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{{otheruses|五賢帝の最後の1人「哲人皇帝」|アントニヌス勅令を発したローマ皇帝|カラカラ|セウェルス朝の同名のローマ皇帝|ヘリオガバルス}} |
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{{基礎情報 君主 |
{{基礎情報 君主 |
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| 人名 = マルクス・アウレリウス・アントニヌス |
| 人名 = マルクス・アウレリウス・アントニヌス |
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| 各国語表記 = {{lang|la|'''Marcus Aurelius Antoninus'''}} |
| 各国語表記 = {{lang|la|'''Marcus Aurelius Antoninus'''}} |
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| 画像 = Marc'aurelio, da gabi, fine II secolo dc..JPG |
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| 君主号 = |
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| 画像 = Marcus Aurelius (bust).jpg |
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| 画像サイズ = 250px |
| 画像サイズ = 250px |
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| 画像説明 = |
| 画像説明 = アウレリウス胸像（メトロポリタン美術館所蔵） |
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| 在位 = 161年 - 169年（[[ルキウス・ウェルス|ウェルス]]帝と共同）<BR>169年 - 177年（単独統治）<BR>177年 - 181年（[[コモドゥス]]帝と共同） |
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| 在位 = |
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| 全名 = '''カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥス'''<BR>''Caesar Marcus Aurelius Antoninus Augustus'' |
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| 戴冠日 = |
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| 継承者 = [[コンモドゥス|ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス]] |
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| 別号 = |
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| 継承形式 = 継承 |
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| 全名 = マルクス・アウレリウス・アントニヌス |
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| 継承者 = |
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| 継承形式 = |
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| 配偶者1 = [[アンニア・ガレリア・ファウスティナ・ミノル|小ファウスティナ]] |
| 配偶者1 = [[アンニア・ガレリア・ファウスティナ・ミノル|小ファウスティナ]] |
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| 子女 = [[コンモドゥス]] |
| 子女 = [[コンモドゥス]]<BR>ルキッラ<BR>ファディラ<BR>小コルニフィキア |
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| 王家 = |
| 王家 = アントニヌス家 |
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| 王朝 = [[ネルウァ＝アントニヌス朝]] |
| 王朝 = [[ネルウァ＝アントニヌス朝]] |
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| 父親 = マルクス・アンニウス・ウェルス |
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| 賛歌 = |
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| 母親 = ドミティア・ルキッラ |
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| 母親 = |
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| 出生日 = [[121年]][[4月26日]] |
| 出生日 = [[121年]][[4月26日]] |
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| 生地 = [[ローマ]] |
| 生地 = [[ローマ]] |
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| 死亡日 = {{死亡年月日と没年齢|121|4|26|180|3|17}} |
| 死亡日 = {{死亡年月日と没年齢|121|4|26|180|3|17}} |
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| 没地 = [[ウィンドボナ]] |
| 没地 = [[ウィンドボナ]]、もしくは[[シルウィウム]] |
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| 埋葬日 = |
| 埋葬日 = [[サンタンジェロ城|ハドリアヌス廟]] |
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| 埋葬地 = |
| 埋葬地 = |
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}} |
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'''マルクス・アウレリウス・アントニヌス'''（<small>[[古典ラテン語]]</small>：{{lang|la|Marcus Aurelius Antoninus}}、マ |
'''マルクス・アウレリウス・アントニヌス'''（<small>[[古典ラテン語]]</small>：{{lang|la|Marcus Aurelius Antoninus}} {{#tag:ref|即位前の本名はマルクス・アンニウス・カッティリウス・セウェルス（Marcus Annius Catilius Severus）で<ref>Dio 69.21.1; ''HA Marcus'' 1.9; McLynn, 24.</ref>、先帝アントニヌスの后妃の兄である父マルクス・アンニウス・ウェルスによって名付けられた<ref>Dio 69.21.1; ''HA Marcus'' 1.10; McLynn, 24.</ref>。その後、叔父にあたるアントニヌス帝の娘（従兄弟となる）小ファウスティナと結婚して帝位を継ぐ際、入り婿としてマルクス・アウレリウス・アントニヌス（Marcus Aurelius Antoninus）に改名した。|group=notes}}[[121年]][[4月26日]] - [[180年]][[3月17日]]）は、第16代[[ローマ皇帝一覧|ローマ皇帝]]。ネルウァ＝アントニヌス朝の君主としては四人目の君主。第15代皇帝アントニヌス・ピウスの后妃[[ファウスティナ・マイヨル]]（大ファウスティナ）の甥で先帝の[[外戚]]にあたり、また大ファウスティナは[[ハドリアヌス]]と[[トラヤヌス]]の末裔でもある。 |
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外叔父アントニヌスの皇女で、自身の従姉妹である[[ファウスティナ・ミノル]]（小ファウスティナ）と結婚して帝位を継承したが、共同皇帝としてハドリアヌスの重臣の子[[ルキウス・ウェルス]]が立てられていた。アウレリウスは小ファウスティナとの長女ルキッラを嫁がせて両皇帝の結束を固めたが、169年にウェルスが死んだ事で単独の皇帝となった。 |
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マルクス・アウレリウスは深く尊敬されるローマ皇帝の一人で、当時書かれた数多くの伝記が残されているが、その出自や生涯に関する記述は誤りや創作が含まれたものも多く、現在も議論が行われている。 |
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ストア哲学などの学識に長け、良く国を治めた事からネルウァ・トラヤヌス・ハドリアヌス・アントニヌスに並ぶ皇帝（[[五賢帝]]）と評された。対外政策では[[パルティア]]帝国との戦争に勝利を収めたが、蛮族への予防戦争として始めたマルコマンニ人、クアディ人、サルマティア人などへの遠征（マルコマンニ戦争）は長期戦となり、国力を疲弊させ、自らも陣中で没した。 |
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==生涯== |
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===生い立ち=== |
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マルクス・アウレリウスは121年4月26日、[[ローマ]]でマルクス・アンニウス・ウェルスの子として生まれた。ウェルス家の属する[[アンニウス氏族]]は比較的無名の氏族ながら歴史は古く、[[共和政ローマ|共和制]]期の[[執政官]][[ティトゥス・アンニウス・ミロ]]という人物を持ち、彼は[[キケロ]]の側近として[[プブリウス・クロディウス・プルケル]]と論戦を繰り広げたことで知られている。またアンニウス・ミロの妻は[[独裁官]][[ルキウス・コルネリウス・スッラ|スッラ]]の娘であったため、スッラも祖先の一人に数えることが出来る。 |
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軍事よりも学問を好んだ皇帝という姿は、彼の著作である「[[自省録]]」への評価を通じて今日も維持されている。これはプラトンの時代から学識者にとって理想とされた「哲人君主」の実現例と見なされているからである<ref>''Western Civilization: Sources, Images and Interpretations,'' Dennis Sherman, Vol. 1, 5th Ed., p. 104.</ref>。 |
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父マルクス・アンニウスは現在の[[コルドバ]]市に所領を持つ貴族で、同名の曾祖父と祖父はそれぞれ[[プラエトル|法務官]]や[[元老院 (ローマ)|元老院]]議員などを経験している。ウェルス家はオリーブの生産によって財を成し、祖父の代に元老議員ルキウス・スクボリウス・ルピウスの娘ルピラ・ファウスティアを娶って貴族の仲間入りを果たした。祖母ファウスティアは第13代ローマ皇帝[[トラヤヌス]]を大叔父に持つため、アウレリウスの即位時点で五賢帝間に血統上の繋がりが生じることになった。加えて[[カッシウス・ディオ]]はハドリアヌスとウェルス家が血縁関係にあり、これを背景にアウレリウスが立身を果たしたと記述している。 |
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==歴史資料== |
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マルクス・アウレリウス自身も幼少期より当時の皇帝[[ハドリアヌス]]にその才能を認められ、皇帝として必要な内政経験などの政治キャリアと教養を積んでいった。その後、ハドリアヌス帝が先帝[[アントニヌス・ピウス]]を養子に指名した際にマルクス自身もピウスの養子に指名され、将来の皇帝候補と目されるようになる。そしてアントニヌス・ピウスの娘[[アンニア・ガレリア・ファウスティナ・ミノル|小ファウスティナ]]と結婚し、たくさんの子供をもうけるが、成人したのは1男5女であった。 |
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マルクス・アウレリウスの人生と治世に関する資料は疎らで、信憑性の薄い物が多く含まれている。例えば主要な情報源とされる「ローマ皇帝群像」は多くの問題を持った資料であり、引用元の資料よりも価値は低い<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 229 30. The thesis of single authorship was first proposed in H. Dessau's "Uber Zeit und Personlichkeit der ''Scriptoes Historiae Augustae''" (in German), ''Hermes'' 24 (1889), 337ff.</ref>。ハドリアヌスからアウレリウスまでの評伝は作中でも比較的に信憑性があるが、それでもアエリウス・ヴェルスやアヴィディウス・カシウスの評伝は完全な捏造であると見られる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 230. On the ''HA Verus'', see Barnes, 65?74.</ref>。 |
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マルクス・アウレリウス自身は[[自省録]]という著作を残したが、これは主にアウレリウスの内面についての記述や思索であって、俗事の出来事については余り触れられていない<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 227.</ref>。同時代の歴史家にはカッシウス・ディオがおり、特に軍政についての記述においては重要な記録を残している。しかしディオの元老院階級としての偏見や、帝国領土の拡大に対する反対意見は真意を不明瞭にしている<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 228?29, 253.</ref>。 |
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アントニヌス・ピウスの下では[[執政官]]就任など皇帝になるための準備を積むが、それは文官キャリアに偏ったもので、軍での経験はなかった。行動範囲は[[ローマ]]から[[ナポリ]]付近までで、[[北イタリア]]にさえも行くことがなかった。そのため、皇帝就任後にゲルマン人などの蛮族対策に十分な効果を得られない要因となり、彼の治世下で影を落とすことになる。一方、マルクス・アウレリウスは元々強くない体ではあったが、日常の公務に加えて哲学などの勉学に精力的に励み、後世'''哲人皇帝'''と呼ばれる素地を自ら育んでいった。 |
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他にアウレリウスと関わった様々な人が残した記録は、細かい出来事についての詳細を提供している。アントニヌス朝の貴族達について記録した宮殿医ガレノス、時代の風潮を推測させるアエリウス・アリステイデスの演説、そして東ローマ時代の勅法彙纂に記録されるアウレリウスの法整備などがそれにあたる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 227?28.</ref> 。碑銘、通貨なども治世を調べる上での情報源とされる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 228.</ref>。 |
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161年、アントニヌス・ピウスが死去する。マルクスは後継皇帝に就任するが、その際に[[ルキウス・ウェルス]]とともに前例のない共同皇帝となることを要請する。共同統治を経て、ルキウスが没した169年に単独皇帝となった。 |
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==生い立ち== |
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{{Main|:en:Early life and career of Marcus Aurelius}} |
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[[画像:Marcus Aurelius Denarius.jpg|thumb|150px|マルクス・アウレリウスの肖像を刻印した銀貨]] |
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マルクス・アウレリウスの治世は、内憂外患の多難な時代の幕開けであった。皇帝就任直後には首都ローマの中央部を流れる[[テヴェレ川|ティベリス川]]が決壊するという自然災害に見舞われ、食糧危機が発生していた。一方、隣国[[パルティア]]との間に[[アルメニア王国|アルメニア]]問題が再燃、第六次[[パルティア戦争]]が勃発した。162年には[[シリア属州|シリア]]に侵攻されるも、その後ローマ軍は反撃に転じ、164年にはパルティアの首都[[クテシフォン]]の奪取に成功した。しかし、この時ローマ軍内部に[[天然痘]]が蔓延したため、クテシフォンからの撤退を余儀なくされる。パルティア側はこの隙に乗じてクテシフォンの再奪取に成功し、さらにアルメニアを占領するが、その後はローマ軍の巻き返しもあり、166年にパルティアが北[[メソポタミア]]をローマ帝国に割譲することで、一応の終結をみた。 |
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===家族と出自=== |
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その後、パルティアとの抗争によりもたらされた[[天然痘]]は、帰国したローマ軍を介してローマ帝国全体に蔓延することとなり、ローマ帝国の人口と兵力の減少をもたらした。ローマのこうした弱体化を目の当たりにした[[ゲルマン人]]諸部族は、その後[[ダキア]]への侵入や[[マルコマンニ戦争]]などの小競り合いを繰り返し、マルクスは蛮族への対処に多くの歳月を費やすこととなった。マルクス・アウレリウスの時代にゲルマン人との抗争が続発したのは、このようなローマ帝国の弱体化が直接の原因であったが、ゲルマン人口の自然増加に伴って彼らの居住領域の膨張圧力が強まっていたこともその根底にあった。 |
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[[Image:Young Marcus Aurelius Musei Capitolini MC279.jpg|thumb|left|少年時代のアウレリウス像<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 49.</ref>]] |
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マルクス・アウレリウス・アントニヌスこと、'''マルクス・アンニウス・カッティリウス・セウェルス'''は、貴族[[マルクス・アンニウス・ウェルス3世]]の子としてローマに生まれた。 |
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父方の一族である[[ウェルス家]]は属州[[ヒスパニア・バエティカ]]の[[コルドバ]]に所領を持ち、西暦1世紀頃からローマ中央でも知られた存在にまで台頭し始めた。曽祖父[[アンニウス・ウェルス1世]]が元老院議員として議席を与えられ、祖父の[[アンニウス・ウェルス2世|ウェルス2世]]の代で貴族に列された<ref>''HA Marcus'' 1.2, 1.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 28; McLynn, 14.</ref>{{#tag:ref|Cassius Dio asserts that the Annii were near-kin of Hadrian, and that it was to these familial ties that they owed their rise to power.<ref>Dio 69.21.2, 71.35.2?3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 31.</ref> The precise nature of these kinship ties is nowhere stated. One conjectural bond runs through Annius Verus (II). Verus' wife [[Rupilia|Rupilia Faustina]] was the daughter of the consular senator [[Libo Rupilius Frugi]] and an unnamed mother. It has been hypothesized Rupilia Faustina's mother was [[Salonina Matidia|Matidia]], who was also the mother (presumably through another marriage) of [[Vibia Sabina]], Hadrian's wife.<ref>''Codex Inscriptionum Latinarum'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+14,+03579&r_sortierung=Belegstelle 14.3579]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 29; McLynn, 14, 575 n. 53, citing Ronald Syme, ''Roman Papers'' 1.244.</ref>|group=notes}}。アンニウス・ウェルス3世はドミティア・ルキッラと結婚してカッティリウス・セウェルス（アウレリウス）という子を儲けた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 29; McLynn, 14.</ref>両親には二人の子供がおり、アウレリウス以外にコルニフィキアという姉がいた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 31, 44.</ref>。ドミティア・ルキッラは、有力貴族のカルビシウス・トゥルス・ルッソの子であり、また母の大ドミティアも親族の財産を相続した資産家であった（この事は[[プリニウス]]の書簡にも書き残されている）<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 29, citing Pliny, ''Epistulae'' 8.18.</ref>。彼女は後に煉瓦生産の工房など、両親の財産を相続してウェルス家を更に富ませた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 30.</ref>。 |
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加えて先帝アントニヌス・ピウスの時代、[[ゲルマニア]]国境付近に居住するゲルマン人諸部族よりたびたびローマ帝国の庇護を求められ、彼らの居住地域をローマ帝国へ編入するよう申し出がなされているが、ピウスはこれを拒絶しており、ゲルマン人の間でローマ帝国に対する不満が高まっていた。その意味で、マルクス・アウレリウスの直面したゲルマン人との抗争は先帝アントニヌス・ピウスの消極的な対外政策も多分に起因しており、そのツケを払わされた代償としての側面も大きい。 |
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父であるウェルス3世も元老院で法務官などの要職を歴任していたが、アウレリウスが3才の時に病没した<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 31">Birley, ''Marcus Aurelius'', 31.</ref>{{#tag:ref|Farquharson dates his death to 130, when Marcus was nine.<ref>Farquharson, 1.95?96.</ref>|group=notes}}。従って後の皇帝としての方針に父の影響がどの程度あったのかは不明であるが、彼自身は「自制録」で彼が「謙虚と剛毅さ」を父の思い出と死後の話で学び知ったと語っている<ref>''Meditations'' 1.1, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 31.</ref>。母ドミティアは再婚しなかったが<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 31"/>、当時の貴族階級にとっての常として子供の養育は家庭教師や侍従達に任せていた<ref>''HA Marcus'' 2.1 and ''Meditations'' 5.4, qtd. in Birley, ''Marcus Aurelius'', 32.</ref>。一方で貴族としての優雅な生活で堕落しないように「宗教的な敬虔さ」と「粗食」を躾として教えられたという<ref>''Meditations'' 1.3, qtd. in Birley, ''Marcus Aurelius'', 35.</ref>。アウレリウスは母親についての感謝を述べる手紙を書き残している<ref>''Meditations'' 1.17.7, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 35.</ref>。 |
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一方、マルクス・アウレリウスは後継者人事に関して、後世に少なからざる禍根を残すこととなった。実子[[コンモドゥス]]の次期皇帝候補指名である。[[五賢帝]]時代を通じて、優れた者を養子にして帝位を継承させる慣習<ref>これについては、五賢帝の他の皇帝が実子を後継者としなかったのは、継がせようとも「法律婚に基づく」実子がなかったという事実があるため、そのような慣習はなかったとの説もある。</ref>が続いており、それがローマ帝国の長きにわたる平和の維持や国内外の安定を支えていた。しかしマルクス・アウレリウスは、政治経験も潜在能力も未知数であるにもかかわらず実子コンモドゥスを次期皇帝候補に指名した。その結果、コンモドゥスを支える人材の不足や陰謀等による人間不信の蔓延など、時代の不運も重なり、コンモドゥスは失政を重ねた後にほどなくして暗殺され、以後のローマ帝国では皇帝が短期間のうちに次々と暗殺されたり交代を余儀なくされるようになった。また、皇帝自らが長期的ビジョンをもって政治にあたることもなくなる一方、ローマ帝国の安定と秩序維持の要であった軍全体の統制を掌握しきれなくなり、これがさらなる政局と社会の混迷をもたらし、[[3世紀の危機]]を迎えるきっかけとなった。 |
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父の死後、アウレリウスは祖父ウェルス2世に引き取られ<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 33">Birley, ''Marcus Aurelius'', 33.</ref>、ルキウス・カッティリウス・セウェルスという男性が養育を手伝った。ルキウス・カッティリウスは「母方の曾祖父」と言われ、恐らくは大ドルシッラの継父であったと見られている<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 33"/>。アウレリウスは彼の両親が残したカエリウスの丘にある邸宅で過ごし<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 2.8.2 (= Haines 1.142), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 31.</ref>、そこは僅かな公共施設を除けば殆どが貴族の別荘からなる高級住宅街であった。また祖父は[[ラテラノ大聖堂]]の近くに邸宅を持ち、アウレリウスにとって馴染み深い場所となった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 31?32.</ref>。祖父の教育については「良心と自制心」を教わったと書き残しているが<ref>''Meditations'' 1.1, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 35.</ref>、祖父が祖母の死後に連れてきた妾とは折り合いが悪かったという<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 35">Birley, ''Marcus Aurelius'', 35.</ref> 幸いにして妾が出入りするようになって直に家から出れた事を、アウレリウスは幸運だったと述べている<ref>''Meditations'' 1.17.2; Farquharson, 1.102; McLynn, 23; cf. ''Meditations'' 1.17.11; Farquharson, 1.103.</ref>。 |
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マルクス・アウレリウスの後継者人事について、[[塩野七生]]は『[[ローマ人の物語]]』の中で、コンモドゥスを後継者に据えなければ、当然ながらコンモドゥスは不満を抱き、不平分子がコンモドゥスをかついでの内乱が起こりかねなかったという点を指摘し、実子を皇帝候補とした後継者人事のあり方に一定の理解を示している。また、当時の皇帝は好き勝手に後継者を選べる訳ではなく、他の五賢帝は後継者を決めるにあたり元老院の承認を得ていおり、アウレリウス帝もコンモドゥスを後継者にするにあたっては同様にしている。マルクス生存中の若きコンモドゥス自身、特に愚行を行うこともなく、暴君化するのは実姉による陰謀以後であった。以上を踏まえると、当時の後継者人事においてコンモドゥスを次期皇帝候補に指名する以外に選択肢はなく、また他に望ましい候補が見当たらなかったことも推察される。いずれにせよ、実子コンモドゥスの後継者としたことで、皮肉にも1世紀近く続いた皇帝の長期政権のシステムは崩壊し、それにより享受されたローマ帝国の安定（[[パクス・ロマーナ]]）は徐々に失われていった。 |
