisher=Justice.gov |date=2012-10-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
*2009年、[[イーライリリー・アンド・カンパニー|イーライリリー]]、14億ドル。[[ジプレキサ]]の子供と高齢認知症患者に対する適応外用途のマーケティングによる。それらは統合失調症と双極性障害対する治療にしか認可されていない<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/usao/pae/News/Pr/2009/jan/lillyrelease.pdf |format=pdf |title=Pharmaceutical Company Eli Lilly to Pay Record $1.415 Billion for Off-Label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2009-01-15 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2010年、[[アストラゼネカ]]、5.2億ドル。[[セロクエル]]の子供や高齢者への適用外用途のマーケティングによる<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2010/April/10-civ-487.html |title=Pharmaceutical Giant AstraZeneca to Pay $520 Million for Off-label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2010-04-27 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2009年、[[ファイザー]]、3.01億ドル。ジオドン(Geodon)の適用外用途のマーケティングによる<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2010/April/10-civ-487.html |title=Pharmaceutical Company Pfizer, Inc. To Pay $301 Million for Off-Label Drug Marketing |publisher=Justice.gov |date=2009-09-02 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2007年、[[ブリストル・マイヤーズ スクイブ]]、5.15億ドル。[[エビリファイ]]の子供と青年、認知症を患う高齢患者に対する、適用外用途のマーケティングによる<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2007/September/07_civ_782.html |title=#07-782: 09-28-07 Bristol-Myers Squibb to Pay More Than $515 Million to Resolve Allegations of Illegal Drug Marketing and Pricing |publisher=Justice.gov |date=2007-09-28 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。
* 2004年、ファイザー、4.3億ドル。ニューロンチンの適用外用途のマーケティングによる<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2004/May/04_civ_322.htm |title=#322: 05-13-04 WARNER-LAMBERT TO PAY $430 MILLION TO RESOLVE CRIMINAL & CIVIL HEALTH CARE LIABILITY RELATING TO OFF-LABEL PROMOTION |publisher=Justice.gov |date=2004-05-13 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。


== 研究 ==
== 研究 ==
{{Main|精神薬理学}}
{{Main|精神薬理学}}
精神薬理学は、様々な類型の向精神特性を持つ物質を広範に研究している。[[薬理学]]と精神薬理学の専門および商業分野では、研究の中心は[[幻覚剤]]や{{仮リンク|娯楽薬|en|Recreational drug}}ではなく、精神科の薬に関してである。両分野におけるすべての向精神薬に関する研究では、精神薬理学はその向精神作用と脳における化学的作用に着目する。こうした薬物を研究する医師は[[精神薬理学者]]であり、精神薬理学の分野における専門家である。 近年、[[幻覚剤]]の分野での研究が増えている;この種類の薬物が発見が近年であるか、またいずれにせよ精神医学的に有用性が認められるという事実によってである。
精神薬理学は、様々な類型の向精神特性を持つ物質を広範に研究している。[[薬理学]]と精神薬理学の専門および商業分野では、研究の中心は[[幻覚剤]]や{{仮リンク|娯楽的な物使用|en|Recreational drug use|label=娯楽薬}}ではなく、精神科の薬に関してである。両分野におけるすべての向精神薬に関する研究では、精神薬理学はその向精神作用と脳における化学的作用に着目する。こうした薬物を研究する医師は[[精神薬理学者]]であり、精神薬理学の分野における専門家である。 近年、[[幻覚剤]]の分野での研究が増えている;この種類の薬物が発見が近年であるか、またいずれにせよ精神医学的に有用性が認められるという事実によってである。

== 管理 ==
精神科の薬は[[処方箋医薬品]]であり、入手には[[精神科医]]や精神科正[[看護師]](psychiatric nurse practitioner:PMHNP)のような、[[医師]]による[[処方箋]]が必要である。[[アメリカ合衆国]]と[[アメリカ合衆国の海外領土|その領土]]の一部では、{{仮リンク|心理学者のための処方権運動|en|prescriptive authority for psychologists movement}}の創出を受けて、{{仮リンク|医療心理学|en|medical psychology|redirect=1}}に関する追加の専門教育と訓練を受けた[[臨床心理学者]]に、処方特権が与えられた<ref name="Bridget">{{cite web |last=Murray |first=Bridget |title=A Brief History of RxP |publisher=APA Monitor |date=October 2003 |url=http://www.apa.org/monitor/oct03/rxp.html|accessdate=4/11/2007 }}</ref>。

[[向精神薬に関する条約]]のような国際条約が公布されており、乱用の危険性のため国際的な管理下にある薬は、[[覚醒剤]]、[[ベンゾジアゼピン系]]薬や[[バルビツール酸系]]薬のような[[抗不安薬]]/[[睡眠薬]]、[[幻覚剤]]や[[大麻]]である。

処方権に対して、不十分な教育と、マーケティングによる強力な干渉が存在する。

==マーケティングによる干渉==
アメリカ合衆国の製薬産業は、食品産業や自動車産業を抜き、最も広告費を使う産業に成長した<ref name="pmid18177202">{{cite journal|last1=Gagnon|first1=Marc-André|last2=Lexchin|first2=Joel|title=The Cost of Pushing Pills: A New Estimate of Pharmaceutical Promotion Expenditures in the United States|journal=PLoS Medicine|volume=5|issue=1|pages=e1|year=2008|month=January|pmid=18177202|pmc=2174966|doi=10.1371/journal.pmed.0050001|url=http://www.plosmedicine.org/article/info:doi/10.1371/journal.pmed.0050001}}</ref>。アメリカでは、日常茶飯事となった適用外用途の使用を勧める、違法なマーケティングへの制裁が立て続けに起こり、それぞれが罰金の史上最高額を塗り替えている<ref name="top10Settlements"/>。

製薬会社が広告する試験の結果は、良い結果が出たものに限られる傾向がある{{sfn|アービング・カーシュ|2010|p=61}}。2003年から2010年にかけて、否定的な研究が公開されない[[出版バイアス]]の問題が取り沙汰された。2004年8月に、[[グラクソスミスクライン]]の[[抗うつ薬]][[パロキセチン]](商品名パキシル)の否定的な試験である、小児の自殺の危険性を高めるという試験結果を公表しなかったことなどによる裁判の結果、全試験結果を公表することで合意された<ref>{{cite news| author=Gardiner Harris|url=http://www.nytimes.com/2004/08/26/business/26CND-DRUG.html | work=The New York Times | title=Maker of Paxil to Release All Trial Results | date=August 26, 2004 | accessdate=2013-01-10}}</ref>。

2005年8月には、[[世界保健機関]]による国際的な臨床試験の登録制度であるICTRP(International Clinical Trials Registry Platform)の設立や、2007年FDA改正法(FDAAA)における登録の義務付け、同様に最初の被験者を募集する前に登録をするという、2008年の[[世界医師会]]による[[ヘルシンキ宣言]]改訂につながった<ref name="pmid20504337">{{cite journal|last1=Bian|first1=Zhao-Xiang|last2=Wu|first2=Tai-Xiang|title=Legislation for trial registration and data transparency|journal=Trials|volume=11|issue=1|pages=64|year=2010|pmid=20504337|pmc=2882906|doi=10.1186/1745-6215-11-64|url=http://www.trialsjournal.com/content/11/1/64|ref=harv}}</ref>。

ほかにも、出版バイアスを除外した有効性についての[[メタアナリシス]]は、イギリスの診療ガイドラインに影響を与えた<ref>{{cite journal |author=Kirsch I |title=Challenging received wisdom: antidepressants and the placebo effect |journal=McGill Journal of Medicine |volume=11 |issue=2 |pages=219–22 |year=2008 |month=July |pmid=19148327 |pmc=2582668|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2582668/}}</ref>。[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の2009年の改定されたうつ病に対する[[臨床ガイドライン]]は、軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)とした<ref name="nicecg90">{{cite report |df=ja |author=英国国立医療技術評価機構|authorlink=英国国立医療技術評価機構|title=Depression in adults - Clinical guidelines CG90 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG90 |date=June 2009 |publisher=National Institute for Health and Clinical Excellence |accessdate=2013-02-23|p=1.4.4}}</ref>。

[[児童の権利に関する条約|国連子どもの権利委員会]]は、[[注意欠陥多動性障害]](ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している<ref>{{cite report|df=ja |author=国連子どもの権利員会|authorlink=:en:Convention on the Rights of the Child|title=Consideration of reports submitted by States parties under article 44 of the Convention - Concluding observations: Japan CRC/C/JPN/CO/3|url=http://www2.ohchr.org/english/bodies/crc/docs/co/CRC.C.JPN.CO.3.pdf|format=pdf|date=2010-06-20 |publisher=The United Nations Convention on the Rights of the Child (UNCRC)|accessdate=2013-06-07}} 邦訳:[https://w.atwiki.jp/childrights/?page=%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E6%A8%A9%E5%88%A9%E5%93%A1%E4%BC%9A%EF%BC%9A%E7%B7%8F%E6%8B%AC%E6%89%80%E8%A6%8B%EF%BC%9A%E6%97%A5%E6%9C%AC%EF%BC%88%E7%AC%AC%EF%BC%93%E5%9B%9E%EF%BC%89%E3%80%94%E5%BE%8C%E7%B7%A8%E3%80%95 国連子どもの権利員会:総括所見:日本第3回]</ref>。

日本では、[[医薬情報担当者]](MR)の数が増え続けてきた背景があり、企業は売り上げの9割以上を[[処方箋医薬品]]に頼っている<ref name="LIFE201208039">{{cite news |author= |title=製薬企業MRが医療保険財政を蝕む |url=http://facta.co.jp/article/201209039.html |date=2012年9月号 |newspaper=LIFE |accessdate=2013-03-24}}</ref>。そのためMRの接待による癒着が過剰を極め、交通費や宿泊費、飲食費を製薬会社が負担する会合に、高級クラブや[[ゴルフ場]]での[[接待]]が行われるようになった<ref name="J-CAST23099377">{{cite news |author= |title=ゴルフ、カラオケ、観劇は禁止 製薬会社の医師接待「上限2万円」 |url=https://www.j-cast.com/2011/06/23099377.html?p=all |date=2011/6/23 |newspaper=J-CASTニュース |accessdate=2013-03-24}}</ref>。しかし2012年4月には、国際的にも癒着に厳しくなった情勢に鑑み、また患者が被る不利益や、公的な医療制度に頼る医薬品制度であることから、厳しい自主規制の策定に乗り出した<ref name="J-CAST23099377"/>。

==薬理学の不十分な知識==
同時に不十分な知識により患者は危険に晒される。

英国精神薬理学会(British Association for Psychopharmacology)関連の指導者層は、2011年にも、大抵の医師が精神薬理学について十分ではないかもしれない修習課程や独習または実地によっており、危険性/利益に基づき向精神薬を利用するためには、過剰投与と多剤投与、不十分なモニタなどに改善の余地があることを指摘している<ref name="pmid22187725">{{cite journal|last1=Nutt|first1=D. J.|authorlink1=デビッド・ナット|last2=Harrison|first2=P. J.|last3=Baldwin|first3=D. S.|last4=Barnes|first4=T. R. E.|last5=Burns|first5=T.|last6=Ebmeier|first6=K. P.|last7=Ferrier|first7=I. N.|title=No psychiatry without psychopharmacology|journal=The British Journal of Psychiatry|volume=199|issue=4|pages=263–265|year=2011|month=October|pmid=22187725|doi=10.1192/bjp.bp.111.094334|url=http://bjp.rcpsych.org/content/199/4/263.full}}</ref>。

過剰投与と多剤投与に関しては、同じ種類の薬を2つ以上出し、それぞれが限度用量まで出されれば[[過量服薬]]になっていることが理解されていないということである{{sfn|姫井昭男|2008|pp=106-110}}。

2004年の[[日本精神神経学会]]でも、抗精神病薬の単剤療法が推奨されることについて言及している<ref>{{cite news |author= |title=精神医学の到達点と展望を語る 第100回日本精神神経学会開催 |url=http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2589dir/n2589_01.htm |date=2004-06-21 |newspaper=週刊医学界新聞 |accessdate=2013-03-15}} 第2589号、[[医学書院]]</ref>。大量の抗精神病薬を投与し副作用が出るために副作用を抑える目的で、さらに[[抗パーキンソン病薬]]が用いられるような薬剤の投与方法は、日本において適正な投与方法が模索される以前の方法であり不適切である{{sfn|風祭元|2008|pp=124,129}}{{sfn|姫井昭男|2008|p=113}}。[[ビペリデン]](アキネトン、タスモリン)の添付文書には、このような副作用には無効で場合により悪化する旨が記載されている<ref>[http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1162001C1043_1_02/ アキネトン錠-ビペリデン] [http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1162001B1030_2_03/ タスモリン錠- ビペリデン](独立行政法人医薬品医療機器総合機構)</ref>。

2008年には、過量服薬の危険性がある[[境界性人格障害]]のガイドラインが公開され、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避け処方するとしても数日から2週間程度とし、全体的にも抗うつ薬と抗精神病薬といった組み合わせは支持できず単剤療法を中心とすることが推奨されている{{sfn|平島奈津子、上島国利、岡島由香|2008|pp=136,142,145,148}}。2009年のNICEによる同疾患のガイドラインは、自殺企図や自殺念慮の強い傾向がある場合には薬物療法を用いず、もし用いるとしても相対的に安全な薬で1週間をめどにし、効果がなければ中止することを推奨している<ref>{{cite report |df=ja |author=英国国立医療技術評価機構|authorlink=英国国立医療技術評価機構|title=Borderline personality disorder - Clinical guidelines CG78 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG78 |year=2009a|date=January 2009 |publisher=National Institute for Health and Clinical Excellence |accessdate=2013-03-24|pages=Introduction,1.3.5.1-1.3.7.3}}</ref>。

2009年には、[[日本うつ病学会]]が大量処方を避けるという一般的な指摘行い<ref>{{Cite press release|和書|author=日本うつ病学会、抗うつ薬の適正使用に関する委員会|title=SSRI/SNRIを中心とした抗うつ薬適正使用に関する提言|publisher= |date=2009-10-30|url=http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/koutsu/pdf/antidepressant%20.pdf|format=pdf|accessdate=2013-03-15}}</ref>、2012年にも単剤療法を原則とする旨のガイドラインを出している<ref name="depressionGuideline_Jp"/>。

2010年には、精神科領域の4学会が合同で、しばしば[[過量服薬]]の原因になる医師による合理性のない不適切な[[多剤大量処方]]に対して注意喚起を行った<ref>{{Cite press release|和書|author=日本うつ病学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本生物学的精神医学会、日本総合病院精神医学会|title=「いのちの日」 緊急メッセージ 向精神薬の適正使用と過量服用防止のお願い|publisher= |date=2010-12-01|url=http://www.jsbp.org/link/dayoflife20101129.pdf|format=pdf|accessdate=2013-03-12}}</ref>。さらに2012年には、[[医薬品医療機器総合機構]]は、[[気分安定薬]]により重篤な副作用が生じているため過量に投薬せず、監視を行う旨の注意喚起を行っている<ref name="pmda2012no6">{{Cite report ja |date=January 2012 |title=ラミクタール錠(ラモトリギン)の重篤皮膚障害と用法・用量 遵守、早期発見について (PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo6)|url=http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/tekisei_pmda_06.pdf |publisher=医薬品医療機器総合機構|format=pdf |accessdate=2013-01-01 }}</ref><ref name="pmda2012no7">{{Cite report ja |date=September 2012 |title=炭酸リチウム投与中の血中濃度測定遵守について (PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo7)|url=http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/tekisei_pmda_07.pdf |publisher=医薬品医療機器総合機構|format=pdf |accessdate=2013-01-01 }}</ref>。

2012年にも日本うつ病学会の診療ガイドラインは、乱用の可能性があり、睡眠薬として自殺企図時に危険な[[バルビツール酸系]]薬の処方を避け、その他においても漫然と処方すべきではないとしている<ref name="depressionGuideline_Jp">{{Cite report ja |author=日本うつ病学会 |authorlink=日本うつ病学会 |author2=気分障害のガイドライン作成委員会|date=2012-07-26 |title=日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012 Ver.1 |url=http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf |publisher=日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会 |format=pdf |edition=2012 Ver.1 |accessdate=2013-01-01|pages=16-17}}</ref>。バルビツール酸系薬は、1950から1960年にかけて危険性が指摘されほかの薬剤にとってかわられた歴史があるのに関わらず{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2009|pp=25,266-267}}、日本において2010年にも不審死からのバルビツール酸系のベゲタミンの成分の検出が増加している<ref name="kansatui">{{Cite journal |和書|author=福永龍繁|date=2012-01|title=監察医務院から見えてくる多剤併用|url=|journal=精神科治療学|volume=27|issue=1}} [http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/bn/27/02.html 抄録]</ref>。
2013年には、厚生労働科学研究と日本睡眠学会によるガイドラインが公開され、睡眠薬として危険性の高いバルビツール酸系や多剤併用や漫然とした長期処方は避けることが推奨されている{{sfn|厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班」、日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ|2013|pp=7,10,13,51}}。

2013年7月には、認知症の特に周辺症状に対して、原則的にこれらの薬は用いないとするガイドラインが公開された<ref name="bpsdguideline">{{Cite report ja |author=厚生労働科学研究・認知症、特にBPSDへの適切な薬物使用に関するガイドライン作成班|date=2013-07-12 |title=かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036k0c-att/2r98520000036k1t.pdf|publisher=厚生労働省 |format=pdf |accessdate=2013-07-12}}</ref>。

2013年10月には、入院患者に多い証拠がないのにもかかわらず3剤以上用いられている抗精神病薬多剤を減薬するためのガイドラインが公開された<ref name="SCAPNews">{{Cite press release |和書 |title=抗精神病薬減量法ガイドラインを発表 -多剤大量処方から少しずつ最適な処方への工夫|url=http://www.ncnp.go.jp/press/press_release131004.html |publisher=独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |date=2013-10-04}}</ref>。

==薬物動態学==
[[薬理学]]における[[薬物動態学]]は、薬物の吸収、分布、[[薬物代謝|代謝]]、排泄の経路における薬物の動態に関する学問である。医薬品の添付文書における「年齢によって適宜減量する」といったものや、「相互作用」の項目の併用禁忌および併用注意にずらずらと並んでいる医薬品がそれである。

