「ベリリウム」の版間の差分
m編集の要約なし |
en:Beryllium22:57, 5 October 2011(UTC)よりNuclear properties, Isotopes and nucleosynthesis, Nuclear applicationsを翻訳 タグ: サイズの大幅な増減 |
||
(8人の利用者による、間の14版が非表示) | |||
101行目: | 101行目: | ||
|CAS number=7440-41-7 |
|CAS number=7440-41-7 |
||
|isotopes= |
|isotopes= |
||
{{Elementbox_isotopes_decay | mn=7 | sym=Be |
{{Elementbox_isotopes_decay | mn=[[ベリリウム7|7]] | sym=Be |
||
| na=[[微量放射性同位体|trace]] | hl=[[1 E6 s|53.12 d]] |
|||
| dm=[[電子捕獲|ε]]/[[ガンマ崩壊|γ]] | de=0.862, 0.477 | pn=[[リチウム7|7]] | ps=[[リチウム|Li]]}} |
|||
{{Elementbox_isotopes_stable | mn=9 | sym=Be | na='''100 %''' | n=5}} |
{{Elementbox_isotopes_stable | mn=[[ベリリウム9|9]] | sym=Be | na='''100 %''' | n=5}} |
||
{{Elementbox_isotopes_decay | mn=10 | sym=Be |
{{Elementbox_isotopes_decay | mn=[[ベリリウム10|10]] | sym=Be |
||
| na=[[微量放射性同位体|trace]] | hl=[[1 E13 s|1.51×10<sup>6</sup> y]] |
|||
| dm=[[ベータ崩壊|β<sup>-</sup>]] | de=0.556 | pn=[[ホウ素10|10]] | ps=[[ホウ素|B]]}} |
|||
}} |
}} |
||
'''ベリリウム''' ({{lang-en-short|beryllium}}) は[[原子番号]]4の[[元素]] |
'''ベリリウム''' ({{lang-lan-short|beryllium}}<ref>http://www.encyclo.co.uk/webster/B/40</ref>, {{lang-en-short|beryllium}}) は[[原子番号]]4の[[元素]]。[[元素記号]]は '''Be'''。[[第2族元素]]に属し、[[原子量]]は約9.012である。常温、常圧で安定した[[結晶]]は[[六方最密充填構造]] (HCP) である。比重は1.85、[[融点]]は1300 {{℃}}ほどで、[[沸点]]は2970 {{℃}}である。銀白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在できる。[[モース硬度]]は6から7を示し、硬く、常温では脆いが、高温になると[[展延性]]が増す。[[酸]]にも[[アルカリ]]にも溶ける。 |
||
== 性質 == |
|||
=== 物理的性質 === |
|||
ベリリウムは[[ヤング率]]287 GPaと非常に強い{{仮リンク|曲げ強さ|en|Flexural rigidity}}を有しており、融点も1287 {{℃}}と高い。ベリリウムの[[弾性率]]は鋼より大きく、およそ50 %である。この弾性率の大きさと、ベリリウムが比較的低密度であるという物性が組み合わさることにより、周囲の状況に応じておよそ12.9 km/sという著しく高い音の伝導性を示す。ベリリウムの他の重要な特性としては、1925 J・kg<sup>−1</sup>・K<sup>−1</sup>という高い[[比熱]]および、216 W・m<sup>−1</sup>・K<sup>−1</sup>という高い[[熱伝導率]]が挙げられ、これらの物性によってベリリウムは単位重量当たりの放熱物性に最も優れた金属である。またこれらの物性は、11.4×10<sup>−6</sup> K<sup>−1</sup>と比較的低い線形[[熱膨張率]]とも相まって、熱負荷の大きな状況下における非常に高い安定性をもたらしている<ref name=Be>{{citation| title = Landolt-Börnstein – Group VIII Advanced Materials and Technologies: Powder Metallurgy Data. Refractory, Hard and Intermetallic Materials| chapter = 11 Beryllium|volume = 2A1| doi = 10.1007/10689123_36| isbn = 978-3-540-42942-5| pages = 1–11| editor=Beiss, P. |author=Behrens, V.|year = 2003| publisher = Springer| location = Berlin}}</ref>。 |
|||
=== 化学的性質 === |
|||
ベリリウムは[[イオン化傾向]]において[[アルミニウム]]の上に位置しているため、大きな化学活性が期待されるが、実際には表面に酸化被膜を形成して不動態化するため、赤熱した状態でさえも空気や水と反応しない。しかしながら、一旦点火すれば輝きながら燃焼して[[酸化ベリリウム]]と[[窒化ベリリウム]]の混合物が形成される<ref name=Greenwood>{{citation|author=N. N. Greenwood, A. Earnshaw|year=1997|title=Chemistry of the Elements|edition=2nd ed.|publisher=Elsevier Science Ltd (Butterworth-Heinemann)|location=Oxford|isbn=0080379419}}</ref>。 |
|||
ベリリウムは通常、表面に酸化被膜を形成しているため酸に対しての強い耐性を示すが、純粋なベリリウムでは[[塩酸]]や希[[硫酸]]のような酸化力を持たない酸に対しては容易に溶解する。[[硝酸]]のような酸化力を有する酸に対する溶解速度は非常に遅い。また、強アルカリに対してはベリリウム酸イオン (Be(OH)<sub>4</sub><sup>2-</sup>)を形成して水素ガスを発生させながら溶解する。このような酸やアルカリに対する性質はアルミニウムと類似している<ref name=CW271>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 271頁。</ref>。 |
|||
[[File:Elektronskal 4.png|left|thumb|150px|ベリリウムの[[電子殻]]]] |
|||
ベリリウム原子の[[電子配置]]は[He] 2s<sup>2</sup>である。ベリリウムはその原子半径の小ささに対してイオン化エネルギーが大きいため電荷を完全に分離することは難しく、そのためベリリウムの化合物は共有結合性を有している<ref name=CW269>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 269頁。</ref>。[[第2周期元素]]は原子量が大きくなるにしたがって[[イオン化エネルギー]]も増大する法則が見られるがベリリウムはその法則から外れており、より原子量の大きな[[ホウ素]]よりもイオン化エネルギーが大きい。これは、ベリリウムの最外殻電子が2s軌道上にあり、ホウ素の最外殻電子は2p軌道上にあることに起因している。2p軌道の電子は内殻に存在するs軌道の電子によって遮蔽効果を受けるため、2p軌道に存在する最外殻電子のイオン化エネルギーが低下する。一方で2s軌道の電子は遮蔽効果を受けないため、相対的に2p軌道の電子よりもイオン化エネルギーが大きくなり、これによってベリリウムとホウ素の間でイオン化エネルギーの大きさの逆転が生じる<ref>{{cite book|和書|title=物理化学II: 量子化学編|author=伊藤和明|year=2008|series=理工系基礎レクチャー|publisher=化学同人|page=112|isbn=4759810854}}</ref>。 |
|||
ベリリウムは例えばアクアイオン (Be[(H<sub>2</sub>O)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup>)やテトラハロベリリウム (BeX<sub>4</sub><sup>2-</sup>)のように、多くの場合4配位を取る<ref name=CW269/>。この性質は配位子として[[エチレンジアミン四酢酸|EDTA]]を用いた分析技術に利用される。EDTAは優先してベリリウムとの間で[[八面体形]]の錯体を形成するため、例えば、ベリリウムのアセチルアセトナト錯体からベリリウムを[[溶媒抽出]]することができる。このようなEDTAを用いた錯体形成においてはAl<sup>3+</sup>のような他の陽イオンの妨害を受けることがある<ref>{{citation|title=Determination of a trace amount of beryllium in water samples by graphite furnace atomic absorption spectrometry after preconcentration and separation as a beryllium-acetylacetonate complex on activated carbon|author=Okutani, T.; Tsuruta, Y.; Sakuragawa, A. |journal=Anal. Chem.|year=1993|volume=65|pages=1273–1276|doi=10.1021/ac00057a026|issue=9}}</ref>。 |
|||
[[File:Beryllium sulfate 4 hydrate.jpg|left|thumb|150px|硫酸ベリリウム]] |
|||
[[硫酸ベリリウム]]や[[硝酸ベリリウム]]のようなベリリウム塩の溶液はBe[(H<sub>2</sub>O)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup>イオンの[[加水分解]]によって酸性を示す。 |
|||
:[Be(H<sub>2</sub>O)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup> + H<sub>2</sub>O {{eqm}} [Be(H<sub>2</sub>O)<sub>3</sub>(OH)]<sup>+</sup> + H<sub>3</sub>O<sup>+</sup> |
|||
加水分解による他の生成物には、3量体イオン[Be<sub>3</sub>(OH)<sub>3</sub>(H<sub>2</sub>O)<sub>6</sub>]<sup>3+</sup>が含まれる。 |
|||
ベリリウムは多くの[[非金属]]原子と[[二元化合物]]を形成する。無水ハロゲン化物としては、[[フッ素]]、[[塩素]]、[[臭素]]、[[ヨウ素]]との化合物が知られており、固体状態においては橋掛け結合によって重合している<ref name=CW269/>。[[フッ化ベリリウム]] (BeF<sub>2</sub>)は、[[二酸化ケイ素]]のような角を共有したBeF<sub>4</sub>の四面体構造を取り、ガラス状においては無秩序な直鎖構造を取る<ref name=CW272>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 272頁。</ref>。[[塩化ベリリウム]]および[[臭化ベリリウム]]は両端を共有した直鎖状の構造を取る。全てのハロゲン化ベリリウムは、気層においては線形のモノマー分子構造を取る<ref name=CW269/><ref name = "Greenwood"/>。 |
|||
酸化ベリリウムは[[ウルツ鉱型構造]]を取る耐火性の白色結晶であり、金属と同じぐらい高い熱伝導率を有する。酸化ベリリウムは2種類の多形が存在し、低温型の酸化ベリリウムは熱したアルカリ溶液などに溶解するが、高温では相転移してより安定な構造となり濃硫酸に[[硫酸アンモニウム]]を加えた熱シロップのみにしか溶解しなくなる<ref name=CW271/>。他のベリリウムと[[第16族元素]]との化合物は[[硫化ベリリウム]]や[[セレン化ベリリウム]]、[[テルル化ベリリウム]]が知られており、それらは全て[[閃亜鉛鉱型構造]]を取る<ref name = "Wiberg&Holleman">{{citation|author=Wiberg, Egon; Holleman, Arnold Frederick|year=2001|title=Inorganic Chemistry|publisher=Elsevier|isbn=0123526515}}</ref>。[[水酸化ベリリウム]]は[[両性 (化学)|両性]]を示し<ref name=CW271/>、その酸性水溶液が他のベリリウム塩を合成する出発原料とされる<ref name = "Greenwood"/>。 |
|||
[[窒化ベリリウム]] (Be<sub>3</sub>N<sub>2</sub>)は非常に加水分解をしやすい、高融点な化合物である。[[アジ化ベリリウム]] (BeN<sub>6</sub>)および[[リン化ベリリウム]] (Be<sub>3</sub>P<sub>2</sub>)は窒化ベリリウムと類似した構造を有していることが知られている。塩基性硝酸ベリリウムおよび塩基性[[酢酸ベリリウム]]は4つのベリリウム原子が中心の酸素イオンに配位した四面体構造を取る<ref name = "Wiberg&Holleman"/>。Be<sub>5</sub>B、Be<sub>4</sub>B、Be<sub>2</sub>B、BeB<sub>2</sub>、BeB<sub>6</sub>、BeB<sub>12</sub>のようないくつかの[[ホウ素化ベリリウム]]も知られている。[[炭化ベリリウム]] (Be<sub>2</sub>C)は耐火性のレンガ色をした化合物であり、水と反応して[[メタン]]を発生させる<ref name = "Wiberg&Holleman"/>。ケイ素化ベリリウムは同定されていない<ref name = "Greenwood"/>。 |
|||
=== 核的性質 === |
|||
ベリリウムは、高エネルギーな[[中性子線]]に対して広い[[反応断面積|散乱断面積]]を有しており、その散乱断面積は0.01 [[電子ボルト|eV]]を上回るものに対しておよそ6 [[バーン (単位)|バーン]]である。散乱断面積の正確な値はベリリウムの結晶サイズや純度に強く依存するため、実際の散乱断面積は1桁ほど低くなる。したがって、ベリリウムは0.03 eV以下のエネルギー範囲の中性子線を効果的に減速させることができる。ベリリウムの主な同位体である<sup>9</sup>Beは(n, 2n)中性子反応によって1つの中性子を消費して2つの中性子を放出し、2つのアルファ粒子に分裂する。したがって、ベリリウムは中性子反応によって消費する中性子よりも多くの中性子を放出するため中性子を増加させる。 |
|||
:{{Nuclide|Beryllium|9}} + n → 2({{Nuclide|Helium|4}}) + 2n<ref name ="BeMelurgy"/> |
|||
金属としてのベリリウムは大部分のX線および[[ガンマ線]]を透過するため、X線管などのX線装置におけるX線の出力窓として有用である。ベリリウムはまた、ベリリウムの原子核と高速の[[アルファ粒子]]との衝突によって中性子線を放出するため、実験における比較的少数の中性子線を得るための良好な中性子線源である<ref name=Be/>。 |
|||