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アウレリウスは当時の貴族階級の常として、家庭教師による教育を受けている<ref>McLynn, 20?21.</ref>。これは曽祖父カッティリウス・セウェルスの意向によるところだったとアウレリウス自身が述べている<ref>''Meditations'' 1.4; McLynn, 20.</ref>。ディオゲネトゥスという教師から特に深い影響を受け、哲学的な生活様式を学んだ<ref>''HA Marcus'' 2.2, 4.9; ''Meditations'' 1.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 37; McLynn, 21?22.</ref>。132年4月、アウレリウスはディオゲネトゥスと同じ哲学者風の衣服で過ごし始め、母親から窘められるまでベットではなく地面で寝ていたという<ref>''HA Marcus'' 2.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 38; McLynn, 21.</ref>。133年からはアレクザンデル{{#tag:ref|Birley amends the text of the ''HA Marcus'' from "Eutychius" to "Tuticius".<ref>Birley, ''Later Caesars'', 109, 109 n.8; ''Marcus Aurelius'', 40, 270 n.27, citing ''Bonner Historia-Augusta Colloquia'' 1966/7, 39ff.</ref>|group=notes}}という人物が何人かの教師と共に赴任した<ref>''HA Marcus'' 2.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 40, 270 n.27.</ref>。アレクサンデルは当時のローマ帝国で、ホメロスの研究によって知られた文学者であった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 40, citing Aelius Aristides, ''Oratio'' 32 K; McLynn, 21.</ref>. |
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マルクス・アウレリウスの治世は[[キリスト教]]勢力の台頭しつつある時代でもあったが、マルクス自身は[[ストア派]]の克己主義に立ち、当時すでに衰えていた伝統の神々の祭祀を復興して、帝国の精神的紐帯とすることを図った。このため、多神教の礼拝を拒んだキリスト教徒は国体の安定を危うくする迷信とみなされ、迫害を受けることとなった。一方、マルクス・アウレリウスは日々の思索と哲学を記した『[[自省録]]』と呼ばれる著書を遺している。'''哲人皇帝'''とも呼ばれ、後期ストア派の代表的人物に数えられるが、その思想は後期ストア派に顕著な折衷主義でもある。 |
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アウレリウスは彼から修辞法を学んでおり<ref>''Meditations'' 1.10; Birley, ''Marcus Aurelius'', 40; McLynn, 22.</ref>、「自省録」の文体にその影響が見られる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 40, 270 n.28, citing A.S.L. Farquharson, ''The Meditations of Marcus Antoninus'' (Oxford, 1944) 2.453.</ref>。 |
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===ハドリアヌス帝による寵愛=== |
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このように、マルクス・アウレリウスは国内外を通して多難な状況の中、常に先頭に立ち、諸課題に対して誠実果敢に取り組む皇帝であった。殊に晩年、気候の厳しい[[ドナウ川]]防衛線に病魔に苦しみながらも留まり続けるマルクスの姿は、将兵たちに大きな尊敬の念を抱かれた。しかし同時に後継者指名に禍根を残すことで、ローマ帝国の安定は失われ、以降の皇帝乱立と暗殺の繰り返される時代を招来したといえる。180年、マルクス・アウレリウスは遠征先の[[ウィンドボナ]]（現[[ウィーン]]）で死去した。58歳。遺言に従い、次期皇帝には息子コンモドゥスが就任した。 |
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[[File:Ritratto di adriano, inv. 2247, 02.JPG|thumb|right|200px|ハドリアヌス胸像<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 42.</ref>]] |
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127年、[[叔母]][[ファウスティナ・マイヨル]]の親族であるハドリアヌス帝の推薦を受けて、アウレリウスは6歳の時に[[エクイテス|騎士名簿]]へ登録された。少年時代に騎士階級へ叙任された事については、アウレリウス以前にも全く例がない訳ではないが、極めて珍しい出来事であった。更に翌年には[[:en:Salii|サリイ]]という聖職の為の学校へ推薦されたが、入学規定を満たしていなかったアウレリウスの為に規定を改訂させている<ref>''HA Marcus'' 4.1, 4.2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 36.</ref>。ハドリアヌスはアウレリウスを寵愛しており、ヴェリッシムス（Verissimus）という渾名で呼んでいた<ref>''HA Marcus'' 1.10, 2.1; Birley, ''Marcus Aurelius'', 38; "Hadrian to the Antonines", 147. The appellation also survives on inscriptions: Birley cites (at ''Marcus Aurelius'', p. 270 n.24) ''Prosopographia Imperii Romani<sup>2</sup>'' A 697, and ''L'Annee epigraphique'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=AE+1940,+00062&r_sortierung=Belegstelle 1940.62]. On the Salii, see: Birley, ''Marcus Aurelius'', 36?37; McLynn, 18?19.</ref>{{#tag:ref|Others put a harsher light on Hadrian's nickname. McLynn calls it an example of Hadrian's waspish (McLynn says "vespine") wit and adduces it in support of his contention that Marcus was a "prig".<ref>McLynn, 18, citing Michael Grant, ''The Antonines'' (1994), 26 for the characterization of ''verissimus'' as an example of Hadrian's waspish wit.</ref>|group=notes}}。アウレリウスは神学校で熱心に学び、優れた聖職者としての素養を得た<ref>''HA Marcus'' 4.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 37; McLynn, 19.</ref>。一方で帝都ローマに留まらず、各属州への巡行に時間を費やしていたので、アウレリウスと直接会う機会はそれほどなかった{{#tag:ref|Birley, following the textual and epigraphic citations, concludes that he might only have seen Rome in 127, briefly in 128, and in 131.<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 38, 270 n.24.</ref>|group=notes}}。 |
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135年、ハドリアヌスが久しぶりにローマに戻った時、アウレリウスは皇帝の重臣ルキウス・アエリウス（ハドリアヌスを暗殺しようとしたガイウス・アウィディウス・ニグリヌスの娘婿で、[[ルキウス・ウェルス]]の父）の腹心に成長していた。136年、成人したアウレリウスはハドリアヌスの命令によって、アエリウスの娘ケイオニアと婚約して皇帝の側近としての立場を確立した<ref>''HA Marcus'' 4.5; Birley, ''Marcus Aurelius'', 39?40; McLynn, 24?25; R. Syme, "The Ummidii", ''Historia'' 17:1 (1968): 93?94.</ref>。結婚からまもなく、ルキウス・アエリウスによってアウレリウスは首都長官に任命された。この時代の首都長官は要職という位置づけながら、何の実権も伴わない名誉職という部分が大きく、貴族の若者の登竜門のような意味合いがあった。アウレリウスは首都長官として相応しい振る舞いをしたという<ref>''HA Marcus'' 4.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 41.</ref>。 |
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===その他=== |
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[[画像:Marco Aurelio Campidoglio front 1.jpg|200px|thumb|マルクス・アウレリウスの騎馬像]] |
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[[ファイル:50 cents Euro coin It.gif|200px|thumb|[[イタリアのユーロ硬貨|イタリアの50セントユーロ硬貨]]。マルクス・アウレリウスの騎馬像が彫られている。]] |
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中国[[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]の[[宋 (南朝)|宋]]で著された史書『[[後漢書]]』西域列伝の大秦国の記事に[[桓帝 (漢)|桓帝]]の[[延熹]]9年（[[166年]]）日南に[[象牙]]や[[タイマイ]]などをもった「大秦王安敦」の使者がきたと記述されている。この「大秦王安敦」がマルクス・アウレリウス・アントニヌスとされる（先代の[[アントニヌス・ピウス]]の可能性もある）。 |
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<!--Too sleepy to make citations to the Meditations now; will check up on them later.--> |
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ローマ市内には、皇帝[[騎馬像]]として唯一マルクス・アウレリウスの騎馬像のみが現存している（ローマ時代に他の皇帝騎馬像も製作されたが、全て打ち棄てられたり破壊され、現存していない）。軍馬にまたがり天を仰ぐ威風堂々とした軍装姿で、元々は別の場所に据えられていたが、現在は[[カピトリーニ美術館]]内に展示されている。元々は全身を金で覆った黄金像であり、現在でもその断片を通して古来の栄華を偲ぶことができる。 |
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ルキウス・アエリウスを通して、アウレリウスは「カルケドンのアポロニウス」というストア派の哲学者の知遇を得た。ストア派哲学との出会いはアウレリウスの禁欲的な生き方として多大な影響を与えた。またアポロニウスは哲学の教師としてアウレリウスにストア派の講義を行い、アウレリウスから神に出会いを感謝された3人の一人となった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 41.</ref>。後に姉コルニフィキアが従兄弟のウッミディウス・クァドラトゥスと結婚した時、アウレリウスは母ドミティア・ルキッラから父の遺産の一部を姉に持参金として譲るように求めたが、アウレリウスは遺産全てを姉に譲ったという<ref>''HA Marcus'' 4.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 41.</ref>。 |
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136年、既にハドリアヌスは不治の病に侵されていたが、[[同性愛者]]であった事から嫡男を授かっていなかった。別荘で病床に就いたハドリアヌスは、腹心であるルキウス・アエリウスを後継者に指名した<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 41?42.</ref>。<!--he selection was done ''invitis omnibus'', "against the wishes of everyone";<ref>''HA Hadrian'' 23.10, qtd. in Birley, ''Marcus Aurelius'', 42.</ref>its rationale is still unclear.<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 42. On the succession to Hadrian, see also: T.D. Barnes, "Hadrian and Lucius Verus", ''Journal of Roman Studies'' 57:1?2 (1967): 65?79; J. VanderLeest, "Hadrian, Lucius Verus, and the Arco di Portogallo", ''Phoenix'' 49:4 (1995): 319?30.</ref>-->。ハドリアヌスがアエリウスを特に選んだ理由については明確には分かっていない。 |
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==年表== |
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* [[121年]] - 誕生 |
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* [[140年]] - 初の[[執政官]]就任 |
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* [[161年]] - [[ルキウス・ウェルス]]と共に共同皇帝に即位、[[パルティア]]戦役勃発 |
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* [[168年]] - ゲルマン人の侵入に対処すべく[[ドナウ川]]防衛線に向け出発 |
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* [[169年]] - ルキウス・ウェルス死去 |
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* [[172年]] - [[第一次ゲルマニア戦争]]が勃発 |
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* [[175年]] - [[シリア属州]][[属州総督|総督]][[ガイウス・アウィディウス・カッシウス]]が叛乱を起こす |
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* [[177年]] - コンモドゥスを共同皇帝とする |
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* [[177年]] - [[第二次ゲルマニア戦争]]勃発 |
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* [[180年]] - ウィンドボナにおいて病により死去、コンモドゥスが単独の皇帝になる |
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138年、ドナウ川における短い駐屯を経てルキウス・アエリウスは元老院で演説を行う為に帰路へ就いた。しかし演説を行う前日に吐血して倒れ、そのままローマで病没した<ref>''HA Hadrian'' 23.15?16; Birley, ''Marcus Aurelius'', 45; "Hadrian to the Antonines", 148.</ref>{{#tag:ref|Commodus was a known consumptive at the time of his adoption, so Hadrian may have intended Marcus' eventual succession anyways.<ref>Dio 69.17.1; ''HA Aelius'' 3.7, 4.6, 6.1?7; Birley, "Hadrian to the Antonines", 147.</ref>|group=notes}}。この事件が起きた後、ハドリアヌスは1月24日にもう一人の重臣で、[[大ファウスティナ]]と結婚していた[[アントニヌス・ピウス|アウレリウス・アントニヌス]]を後継者に指名した<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 46. Date: Birley, "Hadrian to the Antonines", 148.</ref>。ただし帝位継承には、「ルキウス・アエリウスの子[[ルキウス・ウェルス]]と、大ファウスティナの甥であるカッティリウス（アウレリウス）を養子とする事」と、「大ファウスティナとの子である小ファウスティナを、ルキウス・ウェルスと婚約させる事」が条件とされた。2月25日、アントニヌスはハドリアヌスの後継者となる事を受け入れ、条件の履行を約束した<ref>Dio 69.21.1; ''HA Hadrian'' 24.1; ''HA Aelius'' 6.9; ''HA Pius'' 4.6?7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 48?49.</ref>。 |
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== 建築物 == |
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===ローマ市内=== |
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*アントニウスの記念柱 |
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*アウレリウス橋 |
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ちなみにアウレリウス自身には相談されていなかったらしく、突然に叔母夫婦の養子とされた事に愕然としたという。アウレリウスは渋々といった態度で母の家から離れ、ハドリアヌスの離宮へと移り住んだ<ref>''HA Marcus'' 5.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 49.</ref>。 |
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===属州地=== |
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*なし |
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ハドリアヌスは元老院に対し、アウレリウスが財務官への就任年齢（24歳）の規定から特例的に除外されるように命令した。元老院は要求に屈して、後にアウレリウスは18歳で財務官に就任している<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 49?50.</ref>。アウレリウスが皇帝候補者である外叔父アントニヌスの養子とされた事は、典型的な過程を無視した立身に繋がった。恐らく普通の立身であれば、まずアウレリウスは[[:en:Triumvir Monetalis|造幣官]]に任命されていたと考えられる。ある程度の経歴を積んだ元老院議員は[[トリブヌス・ミリトゥム]]（軍団幕僚）となり、名目上の軍団副司令官を務めるのが一般的であった。恵まれた立場にあったアウレリウスであったが、周囲の貴族的な退廃には呑まれず、清廉な生き方を続けた<ref>''HA Marcus'' 5.6?8, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 50.</ref>。 |
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==語録== |
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*「人は自分の魂の動きを観察しないと、必ず不幸になるものだ。」 |
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*「幸運を与える財宝や境遇は、素直に受け容れよ。ただし、それを手放すことも、素直に受け容れよ。」 |
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[[File:Joseph Mallord William Turner 019.jpg|thumb|right|300px|バイアエ]] |
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==脚註== |
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日に日にハドリアヌスの病状は悪化していき、何度か自殺未遂を繰り返しては周囲に押し留められていた。治療を諦めたハドリアヌスはカンパニアの保養地バイアエへ向かい、そこで食事や飲食などの放蕩に耽る様になった。138年7月10日、ハドリアヌスはアントニヌスに看取られて病没した<ref>Dio 69.22.4; ''HA Hadrian'' 25.5?6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 50?51. Hadrian's suicide attempts: Dio 69.22.1?4; ''HA Hadrian'' 24.8?13.</ref>。彼の遺骸は[[ポッツオーリ]]に埋葬された<ref>''HA Hadrian'' 25.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 53.</ref>。 |
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{{reflist}} |
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元老院と終始敵対し続けていたハドリアヌスの後であったが、アントニヌスは元老院を尊重した事で安定して帝位は継承された。またアントニヌスはハドリアヌスへの弾劾を取り下げるように元老院を宥めた<ref>''HA Pius'' 5.3, 6.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 55?56; "Hadrian to the Antonines", 151.</ref>。周囲と軋轢無く政治を進めるアントニヌスは「アントニヌス・ピウス」（慈悲深きアントニヌス）という渾名で呼ばれた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 55; "Hadrian to the Antonines", 151.</ref>。 |
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{{Commons|Marcus Aurelius}} |
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==参考文献== |
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* マルクス・アウレーリアス『[[自省録]]』（[[神谷美恵子]]訳、[[岩波文庫]]、改版2007年） |
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**訳書は、鈴木照雄訳：[[講談社学術文庫]]と、[[水地宗明]]訳：[[京都大学学術出版会]]〈西洋古典叢書〉でも刊行。 |
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* 荻野弘之 『マルクス・アウレリウス「自省録」 精神の城塞』（[[岩波書店]]〈書物誕生〉、2009年7月） |
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*[[塩野七生]] 『[[ローマ人の物語]]XI 終わりの始まり』（[[新潮社]]、2002年、ISBN 4103096209 / 新潮文庫3分冊、2007年） |
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* クリス・スカー 『ローマ皇帝歴代誌』（月村澄枝訳、[[創元社]]、1998年） |
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===叔父アントニヌスの即位=== |
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== 関連項目 == |
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ハドリアヌスの死後、直ぐにアントニヌスは妻の甥（アウレリウス）を政敵の息子（ウェルス）より重用する姿勢を見せ、アウレリウスからすれば従姉妹である小ファウスティナとの結婚を要請した。アウレリウスと小ファウスティナはそれぞれの元の婚約を破棄すると、親族同士（[[従兄弟婚]]）による結婚に同意した<ref>''HA Marcus'' 6.2; ''Verus'' 2.3?4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 53?54.</ref>。 |
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* [[マルクス・アウレリウスの記念柱]] |
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叔父の皇帝即位と、その子女である従姉妹との結婚は、アウレリウスの宮殿における地位を大幅に引き上げた。140年にアウレリウスはアントニヌスの同僚執政官に叙任され、続いて全エクイテスを指揮する騎士総長（iuventutis）に任命された。皇帝の後継者としての証である副帝の称号も受け、全名をマルクス･アエリウス・アウレリウス・ウェルス・カエサル（Marcus Aelius Aurelius Verus Caesar）に改名した<ref>Dio 71.35.5; ''HA Marcus'' 6.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 56.</ref>。アウレリウスは自身の名声に溺れず、清廉な生き方を貫く様に意識したと語っている<ref>''Meditations'' 6.30, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 57; cf. ''Marcus Aurelius'', 270 n.9, with notes on the translation.</ref>。神学に関する専門知識も健在であり、元老院の命によって幾つかの神学者の組織(''pontifices''、''augures''、''quindecimviri sacris faciundis''、''septemviri epulonum''、''Arval Brethren'')に加わっているが<ref name="ReferenceA">''HA Marcus'' 6.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 57.</ref>、歴史的資料で証明できるものは「''Arval Brethren''」への参加のみである<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 57, 272 n.10, citing ''Codex Inscriptionum Latinarum'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+06,+00032&r_sortierung=Belegstelle 6.32], [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+06,+00379&r_sortierung=Belegstelle 6.379], cf. ''Inscriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+00360&r_sortierung=Belegstelle 360].</ref>。 |
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== 外部リンク == |
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* {{SEP|marcus-aurelius|マルクス・アウレリウス}} |
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* {{IEP|m|marcus|マルクス・アウレリウス}} |
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アントニヌスは質素な生活を好んだ甥に宮殿で生活するように命じ、また皇帝の親族に相応しい華やかな生活を行うべきだと促した<ref name="ReferenceA"/>。叔父の命に従って宮殿に移り住んだアウレリウスは、退廃した貴族文化と自身の生き方との食い違いに悩んだ。アウレリウスの望みはストア派哲学に基づいた禁欲と自省であり、人間の持つ理性がそれを可能にすると信じていた。最終的にアウレリウスは「生命がある限り、人間は理性で己を律する可能性を持つ。そして宮殿は退廃した場所だが、生きる上での不都合まではない。従って周囲が退廃に満ちている宮殿においても、己を律することは可能である」と結論している<ref>''Meditations'' 5.16, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 57.</ref>。しかしこうした結論にも関わらず、アウレリウスは宮殿の退廃にしばしば飲み込まれてしまい、「自省録」では自らその罪を書き連ねて懺悔している<ref>''Meditations'' 8.9, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 57.</ref>。 |
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{{先代次代|[[ローマ皇帝一覧|ローマ皇帝]]|[[161年]] - [[180年]]|[[アントニヌス・ピウス]]|[[コンモドゥス]]}} |
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財務官としてのアウレリウスの仕事や権限は無いに等しく、皇帝不在の時に手紙を代読するといった秘書的な役割が精々だった。執政官としては二つの元老院議長の一人として議会を統制する立場であった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 57?58.</ref>。代読作業についてアウレリウスは自身の秘書官に「毎日30通の手紙を口述しているおかげで息が切れそうだ」と皮肉を口にしている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.7, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 90.</ref>歴史家たちは「アウレリウスは政務に才覚があった」と述べている<ref>''HA Marcus'' 6.5; Birley, ''Marcus Aurelius'', 58.</ref>。毎日元老院で演説と議論の統制を行っていたアウレリウスは、必然的に弁論術を学ばなければならなくなった<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 89">Birley, ''Marcus Aurelius'', 89.</ref>。 |