向精神薬の代謝では[[シトクロムP450]]という[[酵素]]の一群が関与しており、複数の薬物が摂取されていることで相互に、吸収が促進されたり阻害されたり、効果を強めたり弱めたりする[[薬物相互作用]]が生じる。

精神科の薬では、およそすべてにおいて[[アルコール]]に関する注意が書かれ、各薬剤は相互に併用注意である。医薬品のみに生じるものではなく、[[カフェイン]]といったほかの薬物や、食品とでも生じる。これは、相互に作用を強めたり、あるいは弱めたりするということである。投与量から予想されるよりも多く吸収されたり、ある薬剤が他の薬剤の効果を減弱させていないかを理解するために必要な知識である。ある薬剤の利尿作用により、ほかの薬剤の排出が高まったために、さらに他の薬剤の吸収が促進され中毒症状を呈した。併用することで吸収の促進が予想されるため、投与量を半減する、といった判断を行うために必要である。

シトクロムP450に属するそれぞれの酵素は、3文字の数字とアルファベットで分類される。いくつかの例を挙げる。

===2D6===
2D6は、三環系抗うつ薬やSSRIやフェノチアジン系の抗精神病薬の代謝に関与する。

===3A4===
3A4ではベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系、三環系抗うつ薬、抗精神病薬、カルバマゼピンや、[[セントジョーンズワート]]などがある。抗生物質や、麻酔薬、抗がん剤や、抗パーキンソン病薬、抗不整脈薬など代謝に関与する薬剤が多い。

===1A2===
1A2は、三環系抗うつ薬や抗精神病薬やカフェイン、また抗生物質や経口避妊薬の代謝に関与する。

==診療ガイドライン==

パニック障害に関する日本の2006年の診療ガイドラインは、SSRIを主とし、ベンゾジアゼピン系の薬剤が追加されていても4週間以上ではSSRI単剤との有効性と等しいため、ベンゾジアゼピン系の薬剤は依存の危険性からも推奨されていない<ref>{{Cite book|和書|author=[[熊野宏昭]]、久保木富房編集|coauthor=貝谷久宣編集協力|title=パニック障害ハンドブック 治療ガイドラインと診療の実際|publisher=医学書院|date=2008-04|isbn=978-4-260-00537-1|pages=60-74}}</ref>。

[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)に関する2006年の日本のガイドラインは、第一選択として抗うつ薬のSSRIを推奨し、ベンゾジアゼピン系の薬剤は推奨できないとしている<ref>{{Cite book|和書|author=外傷ストレスに関する研究会|coauthor=金吉晴|title=心的トラウマの理解とケア|edition=第2版|publisher=じほう|date=2006-03|isbn=978-4840735438|pages=|url=http://www.japan-medicine.com/jiho/zasshi/35433/index.html|ref=43-48}}</ref>。2013年の世界保健機関のガイドラインは、PTSDに対するSSRIの投与は、トラウマに焦点を当てた認知行動療法やEMDRが失敗した時や、そうしたリソースを利用できない場合、あるいは、中等度以上のうつがみられる場合に考慮されるべきであり、最初の選択ではないとしている{{sfn|世界保健機関|2013|p=40}}。また、児童や青年のPTSDにおいては抗うつ薬は使用されるべきではない{{sfn|世界保健機関|2013|p=41}}。成人および児童に対する、急性外傷性ストレスに対して、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬は投与してはいけないとしている{{sfn|世界保健機関|2013|pp=22-23}}。成人および児童に対して、ストレスの強い出来事のあった最初の1ヶ月に、不眠症に対してベンゾジアゼピンは投与されるべきではない{{sfn|世界保健機関|2013|pp=27-28}}。

[[摂食障害]]に関する日本の2012年のガイドラインは、SSRIによる短期間の根拠しかなく、従って、薬物療法は不十分であるため、薬物療法は補助と位置付けている<ref>{{Cite book|和書|author=日本摂食障害学会監修|coauthor=「摂食障害治療ガイドライン」作成委員会編集 |title=摂食障害治療ガイドライン|edition=第2版|publisher=医学書院|date=2012-02|isbn=978-4-260-01443-4|pages=127-132}}</ref>。

==有効性に関する根拠の質と出版バイアスの問題==
{{Seealso|根拠に基づく医療|ランダム化比較試験|メタアナリシス|出版バイアス}}
有効性については、[[根拠に基づく医療]](EBM)において、客観性の強い[[ランダム化比較試験]](RCT)の根拠の質が高いとみなされる。さらに複数のランダム化比較試験のデータを結合し分析する[[メタアナリシス]]が最も強い根拠である。個々のランダム化比較試験では、バイアス(偏り)がある可能性が残るためである。とりわけ、否定的な結果が出た場合に公開されないという[[出版バイアス]]が問題となっている<ref name="pmid22515987">{{cite journal|last1=Joober|first1=Ridha|last2=Schmitz|first2=Norbert|last3=Annable|first3=Lawrence|last4=Boksa|first4=Patricia|title=Publication bias: What are the challenges and can they be overcome?|journal=Journal of Psychiatry & Neuroscience|volume=37|issue=3|pages=149–152|year=2012|month=May|pmid=22515987|pmc=3341407|doi=10.1503/jpn.120065|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3341407/}}</ref>。([[#マーケティングによる干渉]]節も参照。)

出版バイアスを軽減する方法の一つに、[[情報公開法]]に基づいて、各国の規制機関から薬の認可のために提出された全データを入手し分析する手法がある<ref name="pmid23248080">{{cite journal|last1=Huedo-Medina|first1=T. B.|last2=Kirsch|first2=I.|last3=Middlemass|first3=J.|last4=Klonizakis|first4=M.|last5=Siriwardena|first5=A. N.|title=Effectiveness of non-benzodiazepine hypnotics in treatment of adult insomnia: meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration|journal=BMJ|volume=345|issue=dec17 6|pages=e8343|year=2012|pmid=23248080|pmc=3544552|doi=10.1136/bmj.e8343|url=http://www.bmj.com/content/345/bmj.e8343}}</ref>。
たとえば、[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)の承認を得るためには、2つの肯定的な結果が出た試験が必要なだけで、有効性が示されるまで臨床試験の数をこなし、薬は承認されているが否定的な結果が出た試験は提出されたまま公開されていないため、[[情報公開法]]に基づいてこれらのデータを結合して[[メタアナリシス]]を行うと否定的な結果が示されることもある<ref>{{Cite news|author=Irving Kirsch|title=Antidepressants: The Emperor's New Drugs? |url=https://www.huffpost.com/entry/antidepressants-the-emper_b_442205 |publisher=The Huffington Post |date=2010-01-29 |accessdate=2012-03-01}}</ref>。つまり、本質的に薬を認可するための臨床試験そのものが、結果の良い試験だけの公開につながるというバイアスの下地となるわけである。

また、[[メタアナリシス]]は[[欧州]]で用いられる傾向があり、アメリカでは試験結果を結合してデータの分母を大きくするという形ではなく、強い資金力により大規模な試験そのものを行う傾向がある<ref>{{Cite journal |和書|author=津谷喜一郎|date=2003
|title=EBMにおけるエビデンスの吟味|url=http://www.lifescience.jp/ebm/opinion/200308/|journal=Therapeutic Research|volume=24|issue=8|pages=1415-22|naid=50000285052}}</ref>。つまり、以下のような違いである。[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)が出資した研究に、非常に大規模なランダム化比較試験があるのはそのためである。イギリスの[[コクラン共同計画]]は、定期的に各主題ごとのメタアナリシスを行い、[[システマティック・レビュー]]として公開している。

またさらに、ほとんど有効性の差が分からないような場合、試験に参加する患者数である分母を大きくすることでわずかながらの有効性の差が統計的に判明することになる<ref name="kuroki">{{Cite book|和書|author=黒木俊秀|title=現代うつ病の臨床|chapter=抗うつ薬時代の憂うつ|publisher=創元社|date=2012-11|isbn=978-44221142-3-1|pages=187-211}}</ref>。有効性の差が見出しにくい医薬品の認可を得るために、このような大規模な試験を行うことが高額な薬の開発費用につながり、研究資金の問題から研究開発の停滞につながっていった<ref name="kuroki"/>。

==有効性==
[[うつ病]]に対する[[抗うつ薬]]や、[[非定型抗精神病薬]]の有効性についての[[出版バイアス]]を除外した[[メタアナリシス]]は、共に偽薬に対する効果量([[:en:effect size|effect size]])が0.32であり、[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)が臨床的に偽薬に対して意味のある効果があることを示す0.50を下回っていることが見出されている<ref name="pmid18303940">{{cite journal |author=Kirsch I, Deacon BJ, Huedo-Medina TB, Scoboria A, Moore TJ, Johnson BT |title=Initial severity and antidepressant benefits: a meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration |journal=PLoS Medicine |volume=5 |issue=2 |pages=e45 |year=2008 |month=February |pmid=18303940 |pmc=2253608 |doi=10.1371/journal.pmed.0050045 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2253608/}}</ref><ref name="pmed1001403">{{cite journal|last1=Hay|first1=Phillipa J.|last2=Spielmans|first2=Glen I.|last3=Berman|first3=Margit I.|last4=Linardatos|first4=Eftihia|last5=Rosenlicht|first5=Nicholas Z.|last6=Perry|first6=Angela|last7=Tsai|first7=Alexander C.|title=Adjunctive Atypical Antipsychotic Treatment for Major Depressive Disorder: A Meta-Analysis of Depression, Quality of Life, and Safety Outcomes|journal=PLoS Medicine|volume=10|issue=3|pages=e1001403|year=2013|doi=10.1371/journal.pmed.1001403|url=http://www.plosmedicine.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pmed.1001403}}</ref>。[[コクラン共同計画]]が行った[[システマティック・レビュー]]は、副作用を持つ偽薬(活性プラセボ)と抗うつ薬との間に有効性の違いがないことを見出している<ref name="pmid14974002">{{cite journal|last1=Moncrieff|first1=Joanna|last2=Wessely|first2=Simon|last3=Hardy|first3=Rebecca|last4=Moncrieff|first4=Joanna|title=Active placebos versus antidepressants for depression|journal=Cochrane Database of Systematic Reviews (Online)|issue=1|pages=CD003012|year=2004|pmid=14974002|doi=10.1002/14651858.CD003012.pub2}}</ref>。[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)が出資したうつ病に対する投薬治療の研究であるSTAR*D計画を通し、NIMH所長の[[トーマス・インセル]]は、仮に効果の多くが偽薬効果だとしても、14週後にうつ病の症状がみられない寛解の比率は最善で約28%、1年後の寛解率は約70%であり不十分であると述べている<ref name="pmid19880463">{{cite journal |last1=Insel|first1=T. R.|authorlink1=トーマス・インセル|last2=Wang|first2=P. S. |title=The STAR*D trial: revealing the need for better treatments |journal=Psychiatr Serv |volume=60 |issue=11 |pages=1466–7 |year=2009 |month=November |pmid=19880463 |doi=10.1176/appi.ps.60.11.1466 |url=http://ps.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=100921}}</ref>。残りは4回薬を変更し寛解に達しなかったということである。また寛解に達した後に再発したものを除外した数字ではなく、一度寛解に達した比率である。インセルによれば抗うつ薬は、古い第一世代でも新しい第二世代でも反応が遅く反応する比率が低い{{sfn|Insel TR|2009}}。

また、抗うつ薬を増量するほどに効果が高まるわけではない。
{| class="wikitable" | style="font-size:90%;margin-left:3em"
|+ 17種類の抗うつ薬のイミプラミン等価換算での有効性の比較({{PMID|10533547}}より作成)<ref name="pmid10533547">{{cite journal |author=Bollini P, Pampallona S, Tibaldi G, Kupelnick B, Munizza C |title=Effectiveness of antidepressants. Meta-analysis of dose-effect relationships in randomised clinical trials |journal=The British Journal of Psychiatry : the Journal of Mental Science |volume=174 |issue= |pages=297–303 |year=1999 |month=April |pmid=10533547 |doi=10.1192/bjp.174.4.297 |url=http://www.crd.york.ac.uk/crdweb/ShowRecord.asp?LinkFrom=OAI&ID=11999000941}}</ref>
! 投与量 !! 偽薬群 !! 100mgまで !! 200mgまで !! 250mgまで !! 250mg以上
|-
| 改善率 || 34.8% || 46.0% || 53.3% || 46.3% || 48.3%
|-
| 有害事象発現率 || 1倍 || 1倍 || 1.5倍 || 1.63倍 || 2.18倍
|}

NIMHが出資し、[[統合失調症]]に対して、複数の種類の[[抗精神病薬]]が1493人にランダムに割り付けられた研究において、18カ月後、74%が効果不十分や副作用が原因で服薬を中止しており、古い定型の抗精神病薬と、新世代の非定型の抗精神病薬の有効性は同等で、非定型の抗精神病薬は体重増加のような代謝異常に関連していることが見出された<ref name="pmid16172203">{{cite journal |author=Lieberman JA, Stroup TS, McEvoy JP, ''et al.'' |title=Effectiveness of antipsychotic drugs in patients with chronic schizophrenia |journal=N. Engl. J. Med. |volume=353 |issue=12 |pages=1209–23 |year=2005 |month=September |pmid=16172203 |doi=10.1056/NEJMoa051688 |url=}}</ref>。インセルによれば、4つのこのような大規模比較試験から、抗精神病薬の新しい世代のものは、古い第一世代のものを上回ることを見いだせていない{{sfn|Insel TR|2009}}。非定型の抗精神病薬は、大脳辺縁系に集中して作用するために錐体外路症状が少ないとされていたが、そのような特性は観察されていない<ref name="pmid18937879">{{cite journal|last1=Ito|first1=Hiroshi|last2=Arakawa|first2=Ryosuke|last3=Takahashi|first3=Hidehiko|last4=Takano|first4=Harumasa|last5=Okumura|first5=Masaki|last6=Otsuka|first6=Tatsui|last7=Ikoma|first7=Yoko|last8=Shidahara|first8=Miho|last9=Suhara|first9=Tetsuya|title=No regional difference in dopamine D2 receptor occupancy by the second-generation antipsychotic drug risperidone in humans: a positron emission tomography study|journal=The International Journal of Neuropsychopharmacology|volume=12|issue=05|pages=667|year=2008|month=June|pmid=18937879|doi=10.1017/S1461145708009577}}</ref>。有効性が似ているにもかかわらず第二世代の抗精神病薬がのほうが良好だと感じられる理由について、この抗精神病薬の世代交代期に適切な投与量で投与されるようになったことがあげられる{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2009|pp=20-23}}<ref>{{Cite book|和書|author=藤井康男|chapter=75 第二世代構成病薬は陰性症状や認知機能障害に本当に効果があるのでしょうか?第一世代の薬の副作用が軽くなったでけではないのですか?|editor=藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力)|title=統合失調症の薬物療法100のQ&A|publisher=星和書店|date=2008-05|isbn=978-4791106677|pages=241-244}}</ref>。しかしながら、代謝異常の副作用は第二世代の非定型抗精神病薬のほうが多い{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2009|pp=241-244}}。

抗精神病薬も増量するほど効果が高まるわけではない。観察から、抗精神病薬の反応がみられる受容体占有率は65%であり、副作用の可能性が高まるのは高プロラクチン血症では72%、錐体外路症状は78%以上である<ref name="pmid10739409">{{cite journal|last1=Kapur|first1=S.|title=Relationship Between Dopamine D2 Occupancy, Clinical Response, and Side Effects: A Double-Blind PET Study of First-Episode Schizophrenia|journal=American Journal of Psychiatry|volume=157|issue=4|pages=514–520|year=2000|month=April|pmid=10739409|doi=10.1176/appi.ajp.157.4.514|url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleID=174052}}。</ref>。統合失調症に対して、リスペリドン(リスパダール)の最適量はそれ以上では副作用の発現率のみが上昇するため1日4mgである<ref name="pmid16174679">{{cite journal|last1=Ezewuzie|first1=N.|title=Establishing a dose-response relationship for oral risperidone in relapsed schizophrenia|journal=Journal of Psychopharmacology|volume=20|issue=1|pages=86–90|year=2005|month=January|pmid=16174679|doi=10.1177/0269881105057001|url=http://jop.sagepub.com/content/20/1/86.long}}</ref>。同様にクエチアピン(セロクエル)では1日300mg<ref name="pmid18072814">{{cite journal|last1=Sparshatt|first1=Anna|last2=Jones|first2=Sarah|last3=Taylor|first3=David|title=Quetiapine: dose-response relationship in schizophrenia |journal=CNS Drugs|volume=22|issue=1|pages=49–68|year=2008|pmid=18072814|doi=10.2165/00023210-200822010-00004}}</ref>、オランザピン(ジプレキサ)では1日10mg<ref name="pmid18626265">{{cite journal|last1=Kinon|first1=Bruce J.|last2=Volavka|first2=Jan|last3=Stauffer|first3=Virginia|last4=Edwards|first4=Sara E.|author5=et al|title=Standard and Higher Dose of Olanzapine in Patients With Schizophrenia or Schizoaffective Disorder|journal=Journal of Clinical Psychopharmacology|volume=28|issue=4|pages=392–400|year=2008|month=August|pmid=18626265|doi=10.1097/JCP.0b013e31817e63a5}}</ref>である。