:{{Nuclide|Beryllium|9}} + {{Nuclide|Helium|4}} → {{Nuclide|Carbon|12}} + n<ref name ="BeMelurgy">{{Cite book| url = http://books.google.com/?id=FCnUN45cL1cC&pg=PA239|page = 239|chapter = Nuclear Properties|title = Beryllium its Metallurgy and Properties|publisher = University of California Press|first = Henry H|last = Hausner}}</ref>。 |
|||
=== 同位体および元素合成 === |
|||
[[File:Solar Activity Proxies.png|thumb|300px|太陽活動の変化による<sup>10</sup>Be濃度変化のプロット。<sup>10</sup>Be濃度を示す左側の縦軸は上に行くほど値が小さくなっていることに注意。]] |
|||
ベリリウムの安定同位体は<sup>9</sup>Beのみであり、したがってベリリウムは{{仮リンク|モノアイソトピック元素|en|Monoisotopic element}}である。<sup>10</sup>Beは、[[地球の大気]]に含まれる[[酸素]]および[[窒素]]が[[宇宙線による核破砕]]を受けることで生成される。宇宙線による核破砕によって生成したベリリウム同位体の大気中の滞在時間は成層圏で1年程度、対流圏で1か月程度とされており、その後は地表面に蓄積する。<sup>10</sup>Beは[[ベータ崩壊]]によって<sup>10</sup>[[ホウ素|B]]になるものの、その136万年という比較的長い[[半減期]]のために<sup>10</sup>Beとして地表面に長期間滞留し続ける。そのため、<sup>10</sup>Beおよびその娘核種は、自然界における土壌の[[侵食]]や形成、[[ラテライト]]の発達などを調査するのに利用される<ref>{{cite web |url=http://www.sahra.arizona.edu/programs/isotopes/beryllium.html |title=Beryllium: Isotopes and Hydrology |author= |date= |work= |publisher=University of Arizona, Tucson |accessdate=10 April 2011}}</ref>。また、太陽の磁気的活動が活発化すると[[太陽風]]が増大し、その期間は太陽風の影響によって地球に到達する[[銀河宇宙線]]が減少するため、銀河宇宙線によって生成される<sup>10</sup>Beの生成量は太陽活動の活発さに反比例して減少する。したがって<sup>10</sup>Beは、同様に宇宙線によって生成される<sup>14</sup>C([[炭素14]])と共に太陽活動の変動を記録しているため、極地方の[[氷床コア|アイスコア]]中に残された<sup>10</sup>Beおよび<sup>14</sup>Cの解析することで、過去の太陽活動の変遷を間接的に知ることができる<ref>{{Cite web|url=http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/18340153|title=ベリリウム10と炭素14を用いた最終退氷期の太陽活動変遷史に関する研究|author=堀内一穂ほか|accessdate=2011-10-10}}</ref>。 |
|||
核爆発もまた<sup>10</sup>Beの生成源であり、核爆発によって発生した[[高速中性子]]が大気中の[[二酸化炭素]]に含まれる<sup>13</sup>Cと反応することによって生成される。これは、[[核実験]]試験場の過去の活動を示す指標の一つである<ref>{{Cite journal|doi=10.1016/j.jenvrad.2007.07.016|year=2008|month=Feb|author=Whitehead, N; Endo, S; Tanaka, K; Takatsuji, T; Hoshi, M; Fukutani, S; Ditchburn, Rg; Zondervan, A|title=A preliminary study on the use of (10)Be in forensic radioecology of nuclear explosion sites|volume=99|issue=2|pages=260–70 |pmid=17904707|journal=Journal of environmental radioactivity}}</ref>。 |
|||
半減期53日の同位体<sup>7</sup>Beもまた宇宙線によって生成され、その大気中の存在量は<sup>10</sup>Beと同様に太陽活動と関係している。<sup>8</sup>Beの半減期はおよそ7×10<sup>-17</sup>秒と非常に短く、それはベリリウムよりも重い元素が[[ビッグバン原子核合成]]によっては生成されなかったという重要な宇宙理論的役割と関係している<ref>{{cite journal |last1=Boyd |first1=R. N. |last2=Kajino |first2= T. |year=1989 |title=Can Be-9 provide a test of cosmological theories? |journal=The Astrophysical Journal |volume=336|bibcode=1989ApJ...336L..55B |pages=L55 |doi=10.1086/185360}}</ref>。すなわち、<sup>8</sup>Beの半減期が非常に短いために核融合反応に利用できる<sup>8</sup>Beの濃度が非常に低く、そのような低濃度な<sup>8</sup>Be<sup>が4</sup>Heと核融合して炭素を合成するにはビッグバン原子核合成段階の時間が不十分であったことによる。[[イギリス]]の[[天文学者]]である[[フレッド・ホイル]]は、<sup>8</sup>Beおよび<sup>12</sup>Cのエネルギー準位から、より多くの時間を元素合成に利用することができるヘリウムを燃料とする[[恒星]]内においていわゆる[[トリプルアルファ反応]]と呼ばれる反応によって炭素の生成が可能であることを示し、それによって[[超新星]]によって放出されるチリとガスから炭素を基礎とした生命の創生が可能となることを明らかにした<ref>{{Cite book|url=http://books.google.com/?id=PXGWGnPPo0gC&pg=PA223|page=223|title=Supernovae and nucleosynthesis|author=Arnett, David |publisher=Princeton University Press|year=1996|isbn=0691011478}}</ref>。 |
|||
ベリリウムの最も内側の電子は化学結合に関与することができるため、<sup>7</sup>Beの[[電子捕獲]]による崩壊は、化学結合に関与することのできる[[原子軌道]]から電子を奪うことによって起こる。その崩壊確率はベリリウムの電子構成に大部分を依存しており、核崩壊において希なケースである<ref>{{Cite web|url = http://math.ucr.edu/home/baez/physics/ParticleAndNuclear/decay_rates.html|title = How to Change Nuclear Decay Rates|first = Bill|last = Johnson|publisher = University of California, Riverside|accessdate = 2011-10-10 |year = 1993}}</ref>。 |
|||
既知のベリリウム同位体のうち最も半減期が短いものは[[中性子放出]]によって崩壊する<sup>13</sup>Beであり、その半減期は2.7×10<sup>-21</sup>秒である。<sup>6</sup>Beもまた非常に半減期が短く、5.0×10<sup>-21</sup>秒である<ref name=crc>Hammond, C. R. "Elements" in {{RubberBible86th}}</ref>。[[エキゾチック原子核]]である<sup>11</sup>Beおよび<sup>14</sup>Beは[[中性子ハロー]]を示すことが知られている<ref>{{Cite journal|doi = 10.1146/annurev.ns.45.120195.003111|title = Nuclear Halos|year = 1995|author = Hansen, P. G.; Jensen, A. S.; Jonson, B.|journal = Annual Review of Nuclear and Particle Science|volume = 45|pages = 591|bibcode = 1995ARNPS..45..591H }}</ref>。この現象は、[[液滴模型]]において、古典的なトマス-フェルミ理論による表面対称エネルギーの影響によって、中性子の分布が陽子分布よりも外部に大きく広がっていると理解することができる<ref>{{Cite web|url=http://www2.aasa.ac.jp/graduate/gsscs/reports01/PDF/05-001.pdf|title=原子核の表面対称エネルギーの検討|author=親松和浩|accessdate=2011-10-10}}</ref>。 |
|||
ベリリウムの不安定な同位体元素は[[恒星内元素合成]]において生成されるが、これらは長続きしない。大部分のベリリウムの安定同位体は、恒星間のチリおよびガスにおいて見られ、ベリリウムよりも重い元素が宇宙線によって崩壊させられた際に生成されると考えられている<ref>{{Cite book|url=http://books.google.com/?id=ILQ7sTrRixMC&pg=PA172|page=172|title=Physics: 1981–1990|author=Ekspong, G. ''et al.'' |publisher=World Scientific|year=1992|pages=172 ff.|isbn=9789810207298}}</ref>。 |
|||
なお、原子番号が偶数で、安定同位体が1つしかない元素はベリリウムだけである。通常の元素は陽子と中性子が同一の偶数(ベリリウムの場合は4)の <sup>8</sup>Be は安定であるはずだが、<sup>4</sup>He は特に[[魔法数]]を取っているため非常に安定であり、<sup>8</sup>Be は存在できない。 |
|||
== 歴史 == |
== 歴史 == |
||
[[File:Berillo.jpg|thumb|right|200px|[[緑柱石]]]] |
|||
ベリリウムという名前は[[緑柱石]](beryl, ギリシア語で beryllos)に由来している。ベリリウム塩類が甘みを持つ事から、かつてはグルシニウム(glucinium, ギリシア語で甘さを意味する glykys から)と呼ばれた。[[1797年]]に[[ルイ=ニコラ・ヴォークラン]]によりベリリウム酸化物が緑柱石の中から発見された。その後[[1828年]]に[[フリードリヒ・ヴェーラー]]と[[アントワーヌ・ビュシー]]により独立に単離がなされた。 |
|||
ベリリウムという名前は[[緑柱石]](beryl, ギリシア語で beryllos)に由来している。ベリリウム塩類が甘みを持つ事から、かつてはグルシニウム(glucinium, ギリシア語で甘さを意味する glykys から)と呼ばれた。 |
|||
[[Image:Louis Nicolas Vauquelin.jpg|thumb|left|180px|[[ルイ=ニコラ・ヴォークラン]]]] |
|||
[[緑柱石]]と[[エメラルド]]は、初期の分析において常に類似した成分が検出されており、この物質は{{仮リンク|ケイ酸アルミニウム|en|Aluminium silicate}}であると誤って結論付けられていた。[[ルネ=ジュスト・アユイ]]はこの二つの結晶が著しい類似点を示すことを発見し、彼はこれを化学的に分析するために[[化学者]]である[[ルイ=ニコラ・ヴォークラン]]に尋ねた。[[1797年]]、ヴォークランは緑柱石をアルカリで処理することによって[[水酸化アルミニウム]]を溶解させ、[[アルミニウム]]からベリリウム酸化物を分離させることに成功した<ref>{{citation|journal = Annales de Chimie|url = http://books.google.com/books?id=dB8AAAAAMAAJ&pg=RA1-PA155|pages = 155–169| first = Louis-Nicolas|last = Vauquelin|title = De l'Aiguemarine, ou Béril; et découverie d'une terre nouvelle dans cette pierre| year = 1798| issue = 26}}</ref>。ヴォークランはベリリウム化合物が甘みを持つことから、この新しい元素をグルシニウムと命名した<ref name="Weeks">{{citation|last = Weeks|first = Mary Elvira |year = 1933|title = The Discovery of the Elements |publisher = Journal of Chemical Education |location = Easton, PA |chapter = XII. Other Elements Isolated with the Aid of Potassium and Sodium: Beryllium, Boron, Silicon and Aluminium |isbn = 0-7661-3872-0}}</ref>。[[1828年]]に[[フリードリヒ・ヴェーラー]]<ref>{{citation|journal = Annalen der Physik|volume = 89|issue = 8|pages = 577–582|title = Ueber das Beryllium und Yttrium|first = Friedrich|last = Wöhler|authorlink = フリードリヒ・ヴェーラー|doi = 10.1002/andp.18280890805|year = 1828|bibcode = 1828AnP....89..577W }}</ref>と[[アントワーヌ・ビュシー]]<ref>{{citation|journal = Journal de Chimie Medicale| url = http://books.google.com/books?id=pwUFAAAAQAAJ&pg=PA456|pages=456–457| first = Antoine |last = Bussy| title = D'une travail qu'il a entrepris sur le glucinium| year = 1828| issue = 4}}</ref>がそれぞれ独立に、金属[[カリウム]]と塩化ベリリウムを反応させることによるベリリウムの単離に成功した。 |
|||
:BeCl<sub>2</sub> + 2 K → 2 KCl + Be |
|||
カリウムは、当時新しく発見された方法である[[電気分解]]によってカリウム化合物より生産されていた。この化学的手法によって得られるベリリウムは小さな粒状であり、金属ベリリウムの[[インゴット]]を鋳造もしくは鍛造することは出来なかった。同年、ドイツの化学者[[マルティン・ハインリヒ・クラプロート]]がこの元素を緑柱石にちなんでベリリウムを命名した<ref>{{cite book|和書|title=元素を知る事典: 先端材料への入門|author=村上雅人|year=2004|page=68|publisher=海鳴社|isbn=487525220X}}</ref>。1898年、{{仮リンク|ポール・ルボー|en|Paul Lebeau}}は[[フッ化ベリリウム]]と[[フッ化ナトリウム]]の混合融液を直接電気分解することによって、初めて純粋なベリリウムの試料を得た<ref name="Weeks"/>。 |