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145年、アウレリウスは二度目の執政官叙任を受けた。この時にアウレリウスは体調を崩していた可能性があり、秘書官は「貴方が良い顔色で元老院に入って力強く演説できるように、十分な睡眠を取るべきです」とする手紙を送っている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 5.1, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 89.</ref>。アウレリウス自身の手紙では「私の体調は快方に向かっている。かつてのように胸に痛みを感じる事はなくなった。しかし私は自分の潰瘍{{#tag:ref|The manuscript is corrupt here.<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 89"/>|group=notes}}（中略）…について常に意識した治療を行っている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.8, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 89.</ref>。アウレリウスは余り体が丈夫な方ではなく、カッシウス・ディオはそうした部分を感じさせずに振舞う様を賞賛している<ref>Dio 71.36.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 89.</ref>。 |
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[[File:Faustina Minor Louvre Ma1144.jpg|thumb|right|A bust of Faustina the Younger, Marcus' wife ([[Louvre]])]] |
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145年、アウレリウスは7年前に結んだ婚約に従って従姉妹の小ファウスティナと結婚した。血統上でも既に近い親族関係にあった両者であるが、法律的には義理の兄妹ですらあったので、どちらかに対して家父長権を放棄せねばならなかった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 90?91.</ref>。二人の式典についての記録は散逸しているが、当時の注目を集めた出来事であった事は分かっている<ref>''HA Pius'' 10.2, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 91.</ref>。二人の結婚を記念する通貨が出され、また最高神祇官でもあったアントニヌスが式典を監督したと見られる<ref>Birley, ''Marcus Unko Aurelius'', 91.</ref>。 |
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===アウレリウスの教師達=== |
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136年に成人の儀式を終えたアウレリウスは直ちに弁論術の教育を始めたと考えられている<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 61.</ref> 彼は三人のギリシャ人学者と一人のラテン人学者を教師としたが、これは当時のローマにおけるギリシャ文化の勢威を示している<ref>''HA Marcus'' 2.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 62.</ref>自省録にもそうした影響が見て取れる箇所がある<ref>Alan Cameron, review of Anthony Birley's ''Marcus Aurelius'', ''Classical Review'' 17:3 (1967): 347.</ref>。<!-- The latter two were the most esteemed orators of the day.<ref>''HA Marcus'' 3.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 62.</ref> --> |
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[[File:Herodes Atticus - bust - Athens Museum.jpg|left|thumb|upright|弁護士ヘロデ・アティクス]] |
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その中でも最も重用されていた人物で、アテネ随一の財産家でもあった弁護士[[:en:Herodes Atticus|ヘロデ・アティクス]]の存在は常に論争の的であった。ヘロデは癇癪持ちで神経質な性格をしており、また傲慢な態度で振る舞って同じアテネ人からも嫌われていた<ref>''Vita Sophistae'' 2.1.14; Birley, ''Marcus Aurelius'', 63?64.</ref>。加えて豪勢な生活を好んだヘロデはストア主義を否定し、ギリシャ哲学の権威自体も軽視していた<ref>Aulus Gellius, ''Noctes Atticae'' 9.2.1?7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 64?65.</ref>。彼はストア派の唱える禁欲を愚かな発想と一蹴して「鈍感で無気力な人生に何の価値がある」と嘲笑した<ref>Aulus Gellius, ''Noctes Atticae'' 19.12, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 65.</ref>。アウレリウスはヘロデから弁論術を学び続けたが、やはり個人的には反りが合わなかったらしく「自省録」にヘロデについては一切言及されていない<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 65.</ref>。 |
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一方、唯一のラテン人家庭教師であったフロントという人物とはとても親密な間柄となった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 67?68, citing E. Champlin, ''Fronto and Antonine Rome'' (1980), esp. chs. 3 and 4.</ref>。フロントは[[キケロ]]に次ぐ才人と評され<ref name="ReferenceB">Birley, ''Marcus Aurelius'', 65?67.</ref>{{#tag:ref|Moderns have not offered as positive an assessment. His second modern editor, [[Barthold Georg Niebuhr|Niebhur]], thought him stupid and frivolous; his third editor, [[Samuel Adrian Naber|Naber]], found him contemptible.<ref>Champlin, ''Fronto'', 1?2.</ref> Historians have seen him as a "pedant and a bore", his letters offering neither the running political analysis of a Cicero or the conscientious reportage of a Pliny.<ref>Ronald Mellor, review of Edward Champlin's ''Fronto and Antonine Rome'', ''The American Journal of Philology'' 103:4 (1982): 460.</ref> Recent prosopographic research has rehabilitated his reputation, though not by much.<ref>Cf., eg.: Ronald Mellor, review of Edward Champlin's ''Fronto and Antonine Rome'', ''The American Journal of Philology'' 103:4 (1982): 461 and ''passim''.</ref>|group=notes}}、ラテン語の弁論術と修辞学に関して完璧な知識を持っていた<ref name="ReferenceB"/>。アウレリウスとフロントの往復書簡は大部分が現存しており<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 69">Birley, ''Marcus Aurelius'', 69.</ref>、アウレリウスはフロントに以下の言葉を贈っている。「親愛なる我が師よ、さようなら。例え何処に居ようとも、貴方への愛と喜びに変わるところはありません。私は貴方を愛しています。なのに何故貴方は此処に居ないのか。」<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.6 (= Haines 1.80ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 76.</ref> アウレリウスはフロントと家族ぐるみの付き合いすら持ち、彼の娘と手紙を交わしている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.6 (= Haines 1.80ff); Birley, ''Marcus Aurelius'', 76?77.</ref>。別の手紙では「弁論術の全てを貴方から学べるよう、神に祈りを捧げた」と記されている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 3.10?11 (= Haines 1.50ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 73.</ref>。フロントは病弱な人物でよく体調を崩して療養する事があり<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 73.</ref>、アウレリウスが書き送った手紙の4分の1は病気を気遣う内容であった<ref>Champlin, "Chronology of Fronto", 138.</ref>。アウレリウスは不幸な師と同じ病が自らに降りかかることすら望んだという<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 5.74 ( =Haines 2.52ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 73.</ref>。 |
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フロントはアウレリウスに弁論術を教える傍ら弁護士としての活動を続けていたが、ある裁判でヘロデと争う事になった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 77. On the date, see Champlin, "Chronology of Fronto", 142, who (with Bowersock, ''Greek Sophists in the Roman Empire'' (1964), 93ff) argues for a date in the 150s; Birley, ''Marcus Aurelius'', 78?79, 273 n.17 (with Ameling, ''Herodes Atticus'' (1983), 1.61ff, 2.30ff) argues for 140.</ref>。アウレリウスはフロントに好意を持っていたが、助言という形でヘロデとも諍いをしないように求めた<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 3.2 (= Haines 1.58ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 77?78.</ref>。フロントはアウレリウスがヘロデもまた友として扱った事に感心したが<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 3.3 (= Haines 1.62ff); Birley, ''Marcus Aurelius'', 78.</ref>、この一件ばかりは自分も引き下がれないと拒否したという<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 3.3 (= Haines 1.62ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 79.</ref>。裁判の結果は記録が残っていない<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 80.</ref>。 |
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26歳の時、アウレリウスはいかに陪審員を説得するかに重きを置いているローマの司法制度に不満を感じるようになっていた。フロントへの手紙で「弁護士の仕事は裁判官の隣で欠伸をするだけと呼ばれないようにすべきです」と書き送っている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.13 (= Haines 1.214ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 93.</ref>。アウレリウスは様々な場面を想定して行われる問答や仮想議論に熱意を失い、弁論術の用いる詭弁や言葉遊びの要素を不誠実だと批判したが、フロントには受け入れてもらえず叱責されている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.3.1 (= Haines 1.2ff); Birley, ''Marcus Aurelius'', 94.</ref>。フロントはアウレリウスが哲学に傾倒する事を窘める発言をしている<ref>''Ad Marcum Caesarem'' 4.3, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 69.</ref>。フロントもまたヘロデと同じくギリシャ哲学を軽んじていたのである<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 69"/>。彼は哲学を「必要な知識を得ることに飽きた若者が傾倒する学問」と形容した上で、アウレリウスが弁論術の修行を怠る事を嘆く手紙を残している<ref>''De Eloquentia'' 4.5 (= Haines 2.74), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 95. Alan Cameron, in his review of Birley's biography (''The Classical Review'' 17:3 (1967): 347), suggests a reference to chapter 11 of Arthur Darby Nock's ''Conversion'' (Oxford: Oxford University Press, 1933, rept. 1961): "Conversion to Philosophy".</ref>。弁論術を学ばなくなってからもアウレリウスはフロントと親密だったが、良心は咎めていたようである<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 94, 105.</ref>。 |
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アウレリウスは次第に興味を哲学へと移していたが、弁論学も直向に学んでいたことに違いは無い。彼の青年時代の教育については、「体を大事にしなかった」こと以外に批判すべき点は見当たらない<ref>''HA Marcus'' 3.5?8, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 94.</ref>。 |
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ストア派については上述の通りアポロニウスの存在が大きいが、[[:en:Junius Rusticus|ユニウス・ルスティクス]]も大きな影響を与えていた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 95; Champlin, ''Fronto'', 120.</ref>{{#tag:ref|Champlin notes that Marcus' praise of him in the ''Meditations'' is out of order (he is praised immediately after Diognetus, who had introduced Marcus to philosophy), giving him special emphasis.<ref>Champlin, ''Fronto'', 174 n. 12.</ref>|group=notes}}<!-- He was the man Fronto recognized as having "wooed Marcus away" from oratory.<ref>''Ad Antoninum Imperator'' 1.2.2 (= Haines 2.36), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 95.</ref>-->彼はフロントより年上のストア派哲学者で、強権的なドミティアヌス帝の治世に反対して処刑された元老議員アウレリウス・ルスティクスの末裔でもあった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 94?95, 101.</ref>。彼はキケロの再来と呼ばれたフロントに対して、暴君ネロを窘めて処刑された哲学者[[セネカ]]の再来と呼ばれていた<ref>Champlin, ''Fronto'', 120.</ref>。アウレリウスはルティクスを最良の師と呼び、生涯尊敬を続けることとなる<ref>''Meditations'' 1.7, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 94?95.</ref>。 |
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===家庭と子女=== |
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[[File:RomaCastelSantAngelo-2.jpg|thumb|right|320px|The [[Mausoleum of Hadrian]], where the children of Marcus and Faustina were buried]] |
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<!-- On 30 November 147, Faustina gave birth to a girl, named Domitia Faustina. It was the first of at least fourteen children (including two sets of twins) she would bear over the next twenty-three years. The next day, 1 December, Pius gave Marcus the [[tribune|tribunician]] power and the ''[[imperium]]''?authority over the armies and provinces of the emperor. As tribune, Marcus had the right to bring one measure before the senate after the four Pius could introduce. His tribunican powers would be renewed, with Pius', on 10 December 147.<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 103.</ref> -->147年11月30日、小ファウスティナは最初の子供を生み、アウレリウスは長女となる娘にガレリア・ファウスティナと名付けた。アウレリアはその後の23年間で生まれた13人の子供（2度の双生児を含む）の長子となった。その翌日である12月1日にアントニヌスはアウレリウスに護民官職権を与えた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 103.</ref>。ガレリア・ファウスティナは元老院議員[[:en:Gnaeus Claudius Severus|グナエウス・クラウディウス・セウェルス]]と結婚して[[:en:Tiberius Claudius Severus Proculus|グナエウス・クラウディウス・セウェルス]]（西暦200年に執政官叙任）を生んだが、2年後に18歳で病没した。 |
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149年、二度目の出産では双子の兄妹（二卵性双生児）が生まれ、双子の誕生を祝う硬貨（''temporum felicitas''）が発行された。長男となる兄はゲメルス、次女となる妹は[[ルキッラ]]と名付けられた。この内、次女ルキッラは成人して後にアウレリウスの共同皇帝となった[[ルキウス・ウェルス]]と結婚した。跡継ぎである長男ゲメルスは子供の死亡率が高い古代ローマでは良くあった事とは言え、不幸にも1歳で亡くなった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 206?7.</ref>。それから短期間に四人の子供（次男・三男・四男・三女）が産まれたが157年に四男を失い、161年に相次いで次男・三男・三女を失った。次男と三男については出生を祝う硬貨と二人の墓で分かったことであり、碑銘には「アントニヌス」と「アエリウス」と刻まれている<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 206?7.</ref>。三女はドミティア・ファウスティナ、四男はハドリアヌスという名で記録されている。 |
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相次いで5人の子供に先立たれたアウレリウスは動じる事無く不幸を受け止めた<ref>''Meditations'' 9.40, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 207.</ref>。彼は「自省録」で[[イーリアス]]の有名な言葉を引用している。 |
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{{quotation|''木に実る葉''<BR>''風はその幾つかを地面へと落とす''<BR>''子供とはそういうものだ''<BR> ''―――『イーリアス』'' 6.146<ref>''Meditations'' 10.34, tr. Farquharson, 78, 224.</ref></blockquote>}} |
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[[File:Antoninus Pius Glyptothek Munich 337 cropped.jpg|thumb|right|アントニヌス]] |
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自身の母ドミティア・ルキッラが亡くなってから5年後となる159年に四女[[ファデイラ]]が生まれ、翌年となる160年に五女[[コルニフィキア]]が生まれた。後にファディラは元老議員[[:en:Marcus Peducaeus Plautius Quintillus|マルクス・ペドゥカエウス・プラウティヌス・クィントゥルス]]、コルニフィキアは元老議員[[:en:Marcus Petronius Sura Mamertinus|マルクス・ペトロニウス・マメルティヌス]]とそれぞれ結婚して父の治世を固めるのに貢献した。 |
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そして161年、12年ぶりに双子の子供が出産され、二人の男児を授かることになる。双子はそれぞれ五男ティトゥス、六男[[コンモドゥス]]と名付けられた。続いて翌年にも七男[[:en:Marcus Annius Verus Caesar|ウェルス]]も生まれ、暫くは子育てに専念するべく子供は儲けられたなかった。9年後の171年、久しぶりに子供を儲けて六女サヴィナと名付けられるが、彼女が夫妻の最後の子供となった。 |
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===アントニヌス帝の死=== |
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152年、ルキウス・ウェルスがアントニヌスから[[クァエストル|財務官]]へ指名を受け、続いて2年後の154年に執政官へ叙任された。 |
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アウレリウスは財務官と執政官の両職を既に終えていたので、一連の出来事は遅ればせながら後継者候補が等しい立場になった事を意味した。それまでルキウスは皇子を除く称号を与えられていなかった。これはアントニヌスが親族を優先しただけでなく、ルキウスに皇帝の資質が伴っていないという周囲の批判によるものであった<ref>''HA Verus'' 2.9?11; 3.4?7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 108.</ref>{{#tag:ref|Although part of the biographer's account of Lucius is fictionalized (probably to mimic Nero, whose birthday Lucius shared<ref>Suetonius, ''Nero'' 6.1; ''HA Verus'' 1.8; Barnes, 67; Birley, ''Marcus Aurelius'', 158. See also: Barnes, 69?70; Pierre Lambrechts, "L'empereur Lucius Verus. Essai de rehabilitation" (in French), ''Antiquite Classique'' 3 (1934), 173ff.</ref>), and another part poorly compiled from a better biographical source,<ref>Barnes, 66. Poorly compiled: eg. Barnes, 68.</ref>。scholars have accepted these biographical details as accurate.<ref>Barnes, 68?69.</ref>|group=notes}}。個人的にもアントニヌスはルキウスを嫌い、皇族の一員として残す事はともかくそれ以上の権威は極力与えたがらなかった<ref>''HA Verus'' 2.9?11; 3.4?7; Barnes, 68; Birley, ''Marcus Aurelius'', 108.</ref>。160年までルキウス・ウェルスを象った通貨は発行されていない<ref>Barnes, 68, citing J. Vogt, ''Die Alexandrinischen Miinzen'' (1924), I, III; 2, 62ff.</ref>。 |
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156年、70歳を迎えていたアントニヌスは目に見えて衰弱しており、まともに立つことも困難になりつつあった。老いた皇帝は早朝の会議で眠らないように乾いたパンを口の中で噛み続ける習慣を行ったとも言われる。アウレリウスは叔父の補佐官として行動する機会が増え、皇帝の政務を一部代行するようになった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 112.</ref>。アウレリウスとルキウスが執政官と共同執政官に叙任された160年には既に不治の病を抱えていた<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 114"/>。 |
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ある日、アルプス産のチーズを食べたアントニヌスはその夜に嘔吐と発熱を起こした。161年3月7日、アントニヌスは病を押して議会を開くと、自らの寝室に置かれていたフォルトゥナ神の銅像を「アウレリウスの寝室に移せ」と命じた。言い終えるとアントニヌスはそのまま仰向けに倒れて息を引き取った<ref>''HA Pius'' 12.4?8; Birley, ''Marcus Aurelius'', 114.</ref><ref>Dio 71.33.4?5; Birley, ''Marcus Aurelius'', 114.</ref>。 |
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==治世== |
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{{Main|:en:Emperorship of Marcus Aurelius}} |
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===皇帝即位=== |
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[[File:Marcus02 pushkin.jpg|thumb|right|180px|トーガを被るアウレリウス]] |
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アントニヌス帝崩御後、誰もが甥にして娘婿であるアウレリウスの即位を有力視し、実質的に皇帝候補者は一人だけのように扱われた。元老院は直ちに[[アウグストゥス]]（尊厳者）と[[インペラトル]]（軍指揮官）の二大称号を授与、更には最高神官長にも就任した。アウレリウスは皇帝即位を拒む素振りを見せ、複数の伝記作家は「彼は無理に帝位を継がされたのだ」とまで論じている<ref>''HA Marcus'' 7.5, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 116.</ref>。事実はともかく、アウレリウスのストア派的な価値観からすれば皇帝としての権力に魅力を感じず、退廃した宮廷での政務を好ましく思わなかった可能性はある<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 116. Birley takes the phrase ''horror imperii'' from ''HA Pert''. 13.1 and 15.8.</ref>。 |
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また叔父と自身の即位を企てたハドリアヌス帝を個人的に好んではいなかった（「自省録」ではハドリアヌスに辛辣な評価を与えている）が、恩人の考えに狂いを生じさせるのも不義理と考えていた<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 156.</ref>。従って元老院と叔父が意図的に除外していたルキウス・ウェルスも、ハドリアヌス帝の遺言の通りに自らの共同皇帝にするように命じた<ref>''HA Verus'' 3.8; Birley, ''Marcus Aurelius'', 116; "Hadrian to the Antonines", 156.</ref>。かくしてルキウスも共同皇帝として元老院から認可され、「アウグストゥス」「インペラトル」の称号と護民官職権を得た<ref>''HA Verus'' 4.1; ''Marcus'' 7.5; Birley, ''Marcus Aurelius'', 116.</ref>。 |
