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'''鰓曳動物'''(えらひきどうぶつ、[[学名]]:{{lang|la|Priapulida}} )は、えた伸縮性の[[吻]]を持つ海洋性の動物である。種よっては尾状付属器をもつものもいる。現在18種が知らている。
'''鰓曳動物'''(えらひきどうぶつ、{{sname||Priapulida}}または{{sname|Priapula}}または'''プリアプルス類'''は、[[蠕虫]]状海産[[無脊椎動物]]の1[[分類群]]。冠棘を備えた[[吻]]を持つ。独立[[動物]][[門 (分類学)|門]]分類される。

==名称==
[[ファイル:Pompeya erótica5.jpg|thumb|left||150px|プリアプルスの名は陰茎を象徴する神プリアポスに由来する。]]鰓曳動物という和名は、後述する尾状付属器を[[鰓]]と考えたことに由来するが、すべての[[種 (分類学)|種]]がこの付属器を持つわけではない。しかもこの付属器は鰓([[呼吸]][[器官]])ではなく、[[感覚器]]であるとされるようになっている。このことから、鰓曳動物門の名を避け、[[学名]]のままプリアプルス門と呼ぶこともある<ref name=bd/>。

学名は[[ギリシャ神話]]における[[生殖]]の神であり、[[陰茎]]を象徴する[[プリアポス]]の名に由来し<ref name=bru/>、プリアプルスとは「小さい陰茎」を意味する<ref name=gould/>。なお英語では{{lang|en|penis worm}}と呼ばれる。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
[[ファイル:Priapulus caudatus FZ.png|エラヒキムシ。|thumb|100px]]
鰓曳動物は円筒の形状をした虫に似た動物で、体の前方中央に口あり、その周りに口器や触手は一切ない。体表面は環状に区切られ、棘が並んだ輪を持つことがあり、それはしばしば咽頭にまで続いている。[[消化器]]は直線状で、体後端の肛門まで繋がるが、''Priapulus'' では腹部末端が肛門を越えて伸び、一または二の鰓状の突起となる。これを鰓と見て、かつてはこの類を'''エラヒキムシ'''(鰓曳き虫)と呼んだ。神経系は環状部と腹面神経索からなり、[[外胚葉]]との原始的なつながりを残している。
円筒形の[[蠕虫]]で、[[左右相称動物|左右相称]]。体長は大きいものでは20[[センチメートル]]ほどになるが、0,5[[ミリメートル]]の小型種もいる。体表は[[クチクラ]]に覆われ、成長過程で[[脱皮]]する。小型種は透けて見えるが、大型種の体表は黄白色や赤褐色になる<ref name=bd/>。クチクラ層の下には[[表皮]]層、その下には[[筋肉]]の層がある<ref name=bru/>。


体は大きく[[吻]]と胴に分かれる。吻は出し入れが可能で、その表面には多数の棘が並んでいる。吻の先端に[[口]]がある。[[消化管]]は完全で、ほぼ直線に伸びる。[[肛門]]は体の後端、中心近くに開く<ref name=bru/>。胴の体表には皺が見られるが、これは[[体節]]構造ではなく、鰓曳動物は体節を持たない<ref name=bd/>。一部の種を除いて体の後部に尾状付属器を持つが、その形態は種によってさまざまである<ref name=bru/>。
[[感覚器]]、[[循環器]]、[[呼吸器]]については特化したものを持たない([[酸素]]の運搬に関与する[[タンパク質]]は[[ヘムエリトリン]]である)。体内に広い空洞があるが、これは[[排出器]]、[[生殖器]]とは関係ないため体腔とは見なされず、[[血体腔]]であると考えられている。


体内には大きな[[体腔]]がある。この体腔が真体腔であると主張した研究者もいるが、その後の研究からこれは疑問視されており、鰓曳動物は偽体腔を持つと考えられている<ref name=bru/><ref name=shira/>。体腔内は体腔液に満たされている。体腔液は{{仮リンク|水力学的骨格|en|hydrostatic skeleton}}として体を支持しており、吻を突出させるときには、体壁の筋肉(環筋)が収縮し、それによって生じる体腔液の圧力を利用する<ref name=bru/>。体腔液中には[[ヘムエリスリン]]を含む[[赤血球]]や、[[食細胞]]性の[[変形細胞]]がある<ref name=bru/>。
== 生殖と発生 ==
鰓曳動物は[[雌雄同体]]で、雄性器と雌性器は排出器と一緒になり、片側で肛門とつながっている。