|||
[[第一次世界大戦]]以前にも有意な量のベリリウムが生産されていたが、大規模生産が始まったのは1930年代初期からである。ベリリウムの生産量は、硬い[[ベリリウム銅]]合金および蛍光灯の蛍光体用途の需要の伸びによって、[[第二次世界大戦]]中に急速に増加した。初めの数年は、大部分の蛍光灯において緑がかった光を出すために、ベリリウムを含有したオルトケイ酸亜鉛が使用されていた。これにタングステン酸マグネシウムを少量添加することで青色部分のスペクトルが改善され、許容範囲の白色光が得られる。後にベリリウムの有毒性が発見され、ハロリン酸系蛍光体に代替された<ref>{{citation|chapter = A Review of Early Inorganic Phosphors|url =http://books.google.com/books?id=klE5qGAltjAC&pg=PA98|page = 98|title = Revolution in lamps: a chronicle of 50 years of progress|isbn = 9780881733785|author1 = Kane, Raymond|author2 = Sell, Heinz|year = 2001}}</ref>。また、ベリリウムの初期の主要な用途の一つとして、その硬さや融点の高さ、非常に優れた[[ヒートシンク]]性能を利用した、軍用機の[[ブレーキ]]への利用が挙げられる。しかしながら、こちらも環境への配慮から別の材料に代替された<ref name=Be/>。 |
|||
== 存在 == |
|||
[[File:Beryllium OreUSGOV.jpg|left|thumb|ベリリウム鉱石]] |
|||
[[File:Beryl-130023.jpg|thumb|100px|エメラルド]] |
|||
ベリリウムは[[宇宙]]において非常に希な元素である。ベリリウムの重量濃度は1 ppb(10億分の1)であり、[[ニオブ]]より原子量の小さい元素の中ではホウ素と並んで最も存在率が小さい<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/periodicity/abundance_universe/ |title=Abundance in the universe |work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2011-09-19}}</ref>。ベリリウムは[[太陽]]においても重量濃度0.1 ppbと希であり、[[レニウム]]と同程度の存在量である<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/periodicity/abundance_sun/ |title=Abundance in the sun |work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2011-09-19}}</ref>。海水中におけるベリリウムの重量濃度はおよそ0.0006 ppbであり、[[スカンジウム]]よりさらに希である<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/periodicity/abundance_seawater/ |title=Abundance in oceans |work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2011-09-19}}</ref>。河川の水における重量濃度は海水中よりは多く、およそ0.1 ppbである<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/periodicity/abundance_stream/ |title=Abundance in stream water |work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2011-09-19}}</ref><ref name=WebElements>{{citation |url=http://www.webelements.com/beryllium/geology.html|title=Beryllium: geological information|work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2011-09-19}}</ref>。 |
|||
地表の岩石中のベリリウム濃度は原子比でおよそ4から6 ppmである。ベリリウムは約4,000種類の既知の鉱石の内およそ100種類の鉱石において主成分となっている。その中でも重要なものは、{{仮リンク|ベルトラン石|en|Bertrandite}} (Be<sub>4</sub>Si<sub>2</sub>O<sub>7</sub>(OH)<sub>2</sub>)、[[緑柱石]] (Al<sub>2</sub>Be<sub>3</sub>Si<sub>6</sub>O<sub>18</sub>)、[[金緑石]] (Al<sub>2</sub>BeO<sub>4</sub>)および{{仮リンク|フェナカイト|en|Phenakite}} (Be<sub>2</sub>SiO<sub>4</sub>)である。状態の良い緑柱石は[[アクアマリン]]や[[エメラルド]]、[[レッドベリル]]等のように、宝石として利用される<ref name=Be/><ref>{{citation|chapter = Sources of Beryllium|url = http://books.google.com/books?id=3-GbhmSfyeYC&pg=PA20|pages = 20–26|isbn = 9780871707215|title = Beryllium chemistry and processing|author1 = Walsh, Kenneth A|year = 2009}}</ref><ref>{{citation|chapter = Distribution of major deposits |url = http://books.google.com/books?id=zNicdkuulE4C&pg=PA265|pages =265–269|isbn = 9780873352338|title = Industrial minerals & rocks: commodities, markets, and uses|author = Mining, Society for Metallurgy, Exploration (U.S)|date = 2006-03-05}}</ref>。 |
|||
== 生産 == |
|||
ベリリウムは高温状態で酸素と高い親和性を示すなどの性質を有しているため、ベリリウム化合物からのベリリウムの抽出は困難な工程となる。[[フッ化ベリリウム]]と[[フッ化ナトリウム]]の混合物の[[電気分解]]は、19世紀の間ベリリウムを分離するのに用いられた<ref name="Weeks"/>。ベリリウムは高融点であるため、この工程は類似したアルカリ金属の分離工程と比較して高いエネルギーが消費される。20世紀の初めには、[[ヨウ化ベリリウム]]の熱分解によるベリリウムの生産法が研究され、[[ジルコニウム]]の生産法に類似した方法が成功を収めた。しかしながら、この方法は大量生産において経済的に採算が取れないことが判明した<ref>{{citation|doi=10.1080/08827508808952633|title=Beryllium Extraction – A Review|year=1988|author=Babu, R. S.|journal=Mineral Processing and Extractive Metallurgy Review|volume=4|pages=39|last2=Gupta|first2=C. K.|url=http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08827508808952633|accessdate=2011-09-20}}</ref>。2007年現在では、金属ベリリウムは酸化ベリリウムを[[フッ化ベリリウム]]として[[マグネシウム]]を用いて還元させるか、酸化ベリリウムを塩化ベリリウムとして溶融塩電解することで生産されている<ref name=tanaka>{{cite book|和書|title=よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み|author=田中和明|year=2007|page=115|publisher=秀和システム|isbn=4798018090}}</ref>。 |
|||
:BeF<sub>2</sub> + Mg → MgF<sub>2</sub> + Be |
|||
工業規模でのベリリウム産出に関与しているのはアメリカ、中国およびカザフスタンの3国のみである<ref>{{citation |url=http://www.beryllium.com/sources-beryllium |title=Sources of Beryllium |work=Materion Brush Inc. |publisher=Materion Brush Inc. |accessdate=2011-09-19}}</ref>。2008年時点のアメリカにおけるベリリウムおよびベリリウム化合物の主な生産者はBrush Engineered Materials社である<ref>{{citation|url = http://www.brushelmore.com/history.asp|archiveurl=http://web.archive.org/web/20080724113346/http://www.brushelmore.com/history.asp |archivedate=2008-07-24|title = Brush Wellman – Elmore, Ohio Plant :: Company History|accessdate = 2011-09-20}}</ref>。Brush Engineered Materials社では、ベリリウムを製錬するための原料の大部分を自身が所有するSpor Mountain鉱床([[ユタ州]])から産出されるベリリウム鉱石(ベルトラン石を含む)から得ている。ベリリウムの製錬および他の精製は、{{仮リンク|デルタ (ユタ州)|en|Delta, Utah}}の北10マイルにある工場で行われており<ref name="spor">{{citation|url = http://pubs.usgs.gov/of/1998/ofr-98-0524/SPORMTN.HTM|title = Slides of the fluorspar, beryllium, and uranium deposits at Spor Mountain, Utah |first = David A.|last = Lindsey|publisher = United States Geological Survey|accessdate = 2011-09-19}}</ref>、その場所は町からは離れており、インターマウンテン・パワー・プロジェクトによる発電設備から近いために選ばれた<ref>{{citation|url = http://ludb.clui.org/ex/i/UT3176/ |title = Brush Wellman Beryllium Plant |work = The Center for Land Use Interpretation|publisher = The Center for Land Use Interpretation|accessdate = 2011-09-19}}</ref>。1998年から2008年までの間、ベリリウムの世界の生産量は343トンからおよそ200トンにまで減少しており、200トンのうち176トン (88 %)はアメリカで生産されている<ref name="USGSMCS2000">{{citation|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/beryllium/100300.pdf|title = Commodity Summary 2000: Beryllium |publisher = United States Geological Survey|accessdate = 2011-09-19}}</ref><ref name="USGSMCS2010">{{citation|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/beryllium/mcs-2010-beryl.pdf|title = Commodity Summary 2010: Beryllium |publisher = United States Geological Survey|accessdate =2011-09-19}}</ref>。真空鋳造によって製造されたベリリウムインゴットの2001年におけるアメリカ市場でのキログラム単価は745ドルであった<ref name="USGS">{{citation|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/beryllium/|title = Beryllium Statistics and Information|publisher = United States Geological Survey|accessdate = 2011-09-19}}</ref>。 |
|||
== ベリリウムの化合物 == |
== ベリリウムの化合物 == |
||
117行目: | 188行目: | ||
== 用途 == |
== 用途 == |
||
ベリリウムの用途の大部分は軍事分野の用途であるため、情報を容易に入手することができない<ref>Petzow, Günter ''et al.'' "Beryllium and Beryllium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 2005, Wiley-VCH, Weinheim. {{DOI|10.1002/14356007.a04_011.pub2}}</ref>。 |
|||
軽量・高強度であるため[[航空宇宙工学|航空宇宙分野]]で使用される。例として[[ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡]]の主鏡材料として使用されている。 |
|||
=== X線透過窓 === |
|||
[[File:Beryllium target.jpg|thumb|left|[[陽子線]]を[[中性子線]]に「変換」するベリリウムターゲット]] |
|||
[[File:Be foil square.jpg|thumb|right|鋼鉄製のケースに乗せられた四角いベリリウム箔。真空チャンバーと[[X線顕微鏡]]の間で「窓」として用いられる。]] |
|||
ベリリウムの最も重要な用途の一つはX線を透過させるための窓である。ベリリウムは原子番号が小さく電子の数が少ないため、[[X線]]に対する[[透過率]]が非常に高い。そのため、X線源やビームライン、X線望遠鏡等の検出器用の窓に用いられる。この用途においては、X線像に不要な像が写り込むことを回避するためにベリリウムの純度と清潔さが最も要求される。ベリリウムの非常に低いX線の吸収率は、高強度の[[シンクロトロン放射光]]に典型的な、低エネルギーX線に起因する熱の影響を最小限に留めることができるため、X線探知機のX線放射窓としてベリリウムの薄膜が用いられている。また、[[シンクロトロン]]による放射線試験のための真空気密窓およびビームチューブの素材には、専らベリリウムのみが用いられている。[[エネルギー分散型X線分析]]などの様々なX線を利用した分析機器において、通常ベリリウム製のサンプルホルダーが用いられる。これは、ベリリウムから発生する[[特性X線]]や[[蛍光X線]]の有するエネルギーは100 eV以下と分析試料由来のX線と比較して非常に低く、試料の分析に影響しないためである<ref name=Be/>。 |
|||