[[双極性障害]]に対して、アメリカでNIMHが出資し4,361人の双極性障害の患者に対する大規模な試験であるSTEP-BD計画が実施され2005年に終結した<ref name="nimh-stepbdEarly">{{cite press release|df=ja|title=Early Findings from Largest NIMH-Funded Research Program on Bipolar Disorder Begin to Build Evidence-Base on Best Treatment Options|publisher=The National Institute of Mental Health (NIMH) |date=2006-02-01|url=http://www.nimh.nih.gov/science-news/2006/early-findings-from-largest-nimh-funded-research-program-on-bipolar-disorder-begin-to-build-evidence-base-on-best-treatment-options.shtml|accessdate=2013-03-24}}</ref>。その一部を対象とした1年後の追跡調査で、躁やうつの気分エピソードがなかったの23%で、1つ以上の気分エピソードは45%(782人)で、32%(551人)が脱落していた<ref name="pmid18198271">{{cite journal |author=Schneck CD, Miklowitz DJ, Miyahara S, ''et al.'' |title=The prospective course of rapid-cycling bipolar disorder: findings from the STEP-BD |journal=Am J Psychiatry |volume=165 |issue=3 |pages=370–7; quiz 410 |year=2008 |month=March |pmid=18198271 |doi=10.1176/appi.ajp.2007.05081484}}</ref>。2年間の追跡では、いったん回復の定義を満たした全体の58.4%のうち、約半分の48.5%が再発した<ref name="pmid16449474">{{cite journal|last1=Perlis|first1=R. H.|title=Predictors of Recurrence in Bipolar Disorder: Primary Outcomes From the Systematic Treatment Enhancement Program for Bipolar Disorder (STEP-BD)|journal=American Journal of Psychiatry|volume=163|issue=2|pages=217–224|year=2006|month=February|pmid=16449474|doi=10.1176/appi.ajp.163.2.217|url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=178041}}</ref>。つまり、回復を満たさなかったのは71%である。インセルによれば、双極性障害に対する治療は特に課題で、多くの人にとって気分の変動を抑制する薬がない{{sfn|Insel TR|2009}}。

2012年にもインセルは、精神薬理学の黄金時代を振り返って医薬品の売上とは裏腹に、うつ病、統合失調症、双極性障害などの一般的な障害を含む重篤な精神障害を有する人々の疾患の罹患率や死亡率が減少していないことを報告している<ref name="pmid23052292"/>。

[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)に対してとりわけアメリカで問題になっている戦争帰還兵のPTSDにおいて、[[ベンゾジアゼピン系]][[精神安定剤]]の使用は、ストレス症状を強め依存症につながる可能性があるため使用を推奨しないための強い証拠があり、[[非定型抗精神病薬]]の使用も使用を推奨できないことが強調されている<ref>{{cite news |author=Bob Brewin |title=Mental Illness Is the Leading Cause of Hospitalization for Active-Duty Troops |url=http://www.nationaljournal.com/healthcare/mental-illness-is-the-leading-cause-of-hospitalization-for-active-duty-troops-20120517 |date=May 17, 2012 |newspaper=National Journal |accessdate=2013-06-09}}</ref>。この根拠として、2012年のアメリカの不安障害協会の年次会議において、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の使用は、[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)に対し[[視床下部-下垂体-副腎系]](HPA)軸を抑制するためストレス症状を増大させ、また、恐怖反応はGABA作動性の扁桃体機能を介して消失されるが、このような学習や記憶を無効にするために悪影響であることが報告されている<ref name="ElizabethMechcatie">{{cite news |author=Elizabeth Mechcatie |title=Long-Term Benzodiazepines for Anxiety Linked to Adverse Events |url=http://www.clinicalpsychiatrynews.com/news/more-top-news/single-view/long-term-benzodiazepines-for-anxiety-linked-to-adverse-events/2f447d053b.html |date=2012-04-27 |newspaper=Clinical Psychiatry News |accessdate=2013-03-15}}</ref><ref>{{cite web |title=Benzodiazepine Use and CBT |url=http://www.abstractsonline.com/Plan/ViewSession.aspx?sKey=8134eca2-4c80-4355-a171-2c7e4ef149af&mKey=%7b9648FDEB-5975-469D-90B2-8FFF5319AB46%7d |date=Apr 13, 2012 |publisher= |accessdate=2013-03-15}}</ref>。さらにいえば、疲労と睡眠不足のために兵士に出される覚醒剤のメチルフェニデート(リタリン)やデキストロアンフェタミン(アデロール)がアドレナリン類の放出を高めることによって、戦闘時の外傷体験の記憶形成が強化され、兵士の心的外傷後ストレス障害の発生率が高まっているのではないかとも推測されている<ref>{{cite news |author=RICHARD A. FRIEDMAN |title=Why Are We Drugging Our Soldiers? |url=http://www.nytimes.com/2012/04/22/opinion/sunday/why-are-we-drugging-our-soldiers.html |date=April 21, 2012 |newspaper=The New York Times |accessdate=2013-06-09}}</ref>。

[[摂食障害]]に対して、2012年には『摂食障害国際ジャーナル』誌(''International Journal of Eating Disorders'')において、いかなる薬物治療の利益も示されていないが半数以上が投薬されていることを報告している<ref name="pmid22733643">{{cite journal|last1=Fazeli|first1=Pouneh K.|last2=Calder|first2=Genevieve L.|last3=Miller|first3=Karen K.|last4=Misra|first4=Madhusmita|last5=Lawson|first5=Elizabeth A.|last6=Meenaghan|first6=Erinne|last7=Lee|first7=Hang|last8=Herzog|first8=David|last9=Klibanski|first9=Anne|title=Psychotropic medication use in anorexia nervosa between 1997 and 2009|journal=International Journal of Eating Disorders|volume=45|issue=8|pages=970–976|year=2012|month=December|pmid=22733643|doi=10.1002/eat.22037}}</ref>。

[[不眠症]]に対して、[[非ベンゾジアゼピン系]]の[[睡眠薬]]の有効性を評価するために、[[出版バイアス]]を除外して[[メタアナリシス]]を行ったが、偽薬でも睡眠薬の半分の効果が見られ、睡眠の問題も十分に改善しないことが見出された<ref name="pmid23248080">{{cite journal|last1=Huedo-Medina|first1=T. B.|last2=Kirsch|first2=I.|last3=Middlemass|first3=J.|last4=Klonizakis|first4=M.|last5=Siriwardena|first5=A. N.|title=Effectiveness of non-benzodiazepine hypnotics in treatment of adult insomnia: meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration|journal=BMJ|volume=345|issue=dec17 6|pages=e8343|year=2012|pmid=23248080|pmc=3544552|doi=10.1136/bmj.e8343|url=http://www.bmj.com/content/345/bmj.e8343}}</ref>。さらに[[ベンゾジアゼピン系]]、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では、睡眠作用に対して速やかに耐性が生じるため、同量では効果がなくなっていくのみである。離脱症状は治療用量でも生じるが、とりわけ長期間か高用量の使用の場合であり、そうして服用の中止が困難になれば薬物依存症の診断基準を満たす<ref>{{cite report |df=ja |author=WHO Programme on Substance Abuse|title=Rational use of benzodiazepines - Document no.WHO/PSA/96.11 |url=http://whqlibdoc.who.int/hq/1996/WHO_PSA_96.11.pdf |format=pdf |date=November 1996 |edition=|publisher=World Health Organization |accessdate=2013-03-10|oclc=67091696|pages=20-21,47}}</ref>。さらにベンゾジアゼピン系<ref name="Riss-2008">{{Cite journal|last1 = Riss|first1 = J.|last2 = Cloyd|first2 = J.|last3 = Gates|first3 = J.|last4 = Collins|first4 = S.|title = Benzodiazepines in epilepsy: pharmacology and pharmacokinetics|journal = Acta Neurol Scand|volume = 118|issue = 2|pages = 69-86|year = 2008|doi = 10.1111/j.1600-0404.2008.01004.x|pmid = 18384456|ref = harv}}</ref><ref>{{cite book|last=Semple|first=David|coauthors=Roger Smyth, Jonathan Burns, Rajan Darjee, Andrew McIntosh|title=Oxford Handbook of Psychiatry|origyear=2005|year=2007|publisher=Oxford University Press|location=United Kingdom|isbn=0-19-852783-7|page=540|chapter=13}}</ref>、非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)<ref name="pmid17711589">{{cite journal|last1=Kripke|first1=Daniel F|title=Greater incidence of depression with hypnotic use than with placebo|journal=BMC Psychiatry|volume=7|issue=1|pages=42|year=2007|pmid=17711589|pmc=1994947|doi=10.1186/1471-244X-7-42|url=http://www.biomedcentral.com/1471-244X/7/42}}</ref>でも抑うつ症状を増加させることが見出されている。

===小児===
うつ病に対する抗うつ薬に関しては、2013年に[[エスシタロプラム]](レクサプロ)、[[セルトラリン]](ジェイゾロフト)、[[ミルタザピン]](レメロン)[[フルボキサミン]](ルボックス)、[[ミルナシプラン]](トレドミン)において、小児のうつ病には有効性が確認されなかったとの海外の試験結果があるため、18歳未満では慎重投与の旨が添付文書に記載された<ref name="2013antidepressantChild">{{cite report ja|author1=神庭重信|author2=齊藤万比古|title=大うつ病性障害の小児に対する新規抗うつ薬の投与にかかる添付文書改訂に対する見解|url=http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/gakkaitou_gakkai_201303_1.pdf|format=pdf|date=2013-03-29|publisher=日本うつ病学会、日本児童青年精神医学会|accessdate=2013-06-09}}</ref>。[[グラクソスミスクライン]]社の[[パロキセチン]](パキシル)については、以前から記載されており<ref name="2013antidepressantChild"/>、添付文書の警告枠の中に、有効性が確認できないことと自殺の危険性が高くなっていることが確認されている旨が記載されている。

早期発症統合失調症の患者116人に対して、抗精神病薬をランダムに割り付けした二重盲検試験で、副作用や効果不十分などの脱落により1年後に服薬を維持できていたのは9人であり、優れた効能は実証されず、全員に代謝異常の副作用があった<ref name="pmid2882800">{{cite journal |author=Findling RL, Johnson JL, McClellan J, ''et al.'' |title=Double-blind maintenance safety and effectiveness findings from the Treatment of Early-Onset Schizophrenia Spectrum (TEOSS) study |journal=J Am Acad Child Adolesc Psychiatry |volume=49 |issue=6 |pages=583–94; quiz 632 |year=2010 |month=June |pmid=20494268 |pmc=2882800 |doi=10.1016/j.jaac.2010.03.013}}</ref>。

[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)が出資し、[[注意欠陥多動性障害]](ADHD)の7歳から9歳の600人近い子供を追跡した大規模な研究であるMTA研究が実施された。結果は、投薬治療は、3年後の追跡調査では予後の不良に結び付けられており<ref name="pmid17667478">{{cite journal |author=Jensen PS, Arnold LE, Swanson JM, ''et al.'' |title=3-year follow-up of the NIMH MTA study |journal=J Am Acad Child Adolesc Psychiatry |volume=46 |issue=8 |pages=989–1002 |year=2007 |month=August |pmid=17667478 |doi=10.1097/CHI.0b013e3180686d48}}</ref>、8年後でも投薬の恩恵は見いだせなかった<ref name="pmid19318991">{{cite journal |author=Molina BS, Hinshaw SP, Swanson JM, ''et al.'' |title=The MTA at 8 years: prospective follow-up of children treated for combined-type ADHD in a multisite study |journal=J Am Acad Child Adolesc Psychiatry |volume=48 |issue=5 |pages=484–500 |year=2009 |month=May |pmid=19318991 |pmc=3063150 |doi=10.1097/CHI.0b013e31819c23d0}}</ref>。

===高齢者===
[[認知症]]に対する非定型抗精神病薬の使用により、死亡率が1.6-1.7倍に高まっているため、2005年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が警告を行った<ref name="fda-ap">{{cite web |title=Public Health Advisory: Deaths with Antipsychotics in Elderly Patients with Behavioral Disturbances |url=http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/DrugSafetyInformationforHeathcareProfessionals/PublicHealthAdvisories/ucm053171.htm |date=2005-4-11|publisher=FDA |accessdate=2013-03-20}}</ref>。その後、このような使用を促進した販売促進活動に対して、各製薬会社はアメリカ司法省により記録的な罰金が科された。([[#違法なマーケティング]]節を参照)

不眠症の高齢者に対する睡眠薬(ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン)の試験をメタアナリシスしたところ、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系では、睡眠の質および、認知機能や転倒や交通事故を含む有害事象において有意な違いはなく、睡眠を改善する効果は小さいので、有害事象の多さは利益を正当化しない可能性があることが示唆されている<ref name="pmid16284208">{{cite journal|last1=Glass|first1=J.|title=Sedative hypnotics in older people with insomnia: meta-analysis of risks and benefits|journal=BMJ|volume=331|issue=7526|pages=1169–0|year=2005|month=November|pmid=16284208|pmc=1285093|doi=10.1136/bmj.38623.768588.47|url=http://www.bmj.com/content/331/7526/1169}}</ref>。このメタアナリシスでは、推奨されないバルビツール酸や抱水クロラールは除外されている。

===心理療法===
[[認知行動療法]]は、薬を使わずに多様な精神障害に対応する心理療法のひとつで有効性の広く評価されている。[[暴露療法|根本的曝露療法]] (Basal exposure therapy) は、重症あるいは精神障害が並存している人々に向けて開発され、薬の使用量の減少、[[機能の全体的評定尺度]] (GAF) の向上がみられ<ref name="pmid29557120">{{cite journal|last1=Fosse|first1=Roar|last2=Lilleby|first2=Peggy|last3=Lillelien|first3=Arne|coauthors=et al.|title=Drug-free after basal exposure therapy|journal=Tidsskrift for Den norske legeforening|issue=6|year=2018|pmid=29557120|doi=10.4045/tidsskr.17.0811|url=https://doi.org/10.4045/tidsskr.17.0811}}</ref><ref name="pmid28066272">{{cite journal|last1=Heggdal|first1=Didrik|last2=Fosse|first2=Roar|last3=Hammer|first3=Jan|coauthors=et al.|title=Basal Exposure Therapy: A New Approach for Treatment-Resistant Patients with Severe and Composite Mental Disorders|journal=Frontiers in Psychiatry|volume=7|pages=198|year=2016|pmid=28066272|pmc=5165038|doi=10.3389/fpsyt.2016.00198|url=https://doi.org/10.3389/fpsyt.2016.00198}}</ref>、平均5.3年後の追跡調査では、完全に回復していた人々に薬の使用はなく、薬を使用していなかった人々のほうがGAFと雇用状態がよかった<ref name="pmid29557120"/>。


== 有害作用と離脱症状 ==
== 有害作用と離脱症状 ==
精神科の薬は頻繁に[[副作用]]を生じ、それ自体が薬についてのトラウマ<ref>{{cite journal|last=Whitfield|first=Charles|title=Psychiatric drugs as agents of Trauma|journal=The International Journal of Risk and Safety in Medicine|year=2010|volume=22|issue=4|pages=195-207|url=http://iospress.metapress.com/content/17668000738187w6/|accessdate=5 December 2012}}</ref>となり[[服薬コンプライアンス]]を弱める。副作用の一部は[[抗コリン薬]](抗ムスカリン薬)のような補助薬品を用いて[[対症療法|対症的に治療]]が可能である。一部の[[リバウンド]]や[[離脱]]の副作用には、精神病性の急激なあるいは重度の出現か再発が含まれ、服薬を一気に中止する場合に出現する可能性がある。<ref name="Moncrieff">{{cite journal|last=Moncrieff|first=Joanna|date=23 March 2006|title=Does antipsychotic withdrawal provoke psychosis? Review of the literature on rapid onset psychosis (supersensitivity psychosis) and withdrawal-related relapse|journal=Acta Psychiatrica Scandinavica|publisher=John Wiley & Sons A/S|volume=114|issue=1|pages=3–13|issn=1600-0447|url=http://www3.interscience.wiley.com/journal/118626311/abstract|accessdate=3 May 2009|doi=10.1111/j.1600-0447.2006.00787.x|pmid=16774655}}</ref>
精神科の薬は頻繁に[[副作用]]を生じ、それ自体が薬についてのトラウマ<ref>{{cite journal|last=Whitfield|first=Charles|title=Psychiatric drugs as agents of Trauma|journal=The International Journal of Risk and Safety in Medicine|year=2010|volume=22|issue=4|pages=195-207|url=http://nhne-pulse.org/wp-content/uploads/2010/12/Psychiatric_Drugs_As_Agents_of_Trauma_JRS508.pdf|format=pdf |accessdate=5 December 2012}}</ref>となり[[服薬コンプライアンス]]を弱める。副作用の一部は[[抗コリン薬]](抗ムスカリン薬)のような補助薬品を用いて[[対症療法|対症的に治療]]が可能である。一部の[[反跳作用|リバウンド]]や[[離脱]]の副作用には、精神病性の急激なあるいは重度の出現か再発が含まれ、服薬を一気に中止する場合に出現する可能性がある。<ref name="Moncrieff">{{cite journal|last=Moncrieff|first=Joanna|date=23 March 2006|title=Does antipsychotic withdrawal provoke psychosis? Review of the literature on rapid onset psychosis (supersensitivity psychosis) and withdrawal-related relapse|journal=Acta Psychiatrica Scandinavica|publisher=John Wiley & Sons A/S|volume=114|issue=1|pages=3–13|issn=1600-0447|url=http://www3.interscience.wiley.com/journal/118626311/abstract|accessdate=3 May 2009|doi=10.1111/j.1600-0447.2006.00787.x|pmid=16774655}}</ref>

抗精神病薬には非常にまれに、40度以上の高熱が続き危険な状態になる[[悪性症候群]]の可能性がある。

===依存症と離脱症状===
{{Seealso|薬物依存症|離脱|身体的依存}}
ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の離脱症状や{{sfn|Ashton|2002}}、抗うつ薬や抗精神病薬の離脱症状はアルコールの離脱症状のように2-3週間でおさまるものではなく長期間におよぶ{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2009|pp=333-334}}。つまり[[遷延性離脱症候群]]を引き起こす可能性がある。

抗うつ薬や抗精神病薬や気分安定薬は、またバルビツール酸系やベンゾジアゼピン系の抗不安薬/睡眠薬は、[[離脱]]時に身体症状を引き起こす[[身体的依存]]の可能性がある。抗精神病薬の大量投与により生じる副作用に対して処方される抗コリン性の[[抗パーキンソン病薬]]もまた、身体症状や不安、不眠などを含むコリン作動性リバウンド症候群を生じるため、慎重な減薬が必要である{{sfn|姫井昭男|2008|p=113}}{{sfn|笠陽一郎|2008|pp=204-206}}。覚醒剤には身体的依存はなく、渇望のような精神的依存のみである。