体腔の後部に[[原腎管]]があり、[[浸透圧]]調節や[[排泄]]機能を果たしていると考えられる。同じ場所に[[生殖器]]系があり、一対の生殖孔が肛門の近くに開口する<ref name=bru/>。
発生や成長については詳しいことは分かっていない。


[[神経系]]は表皮内にあり、放射状に張り巡らされている。[[脳]][[神経節]]は持たないが、[[腸]]を囲むように神経環があり、そこから神経索が腹側に伸びる<ref name=bru/>。
== 化石 ==
[[ファイル:Ottoia burrowing.jpg|220px|thumb|[[バージェス生物群]]の[[オットイア]](復元図)]]
鰓曳動物の[[化石]]は、少なくとも[[カンブリア紀]]中期からのものが知られている。[[バージェス動物群]]や[[澄江動物群]]などでこれに属すると見られる化石がいくつも発見され、カンブリア紀には主な捕食者として栄えたと考えられる。


== 分類系統 ==
== 繁殖発生 ==
[[ファイル:Halicryptus spinulosus larva frontosagittal view.png|''Halicryptus spinulosus''の幼生。|thumb]]
その外見から、古くは[[ユムシ類]]や[[ホシムシ類]]との類縁が考えられたが、体腔が真体腔でないことから前者との類縁は否定され、後者とは消化管がU字状でないこと、[[触手]]がないことなどで区別される。後に[[脱皮動物]]に含めるべきであることが指摘された。
[[雌雄異体]]で、ふつうは[[体外受精]]。まず[[オス|雄]]が[[精子]]を、次いで[[メス (動物)|雌]]が[[卵]]を放出し、[[受精]]が起こる<ref name=bru/>。[[受精卵]]は[[卵割#全割|全割]]の[[卵割#割球の配置|放射卵割]]を経て発生し、[[胴甲動物]]の成体によく似た[[ロリケイト]][[幼生]]になる<ref name=bd/>。ロリケイト幼生の胴部はクチクラの被甲に覆われていて、吻はそのなかに収まっている。被甲は成長過程で何度か脱ぎ捨てられ、[[変態]]の際には失われるので成体にはない<ref name=bru/>。


一方で、胚が変態せず、成体と同じかたちで孵化する[[直接発生]]も[[ツビルクス科]]の{{snamei||Meiopriapulus fijiensis}}で報告されている。この種では、胚は母親によって[[動物の子育て|保護]]される<ref name=bru/>。[[マッカベウス科]]の{{snamei||Maccabeus tentaculatus}}では雄の存在が確認されていないが、この種の[[繁殖]]方法は不明である<ref name=bru/><ref name=bd/>。
分類学的に最も近縁な門はおそらく[[動吻動物]] {{Sname||Kinorhyncha}} と[[胴甲動物]] {{Sname||Loricifera}} で、これらの3門をまとめて[[有棘動物門]] {{Sname||Scalidphora}} とする説もある。[[節足動物]]、[[有爪動物]]、[[線形動物]]、[[類線形動物]]と共に、脱皮動物の中で肉眼で見えるサイズの種を含む門である。


== 生 ==
鰓曳動物門には現生の2目3科7属18種が含まれる。近年では小型の[[間隙性]]の種も知られるようになった。18種のうち、2種 ''Priapulus caudatus'' [[エラヒキムシ]] および ''P. bicaudatus'' [[フタツエラヒキムシ]]が日本から報告されている。エラヒキムシはヨーロッパでも比較的普通に見られる種である。
[[ファイル:Halicryptus spinulosus 1.JPEG|''Halicryptus spinulosus''の成体。|thumb]]
すべて[[海洋]](または[[汽水]])に生息し、[[淡水]]産のものはいない。砂泥底に見られ、浅い[[潮下帯]]から水深5000[[メートル]]を超える[[深海]]底まで、広範囲に生息する<ref name=bd/>。大型種は低水温の海域に多く、巣穴を掘って生活するほか、[[棲管]]をつくる種もわずかにいる<ref name=bru/>。かつてはそのような種しかしられていなかったため、高緯度や深海のみに分布すると考えられていたが、[[熱帯]]にも小型の種がいることが明らかになっている<ref name=bd/>。小型の種は巣穴を掘るか、[[間隙性]]である<ref name=bru/>。貧[[酸素]]で[[硫化物]]濃度の高い環境に生息する種({{snamei||Harycryptus spinulosus}})も報告されている<ref name=bru/>。