ベリリウムの原子番号の小ささはまた、高エネルギー粒子に対する透過性が比較的高いという性質を与える。そのため、[[素粒子物理学]]の実験装置において、高エネルギー粒子を衝突させる場所周辺のビームラインを構築するために用いられる。例えば、[[大型ハドロン衝突型加速器]]の実験における主要な4つの検出器全て([[ALICE検出器]]、[[ATLAS検出器]]、{{仮リンク|CMS検出器|en|Compact Muon Solenoid}}、{{仮リンク|LHCb検出器|en|LHCb}})<ref>{{citation| title = Installation and commissioning of vacuum systems for the LHC particle detectors|publisher = CERN|first1 =R.|last1 = Veness|first2 =D.|last2 =Ramos|first3 =P.|last3 =Lepeule|first4 =A.|last4 = Rossi|first5 =G.|last5 =Schneider|first6 =S.|last6 =Blanchard|url = http://cdsweb.cern.ch/record/1199583/files/CERN-ATS-2009-005.pdf|accessdate=2011-09-26}}</ref>や[[テバトロン]]、[[SLAC国立加速器研究所]]において用いられている。ベリリウムの密度の低さはまた、粒子の衝突によって発生した生成物を重大な相互作用なしに周囲の検出器へと誘導することを可能とし、ベリリウムの剛性の高さによってベリリウムのパイプ内を非常に高真空にできるため、残留した気体分子による相互作用を最小限にすることができ、ベリリウムの熱的安定性によって[[絶対零度]]よりわずかに高い程度の極低温においても正常に機能することができる。さらにベリリウムの[[反磁性]]を有する性質によって、[[粒子線]]を収束させて検出器まで導くために用いられる複雑な多極電磁石システムへの干渉を防ぐことができる<ref>{{citation|doi=10.1016/S0168-9002(01)01149-4|title=A new inner vertex detector for STAR|year=2001|author=Wieman, H|journal=Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section a Accelerators Spectrometers Detectors and Associated Equipment|volume=473|pages=205|bibcode = 2001NIMPA.473..205W }}</ref>。 |
|||
=== 機械的用途 === |
|||
ベリリウムは[[剛性]]が大きく、軽く、広い温度範囲における寸法安定性を有しているため、防衛産業や航空宇宙産業において軽量な構造部材として、例えば、高速[[航空機]]や[[ミサイル]]、[[宇宙船]]、[[通信衛星]]などに用いられる。近年では特に、増加する[[スペースデブリ]]が落下して地表まで到達する懸念があることからも、大気中で燃焼しやすい材料の1つとして[[マグネシウム]]、[[チタン]]合金などと同様に多用される傾向がある{{要出典|date=2011年9月}}。[[液体燃料ロケット]]には高純度ベリリウムの[[ロケットエンジンノズル]]が用いられている<ref>{{citation|url = http://books.google.com/?id=IpEnvBtSfPQC&pg=PA690| title = Metals handbook|chapter = Beryllium|first = Joseph R.|last = Davis|publisher = ASM International|year = 1998|isbn = 9780871706546|pages = 690–691}}</ref><ref>{{citation|url=http://books.google.com/?id=6fdmMuj0rNEC&pg=PA62|page=62|title=Encyclopedia of materials, parts, and finishes|author=Schwartz, Mel M. |publisher=CRC Press|year=2002|isbn=1566766613}}</ref>。また、少数ではあるものの[[自転車]]のフレームにも用いられている<ref name=museum>{{citation | url = http://mombat.org/American.htm | title = Museum of Mountain Bike Art & Technology: American Bicycle Manufacturing|accessdate=2011-09-26}}</ref> 。また、ベリリウムは硬く、融点が高く、さらに非常に優れた[[ヒートシンク]]性能を有しているため、軍用機の[[ブレーキ]]に用いられていたが、環境への配慮のため代替材料が用いられている<ref name=Be/>。 |
|||
ベリリウムは優れた弾性剛性を有しているため、例えば[[ジャイロスコープ]]による[[慣性航法装置]]や光学系のための支持構造物などの精密機器に利用される<ref name=Be/>。ベリリウム銅合金はまた、Jason pistolsと呼ばれる、船から錆やペンキをはぎ取るのに用いられる針状の器具にも用いられる<ref>{{Cite news|date=1 February 2005|url=http://www.smh.com.au/news/National/Defence-forces-face-rare-toxic-metal-exposure-risk/2005/02/01/1107228681666.html|title=Defence forces face rare toxic metal exposure risk|work=The Sydney Morning Herald|accessdate=2011-09-25}}</ref>。 |
|||
=== ベリリウムミラー === |
|||
[[File:James Webb Space Telescope Mirror37.jpg|thumb|right|ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のベリリウム製の主鏡。]] |
|||
ベリリウムミラーは、[[気象衛星]]のような低重量および長期間の寸法安定性が重要とされる用途に対する大面積の鏡(しばし{{仮リンク|ハニカムミラー|en|Honeycomb mirror}})に用いられる。例えば、[[ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡]]の主鏡はベリリウム製であり<ref>{{citation|title=Origami Observatory: Behind the Scenes with the Webb Space Telescope|url=http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=origami-observatory|journal=Scientific American Magazine|date=2010年10月号|author=Robert Irion|accessdate=2011-09-25}}</ref>、同様の理由で[[スピッツァー宇宙望遠鏡]]もベリリウム製の反射望遠鏡が用いられている<ref>{{citation|title = The Spitzer Space Telescope Mission|first = M. W.|last = Werner|arxiv = astro-ph/0406223|journal = Astrophysical Journal Supplement|year = 2004|doi = 10.1086/422992|volume = 154|pages = 1|last2 = Roellig|first2 = T. L.|last3 = Low|first3 = F. J.|last4 = Rieke|first4 = G. H.|last5 = Rieke|first5 = M.|last6 = Hoffmann|first6 = W. F.|last7 = Young|first7 = E.|last8 = Houck|first8 = J. R.|last9 = Brandl|first9 = B.|bibcode=2004ApJS..154....1W}}</ref>。 |
|||
また、より小さなベリリウムミラーは光学的な[[制御システム]]や[[射撃管制装置]]に用いられる。例えば、ドイツの[[主力戦車]]である[[レオパルト1]]や[[レオパルド2]]に用いられている<ref>{{citation|url=http://spie.org/x648.html?product_id=137998|title=Production of metal matrix composite mirrors for tank fire control systems (Proceedings Paper)|author=Alan L. Geiger, Eric Ulph, Sr.|date=1992-9-16|doi=10.1117/12.137998|accessdate=2011-09-25}}</ref>。これらのシステムには鏡の非常に迅速な動きが要求され、それを達成するためにはまた、ベリリウムの低重量、高剛性が必要とされる。通常このベリリウムミラーは、ベリリウムよりも容易に光学的仕上げ材による研磨を行えるように[[無電解ニッケルめっき]]によって被覆されるが、いくつかの用途においては被服なしに磨き上げられる。被覆材を用いないケースとしては、極低温条件などで用いられることによって、熱膨張率の違いにより被覆材に歪みが生じてしまう場合などが挙げられる<ref name=Be/>。 |
|||
=== 磁気的用途 === |
|||
ベリリウムには磁性がないため、[[地雷]]などの爆発物が磁気に反応して爆発する磁気[[信管]]を一般的に備えるようになった頃から、[[海軍]]や[[軍]]による[[爆発物処理]]班の仕事や[[機雷]]の除去作業においてベリリウムから作られる器具が用いられるようになった<ref>{{Cite news|url=http://oai.dtic.mil/oai/oai?verb=getRecord&metadataPrefix=html&identifier=AD0263919|title=The selection of low-magnetic alloys for EOD tools|publisher= Naval Weapons Plant Washington DC|author= Kojola, Kenneth ; Lurie, William|date=9 August 1961|accessdate=2011-09-26}}</ref>。それらはまた、[[核磁気共鳴画像法]] (MRI)の機械の近くで用いられるメンテナンス器具や建設材料にも用いられる。これは、MRIによって発生する強い磁場に対応するためである<ref>{{citation|url=http://books.google.com/?id=EqtlqFNkWwQC&pg=PT891|page=891|title=Understanding anesthesia equipment|author=Dorsch, Jerry A. and Dorsch, Susan E.|publisher=Lippincott Williams & Wilkins|year=2007|isbn=0781776031}}</ref>。[[無線通信]]や強力なレーダー(通常は軍用)の分野においては、非常に磁気の強い{{仮リンク|クライストロン|en|Klystron}}や[[マグネトロン]]、{{仮リンク|進行波管|en|Traveling-wave tube}}などの高レベルな[[マイクロ波]]を発生させるための[[送信機]]を調整するためにベリリウム製の手工具が用いられる<ref>{{citation|author=MobileReference|title=Electronics Quick Study Guide for Smartphones and Mobile Devices|url=http://books.google.com/books?id=AG6H633VIAcC&pg=PT2396|accessdate=2011-09-26|date=1 January 2007|publisher=MobileReference|isbn=9781605011004|pages=2396–}}</ref>。 |
|||
=== 音響材料 === |
|||
[[File:Yamaha NS-2000 Speaker -midrange-.jpg|thumb|200px|ベリリウム製ドーム型振動板を持つスピーカーユニット]] |
|||
ベリリウム中を音が伝わる速度は8-13 km/sとかなり速いので、[[ヤマハ]]・[[パイオニア]]等の音響機器メーカーの[[ツイーター|高音域スピーカー]]の[[振動板]](主に[[ドーム]]型)に使用される他に、[[品川無線|グレース]]製レコード針の[[カンチレバー]]に用いられた例がある。また、その熱伝導率の良さから、セラミック真空管 ([[:en:Eimac]] 8873) の純正放熱用熱伝導体として採用された例がある。 |
ベリリウム中を音が伝わる速度は8-13 km/sとかなり速いので、[[ヤマハ]]・[[パイオニア]]等の音響機器メーカーの[[ツイーター|高音域スピーカー]]の[[振動板]](主に[[ドーム]]型)に使用される他に、[[品川無線|グレース]]製レコード針の[[カンチレバー]]に用いられた例がある。また、その熱伝導率の良さから、セラミック真空管 ([[:en:Eimac]] 8873) の純正放熱用熱伝導体として採用された例がある。 |
||
=== 核物性の利用 === |
|||
また、ベリリウムは放射線分野においても不可欠とされる。電子の数が少ないため[[X線]]に対する[[透過率]]が非常に高く、X線源やビームライン、検出器用の窓に用いられる。[[アルファ線]]照射により[[中性子]]を放出する中性子線源としても重要で、[[原子炉]]での[[中性子反射体|中性子反射減速材]]として使用される他、[[原子爆弾]]の核反応促進材としても重要である。 |
|||
ベリリウムの薄いプレートやホイールは、しばし[[テラー・ウラム型]]のような熱核爆弾において、核融合燃料に「点火」するためのトリガーである第一段階の核分裂爆弾を囲う{{仮リンク|プルトニウムピット|en|Pit (nuclear weapon)}}の最外層として用いられる。このようなベリリウムの層は、<sup>239</sup>Puを[[爆縮]]させるための良好な核反応促進材であり、ちょうど[[原子炉]]において中性子反射減速材として利用されるように良好な[[中性子反射体]]でもある<ref name=weapons/>。 |
|||
ベリリウムはまた、比較的少ない中性子を必要とする原子炉規模以下の実験用途において、一般的に中性子源として用いられる。この目的のための<sup>9</sup>Beターゲット材は、<sup>210</sup>[[ポロニウム|Po]]や<sup>226</sup>[[ラジウム|Ra]]、<sup>239</sup>[[プルトニウム|Pu]]、<sup>241</sup>[[アメリシウム|Am]]などの[[放射性同位体]]から放出される高エネルギーなアルファ粒子を衝突させることで中性子が取り出される。この時に起こる核反応によって、<sup>9</sup>Beは<sup>12</sup>Cになり、遊離した中性子はアルファ粒子が移動するのと同じ方向へ放出される。ベリリウムはそのような中性子源として、''urchin''と呼ばれる{{仮リンク|中性子点火器|en|Modulated neutron initiator}}として初期の原子爆弾にも利用されていた<ref name=weapons>{{Cite book|url=http://books.google.com/?id=yTIOAAAAQAAJ&pg=PA35|page=35|title=How nuclear weapons spread|author=Barnaby, Frank |publisher=Routledge|year=1993|isbn=0415076749}}</ref>。 |