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[[File:Lucius Verus BM Sc1911.jpg|thumb|180px|left|ルキウス・ウェルス像]] |
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戴冠した二人はそれぞれ皇帝'''インペトラル・カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥス'''（Imperator Caesar Marcus Aurelius Antoninus Augustus）、共同皇帝'''インペトラル・カエサル・ルキウス・アウレリウス・ヴェルス・アウグストゥス'''（Imperator Caesar Lucius Aurelius Verus Augustus）と名乗った<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 116?17.</ref>{{#tag:ref|These name-swaps have proven so confusing that even the ''Historia Augusta'', our main source for the period, cannot keep them straight.<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 117; "Hadrian to the Antonines", 157 n.53.</ref> The fourth-century ecclesiastical historian [[Eusebius of Caesarea]] shows even more confusion.<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 157 n.53.</ref> The mistaken belief that Lucius had the name "Verus" before becoming emperor has proven especially popular.<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 117">Birley, ''Marcus Aurelius'', 117.</ref>|group=notes}}。いわゆる「共同皇帝制」が採用されたのはこれが初めての事例となった<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 117"/>{{#tag:ref|There was, however, much precedent. The consulate was a twin magistracy, and earlier emperors had often had a subordinate lieutenant with many imperial offices (under Pius, the lieutenant had been Marcus). Many emperors had planned a joint succession in the past?[[Augustus]] planned to leave [[Gaius Caesar]] and [[Lucius Caesar]] as joint emperors on his death; Tiberius wished to have [[Gaius Caligula]] and [[Tiberius Gemellus]] do so as well; [[Claudius]] left the empire to [[Nero]] and [[Britannicus]], imagining that they would accept equal rank?but all of these arrangements had ended in failure, either through premature death (Gaius and Lucius Caesar) or judicial murder (Gemellus by Caligula and Britannicus by Nero).<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 117"/>|group=notes}}。名目上はともかく、実質的にアウレリウスの方が遥かに多くの権限を持ち、ルキウスはアウレリウスの共同者でしかなかった。どちらが皇帝で、どちらがその共同皇帝かは民衆の間ですら明らかであった<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 117"/>。伝記作家は「ルキウスはアウレリウスに従った。ちょうど属州総督が皇帝に従うのと同じ理屈で、臣下として従ったのだ」と書き残している<ref>''HA Verus'' 4.2, tr. David Magie, cited in Birley, ''Marcus Aurelius'', 117, 278 n.4.</ref>。 |
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即位後すぐに二人の皇帝は近衛隊の駐留する城砦[[:en:Castra Praetoria|カステル・プラトリア]]に赴いた。ルキウス帝は近衛隊にクラウディウス帝時代からの慣習となっていたドナティブム（皇帝即位時の特別給金）を約束した<ref>''HA Marcus'' 7.9; ''Verus'' 4.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 117?18.</ref>。しかしルキウスが約束したドナティブムは通例の二倍となる5000セルティウスという巨額であり、数年分の賃金に相当する恩給で近衛隊の忠誠を確固たるものにした<ref>''HA Marcus'' 7.9; ''Verus'' 4.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 117?18. "twice the size": Richard Duncan-Jones, ''Structure and Scale in the Roman Economy'' (Cambridge: Cambridge University Press, 1990), 109.</ref>。アウレリウス帝の権力継承が磐石であったことを考えれば絶対に必要な行動という訳ではなく、もしもの時の保険という意味合いが強かった<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 118">Birley, ''Marcus Aurelius'', 118.</ref>。 |
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アントニヌス帝の壮大な葬儀が終わった後<ref>''HA Marcus'' 7.10, tr. David Magie, cited in Birley, ''Marcus Aurelius'', 118, 278 n.6.</ref>、アウレリウス帝とルキウス帝は先帝を神の列に並べる事を提案した。かつてそのアントニヌス帝がハドリアヌス帝を神格化しようとした時の猛烈な反発とは対照的に、元老院はアントニヌス帝を神として祭る事を直ちに承認した。遺骸はハドリアヌス廟に葬られたと伝えられる<ref>''HA Marcus'' 7.10?11; Birley, ''Marcus Aurelius'', 118.</ref>。アントニヌス神殿は後にアウレリウスの妻で、先帝の娘である小ファウスティナも祭られ、アントニヌス・ファウスティナ神殿と呼ばれた。現在もこの神殿はカトリック教会によって保全されている。<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 118"/>。 |
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先帝の財産は全て娘である妻ファウスティナが相続したが<ref>''HA Pius'' 12.8; Birley, ''Marcus Aurelius'', 118?19.</ref>、アウレリウス個人も富豪の娘である母ドミティアから財産を受け継いでいたのでそれほど重要な出来事ではなかった<ref>''HA Marcus'' 7.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 119.</ref>。父の死の直後、ファウスティナは[[コモドゥス]]とティトゥスの双子を出産したが、その際に二つの恐ろしい怪物を生む夢を見たとされる<ref>''HA Comm''. 1.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 119.</ref><ref>''HA Comm''. 1.2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 119.</ref>{{#tag:ref|The biographer relates the scurrilous (and, in the judgment of Anthony Birley, untrue) rumor that Commodus was an illegitimate child born of a union between Faustina and a gladiator.<ref>''HA Marcus'' 19.1?2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 278 n.9.</ref>|group=notes}}。占い師達は双子の出産を吉兆としたが、かの暴君カリグラと同じ誕生日である事だけは不安に感じられた<ref>''HA Comm''. 1.4, 10.2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 119.</ref>。五男と六男の誕生は盛大に祝われ、二人の皇子を象った通貨が発行された<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 119, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 155ff.; 949ff.</ref>。 |
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===初期統治=== |
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即位してすぐにまずアウレリウス帝は自らの長女で、法律上はルキウス帝の義姪にあたるルキッラとルキウス帝の結婚を決定した<ref>''HA Marcus'' 7.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 118.</ref>。同時に帝国初期の路線に沿って、貧民階級の子供に対する慈善政策を進めた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 118, citing Werner Eck, ''Die Organisation Italiens'' (1979), 146ff.</ref>。アウレリウスはその質素な生活と、貴族的でない謙虚な振る舞いから民衆の人気を集めていた。言論の自由は保障され、喜劇作家が皇帝を揶揄する文言を発表しても決して罰せられなかった。それ以前の皇帝達はもちろん、以後の皇帝達でもこうした事を許す場合は少なかった。伝記作家は「寛大な方法を見落とさなかった」と述べている<ref>''HA Marcus'' 8.1, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 119; "Hadrian to the Antonines", 157.</ref>。 |
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次にアウレリウス帝は人事政策に着手し、帝国要職の刷新を行った。通信長官（''Ab epistulis''）をセクストゥス・カエキリウス・クレスセンス・ヴォルシアヌス（Sextus Caecilius Crescens Volusianus）からティトゥス・ウァリウス・クレメンス（Titus Varius Clemens）に交代させた。ティトゥス・クレメンスはマウレタニア戦争での活躍で台頭し、5つの属州総督を歴任した人物であった。彼は軍部隊指揮に関する実績があり、有事に備えての人事であった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 122?23, citing H.G. Pfalum, ''Les carrieres procuratoriennes equestres sous le Haut-Empire romain'' I?III (Paris, 1960?61); ''Supplement'' (Paris, 1982), nos. 142; 156; Eric Birley, ''Roman Britain and the Roman Army'' (1953), 142ff., 151ff.</ref>。かつてアウレリウスの教育に携わった人物の一人であり、即位時にはエジプト総督を務めていたルキウス・ウォルシウス・マエキアヌス（Lucius Volusius Maecianus）は元老院議席を与えられて国庫長官 (''[[:en:Aerarium|aerarium Saturni]]'')に指名された。後にウォルシウスは執政官にも叙任されている<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 123, citing H.G. Pfalum, ''Les carrieres procuratoriennes equestres sous le Haut-Empire romain'' I?III (Paris, 1960?61); ''Supplement'' (Paris, 1982), no. 141.</ref>。更に恩師フロントの子息オウフィディウス・ヴィクトリアヌス（Aufidius Victorinus）も抜擢され、属州[[ゲルマニア・スペリオル]]の総督に任命された<ref name="HA Marcus 8 1985">''HA Marcus'' 8.8; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123, citing W. Eck, ''Die Satthalter der germ. Provinzen'' (1985), 65ff.</ref>。 |
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[[File:Castel Sant'Angelo2.JPG|thumb|right|180px|ティヴェレ川]] |
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属州アフリカのキルタ市で隠棲していたフロントは教え子の即位を聞くと3月28日に帝都ローマへ向かい、自由民にアウレリウス帝への手紙を託した。あえてフロントは直接アウレリウス帝に手紙を送ることはしなかった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 120, citing ''Ad Verum Imperator'' 1.3.2 (= Haines 1.298ff).</ref>。フロントは自らの教え子を誇りに思い、手紙にこう記した。「貴方には天賦の才があった。その才は今完成しつつある。成長する果実は実をつけ、民衆に熟した収穫を与えるだろう。私は貴方に希望を抱き、そしてその希望は現実となった」<ref>''Ad Antoninum Imperator'' 4.2.3 (= Haines 1.302ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 119.</ref>。後に二人は再会の場を持つが、そこにルキウス帝を呼ぶ考えは双方に無かった<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 120">Birley, ''Marcus Aurelius'', 120.</ref>。ルキウス帝はアウレリウス帝ほどフロントから敬意を受けていなかった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 120, citing ''Ad Verum Imperator'' 1.1 (= Haines 1.305).</ref>。アウレリウス帝は恩師に今読んでいる本（[[:en:Lucius Coelius Antipater|ルキウス・コエリウス・アンティパテル]]）についての話をした<ref>''Ad Antoninum Imperator'' 4.1 (= Haines 1.300ff), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 120.</ref>。アウレリウスは確かに「庶民的な皇帝」として大衆に人気があったが<ref>''HA Marcus'' 8.3?4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 120.</ref>、次第に多くの困難を抱え始め「最も幸福な時代」と呼ばれた初期の統治は終わりを迎える<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 120, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 841; 845.</ref>。 |
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162年の春{{#tag:ref|Because both Verus and Marcus are said to have taken active part in the recovery (''HA Marcus'' 8.4?5), the flood must have happened before Verus' departure for the east in 162; because it appears in the biographer's narrative after Pius' funeral has finished and the emperors have settled into their offices, it must not have occurred in the spring of 161. A date in autumn 161 or spring 162 is probable, and, given the normal seasonal distribution of Tiber flooding, the most probable date is in spring 162.<ref>Gregory S. Aldrete, ''Floods of the Tiber in ancient Rome'' (Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2007), 30?31.</ref> (Birley dates the flood to autumn 161.<ref name="Birley, Marcus Aurelius, 120"/>)|group=notes}}、ティヴェレ川の増水によってラティウム地方に甚大な被害が及び、農作物の損失から飢饉が発生した<ref>''HA Marcus'' 8.4?5; Birley, ''Marcus Aurelius'', 120.</ref>{{#tag:ref|Since 15 CE, the river had been administered by a Tiber Conservancy Board, with a consular senator at its head and a permanent staff. In 161, the ''curator alevi Tiberis et riparum et cloacarum urbis'' ("Curator of the Tiber Bed and Banks and the City Sewers") was A. Platorius Nepos, son or grandson of [[Aulus Platorius Nepos|the builder]] of [[Hadrian's Wall]], whose name he shares. He probably had not been particularly incompetent. A more likely candidate for that incompetence is Nepos' likely predecessor, [[Marcus Statius Priscus|M. Statius Priscus]]. A military man and consul for 159, Priscus probably looked on the office as little more than "paid leave".<ref>''Inscriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+05932&r_sortierung=Belegstelle 5932] (Nepos), [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+01092&r_sortierung=Belegstelle 1092] (Priscus); Birley, ''Marcus Aurelius'', 121.</ref>|group=notes}}。 |
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全ての皇帝がそうであるように、君主の政務の殆どは公文書の制作と署名で費やされる<ref>Fergus Millar, ''The Emperor in the Roman World, 31 BC ? AD 337'' (London: Duckworth, 1977), 6 and ''passim''. See also: idem. "Emperors at Work", ''Journal of Roman Studies'' 57:1/2 (1967): 9?19.</ref>。アウレリウスは法律に関する専門的知識を持ち、それに基づいた改革や行政を行った<ref>''Codex Justinianus'' 7.2.6, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 133.</ref><ref>''Digest'' 31.67.10, qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 133.</ref>。特にアウレリウスは孤児や少年少女の保護、解放奴隷についての法律、市議会議員の選出方法などを改革した<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 133.</ref>。 |
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===パルティア戦争=== |
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:''For details, see: [[パルティア戦争]] |
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====初期の敗北==== |
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アントニヌス帝は死の間際に何時の日か帝国の脅威となるだろう周辺国の君主について言い残したが<ref>''HA Pius'' 12.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 114, 121.</ref>、その一人に含まれていたパルティア王[[ヴォロガセス4世]]による戦乱が引き起こされた<ref>Event: ''HA Marcus'' 8.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 121. Date: Jaap-Jan Flinterman, "The Date of Lucian's Visit to Abonuteichos," ''Zeitschrift fur Papyrologie und Epigraphik'' 119 (1997): 281.</ref>。161年に、帝国の庇護下にあった[[:en:Kingdom of Armenia (antiquity)|アルメニア王国]]にパルティア軍が侵攻、王を追放して新たに親パルティア派の君主を立てる行動に出た<ref>''HA Marcus'' 8.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 121.</ref>。アルメニア王国を管轄内とするカッパドキア総督マルクス・セダティウス・セウェリアヌス(Marcus Sedatius Severianus)はガリア地方で幾つもの軍功を挙げた人物であった<ref>Lucian, ''Alexander'' 27; Birley, ''Marcus Aurelius'', 121.</ref>。セウェリアヌスは占い師の助言もあって積極的な攻勢を決断し、軍を率いてアルメニア王国へ向かった<ref>Lucian, ''Alexander'' 27; Birley, ''Marcus Aurelius'', 121?22. On Alexander, see: Robin Lane Fox, ''Pagans and Christians'' (Harmondsworth: Penguin, 1986), 241?50.</ref>。[[:en:Legio IX Hispana|第9軍団「ヒスパナ」]]<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 278 n.19.</ref>) を中心とするセウェリアヌス軍はアルメニア領内に到達したが、途中でパルティア軍の伏兵攻撃に大敗を喫してカッパドキアへ敗走した<ref>Dio 71.2.1; Lucian, ''Historia Quomodo Conscribenda'' 21, 24, 25; Birley, ''Marcus Aurelius'', 121?22.</ref>。 |
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[[Image:Coin of Vologases IV of Parthia.jpg|thumb|300px|Coin of Vologases IV, king of Parthia, from 152/53]] |
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時同じくしてブリタニア・ラエティア・ゲルマニアなどでも周辺勢力の攻撃が活発化、特に[[カッティ族]]と[[タウヌス族]]の存在が国境防衛を脅かしていた<ref>''HA Marcus'' 8.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 122.</ref>。アウレリウスはこうした状況に何ら有効な準備を行えなかった。アウレリウスは政務に関する経験は豊富ながら軍事的な知識や才覚に乏しく、国境地帯の属州総督を経験したこともなかった<ref>''HA Pius'' 7.11; ''Marcus'' 7.2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 103?4, 122.</ref>{{#tag:ref|[[Alan Cameron (classical scholar)|Alan Cameron]] adduces the fifth-century writer [[Sidonius Apollinaris]]'s comment that Marcus commanded "countless legions" ''vivente Pio'' (while Pius was alive) while contesting Birley's contention that Marcus had no military experience. (Neither Apollinaris nor the ''Historia Augusta'' (Birley's source) are particularly reliable on second-century history.<ref>''Pan. Ath.'' 203?4, qtd. and tr. Alan Cameron, review of Anthony Birley's ''Marcus Aurelius'', ''The Classical Review'' 17:3 (1967): 349.</ref>)|group=notes}}。状況は刻一刻と悪化を続け、対応に遅れるアウレリウスを尻目にパルティア軍はカッパドキアに続いてシリア総督の軍勢も撃破する勝利を挙げた<ref>''HA Marcus'' 8.6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>。 |
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それから暫くして漸くアウレリウスは対パルティアの増援部隊を編成する準備を整え、元老院議員ユリウス・ゲミニウス・マルキアヌスを司令官に[[:en:Legio X Gemina|第10軍団「ゲミナ」]]を[[ウィーン|ウィンドボナ]]から派遣した<ref>''Corpus Inscriptionum Latinarum'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+08,+07050&r_sortierung=Belegstelle 8.7050]?[http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+08,+07051&r_sortierung=Belegstelle 51]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>。更に追加で属州ゲルマニア・スペリオルの[[ボン|ボンナ]]から[[:en:Legio I Minervia|第1軍団「ミネルウァ」]]を<ref>''Incriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+01097&r_sortierung=Belegstelle 1097]?[http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+01098&r_sortierung=Belegstelle 98]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>、属州パンノニアの[[:en:Aquincum|アクィクム]]から[[:en:Legio II Adiutrix|第2軍団「アディウトリクス」]]を<ref>''Incriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+01091&r_sortierung=Belegstelle 1091]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>、そして属州ダキアの[[:en:Troesmis|トロエミス]]から[[:en:Legio V Macedonica|第5軍団「マケドニカ」]]をそれぞれ東方属州に投入した<ref>''Incriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+02311&r_sortierung=Belegstelle 2311]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>。必然的に西方の守りは弱まる事になるため、アウレリウスは各国境駐屯軍に周辺勢力を刺激しないように厳命した<ref>''HA Marcus'' 12.13; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>。これらの増援軍と現地軍を取りまとめる属州シリアの総督には新たにアウレリウスの従兄弟マルクス・アンニウス・リボが任命された<ref>''L'Annee Epigraphique'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=AE+1972,+00657&r_sortierung=Belegstelle 1972.657]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 125.</ref>。しかし彼は特段の軍事的功績があった訳ではなく、アウレリウスは能力より自らが信頼できる人物を送り込むという決断を下した<ref>''HA Verus'' 9.2; Birley, ''Marcus Aurelius'', 125.</ref>。 |