多くは[[捕食]]性。吻を伸ばし、キチン質の歯が並んだ[[口]]を突出させて、[[ゴカイ]]や[[ヨコエビ]]など小型の無脊椎動物を捕食する<ref name=bru/><ref name=bd/>。棲管をつくる{{snamei|Maccabeus tentaculatus}}は、口の周囲にある短い[[触手]]と棘を使い、近づいた獲物を捕らえる<ref name=bru/>。小型種は[[デトリタス]]などを餌とする<ref name=bd/>。深海性の種では、[[カイメン]]を食べるものも知られている<ref name=bd/>。
* ''Priapulus'' [[エラヒキムシ属]]の [[エラヒキムシ]] ''P. caudatus'' はとげで覆われ、世界各地の冷たい海に生息しており,日本からは厚岸湾などで報告がある。フタツエラヒキムシ ''P. bicaudatus'' は[[北大西洋]]と[[北極海]]に生息する。
* ''Priapuloides'' 属の ''P. australis'' は南極海周辺に生息する。
* ''Halicryptus'' 属の ''H. spinulosus'' は北方の海に生息し、90m以浅の比較的浅い泥の中に住む。


== 系統進化 ==
かつて、偽体腔を持つ[[旧口動物]]は{{仮リンク|袋形動物|en|Aschelminth}}門にまとめられており、[[線形動物]]や[[内肛動物]]などとともに、鰓曳動物も袋形動物門の1[[綱 (分類学)|綱]]とされていた。しかし、袋形動物が[[単系統群]]ではないと考えられるようになったため、この門は使われなくなり、それぞれの綱は独立の門とされるようになった。鰓曳動物も同様で、独立の鰓曳動物門を構成するとみなされている<ref name=shira/>。

[[分子系統学]]の研究から、旧口動物は[[脱皮動物]]と[[冠輪動物]]の2つの系統群に分かれることが有力視されているが、鰓曳動物は脱皮動物に含まれると考えられている<ref name=bd/>。脱皮動物はその名の通り[[脱皮]]をすることが特徴で、鰓曳動物もそうである。脱皮動物のなかでは、鰓曳動物は[[動吻動物]]、[[胴甲動物]]と近縁と考えられており、この3群を併せて[[頭吻動物]](または{{仮リンク|有棘動物|en|Scalidophora}})にまとめることが提案されている<ref name=bd/>。頭吻動物は、体表に[[花状器官]]と呼ばれる微小な構造を持つという形質を共有する<ref name=bd/>。

== 化石 ==
[[ファイル:Ottoia burrowing.jpg|thumb|バージェス生物群の[[オットイア]](復元図)]]
現代よりも[[古生代]]に繁栄したグループで、[[カンブリア紀]]の海では主要な[[捕食者]]だった<ref name=bru/>。[[バージェス生物群]]の一員として有名な[[オットイア]]も鰓曳動物である。古生物学者の[[スティーヴン・ジェイ・グールド|グールド]]は、鰓曳動物の衰退は、[[オルドビス紀]]に出現した、[[顎]]を持つ[[多毛類]]との競争に敗れたために起こった可能性を指摘している<ref name=gould/>。