|||
ベリリウムは[[欧州連合]]の[[トーラス共同研究施設]]における核融合研究所においても利用されており、より高度な[[ITER]]において[[プラズマ]]に直接接する部分の素材としても利用されている<ref>{{Cite book|url=http://books.google.com/?id=9ngHTkC8hG8C&pg=PA15|page=15|title=Nuclear fusion research|author=Clark, R. E. H.; Reiter, D.|publisher=Springer|year=2005|isbn=3540230386}}</ref>。ベリリウムはまた、その機械的、化学的、核的な物性の組み合わせの良さから、核燃料棒の被覆素材としての利用も提案されている<ref name=Be/>。[[フッ化ベリリウム]]は、[[溶融塩原子炉]]設計の多くの仮定において、溶媒、減速材および冷却材としての使用が想定されている、共晶塩である{{仮リンク|フッ化リチウムベリリウム|en|FLiBe}}を構成する塩の1つである<ref>{{Cite journal| doi = 10.1016/j.fusengdes.2005.08.101|title = JUPITER-II molten salt Flibe research: An update on tritium, mobilization and redox chemistry experiments|year = 2006|last1 = Petti|first1 = D|last2 = Smolik|first2 = G|last3 = Simpson|first3 = M|last4 = Sharpe|first4 = J|last5 = Anderl|first5 = R|last6 = Fukada|first6 = S|last7 = Hatano|first7 = Y|last8 = Hara|first8 = M|last9 = Oya|first9 = Y|journal = Fusion Engineering and Design|volume = 81|pages = 1439| issue = 8–14}}</ref>。 |
|||
=== 合金 === |
=== 合金 === |
||
[[File:CuBe Tool.jpg|thumb|150px|ベリリウム銅製の工具]] |
|||
[[銅]](Cu)に0.15 %から2.0 %程度を混ぜて[[ベリリウム銅]][[合金]]として利用される。銅よりもはるかに強く、純銅に近い良好な電気伝導性がある。膨張率は[[ステンレス]]鋼及び鋼(はがね)に近い。ゆっくり変化する[[磁界]]に対し高い[[透磁率]]をもつ。 |
[[銅]](Cu)に0.15 %から2.0 %程度を混ぜて[[ベリリウム銅]][[合金]]として利用される。銅よりもはるかに強く、純銅に近い良好な電気伝導性がある。膨張率は[[ステンレス]]鋼及び鋼(はがね)に近い。ゆっくり変化する[[磁界]]に対し高い[[透磁率]]をもつ。 |
||
また、アルミベリリウム合金も軽量かつ強度が高い特徴があり、[[フォーミュラ1|F1]]レーシングカーの部品(安全性の観点から[[2001年]]以降は使用禁止)や[[航空機]]の部品にも使用されている。 |
また、アルミベリリウム合金も軽量かつ強度が高い特徴があり、[[フォーミュラ1|F1]]レーシングカーの部品(安全性の観点から[[2001年]]以降は使用禁止)や[[航空機]]の部品にも使用されている。 |
||
129行目: | 229行目: | ||
ベリリウム銅[[合金]]は常温下での強度が高く高抗張力で[[弾性]]が大きいため、[[バネ]]材に用いられることが多い。また、磁化しにくい・打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ事から、このため石油化学工業などの爆発雰囲気の中で使用する防爆対策工具に、安全保持上用いることもある。 |
ベリリウム銅[[合金]]は常温下での強度が高く高抗張力で[[弾性]]が大きいため、[[バネ]]材に用いられることが多い。また、磁化しにくい・打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ事から、このため石油化学工業などの爆発雰囲気の中で使用する防爆対策工具に、安全保持上用いることもある。 |
||
== |
== 人体への影響 == |
||
極めて毒性の高い物質であり、人体への曝露によって[[ベリリウム肺症]]もしくは慢性ベリリウム症として知られる深刻な慢性肺疾患を引き起こし、可溶性塩の吸入によって化学性肺炎である急性ベリリウム症を引き起こし、皮膚との接触によって炎症が引き起こされる<ref name=NIHS>{{citation|title=環境保健クライテリア No.106 ベリリウム|url=http://www.nihs.go.jp/hse/ehc/sum1/ehc106.html|publisher=国立医薬品食品衛生研究所|accessdate=2011-09-13}}</ref>。慢性ベリリウム症は数週間から20年以上と非常に個人差の大きい潜伏期間があり、その死亡率は37 %であるが妊婦においては死亡率が高くなる<ref name=NIHS/>。急性ベリリウム症は最高曝露量の設定による作業環境の改善に伴い減少しているが、慢性ベリリウム症はベリリウムを扱う産業において多く発生している<ref name=NIHS/><ref>{{citation|title=メルクマニュアル|chapter=ベリリウム症|url=http://merckmanual.jp/mmpej/sec05/ch057/ch057d.html|publisher=Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.|accessdate=2011-09-13}}</ref>。ベリリウムおよびベリリウム化合物は、[[世界保健機関|WHO]] の下部機関 [[国際がん研究機関|IARC]] より[[発癌性]]がある (Type1) と勧告されている<ref>{{citation|url =http://www.inchem.org/documents/iarc/vol58/mono58-1.html|publisher = International Agency for Research on Cancer|title = IARC Monograph, Volume 58|year = 1993|accessdate = 2011-09-13}}</ref>。ベリリウムが示す毒性の身体への機序は、ベリリウムが酵素に影響を与えることで代謝や細胞複製が阻害されることによる<ref name=NIHS/>。 |
|||
地球大気に入射した[[宇宙線]]により生成され、<sup>7</sup>Be、<sup>10</sup>Be が最も多く作られ、生成量は宇宙線の線量に依存する。大気中の滞在時間は成層圏で1年程度、対流圏で1か月程度とされており、極地方の[[氷床コア|アイスコア]]中に残された <sup>10</sup>Be は、<sup>14</sup>C([[炭素14]])と共に、太陽活動変動を記録しているため、過去の太陽活動の解析に用いられる<ref>[http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/18340153 ベリリウム10と炭素14を用いた最終退氷期の太陽活動変遷史に関する研究]</ref>。 |
|||
1933年、ドイツにおいて化学性肺炎という形で急性ベリリウム症がはじめて報告され、ついで1943年には慢性ベリリウム症がアメリカで報告された<ref>{{citation|title=慢性ベリリウム症の2剖険例|url=http://ir.twmu.ac.jp/dspace/bitstream/10470/9414/1/6412000004.pdf|author=豊田智里ほか|publisher=東京女子医科大学|journal=東京女子医科大学雑誌|volume=第64巻|issue=第12号|year=1994|pages=1063-1064|format=PDF|accessdate=2011-09-13}}</ref>。慢性ベリリウム症の症例は、1946年に[[マサチューセッツ]]で[[蛍光灯]]を製造している工場の労働者の間で始めて言及された。1949年には蛍光灯におけるベリリウムの利用は中止されたが、核産業や航空宇宙産業、[[ベリリウム銅]]などの合金、電子装置の製造などの分野においてはベリリウムの利用が続いている<ref name=NIHS/>。慢性ベリリウム中毒は多くの点で[[サルコイドーシス]]に類似しており、[[鑑別診断]]は多くの場合において困難である。ベリリウムは[[原子爆弾]]の核反応促進材に利用されるため、初期の原子爆弾の開発に携わった研究者の幾人かはベリリウム中毒によって命を落としている(例えばアメリカの核物理学者であり[[マンハッタン計画]]にも携わった{{仮リンク|ハーバート・L・アンダーソン|en|Herbert L. Anderson}}<ref>{{citation|url = http://www.atomicarchive.com/Photos/CP1/image5.shtml|title = Photograph of Chicago Pile One Scientists 1946|date = 2006-06-19|publisher = Office of Public Affairs, Argonne National Laboratory|accessdate = 2011-09-13}}</ref>)。 |
|||
なお、原子番号が偶数で、安定同位体が1つしかない元素はベリリウムだけである。通常の元素は陽子と中性子が同一の偶数(ベリリウムの場合は4)の <sup>8</sup>Be は安定であるはずだが、<sup>4</sup>He は特に[[魔法数]]を取っているため非常に安定であり、<sup>8</sup>Be は存在できない。 |
|||
近年、軽量で、また運用を終えて地球へ落下しても大気中で燃焼しやすい性質が注目され人工衛星に多用されるが、燃焼して大気中に放散された後のベリリウムが、人体を含む環境に与える影響についてはまだ議論が少ない。 |
|||
== |
== 脚注 == |
||
{{reflist}} |
|||
極めて毒性の高い物質で、人体に入ると[[ベリリウム肺症]]として知られる深刻な慢性肺疾患を引き起こす。ベリリウムおよびベリリウム化合物は、[[世界保健機関|WHO]] の下部機関 [[国際がん研究機関|IARC]] より[[発癌性]]がある (Type1) と勧告されている。しかし、ベリリウムが示す毒性の身体への機序(なぜ人体に毒なのか)についてはよくわかっていない。 |
|||
== 参考文献 == |
|||
* {{cite book|和書|author=F.A. コットン, G. ウィルキンソン|others=中原 勝儼|title=コットン・ウィルキンソン無機化学(上)|publisher=培風館|year=1987|edition=原書第4版|isbn=4563041920|ref=CW1987}} |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
141行目: | 246行目: | ||
* [http://www.webelements.com/beryllium/ WebElements "beryllium"] |
* [http://www.webelements.com/beryllium/ WebElements "beryllium"] |
||
* [http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~kmasuda/C14_km/C14_publ/COEreportH15_119-124.pdf ベリリウム鋼]ブラッシュウエルマン |
* [http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~kmasuda/C14_km/C14_publ/COEreportH15_119-124.pdf ベリリウム鋼]ブラッシュウエルマン |
||
== 脚注 == |
|||
{{reflist}} |
|||
{{Commons|Beryllium}} |
{{Commons|Beryllium}} |
||
220行目: | 322行目: | ||
[[nah:Iztactlāltepoztli]] |
[[nah:Iztactlāltepoztli]] |
||
[[nds:Beryllium]] |
[[nds:Beryllium]] |
||
[[ne:बेरिलियम]] |
|||
[[nl:Beryllium]] |
[[nl:Beryllium]] |
||
[[nn:Beryllium]] |
[[nn:Beryllium]] |
2011年10月10日 (月) 13:44時点における版
| |||||||||||||||||||||||||
外見 | |||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
灰白色 | |||||||||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | ベリリウム, Be, 4 | ||||||||||||||||||||||||
分類 | 卑金属 | ||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 2, 2, s | ||||||||||||||||||||||||
原子量 | 9.012182(3) | ||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [He] 2s2 | ||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 2(画像) | ||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||
色 | 銀白色 | ||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 | ||||||||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 1.85 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 1.690 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||
融点 | 1560 K, 1287 °C, 2349 °F | ||||||||||||||||||||||||
沸点 | 2742 K, 2469 °C, 4476 °F | ||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 7.895 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
蒸発熱 | 297 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 16.443 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | |||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||||||||
酸化数 | 3, 2, 1 (両性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.57(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 1st: 899.5 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
原子半径 | 112 pm | ||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 96 ± 3 pm | ||||||||||||||||||||||||