乱用薬物に分類される薬物の中でも、離脱に入院を要し致命的となる可能性があるものは、ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系の鎮静催眠薬およびアルコールのみである<ref name="apa1-58562-276-4">{{cite book |last1=Galanter |first1=Marc |last2=Kleber |first2=Herbert D |title=The American Psychiatric Publishing Textbook of Substance Abuse Treatment |url= https://books.google.co.jp/books?id=6wdJgejlQzYC&pg=PA58&redir_esc=y&hl=ja |edition=4th |date=1 July 2008 |publisher=American Psychiatric Publishing Inc |location=United States of America |isbn=978-1-58562-276-4 |page=58}}</ref>。これらの薬物からの離脱の際には、入院デトックスを要するような危険な発作や[[振戦せん妄]](DT)の兆候である頻脈、発汗、手の震えや不安の増加、精神運動性激越、吐き気や嘔吐、一過性の知覚障害の評価が必要である。

世界保健機関は、抗うつ薬のSSRIによる[[SSRI離脱症候群]]の報告よりも少ないが、SSRIに対する依存症の報告があることを記しており、またさらに研究者が中断症候群のような用語を用い依存症との関連付けを避けていることも指摘されている<ref name="who.ssri">{{Cite report|df=ja|author=世界保健機関|title=WHO EXPERT COMMITTEE ON DRUG DEPENDENCE - Thirty-third Report / WHO Technical Report Series 915|publisher=World Health Organization|date=2003|url=http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Js4896e/9.html}}</ref>。

医師でさえ十分な知識を持ち合わせていない場合は多く、離脱症状について知らなかったり、離脱症状が考慮されなかったり、急激な離脱により離脱症状が強く出る場合がある{{sfn|Ashton|2002|pp=14-15,44-46,50}}<ref name="厚生省依存症検討会会議1">{{Cite conference|title=2012年11月29日 第1回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 議事録|publisher=厚生労働省|date=2012-11-29|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002uez7.html|accessdate=2013-06-07}}</ref>。依存症の危険性がある薬物なので、深刻になれば複数の医療機関から医薬品を得るようになる可能性がある{{sfn|Ashton|2002|pp=39-40}}。しかしながら依存症の危険性についても医師が知らない場合があることが報告されている<ref name="厚生省依存症検討会会議3">{{Cite conference|title=2013年1月31日 第3回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 議事録|publisher=厚生労働省|date=2013-01-31|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ymh1.html|accessdate=2013-06-07}}</ref>。処方薬による依存症についての情報提供がなかったり、激しい離脱が生じたことによる訴訟が増加している<ref>{{cite news |author=Nina Lakhani |title=Doctors sued for creating Valium addicts |url=http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/doctors-sued-for-creating-valium-addicts-6282542.html |date=29 December 2011 |newspaper=The Independent |accessdate=2013-03-10}}</ref>。

2012年6月にも、ほとんどの医療専門家が依存症を診断し治療するための十分な訓練は受けておらず、科学と実践との間に隔たりがあることが示されている{{sfn|The National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University|2012}}。つまり、この依存症や離脱の理解および実践において非科学的である場合が多いということである。[[プライマリ・ケア]]医の94%もが、[[アルコール依存症]]の診断に失敗する{{sfn|The National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University|2012|p=203}}。いかなるサプリメントにおいても離脱の助けになることを証明する根拠は存在していない{{sfn|Ashton|2002|p=23}}。

日本の依存症回復施設において、診療所で処方された鎮静/睡眠薬に対する薬物関連障害(依存症)の数が、覚醒剤に次いで2位までになっている<ref name="journal113_12_p1184-1198">{{Cite journal |和書|author=松本俊彦、尾崎茂、小林桜児、和田清|date=2011-12|title=わが国における最近の鎮静剤(主としてベンゾジアゼピン系薬剤)関連障害の実態と臨床的特徴―覚せい剤関連障害との比較|url=http://www.jspn.or.jp/journal/journal/pdf/2011/12/journal113_12_p1184-1198.pdf|format=pdf|journal=精神神経学雑誌|volume=113|issue=12|pages=1184-1198|naid=10030969040}}</ref>。これらの依存症者の大半は犯罪歴のない女性である<ref name="journal113_12_p1184-1198"/>。

アルコールや違法薬物の依存症回復施設では急速な離脱やルールを強いて、精神科の薬の依存症に適していない、つまり科学的根拠に基づいていない場合がある{{sfn|Ashton|2002|p=15}}。多くの薬物において、急速な離脱は推奨されておらず、薬物依存症の治療が科学的根拠に基づいていないだけである{{sfn|The National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University|2012|pp=88-113,210-211}}。

===減薬===
{{Seealso|薬物依存症#治療}}

[[多剤大量処方]]の減薬を行っている[[セカンドオピニオン]]医によれば、とりわけ2剤以上の変更は副作用が生じた場合に原因の薬剤を特定するのが困難になるため、悪性症候群のような場合を除き推奨されない{{sfn|笠陽一郎|2008|pp=202-206}}。減薬は一度に1剤ずつ、それを一度に10%ごとなど徐々に行うことが推奨される{{sfn|笠陽一郎|2008|pp=204-206}}。はじめに依存症が急速に生じる可能性のある抗不安薬/睡眠薬が優先され、これも長時間作用型のものに置換してから徐々に減薬する{{sfn|笠陽一郎|2008|pp=202-206}}。[[抗パーキンソン病薬]]は、抗精神病薬を減薬した後に慎重に減薬する必要がある{{sfn|笠陽一郎|2008|pp=202-206}}。


ベンゾジアゼピン系薬、バルビツール酸系薬、アルコールの離脱に[[抗精神病薬]]の使用は推奨できずアリピプラゾール、クエチアピン、リスペンドン、ジプラシドンのような非定型抗精神病薬あるいは、[[クロルプロマジン]]のような効果の弱い[[フェノチアジン]]は、発作閾値を低下させ離脱症状を悪化させる<ref>{{cite book |last1=Ebadi |first1=Manuchair |title=Desk Reference for Clinical Pharmacology |url=https://books.google.co.uk/books?id=ihxyHbnj3qYC&pg=PA512&hl=en |edition=2nd |date=23 October 2007 |publisher=CRC Press |location=USA |isbn=978-1-4200-4743-1 |page=512 |chapter=Alphabetical presentation of drugs}}</ref>。
ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の離脱症状や{{sfn|Ashton|2002}}、抗うつ薬や抗精神病薬の離脱症状はアルコールの離脱症状のように2~3週間でおさまるものではなく長期間におよぶ{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2009|pp=333-334}}。


===他害行為===
===他害行為===
アメリカ食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータから殺人や暴力など他害行為の報告を調査し<ref name="pmid21179515">{{cite journal|last1=Ross|first1=Joseph S.|last2=Moore|first2=Thomas J.|last3=Glenmullen|first3=Joseph|last4=Furberg|first4=Curt D.|title=Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others|journal=PLoS ONE|volume=5|issue=12|pages=e15337|year=2010|pmid=21179515|pmc=3002271|doi=10.1371/journal.pone.0015337|url=http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337}}</ref>、484つの医薬品に絞られ、それらの79%を31つの薬が占めた。多くは精神科の薬であり、最も他害行為の傾向が強いものは禁煙薬の[[バレニクリン]](チャンピックス)で18倍、[[抗うつ薬]]全体では8.4倍でその種類では[[SSRI]]やSNRIが多く、SSRIの[[フルオキセチン]](プロザック)で10.9倍、[[パロキセチン]](パキシル)10.3倍であった。バレニクリン、フルオキセチン、パロキセチンに続くものは、注意欠陥多動性薬の覚醒剤類である[[アンフェタミン]](アデロール)9.6倍、[[アトモキセチン]](ストラテラ)9.0倍であった。睡眠薬では、短時間作用型のものに他害行為の傾向が強く、[[トリアゾラム]]8.7倍(ハルシオン、[[ベンゾジアゼピン系]])、[[ゾルピデム]]6.7倍(マイスリー、非ベンゾジアゼピン系)、[[エスゾピクロン]]4.9倍(ルネスタ、非ベンゾジアゼピン系)であった。ほかの多くは5倍を下回る。なお、アメリカで認可されている医薬品についてである。
アメリカ食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータから殺人や暴力など他害行為の報告を調査し<ref name="pmid21179515">{{cite journal|last1=Ross|first1=Joseph S.|last2=Moore|first2=Thomas J.|last3=Glenmullen|first3=Joseph|last4=Furberg|first4=Curt D.|title=Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others|journal=PLoS ONE|volume=5|issue=12|pages=e15337|year=2010|pmid=21179515|pmc=3002271|doi=10.1371/journal.pone.0015337|url=http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337}}</ref>、484つの医薬品に絞られ、それらの79%を31つの薬が占めた。多くは精神科の薬であり、最も他害行為の傾向が強いものは禁煙薬の[[バレニクリン]](チャンピックス)で18倍、[[抗うつ薬]]全体では8.4倍でその種類では[[SSRI]]やSNRIが多く、SSRIの[[フルオキセチン]](プロザック)で10.9倍、[[パロキセチン]](パキシル)10.3倍であった。バレニクリン、フルオキセチン、パロキセチンに続くものは、注意欠陥多動性薬の精神刺激薬類である[[アンフェタミン]](アデロール)9.6倍、[[アトモキセチン]](ストラテラ)9.0倍であった。睡眠薬では、短時間作用型のものに他害行為の傾向が強く、[[トリアゾラム]]8.7倍(ハルシオン、[[ベンゾジアゼピン系]])、[[ゾルピデム]]6.7倍(マイスリー、非ベンゾジアゼピン系)、[[エスゾピクロン]]4.9倍(ルネスタ、非ベンゾジアゼピン系)であった。ほかの多くは5倍を下回る。なお、アメリカで認可されている医薬品についてである。


==種類==
==種類==
{{See also|:en:List of psychiatric medications|:en:List of psychiatric medications by condition treated}}
{{See also|[[:en:List of psychiatric medications]]|[[:en:List of psychiatric medications by condition treated]]}}
精神科の薬は主に6つに分類される。
精神科の薬は主に6つに分類される。
*[[抗うつ薬]](Antidepressant)は、以下のような異なる障害を治療する、[[うつ病]]、[[気分変調性障害|気分変調]]、[[不安障害]]。
*[[抗うつ薬]](Antidepressant)は、以下のような異なる障害を治療する、[[うつ病]]、[[気分変調|気分変調]]、[[不安障害]]。
*[[覚醒剤]](Stimulant)は、以下のような障害を治療する、[[注意欠陥・多動性障害]]や[[ナルコレプシー]]、また[[:en:anorexia (symptom)|食欲を抑制する]]。
*[[精神刺激薬]](Stimulant)は、以下のような障害を治療する、[[注意欠陥・多動性障害]]や[[ナルコレプシー]]、また[[:en:anorexia (symptom)|食欲を抑制する]]。
*[[抗精神病薬]](Antipsychotic)は、以下のような[[精神病]]を治療する、[[統合失調症]]や[[躁病]]。
*[[抗精神病薬]](Antipsychotic)は、以下のような[[精神病]]を治療する、[[統合失調症]]や[[躁病]]。
*[[気分安定薬]](Mood stabilizer)は、[[双極性障害]]と{{日本語版にない記事リンク|統合失調感情障害|en|Schizoaffective disorder}}を治療する。
*[[気分安定薬]](Mood stabilizer)は、[[双極性障害]]と[[統合失調感情障害]]を治療する。
*[[抗不安薬]](Anxiolytic)は、[[不安障害]]を治療する。
*[[抗不安薬]](Anxiolytic)は、[[不安障害]]を治療する。
*{{仮リンク|抑制薬|en|Depressant}}(Depressant)は、[[睡眠薬]]、[[精神定剤]]、また{{仮リンク|麻酔薬|en|Anesthetic}}としても用いられる。
*[[抑制剤|抑制薬]](Depressant)は、[[睡眠薬]]、[[抗不]]、また[[麻酔薬]]としても用いられる。
[[幻覚剤]](Hallucinogens)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている。
[[幻覚剤]](Hallucinogens)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている。


===抗精神病薬===
===抗精神病薬===
{{Main|抗精神病薬}}
{{Main|抗精神病薬}}
抗精神病薬(Antipsychotic)は、精神病性障害や[[統合失調症]]に起因するような、精神病の様々な症状の治療に用いられる薬である。抗精神病薬はまた、精神病症状がない[[双極性障害]]の治療において[[気分安定薬]](mood stabilizer)としても用いられる。抗精神病薬は時に神経弛緩薬(neuroleptic drug)と呼ばれ、一部の抗精神病薬は「メジャートランキライザー」に区分される。
抗精神病薬(Antipsychotic)は、精神病性障害や[[統合失調症]]に起因するような、[[精神病]]の様々な症状の治療に用いられる薬である{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=PSY}}。抗精神病薬はまた、精神病症状がない[[双極性障害]]の治療において[[気分安定薬]](mood stabilizer)としても用いられる{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=BPD}}。抗精神病薬は時に従来の呼称である神経弛緩薬(neuroleptic drug)と呼ばれ、一部の抗精神病薬は「メジャートランキライザー」に区分される。


抗精神病薬には2つの部類がある:[[定型抗精神病薬]]と[[非定型抗精神病薬]]。ほとんどの抗精神病薬は、処方箋によってのみ入手できる。
抗精神病薬には2つの部類がある:[[定型抗精神病薬]]と[[非定型抗精神病薬]]。ほとんどの抗精神病薬は、処方箋によってのみ入手できる。


一般的な抗精神病薬:<ref>"[http://web.archive.org/web/20040903192425/http://www.healthatoz.com/healthatoz/Atoz/ency/tardive_dyskinesia.jsp Tardive dyskinesia]"</ref>
一般的な抗精神病薬:<ref>"[https://web.archive.org/web/20040903192425/http://www.healthatoz.com/healthatoz/Atoz/ency/tardive_dyskinesia.jsp Tardive dyskinesia]"</ref>


定型抗精神病薬
定型抗精神病薬
*[[クロルプロマジン]](ソラジン)
*[[クロルプロマジン]](ソラジン
*[[ハロペリドール]](ハルドール)
*[[ハロペリドール]](ハルドール
*[[ペルフェナジン]](トリラホン)
*[[ペルフェナジン]](トリラホン
*{{仮リンク|チオリダジン|en|Thioridazine}}(メレリル)
*[[チオリダジン]](メレリル
*{{仮リンク|チオチキセン|en|Thiothixene}}(ナーベン)
*{{仮リンク|チオチキセン|en|Thiothixene}}(ナーベン
*{{仮リンク|フルペンチキソール|en|Flupentixol}}(フルアンキソール)
*{{仮リンク|フルペンチキソール|en|Flupentixol}}(フルアンキソール
*{{仮リンク|トリフルオペラジン|en|Trifluoperazine}}(ステラジン)
*{{仮リンク|トリフルオペラジン|en|Trifluoperazine}}(ステラジン


非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬
*[[アリピプラゾール]](エビリファイ)
*[[アリピプラゾール]](エビリファイ
*[[クロザピン]](クロザリル)
*[[クロザピン]](クロザリル
*[[オランザピン]](ジプレキサ)
*[[オランザピン]](ジプレキサ
*[[パリペリドン]](インヴェガ)
*[[パリペリドン]](インヴェガ
*[[クエチアピン]](セロクエル)
*[[クエチアピン]](セロクエル
*[[リスペリドン]](リスパダール)
*[[リスペリドン]](リスパダール
*[[ゾテピン]](Nipolept)
*[[ゾテピン]](ロドピン)
*{{仮リンク|ジプラシドン|en|Ziprasidone}}(ジオドン)
*{{仮リンク|ジプラシドン|en|Ziprasidone}}(ジオドン


===抗うつ薬===
===抗うつ薬===
{{Main|抗うつ薬}}
{{Main|抗うつ薬}}
抗うつ薬(Antidepressant)は[[うつ病]]の治療に用いられ、また頻繁に不安などのほかの障害にも用いられる。たいていの抗うつ薬には、[[セロトニン]]か[[ノルアドレナリン]]、また両方の異化を抑制する作用がある。こうした薬は[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)と呼ばれ、うつが体験される域までの減退から[[神経伝達物質]]を積極的に阻害する{{citation needed|date=December 2012}}。SSRIが顕著に効果を発揮するまでに3~5週間を要する:脳がセロトニンの氾濫を処理しようとし、{{仮リンク|自己受容体|en|Autoreceptor}}の感受性を{{仮リンク|下方制御|en|Downregulation}}することで反応するのに長くて5週間かかるためである。セロトニンを「制限」する代わりに自己受容体を塞ぐBi-functional SSRIは現在研究中である。別の種類の抗うつ薬は[[モノアミン酸化酵素阻害薬]](MAOI)であり、セロトニンとセロトニンと[[ノルアドレナリン]]を分解する酵素である[[モノアミン酸化酵素|MAO]]の作用を阻害するとされている。MAOIは主に、[[三環系抗うつ薬]]やSSRIがうつ病を予防および改善できない場合にのみ用いられる。
抗うつ薬(Antidepressant)は[[うつ病]]の治療に用いられ、また頻繁に不安などのほかの障害にも用いられる。たいていの抗うつ薬には、[[セロトニン]]か[[ノルアドレナリン]]、また両方の異化を抑制する作用がある。こうした薬は[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)や[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]](SNRI)と呼ばれ、うつが体験される域までの減退から[[神経伝達物質]]を積極的に阻害する{{citation needed|date=December 2012}}。SSRIやSNRIが顕著に効果を発揮するまでに2-5週間を要する:脳がセロトニンの氾濫を処理しようとし、{{仮リンク|自己受容体|en|Autoreceptor}}の感受性を[[下方制御]]することで反応するのに長くて5週間かかるためである。セロトニンを「制限」する代わりに自己受容体を塞ぐBi-functional SSRIは現在研究中である。別の種類の抗うつ薬は[[モノアミン酸化酵素阻害薬]](MAOI)であり、セロトニンとセロトニンと[[ノルアドレナリン]]を分解する酵素である[[モノアミン酸化酵素|MAO]]の作用を阻害するとされている。MAOIは主に、[[三環系抗うつ薬]]やSSRIがうつ病を予防および改善できない場合にのみ用いられる。MAOIは日本ではその激しい副作用と厳しい食事制限のため、現在パーキンソン病の治療薬としてしか認可されていない。日本では抗うつ薬として認可されていない