== 分類 ==
鰓曳動物の現生種は10数種ほどが知られている。以下の2目3科に分類される<ref name=noda/>。
*[[プリアプルス目]] {{sname||Priapulimorpha}}
**[[ツビルクス科]] {{sname||Tubiluchidae}}
**[[プリアプルス科]] {{sname||Priapulidae}}
***[[ハリクリュプトス亜科]] {{sname||Harycryptinae}}
***[[プリアプルス亜科]] {{sname||Priapulinae}} - [[エラヒキムシ]]、[[フタツエラヒキムシ]]など
*[[セティコロナリア目]](セチコロナリア目) {{sname||Seticoronaria}}
**[[マッカベウス科]] {{sname||Maccabeidae}}

== 参考文献 ==
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<ref name=gould>{{cite book |和書 |last=グールド |first=SJ |authorlink=スティーヴン・ジェイ・グールド |titile=[[ワンダフルライフ (書籍)|ワンダフル・ライフ]] |pages=515-521 |year=2000 |origyear=1989 |translator=渡辺政隆 |isbn=4150502366 |publisher=早川書房 |series=ハヤカワ文庫NF}}</ref>
<ref name=noda>{{cite book |和書 |author=野田泰一 |chapter=プリアプルス門 |title=原色日本海岸動物検索図鑑 |editor=[[西村三郎]](編著)|volume=I |publisher=[[保育社]] |year=1992 |isbn=4586203011 |page=216}}</ref>
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2011年9月16日 (金) 14:25時点における版

鰓曳動物門
エラヒキムシ Priapulus caudatus
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物Animalia
亜界 : 真正後生動物亜界 Eumetazoa
階級なし : 旧口動物Protostomia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
: 鰓曳動物門 Priapulida
学名
Priapulida Théel, 1906
英名
penis worm

鰓曳動物(えらひきどうぶつ、PriapulidaまたはPriapula)またはプリアプルス類は、蠕虫状の海産無脊椎動物の1分類群。冠棘を備えたを持つ。独立の動物に分類される。

名称

プリアプルスの名は陰茎を象徴する神プリアポスに由来する。

鰓曳動物という和名は、後述する尾状付属器をと考えたことに由来するが、すべてのがこの付属器を持つわけではない。しかもこの付属器は鰓(呼吸器官)ではなく、感覚器であるとされるようになっている。このことから、鰓曳動物門の名を避け、学名のままプリアプルス門と呼ぶこともある[1]

学名はギリシャ神話における生殖の神であり、陰茎を象徴するプリアポスの名に由来し[2]、プリアプルスとは「小さい陰茎」を意味する[3]。なお英語ではpenis wormと呼ばれる。

特徴

エラヒキムシ。

円筒形の蠕虫で、左右相称。体長は大きいものでは20センチメートルほどになるが、0,5ミリメートルの小型種もいる。体表はクチクラに覆われ、成長過程で脱皮する。小型種は透けて見えるが、大型種の体表は黄白色や赤褐色になる[1]。クチクラ層の下には表皮層、その下には筋肉の層がある[2]

体は大きくと胴に分かれる。吻は出し入れが可能で、その表面には多数の棘が並んでいる。吻の先端にがある。消化管は完全で、ほぼ直線に伸びる。肛門は体の後端、中心近くに開く[2]。胴の体表には皺が見られるが、これは体節構造ではなく、鰓曳動物は体節を持たない[1]。一部の種を除いて体の後部に尾状付属器を持つが、その形態は種によってさまざまである[2]

体内には大きな体腔がある。この体腔が真体腔であると主張した研究者もいるが、その後の研究からこれは疑問視されており、鰓曳動物は偽体腔を持つと考えられている[2][4]。体腔内は体腔液に満たされている。体腔液は水力学的骨格英語版として体を支持しており、吻を突出させるときには、体壁の筋肉(環筋)が収縮し、それによって生じる体腔液の圧力を利用する[2]。体腔液中にはヘムエリスリンを含む赤血球や、食細胞性の変形細胞がある[2]

体腔の後部に原腎管があり、浸透圧調節や排泄機能を果たしていると考えられる。同じ場所に生殖器系があり、一対の生殖孔が肛門の近くに開口する[2]

神経系は表皮内にあり、放射状に張り巡らされている。神経節は持たないが、を囲むように神経環があり、そこから神経索が腹側に伸びる[2]