ファンデルワールス半径 | 153 pm | ||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 六方晶系 | ||||||||||||||||||||||||
磁性 | 反磁性 | ||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 200 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 11.3 μm/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(r.t.) 12870 m/s | ||||||||||||||||||||||||
ヤング率 | 287 GPa | ||||||||||||||||||||||||
剛性率 | 132 GPa | ||||||||||||||||||||||||
体積弾性率 | 130 GPa | ||||||||||||||||||||||||
ポアソン比 | 0.032 | ||||||||||||||||||||||||
モース硬度 | 6.5 | ||||||||||||||||||||||||
ビッカース硬度 | 1670 MPa | ||||||||||||||||||||||||
ブリネル硬度 | 600 MPa | ||||||||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7440-41-7 | ||||||||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||||||||
詳細はベリリウムの同位体を参照 | |||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||
ベリリウム (新ラテン語: beryllium[1], 英: beryllium) は原子番号4の元素。元素記号は Be。第2族元素に属し、原子量は約9.012である。常温、常圧で安定した結晶は六方最密充填構造 (HCP) である。比重は1.85、融点は1300 °Cほどで、沸点は2970 °Cである。銀白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在できる。モース硬度は6から7を示し、硬く、常温では脆いが、高温になると展延性が増す。酸にもアルカリにも溶ける。
性質
物理的性質
ベリリウムはヤング率287 GPaと非常に強い曲げ強さを有しており、融点も1287 °Cと高い。ベリリウムの弾性率は鋼より大きく、およそ50 %である。この弾性率の大きさと、ベリリウムが比較的低密度であるという物性が組み合わさることにより、周囲の状況に応じておよそ12.9 km/sという著しく高い音の伝導性を示す。ベリリウムの他の重要な特性としては、1925 J・kg−1・K−1という高い比熱および、216 W・m−1・K−1という高い熱伝導率が挙げられ、これらの物性によってベリリウムは単位重量当たりの放熱物性に最も優れた金属である。またこれらの物性は、11.4×10−6 K−1と比較的低い線形熱膨張率とも相まって、熱負荷の大きな状況下における非常に高い安定性をもたらしている[2]。
化学的性質
ベリリウムはイオン化傾向においてアルミニウムの上に位置しているため、大きな化学活性が期待されるが、実際には表面に酸化被膜を形成して不動態化するため、赤熱した状態でさえも空気や水と反応しない。しかしながら、一旦点火すれば輝きながら燃焼して酸化ベリリウムと窒化ベリリウムの混合物が形成される[3]。
ベリリウムは通常、表面に酸化被膜を形成しているため酸に対しての強い耐性を示すが、純粋なベリリウムでは塩酸や希硫酸のような酸化力を持たない酸に対しては容易に溶解する。硝酸のような酸化力を有する酸に対する溶解速度は非常に遅い。また、強アルカリに対してはベリリウム酸イオン (Be(OH)42-)を形成して水素ガスを発生させながら溶解する。このような酸やアルカリに対する性質はアルミニウムと類似している[4]。
ベリリウム原子の電子配置は[He] 2s2である。ベリリウムはその原子半径の小ささに対してイオン化エネルギーが大きいため電荷を完全に分離することは難しく、そのためベリリウムの化合物は共有結合性を有している[5]。第2周期元素は原子量が大きくなるにしたがってイオン化エネルギーも増大する法則が見られるがベリリウムはその法則から外れており、より原子量の大きなホウ素よりもイオン化エネルギーが大きい。これは、ベリリウムの最外殻電子が2s軌道上にあり、ホウ素の最外殻電子は2p軌道上にあることに起因している。2p軌道の電子は内殻に存在するs軌道の電子によって遮蔽効果を受けるため、2p軌道に存在する最外殻電子のイオン化エネルギーが低下する。一方で2s軌道の電子は遮蔽効果を受けないため、相対的に2p軌道の電子よりもイオン化エネルギーが大きくなり、これによってベリリウムとホウ素の間でイオン化エネルギーの大きさの逆転が生じる[6]。
ベリリウムは例えばアクアイオン (Be[(H2O)4]2+)やテトラハロベリリウム (BeX42-)のように、多くの場合4配位を取る[5]。この性質は配位子としてEDTAを用いた分析技術に利用される。EDTAは優先してベリリウムとの間で八面体形の錯体を形成するため、例えば、ベリリウムのアセチルアセトナト錯体からベリリウムを溶媒抽出することができる。このようなEDTAを用いた錯体形成においてはAl3+のような他の陽イオンの妨害を受けることがある[7]。
硫酸ベリリウムや硝酸ベリリウムのようなベリリウム塩の溶液はBe[(H2O)4]2+イオンの加水分解によって酸性を示す。
- [Be(H2O)4]2+ + H2O [Be(H2O)3(OH)]+ + H3O+
加水分解による他の生成物には、3量体イオン[Be3(OH)3(H2O)6]3+が含まれる。
ベリリウムは多くの非金属原子と二元化合物を形成する。無水ハロゲン化物としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素との化合物が知られており、固体状態においては橋掛け結合によって重合している[5]。フッ化ベリリウム (BeF2)は、二酸化ケイ素のような角を共有したBeF4の四面体構造を取り、ガラス状においては無秩序な直鎖構造を取る[8]。塩化ベリリウムおよび臭化ベリリウムは両端を共有した直鎖状の構造を取る。全てのハロゲン化ベリリウムは、気層においては線形のモノマー分子構造を取る[5][3]。
酸化ベリリウムはウルツ鉱型構造を取る耐火性の白色結晶であり、金属と同じぐらい高い熱伝導率を有する。酸化ベリリウムは2種類の多形が存在し、低温型の酸化ベリリウムは熱したアルカリ溶液などに溶解するが、高温では相転移してより安定な構造となり濃硫酸に硫酸アンモニウムを加えた熱シロップのみにしか溶解しなくなる[4]。他のベリリウムと第16族元素との化合物は硫化ベリリウムやセレン化ベリリウム、テルル化ベリリウムが知られており、それらは全て閃亜鉛鉱型構造を取る[9]。水酸化ベリリウムは両性を示し[4]、その酸性水溶液が他のベリリウム塩を合成する出発原料とされる[3]。
窒化ベリリウム (Be3N2)は非常に加水分解をしやすい、高融点な化合物である。アジ化ベリリウム (BeN6)およびリン化ベリリウム (Be3P2)は窒化ベリリウムと類似した構造を有していることが知られている。塩基性硝酸ベリリウムおよび塩基性酢酸ベリリウムは4つのベリリウム原子が中心の酸素イオンに配位した四面体構造を取る[9]。Be5B、Be4B、Be2B、BeB2、BeB6、BeB12のようないくつかのホウ素化ベリリウムも知られている。炭化ベリリウム (Be2C)は耐火性のレンガ色をした化合物であり、水と反応してメタンを発生させる[9]。ケイ素化ベリリウムは同定されていない[3]。
核的性質
ベリリウムは、高エネルギーな中性子線に対して広い散乱断面積を有しており、その散乱断面積は0.01 eVを上回るものに対しておよそ6 バーンである。散乱断面積の正確な値はベリリウムの結晶サイズや純度に強く依存するため、実際の散乱断面積は1桁ほど低くなる。したがって、ベリリウムは0.03 eV以下のエネルギー範囲の中性子線を効果的に減速させることができる。ベリリウムの主な同位体である9Beは(n, 2n)中性子反応によって1つの中性子を消費して2つの中性子を放出し、2つのアルファ粒子に分裂する。したがって、ベリリウムは中性子反応によって消費する中性子よりも多くの中性子を放出するため中性子を増加させる。
- 9
4Be + n → 2(4
2He) + 2n[10]
金属としてのベリリウムは大部分のX線およびガンマ線を透過するため、X線管などのX線装置におけるX線の出力窓として有用である。ベリリウムはまた、ベリリウムの原子核と高速のアルファ粒子との衝突によって中性子線を放出するため、実験における比較的少数の中性子線を得るための良好な中性子線源である[2]。
- 9
4Be + 4
2He → 12
6C + n[10]。
同位体および元素合成
ベリリウムの安定同位体は9Beのみであり、したがってベリリウムはモノアイソトピック元素である。10Beは、地球の大気に含まれる酸素および窒素が宇宙線による核破砕を受けることで生成される。宇宙線による核破砕によって生成したベリリウム同位体の大気中の滞在時間は成層圏で1年程度、対流圏で1か月程度とされており、その後は地表面に蓄積する。10Beはベータ崩壊によって10Bになるものの、その136万年という比較的長い半減期のために10Beとして地表面に長期間滞留し続ける。そのため、10Beおよびその娘核種は、自然界における土壌の侵食や形成、ラテライトの発達などを調査するのに利用される[11]。また、太陽の磁気的活動が活発化すると太陽風が増大し、その期間は太陽風の影響によって地球に到達する銀河宇宙線が減少するため、銀河宇宙線によって生成される10Beの生成量は太陽活動の活発さに反比例して減少する。したがって10Beは、同様に宇宙線によって生成される14C(炭素14)と共に太陽活動の変動を記録しているため、極地方のアイスコア中に残された10Beおよび14Cの解析することで、過去の太陽活動の変遷を間接的に知ることができる[12]。
核爆発もまた10Beの生成源であり、核爆発によって発生した高速中性子が大気中の二酸化炭素に含まれる13Cと反応することによって生成される。これは、核実験試験場の過去の活動を示す指標の一つである[13]。
半減期53日の同位体7Beもまた宇宙線によって生成され、その大気中の存在量は10Beと同様に太陽活動と関係している。8Beの半減期はおよそ7×10-17秒と非常に短く、それはベリリウムよりも重い元素がビッグバン原子核合成によっては生成されなかったという重要な宇宙理論的役割と関係している[14]。すなわち、8Beの半減期が非常に短いために核融合反応に利用できる8Beの濃度が非常に低く、そのような低濃度な8Beが4Heと核融合して炭素を合成するにはビッグバン原子核合成段階の時間が不十分であったことによる。イギリスの天文学者であるフレッド・ホイルは、8Beおよび12Cのエネルギー準位から、より多くの時間を元素合成に利用することができるヘリウムを燃料とする恒星内においていわゆるトリプルアルファ反応と呼ばれる反応によって炭素の生成が可能であることを示し、それによって超新星によって放出されるチリとガスから炭素を基礎とした生命の創生が可能となることを明らかにした[15]。
ベリリウムの最も内側の電子は化学結合に関与することができるため、7Beの電子捕獲による崩壊は、化学結合に関与することのできる原子軌道から電子を奪うことによって起こる。その崩壊確率はベリリウムの電子構成に大部分を依存しており、核崩壊において希なケースである[16]。
既知のベリリウム同位体のうち最も半減期が短いものは中性子放出によって崩壊する13Beであり、その半減期は2.7×10-21秒である。6Beもまた非常に半減期が短く、5.0×10-21秒である[17]。エキゾチック原子核である11Beおよび14Beは中性子ハローを示すことが知られている[18]。この現象は、液滴模型において、古典的なトマス-フェルミ理論による表面対称エネルギーの影響によって、中性子の分布が陽子分布よりも外部に大きく広がっていると理解することができる[19]。
ベリリウムの不安定な同位体元素は恒星内元素合成において生成されるが、これらは長続きしない。大部分のベリリウムの安定同位体は、恒星間のチリおよびガスにおいて見られ、ベリリウムよりも重い元素が宇宙線によって崩壊させられた際に生成されると考えられている[20]。
なお、原子番号が偶数で、安定同位体が1つしかない元素はベリリウムだけである。通常の元素は陽子と中性子が同一の偶数(ベリリウムの場合は4)の 8Be は安定であるはずだが、4He は特に魔法数を取っているため非常に安定であり、8Be は存在できない。
歴史
ベリリウムという名前は緑柱石(beryl, ギリシア語で beryllos)に由来している。ベリリウム塩類が甘みを持つ事から、かつてはグルシニウム(glucinium, ギリシア語で甘さを意味する glykys から)と呼ばれた。
緑柱石とエメラルドは、初期の分析において常に類似した成分が検出されており、この物質はケイ酸アルミニウムであると誤って結論付けられていた。ルネ=ジュスト・アユイはこの二つの結晶が著しい類似点を示すことを発見し、彼はこれを化学的に分析するために化学者であるルイ=ニコラ・ヴォークランに尋ねた。1797年、ヴォークランは緑柱石をアルカリで処理することによって水酸化アルミニウムを溶解させ、アルミニウムからベリリウム酸化物を分離させることに成功した[21]。ヴォークランはベリリウム化合物が甘みを持つことから、この新しい元素をグルシニウムと命名した[22]。1828年にフリードリヒ・ヴェーラー[23]とアントワーヌ・ビュシー[24]がそれぞれ独立に、金属カリウムと塩化ベリリウムを反応させることによるベリリウムの単離に成功した。
- BeCl2 + 2 K → 2 KCl + Be
カリウムは、当時新しく発見された方法である電気分解によってカリウム化合物より生産されていた。この化学的手法によって得られるベリリウムは小さな粒状であり、金属ベリリウムのインゴットを鋳造もしくは鍛造することは出来なかった。同年、ドイツの化学者マルティン・ハインリヒ・クラプロートがこの元素を緑柱石にちなんでベリリウムを命名した[25]。1898年、ポール・ルボーはフッ化ベリリウムとフッ化ナトリウムの混合融液を直接電気分解することによって、初めて純粋なベリリウムの試料を得た[22]。
第一次世界大戦以前にも有意な量のベリリウムが生産されていたが、大規模生産が始まったのは1930年代初期からである。ベリリウムの生産量は、硬いベリリウム銅合金および蛍光灯の蛍光体用途の需要の伸びによって、第二次世界大戦中に急速に増加した。初めの数年は、大部分の蛍光灯において緑がかった光を出すために、ベリリウムを含有したオルトケイ酸亜鉛が使用されていた。これにタングステン酸マグネシウムを少量添加することで青色部分のスペクトルが改善され、許容範囲の白色光が得られる。後にベリリウムの有毒性が発見され、ハロリン酸系蛍光体に代替された[26]。また、ベリリウムの初期の主要な用途の一つとして、その硬さや融点の高さ、非常に優れたヒートシンク性能を利用した、軍用機のブレーキへの利用が挙げられる。しかしながら、こちらも環境への配慮から別の材料に代替された[2]。
存在
ベリリウムは宇宙において非常に希な元素である。ベリリウムの重量濃度は1 ppb(10億分の1)であり、ニオブより原子量の小さい元素の中ではホウ素と並んで最も存在率が小さい[27]。ベリリウムは太陽においても重量濃度0.1 ppbと希であり、レニウムと同程度の存在量である[28]。海水中におけるベリリウムの重量濃度はおよそ0.0006 ppbであり、スカンジウムよりさらに希である[29]。河川の水における重量濃度は海水中よりは多く、およそ0.1 ppbである[30][31]。
地表の岩石中のベリリウム濃度は原子比でおよそ4から6 ppmである。ベリリウムは約4,000種類の既知の鉱石の内およそ100種類の鉱石において主成分となっている。その中でも重要なものは、ベルトラン石 (Be4Si2O7(OH)2)、緑柱石 (Al2Be3Si6O18)、金緑石 (Al2BeO4)およびフェナカイト (Be2SiO4)である。状態の良い緑柱石はアクアマリンやエメラルド、レッドベリル等のように、宝石として利用される[2][32][33]。