一般的な抗うつ薬:<ref>{{cite web |author=Natasha Tracy|title=Monoamine Oxidase Inhibitors |url=http://www.healthyplace.com/Communities/depression/treatment/antidepressants/maoi.asp|date=11 January 2012|accessdate=2013-01-01}}</ref>{{Failed verification|date=July 2010}}
一般的な抗うつ薬:<ref>{{cite web |author=Natasha Tracy|title=Monoamine Oxidase Inhibitors |url=http://www.healthyplace.com/Communities/depression/treatment/antidepressants/maoi.asp|date=11 January 2012|accessdate=2013-01-01}}</ref>{{Failed verification|date=July 2010}}
*[[フルオキセチン]](プロザック)、SSRI
*[[フルオキセチン]](プロザック)、SSRI(日本では未認可)
*[[フルボキサミン]](ルボックス、デプロメール)、SSRI
*[[パロキセチン]](パキシル、セロクサート)、SSRI
*[[パロキセチン]](パキシル、セロクサート)、SSRI
*{{仮リンク|シタロプラム|en|Citalopram}}(セレクサ)、SSRI
*[[シタロプラム]](セレクサ)、SSRI
*[[エスシタロプラム]](レクサプロ)、SSRI
*[[エスシタロプラム]](レクサプロ)、SSRI
*[[セルトラリン]](ゾロフト)、SSRI
*[[セルトラリン]](ジェイゾロフト)、SSRI
*[[デュロキセチン]](サインバルタ)、[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬|SNRI]]
*[[デュロキセチン]](サインバルタ)、SNRI
*{{仮リンク|ベンファキシ|en|Venlafaxine}}エフェクサー)、SNRI
*[[ミルナシプラン]]トレドミン)、SNRI
*[[ベンラファキシン]](イフェクサー)、SNRI
*[[ブプロピオン]](ウェルブトリン)、[[NDRI]]<ref>{{cite journal| author =Stephen M. Stahl, M.D., Ph.D.; et al. | title =A Review of the Neuropharmacology of Bupropion, a Dual Norepinephrine and Dopamine Reuptake Inhibitor
*[[ブプロピオン]](ウェルブトリン)、[[NDRI]]<ref>{{cite journal| author =Stephen M. Stahl, M.D., Ph.D.; et al. | title =A Review of the Neuropharmacology of Bupropion, a Dual Norepinephrine and Dopamine Reuptake Inhibitor
| publisher =Journal of Clinical Psychiatry; 6(04) 159-166 2004 ''PHYSICIANS POSTGRADUATE PRESS, INC''| year=2004 | url=http://www.psychiatrist.com/pcc/pccpdf/v06n04/v06n0403.pdf | format=pdf | accessdate =2006-09-02 }}</ref>
| publisher =Journal of Clinical Psychiatry; 6(04) 159-166 2004 ''PHYSICIANS POSTGRADUATE PRESS, INC''| year=2004 | url=http://www.psychiatrist.com/pcc/pccpdf/v06n04/v06n0403.pdf | format=pdf | accessdate =2006-09-02 }}</ref>
*[[ミルタザピン]](レメロン)、[[NaSSA]]
*[[ミルタザピン]](リフレックス、レメロン)、[[NaSSA]]
*{{仮リンク|イソカルボキサジド|en|Isocarboxazid}}(Marplan)MAOI
*[[イソカルボキサジド]](Marplan)MAOI(日本では未認可)
*{{仮リンク|フェネルジン|en|Phenelzine}}(ナルジル)、MAOI
*{{仮リンク|フェネルジン|en|Phenelzine}}(ナルジル)、MAOI(日本では未認可)


===幻覚剤===
===幻覚剤===
{{main|幻覚剤}}
{{main|幻覚剤}}
幻覚剤(Hallucinogenあるいはpsychedelics)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている<ref name="pmid20717121"/>。現在違法化されている薬物でも、過去に心理療法に際して研究された国では、違法にこれらの薬物を用いた心理療法が継続されている例がある<ref name="Esquire201206">{{cite journal|last1=Vollenweider|first1=Franz X.|title=What if Es really are good?|journal=[[エスクァイア|Esquire]]|pages=100-107|year=2012|month=july|url=http://www.maps.org/media/esquire_july2012_ecstasy.pdf|format=pdf}}</ref>。また、一般的なイメージとは反対に、幻覚剤は、現行の薬による一時的な処置に過ぎないか、あるいは徐々に悪化していく精神障害を治癒する可能性を示している。難治性あるいは治療抵抗性のうつ病や心的外傷後ストレス障害に対して、投与後の持続的な効果が示唆されている<ref name="pmid23052292"/><ref name="pmid22817963"/>。[[幻覚剤]]には離脱症状はなく大麻の離脱症状はまれであり{{sfn|世界保健機関|2004|pp=107-109}}、[[大麻]]からの離脱は入院を要さない<ref name="apa1-58562-276-4"/>。MDMAには依存性はないが、使用後の疲労感といった覚醒剤の使用後に生じるような症状が生じる可能性がある{{sfn|世界保健機関|2004|pp=100}}。
幻覚剤(Hallucinogenあるいはpsychedelics)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている。

一般的なイメージとは反対に、幻覚剤は、現行の薬による一時的な処置に過ぎないか、あるいは徐々に悪化していく精神疾患を治癒する可能性を示している。
精神科の薬に用いられる幻覚剤を挙げる:
治療研究が行わている幻覚剤を挙げる:
*[[シロシビン]] 抗うつ薬<ref name="pmid27210031">{{cite journal|last1=Nutt|first1=David J|authorlink1=デビッド・ナット|last2=Carhart-Harris|first2=Robin L|last3=Bolstridge|first3=Mark|coauthors=et al.|title=Psilocybin with psychological support for treatment-resistant depression: an open-label feasibility study|journal=The Lancet Psychiatry|volume=3|issue=7|pages=619–627|year=2016|pmid=27210031|doi=10.1016/S2215-0366(16)30065-7|url=http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(16)30065-7/fulltext}}</ref>、強迫性障害の治療薬ならびに薬物依存症治療薬<ref name="pmid22817963">{{cite journal |author=Sessa B |title=Shaping the renaissance of psychedelic research |journal=[[ランセット|Lancet]] |volume=380 |issue=9838 |pages=200–1 |year=2012 |month=July |pmid=22817963 |doi=10.1016/S0140-6736(12)60600-X |url=https://www.maps.org/media/sessa_lancet_2012_psychedelicrenaissance.pdf|format=pdf}}</ref>。[[マジックマッシュルーム]]と総称されるキノコ類に含有される成分。
*[[LSD (薬物)|LSD]]
*[[LSD (薬物)|LSD]] 抗うつ薬ならびに薬物依存症治療薬<ref name="pmid20717121"/>
*[[シロシビン]]
*[[イボガイン]] 薬物依存症治療薬<ref name="pmid22817963"/>。イボガという植物に含有される成分。
*[[メスカリン]]
*[[ケタミン]] 急速動作型抗うつ薬(Rapid-Acting Antidepressants)<ref name="pmid23052292">{{cite journal|last=Insel|first=T. R.|authorlink=トーマス・インセル|title=Next-Generation Treatments for Mental Disorders|journal=Science Translational Medicine|volume=4|issue=155|pages=155ps19–155ps19|year=2012|month=October|pmid=23052292|doi=10.1126/scitranslmed.3004873}}</ref>ならびに薬物依存症治療薬<ref name="pmid22817963"/>。もともとは解離性麻酔薬だが、幻覚剤として用いられる<ref name="pmid20717121">{{cite journal|last1=Vollenweider|first1=Franz X.|last2=Kometer|first2=Michael|title=The neurobiology of psychedelic drugs: implications for the treatment of mood disorders|journal=Nature Reviews Neuroscience|volume=11|issue=9|pages=642–651|year=2010|month=September|pmid=20717121|doi=10.1038/nrn2884|url=http://amec.glp.net/c/document_library/get_file?p_l_id=850754&folderId=754745&name=DLFE-20413.pdf|format=pdf}}</ref>。
*[[イボガイン]]
*[[ジメチルトリプタミン]] (DMT) 南米の薬草の調合液である[[アヤワスカ]]の成分として知られ、6名という少数での試験では摂取後21日目でもうつ病スコアの改善を示した<ref name="pmid25806551">{{cite journal|last1=Osório|first1=Flávia de L.|last2=Sanches|first2=Rafael F.|last3=Macedo|first3=Ligia R.|last4=dos Santos|first4=Rafael G.|last5=Maia-de-Oliveira|first5=João P.|last6=Wichert-Ana|first6=Lauro|last7=de Araujo|first7=Draulio B.|last8=Riba|first8=Jordi|last9=Crippa|first9=José A.|last10=Hallak|first10=Jaime E.|title=Antidepressant effects of a single dose of ayahuasca in patients with recurrent depression: a preliminary report|journal=Revista Brasileira de Psiquiatria|volume=37|issue=1|pages=13–20|year=2015|pmid=25806551|doi=10.1590/1516-4446-2014-1496|url=http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S1516-44462015000100013&lng=en&nrm=iso&tlng=en}}</ref>。
*[[医療大麻|大麻]]
*[[メチレンジオキシメタンフェタミン|MDMA]] 向社会的化合物(prosocial compound)<ref name="pmid23052292"/>。PTSDに対する心理療法の治療率を高める<ref>{{cite journal|last1=Frood|first1=Arran|title=MDMA keeps severe stress at bay|journal=Nature|year=2012|doi=10.1038/nature.2012.11864}}</ref><ref>[http://mdmaptsd.org/ Treating PTSD with MDMA-Assisted Psychotherapy]</ref><ref>[http://mapscanada.org/ MAPS Canada]</ref>。
*[[ジメチルトリプタミン|DMT]]
*[[医療大麻]] 各国で医療大麻の使用が認可されている。成分の[[カンナビジオール]] (CBD) は、抗精神病薬の特性が報告されている<ref name="pmid27877130"/>。


===気分安定薬===
===気分安定薬===
{{Main|気分安定薬}}
{{Main|気分安定薬}}
気分安定薬(Mood stabilizers)は、1949年にオーストラリア人の[[ジョン・ケイド]]が、躁病を管理する作用があることを発見して以来普及した。[[アメリカ食品医薬品局]]によって認可された初の気分安定薬で、現在一般的な薬になっている[[炭酸リチウム]]を主流の治療に取り入れた。多くの抗精神病薬は選択薬として気分安定薬の目的で用いられる。多くの気分安定薬は[[抗てんかん薬]]に属する。気分安定薬の作用機序については、解明も理解も十分ではない。
気分安定薬(Mood stabilizers)は、1949年にオーストラリア人の[[ジョン・ケイド]]が、躁病を管理する作用があることを発見して以来普及した。[[アメリカ食品医薬品局]]によって認可された初の気分安定薬で、現在一般的な薬になっている[[炭酸リチウム]]を主流の治療に取り入れた。多くの抗精神病薬は選択薬として気分安定薬の目的で用いられる。多くの気分安定薬は[[抗てんかん薬]]に属する。気分安定薬の作用機序については、解明も理解も十分ではない。


一般的な気分安定薬:{{Citation needed|date=July 2010}}
一般的な気分安定薬:{{Citation needed|date=July 2010}}
*[[炭酸リチウム]](Carbolith)、初の定型の気分安定薬。
*[[炭酸リチウム]](リーマス)、初の定型の気分安定薬。
*[[カルバマゼピン]](テグレトール)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[カルバマゼピン]](テグレトール)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*{{仮リンク|オクスカルバゼピン|en|Oxcarbazepine}}(Trileptal)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[オクスカルバゼピン]](Trileptal)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[バルプロ酸]]、およびバルプロ酸ナトリウム (デパケン、デパコート)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[バルプロ酸]]、およびバルプロ酸ナトリウム デパケン、デパコート、セレニカ)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[ラモトリギン]](ラミクタール)、非定型の抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[ラモトリギン]](ラミクタール)、非定型の抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
*[[ガバペンチン]]、非定型の[[GABA]]関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[ガバペンチン]](ガバペン)、非定型の[[γ-アミノ酪酸|GABA]]関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[プレガバリン]]、非定型のGABA系抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[プレガバリン]]、非定型のGABA系抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[トピラマート]]、[[GABA]]受容体関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[トピラマート]]、GABA受容体関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
*[[オランザピン]]、非定形の抗精神病薬ならびに気分安定薬
*[[オランザピン]]、非定形の抗精神病薬ならびに気分安定薬


===覚醒剤===
===精神刺激薬===
{{Main|覚醒剤}}
{{Main|精神刺激薬}}
覚醒剤(Stimulant)は今日、最も広く処方される薬の一部である。これらは総じて中枢神経系を刺激する薬である。{{仮リンク|アデロール|en|Adderall}}は[[アンフェタミン]]塩に属し、[[注意欠陥・多動性障害]](ADHD)の治療に頻繁に処方される薬である。 覚せい剤は依存症の可能性があるため、したがって薬物乱用の既往歴がある患者は通常は注意深く観察するか、使用を禁じて代わりのものを与える。用量を漸減せず投薬をいきなり中断した場合、不安や薬物への渇望のような心理的な離脱症状の原因となる。大部分の覚せい剤には身体的依存はない。
精神刺激薬(Stimulant)は今日、最も広く処方される薬の一部である。一般に覚醒剤と呼ばれることもある<ref>{{Cite book|和書|author=中島亨|coauthor=日本睡眠学会編集|chapter=精神刺激薬|title=睡眠学|publisher=朝倉書店|date=2009-02|isbn=978-4254300901|pages=651-657}}</ref>。これらは総じて中枢神経系を刺激する薬である。{{仮リンク|アデロール|en|Adderall}}は[[アンフェタミン]]塩に属し、[[注意欠陥・多動性障害]](ADHD)の治療に頻繁に処方される薬である。 覚せい剤は依存症の可能性があるため、したがって薬物乱用の既往歴がある患者は通常は注意深く観察するか、使用を禁じて代わりのものを与える。用量を漸減せず投薬をいきなり中断した場合、不安や薬物への渇望のような心理的な離脱症状の原因となる。大部分の覚せい剤には身体的依存はない。


一般的な覚醒剤
一般的な精神刺激薬
*[[カフェイン]], 定型のメチルキサンチン覚醒剤、世界中の多くの食料品に含まれる
*[[カフェイン]], 定型のメチルキサンチン覚醒剤、世界中の多くの食料品に含まれる
*[[メチルフェニデート]](リタリン、コンサータ)、非定型の覚醒剤{{Citation needed|date=July 2010}}
*[[メチルフェニデート]](リタリン、コンサータ)、非定型の覚醒剤{{Citation needed|date=July 2010}}
*{{仮リンク|デクスメチルフェニデート|en|Dexmethylphenidate}}(フォカリン)、メチルフェニデートの活性D-異性体
*{{仮リンク|デクスメチルフェニデート|en|Dexmethylphenidate}}(フォカリン)、メチルフェニデートの活性D-異性体
*{{仮リンク|デキストロアンフェタミン|en|Dextroamphetamine}}(デキセドリン)、追加の活性アンフェタミン異性体
*[[デキストロアンフェタミン]](デキセドリン)、追加の活性アンフェタミン異性体
*{{仮リンク|デキストロアンフェタミン|en|Dextroamphetamine}}と[[アンフェタミン|レボアンフェタミン]](アデロール)、D,L-アンフェタミン塩混合
*[[デキストロアンフェタミン]]と[[アンフェタミン|レボアンフェタミン]](アデロール)、D,L-アンフェタミン塩混合
*[[メタンフェタミン]](デソキシン)、強いアンフェタンフェタミン-ベースの覚醒剤
*[[メタンフェタミン]](デソキシン)、強いアンフェタンフェタミン-ベースの覚醒剤
*[[モダフィニル]](プロビジル)、シルデナフィル関連の覚醒剤 (バイアグラ)
*[[モダフィニル]](プロビジル)、シルデナフィル関連の覚醒剤 (バイアグラ)


===抗不安薬と睡眠薬===
===抗不安薬と睡眠薬===
{{See also|:en:List of benzodiazepines|ベンゾジアゼピン系}}
{{See also|[[:en:List of benzodiazepines]]|ベンゾジアゼピン系}}


[[ベンゾジアゼピン系]]は、睡眠薬、抗不安薬、抗てんかん薬、筋弛緩剤と健忘剤として、短期間―4週間まで―の治療に有効である<ref>{{cite journal|last=Ashton|first=Heather|title=Guidelines for the rational use of benzodiazepines. When and what to use.|journal=Drugs|year=1994|month=July|volume=48|issue=1|pages=25-40|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7525193}}</ref>。これらは過剰投与した場合の危険性や毒性のより少ない傾向のために、[[バルビツール酸系]]から広く置き換えられた。しかし、ベンゾジアゼピン系はさらに[[非ベンゾジアゼピン系]]([[Z薬]])に置き換えられた。
[[ベンゾジアゼピン系]]は、[[睡眠薬]][[抗不安薬]]、抗てんかん薬、筋弛緩剤と健忘剤として、短期間―4週間まで―の治療に有効である<ref name="pmid7525193">{{cite journal|last1=Ashton|first1=Heather|title=Guidelines for the Rational Use of Benzodiazepines|journal=Drugs|volume=48|issue=1|pages=25–40|year=1994|month=July|pmid=7525193|doi=10.2165/00003495-199448010-00004|url=http://www.benzo.org.uk/asgr.htm}}</ref>。これらは過剰投与した場合の危険性や毒性のより少ない傾向のために、[[バルビツール酸系]]から広く置き換えられた。しかし、ベンゾジアゼピン系はさらに[[非ベンゾジアゼピン系]]([[Z薬]])に置き換えられた。バルビツール酸系の薬は[[治療指数]]が低く、過量服薬の危険性を考慮すると使用は推奨されない<ref>{{cite web |author= |title=Barbiturates |url=http://www.emcdda.europa.eu/publications/drug-profiles/barbiturates |date=2011-09-13 |publisher=The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction |accessdate=2013-06-07}}</ref>