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遠征軍派遣後、アウレリウスはエトルリア地方の[[:en:Alsium|アルシウム]]で4日間の休養を取ることになった。アウレリウスは文通を続けていたコルネリウス・フロントにアルシウムの滞在について相談事はしないと書き送っている<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 1 (= Haines 2.3); Birley, ''Marcus Aurelius'', 126.</ref>。フロントは「君が暇を潰すためにアルシウムへ向かったことを知らないとでも？」と皮肉を述べ<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 3.1 (= Haines 2.5), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 126.</ref>、きちんと休養を取るのであれば先帝アントニヌスの様に釣りや[[レスリング]]に興じてはどうかと助言した<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 3.4 (= Haines 2.9); Birley, ''Marcus Aurelius'', 126?27.</ref>。しかし不安に苛まれていたアウレリウスはもっぱら滞在中は公文書を書き続けることで時間を潰していた<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 3.6?12 (= Haines 2.11?19); Birley, ''Marcus Aurelius'', 126?27.</ref>。アウレリウスはフロントに「私はどんな状態でも行わなければならない義務がある」と書き<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 4, tr. Haines 2.19; Birley, ''Marcus Aurelius'', 127.</ref>、手紙の内容からは敗北の責任を感じている事が伺える<ref>''De Feriis Alsiensibus'' 4 (= Haines 2.19), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 127.</ref>。 |
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フロントはアウレリウスに幾つかの読み物を差し入れる一方<ref>''De bello Parthico'' 10 (= Haines 2.31), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 127.</ref>、現在も保存されている「''De bello Parthico'' (パルティア戦争について)」と題した長大な手紙をアウレリウスに送っている。この手紙は古今東西の歴史上における事件や人物・格言を例に出しながら、不安を感じているアウレリウスを宥める目的で書かれている<ref>''De bello Parthico'' 1?2 (= Haines 2.21?23).</ref>。手紙は「過去にローマが敵に敗れ去った事は何度もある」とした上で、「だが最後は常にローマがその力を敵に思い知らせてきたのだ」と記述されている<ref>''De bello Parthico'' 1 (= Haines 2.21), qtd. and tr. Birley, ''Marcus Aurelius'', 127.</ref>。 |
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====アンティオキア==== |
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[[File:Antioch in Syria engraving by William Miller after H Warren.jpg|thumb|350px|right|自堕落なシリア軍は戦場よりアンティオキアで過ごす時間の方が多いと揶揄された<ref>''Ad Verum Imperator'' 2.1.19 (= Haines 2.149); Birley, Marcus Aurelius, 129.</ref>]] |
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一向に事態が好転しない事に対する不安が募る中、思いがけず白羽の矢が立てられたのが無能力さから今回の動乱にも無関係と思われていたルキウス帝であった。元老院はルキウス帝を前線に派遣することで軍の督戦を行わせようと考えた<ref>Dio 71.1.3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123.</ref>。しかしルキウスに関する伝記はそれ以外にも「ルキウス帝に皇帝の責務を自覚させる」「戦場の恐怖で倫理観を抱かせる」といった具合に、云わば厄介払いとしての部分もあったのではないかと記録している<ref>''HA Verus'' 5.8; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123, 125.</ref>{{#tag:ref|Birley believes there is some truth in these considerations.<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 125.</ref>|group=notes}}。ともかく162年に元老院はルキウス帝の親征を承認する決議を行ったが、アウレリウスに関しては「民衆が滞在を望んでいる」としてローマへ留まることが勧められた<ref>''HA Marcus'' 8.9, tr. Magie; Birley, ''Marcus Aurelius'', 123?26. On Lucius' voyage, see: ''HA Verus'' 6.7?9; ''HA Marcus'' 8.10?11; Birley, ''Marcus Aurelius'', 125?26.</ref>。 |
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ルキウス帝は一部の例を除いて殆どの時間をアンティオキアの後方陣営地で過ごした<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 129.</ref>。同時代の論者達はルキウスの退廃癖が前線でも改められていないと批判し<ref>''HA Verus'' 4.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 129.</ref>、朝から晩までルキウス帝は賭け事に熱中して前線を訪問せず<ref>''HA Verus'' 4.6, tr. Magie; cf. 5.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 129.</ref>、周囲にお気に入りの役者達を置いて気侭な生活を送っていた<ref>''HA Verus'' 8.7, 8.10?11; Fronto, ''Principae Historia'' 17 (= Haines 2.217); Birley, ''Marcus Aurelius'', 129.</ref>{{#tag:ref|The whole section of the ''vita'' dealing with Lucius' debaucheries (''HA Verus'' 4.4?6.6), however, is an insertion into a narrative otherwise entirely cribbed from an earlier source. Most of the details are fabricated by the biographer himself, relying on nothing better than his own imagination.<ref>Barnes, 69.</ref>|group=notes}}。更に実務面を統括していたシリア総督アンニウス・リボの存在を疎んで暗殺したと噂されている<ref>''HA Verus'' 9.2; ''Corpus Inscriptionum Latinarum'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=CIL+03,+00199&r_sortierung=Belegstelle 3.199]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 130?31.</ref>。 |
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163年、アウレリウス帝は自身の長女ルキッラとルキウス帝の婚姻を取り決めた<ref>''HA Verus'' 7.7; ''Marcus'' 9.4; Barnes, 72; Birley, "Hadrian to the Antonines", 163; cf. also Barnes, "Legislation Against the Christians", ''Journal of Roman Studies'' 58:1?2 (1968), 39; "Some Persons in the Historia Augusta", ''Phoenix'' 26:2 (1972), 142, citing the ''Vita Abercii'' 44ff.</ref>。アウレリウス帝はルキウス帝が既に大勢の愛人を抱えていることを知っていたが、敢えてルキウス帝への親睦として娘を嫁がせた<ref>''HA Verus'' 7.10; Lucian, ''Imagines'' 3; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131. Cf. Lucian, ''Imagines'', ''Pro Imaginibus'', ''passim''.</ref>。この時、ルッキラは15歳に満たない少女であったと考えられている<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 131; "Hadrian to the Antonines", 163.</ref>。結婚の仲介役としてルキウス帝の叔父にあたるウェトゥレヌス・シウィカ・バルバルウス（Vettulenus Civica Barbarus）を向かわせた<ref>''HA Verus'' 7.7; ''Marcus'' 9.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131.</ref>。バルバルウスは実質的にアンニウスの後任としてルキウスの目付け役も兼ねていたと思われる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 131, citing ''Anne Epigraphique'' 1958.15.</ref>。 |
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当初、アウレリウスも娘の婚姻に合わせて前線に向かう計画もあったが、これは実現しなかった<ref>''HA Verus'' 7.7; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131.</ref>。アウレリウスは途中まで娘と一行を見送ると自らはローマに戻り<ref>''HA Marcus'' 9.4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131.</ref>、各属州に一行に対して何かしらの特別扱いを行わないように命令を下している<ref>''HA Marcus'' 9.5?6; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131.</ref>。 |
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====戦争終結==== |
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緩慢な反撃を続けるローマ軍は163年になってアルメニア王国の首都[[:en:Artashat|アルカタ]]を占領した<ref>''HA Marcus'' 9.1; Birley, "Hadrian to the Antonines", 162.</ref>。ルキウスは戦争に何ら寄与していなかったが、名目上の司令官として「アルメニクス（Armeniacus）」の称号を元老院から与えられた。同時にアウレリウスにも称号授与が行われたが、彼は戦争終結までは辞退すると返答している<ref>''HA Marcus'' 9.1; ''HA Verus'' 7.1?2; ''Ad Verrum Imperator'' 2.3 (= Haines 2.133); Birley, ''Marcus Aurelius'', 129; "Hadrian to the Antonines", 162.</ref>。しかしインペトラル（凱旋将軍）の称号については共に受け取ったと見られる<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 129; "Hadrian to the Antonines", 162, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 233ff.</ref>。 |
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[[File:ArRaqqahEuphrates.jpg|310px|thumb|right|[[ラッカ]]]] |
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アルメニアを奪還したローマは荒廃したアルカタを蜂起して新しい都を建設して、そこに首都を遷都させた<ref>Dio 71.3.1; Birley, ''Marcus Aurelius'', 131; "Hadrian to the Antonines", 162; Millar, ''Near East'', 113.</ref>。新しい皇帝にはローマの元老院議員・執政官カイウス・イウリウス・ソハエムスが着任、形式的な王の戴冠式はアルメニア領内外で行われた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 280 n. 42; "Hadrian to the Antonines", 162.</ref>。ルキウス帝がアルメニア王の宮殿に訪れると、ソハエムスは元老議員として玉座を皇帝に譲り、ルキウス帝が玉座に座る儀式が行われた<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 131; "Hadrian to the Antonines", 162, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 261ff.; 300 ff.</ref>。 |
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一方、パルティア王国軍は反撃として今度は[[:en:Osroene|オスロエネ王国]]のエデッサに軍を送り込み、再び傀儡君主を立てる行動に出た<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 130, 279 n. 38; "Hadrian to the Antonines", 163, citing ''Prosopographia Imperii Romani''<sup>2</sup> M 169; Millar, ''Near East'', 112.</ref>。対するローマ軍は軍を南下させてユーフラテス川の南側から渡河を決行<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 130; "Hadrian to the Antonines", 162.</ref>、そこから北進して南からパルティア軍を牽制した<ref>Fronto, ''Ad Verum Imperator'' 2.1.3 (= Haines 2.133); Astarita, 41; Birley, ''Marcus Aurelius'', 130; "Hadrian to the Antonines", 162.</ref>。ほどなくユーフラテスの北側も制圧したローマ軍は[[:en:Osroene|オスロエネ王国]]へ援軍を派遣してエデッサの南西部に拠点を確保した<ref>''Inscriptiones Latinae Selectae'' [http://compute-in.ku-eichstaett.de:8888/pls/epigr/epieinzel_en?p_belegstelle=D+01098&r_sortierung=Belegstelle 1098]; Birley, ''Marcus Aurelius'', 130.</ref>。 |
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165年、ローマ軍はエデッサを陥落させて親ローマ派の君主を復位させた<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 163, citing ''Prosopographia Imperii Romani''<sup>2</sup> M 169.</ref>。パルティア軍はニビシスに退いて抵抗を続けたが、やがてオスロエネ王国からティグリス川へ撤収した<ref>Lucian, ''Historia Quomodo Conscribenda'' 15, 19; Birley, "Hadrian to the Antonines", 163.</ref>。戦いで顕著な活躍を見せたのが第3軍団「ガリカ」を率いる元老議員カイウス・アウィディウス・カッシウスであり、ドゥラの戦いでパルティア軍に多大な損害を与えた<ref>Lucian, ''Historia Quomodo Conscribenda'' 20, 28; Birley, "Hadrian to the Antonines", 163, citing Syme, ''Roman Papers'', 5.689ff.</ref>。同年の暮れまでに追撃を続けるアウィディウス軍はセレウキアとクテシフォンというパルティア王国の二大都市を占領する大功を挙げた。クテシフォンに入城したローマ軍はパルティア王の宮殿を焼き払い、これに恐れをなしたセレウキアのギリシャ系住民はパルティア軍を追い払って自ら開城した。しかしセレウキアに入城したローマ軍は約束を反故にして略奪を行い、大勢の市民が虐殺された。元老院の批判に対してルキウス帝は「セレウキアの住民が約束を破った」と強弁した<ref>''HA Verus'' 8.3?4; Birley, "Hadrian to the Antonines", 163. Birley cites R.H. McDowell, ''Coins from Seleucia on the Tigris'' (Ann Arbor: University of Michigan Press, 1935), 124ff., on the date.</ref>。 |
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物資不足と疫病の関係からローマ軍の戦力は削られたが、問題なくアウィディウスは軍勢を本土へと帰還させた<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 164.</ref>。元老院はアンティオキアのルキウス帝に「パルティニクス・マキシムス」を新たな称号として与え、アウレリウスとルキウスはインペトラル経験数を3回へと増やした<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 164, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 384 ff., 1248 ff., 1271 ff.</ref>。またアウィディウスが帰還途中にメディアを占領したので、ルキウスは「メディクス」の称号と<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 164, citing P. Kneissl, ''Die Siegestitulatur der romischen Kaiser. Untersuchungen zu den Siegerbeinamen des 1. und 2. Jahrhunderts'' (Gottingen, 1969), 99 ff.</ref>4度目のインペトラルを授与された。後にアウレリウスも「パルティニクス・マキシムス」の称号を与えられている<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 164, citing H. Mattingly, ''Coins of the Roman Empire in the British Museum IV: Antoninus Pius to Commodus'' (London, 1940), Marcus Aurelius and Lucius Verus, nos. 401ff.</ref>。 |
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====凱旋==== |
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上記のようにルキウス帝（次いでアウレリウス帝も）はパルティア戦争の勝利に関する多くの栄誉を元老院から与えられた。しかし真の功労者が前線で戦っていた軍指揮官達、特にクテシフォンとセレウキアを攻め落とした元老議員カイウス・アウィディウス・カッシウスであった事は誰の目にも明らかであった。アウィディウスは属州シリアの[[キュロス]]出身で、ガイウス・アウィディウス・ヘリオドルス（Gaius Avidius Heliodorus）の子として生まれた。ハドリアヌス帝時代に軍人として頭角を現し、エジプト総督などを歴任していた<ref><sup>2</sup> A 1402f.; 1405; Astarita, ''passim''; Syme, ''Bonner Historia-Augustia Colloquia'' 1984 (= ''Roman Papers'' IV (Oxford: Clarendon Press, 1988), ?).</ref>。論功行賞で166年にアウィディウスは直属の軍司令官マルティウス・ウェルス（Martius Verus）と共に執政官に叙任され、それぞれシリア総督（アウィディウス）とカッパドキア総督（マルティウス）に任命された<ref>Birley, "Hadrian to the Antonines", 164, citing Alfoldy, ''Konsulat'', 24, 221.</ref>。 |
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ローマ本国ではアウレリウス帝とルキウス帝による凱旋式が挙行され、二人の皇帝に加えてその妻や子供も含めたかつてない大規模な式典が行われた。その一員に5歳になった嫡男の六男コンモドゥスと7男ウェルスが居り、二人は父から副帝（カエサル）の称号を与えられ、民衆に後継者であることが示された。戦争終結に沸くローマであったが、翌年から始まった[[:en:Antonine Plague|アントニヌスの疫病]]と呼ばれた天然痘の大流行によってウェルスは病没し、アウレリウスやコンモドゥスも病に倒れた。[[カッシウス・ディオ]]によれば一日2000名の人間が死に絶え、帝国全土に広がった疫病は500万以上の人命を失わせた。 |
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この時、アントニヌス帝が東方属州から派遣した使者が中国の漢帝国に到達したことは広く知られており、歴史書には大秦国王（ローマ帝国）の安敦（アントニヌス）の使者が訪れたと記録されている<ref>{{cite journal |doi=10.2307/605541 |last=Pulleyblank |first=Edwin G. |authorlink= |coauthors= |year=1999 |last2=Leslie |month= |first2=D. D. |last3=Gardiner |first3=K. H. J.|title=The Roman Empire as Known to Han China |journal=Journal of the American Oriental Society |volume=119 |issue=1 |pages=71?79 |id= |url= http://jstor.org/stable/605541|accessdate= |quote= }}</ref>。 |
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===マルコマンニ戦争=== |
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:''For details, see: [[Marcomannic Wars]]'' |
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[[File:Aurelius180AD.png|left|thumb|320px|アウレリウス死没時の帝国領]] |
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コルネリウス･フロントの子息オウフィディウス・ヴィクトリアヌスは[[ゲルマニア・スペリオル]]総督として滞在、ゲルマニア地方の諸族に対する外交政策を一任されていた<ref>Dio 72.11.3?4; ''Ad amicos'' 1.12 (= Haines 2.173); Birley, ''Marcus Aurelius'', 132.</ref>。ヴィクトリアヌスはゲルマニア地方の防備が極めて粗雑な状態にあると報告した。辺境の要塞は多くが破壊され、中欧や北欧では動乱の兆しが見られ、駐屯軍の指揮官階級は腐敗しつつあった<ref>Dio 72.11.3?4; Birley, ''Marcus Aurelius'', 132, citing ''De nepote amisso'' 2 (= Haines 2.222); ''Ad Verum Imperator'' 2.9?10 (= Haines 2.232ff.).</ref>。 |
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しばしばアウレリウス時代の総督達は経験ではなく縁故主義によってアウレリウスとその王朝（[[ネルウァ＝アントニヌス朝|lネルウァ・アントニヌス朝]]）と親しい人物から任命された。ルキウス・ダスミウス・トゥリウス・トゥスクス（L. Dasumius Tullius Tuscus）はハドリアヌス帝の親族で、経験豊富であった上パンノニア総督ノニウス・マクリヌス（Nonius Macrinus）の後任となった。下パンノニア総督は無名の人物ティベリウス・ハテリウス・サトゥルニヌス（Ti. Haterius Saturnius）が務めていた。イリウス・バッスス（Iallius Bassus）がルキウス帝のアンティオキアの陣地を訪れた時、マルクス・セルウィリウス・ファビウス・マキシムス（M. Servilius Fabianus Maximus）は上モエシア総督から下モエシア総督へと転任した。後任の上モエシア総督にはポンティウス・ラエリアヌス（Pontius Laelianus）の息子が派遣された。西方の防備は弱まる一方で、下パンノニアに至っては軍団が一つも配置されていなかった<ref>Birley, ''Marcus Aurelius'', 133, citing Geza Alfoldy, ''Konsulat und Senatorenstand'' (1977), Moesia Inferior: 232 f.; Moesia Superior: 234f.; Pannonia Superior: 236f.; Dacia: 245f.; Pannonia Inferior: 251.</ref>。 |
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160年代、ゲルマニアやそれ以外の地域に住む諸民族は各地でローマ国境への侵入を試みるようになり、特にドナウ川流域では全域にわたって蛮族の攻撃が繰り返された。この動きは恐らく、より遠方（[[サルマティア]]など）での動乱が影響したものと考えられている。最初に始まった162年のカッティ族による攻撃は[[ゲルマニア・スペリオル]]の駐屯軍によって撃退された。しかし続いて166年に起きたドナウ川での攻撃はより深刻な事態となり、マルコマンニ族を中核にロンバルディア族・クアディ族などを含めた遊牧勢力がドナウ川を渡河した。さらにこれに呼応してサルマティア族がドナウ川と隣接するティサ川を越えて同じく帝国領内へ進出した。 |
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これらの動きはパルティア戦争の影響で有効に対処できず、3年後の167年になって反撃が模索されはじめた。今度はアウレリウス帝とルキウス帝の双方が軍を指揮したが、169年にルキウス帝が謎の死を遂げるとアウレリウスが単独で親征を継続した。戦いは泥沼の長期戦となり、アウレリウスのそれから死没までの人生はマルコマンニ戦争で使い果たされることになる。遠征の最中、7人兄弟で唯一の生き残りとなっていたコモドゥスが共同皇帝に指名され、もしもに備えての権力移譲も整えられた。 |
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戦いはアウレリウス軍の苦戦が続き、取り分けクアディ族とマルコマンニ族は2度にわたってローマ軍を打ち破って南下を続けた。両部族は一時[[イタリア本土 (古代ローマ)|イタリア本土]]にまで到達して[[オデルツォ]]市と[[アクイレイア]]市が包囲される事態となった。またダキアでは[[:en:Costoboci|コストボキ族]]がモエシアを越えてマケドニアやギリシャ諸都市を脅かしていた。10年以上にわたって次々と増援戦力が編成されては前線に送り込まれ、アウレリウスは軍勢を鼓舞することに務め続けた。戦争末期には概ねの軍勢が元の国境地帯に押し返された。しかし蛮族との最終的な和睦は模索されたままで戦いは続き、アウレリウスは発想を転換して逆にゲルマニアへ新しい領域を形成する攻勢主義へと転じる決断を下した。しかし計画は長引く戦乱に対する不満を背景にしたカイウス・アウィディウス・カッシウスの反乱によって断念された。東方属州の大部分を纏め上げていたアウィディウスは、身体の衰えが隠せなくなっていたアウレリウスが病没した噂から挙兵を決断した。しかし後にこれは誤りであったことが判明し、アウィディウスは遠征に出る前にアウレリウス側に内通していた将官によって暗殺された。 |
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その後、再びアウレリウスはボヘミア地方への進出を目指してその準備に奔走したが、実現するより先に寿命が訪れることになった。 |
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===死没=== |
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180年3月17日、アウレリウスは滞在中のウィンドボナで病没した。遺骸は直ちに陣営地で火葬により弔われ、遺灰が厳重な警備の元に帝都ローマの[[サンタンジェロ城|ハドリアヌス廟]]へ送られた。ゲルマニア諸族とサルマティア諸族に抵抗し続けた彼の治世後半は英雄的な評価を確実なものとし、元老院はアウレリウスを他のネルウァ・アントニヌス朝の歴代君主と並んで神に祭ることを認めた。帝位は既に生前に禅譲されていたコモドゥス・アウレリウスがそのまま継承することが決められた。当初は清廉な青年であったコモドゥスが次第にローマ史の著名な暴君の一人として名を残す結果となると、この決定は後世の歴史家の間で議論の対象となった。 |
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同時代の歴史家で元老院議員でもあった[[カッシウス・ディオ]]は以下のように述べている。 |