生産
ベリリウムは高温状態で酸素と高い親和性を示すなどの性質を有しているため、ベリリウム化合物からのベリリウムの抽出は困難な工程となる。フッ化ベリリウムとフッ化ナトリウムの混合物の電気分解は、19世紀の間ベリリウムを分離するのに用いられた[22]。ベリリウムは高融点であるため、この工程は類似したアルカリ金属の分離工程と比較して高いエネルギーが消費される。20世紀の初めには、ヨウ化ベリリウムの熱分解によるベリリウムの生産法が研究され、ジルコニウムの生産法に類似した方法が成功を収めた。しかしながら、この方法は大量生産において経済的に採算が取れないことが判明した[34]。2007年現在では、金属ベリリウムは酸化ベリリウムをフッ化ベリリウムとしてマグネシウムを用いて還元させるか、酸化ベリリウムを塩化ベリリウムとして溶融塩電解することで生産されている[35]。
- BeF2 + Mg → MgF2 + Be
工業規模でのベリリウム産出に関与しているのはアメリカ、中国およびカザフスタンの3国のみである[36]。2008年時点のアメリカにおけるベリリウムおよびベリリウム化合物の主な生産者はBrush Engineered Materials社である[37]。Brush Engineered Materials社では、ベリリウムを製錬するための原料の大部分を自身が所有するSpor Mountain鉱床(ユタ州)から産出されるベリリウム鉱石(ベルトラン石を含む)から得ている。ベリリウムの製錬および他の精製は、デルタ (ユタ州)の北10マイルにある工場で行われており[38]、その場所は町からは離れており、インターマウンテン・パワー・プロジェクトによる発電設備から近いために選ばれた[39]。1998年から2008年までの間、ベリリウムの世界の生産量は343トンからおよそ200トンにまで減少しており、200トンのうち176トン (88 %)はアメリカで生産されている[40][41]。真空鋳造によって製造されたベリリウムインゴットの2001年におけるアメリカ市場でのキログラム単価は745ドルであった[42]。
ベリリウムの化合物
ベリリウムは、原子半径が小さく電子を放出しにくいためイオン結合性より共有結合性の強い化合物を作る。
- 緑柱石(ベリル)は組成式 Be3Al2Si6O18 または 3BeO•Al2O3•6SiO2 で表される鉱石で、エメラルド、アクアマリンとして知られる。
- アレキサンドライトは BeO, Al2O3 の複酸化物であり、不純物として鉄が介在することにより赤紫色を呈する。
用途
ベリリウムの用途の大部分は軍事分野の用途であるため、情報を容易に入手することができない[43]。
X線透過窓
ベリリウムの最も重要な用途の一つはX線を透過させるための窓である。ベリリウムは原子番号が小さく電子の数が少ないため、X線に対する透過率が非常に高い。そのため、X線源やビームライン、X線望遠鏡等の検出器用の窓に用いられる。この用途においては、X線像に不要な像が写り込むことを回避するためにベリリウムの純度と清潔さが最も要求される。ベリリウムの非常に低いX線の吸収率は、高強度のシンクロトロン放射光に典型的な、低エネルギーX線に起因する熱の影響を最小限に留めることができるため、X線探知機のX線放射窓としてベリリウムの薄膜が用いられている。また、シンクロトロンによる放射線試験のための真空気密窓およびビームチューブの素材には、専らベリリウムのみが用いられている。エネルギー分散型X線分析などの様々なX線を利用した分析機器において、通常ベリリウム製のサンプルホルダーが用いられる。これは、ベリリウムから発生する特性X線や蛍光X線の有するエネルギーは100 eV以下と分析試料由来のX線と比較して非常に低く、試料の分析に影響しないためである[2]。
ベリリウムの原子番号の小ささはまた、高エネルギー粒子に対する透過性が比較的高いという性質を与える。そのため、素粒子物理学の実験装置において、高エネルギー粒子を衝突させる場所周辺のビームラインを構築するために用いられる。例えば、大型ハドロン衝突型加速器の実験における主要な4つの検出器全て(ALICE検出器、ATLAS検出器、CMS検出器、LHCb検出器)[44]やテバトロン、SLAC国立加速器研究所において用いられている。ベリリウムの密度の低さはまた、粒子の衝突によって発生した生成物を重大な相互作用なしに周囲の検出器へと誘導することを可能とし、ベリリウムの剛性の高さによってベリリウムのパイプ内を非常に高真空にできるため、残留した気体分子による相互作用を最小限にすることができ、ベリリウムの熱的安定性によって絶対零度よりわずかに高い程度の極低温においても正常に機能することができる。さらにベリリウムの反磁性を有する性質によって、粒子線を収束させて検出器まで導くために用いられる複雑な多極電磁石システムへの干渉を防ぐことができる[45]。
機械的用途
ベリリウムは剛性が大きく、軽く、広い温度範囲における寸法安定性を有しているため、防衛産業や航空宇宙産業において軽量な構造部材として、例えば、高速航空機やミサイル、宇宙船、通信衛星などに用いられる。近年では特に、増加するスペースデブリが落下して地表まで到達する懸念があることからも、大気中で燃焼しやすい材料の1つとしてマグネシウム、チタン合金などと同様に多用される傾向がある[要出典]。液体燃料ロケットには高純度ベリリウムのロケットエンジンノズルが用いられている[46][47]。また、少数ではあるものの自転車のフレームにも用いられている[48] 。また、ベリリウムは硬く、融点が高く、さらに非常に優れたヒートシンク性能を有しているため、軍用機のブレーキに用いられていたが、環境への配慮のため代替材料が用いられている[2]。
ベリリウムは優れた弾性剛性を有しているため、例えばジャイロスコープによる慣性航法装置や光学系のための支持構造物などの精密機器に利用される[2]。ベリリウム銅合金はまた、Jason pistolsと呼ばれる、船から錆やペンキをはぎ取るのに用いられる針状の器具にも用いられる[49]。
ベリリウムミラー
ベリリウムミラーは、気象衛星のような低重量および長期間の寸法安定性が重要とされる用途に対する大面積の鏡(しばしハニカムミラー)に用いられる。例えば、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡はベリリウム製であり[50]、同様の理由でスピッツァー宇宙望遠鏡もベリリウム製の反射望遠鏡が用いられている[51]。
また、より小さなベリリウムミラーは光学的な制御システムや射撃管制装置に用いられる。例えば、ドイツの主力戦車であるレオパルト1やレオパルド2に用いられている[52]。これらのシステムには鏡の非常に迅速な動きが要求され、それを達成するためにはまた、ベリリウムの低重量、高剛性が必要とされる。通常このベリリウムミラーは、ベリリウムよりも容易に光学的仕上げ材による研磨を行えるように無電解ニッケルめっきによって被覆されるが、いくつかの用途においては被服なしに磨き上げられる。被覆材を用いないケースとしては、極低温条件などで用いられることによって、熱膨張率の違いにより被覆材に歪みが生じてしまう場合などが挙げられる[2]。
磁気的用途
ベリリウムには磁性がないため、地雷などの爆発物が磁気に反応して爆発する磁気信管を一般的に備えるようになった頃から、海軍や軍による爆発物処理班の仕事や機雷の除去作業においてベリリウムから作られる器具が用いられるようになった[53]。それらはまた、核磁気共鳴画像法 (MRI)の機械の近くで用いられるメンテナンス器具や建設材料にも用いられる。これは、MRIによって発生する強い磁場に対応するためである[54]。無線通信や強力なレーダー(通常は軍用)の分野においては、非常に磁気の強いクライストロンやマグネトロン、進行波管などの高レベルなマイクロ波を発生させるための送信機を調整するためにベリリウム製の手工具が用いられる[55]。
音響材料
ベリリウム中を音が伝わる速度は8-13 km/sとかなり速いので、ヤマハ・パイオニア等の音響機器メーカーの高音域スピーカーの振動板(主にドーム型)に使用される他に、グレース製レコード針のカンチレバーに用いられた例がある。また、その熱伝導率の良さから、セラミック真空管 (en:Eimac 8873) の純正放熱用熱伝導体として採用された例がある。
核物性の利用
ベリリウムの薄いプレートやホイールは、しばしテラー・ウラム型のような熱核爆弾において、核融合燃料に「点火」するためのトリガーである第一段階の核分裂爆弾を囲うプルトニウムピットの最外層として用いられる。このようなベリリウムの層は、239Puを爆縮させるための良好な核反応促進材であり、ちょうど原子炉において中性子反射減速材として利用されるように良好な中性子反射体でもある[56]。
ベリリウムはまた、比較的少ない中性子を必要とする原子炉規模以下の実験用途において、一般的に中性子源として用いられる。この目的のための9Beターゲット材は、210Poや226Ra、239Pu、241Amなどの放射性同位体から放出される高エネルギーなアルファ粒子を衝突させることで中性子が取り出される。この時に起こる核反応によって、9Beは12Cになり、遊離した中性子はアルファ粒子が移動するのと同じ方向へ放出される。ベリリウムはそのような中性子源として、urchinと呼ばれる中性子点火器として初期の原子爆弾にも利用されていた[56]。
ベリリウムは欧州連合のトーラス共同研究施設における核融合研究所においても利用されており、より高度なITERにおいてプラズマに直接接する部分の素材としても利用されている[57]。ベリリウムはまた、その機械的、化学的、核的な物性の組み合わせの良さから、核燃料棒の被覆素材としての利用も提案されている[2]。フッ化ベリリウムは、溶融塩原子炉設計の多くの仮定において、溶媒、減速材および冷却材としての使用が想定されている、共晶塩であるフッ化リチウムベリリウムを構成する塩の1つである[58]。
合金
銅(Cu)に0.15 %から2.0 %程度を混ぜてベリリウム銅合金として利用される。銅よりもはるかに強く、純銅に近い良好な電気伝導性がある。膨張率はステンレス鋼及び鋼(はがね)に近い。ゆっくり変化する磁界に対し高い透磁率をもつ。 また、アルミベリリウム合金も軽量かつ強度が高い特徴があり、F1レーシングカーの部品(安全性の観点から2001年以降は使用禁止)や航空機の部品にも使用されている。
ベリリウム銅合金は常温下での強度が高く高抗張力で弾性が大きいため、バネ材に用いられることが多い。また、磁化しにくい・打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ事から、このため石油化学工業などの爆発雰囲気の中で使用する防爆対策工具に、安全保持上用いることもある。
人体への影響
極めて毒性の高い物質であり、人体への曝露によってベリリウム肺症もしくは慢性ベリリウム症として知られる深刻な慢性肺疾患を引き起こし、可溶性塩の吸入によって化学性肺炎である急性ベリリウム症を引き起こし、皮膚との接触によって炎症が引き起こされる[59]。慢性ベリリウム症は数週間から20年以上と非常に個人差の大きい潜伏期間があり、その死亡率は37 %であるが妊婦においては死亡率が高くなる[59]。急性ベリリウム症は最高曝露量の設定による作業環境の改善に伴い減少しているが、慢性ベリリウム症はベリリウムを扱う産業において多く発生している[59][60]。ベリリウムおよびベリリウム化合物は、WHO の下部機関 IARC より発癌性がある (Type1) と勧告されている[61]。ベリリウムが示す毒性の身体への機序は、ベリリウムが酵素に影響を与えることで代謝や細胞複製が阻害されることによる[59]。
1933年、ドイツにおいて化学性肺炎という形で急性ベリリウム症がはじめて報告され、ついで1943年には慢性ベリリウム症がアメリカで報告された[62]。慢性ベリリウム症の症例は、1946年にマサチューセッツで蛍光灯を製造している工場の労働者の間で始めて言及された。1949年には蛍光灯におけるベリリウムの利用は中止されたが、核産業や航空宇宙産業、ベリリウム銅などの合金、電子装置の製造などの分野においてはベリリウムの利用が続いている[59]。慢性ベリリウム中毒は多くの点でサルコイドーシスに類似しており、鑑別診断は多くの場合において困難である。ベリリウムは原子爆弾の核反応促進材に利用されるため、初期の原子爆弾の開発に携わった研究者の幾人かはベリリウム中毒によって命を落としている(例えばアメリカの核物理学者でありマンハッタン計画にも携わったハーバート・L・アンダーソン[63])。 近年、軽量で、また運用を終えて地球へ落下しても大気中で燃焼しやすい性質が注目され人工衛星に多用されるが、燃焼して大気中に放散された後のベリリウムが、人体を含む環境に与える影響についてはまだ議論が少ない。
脚注
- ^ http://www.encyclo.co.uk/webster/B/40
- ^ a b c d e f g h i Behrens, V. (2003), “11 Beryllium”, in Beiss, P., Landolt-Börnstein – Group VIII Advanced Materials and Technologies: Powder Metallurgy Data. Refractory, Hard and Intermetallic Materials, 2A1, Berlin: Springer, pp. 1–11, doi:10.1007/10689123_36, ISBN 978-3-540-42942-5
- ^ a b c d N. N. Greenwood, A. Earnshaw (1997), Chemistry of the Elements (2nd ed. ed.), Oxford: Elsevier Science Ltd (Butterworth-Heinemann), ISBN 0080379419
- ^ a b c コットン、ウィルキンソン (1987) 271頁。
- ^ a b c d コットン、ウィルキンソン (1987) 269頁。
- ^ 伊藤和明『物理化学II: 量子化学編』化学同人〈理工系基礎レクチャー〉、2008年、112頁。ISBN 4759810854。
- ^ Okutani, T.; Tsuruta, Y.; Sakuragawa, A. (1993), “Determination of a trace amount of beryllium in water samples by graphite furnace atomic absorption spectrometry after preconcentration and separation as a beryllium-acetylacetonate complex on activated carbon”, Anal. Chem. 65 (9): 1273–1276, doi:10.1021/ac00057a026
- ^ コットン、ウィルキンソン (1987) 272頁。
- ^ a b c Wiberg, Egon; Holleman, Arnold Frederick (2001), Inorganic Chemistry, Elsevier, ISBN 0123526515
- ^ a b Hausner, Henry H. “Nuclear Properties”. Beryllium its Metallurgy and Properties. University of California Press. p. 239
- ^ “Beryllium: Isotopes and Hydrology”. University of Arizona, Tucson. 10 April 2011閲覧。
- ^ 堀内一穂ほか. “ベリリウム10と炭素14を用いた最終退氷期の太陽活動変遷史に関する研究”. 2011年10月10日閲覧。
- ^ Whitehead, N; Endo, S; Tanaka, K; Takatsuji, T; Hoshi, M; Fukutani, S; Ditchburn, Rg; Zondervan, A (Feb 2008). “A preliminary study on the use of (10)Be in forensic radioecology of nuclear explosion sites”. Journal of environmental radioactivity 99 (2): 260–70. doi:10.1016/j.jenvrad.2007.07.016. PMID 17904707.