1950年代、開発された当初は治療用量では依存性がないと考えられていた。しかし現在では、大部分の使用者にバルビツール酸や[[アルコール離脱症状|アルコール離脱]]<ref>{{cite journal |author=MacKinnon GL, Parker WA |title=Benzodiazepine withdrawal syndrome:a literature review and evaluation |journal=Am J Drug Alcohol Abuse |volume=9 |issue=1 |pages=19–33 |year=1982 |pmid=6133446 |doi= 10.3109/00952998209002608|url=}}</ref>と同様の[[離脱]]症状を引き起こすことが知られており、使用者の約15%に数カ月から数年の間にわたって重度の[[ベンゾジアゼピン離脱症状|離脱症状]]を持続させる可能性がある<ref>{{cite journal|last=Ashton|first=Heather|title=Protracted withdrawal syndromes from benzodiazepines|journal=J Subst Abuse Treat.|year=1991|volume=8|pages=19-28|url=http://www.benzo.org.uk/ashpws.htm|accessdate=5 December 2012}}</ref>。
1960年代、当初は治療用量では依存性がないと考えられていた。しかし現在では、大部分の使用者にバルビツール酸や[[アルコール離脱症状|アルコール離脱]]<ref>{{cite journal |author=MacKinnon GL, Parker WA |title=Benzodiazepine withdrawal syndrome:a literature review and evaluation |journal=Am J Drug Alcohol Abuse |volume=9 |issue=1 |pages=19–33 |year=1982 |pmid=6133446 |doi= 10.3109/00952998209002608|url=}}</ref>と同様の[[離脱]]症状を生じさせることが知られており、使用者の約15%に数カ月から数年の間にわたって重度の[[ベンゾジアゼピン離脱症状|離脱症状]]を持続させる可能性がある<ref name="pmid1675688">{{cite journal |author=Ashton H |title=Protracted withdrawal syndromes from benzodiazepines |journal=Journal of Substance Abuse Treatment |volume=8 |issue=1-2 |pages=19–28 |year=1991 |pmid=1675688 |doi=10.1016/0740-5472(91)90023-4 |url=http://www.benzo.org.uk/ashpws.htm}}</ref>。


一般的なベンゾジアゼピン系と誘導体を挙げる:
一般的なベンゾジアゼピン系と誘導体を挙げる:
*[[ジアゼパム]](ウム)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[ジアゼパム]](セルシン、ホゾン)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[ニトラゼパム]](モガドン)、ベンゾジアゼピン誘導体、睡眠薬
*[[ニトラゼパム]](モガドン)、ベンゾジアゼピン誘導体、睡眠薬
*[[ゾルピデム]](アンビエン、Stilnox)、{{仮リンク|イミダゾピリジン|en|Imidazopyridine}}、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬
*[[ゾルピデム]](マイスリー、Stilnox)、[[イミダゾピリジン]]、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬
*[[ゾピクロン]](アモバン)、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬(「Z
*[[ゾピクロン]](アモバン)、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬(Z薬)
*{{仮リンク|ザレプロン|en|Zaleplon}}(ソナタ)、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬(「Z
*{{仮リンク|ザレプロン|en|Zaleplon}}(ソナタ)、非ベンゾジアゼピン誘導体睡眠薬(Z薬)
*[[クロルジアゼポキシド]](リブリウム)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[クロルジアゼポキシド]](コントール、バランス)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[アルプラゾラム]](ナックス)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[アルプラゾラム]](ソラナックス、コンスタン)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*{{仮リンク|テマゼパム|en|Temazepam}}(レストリル)、ベンゾジアゼピン誘導体
*[[テマゼパム]](レストリル)、ベンゾジアゼピン誘導体
*[[クロナゼパム]](クロノピン)、ベンゾジアゼピン誘導体
*[[クロナゼパム]](ドセン、リボトリール)、ベンゾジアゼピン誘導体
*[[ロラゼパム]](アチバン)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬
*[[ロラゼパム]](ワイパックス)、ベンゾジアゼピン誘導体、抗不安薬


==関連項目==
==関連項目==
*[[医薬品]]
*[[医学]]
*[[向精神薬]]
*[[精神薬理学]]
*[[精神医学]]
*[[精神医学]]
*[[漢方薬]] - 作用機序は明確でないものの、漢方にも精神障害の治療に使えるものが存在する。


==脚注==
== 脚注 ==
{{Reflist}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}


==参考文献==
==参考文献==
; 国際機関
* {{cite report|last=Ashton|first=Heather|title=ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか|url=http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf|format=pdf|date=2002-08|publisher=Professor C H Ashton|accessdate=2013-01-19|ref=harv}}
:*{{Cite report|publisher=[[世界保健機関]] |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |date=2010 |isbn=9789241548069 |url=http://www.who.int/mental_health/publications/mhGAP_intervention_guide/en/ |ref={{SfnRef|世界保健機関|2010}} }}
*{{Cite book |和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=田島治、江口重幸監訳、冬樹純子訳|date=2009-07|title=ヒーリー精神科治療薬ガイド|edition=第5版|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07474-8|ref=harv}}、Psychiatric drugs explained: 5th Edition
:*{{Cite book2 |df=ja |author=世界保健機関|date=2013 |title=Guidelines for the Management of Conditions Specifically Related to Stress|url=http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/85119/1/9789241505406_eng.pdf|publisher=World Health Organization |format=pdf |accessdate=2014-01-19|isbn=978-92-4-150540-6}}
*{{cite journal |author=Insel TR |authorlink=トーマス・インセル |title=Disruptive insights in psychiatry: transforming a clinical discipline |journal=J. Clin. Invest. |volume=119 |issue=4 |pages=700–5 |year=2009 |month=April |pmid=19339761 |pmc=2662575 |doi=10.1172/JCI38832 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2662575/|ref=harv}}
:*{{Cite book2 |df=ja |author=世界保健機関 |title=Neuroscience of psychoactive substance use and dependence|publisher=World Health Organization|date=2004|isbn=92-4-156235-8|location=Geneva|url=http://www.who.int/substance_abuse/publications/en/Neuroscience.pdf| format=pdf}}
*{{Cite book|和書|author=風祭元|title=日本近代精神科薬物療法史|chapter=第10章:向精神薬の長期大量多剤併用療法と副作用|publisher=アークメディア|date=2008|isbn=978-4-87583-121-1|pages=121-132|ref=harv}}、同一の内容で、{{Cite journal |和書|author=風祭元|date=2006-12|title=日本近代向精神薬療法史(10)向精神薬の長期大量多剤併用療法と副作用|journal=臨床精神医学|volume=35|issue=12|pages=1683-1689|naid=40015221455}}
:<!-- バグ回避のための行。[[Help:箇条書き]]を参照。 -->
; その他
:*{{cite journal |author=Insel TR |authorlink=トーマス・インセル |title=Disruptive insights in psychiatry: transforming a clinical discipline |journal=J. Clin. Invest. |volume=119 |issue=4 |pages=700–5 |year=2009 |month=April |pmid=19339761 |pmc=2662575 |doi=10.1172/JCI38832 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2662575/|ref=harv}}
:* {{Cite book|author=The National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University|title=Addiction Medicine: Closing the Gap between Science and Practice|publisher |url=http://www.casacolumbia.org/templates/NewsRoom.aspx?articleid=678&zoneid=51 |date=June 2012|ref=harv}}
:*{{Cite book |和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|authorlink=デイヴィッド・ヒーリー (精神科医)|translator=田島治、江口重幸監訳、冬樹純子|date=2009-07|title=ヒーリー精神科治療薬ガイド|edition=第5版|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07474-8|ref=harv}}、Psychiatric drugs explained: 5th Edition
:*{{Cite book|和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=江口重幸監訳、坂本響子|date=2012-11|title=双極性障害の時代―マニーからバイポーラーへ|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07720-6|pages=|ref=harv}}、MANIA: A Short History of Bipolar Disorder, 2008
:* {{Cite book|和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=田島治監訳、中里京子|title=ファルマゲドン|publisher=みすず書房|date=2015|isbn=978-4-622-07907-1|ref=harv}} ''Pharmageddon'', 2012.
:* {{cite report |df=ja |last=Ashton|first=Heather|title=ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか|url=http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf|format=pdf|date=August 2002|publisher=Professor C H Ashton|accessdate=2013-01-19}}
:*{{Cite book|和書|author=風祭元|title=日本近代精神科薬物療法史|chapter=第10章:向精神薬の長期大量多剤併用療法と副作用|publisher=アークメディア|date=2008|isbn=978-4-87583-121-1|pages=121-132|ref=harv}}、同一の内容で、{{Cite journal |和書|author=風祭元|date=2006-12|title=日本近代向精神薬療法史(10)向精神薬の長期大量多剤併用療法と副作用|journal=臨床精神医学|volume=35|issue=12|pages=1683-1689|naid=40015221455}}
:* {{Cite report ja |author=厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班」、日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ|date=2013-06-13 |title=睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインー出口を見据えた不眠医療マニュアル|url=http://www.ncnp.go.jp/pdf/press_130611_2.pdf |format=pdf |accessdate=2013-07-05}}
:*{{Cite book|和書|author=姫井昭男|title=精神科の薬がわかる本|edition=1版|publisher=医学書院|date=2008|isbn=978-4-260-00763-4|ref=harv}}
:*{{Cite book|和書|author=平島奈津子、上島国利、岡島由香|chapter=8章 境界性パーソナリティ障害の薬物療法|title=境界性パーソナリティ障害―日本版治療ガイドライン|publisher=金剛出版|date=2008-09|isbn=9784772410410|pages=135-152|ref=harv}}
:*{{Cite book|和書|author=|editor=松下正明(総編集)|coauthor=編集:牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文|title=精神医療の歴史|series=臨床精神医学講座S1|publisher=中山書店|date=1999-09|isbn=978-4521492315|ref=harv}}
:*{{Cite book |和書|author=エリオット・S・ヴァレンスタイン|translator=功刀浩監訳、中塚公子|date=2008-02|title=精神疾患は脳の病気か?|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07361-1|ref=harv}}、Blaming the Brain, 1998
:*{{cite book|和書|author=アービング・カーシュ|authorlink=アービング・カーシュ|others=石黒千秋訳 |title=抗うつ薬は本当に効くのか |year=2010 |isbn=978-4767809540|ref=harv}}、{{cite book |author=Kirsch, I|title=The Emperor's New Drugs: Exploding the Antidepressant Myth |publisher=The Bodley Head |location=London |year=2009 |isbn=1-84792-083-7|ref=harv}}
:*{{Cite book|和書|author=笠陽一郎|authorlink=笠陽一郎|coauthor=誤診・誤処方を受けた患者とその家族たち|title=精神科セカンドオピニオン―正しい診断と処方を求めて|publisher=シーニュ|date=2008-07|isbn=978-4-9903014-1-5|ref=harv}}


===外部リンク===
==外部リンク==
*[http://childadvocate.net/childpresentations/child_medication.htm Children and Psychiatric Medication - a multimodal presentation]
*[https://web.archive.org/web/20120105131548/http://childadvocate.net/childpresentations/child_medication.htm Children and Psychiatric Medication - a multimodal presentation]
*[http://www.psychiatricdrugs.net/ Psychiatric Drugs: Antidepressant, Antipsychotic, Antianxiety, Antimanic Agent, Stimulant Prescription Drugs]
*[http://www.psychiatricdrugs.net/ Psychiatric Drugs: Antidepressant, Antipsychotic, Antianxiety, Antimanic Agent, Stimulant Prescription Drugs]
*[http://iipdw.com/ International Institute for Psychiatric Drug Withdrawal] {{en icon}} IIPDW 国際精神薬離脱研究所


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[[it:Psicofarmaco]]
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[[nl:Psychofarmacon]]
[[no:Psykofarmaka]]
[[sk:Psychofarmakum]]
[[sv:Psykofarmaka]]

2024年8月29日 (木) 18:18時点における最新版

精神科の薬(せいしんかのくすり、英語: psychiatric medication)は、の様々な回路と神経系に対して化学的に作用をもたらす目的で摂取される、認可された向精神薬である。精神科で処方される薬の大半は合成化合物だが、一部は天然由来か天然にも存在する物質である。ハイリスク薬も多い[1][2]。20世紀半ばから、こうした薬は多様な精神障害の治療を開拓し、長期入院が減った結果、精神保健看護にかかる負担を低下させた[3]

1993年にアメリカで認可された抗うつ薬であるベンラファキシン
2007年にアメリカで認可された抗うつ薬であるデスベンラファキシン英語版

製薬会社は、商業的に成功した医薬品の類似の化学構造を持つあるいは似たような作用をもたらす医薬品を医薬品設計し、特許を取得しなおし販売してきた[4][5]製薬会社は、病気喧伝を通して市場を拡大してきており、生物学的検査の不要な精神科はこの境界の操作に弱かった[5][要検証]

国際的に過剰摂取による死亡が増加している[6]

睡眠薬や抗不安薬のような抑制剤習慣性医薬品麻薬及び向精神薬取締法における向精神薬に指定されている[要出典]

日本では、1990年代より適正な薬剤の使用法が模索されており[7][8]診療ガイドラインが活用されている[9]

薬物乱用の危険性がある医薬品は向精神薬に関する条約により国際的管理下にあり、批准する各国は同様の法律を有する。

中には身体に離脱症状を生じる身体的依存を示す薬物があり[10]、大量又は長期間の投薬は危険性を増加させるため慎重を要する[11]。しかしながら、処方薬に対する薬物依存症の増加の問題や[12]、離脱症状について知らない医師が存在することが報告されており[13]、薬物依存症についての知識が欠けていることが指摘されている[14]

歴史

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近代

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20世紀前半までは、スコポラミンアトロピン抱水クロラールバルビツール酸系、モルヒネなどのカクテルが用いられたが、治療薬とまではみなされず間に合わせの薬であった[15]

1884年には、精神科医のジークムント・フロイトは患者とその家族にコカインを投与した結果の論文を書いた[16]。フロイトの同僚のケラーがコカインの麻酔作用を発見した[16]。1930年代にも、フロイトは『文明とそれの不満』において、躁病を示す体外物質のようなものが体内にもあると考えるようになったと記している[17]

1930年代には、バルビツール酸によって持続的に睡眠状態にする治療は、統合失調症に対する唯一の多少有効な治療法であった[15]。しかしこの治療による死亡率は約5%であった[18]

1941年ごろから日本ではメタンフェタミンが、精神科の方面から仕事の能率を高めるなどとして宣伝され乱用を経て、1951年には覚醒剤取締法が制定される[19]。この乱用は国際的にも著名なものであった[20]

サンド社によるLSDは1943年に合成され、このころはまだ精神分析が全盛であり分析を補助する目的にて用いられた[21]。他にもアルコール依存症の治療などに用いられた。また1960年代に規制されるまで乱用され、サマー・オブ・ラブといったヒッピー・ムーブメントを生み出した。

近代的な精神薬理学のはじまりと限界

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近代的な精神薬理学は、1949年のジョン・ケイドによるリチウムの治療作用の発見、あるいは1952年の抗精神病薬クロルプロマジンの治療効果の発見からはじまるとされる。

その発見は偶然であり、ベンゾジアゼピンとリチウムの鎮静作用は動物にて偶然見つかり、抗結核薬はヒトで偶然に気分を改善し抗うつ薬となり、鎮静剤としてのクロルプロマジンは統合失調症に効果を現し抗精神病薬となった[22]

フランスの外科医、アンリ・ラボリは、麻酔科医のユグナーと共に遮断カクテル(カクテル・リティック)を用い、致死性の手術後ショック反応を減らすという目的でバルビツール酸系の作用を増強することであり、プロメタジンが試された後に、さらなる効果を求めてクロルプロマジンを試しクロルプロマジンを麻酔薬とみなした[23]。その内容の一例は、クロルプロマジン、プロメタジン、メペリドンといった組み合わせであった[24]

そして、これとは別にパリにあるサンタンヌ病院のジャン・ドレとピエール・ドニケルは1952年の5月から7月にかけて、麻酔薬の増強といったことにも用いられているが、クロルプロマジンを単独で用いても妄想を緩和したりするといった一連の研究論文を公開する[25]。1970年代には、抗精神病薬による遅発性ジスキネジアの副作用のために各社は訴えられ、100万ドル規模の和解金を支払い、その後20年新しい抗精神病薬の登場はなかった[26]

1955年に発売されたのは、トランキライザー(精神安定剤)のメプロバメートであり、その商品名はミルタウンである[27]。多くの雑誌が、ハッピーピル、心の平和の薬などとしてとりあげ、爆発的に販売された[28]。薬局は「ミルタウン売り切れ」「ミルタウン明日入荷」といった張り紙さえした[29]。日本の新聞においても、文化病・都会病、ノイローゼの薬として広告され、主婦のイライラや赤子の夜泣きへの効能が謳われている[30]。世界保健機関による薬物の専門委員会の1957年の、報告書では静穏剤(Traquilizing Drug)、アタラシックなどが非常に急速に使用量が増えて、バルビツール酸系と似た離脱症状が生じているという報告がなされている[31]。乱用の後に市場から姿を消した。

1960年代には、効果の似たベンゾジアゼピン系の薬剤が登場する。ベンゾジアゼピン系は「精神安定剤」として家庭の常備薬のように販売された[32]トリアゾラム(ハルシオン)は国際的には1977年、日本では1982年に発売された[33]。(以前の睡眠薬と比較して短時間作用のため)翌日への持ち越し効果がなく処方は増加したが[33]、世界中での乱用にもつながった[34]。データのねつ造および副作用の虚偽の報告がなされていることが発覚し[35]、イギリスの保健省はトリアゾラムの販売を中止した[33]

抗精神病薬のクロザピンには致命的な副作用があったが、遅発性ジスキネジアがないためクロザピンの受容体結合特性を模倣したリスペリドン(リスパダール)、ジプラシドン(ジオドン)、クロザピンの分子構造を若干修正したクエチアピン(セロクエル)、オランザピン(ジプレキサ)が合成され、90年代以降に市場に出ることになる[36]

1980年代には依存と離脱症状の問題があらわとなったベンゾジアゼピン系にかわり、その市場に新しい抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) が参入した[32]。そして、それも2003年から2004年にかけて、欧米で(SSRIのひとつ)パロキセチンが小児の自殺を誘発するという試験が隠蔽されていたという話題が持ち上がると、双極性障害売り込みへと変わっていった[38]

アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)の所長のトーマス・インセルによれば、およそ60年にわたって同じような薬ばかり作っており、単に販売手法に秀でていたにすぎない[39]。新世代の薬は、従来の薬を上回る有効性を示すことができていない[37]

市場性のある既成の医薬品の修正を基にした新規医薬品の開発では、精神障害を有するほとんどの人々に対して現状打破をもたらさないでしょう。 — トーマス・インセルJournal of Clinical Investigation、2009年4月[37]