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{{quotation|……アウレリウスは厳格で賢明な生き方を選んだにも関わらず、苦難に満ちた人生を生きる結果になった。<BR>彼は常に持病と闘いながら、周囲の出来事を取りまとめることに奔走していた。しかしまさしく私はこうした人生を生きたからこそアウレリウスを尊敬する。<BR>途方も無い困難と苦難の中で彼は広大な帝国を維持することに努め、それを全うした。唯一つ、彼の息子への完全な教育を終えることができなかったことを除けば。<BR><BR>ローマは、黄金の帝国から鉄と錆の王国へと没落し始めるのである。<BR><BR> ''―――カッシウス・ディオ 71.36.3}} |
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現代の歴史家マイケル・グラントは「ローマの最盛期」（1968年）においてアウレリウスの権力移譲を解説する文章を記述した。 |
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{{quotation|……今日的な常識では青年期は経験に乏しく、情緒も不安定なものである。アウレリウスが父としてその事実を理解していたとしても、若い青年に全権を預ける以外に選択肢は無かったといえる。<BR>君主に直系の子息がおり既に権力も委譲されている状態で突然に廃嫡すれば、事態は父子間の対立だけでは済まされない。一挙に政治情勢を混迷化させ、帝国を内戦へと向かわせるだろう。<BR><BR> ''―――「ローマの最盛期」マイケル・グラント}} |
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==著作== |
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{{wikisource|Marcus Aurelius Antoninus}}{{Wikisourcelang|el| Μ?ρκο? Αυρ?λιο?}} |
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アウレリウスはマルコマンニ戦争の後半から、自らへの戒めを兼ねて思索を綴って著作「[[自省録]]」を完成させた。本来は他者に公開するために書いた訳ではなかった為、原文には「自分自身へ」と簡潔な表題が書かれていた。彼は少年期に傾倒したストア派の禁欲主義を生涯にわたって守り続け、これを美徳として価値観の中心に置いていた。したがってストア派の思想書として第一に挙げられ、近代でも[[フリードリヒ2世|フリードリヒ2世 (プロイセン王)]]、[[ジョン・スチュアート・ミル]]、[[マシュー・アーノルド]]、[[ゲーテ]]、[[温家宝]]などが愛読書としていた<ref>Gregory Hays. Introduction to Marcus Aurelius Meditations Weidenfeld and Nicholson London2003 pxlix</ref>。 |
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自省録が後世のローマ帝国にどんな程度の影響を与えたのかは定かではないが、後世の皇帝である[[フラウィウス・クラウディウス・ユリアヌス]]は自省録自体には触れないながらもアウレリウスの哲学者としての影響を論じている<ref>Stertz, 434, citing Themistius, ''Oratio'' 6.81; ''HA Cassius'' 3.5; Aurelius Victor, ''De Caesaribus'' 16.9.</ref>。現在見ることができる自省録は10世紀に書かれた原文の写本を1558年に出版形式に直したものである<ref>Gregory Hays. Introduction to Marcus Aurelius Meditations Weidenfeld and Nicholson London 2003 pp xlviii?xlix.</ref>。 |
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==子息== |
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[[Image:Faustine la Jeune 01.JPG|thumb|right|180px|Bust of Faustina the Younger, [[Louvre]], [[Paris]]]] |
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アウレリウスと小ファウスティナは30年間の結婚生活で6男7女を儲けた。女児はドミティアを除いて成人したが、男児は長男ゲメルスから四男ハドリアヌスまでの四人に早世される不幸があった。 |
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#長男ゲメルス・ルキラエ：ルキッラとは双子。幼児にて病没。 |
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#次男ティトゥス・アエリウス・アントニヌス：161年死没。 |
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#三男ティトゥス・アエリウス・アウレリウス：161年死没。 |
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#四男ハドリアヌス：157年死没。 |
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#五男ティトゥス・アウレリウス・フラヴィウス・アントニヌス：コンモドゥスとは双子。幼児にて病没。 |
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#六男[[コモドゥス|ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス・アントニヌス]]：第17代ローマ皇帝 |
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#七男[[:en:Marcus Annius Verus Caesar|マルクス・アンニウス・ヴェルス]]：副帝叙任後に病没。 |
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#長女[[:en:Annia Aurelia Galeria Faustina|アンニア・アウレリア・ガレリア・ファウスティナ]]：執政官[[:en:Gnaeus Claudius Severus|グナエウス・クラウディウス・セウェルス]]と結婚 |
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#次女[[:en:Lucilla|アンニア・アウレリア・ルキッラ]]：共同皇帝[[ルキウス・ヴェルス]]と結婚 |
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#三女ドミティア・ファウスティナ：161年死没。 |
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#四女[[:en:Fadilla|アンニア・アウレリア・ファディラ]]：執政官[[:en:Marcus Peducaeus Plautius Quintillus|マルクス・ペドゥカエウス・プラウティヌス・クィントゥルス]]と結婚 |
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#五女[[:en:Annia Cornificia Faustina Minor|アンニア・コルニフィキア・ファウスティナ・ミノル]] ：執政官[[:en:Marcus Petronius Sura Mamertinus|マルクス・ペトロニウス・マメルティヌス]]と結婚 |
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#六女[[:en:Vibia Aurelia Sabina|ヴィビア・アウレリア・サビナ]]：執政官[[:en:Lucius Antistius Burrus|ルキウス・ブッルス]]と結婚 |
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==家系図== |
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{{familytree |border=1| | | | | |MRC|v|MVT| |NER| |VLP|NER=[[ネルウァ]]|MRC=[[:en:Marcia (mother of Trajan)|マルキア]]|MVT=[[:en:Marcus Ulpius Traianus (senator)|マルクス・トラヤヌス]]|VLP=[[:en:Ulpia (grandmother of Hadrian)|ウルピア]]|boxstyle_NER=background-color: #e9a5d8;}} |
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{{familytree |border=1| | | | | | |,|-|^|-|.|F|~|~|J| | | |!|}} |
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{{familytree |border=1| | | | | |MAR| |TRA|-|PLO| | |!|TRA=[[トラヤヌス]]|PLO=[[:en:Pompeia Plotina|ポンペイア]]|MAR=[[:en:Ulpia Marciana|マルキアナ]]|boxstyle_TRA=background-color: #e9a5d8;}} |
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{{familytree/end}} |
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==創作作品== |
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===文学=== |
|||
*1885年の小説『享楽主義者マリウス』（[[ウォルター・ペイター]]作）で度々言及されている。 |
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*1978年の小説『ガープの世界』（[[ジョン・アーヴィング]]作）にアウレリウスをモチーフにした章が登場する。 |
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===映画=== |
|||
*1964年の映画『[[ローマ帝国の滅亡]]』（''The Fall of the Roman Empire''）では、[[アレック・ギネス]]が演じた。 |
|||
*2000年のアカデミー賞を受賞した『[[グラディエーター]]』（''The Gladiator''）では、[[リチャード・ハリス]]が演じた。 |
|||
**理想的な共和主義者として描写されている。世襲による帝政を嫌い、共和制へローマを戻すそうとするが皇子コモドゥスにより暗殺される。 |
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==ノート== |
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{{reflist|group=notes}} |
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==引用== |
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All citations to the ''Historia Augusta'' are to individual biographies, and are marked with a "''HA''". Citations to the works of Fronto are cross-referenced to C.R. Haines' Loeb edition. |
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{{Reflist|3}} |
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==資料== |
|||
===古代=== |
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{{Refbegin|2}} |
|||
*Aelius Aristides. ''Orationes'' (''Orations''). |
|||
*Aurelius Victor. ''De Caesaribus''. |
|||
*''Codex Justinianus''. |
|||
:*Scott, Samuel P., trans. ''The Code of Justinian'', in ''The Civil Law''. 17 vols. 1932. Online at the [http://www.constitution.org/sps/sps.htm Constitution Society]. Accessed 31 August 2009. |
|||
*''Digest''. |
|||
:*Scott, S.P., trans. ''The Digest or Pandects'' in ''The Civil Law''. 17 vols. Cincinnati: Central Trust Company, 1932. Online at the [http://www.constitution.org/sps/sps.htm Constitution Society]. Accessed 31 August 2009. |
|||
*Cassius Dio. ''Roman History''. |
|||
:*Cary, Earnest, trans. ''Roman History''. 9 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1914?27. Online at [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Cassius_Dio/home.html LacusCurtius]. Accessed 26 August 2009. |
|||
*''Epitome de Caesaribus''. |
|||
:*Banchich, Thomas M., trans. ''A Booklet About the Style of Life and the Manners of the Imperatores''. ''Canisius College Translated Texts'' 1. Buffalo, NY: Canisius College, 2009. Online at [http://www.roman-emperors.org/epitome.htm De Imperatoribus Romanis]. Accessed 31 August 2009. |
|||
*Fronto, Marcus Cornelius. |
|||
:*Haines, Charles Reginald, trans. ''The Correspondence of Marcus Cornelius Fronto''. 2 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1920. Online at the Internet Archive: Vol. [http://www.archive.org/details/correspondencem00auregoog 1], [http://www.archive.org/details/correspondencem00frongoog 2]. Accessed 26 August 2009. |
|||
*Galen. |
|||
:*''ad Pisonem de Theriaca''. |
|||
:*''de Antidotis''. |
|||
*Gellius, Aulus. ''Noctes Atticae'' (''Attic Nights''). |
|||
:*Rolfe, J.C., trans. ''The Attic Nights of Aulus Gellius''. 3 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1927?28. Vols. 1 and 2 online at [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Gellius/home.html LacusCurtius]. Accessed 26 August 2009. |
|||
*Herodian. ''Ab Excessu Divi Marci'' (''History of the Roman Empire from the Death of Marcus Aurelius''). |
|||
:*Echols, Edward C., trans. ''Herodian of Antioch's History of the Roman Empire''. Berkeley and Los Angeles: University of California Press, 1961. Online at [http://www.tertullian.org/fathers/herodian_00_intro.htm Tertullian] and [http://www.livius.org/he-hg/herodian/hre000.html Livius]. Accessed 14 September 2009. |
|||
*''Institutes''. |
|||
:*Scott, S.P., trans. ''Institutes of Gaius'' in ''The Civil Law''. 17 vols. Cincinnati: Central Trust Company, 1932. Online at the [http://www.constitution.org/sps/sps.htm Constitution Society]. Accessed 31 August 2009. |
|||
*Lucian. |
|||
:*''Alexander''. |
|||
::*Harmon, A.M., trans. ''The Works of Lucian of Samosata''. 9 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1936. ''Alexander'' online at [http://www.tertullian.org/rpearse/lucian/lucian_alexander.htm Tertullian]. Accessed 26 August 2009. |
|||
:*''Historia Quomodo Conscribenda'' (''The Way to Write History''). |
|||
::*Fowler, H.W., and H.G., trans. ''The Works of Lucian of Samosata''. 4 vols. Oxford: Clarendon Press, 1905. ''The Way to Write History'', in volume 2, online at [http://www.sacred-texts.com/cla/luc/wl2/wl210.htm Sacred Texts], based on the [http://www.gutenberg.org/etext/6585 Gutenberg] e-text. Accessed 26 August 2009. |
|||
:*''Imagines'' (''Essays in Portraiture'' [''Images'']). |
|||
::*Fowler, H.W., and H.G., trans. ''The Works of Lucian of Samosata''. 4 vols. Oxford: Clarendon Press, 1905. ''A Portrait Study'', in volume 3, online at [http://www.sacred-texts.com/cla/luc/wl3/wl303.htm Sacred Texts], based on the [http://www.gutenberg.org/etext/6585 Gutenberg] e-text. Accessed 26 August 2009. |
|||
:*''Pro Imaginibus'' (''Essays in Portraiture Defended''). |
|||
::*Fowler, H.W., and H.G., trans. ''The Works of Lucian of Samosata''. 4 vols. Oxford: Clarendon Press, 1905. ''Defence of the 'Portrait-Study''', in volume 3, online at [http://www.sacred-texts.com/cla/luc/wl3/wl304.htm Sacred Texts], based on the [http://www.gutenberg.org/etext/6585 Gutenberg] e-text. Accessed 26 August 2009. |
|||
*Marcus Aurelius Antoninus. ''Meditations''. |
|||
:*Farquharson, A.S.L., trans. ''Meditations''. New York: Knopf, 1946, rept. 1992. |
|||
*Pausanias. ''Description of Greece''. |
|||
:*Jones, W.H.S., and H.A. Omerod, trans. ''Pausanias' Description of Greece''. 4 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1918. Online at [http://www.theoi.com/Text/Pausanias1A.html Theoi] and [http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?lookup=paus.+1.1.1 Perseus at Tufts]. Accessed 27 August 2009. |
|||
*Philostratus. ''Heroicus'' (''On Heroes''). |
|||
:*Aiken, Ellen Bradshaw, and Jennifer K. Berenson Maclean, trans. ''On Heroes''. Washington, DC: Harvard University Center for Hellenic Studies, 2007. Online at [http://zeus.chsdc.org/chs/heroes_test Harvard University Centre for Hellenic Studies]. Accessed 27 August 2009. |
|||
*Quintilian. ''Institutio Oratoria'' (''Institutes of Oratory''). |
|||
:*Butler, H.E., trans. ''The Orator's Education''. 5 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1920?22. Online at [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Quintilian/Institutio_Oratoria/home.html LacusCurtius]. Accessed 14 September 2009. |
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*''Scriptores Historiae Augustae'' (Authors of the Historia Augusta). ''Historia Augusta'' (''Augustan History''). |
|||
:*Magie, David, trans. ''Historia Augusta''. 3 vols. Loeb ed. London: Heinemann, 1921?32. Online at [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Historia_Augusta/home.html LacusCurtius]. Accessed 26 August 2009. |
|||
:*Birley, Anthony R., trans. ''Lives of the Later Caesars''. London: Penguin, 1976. |
|||
*Themistius. ''Orationes'' (''Orations''). |
|||
{{Refend}} |
|||
===現代=== |
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{{Refbegin}} |
|||
*Astarita, Maria L. ''Avidio Cassio'' (in Italian). Rome: Edizione di Storia e Letteratura, 1983. |
|||
*Barnes, Timothy D. "Hadrian and Lucius Verus." ''Journal of Roman Studies'' 57:1?2 (1967): 65?79. |
|||
*Birley, Anthony R. ''Marcus Aurelius: A Biography''. New York: Routledge, 1966, rev. 1987. ISBN 0-415-17125-3 |
|||
*Birley, Anthony R. "Hadrian to the Antonines." In ''The Cambridge Ancient History Volume XI: The High Empire, A.D. 70?192'', edited by Alan Bowman, Peter Garnsey, and Dominic Rathbone, 132?94. New York: Cambridge University Press, 2000. ISBN 978-0-521-26335-1 |
|||
*Champlin, Edward. "The Chronology of Fronto." ''Journal of Roman Studies'' 64 (1974): 136?59. |
|||
*Champlin, Edward. ''Fronto and Antonine Rome''. Cambridge, MA: Harvard University Press, 1980. ISBN 0-674-32668-7 |
|||
*Millar, Fergus. ''The Roman Near East: 31 BC ? AD 337''. Cambridge, MA: Harvard University Press, 1993. ISBN 0-674-77886-3 |
|||
*McLynn, Frank. ''Marcus Aurelius: Warrior, Philosopher, Emperor''. London: Bodley Head, 2009. ISBN 9780224072922 |
|||
*Stertz, Stephen A. "Marcus Aurelius as Ideal Emperor in Late-Antique Greek Thought." ''The Classical World'' 70:7 (1977): 433?39. |
|||
*Syme, Ronald. "The Ummidii." ''Historia'' 17:1 (1968): 72?105. |
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{{Refend}}</br> |
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==関連項目== |
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*[[ローマ皇帝]] |
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==外部リンク== |
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{{Sisterlinks|s=Author:Marcus Aurelius}} |
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*{{Find a Grave|35001023}} |
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*{{Nndb|979/000087718}} |
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{{S-start}} |
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{{S-hou|アントニヌス朝|121年|4月26日|180年|3月17日|[[ネルウァ＝アントニヌス朝]]}} |
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{{S-reg}} |
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{{Succession box|title=[[ローマ皇帝一覧|ローマ皇帝]]|before=[[アントニヌス・ピウス]]|after=[[コンモドゥス]]|years=161年-180年<br />(共同皇帝[[ルキウス・ウェルス]] 161年-169年)}} |
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{{S-off}} |
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{{Succession box|title = [[:en:List of early imperial Roman consuls|執政官]]（同僚執政官[[アントニヌス・ピウス]]）|before = [[アントニヌス・ピウス]]、[[:en:Gaius Bruttius Praesens|ガイウス・ブルッティウス・プラエセヌス]]、[[:en:Lucius Fulvius Rusticus|ルキウス・フルウィウス・ルスティクス]]||after = [[:en:Titus Hoenius Severus|ティトゥス・ホエニウス・セウェルス]]、マルクス・ペドゥカエウス・ストロガ・プリスキヌス |years = 140年}} |
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{{Succession box|title = [[:en:List of early imperial Roman consuls|執政官]]（同僚執政官[[アントニヌス・ピウス]]）|before = [[:en:Lollianus Avitus|ロルリアヌス・アウィトゥス]]、[[:en:Titus Statilius Maximus|ティトゥス・スタティリウス・マキシムス]]||after = [[:en:Sextus Erucius Clarus|セクストゥス・エルキウス・クラルス]]、[[:en:Gnaeus Claudius Severus Arabianus|ガエヌス・クラウディウス・セウェルス・アラビヌス]] |years = 145年}} |
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{{Succession box|title = [[:en:List of early imperial Roman consuls|執政官]]（同僚執政官[[ルキウス・ウェルス]]）|before = [[:en:Appius Annius Atilius Bradua|アッピウス・アンニウス・アティリウス・ブラドゥア]]、[[:en:Titus Clodius Vibius Varus|ティトゥス・クロディウス・ウィビウス・ウァルス]]||after = [[:en:Junius Rusticus|ユニウス・ルスティクス]]、ルキウス・ティトゥス・プラウティヌス・アクアリヌス|years = 161年}} |