繁殖と発生

Halicryptus spinulosusの幼生。

雌雄異体で、ふつうは体外受精。まず精子を、次いでを放出し、受精が起こる[2]受精卵全割放射卵割を経て発生し、胴甲動物の成体によく似たロリケイト幼生になる[1]。ロリケイト幼生の胴部はクチクラの被甲に覆われていて、吻はそのなかに収まっている。被甲は成長過程で何度か脱ぎ捨てられ、変態の際には失われるので成体にはない[2]

一方で、胚が変態せず、成体と同じかたちで孵化する直接発生ツビルクス科Meiopriapulus fijiensisで報告されている。この種では、胚は母親によって保護される[2]マッカベウス科Maccabeus tentaculatusでは雄の存在が確認されていないが、この種の繁殖方法は不明である[2][1]

生態

Halicryptus spinulosusの成体。

すべて海洋(または汽水)に生息し、淡水産のものはいない。砂泥底に見られ、浅い潮下帯から水深5000メートルを超える深海底まで、広範囲に生息する[1]。大型種は低水温の海域に多く、巣穴を掘って生活するほか、棲管をつくる種もわずかにいる[2]。かつてはそのような種しかしられていなかったため、高緯度や深海のみに分布すると考えられていたが、熱帯にも小型の種がいることが明らかになっている[1]。小型の種は巣穴を掘るか、間隙性である[2]。貧酸素硫化物濃度の高い環境に生息する種(Harycryptus spinulosus)も報告されている[2]

多くは捕食性。吻を伸ばし、キチン質の歯が並んだを突出させて、ゴカイヨコエビなど小型の無脊椎動物を捕食する[2][1]。棲管をつくるMaccabeus tentaculatusは、口の周囲にある短い触手と棘を使い、近づいた獲物を捕らえる[2]。小型種はデトリタスなどを餌とする[1]。深海性の種では、カイメンを食べるものも知られている[1]

系統進化

かつて、偽体腔を持つ旧口動物袋形動物門にまとめられており、線形動物内肛動物などとともに、鰓曳動物も袋形動物門の1とされていた。しかし、袋形動物が単系統群ではないと考えられるようになったため、この門は使われなくなり、それぞれの綱は独立の門とされるようになった。鰓曳動物も同様で、独立の鰓曳動物門を構成するとみなされている[4]

分子系統学の研究から、旧口動物は脱皮動物冠輪動物の2つの系統群に分かれることが有力視されているが、鰓曳動物は脱皮動物に含まれると考えられている[1]。脱皮動物はその名の通り脱皮をすることが特徴で、鰓曳動物もそうである。脱皮動物のなかでは、鰓曳動物は動吻動物胴甲動物と近縁と考えられており、この3群を併せて頭吻動物(または有棘動物英語版)にまとめることが提案されている[1]。頭吻動物は、体表に花状器官と呼ばれる微小な構造を持つという形質を共有する[1]

化石

バージェス生物群のオットイア(復元図)

現代よりも古生代に繁栄したグループで、カンブリア紀の海では主要な捕食者だった[2]バージェス生物群の一員として有名なオットイアも鰓曳動物である。古生物学者のグールドは、鰓曳動物の衰退は、オルドビス紀に出現した、を持つ多毛類との競争に敗れたために起こった可能性を指摘している[3]

分類

鰓曳動物の現生種は10数種ほどが知られている。以下の2目3科に分類される[5]

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 沼波秀樹 著「鰓曳動物門」、白山義久(編集) 編『無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)』岩槻邦男・馬渡峻輔(監修)、裳華房、2000年、pp.154-156頁。ISBN 4785358289 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Brusca, RC; Brusca, GJ (2003). Invertebrates (2nd ed ed.). Sinauer Associates, Inc.. pp. 365-368. ISBN 9780878930975 
  3. ^ a b グールド, SJ 著、渡辺政隆 訳早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2000年(原著1989年)、515-521頁。ISBN 4150502366 
  4. ^ a b 白山義久「いわゆる袋形動物の系統関係」『無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)』、pp.157-158頁。 
  5. ^ 野田泰一 著「プリアプルス門」、西村三郎(編著) 編『原色日本海岸動物検索図鑑』 I、保育社、1992年、216頁。ISBN 4586203011{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 

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