模倣薬(me too drug)を合成し続ける戦略は限界を迎え、2010年にはグラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退を始めた[4]。大手製薬会社の似たような傾向が続いた[40][41][42]。この分野の薬は、承認まで平均18年かかる[43]

偶然の発見からはじまった精神薬理学は、疾患と製薬開発の科学的な基礎となる根本的なデータを欠如したまま60年が経過し頓挫したのである。

精神薬理学は危機に陥っている。データが届き、大規模な実験が失敗したことが明白である…抗うつ薬、抗精神病薬、そして抗不安薬と、精神科の薬の主な3種類の発見はすべて、偶然の臨床観察に基づいてきた。発見の時点では、これらの分子が生じさせる作用の機序は不明だったが、後に抗精神病薬はD2受容体拮抗薬、抗うつ薬はモノアミン再取り込み阻害剤、抗不安薬はGABA受容体モジュレーターであることが明らかになった。…たとえば、ドーパミンD2受容体が抗精神病性の活性の標的だということを示す遺伝的または前臨床データは存在するでしょうか?目下、精神病性障害において、この受容体の発現あるいは機能の異常を示唆する遺伝的なデータは存在しません。…精神病のようにまったく同じことが、うつ病に関するモノアミントランスポーターについても言え、病態生理学に基づく動物モデルは存在せず、抗うつ薬のための潜在的な標的であることを示す説得力のある前臨床データも存在しない。…現在の着想では精神障害に関する合理的な医薬品設計の試みは時期尚早である。 — H. C. Fibiger - Schizophrenia Bulletin, June, 2012 [44]

初期の発見に基づいて多くの薬剤が開発されてきたが、それらは神経科学の進歩ではなく、新たにケタミンが気分を改善したり、シロシビンが長期的な気分の改善を生じさせるという偶然の発見が得られている[22]

このためこれまで異なった作用機序を持つ、従来からある医薬品に再び焦点が当たっている。アメリカでは麻酔薬のケタミンを治療抵抗性のうつ病に投与するクリニックが登場している。イギリスでは、医学研究審議会(MRC)の資金提供を受け、2015年に(マジックマッシュルームの成分)シロシビンを治療抵抗性うつ病の治療に用いる研究が開始され[22]、結果は12人の約半分は服用体験から3週間後に寛解に達した(うつ病の基準を満たさなかった)[45]MDMAを用いた心理療法の治験が進行しており[46]、また大麻の成分であるカンナビジオール (CBD) は、抗精神病薬の特性が報告されている[47]

健康の権利に関する国連特別報告者であるダイニウス・プラスリトアニア語版は、2017年の国連人権理事会への報告書[48]でも強調してきたことだが、生物医学的な解釈が乱用され過剰に生物医学的に医療化されることで、精神保健の問題を解決するには、問題が起きた脳に対し投薬が必要というように考えられがちになり危機に陥っているが、心理社会的な側面、貧困や暴力からの解放は重要であり、これこそが人権に基づく手法であることを強調してきた[49]

日本

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1894年(明治27年)呉秀三の『精神病学集要』には、麻酔剤としてモルヒネあへん、カンナビノン、催眠剤として抱水クロラールクロロホルムといったものが挙げられる[50]。1955年ころまで、主に鎮静催眠剤が主であった[51]

1965年の第2回精神病理・精神療法学会シンポジウムでは、レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)やジアゼパム(セルシン)やLSDによる薬物精神療法が提唱された[52]。LSDによる精神分析の翻訳書も出版されている[53]。1964年の『精神科治療学集大成』では100-200ミリグラムとされた抗精神病薬の維持量は、1970年代に200-300ミリグラムの例が多くなり、1993年では平均1000ミリグラムを超えた[54]


厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームは診療ガイドラインの活用を提唱しており[55]2013年に「統合失調症に対する抗精神病薬多剤処方の是正に関するガイドライン」が公開された[56][57]

2016年には日本精神薬学会が発足し、多剤大量処方を改善するための「向精神薬減量ガイドライン」の策定を計画している[58]

違法なマーケティング

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この領域の薬の販売拡大は、違法なマーケティング活動によって支えられていた[59]

  • 2012年、グラクソ・スミスクライン、30億ドル(アメリカ合衆国)- パキシルについて、同社は子供への有効性を示すのに失敗したというデータにもかかわらずパキシルの子供や青年への適応外用途をうたった― 抗うつ薬のウェルブトリン(Wellbutrin)の、体重減少、物質乱用と性的機能不全を含む適応外用途のマーケティングのため。抗てんかん薬ラミクタールの適応外用途のマーケティング[60]
  • 2012年、ジョンソン・エンド・ジョンソン、15億ドルから20億ドル。リスパダールの子供や認知症の高齢者への、適応外用途のマーケティングによる。[59]
  • 2012年、アボット・ラボラトリーズ。15億ドル。デパコートを、同薬のその用途について有効という証拠がないにも関わらず、知的障患者の興奮や攻撃性に用いるための適応外用途のマーケティング[61]
  • 2009年、イーライリリー、14億ドル。ジプレキサの子供と高齢認知症患者に対する適応外用途のマーケティングによる。それらは統合失調症と双極性障害対する治療にしか認可されていない[62]
  • 2010年、アストラゼネカ、5.2億ドル。セロクエルの子供や高齢者への適用外用途のマーケティングによる[63]
  • 2009年、ファイザー、3.01億ドル。ジオドン(Geodon)の適用外用途のマーケティングによる[64]
  • 2007年、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、5.15億ドル。エビリファイの子供と青年、認知症を患う高齢患者に対する、適用外用途のマーケティングによる[65]
  • 2004年、ファイザー、4.3億ドル。ニューロンチンの適用外用途のマーケティングによる[66]

研究

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精神薬理学は、様々な類型の向精神特性を持つ物質を広範に研究している。薬理学と精神薬理学の専門および商業分野では、研究の中心は幻覚剤娯楽薬英語版ではなく、精神科の薬に関してである。両分野におけるすべての向精神薬に関する研究では、精神薬理学はその向精神作用と脳における化学的作用に着目する。こうした薬物を研究する医師は精神薬理学者であり、精神薬理学の分野における専門家である。 近年、幻覚剤の分野での研究が増えている;この種類の薬物が発見が近年であるか、またいずれにせよ精神医学的に有用性が認められるという事実によってである。

管理

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精神科の薬は処方箋医薬品であり、入手には精神科医や精神科正看護師(psychiatric nurse practitioner:PMHNP)のような、医師による処方箋が必要である。アメリカ合衆国その領土の一部では、心理学者のための処方権運動英語版の創出を受けて、医療心理学英語版に関する追加の専門教育と訓練を受けた臨床心理学者に、処方特権が与えられた[67]

向精神薬に関する条約のような国際条約が公布されており、乱用の危険性のため国際的な管理下にある薬は、覚醒剤ベンゾジアゼピン系薬やバルビツール酸系薬のような抗不安薬/睡眠薬幻覚剤大麻である。

処方権に対して、不十分な教育と、マーケティングによる強力な干渉が存在する。

マーケティングによる干渉

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アメリカ合衆国の製薬産業は、食品産業や自動車産業を抜き、最も広告費を使う産業に成長した[68]。アメリカでは、日常茶飯事となった適用外用途の使用を勧める、違法なマーケティングへの制裁が立て続けに起こり、それぞれが罰金の史上最高額を塗り替えている[59]

製薬会社が広告する試験の結果は、良い結果が出たものに限られる傾向がある[69]。2003年から2010年にかけて、否定的な研究が公開されない出版バイアスの問題が取り沙汰された。2004年8月に、グラクソスミスクライン抗うつ薬パロキセチン(商品名パキシル)の否定的な試験である、小児の自殺の危険性を高めるという試験結果を公表しなかったことなどによる裁判の結果、全試験結果を公表することで合意された[70]

2005年8月には、世界保健機関による国際的な臨床試験の登録制度であるICTRP(International Clinical Trials Registry Platform)の設立や、2007年FDA改正法(FDAAA)における登録の義務付け、同様に最初の被験者を募集する前に登録をするという、2008年の世界医師会によるヘルシンキ宣言改訂につながった[71]

ほかにも、出版バイアスを除外した有効性についてのメタアナリシスは、イギリスの診療ガイドラインに影響を与えた[72]英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年の改定されたうつ病に対する臨床ガイドラインは、軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)とした[73]

国連子どもの権利委員会は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している[74]

日本では、医薬情報担当者(MR)の数が増え続けてきた背景があり、企業は売り上げの9割以上を処方箋医薬品に頼っている[75]。そのためMRの接待による癒着が過剰を極め、交通費や宿泊費、飲食費を製薬会社が負担する会合に、高級クラブやゴルフ場での接待が行われるようになった[76]。しかし2012年4月には、国際的にも癒着に厳しくなった情勢に鑑み、また患者が被る不利益や、公的な医療制度に頼る医薬品制度であることから、厳しい自主規制の策定に乗り出した[76]

薬理学の不十分な知識

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同時に不十分な知識により患者は危険に晒される。

英国精神薬理学会(British Association for Psychopharmacology)関連の指導者層は、2011年にも、大抵の医師が精神薬理学について十分ではないかもしれない修習課程や独習または実地によっており、危険性/利益に基づき向精神薬を利用するためには、過剰投与と多剤投与、不十分なモニタなどに改善の余地があることを指摘している[77]

過剰投与と多剤投与に関しては、同じ種類の薬を2つ以上出し、それぞれが限度用量まで出されれば過量服薬になっていることが理解されていないということである[8]

2004年の日本精神神経学会でも、抗精神病薬の単剤療法が推奨されることについて言及している[78]。大量の抗精神病薬を投与し副作用が出るために副作用を抑える目的で、さらに抗パーキンソン病薬が用いられるような薬剤の投与方法は、日本において適正な投与方法が模索される以前の方法であり不適切である[7][79]ビペリデン(アキネトン、タスモリン)の添付文書には、このような副作用には無効で場合により悪化する旨が記載されている[80]

2008年には、過量服薬の危険性がある境界性人格障害のガイドラインが公開され、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避け処方するとしても数日から2週間程度とし、全体的にも抗うつ薬と抗精神病薬といった組み合わせは支持できず単剤療法を中心とすることが推奨されている[81]。2009年のNICEによる同疾患のガイドラインは、自殺企図や自殺念慮の強い傾向がある場合には薬物療法を用いず、もし用いるとしても相対的に安全な薬で1週間をめどにし、効果がなければ中止することを推奨している[82]

2009年には、日本うつ病学会が大量処方を避けるという一般的な指摘行い[83]、2012年にも単剤療法を原則とする旨のガイドラインを出している[84]

2010年には、精神科領域の4学会が合同で、しばしば過量服薬の原因になる医師による合理性のない不適切な多剤大量処方に対して注意喚起を行った[85]。さらに2012年には、医薬品医療機器総合機構は、気分安定薬により重篤な副作用が生じているため過量に投薬せず、監視を行う旨の注意喚起を行っている[86][87]

2012年にも日本うつ病学会の診療ガイドラインは、乱用の可能性があり、睡眠薬として自殺企図時に危険なバルビツール酸系薬の処方を避け、その他においても漫然と処方すべきではないとしている[84]。バルビツール酸系薬は、1950から1960年にかけて危険性が指摘されほかの薬剤にとってかわられた歴史があるのに関わらず[88]、日本において2010年にも不審死からのバルビツール酸系のベゲタミンの成分の検出が増加している[89]。 2013年には、厚生労働科学研究と日本睡眠学会によるガイドラインが公開され、睡眠薬として危険性の高いバルビツール酸系や多剤併用や漫然とした長期処方は避けることが推奨されている[90]

2013年7月には、認知症の特に周辺症状に対して、原則的にこれらの薬は用いないとするガイドラインが公開された[91]

2013年10月には、入院患者に多い証拠がないのにもかかわらず3剤以上用いられている抗精神病薬多剤を減薬するためのガイドラインが公開された[56]

薬物動態学

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薬理学における薬物動態学は、薬物の吸収、分布、代謝、排泄の経路における薬物の動態に関する学問である。医薬品の添付文書における「年齢によって適宜減量する」といったものや、「相互作用」の項目の併用禁忌および併用注意にずらずらと並んでいる医薬品がそれである。

向精神薬の代謝ではシトクロムP450という酵素の一群が関与しており、複数の薬物が摂取されていることで相互に、吸収が促進されたり阻害されたり、効果を強めたり弱めたりする薬物相互作用が生じる。

精神科の薬では、およそすべてにおいてアルコールに関する注意が書かれ、各薬剤は相互に併用注意である。医薬品のみに生じるものではなく、カフェインといったほかの薬物や、食品とでも生じる。これは、相互に作用を強めたり、あるいは弱めたりするということである。投与量から予想されるよりも多く吸収されたり、ある薬剤が他の薬剤の効果を減弱させていないかを理解するために必要な知識である。ある薬剤の利尿作用により、ほかの薬剤の排出が高まったために、さらに他の薬剤の吸収が促進され中毒症状を呈した。併用することで吸収の促進が予想されるため、投与量を半減する、といった判断を行うために必要である。

シトクロムP450に属するそれぞれの酵素は、3文字の数字とアルファベットで分類される。いくつかの例を挙げる。

2D6

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2D6は、三環系抗うつ薬やSSRIやフェノチアジン系の抗精神病薬の代謝に関与する。

3A4

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3A4ではベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系、三環系抗うつ薬、抗精神病薬、カルバマゼピンや、セントジョーンズワートなどがある。抗生物質や、麻酔薬、抗がん剤や、抗パーキンソン病薬、抗不整脈薬など代謝に関与する薬剤が多い。

1A2

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1A2は、三環系抗うつ薬や抗精神病薬やカフェイン、また抗生物質や経口避妊薬の代謝に関与する。

診療ガイドライン

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パニック障害に関する日本の2006年の診療ガイドラインは、SSRIを主とし、ベンゾジアゼピン系の薬剤が追加されていても4週間以上ではSSRI単剤との有効性と等しいため、ベンゾジアゼピン系の薬剤は依存の危険性からも推奨されていない[92]

心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する2006年の日本のガイドラインは、第一選択として抗うつ薬のSSRIを推奨し、ベンゾジアゼピン系の薬剤は推奨できないとしている[93]。2013年の世界保健機関のガイドラインは、PTSDに対するSSRIの投与は、トラウマに焦点を当てた認知行動療法やEMDRが失敗した時や、そうしたリソースを利用できない場合、あるいは、中等度以上のうつがみられる場合に考慮されるべきであり、最初の選択ではないとしている[94]。また、児童や青年のPTSDにおいては抗うつ薬は使用されるべきではない[95]。成人および児童に対する、急性外傷性ストレスに対して、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬は投与してはいけないとしている[96]。成人および児童に対して、ストレスの強い出来事のあった最初の1ヶ月に、不眠症に対してベンゾジアゼピンは投与されるべきではない[97]

摂食障害に関する日本の2012年のガイドラインは、SSRIによる短期間の根拠しかなく、従って、薬物療法は不十分であるため、薬物療法は補助と位置付けている[98]

有効性に関する根拠の質と出版バイアスの問題

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有効性については、根拠に基づく医療(EBM)において、客観性の強いランダム化比較試験(RCT)の根拠の質が高いとみなされる。さらに複数のランダム化比較試験のデータを結合し分析するメタアナリシスが最も強い根拠である。個々のランダム化比較試験では、バイアス(偏り)がある可能性が残るためである。とりわけ、否定的な結果が出た場合に公開されないという出版バイアスが問題となっている[99]。(#マーケティングによる干渉節も参照。)

出版バイアスを軽減する方法の一つに、情報公開法に基づいて、各国の規制機関から薬の認可のために提出された全データを入手し分析する手法がある[100]。 たとえば、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得るためには、2つの肯定的な結果が出た試験が必要なだけで、有効性が示されるまで臨床試験の数をこなし、薬は承認されているが否定的な結果が出た試験は提出されたまま公開されていないため、情報公開法に基づいてこれらのデータを結合してメタアナリシスを行うと否定的な結果が示されることもある[101]。つまり、本質的に薬を認可するための臨床試験そのものが、結果の良い試験だけの公開につながるというバイアスの下地となるわけである。

また、メタアナリシス欧州で用いられる傾向があり、アメリカでは試験結果を結合してデータの分母を大きくするという形ではなく、強い資金力により大規模な試験そのものを行う傾向がある[102]。つまり、以下のような違いである。アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)が出資した研究に、非常に大規模なランダム化比較試験があるのはそのためである。イギリスのコクラン共同計画は、定期的に各主題ごとのメタアナリシスを行い、システマティック・レビューとして公開している。

またさらに、ほとんど有効性の差が分からないような場合、試験に参加する患者数である分母を大きくすることでわずかながらの有効性の差が統計的に判明することになる[103]。有効性の差が見出しにくい医薬品の認可を得るために、このような大規模な試験を行うことが高額な薬の開発費用につながり、研究資金の問題から研究開発の停滞につながっていった[103]

有効性

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うつ病に対する抗うつ薬や、非定型抗精神病薬の有効性についての出版バイアスを除外したメタアナリシスは、共に偽薬に対する効果量(effect size)が0.32であり、英国国立医療技術評価機構(NICE)が臨床的に偽薬に対して意味のある効果があることを示す0.50を下回っていることが見出されている[104][105]コクラン共同計画が行ったシステマティック・レビューは、副作用を持つ偽薬(活性プラセボ)と抗うつ薬との間に有効性の違いがないことを見出している[106]アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)が出資したうつ病に対する投薬治療の研究であるSTAR*D計画を通し、NIMH所長のトーマス・インセルは、仮に効果の多くが偽薬効果だとしても、14週後にうつ病の症状がみられない寛解の比率は最善で約28%、1年後の寛解率は約70%であり不十分であると述べている[107]。残りは4回薬を変更し寛解に達しなかったということである。また寛解に達した後に再発したものを除外した数字ではなく、一度寛解に達した比率である。インセルによれば抗うつ薬は、古い第一世代でも新しい第二世代でも反応が遅く反応する比率が低い[37]

また、抗うつ薬を増量するほどに効果が高まるわけではない。

17種類の抗うつ薬のイミプラミン等価換算での有効性の比較(PMID 10533547より作成)[108]
投与量 偽薬群 100mgまで 200mgまで 250mgまで 250mg以上
改善率 34.8% 46.0% 53.3% 46.3% 48.3%
有害事象発現率 1倍 1倍 1.5倍 1.63倍 2.18倍