- ^ Boyd, R. N.; Kajino, T. (1989). “Can Be-9 provide a test of cosmological theories?”. The Astrophysical Journal 336: L55. Bibcode: 1989ApJ...336L..55B. doi:10.1086/185360.
- ^ Arnett, David (1996). Supernovae and nucleosynthesis. Princeton University Press. p. 223. ISBN 0691011478
- ^ Johnson, Bill (1993年). “How to Change Nuclear Decay Rates”. University of California, Riverside. 2011年10月10日閲覧。
- ^ Hammond, C. R. "Elements" in Lide, D. R., ed. (2005), CRC Handbook of Chemistry and Physics (86th ed.), Boca Raton (FL): CRC Press, ISBN 0-8493-0486-5
- ^ Hansen, P. G.; Jensen, A. S.; Jonson, B. (1995). “Nuclear Halos”. Annual Review of Nuclear and Particle Science 45: 591. Bibcode: 1995ARNPS..45..591H. doi:10.1146/annurev.ns.45.120195.003111.
- ^ 親松和浩. “原子核の表面対称エネルギーの検討”. 2011年10月10日閲覧。
- ^ Ekspong, G. et al. (1992). Physics: 1981–1990. World Scientific. p. 172. ISBN 9789810207298
- ^ Vauquelin, Louis-Nicolas (1798), “De l'Aiguemarine, ou Béril; et découverie d'une terre nouvelle dans cette pierre”, Annales de Chimie (26): 155–169
- ^ a b c Weeks, Mary Elvira (1933), “XII. Other Elements Isolated with the Aid of Potassium and Sodium: Beryllium, Boron, Silicon and Aluminium”, The Discovery of the Elements, Easton, PA: Journal of Chemical Education, ISBN 0-7661-3872-0
- ^ Wöhler, Friedrich (1828), “Ueber das Beryllium und Yttrium”, Annalen der Physik 89 (8): 577–582, Bibcode: 1828AnP....89..577W, doi:10.1002/andp.18280890805
- ^ Bussy, Antoine (1828), “D'une travail qu'il a entrepris sur le glucinium”, Journal de Chimie Medicale (4): 456–457
- ^ 村上雅人『元素を知る事典: 先端材料への入門』海鳴社、2004年、68頁。ISBN 487525220X。
- ^ Kane, Raymond; Sell, Heinz (2001), “A Review of Early Inorganic Phosphors”, Revolution in lamps: a chronicle of 50 years of progress, p. 98, ISBN 9780881733785
- ^ “Abundance in the universe”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements) 2011年9月19日閲覧。
- ^ “Abundance in the sun”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements) 2011年9月19日閲覧。
- ^ “Abundance in oceans”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements) 2011年9月19日閲覧。
- ^ “Abundance in stream water”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements) 2011年9月19日閲覧。
- ^ “Beryllium: geological information”, Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK (WebElements) 2011年9月19日閲覧。
- ^ Walsh, Kenneth A (2009), “Sources of Beryllium”, Beryllium chemistry and processing, pp. 20–26, ISBN 9780871707215
- ^ Mining, Society for Metallurgy, Exploration (U.S) (2006-03-05), “Distribution of major deposits”, Industrial minerals & rocks: commodities, markets, and uses, pp. 265–269, ISBN 9780873352338
- ^ Babu, R. S.; Gupta, C. K. (1988), “Beryllium Extraction – A Review”, Mineral Processing and Extractive Metallurgy Review 4: 39, doi:10.1080/08827508808952633 2011年9月20日閲覧。
- ^ 田中和明『よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み』秀和システム、2007年、115頁。ISBN 4798018090。
- ^ “Sources of Beryllium”, Materion Brush Inc. (Materion Brush Inc.) 2011年9月19日閲覧。
- ^ Brush Wellman – Elmore, Ohio Plant :: Company History, オリジナルの2008-07-24時点におけるアーカイブ。 2011年9月20日閲覧。
- ^ Lindsey, David A., Slides of the fluorspar, beryllium, and uranium deposits at Spor Mountain, Utah, United States Geological Survey 2011年9月19日閲覧。
- ^ “Brush Wellman Beryllium Plant”, The Center for Land Use Interpretation (The Center for Land Use Interpretation) 2011年9月19日閲覧。
- ^ Commodity Summary 2000: Beryllium, United States Geological Survey 2011年9月19日閲覧。
- ^ Commodity Summary 2010: Beryllium, United States Geological Survey 2011年9月19日閲覧。
- ^ Beryllium Statistics and Information, United States Geological Survey 2011年9月19日閲覧。
- ^ Petzow, Günter et al. "Beryllium and Beryllium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 2005, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a04_011.pub2
- ^ Veness, R.; Ramos, D.; Lepeule, P.; Rossi, A.; Schneider, G.; Blanchard, S., Installation and commissioning of vacuum systems for the LHC particle detectors, CERN 2011年9月26日閲覧。
- ^ Wieman, H (2001), “A new inner vertex detector for STAR”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section a Accelerators Spectrometers Detectors and Associated Equipment 473: 205, Bibcode: 2001NIMPA.473..205W, doi:10.1016/S0168-9002(01)01149-4
- ^ Davis, Joseph R. (1998), “Beryllium”, Metals handbook, ASM International, pp. 690–691, ISBN 9780871706546
- ^ Schwartz, Mel M. (2002), Encyclopedia of materials, parts, and finishes, CRC Press, p. 62, ISBN 1566766613
- ^ Museum of Mountain Bike Art & Technology: American Bicycle Manufacturing 2011年9月26日閲覧。
- ^ “Defence forces face rare toxic metal exposure risk”. The Sydney Morning Herald. (1 February 2005) 2011年9月25日閲覧。
- ^ Robert Irion (2010年10月号), “Origami Observatory: Behind the Scenes with the Webb Space Telescope”, Scientific American Magazine 2011年9月25日閲覧。
- ^ Werner, M. W.; Roellig, T. L.; Low, F. J.; Rieke, G. H.; Rieke, M.; Hoffmann, W. F.; Young, E.; Houck, J. R. et al. (2004), “The Spitzer Space Telescope Mission”, Astrophysical Journal Supplement 154: 1, arXiv:astro-ph/0406223, Bibcode: 2004ApJS..154....1W, doi:10.1086/422992
- ^ Alan L. Geiger, Eric Ulph, Sr. (1992-9-16), Production of metal matrix composite mirrors for tank fire control systems (Proceedings Paper), doi:10.1117/12.137998 2011年9月25日閲覧。
- ^ Kojola, Kenneth ; Lurie, William (9 August 1961). “The selection of low-magnetic alloys for EOD tools”. Naval Weapons Plant Washington DC 2011年9月26日閲覧。
- ^ Dorsch, Jerry A. and Dorsch, Susan E. (2007), Understanding anesthesia equipment, Lippincott Williams & Wilkins, p. 891, ISBN 0781776031
- ^ MobileReference (1 January 2007), Electronics Quick Study Guide for Smartphones and Mobile Devices, MobileReference, pp. 2396–, ISBN 9781605011004 2011年9月26日閲覧。
- ^ a b Barnaby, Frank (1993). How nuclear weapons spread. Routledge. p. 35. ISBN 0415076749
- ^ Clark, R. E. H.; Reiter, D. (2005). Nuclear fusion research. Springer. p. 15. ISBN 3540230386
- ^ Petti, D; Smolik, G; Simpson, M; Sharpe, J; Anderl, R; Fukada, S; Hatano, Y; Hara, M et al. (2006). “JUPITER-II molten salt Flibe research: An update on tritium, mobilization and redox chemistry experiments”. Fusion Engineering and Design 81 (8–14): 1439. doi:10.1016/j.fusengdes.2005.08.101.
- ^ a b c d e 環境保健クライテリア No.106 ベリリウム, 国立医薬品食品衛生研究所 2011年9月13日閲覧。
- ^ “ベリリウム症”, メルクマニュアル, Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A. 2011年9月13日閲覧。
- ^ IARC Monograph, Volume 58, International Agency for Research on Cancer, (1993) 2011年9月13日閲覧。
- ^ 豊田智里ほか (1994), “慢性ベリリウム症の2剖険例” (PDF), 東京女子医科大学雑誌 (東京女子医科大学) 第64巻 (第12号): 1063-1064 2011年9月13日閲覧。
- ^ Photograph of Chicago Pile One Scientists 1946, Office of Public Affairs, Argonne National Laboratory, (2006-06-19) 2011年9月13日閲覧。
参考文献
- F.A. コットン, G. ウィルキンソン『コットン・ウィルキンソン無機化学(上)』中原 勝儼(原書第4版)、培風館、1987年。ISBN 4563041920。
外部リンク
- 国際化学物質安全性計画 環境保健クライテリア 106 「ベリリウム」(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部による抄訳)
- WebElements "beryllium"
- ベリリウム鋼ブラッシュウエルマン