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{{S-end}} |
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{{DEFAULTSORT:まるくす あうれりうす あんとにぬす}} |
{{DEFAULTSORT:まるくす あうれりうす あんとにぬす}} |
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2011年3月28日 (月) 13:13時点における版
| マルクス・アウレリウス・アントニヌス Marcus Aurelius Antoninus | |
|---|---|
 アウレリウス胸像（メトロポリタン美術館所蔵） | |
| 在位 |
161年 - 169年（ウェルス帝と共同） 169年 - 177年（単独統治） 177年 - 181年（コモドゥス帝と共同） |
| 全名 |
カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥス Caesar Marcus Aurelius Antoninus Augustus |
| 出生 |
121年4月26日 ローマ |
| 死去 |
180年3月17日（58歳没） ウィンドボナ、もしくはシルウィウム |
| 埋葬 | ハドリアヌス廟 |
| 継承 | ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス |
| 配偶者 | 小ファウスティナ |
| 子女 |
コンモドゥス ルキッラ ファディラ 小コルニフィキア |
| 家名 | アントニヌス家 |
| 王朝 | ネルウァ＝アントニヌス朝 |
| 父親 | マルクス・アンニウス・ウェルス |
| 母親 | ドミティア・ルキッラ |
マルクス・アウレリウス・アントニヌス（古典ラテン語：Marcus Aurelius Antoninus [notes 1]121年4月26日 - 180年3月17日）は、第16代ローマ皇帝。ネルウァ＝アントニヌス朝の君主としては四人目の君主。第15代皇帝アントニヌス・ピウスの后妃ファウスティナ・マイヨル（大ファウスティナ）の甥で先帝の外戚にあたり、また大ファウスティナはハドリアヌスとトラヤヌスの末裔でもある。
外叔父アントニヌスの皇女で、自身の従姉妹であるファウスティナ・ミノル（小ファウスティナ）と結婚して帝位を継承したが、共同皇帝としてハドリアヌスの重臣の子ルキウス・ウェルスが立てられていた。アウレリウスは小ファウスティナとの長女ルキッラを嫁がせて両皇帝の結束を固めたが、169年にウェルスが死んだ事で単独の皇帝となった。
ストア哲学などの学識に長け、良く国を治めた事からネルウァ・トラヤヌス・ハドリアヌス・アントニヌスに並ぶ皇帝（五賢帝）と評された。対外政策ではパルティア帝国との戦争に勝利を収めたが、蛮族への予防戦争として始めたマルコマンニ人、クアディ人、サルマティア人などへの遠征（マルコマンニ戦争）は長期戦となり、国力を疲弊させ、自らも陣中で没した。
軍事よりも学問を好んだ皇帝という姿は、彼の著作である「自省録」への評価を通じて今日も維持されている。これはプラトンの時代から学識者にとって理想とされた「哲人君主」の実現例と見なされているからである[3]。
歴史資料
マルクス・アウレリウスの人生と治世に関する資料は疎らで、信憑性の薄い物が多く含まれている。例えば主要な情報源とされる「ローマ皇帝群像」は多くの問題を持った資料であり、引用元の資料よりも価値は低い[4]。ハドリアヌスからアウレリウスまでの評伝は作中でも比較的に信憑性があるが、それでもアエリウス・ヴェルスやアヴィディウス・カシウスの評伝は完全な捏造であると見られる[5]。
マルクス・アウレリウス自身は自省録という著作を残したが、これは主にアウレリウスの内面についての記述や思索であって、俗事の出来事については余り触れられていない[6]。同時代の歴史家にはカッシウス・ディオがおり、特に軍政についての記述においては重要な記録を残している。しかしディオの元老院階級としての偏見や、帝国領土の拡大に対する反対意見は真意を不明瞭にしている[7]。
他にアウレリウスと関わった様々な人が残した記録は、細かい出来事についての詳細を提供している。アントニヌス朝の貴族達について記録した宮殿医ガレノス、時代の風潮を推測させるアエリウス・アリステイデスの演説、そして東ローマ時代の勅法彙纂に記録されるアウレリウスの法整備などがそれにあたる[8] 。碑銘、通貨なども治世を調べる上での情報源とされる[9]。
生い立ち
家族と出自
マルクス・アウレリウス・アントニヌスこと、マルクス・アンニウス・カッティリウス・セウェルスは、貴族マルクス・アンニウス・ウェルス3世の子としてローマに生まれた。
父方の一族であるウェルス家は属州ヒスパニア・バエティカのコルドバに所領を持ち、西暦1世紀頃からローマ中央でも知られた存在にまで台頭し始めた。曽祖父アンニウス・ウェルス1世が元老院議員として議席を与えられ、祖父のウェルス2世の代で貴族に列された[11][notes 2]。アンニウス・ウェルス3世はドミティア・ルキッラと結婚してカッティリウス・セウェルス（アウレリウス）という子を儲けた[14]両親には二人の子供がおり、アウレリウス以外にコルニフィキアという姉がいた[15]。ドミティア・ルキッラは、有力貴族のカルビシウス・トゥルス・ルッソの子であり、また母の大ドミティアも親族の財産を相続した資産家であった（この事はプリニウスの書簡にも書き残されている）[16]。彼女は後に煉瓦生産の工房など、両親の財産を相続してウェルス家を更に富ませた[17]。
父であるウェルス3世も元老院で法務官などの要職を歴任していたが、アウレリウスが3才の時に病没した[18][notes 3]。従って後の皇帝としての方針に父の影響がどの程度あったのかは不明であるが、彼自身は「自制録」で彼が「謙虚と剛毅さ」を父の思い出と死後の話で学び知ったと語っている[20]。母ドミティアは再婚しなかったが[18]、当時の貴族階級にとっての常として子供の養育は家庭教師や侍従達に任せていた[21]。一方で貴族としての優雅な生活で堕落しないように「宗教的な敬虔さ」と「粗食」を躾として教えられたという[22]。アウレリウスは母親についての感謝を述べる手紙を書き残している[23]。
父の死後、アウレリウスは祖父ウェルス2世に引き取られ[24]、ルキウス・カッティリウス・セウェルスという男性が養育を手伝った。ルキウス・カッティリウスは「母方の曾祖父」と言われ、恐らくは大ドルシッラの継父であったと見られている[24]。アウレリウスは彼の両親が残したカエリウスの丘にある邸宅で過ごし[25]、そこは僅かな公共施設を除けば殆どが貴族の別荘からなる高級住宅街であった。また祖父はラテラノ大聖堂の近くに邸宅を持ち、アウレリウスにとって馴染み深い場所となった[26]。祖父の教育については「良心と自制心」を教わったと書き残しているが[27]、祖父が祖母の死後に連れてきた妾とは折り合いが悪かったという[28] 幸いにして妾が出入りするようになって直に家から出れた事を、アウレリウスは幸運だったと述べている[29]。
アウレリウスは当時の貴族階級の常として、家庭教師による教育を受けている[30]。これは曽祖父カッティリウス・セウェルスの意向によるところだったとアウレリウス自身が述べている[31]。ディオゲネトゥスという教師から特に深い影響を受け、哲学的な生活様式を学んだ[32]。132年4月、アウレリウスはディオゲネトゥスと同じ哲学者風の衣服で過ごし始め、母親から窘められるまでベットではなく地面で寝ていたという[33]。133年からはアレクザンデル[notes 4]という人物が何人かの教師と共に赴任した[35]。アレクサンデルは当時のローマ帝国で、ホメロスの研究によって知られた文学者であった[36]. アウレリウスは彼から修辞法を学んでおり[37]、「自省録」の文体にその影響が見られる[38]。
ハドリアヌス帝による寵愛
127年、叔母ファウスティナ・マイヨルの親族であるハドリアヌス帝の推薦を受けて、アウレリウスは6歳の時に騎士名簿へ登録された。少年時代に騎士階級へ叙任された事については、アウレリウス以前にも全く例がない訳ではないが、極めて珍しい出来事であった。更に翌年にはサリイという聖職の為の学校へ推薦されたが、入学規定を満たしていなかったアウレリウスの為に規定を改訂させている[40]。ハドリアヌスはアウレリウスを寵愛しており、ヴェリッシムス（Verissimus）という渾名で呼んでいた[41][notes 5]。アウレリウスは神学校で熱心に学び、優れた聖職者としての素養を得た[43]。一方で帝都ローマに留まらず、各属州への巡行に時間を費やしていたので、アウレリウスと直接会う機会はそれほどなかった[notes 6]。
135年、ハドリアヌスが久しぶりにローマに戻った時、アウレリウスは皇帝の重臣ルキウス・アエリウス（ハドリアヌスを暗殺しようとしたガイウス・アウィディウス・ニグリヌスの娘婿で、ルキウス・ウェルスの父）の腹心に成長していた。136年、成人したアウレリウスはハドリアヌスの命令によって、アエリウスの娘ケイオニアと婚約して皇帝の側近としての立場を確立した[45]。結婚からまもなく、ルキウス・アエリウスによってアウレリウスは首都長官に任命された。この時代の首都長官は要職という位置づけながら、何の実権も伴わない名誉職という部分が大きく、貴族の若者の登竜門のような意味合いがあった。アウレリウスは首都長官として相応しい振る舞いをしたという[46]。
ルキウス・アエリウスを通して、アウレリウスは「カルケドンのアポロニウス」というストア派の哲学者の知遇を得た。ストア派哲学との出会いはアウレリウスの禁欲的な生き方として多大な影響を与えた。またアポロニウスは哲学の教師としてアウレリウスにストア派の講義を行い、アウレリウスから神に出会いを感謝された3人の一人となった[47]。後に姉コルニフィキアが従兄弟のウッミディウス・クァドラトゥスと結婚した時、アウレリウスは母ドミティア・ルキッラから父の遺産の一部を姉に持参金として譲るように求めたが、アウレリウスは遺産全てを姉に譲ったという[48]。
136年、既にハドリアヌスは不治の病に侵されていたが、同性愛者であった事から嫡男を授かっていなかった。別荘で病床に就いたハドリアヌスは、腹心であるルキウス・アエリウスを後継者に指名した[49]。。ハドリアヌスがアエリウスを特に選んだ理由については明確には分かっていない。
138年、ドナウ川における短い駐屯を経てルキウス・アエリウスは元老院で演説を行う為に帰路へ就いた。しかし演説を行う前日に吐血して倒れ、そのままローマで病没した[50][notes 7]。この事件が起きた後、ハドリアヌスは1月24日にもう一人の重臣で、大ファウスティナと結婚していたアウレリウス・アントニヌスを後継者に指名した[52]。ただし帝位継承には、「ルキウス・アエリウスの子ルキウス・ウェルスと、大ファウスティナの甥であるカッティリウス（アウレリウス）を養子とする事」と、「大ファウスティナとの子である小ファウスティナを、ルキウス・ウェルスと婚約させる事」が条件とされた。2月25日、アントニヌスはハドリアヌスの後継者となる事を受け入れ、条件の履行を約束した[53]。
ちなみにアウレリウス自身には相談されていなかったらしく、突然に叔母夫婦の養子とされた事に愕然としたという。アウレリウスは渋々といった態度で母の家から離れ、ハドリアヌスの離宮へと移り住んだ[54]。
ハドリアヌスは元老院に対し、アウレリウスが財務官への就任年齢（24歳）の規定から特例的に除外されるように命令した。元老院は要求に屈して、後にアウレリウスは18歳で財務官に就任している[55]。アウレリウスが皇帝候補者である外叔父アントニヌスの養子とされた事は、典型的な過程を無視した立身に繋がった。恐らく普通の立身であれば、まずアウレリウスは造幣官に任命されていたと考えられる。ある程度の経歴を積んだ元老院議員はトリブヌス・ミリトゥム（軍団幕僚）となり、名目上の軍団副司令官を務めるのが一般的であった。恵まれた立場にあったアウレリウスであったが、周囲の貴族的な退廃には呑まれず、清廉な生き方を続けた[56]。
日に日にハドリアヌスの病状は悪化していき、何度か自殺未遂を繰り返しては周囲に押し留められていた。治療を諦めたハドリアヌスはカンパニアの保養地バイアエへ向かい、そこで食事や飲食などの放蕩に耽る様になった。138年7月10日、ハドリアヌスはアントニヌスに看取られて病没した[57]。彼の遺骸はポッツオーリに埋葬された[58]。
元老院と終始敵対し続けていたハドリアヌスの後であったが、アントニヌスは元老院を尊重した事で安定して帝位は継承された。またアントニヌスはハドリアヌスへの弾劾を取り下げるように元老院を宥めた[59]。周囲と軋轢無く政治を進めるアントニヌスは「アントニヌス・ピウス」（慈悲深きアントニヌス）という渾名で呼ばれた[60]。
叔父アントニヌスの即位
ハドリアヌスの死後、直ぐにアントニヌスは妻の甥（アウレリウス）を政敵の息子（ウェルス）より重用する姿勢を見せ、アウレリウスからすれば従姉妹である小ファウスティナとの結婚を要請した。アウレリウスと小ファウスティナはそれぞれの元の婚約を破棄すると、親族同士（従兄弟婚）による結婚に同意した[61]。
叔父の皇帝即位と、その子女である従姉妹との結婚は、アウレリウスの宮殿における地位を大幅に引き上げた。140年にアウレリウスはアントニヌスの同僚執政官に叙任され、続いて全エクイテスを指揮する騎士総長（iuventutis）に任命された。皇帝の後継者としての証である副帝の称号も受け、全名をマルクス･アエリウス・アウレリウス・ウェルス・カエサル（Marcus Aelius Aurelius Verus Caesar）に改名した[62]。アウレリウスは自身の名声に溺れず、清廉な生き方を貫く様に意識したと語っている[63]。神学に関する専門知識も健在であり、元老院の命によって幾つかの神学者の組織(pontifices、augures、quindecimviri sacris faciundis、septemviri epulonum、Arval Brethren)に加わっているが[64]、歴史的資料で証明できるものは「Arval Brethren」への参加のみである[65]。
アントニヌスは質素な生活を好んだ甥に宮殿で生活するように命じ、また皇帝の親族に相応しい華やかな生活を行うべきだと促した[64]。叔父の命に従って宮殿に移り住んだアウレリウスは、退廃した貴族文化と自身の生き方との食い違いに悩んだ。アウレリウスの望みはストア派哲学に基づいた禁欲と自省であり、人間の持つ理性がそれを可能にすると信じていた。最終的にアウレリウスは「生命がある限り、人間は理性で己を律する可能性を持つ。そして宮殿は退廃した場所だが、生きる上での不都合まではない。従って周囲が退廃に満ちている宮殿においても、己を律することは可能である」と結論している[66]。しかしこうした結論にも関わらず、アウレリウスは宮殿の退廃にしばしば飲み込まれてしまい、「自省録」では自らその罪を書き連ねて懺悔している[67]。
財務官としてのアウレリウスの仕事や権限は無いに等しく、皇帝不在の時に手紙を代読するといった秘書的な役割が精々だった。執政官としては二つの元老院議長の一人として議会を統制する立場であった[68]。代読作業についてアウレリウスは自身の秘書官に「毎日30通の手紙を口述しているおかげで息が切れそうだ」と皮肉を口にしている[69]歴史家たちは「アウレリウスは政務に才覚があった」と述べている[70]。毎日元老院で演説と議論の統制を行っていたアウレリウスは、必然的に弁論術を学ばなければならなくなった[71]。
145年、アウレリウスは二度目の執政官叙任を受けた。この時にアウレリウスは体調を崩していた可能性があり、秘書官は「貴方が良い顔色で元老院に入って力強く演説できるように、十分な睡眠を取るべきです」とする手紙を送っている[72]。アウレリウス自身の手紙では「私の体調は快方に向かっている。かつてのように胸に痛みを感じる事はなくなった。しかし私は自分の潰瘍[notes 8]（中略）…について常に意識した治療を行っている[73]。アウレリウスは余り体が丈夫な方ではなく、カッシウス・ディオはそうした部分を感じさせずに振舞う様を賞賛している[74]。
145年、アウレリウスは7年前に結んだ婚約に従って従姉妹の小ファウスティナと結婚した。血統上でも既に近い親族関係にあった両者であるが、法律的には義理の兄妹ですらあったので、どちらかに対して家父長権を放棄せねばならなかった[75]。二人の式典についての記録は散逸しているが、当時の注目を集めた出来事であった事は分かっている[76]。二人の結婚を記念する通貨が出され、また最高神祇官でもあったアントニヌスが式典を監督したと見られる[77]。
アウレリウスの教師達
136年に成人の儀式を終えたアウレリウスは直ちに弁論術の教育を始めたと考えられている[78] 彼は三人のギリシャ人学者と一人のラテン人学者を教師としたが、これは当時のローマにおけるギリシャ文化の勢威を示している[79]自省録にもそうした影響が見て取れる箇所がある[80]。
その中でも最も重用されていた人物で、アテネ随一の財産家でもあった弁護士ヘロデ・アティクスの存在は常に論争の的であった。ヘロデは癇癪持ちで神経質な性格をしており、また傲慢な態度で振る舞って同じアテネ人からも嫌われていた[81]。加えて豪勢な生活を好んだヘロデはストア主義を否定し、ギリシャ哲学の権威自体も軽視していた[82]。彼はストア派の唱える禁欲を愚かな発想と一蹴して「鈍感で無気力な人生に何の価値がある」と嘲笑した[83]。アウレリウスはヘロデから弁論術を学び続けたが、やはり個人的には反りが合わなかったらしく「自省録」にヘロデについては一切言及されていない[84]。
一方、唯一のラテン人家庭教師であったフロントという人物とはとても親密な間柄となった[85]。フロントはキケロに次ぐ才人と評され[86][notes 9]、ラテン語の弁論術と修辞学に関して完璧な知識を持っていた[86]。アウレリウスとフロントの往復書簡は大部分が現存しており[90]、アウレリウスはフロントに以下の言葉を贈っている。「親愛なる我が師よ、さようなら。例え何処に居ようとも、貴方への愛と喜びに変わるところはありません。私は貴方を愛しています。なのに何故貴方は此処に居ないのか。」[91] アウレリウスはフロントと家族ぐるみの付き合いすら持ち、彼の娘と手紙を交わしている[92]。別の手紙では「弁論術の全てを貴方から学べるよう、神に祈りを捧げた」と記されている[93]。フロントは病弱な人物でよく体調を崩して療養する事があり[94]、アウレリウスが書き送った手紙の4分の1は病気を気遣う内容であった[95]。アウレリウスは不幸な師と同じ病が自らに降りかかることすら望んだという[96]。
フロントはアウレリウスに弁論術を教える傍ら弁護士としての活動を続けていたが、ある裁判でヘロデと争う事になった[97]。アウレリウスはフロントに好意を持っていたが、助言という形でヘロデとも諍いをしないように求めた[98]。フロントはアウレリウスがヘロデもまた友として扱った事に感心したが[99]、この一件ばかりは自分も引き下がれないと拒否したという[100]。裁判の結果は記録が残っていない[101]。
26歳の時、アウレリウスはいかに陪審員を説得するかに重きを置いているローマの司法制度に不満を感じるようになっていた。フロントへの手紙で「弁護士の仕事は裁判官の隣で欠伸をするだけと呼ばれないようにすべきです」と書き送っている[102]。アウレリウスは様々な場面を想定して行われる問答や仮想議論に熱意を失い、弁論術の用いる詭弁や言葉遊びの要素を不誠実だと批判したが、フロントには受け入れてもらえず叱責されている[103]。フロントはアウレリウスが哲学に傾倒する事を窘める発言をしている[104]。フロントもまたヘロデと同じくギリシャ哲学を軽んじていたのである[90]。彼は哲学を「必要な知識を得ることに飽きた若者が傾倒する学問」と形容した上で、アウレリウスが弁論術の修行を怠る事を嘆く手紙を残している[105]。弁論術を学ばなくなってからもアウレリウスはフロントと親密だったが、良心は咎めていたようである[106]。
アウレリウスは次第に興味を哲学へと移していたが、弁論学も直向に学んでいたことに違いは無い。彼の青年時代の教育については、「体を大事にしなかった」こと以外に批判すべき点は見当たらない[107]。
ストア派については上述の通りアポロニウスの存在が大きいが、ユニウス・ルスティクスも大きな影響を与えていた[108][notes 10]彼はフロントより年上のストア派哲学者で、強権的なドミティアヌス帝の治世に反対して処刑された元老議員アウレリウス・ルスティクスの末裔でもあった[110]。彼はキケロの再来と呼ばれたフロントに対して、暴君ネロを窘めて処刑された哲学者セネカの再来と呼ばれていた[111]。アウレリウスはルティクスを最良の師と呼び、生涯尊敬を続けることとなる[112]。
家庭と子女
147年11月30日、小ファウスティナは最初の子供を生み、アウレリウスは長女となる娘にガレリア・ファウスティナと名付けた。アウレリアはその後の23年間で生まれた13人の子供（2度の双生児を含む）の長子となった。その翌日である12月1日にアントニヌスはアウレリウスに護民官職権を与えた[113]。ガレリア・ファウスティナは元老院議員グナエウス・クラウディウス・セウェルスと結婚してグナエウス・クラウディウス・セウェルス（西暦200年に執政官叙任）を生んだが、2年後に18歳で病没した。
149年、二度目の出産では双子の兄妹（二卵性双生児）が生まれ、双子の誕生を祝う硬貨（temporum felicitas）が発行された。長男となる兄はゲメルス、次女となる妹はルキッラと名付けられた。この内、次女ルキッラは成人して後にアウレリウスの共同皇帝となったルキウス・ウェルスと結婚した。跡継ぎである長男ゲメルスは子供の死亡率が高い古代ローマでは良くあった事とは言え、不幸にも1歳で亡くなった[114]。それから短期間に四人の子供（次男・三男・四男・三女）が産まれたが157年に四男を失い、161年に相次いで次男・三男・三女を失った。次男と三男については出生を祝う硬貨と二人の墓で分かったことであり、碑銘には「アントニヌス」と「アエリウス」と刻まれている[115]。三女はドミティア・ファウスティナ、四男はハドリアヌスという名で記録されている。
相次いで5人の子供に先立たれたアウレリウスは動じる事無く不幸を受け止めた[116]。彼は「自省録」でイーリアスの有名な言葉を引用している。
自身の母ドミティア・ルキッラが亡くなってから5年後となる159年に四女ファデイラが生まれ、翌年となる160年に五女コルニフィキアが生まれた。後にファディラは元老議員マルクス・ペドゥカエウス・プラウティヌス・クィントゥルス、コルニフィキアは元老議員マルクス・ペトロニウス・マメルティヌスとそれぞれ結婚して父の治世を固めるのに貢献した。
そして161年、12年ぶりに双子の子供が出産され、二人の男児を授かることになる。双子はそれぞれ五男ティトゥス、六男コンモドゥスと名付けられた。続いて翌年にも七男ウェルスも生まれ、暫くは子育てに専念するべく子供は儲けられたなかった。9年後の171年、久しぶりに子供を儲けて六女サヴィナと名付けられるが、彼女が夫妻の最後の子供となった。
アントニヌス帝の死
152年、ルキウス・ウェルスがアントニヌスから財務官へ指名を受け、続いて2年後の154年に執政官へ叙任された。
アウレリウスは財務官と執政官の両職を既に終えていたので、一連の出来事は遅ればせながら後継者候補が等しい立場になった事を意味した。それまでルキウスは皇子を除く称号を与えられていなかった。これはアントニヌスが親族を優先しただけでなく、ルキウスに皇帝の資質が伴っていないという周囲の批判によるものであった[118][notes 11]。個人的にもアントニヌスはルキウスを嫌い、皇族の一員として残す事はともかくそれ以上の権威は極力与えたがらなかった[122]。160年までルキウス・ウェルスを象った通貨は発行されていない[123]。
156年、70歳を迎えていたアントニヌスは目に見えて衰弱しており、まともに立つことも困難になりつつあった。老いた皇帝は早朝の会議で眠らないように乾いたパンを口の中で噛み続ける習慣を行ったとも言われる。アウレリウスは叔父の補佐官として行動する機会が増え、皇帝の政務を一部代行するようになった[124]。アウレリウスとルキウスが執政官と共同執政官に叙任された160年には既に不治の病を抱えていた[125]。
ある日、アルプス産のチーズを食べたアントニヌスはその夜に嘔吐と発熱を起こした。161年3月7日、アントニヌスは病を押して議会を開くと、自らの寝室に置かれていたフォルトゥナ神の銅像を「アウレリウスの寝室に移せ」と命じた。言い終えるとアントニヌスはそのまま仰向けに倒れて息を引き取った[126][127]。
治世
→詳細は「en:Emperorship of Marcus Aurelius」を参照
皇帝即位
アントニヌス帝崩御後、誰もが甥にして娘婿であるアウレリウスの即位を有力視し、実質的に皇帝候補者は一人だけのように扱われた。元老院は直ちにアウグストゥス（尊厳者）とインペラトル（軍指揮官）の二大称号を授与、更には最高神官長にも就任した。アウレリウスは皇帝即位を拒む素振りを見せ、複数の伝記作家は「彼は無理に帝位を継がされたのだ」とまで論じている[128]。事実はともかく、アウレリウスのストア派的な価値観からすれば皇帝としての権力に魅力を感じず、退廃した宮廷での政務を好ましく思わなかった可能性はある[129]。
また叔父と自身の即位を企てたハドリアヌス帝を個人的に好んではいなかった（「自省録」ではハドリアヌスに辛辣な評価を与えている）が、恩人の考えに狂いを生じさせるのも不義理と考えていた[130]。従って元老院と叔父が意図的に除外していたルキウス・ウェルスも、ハドリアヌス帝の遺言の通りに自らの共同皇帝にするように命じた[131]。かくしてルキウスも共同皇帝として元老院から認可され、「アウグストゥス」「インペラトル」の称号と護民官職権を得た[132]。
戴冠した二人はそれぞれ皇帝インペトラル・カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥス（Imperator Caesar Marcus Aurelius Antoninus Augustus）、共同皇帝インペトラル・カエサル・ルキウス・アウレリウス・ヴェルス・アウグストゥス（Imperator Caesar Lucius Aurelius Verus Augustus）と名乗った[133][notes 12]。いわゆる「共同皇帝制」が採用されたのはこれが初めての事例となった[136][notes 13]。名目上はともかく、実質的にアウレリウスの方が遥かに多くの権限を持ち、ルキウスはアウレリウスの共同者でしかなかった。どちらが皇帝で、どちらがその共同皇帝かは民衆の間ですら明らかであった[136]。伝記作家は「ルキウスはアウレリウスに従った。ちょうど属州総督が皇帝に従うのと同じ理屈で、臣下として従ったのだ」と書き残している[137]。
即位後すぐに二人の皇帝は近衛隊の駐留する城砦カステル・プラトリアに赴いた。ルキウス帝は近衛隊にクラウディウス帝時代からの慣習となっていたドナティブム（皇帝即位時の特別給金）を約束した[138]。しかしルキウスが約束したドナティブムは通例の二倍となる5000セルティウスという巨額であり、数年分の賃金に相当する恩給で近衛隊の忠誠を確固たるものにした[139]。アウレリウス帝の権力継承が磐石であったことを考えれば絶対に必要な行動という訳ではなく、もしもの時の保険という意味合いが強かった[140]。
アントニヌス帝の壮大な葬儀が終わった後[141]、アウレリウス帝とルキウス帝は先帝を神の列に並べる事を提案した。かつてそのアントニヌス帝がハドリアヌス帝を神格化しようとした時の猛烈な反発とは対照的に、元老院はアントニヌス帝を神として祭る事を直ちに承認した。遺骸はハドリアヌス廟に葬られたと伝えられる[142]。アントニヌス神殿は後にアウレリウスの妻で、先帝の娘である小ファウスティナも祭られ、アントニヌス・ファウスティナ神殿と呼ばれた。現在もこの神殿はカトリック教会によって保全されている。[140]。
先帝の財産は全て娘である妻ファウスティナが相続したが[143]、アウレリウス個人も富豪の娘である母ドミティアから財産を受け継いでいたのでそれほど重要な出来事ではなかった[144]。父の死の直後、ファウスティナはコモドゥスとティトゥスの双子を出産したが、その際に二つの恐ろしい怪物を生む夢を見たとされる[145][146][notes 14]。占い師達は双子の出産を吉兆としたが、かの暴君カリグラと同じ誕生日である事だけは不安に感じられた[148]。五男と六男の誕生は盛大に祝われ、二人の皇子を象った通貨が発行された[149]。
初期統治
即位してすぐにまずアウレリウス帝は自らの長女で、法律上はルキウス帝の義姪にあたるルキッラとルキウス帝の結婚を決定した[150]。同時に帝国初期の路線に沿って、貧民階級の子供に対する慈善政策を進めた[151]。アウレリウスはその質素な生活と、貴族的でない謙虚な振る舞いから民衆の人気を集めていた。言論の自由は保障され、喜劇作家が皇帝を揶揄する文言を発表しても決して罰せられなかった。それ以前の皇帝達はもちろん、以後の皇帝達でもこうした事を許す場合は少なかった。伝記作家は「寛大な方法を見落とさなかった」と述べている[152]。
次にアウレリウス帝は人事政策に着手し、帝国要職の刷新を行った。通信長官（Ab epistulis）をセクストゥス・カエキリウス・クレスセンス・ヴォルシアヌス（Sextus Caecilius Crescens Volusianus）からティトゥス・ウァリウス・クレメンス（Titus Varius Clemens）に交代させた。ティトゥス・クレメンスはマウレタニア戦争での活躍で台頭し、5つの属州総督を歴任した人物であった。彼は軍部隊指揮に関する実績があり、有事に備えての人事であった[153]。かつてアウレリウスの教育に携わった人物の一人であり、即位時にはエジプト総督を務めていたルキウス・ウォルシウス・マエキアヌス（Lucius Volusius Maecianus）は元老院議席を与えられて国庫長官 (aerarium Saturni)に指名された。後にウォルシウスは執政官にも叙任されている[154]。更に恩師フロントの子息オウフィディウス・ヴィクトリアヌス（Aufidius Victorinus）も抜擢され、属州ゲルマニア・スペリオルの総督に任命された[155]。
属州アフリカのキルタ市で隠棲していたフロントは教え子の即位を聞くと3月28日に帝都ローマへ向かい、自由民にアウレリウス帝への手紙を託した。あえてフロントは直接アウレリウス帝に手紙を送ることはしなかった[156]。フロントは自らの教え子を誇りに思い、手紙にこう記した。「貴方には天賦の才があった。その才は今完成しつつある。成長する果実は実をつけ、民衆に熟した収穫を与えるだろう。私は貴方に希望を抱き、そしてその希望は現実となった」[157]。後に二人は再会の場を持つが、そこにルキウス帝を呼ぶ考えは双方に無かった[158]。ルキウス帝はアウレリウス帝ほどフロントから敬意を受けていなかった[159]。アウレリウス帝は恩師に今読んでいる本（ルキウス・コエリウス・アンティパテル）についての話をした[160]。アウレリウスは確かに「庶民的な皇帝」として大衆に人気があったが[161]、次第に多くの困難を抱え始め「最も幸福な時代」と呼ばれた初期の統治は終わりを迎える[162]。
162年の春[notes 15]、ティヴェレ川の増水によってラティウム地方に甚大な被害が及び、農作物の損失から飢饉が発生した[164][notes 16]。
全ての皇帝がそうであるように、君主の政務の殆どは公文書の制作と署名で費やされる[166]。アウレリウスは法律に関する専門的知識を持ち、それに基づいた改革や行政を行った[167][168]。特にアウレリウスは孤児や少年少女の保護、解放奴隷についての法律、市議会議員の選出方法などを改革した[169]。
パルティア戦争
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初期の敗北
アントニヌス帝は死の間際に何時の日か帝国の脅威となるだろう周辺国の君主について言い残したが[170]、その一人に含まれていたパルティア王ヴォロガセス4世による戦乱が引き起こされた[171]。161年に、帝国の庇護下にあったアルメニア王国にパルティア軍が侵攻、王を追放して新たに親パルティア派の君主を立てる行動に出た[172]。アルメニア王国を管轄内とするカッパドキア総督マルクス・セダティウス・セウェリアヌス(Marcus Sedatius Severianus)はガリア地方で幾つもの軍功を挙げた人物であった[173]。セウェリアヌスは占い師の助言もあって積極的な攻勢を決断し、軍を率いてアルメニア王国へ向かった[174]。第9軍団「ヒスパナ」[175]) を中心とするセウェリアヌス軍はアルメニア領内に到達したが、途中でパルティア軍の伏兵攻撃に大敗を喫してカッパドキアへ敗走した[176]。
時同じくしてブリタニア・ラエティア・ゲルマニアなどでも周辺勢力の攻撃が活発化、特にカッティ族とタウヌス族の存在が国境防衛を脅かしていた[177]。アウレリウスはこうした状況に何ら有効な準備を行えなかった。アウレリウスは政務に関する経験は豊富ながら軍事的な知識や才覚に乏しく、国境地帯の属州総督を経験したこともなかった[178][notes 17]。状況は刻一刻と悪化を続け、対応に遅れるアウレリウスを尻目にパルティア軍はカッパドキアに続いてシリア総督の軍勢も撃破する勝利を挙げた[180]。
それから暫くして漸くアウレリウスは対パルティアの増援部隊を編成する準備を整え、元老院議員ユリウス・ゲミニウス・マルキアヌスを司令官に第10軍団「ゲミナ」をウィンドボナから派遣した[181]。更に追加で属州ゲルマニア・スペリオルのボンナから第1軍団「ミネルウァ」を[182]、属州パンノニアのアクィクムから第2軍団「アディウトリクス」を[183]、そして属州ダキアのトロエミスから第5軍団「マケドニカ」をそれぞれ東方属州に投入した[184]。必然的に西方の守りは弱まる事になるため、アウレリウスは各国境駐屯軍に周辺勢力を刺激しないように厳命した[185]。これらの増援軍と現地軍を取りまとめる属州シリアの総督には新たにアウレリウスの従兄弟マルクス・アンニウス・リボが任命された[186]。しかし彼は特段の軍事的功績があった訳ではなく、アウレリウスは能力より自らが信頼できる人物を送り込むという決断を下した[187]。