NIMHが出資し、統合失調症に対して、複数の種類の抗精神病薬が1493人にランダムに割り付けられた研究において、18カ月後、74%が効果不十分や副作用が原因で服薬を中止しており、古い定型の抗精神病薬と、新世代の非定型の抗精神病薬の有効性は同等で、非定型の抗精神病薬は体重増加のような代謝異常に関連していることが見出された[109]。インセルによれば、4つのこのような大規模比較試験から、抗精神病薬の新しい世代のものは、古い第一世代のものを上回ることを見いだせていない[37]。非定型の抗精神病薬は、大脳辺縁系に集中して作用するために錐体外路症状が少ないとされていたが、そのような特性は観察されていない[110]。有効性が似ているにもかかわらず第二世代の抗精神病薬がのほうが良好だと感じられる理由について、この抗精神病薬の世代交代期に適切な投与量で投与されるようになったことがあげられる[111][112]。しかしながら、代謝異常の副作用は第二世代の非定型抗精神病薬のほうが多い[113]

抗精神病薬も増量するほど効果が高まるわけではない。観察から、抗精神病薬の反応がみられる受容体占有率は65%であり、副作用の可能性が高まるのは高プロラクチン血症では72%、錐体外路症状は78%以上である[114]。統合失調症に対して、リスペリドン(リスパダール)の最適量はそれ以上では副作用の発現率のみが上昇するため1日4mgである[115]。同様にクエチアピン(セロクエル)では1日300mg[116]、オランザピン(ジプレキサ)では1日10mg[117]である。

双極性障害に対して、アメリカでNIMHが出資し4,361人の双極性障害の患者に対する大規模な試験であるSTEP-BD計画が実施され2005年に終結した[118]。その一部を対象とした1年後の追跡調査で、躁やうつの気分エピソードがなかったの23%で、1つ以上の気分エピソードは45%(782人)で、32%(551人)が脱落していた[119]。2年間の追跡では、いったん回復の定義を満たした全体の58.4%のうち、約半分の48.5%が再発した[120]。つまり、回復を満たさなかったのは71%である。インセルによれば、双極性障害に対する治療は特に課題で、多くの人にとって気分の変動を抑制する薬がない[37]

2012年にもインセルは、精神薬理学の黄金時代を振り返って医薬品の売上とは裏腹に、うつ病、統合失調症、双極性障害などの一般的な障害を含む重篤な精神障害を有する人々の疾患の罹患率や死亡率が減少していないことを報告している[121]

心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対してとりわけアメリカで問題になっている戦争帰還兵のPTSDにおいて、ベンゾジアゼピン系精神安定剤の使用は、ストレス症状を強め依存症につながる可能性があるため使用を推奨しないための強い証拠があり、非定型抗精神病薬の使用も使用を推奨できないことが強調されている[122]。この根拠として、2012年のアメリカの不安障害協会の年次会議において、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の使用は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対し視床下部-下垂体-副腎系(HPA)軸を抑制するためストレス症状を増大させ、また、恐怖反応はGABA作動性の扁桃体機能を介して消失されるが、このような学習や記憶を無効にするために悪影響であることが報告されている[123][124]。さらにいえば、疲労と睡眠不足のために兵士に出される覚醒剤のメチルフェニデート(リタリン)やデキストロアンフェタミン(アデロール)がアドレナリン類の放出を高めることによって、戦闘時の外傷体験の記憶形成が強化され、兵士の心的外傷後ストレス障害の発生率が高まっているのではないかとも推測されている[125]

摂食障害に対して、2012年には『摂食障害国際ジャーナル』誌(International Journal of Eating Disorders)において、いかなる薬物治療の利益も示されていないが半数以上が投薬されていることを報告している[126]

不眠症に対して、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の有効性を評価するために、出版バイアスを除外してメタアナリシスを行ったが、偽薬でも睡眠薬の半分の効果が見られ、睡眠の問題も十分に改善しないことが見出された[100]。さらにベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では、睡眠作用に対して速やかに耐性が生じるため、同量では効果がなくなっていくのみである。離脱症状は治療用量でも生じるが、とりわけ長期間か高用量の使用の場合であり、そうして服用の中止が困難になれば薬物依存症の診断基準を満たす[127]。さらにベンゾジアゼピン系[128][129]、非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)[130]でも抑うつ症状を増加させることが見出されている。

小児

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うつ病に対する抗うつ薬に関しては、2013年にエスシタロプラム(レクサプロ)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、ミルタザピン(レメロン)フルボキサミン(ルボックス)、ミルナシプラン(トレドミン)において、小児のうつ病には有効性が確認されなかったとの海外の試験結果があるため、18歳未満では慎重投与の旨が添付文書に記載された[131]グラクソスミスクライン社のパロキセチン(パキシル)については、以前から記載されており[131]、添付文書の警告枠の中に、有効性が確認できないことと自殺の危険性が高くなっていることが確認されている旨が記載されている。

早期発症統合失調症の患者116人に対して、抗精神病薬をランダムに割り付けした二重盲検試験で、副作用や効果不十分などの脱落により1年後に服薬を維持できていたのは9人であり、優れた効能は実証されず、全員に代謝異常の副作用があった[132]

アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)が出資し、注意欠陥多動性障害(ADHD)の7歳から9歳の600人近い子供を追跡した大規模な研究であるMTA研究が実施された。結果は、投薬治療は、3年後の追跡調査では予後の不良に結び付けられており[133]、8年後でも投薬の恩恵は見いだせなかった[134]

高齢者

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認知症に対する非定型抗精神病薬の使用により、死亡率が1.6-1.7倍に高まっているため、2005年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が警告を行った[135]。その後、このような使用を促進した販売促進活動に対して、各製薬会社はアメリカ司法省により記録的な罰金が科された。(#違法なマーケティング節を参照)

不眠症の高齢者に対する睡眠薬(ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン)の試験をメタアナリシスしたところ、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系では、睡眠の質および、認知機能や転倒や交通事故を含む有害事象において有意な違いはなく、睡眠を改善する効果は小さいので、有害事象の多さは利益を正当化しない可能性があることが示唆されている[136]。このメタアナリシスでは、推奨されないバルビツール酸や抱水クロラールは除外されている。

心理療法

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認知行動療法は、薬を使わずに多様な精神障害に対応する心理療法のひとつで有効性の広く評価されている。根本的曝露療法 (Basal exposure therapy) は、重症あるいは精神障害が並存している人々に向けて開発され、薬の使用量の減少、機能の全体的評定尺度 (GAF) の向上がみられ[137][138]、平均5.3年後の追跡調査では、完全に回復していた人々に薬の使用はなく、薬を使用していなかった人々のほうがGAFと雇用状態がよかった[137]

有害作用と離脱症状

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精神科の薬は頻繁に副作用を生じ、それ自体が薬についてのトラウマ[139]となり服薬コンプライアンスを弱める。副作用の一部は抗コリン薬(抗ムスカリン薬)のような補助薬品を用いて対症的に治療が可能である。一部のリバウンド離脱の副作用には、精神病性の急激なあるいは重度の出現か再発が含まれ、服薬を一気に中止する場合に出現する可能性がある。[140]

抗精神病薬には非常にまれに、40度以上の高熱が続き危険な状態になる悪性症候群の可能性がある。

依存症と離脱症状

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ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の離脱症状や[141]、抗うつ薬や抗精神病薬の離脱症状はアルコールの離脱症状のように2-3週間でおさまるものではなく長期間におよぶ[142]。つまり遷延性離脱症候群を引き起こす可能性がある。

抗うつ薬や抗精神病薬や気分安定薬は、またバルビツール酸系やベンゾジアゼピン系の抗不安薬/睡眠薬は、離脱時に身体症状を引き起こす身体的依存の可能性がある。抗精神病薬の大量投与により生じる副作用に対して処方される抗コリン性の抗パーキンソン病薬もまた、身体症状や不安、不眠などを含むコリン作動性リバウンド症候群を生じるため、慎重な減薬が必要である[79][143]。覚醒剤には身体的依存はなく、渇望のような精神的依存のみである。

乱用薬物に分類される薬物の中でも、離脱に入院を要し致命的となる可能性があるものは、ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系の鎮静催眠薬およびアルコールのみである[10]。これらの薬物からの離脱の際には、入院デトックスを要するような危険な発作や振戦せん妄(DT)の兆候である頻脈、発汗、手の震えや不安の増加、精神運動性激越、吐き気や嘔吐、一過性の知覚障害の評価が必要である。

世界保健機関は、抗うつ薬のSSRIによるSSRI離脱症候群の報告よりも少ないが、SSRIに対する依存症の報告があることを記しており、またさらに研究者が中断症候群のような用語を用い依存症との関連付けを避けていることも指摘されている[144]

医師でさえ十分な知識を持ち合わせていない場合は多く、離脱症状について知らなかったり、離脱症状が考慮されなかったり、急激な離脱により離脱症状が強く出る場合がある[145][13]。依存症の危険性がある薬物なので、深刻になれば複数の医療機関から医薬品を得るようになる可能性がある[146]。しかしながら依存症の危険性についても医師が知らない場合があることが報告されている[147]。処方薬による依存症についての情報提供がなかったり、激しい離脱が生じたことによる訴訟が増加している[148]

2012年6月にも、ほとんどの医療専門家が依存症を診断し治療するための十分な訓練は受けておらず、科学と実践との間に隔たりがあることが示されている[14]。つまり、この依存症や離脱の理解および実践において非科学的である場合が多いということである。プライマリ・ケア医の94%もが、アルコール依存症の診断に失敗する[149]。いかなるサプリメントにおいても離脱の助けになることを証明する根拠は存在していない[150]

日本の依存症回復施設において、診療所で処方された鎮静/睡眠薬に対する薬物関連障害(依存症)の数が、覚醒剤に次いで2位までになっている[151]。これらの依存症者の大半は犯罪歴のない女性である[151]

アルコールや違法薬物の依存症回復施設では急速な離脱やルールを強いて、精神科の薬の依存症に適していない、つまり科学的根拠に基づいていない場合がある[152]。多くの薬物において、急速な離脱は推奨されておらず、薬物依存症の治療が科学的根拠に基づいていないだけである[153]

減薬

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多剤大量処方の減薬を行っているセカンドオピニオン医によれば、とりわけ2剤以上の変更は副作用が生じた場合に原因の薬剤を特定するのが困難になるため、悪性症候群のような場合を除き推奨されない[154]。減薬は一度に1剤ずつ、それを一度に10%ごとなど徐々に行うことが推奨される[143]。はじめに依存症が急速に生じる可能性のある抗不安薬/睡眠薬が優先され、これも長時間作用型のものに置換してから徐々に減薬する[154]抗パーキンソン病薬は、抗精神病薬を減薬した後に慎重に減薬する必要がある[154]

ベンゾジアゼピン系薬、バルビツール酸系薬、アルコールの離脱に抗精神病薬の使用は推奨できずアリピプラゾール、クエチアピン、リスペンドン、ジプラシドンのような非定型抗精神病薬あるいは、クロルプロマジンのような効果の弱いフェノチアジンは、発作閾値を低下させ離脱症状を悪化させる[155]

他害行為

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アメリカ食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータから殺人や暴力など他害行為の報告を調査し[156]、484つの医薬品に絞られ、それらの79%を31つの薬が占めた。多くは精神科の薬であり、最も他害行為の傾向が強いものは禁煙薬のバレニクリン(チャンピックス)で18倍、抗うつ薬全体では8.4倍でその種類ではSSRIやSNRIが多く、SSRIのフルオキセチン(プロザック)で10.9倍、パロキセチン(パキシル)10.3倍であった。バレニクリン、フルオキセチン、パロキセチンに続くものは、注意欠陥多動性薬の精神刺激薬類であるアンフェタミン(アデロール)9.6倍、アトモキセチン(ストラテラ)9.0倍であった。睡眠薬では、短時間作用型のものに他害行為の傾向が強く、トリアゾラム8.7倍(ハルシオン、ベンゾジアゼピン系)、ゾルピデム6.7倍(マイスリー、非ベンゾジアゼピン系)、エスゾピクロン4.9倍(ルネスタ、非ベンゾジアゼピン系)であった。ほかの多くは5倍を下回る。なお、アメリカで認可されている医薬品についてである。

種類

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精神科の薬は主に6つに分類される。

幻覚剤(Hallucinogens)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている。

抗精神病薬

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抗精神病薬(Antipsychotic)は、精神病性障害や統合失調症に起因するような、精神病の様々な症状の治療に用いられる薬である[157]。抗精神病薬はまた、精神病症状がない双極性障害の治療において気分安定薬(mood stabilizer)としても用いられる[158]。抗精神病薬は、時に従来の呼称である神経弛緩薬(neuroleptic drug)と呼ばれ、一部の抗精神病薬は「メジャートランキライザー」に区分される。

抗精神病薬には2つの部類がある:定型抗精神病薬非定型抗精神病薬。ほとんどの抗精神病薬は、処方箋によってのみ入手できる。

一般的な抗精神病薬:[159]

定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬

抗うつ薬

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抗うつ薬(Antidepressant)はうつ病の治療に用いられ、また頻繁に不安などのほかの障害にも用いられる。たいていの抗うつ薬には、セロトニンノルアドレナリン、また両方の異化を抑制する作用がある。こうした薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれ、うつが体験される域までの減退から神経伝達物質を積極的に阻害する[要出典]。SSRIやSNRIが顕著に効果を発揮するまでに2-5週間を要する:脳がセロトニンの氾濫を処理しようとし、自己受容体英語版の感受性を下方制御することで反応するのに長くて5週間かかるためである。セロトニンを「制限」する代わりに自己受容体を塞ぐBi-functional SSRIは現在研究中である。別の種類の抗うつ薬はモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)であり、セロトニンとセロトニンとノルアドレナリンを分解する酵素であるMAOの作用を阻害するとされている。MAOIは主に、三環系抗うつ薬やSSRIがうつ病を予防および改善できない場合にのみ用いられる。MAOIは日本ではその激しい副作用と厳しい食事制限のため、現在パーキンソン病の治療薬としてしか認可されていない。日本では抗うつ薬として認可されていない。

一般的な抗うつ薬:[160][出典無効]

幻覚剤

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幻覚剤(Hallucinogenあるいはpsychedelics)は、従来、精神科の薬に用いられており、現在いくつかの用途で再評価されている[162]。現在違法化されている薬物でも、過去に心理療法に際して研究された国では、違法にこれらの薬物を用いた心理療法が継続されている例がある[163]。また、一般的なイメージとは反対に、幻覚剤は、現行の薬による一時的な処置に過ぎないか、あるいは徐々に悪化していく精神障害を治癒する可能性を示している。難治性あるいは治療抵抗性のうつ病や心的外傷後ストレス障害に対して、投与後の持続的な効果が示唆されている[121][164]幻覚剤には離脱症状はなく大麻の離脱症状はまれであり[165]大麻からの離脱は入院を要さない[10]。MDMAには依存性はないが、使用後の疲労感といった覚醒剤の使用後に生じるような症状が生じる可能性がある[166]

治療研究が行われている幻覚剤を挙げる:

気分安定薬

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気分安定薬(Mood stabilizers)は、1949年にオーストラリア人のジョン・ケイドが、躁病を管理する作用があることを発見して以来普及した。アメリカ食品医薬品局によって認可された初の気分安定薬で、現在一般的な薬になっている炭酸リチウムを主流の治療に取り入れた。多くの抗精神病薬は選択薬として気分安定薬の目的で用いられる。多くの気分安定薬は抗てんかん薬に属する。気分安定薬の作用機序については、解明も理解も十分ではない。

一般的な気分安定薬:[要出典]

  • 炭酸リチウム(リーマス)、初の定型の気分安定薬。
  • カルバマゼピン(テグレトール)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
  • オクスカルバゼピン(Trileptal)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
  • バルプロ酸、およびバルプロ酸ナトリウム (デパケン、デパコート、セレニカ)、抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
  • ラモトリギン(ラミクタール)、非定型の抗てんかん薬ならびに気分安定薬。
  • ガバペンチン(ガバペン)、非定型のGABA関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
  • プレガバリン、非定型のGABA系抗てんかん薬ならびに気分安定薬
  • トピラマート、GABA受容体関連抗てんかん薬ならびに気分安定薬
  • オランザピン、非定形の抗精神病薬ならびに気分安定薬

精神刺激薬

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精神刺激薬(Stimulant)は今日、最も広く処方される薬の一部である。一般に覚醒剤と呼ばれることもある[171]。これらは総じて中枢神経系を刺激する薬である。アデロール英語版アンフェタミン塩に属し、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に頻繁に処方される薬である。 覚せい剤は依存症の可能性があるため、したがって薬物乱用の既往歴がある患者は通常は注意深く観察するか、使用を禁じて代わりのものを与える。用量を漸減せず投薬をいきなり中断した場合、不安や薬物への渇望のような心理的な離脱症状の原因となる。大部分の覚せい剤には身体的依存はない。

一般的な精神刺激薬:

抗不安薬と睡眠薬

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ベンゾジアゼピン系は、睡眠薬抗不安薬、抗てんかん薬、筋弛緩剤と健忘剤として、短期間―4週間まで―の治療に有効である[172]。これらは過剰投与した場合の危険性や毒性のより少ない傾向のために、バルビツール酸系から広く置き換えられた。しかし、ベンゾジアゼピン系はさらに非ベンゾジアゼピン系Z薬)に置き換えられた。バルビツール酸系の薬は治療指数が低く、過量服薬の危険性を考慮すると使用は推奨されない[173]

1960年代、当初は治療用量では依存性がないと考えられていた。しかし現在では、大部分の使用者にバルビツール酸やアルコール離脱[174]と同様の離脱症状を生じさせることが知られており、使用者の約15%に数カ月から数年の間にわたって重度の離脱症状を持続させる可能性がある[175]

一般的なベンゾジアゼピン系と誘導体を挙げる:

関連項目

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  • 精神医学
  • 漢方薬 - 作用機序は明確でないものの、漢方にも精神障害の治療に使えるものが存在する。

脚注

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注釈

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出典

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参考文献

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国際機関
その他

外部リンク

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