遠征軍派遣後、アウレリウスはエトルリア地方のアルシウムで4日間の休養を取ることになった。アウレリウスは文通を続けていたコルネリウス・フロントにアルシウムの滞在について相談事はしないと書き送っている[188]。フロントは「君が暇を潰すためにアルシウムへ向かったことを知らないとでも？」と皮肉を述べ[189]、きちんと休養を取るのであれば先帝アントニヌスの様に釣りやレスリングに興じてはどうかと助言した[190]。しかし不安に苛まれていたアウレリウスはもっぱら滞在中は公文書を書き続けることで時間を潰していた[191]。アウレリウスはフロントに「私はどんな状態でも行わなければならない義務がある」と書き[192]、手紙の内容からは敗北の責任を感じている事が伺える[193]。
フロントはアウレリウスに幾つかの読み物を差し入れる一方[194]、現在も保存されている「De bello Parthico (パルティア戦争について)」と題した長大な手紙をアウレリウスに送っている。この手紙は古今東西の歴史上における事件や人物・格言を例に出しながら、不安を感じているアウレリウスを宥める目的で書かれている[195]。手紙は「過去にローマが敵に敗れ去った事は何度もある」とした上で、「だが最後は常にローマがその力を敵に思い知らせてきたのだ」と記述されている[196]。
アンティオキア
一向に事態が好転しない事に対する不安が募る中、思いがけず白羽の矢が立てられたのが無能力さから今回の動乱にも無関係と思われていたルキウス帝であった。元老院はルキウス帝を前線に派遣することで軍の督戦を行わせようと考えた[198]。しかしルキウスに関する伝記はそれ以外にも「ルキウス帝に皇帝の責務を自覚させる」「戦場の恐怖で倫理観を抱かせる」といった具合に、云わば厄介払いとしての部分もあったのではないかと記録している[199][notes 18]。ともかく162年に元老院はルキウス帝の親征を承認する決議を行ったが、アウレリウスに関しては「民衆が滞在を望んでいる」としてローマへ留まることが勧められた[201]。
ルキウス帝は一部の例を除いて殆どの時間をアンティオキアの後方陣営地で過ごした[202]。同時代の論者達はルキウスの退廃癖が前線でも改められていないと批判し[203]、朝から晩までルキウス帝は賭け事に熱中して前線を訪問せず[204]、周囲にお気に入りの役者達を置いて気侭な生活を送っていた[205][notes 19]。更に実務面を統括していたシリア総督アンニウス・リボの存在を疎んで暗殺したと噂されている[207]。
163年、アウレリウス帝は自身の長女ルキッラとルキウス帝の婚姻を取り決めた[208]。アウレリウス帝はルキウス帝が既に大勢の愛人を抱えていることを知っていたが、敢えてルキウス帝への親睦として娘を嫁がせた[209]。この時、ルッキラは15歳に満たない少女であったと考えられている[210]。結婚の仲介役としてルキウス帝の叔父にあたるウェトゥレヌス・シウィカ・バルバルウス（Vettulenus Civica Barbarus）を向かわせた[211]。バルバルウスは実質的にアンニウスの後任としてルキウスの目付け役も兼ねていたと思われる[212]。
当初、アウレリウスも娘の婚姻に合わせて前線に向かう計画もあったが、これは実現しなかった[213]。アウレリウスは途中まで娘と一行を見送ると自らはローマに戻り[214]、各属州に一行に対して何かしらの特別扱いを行わないように命令を下している[215]。
戦争終結
緩慢な反撃を続けるローマ軍は163年になってアルメニア王国の首都アルカタを占領した[216]。ルキウスは戦争に何ら寄与していなかったが、名目上の司令官として「アルメニクス（Armeniacus）」の称号を元老院から与えられた。同時にアウレリウスにも称号授与が行われたが、彼は戦争終結までは辞退すると返答している[217]。しかしインペトラル（凱旋将軍）の称号については共に受け取ったと見られる[218]。
アルメニアを奪還したローマは荒廃したアルカタを蜂起して新しい都を建設して、そこに首都を遷都させた[219]。新しい皇帝にはローマの元老院議員・執政官カイウス・イウリウス・ソハエムスが着任、形式的な王の戴冠式はアルメニア領内外で行われた[220]。ルキウス帝がアルメニア王の宮殿に訪れると、ソハエムスは元老議員として玉座を皇帝に譲り、ルキウス帝が玉座に座る儀式が行われた[221]。
一方、パルティア王国軍は反撃として今度はオスロエネ王国のエデッサに軍を送り込み、再び傀儡君主を立てる行動に出た[222]。対するローマ軍は軍を南下させてユーフラテス川の南側から渡河を決行[223]、そこから北進して南からパルティア軍を牽制した[224]。ほどなくユーフラテスの北側も制圧したローマ軍はオスロエネ王国へ援軍を派遣してエデッサの南西部に拠点を確保した[225]。
165年、ローマ軍はエデッサを陥落させて親ローマ派の君主を復位させた[226]。パルティア軍はニビシスに退いて抵抗を続けたが、やがてオスロエネ王国からティグリス川へ撤収した[227]。戦いで顕著な活躍を見せたのが第3軍団「ガリカ」を率いる元老議員カイウス・アウィディウス・カッシウスであり、ドゥラの戦いでパルティア軍に多大な損害を与えた[228]。同年の暮れまでに追撃を続けるアウィディウス軍はセレウキアとクテシフォンというパルティア王国の二大都市を占領する大功を挙げた。クテシフォンに入城したローマ軍はパルティア王の宮殿を焼き払い、これに恐れをなしたセレウキアのギリシャ系住民はパルティア軍を追い払って自ら開城した。しかしセレウキアに入城したローマ軍は約束を反故にして略奪を行い、大勢の市民が虐殺された。元老院の批判に対してルキウス帝は「セレウキアの住民が約束を破った」と強弁した[229]。
物資不足と疫病の関係からローマ軍の戦力は削られたが、問題なくアウィディウスは軍勢を本土へと帰還させた[230]。元老院はアンティオキアのルキウス帝に「パルティニクス・マキシムス」を新たな称号として与え、アウレリウスとルキウスはインペトラル経験数を3回へと増やした[231]。またアウィディウスが帰還途中にメディアを占領したので、ルキウスは「メディクス」の称号と[232]4度目のインペトラルを授与された。後にアウレリウスも「パルティニクス・マキシムス」の称号を与えられている[233]。
凱旋
上記のようにルキウス帝（次いでアウレリウス帝も）はパルティア戦争の勝利に関する多くの栄誉を元老院から与えられた。しかし真の功労者が前線で戦っていた軍指揮官達、特にクテシフォンとセレウキアを攻め落とした元老議員カイウス・アウィディウス・カッシウスであった事は誰の目にも明らかであった。アウィディウスは属州シリアのキュロス出身で、ガイウス・アウィディウス・ヘリオドルス（Gaius Avidius Heliodorus）の子として生まれた。ハドリアヌス帝時代に軍人として頭角を現し、エジプト総督などを歴任していた[234]。論功行賞で166年にアウィディウスは直属の軍司令官マルティウス・ウェルス（Martius Verus）と共に執政官に叙任され、それぞれシリア総督（アウィディウス）とカッパドキア総督（マルティウス）に任命された[235]。
ローマ本国ではアウレリウス帝とルキウス帝による凱旋式が挙行され、二人の皇帝に加えてその妻や子供も含めたかつてない大規模な式典が行われた。その一員に5歳になった嫡男の六男コンモドゥスと7男ウェルスが居り、二人は父から副帝（カエサル）の称号を与えられ、民衆に後継者であることが示された。戦争終結に沸くローマであったが、翌年から始まったアントニヌスの疫病と呼ばれた天然痘の大流行によってウェルスは病没し、アウレリウスやコンモドゥスも病に倒れた。カッシウス・ディオによれば一日2000名の人間が死に絶え、帝国全土に広がった疫病は500万以上の人命を失わせた。
この時、アントニヌス帝が東方属州から派遣した使者が中国の漢帝国に到達したことは広く知られており、歴史書には大秦国王（ローマ帝国）の安敦（アントニヌス）の使者が訪れたと記録されている[236]。
マルコマンニ戦争
- For details, see: Marcomannic Wars
コルネリウス･フロントの子息オウフィディウス・ヴィクトリアヌスはゲルマニア・スペリオル総督として滞在、ゲルマニア地方の諸族に対する外交政策を一任されていた[237]。ヴィクトリアヌスはゲルマニア地方の防備が極めて粗雑な状態にあると報告した。辺境の要塞は多くが破壊され、中欧や北欧では動乱の兆しが見られ、駐屯軍の指揮官階級は腐敗しつつあった[238]。
しばしばアウレリウス時代の総督達は経験ではなく縁故主義によってアウレリウスとその王朝（lネルウァ・アントニヌス朝）と親しい人物から任命された。ルキウス・ダスミウス・トゥリウス・トゥスクス（L. Dasumius Tullius Tuscus）はハドリアヌス帝の親族で、経験豊富であった上パンノニア総督ノニウス・マクリヌス（Nonius Macrinus）の後任となった。下パンノニア総督は無名の人物ティベリウス・ハテリウス・サトゥルニヌス（Ti. Haterius Saturnius）が務めていた。イリウス・バッスス（Iallius Bassus）がルキウス帝のアンティオキアの陣地を訪れた時、マルクス・セルウィリウス・ファビウス・マキシムス（M. Servilius Fabianus Maximus）は上モエシア総督から下モエシア総督へと転任した。後任の上モエシア総督にはポンティウス・ラエリアヌス（Pontius Laelianus）の息子が派遣された。西方の防備は弱まる一方で、下パンノニアに至っては軍団が一つも配置されていなかった[239]。
160年代、ゲルマニアやそれ以外の地域に住む諸民族は各地でローマ国境への侵入を試みるようになり、特にドナウ川流域では全域にわたって蛮族の攻撃が繰り返された。この動きは恐らく、より遠方（サルマティアなど）での動乱が影響したものと考えられている。最初に始まった162年のカッティ族による攻撃はゲルマニア・スペリオルの駐屯軍によって撃退された。しかし続いて166年に起きたドナウ川での攻撃はより深刻な事態となり、マルコマンニ族を中核にロンバルディア族・クアディ族などを含めた遊牧勢力がドナウ川を渡河した。さらにこれに呼応してサルマティア族がドナウ川と隣接するティサ川を越えて同じく帝国領内へ進出した。
これらの動きはパルティア戦争の影響で有効に対処できず、3年後の167年になって反撃が模索されはじめた。今度はアウレリウス帝とルキウス帝の双方が軍を指揮したが、169年にルキウス帝が謎の死を遂げるとアウレリウスが単独で親征を継続した。戦いは泥沼の長期戦となり、アウレリウスのそれから死没までの人生はマルコマンニ戦争で使い果たされることになる。遠征の最中、7人兄弟で唯一の生き残りとなっていたコモドゥスが共同皇帝に指名され、もしもに備えての権力移譲も整えられた。
戦いはアウレリウス軍の苦戦が続き、取り分けクアディ族とマルコマンニ族は2度にわたってローマ軍を打ち破って南下を続けた。両部族は一時イタリア本土にまで到達してオデルツォ市とアクイレイア市が包囲される事態となった。またダキアではコストボキ族がモエシアを越えてマケドニアやギリシャ諸都市を脅かしていた。10年以上にわたって次々と増援戦力が編成されては前線に送り込まれ、アウレリウスは軍勢を鼓舞することに務め続けた。戦争末期には概ねの軍勢が元の国境地帯に押し返された。しかし蛮族との最終的な和睦は模索されたままで戦いは続き、アウレリウスは発想を転換して逆にゲルマニアへ新しい領域を形成する攻勢主義へと転じる決断を下した。しかし計画は長引く戦乱に対する不満を背景にしたカイウス・アウィディウス・カッシウスの反乱によって断念された。東方属州の大部分を纏め上げていたアウィディウスは、身体の衰えが隠せなくなっていたアウレリウスが病没した噂から挙兵を決断した。しかし後にこれは誤りであったことが判明し、アウィディウスは遠征に出る前にアウレリウス側に内通していた将官によって暗殺された。
その後、再びアウレリウスはボヘミア地方への進出を目指してその準備に奔走したが、実現するより先に寿命が訪れることになった。
死没
180年3月17日、アウレリウスは滞在中のウィンドボナで病没した。遺骸は直ちに陣営地で火葬により弔われ、遺灰が厳重な警備の元に帝都ローマのハドリアヌス廟へ送られた。ゲルマニア諸族とサルマティア諸族に抵抗し続けた彼の治世後半は英雄的な評価を確実なものとし、元老院はアウレリウスを他のネルウァ・アントニヌス朝の歴代君主と並んで神に祭ることを認めた。帝位は既に生前に禅譲されていたコモドゥス・アウレリウスがそのまま継承することが決められた。当初は清廉な青年であったコモドゥスが次第にローマ史の著名な暴君の一人として名を残す結果となると、この決定は後世の歴史家の間で議論の対象となった。
同時代の歴史家で元老院議員でもあったカッシウス・ディオは以下のように述べている。
……アウレリウスは厳格で賢明な生き方を選んだにも関わらず、苦難に満ちた人生を生きる結果になった。
彼は常に持病と闘いながら、周囲の出来事を取りまとめることに奔走していた。しかしまさしく私はこうした人生を生きたからこそアウレリウスを尊敬する。
途方も無い困難と苦難の中で彼は広大な帝国を維持することに努め、それを全うした。唯一つ、彼の息子への完全な教育を終えることができなかったことを除けば。
ローマは、黄金の帝国から鉄と錆の王国へと没落し始めるのである。
―――カッシウス・ディオ 71.36.3
現代の歴史家マイケル・グラントは「ローマの最盛期」（1968年）においてアウレリウスの権力移譲を解説する文章を記述した。
……今日的な常識では青年期は経験に乏しく、情緒も不安定なものである。アウレリウスが父としてその事実を理解していたとしても、若い青年に全権を預ける以外に選択肢は無かったといえる。
君主に直系の子息がおり既に権力も委譲されている状態で突然に廃嫡すれば、事態は父子間の対立だけでは済まされない。一挙に政治情勢を混迷化させ、帝国を内戦へと向かわせるだろう。
―――「ローマの最盛期」マイケル・グラント
著作
アウレリウスはマルコマンニ戦争の後半から、自らへの戒めを兼ねて思索を綴って著作「自省録」を完成させた。本来は他者に公開するために書いた訳ではなかった為、原文には「自分自身へ」と簡潔な表題が書かれていた。彼は少年期に傾倒したストア派の禁欲主義を生涯にわたって守り続け、これを美徳として価値観の中心に置いていた。したがってストア派の思想書として第一に挙げられ、近代でもフリードリヒ2世 (プロイセン王)、ジョン・スチュアート・ミル、マシュー・アーノルド、ゲーテ、温家宝などが愛読書としていた[240]。
自省録が後世のローマ帝国にどんな程度の影響を与えたのかは定かではないが、後世の皇帝であるフラウィウス・クラウディウス・ユリアヌスは自省録自体には触れないながらもアウレリウスの哲学者としての影響を論じている[241]。現在見ることができる自省録は10世紀に書かれた原文の写本を1558年に出版形式に直したものである[242]。
子息
アウレリウスと小ファウスティナは30年間の結婚生活で6男7女を儲けた。女児はドミティアを除いて成人したが、男児は長男ゲメルスから四男ハドリアヌスまでの四人に早世される不幸があった。
- 長男ゲメルス・ルキラエ：ルキッラとは双子。幼児にて病没。
- 次男ティトゥス・アエリウス・アントニヌス：161年死没。
- 三男ティトゥス・アエリウス・アウレリウス：161年死没。
- 四男ハドリアヌス：157年死没。
- 五男ティトゥス・アウレリウス・フラヴィウス・アントニヌス：コンモドゥスとは双子。幼児にて病没。
- 六男ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス・アントニヌス：第17代ローマ皇帝
- 七男マルクス・アンニウス・ヴェルス：副帝叙任後に病没。
- 長女アンニア・アウレリア・ガレリア・ファウスティナ：執政官グナエウス・クラウディウス・セウェルスと結婚
- 次女アンニア・アウレリア・ルキッラ：共同皇帝ルキウス・ヴェルスと結婚
- 三女ドミティア・ファウスティナ：161年死没。
- 四女アンニア・アウレリア・ファディラ：執政官マルクス・ペドゥカエウス・プラウティヌス・クィントゥルスと結婚
- 五女アンニア・コルニフィキア・ファウスティナ・ミノル ：執政官マルクス・ペトロニウス・マメルティヌスと結婚
- 六女ヴィビア・アウレリア・サビナ：執政官ルキウス・ブッルスと結婚
家系図
| マルキア | マルクス・トラヤヌス | ネルウァ | ウルピア | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| マルキアナ | トラヤヌス | ポンペイア | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| アエリウス・ハドリアヌス | 大パウリナ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ルボ・ルピリウス・フルギ | マティディア | ウィビウス・サビニウス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ルピリア・アンニア | アンニウス・ウェルス | ルピリア・ファウスティナ | ウィビア・サビナ | ハドリアヌス | アンティノウス | 小パウリナ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ドミティア・ルキッラ | マルクス・アンニウス・ウェルス | マルクス・アンニウス・リボ | 大ファウスティナ | アントニヌス・ピウス | ルキウス・アエリウス | ユリア・パウリナ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| コルニフィキア | マルクス・アウレリウス | 小ファウスティナ | アウレリア・ファディラ | サリナトル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ファディラ | 小コルニフィキア | コンモドゥス | ルキッラ | ルキウス・ウェルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| アンニア・ファウスティナ | ユリア・マエサ | ユリア・ドムナ | セプティミウス・セウェルス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| アウレリア・ファウスティナ | ソエミアス・バッシアナ | カラカラ | ゲタ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヘリオガバルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
創作作品
文学
- 1885年の小説『享楽主義者マリウス』（ウォルター・ペイター作）で度々言及されている。
- 1978年の小説『ガープの世界』（ジョン・アーヴィング作）にアウレリウスをモチーフにした章が登場する。
映画
- 1964年の映画『ローマ帝国の滅亡』（The Fall of the Roman Empire）では、アレック・ギネスが演じた。
- 2000年のアカデミー賞を受賞した『グラディエーター』（The Gladiator）では、リチャード・ハリスが演じた。
- 理想的な共和主義者として描写されている。世襲による帝政を嫌い、共和制へローマを戻すそうとするが皇子コモドゥスにより暗殺される。
ノート
- ^ 即位前の本名はマルクス・アンニウス・カッティリウス・セウェルス（Marcus Annius Catilius Severus）で[1]、先帝アントニヌスの后妃の兄である父マルクス・アンニウス・ウェルスによって名付けられた[2]。その後、叔父にあたるアントニヌス帝の娘（従兄弟となる）小ファウスティナと結婚して帝位を継ぐ際、入り婿としてマルクス・アウレリウス・アントニヌス（Marcus Aurelius Antoninus）に改名した。
- ^ Cassius Dio asserts that the Annii were near-kin of Hadrian, and that it was to these familial ties that they owed their rise to power.[12] The precise nature of these kinship ties is nowhere stated. One conjectural bond runs through Annius Verus (II). Verus' wife Rupilia Faustina was the daughter of the consular senator Libo Rupilius Frugi and an unnamed mother. It has been hypothesized Rupilia Faustina's mother was Matidia, who was also the mother (presumably through another marriage) of Vibia Sabina, Hadrian's wife.[13]
- ^ Farquharson dates his death to 130, when Marcus was nine.[19]
- ^ Birley amends the text of the HA Marcus from "Eutychius" to "Tuticius".[34]
- ^ Others put a harsher light on Hadrian's nickname. McLynn calls it an example of Hadrian's waspish (McLynn says "vespine") wit and adduces it in support of his contention that Marcus was a "prig".[42]
- ^ Birley, following the textual and epigraphic citations, concludes that he might only have seen Rome in 127, briefly in 128, and in 131.[44]
- ^ Commodus was a known consumptive at the time of his adoption, so Hadrian may have intended Marcus' eventual succession anyways.[51]
- ^ The manuscript is corrupt here.[71]
- ^ Moderns have not offered as positive an assessment. His second modern editor, Niebhur, thought him stupid and frivolous; his third editor, Naber, found him contemptible.[87] Historians have seen him as a "pedant and a bore", his letters offering neither the running political analysis of a Cicero or the conscientious reportage of a Pliny.[88] Recent prosopographic research has rehabilitated his reputation, though not by much.[89]
- ^ Champlin notes that Marcus' praise of him in the Meditations is out of order (he is praised immediately after Diognetus, who had introduced Marcus to philosophy), giving him special emphasis.[109]
- ^ Although part of the biographer's account of Lucius is fictionalized (probably to mimic Nero, whose birthday Lucius shared[119]), and another part poorly compiled from a better biographical source,[120]。scholars have accepted these biographical details as accurate.[121]
- ^ These name-swaps have proven so confusing that even the Historia Augusta, our main source for the period, cannot keep them straight.[134] The fourth-century ecclesiastical historian Eusebius of Caesarea shows even more confusion.[135] The mistaken belief that Lucius had the name "Verus" before becoming emperor has proven especially popular.[136]
- ^ There was, however, much precedent. The consulate was a twin magistracy, and earlier emperors had often had a subordinate lieutenant with many imperial offices (under Pius, the lieutenant had been Marcus). Many emperors had planned a joint succession in the past?Augustus planned to leave Gaius Caesar and Lucius Caesar as joint emperors on his death; Tiberius wished to have Gaius Caligula and Tiberius Gemellus do so as well; Claudius left the empire to Nero and Britannicus, imagining that they would accept equal rank?but all of these arrangements had ended in failure, either through premature death (Gaius and Lucius Caesar) or judicial murder (Gemellus by Caligula and Britannicus by Nero).[136]
- ^ The biographer relates the scurrilous (and, in the judgment of Anthony Birley, untrue) rumor that Commodus was an illegitimate child born of a union between Faustina and a gladiator.[147]
- ^ Because both Verus and Marcus are said to have taken active part in the recovery (HA Marcus 8.4?5), the flood must have happened before Verus' departure for the east in 162; because it appears in the biographer's narrative after Pius' funeral has finished and the emperors have settled into their offices, it must not have occurred in the spring of 161. A date in autumn 161 or spring 162 is probable, and, given the normal seasonal distribution of Tiber flooding, the most probable date is in spring 162.[163] (Birley dates the flood to autumn 161.[158])
- ^ Since 15 CE, the river had been administered by a Tiber Conservancy Board, with a consular senator at its head and a permanent staff. In 161, the curator alevi Tiberis et riparum et cloacarum urbis ("Curator of the Tiber Bed and Banks and the City Sewers") was A. Platorius Nepos, son or grandson of the builder of Hadrian's Wall, whose name he shares. He probably had not been particularly incompetent. A more likely candidate for that incompetence is Nepos' likely predecessor, M. Statius Priscus. A military man and consul for 159, Priscus probably looked on the office as little more than "paid leave".[165]
- ^ Alan Cameron adduces the fifth-century writer Sidonius Apollinaris's comment that Marcus commanded "countless legions" vivente Pio (while Pius was alive) while contesting Birley's contention that Marcus had no military experience. (Neither Apollinaris nor the Historia Augusta (Birley's source) are particularly reliable on second-century history.[179])
- ^ Birley believes there is some truth in these considerations.[200]
- ^ The whole section of the vita dealing with Lucius' debaucheries (HA Verus 4.4?6.6), however, is an insertion into a narrative otherwise entirely cribbed from an earlier source. Most of the details are fabricated by the biographer himself, relying on nothing better than his own imagination.[206]
引用
All citations to the Historia Augusta are to individual biographies, and are marked with a "HA". Citations to the works of Fronto are cross-referenced to C.R. Haines' Loeb edition.
- ^ Dio 69.21.1; HA Marcus 1.9; McLynn, 24.
- ^ Dio 69.21.1; HA Marcus 1.10; McLynn, 24.
- ^ Western Civilization: Sources, Images and Interpretations, Dennis Sherman, Vol. 1, 5th Ed., p. 104.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 229 30. The thesis of single authorship was first proposed in H. Dessau's "Uber Zeit und Personlichkeit der Scriptoes Historiae Augustae" (in German), Hermes 24 (1889), 337ff.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 230. On the HA Verus, see Barnes, 65?74.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 227.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 228?29, 253.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 227?28.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 228.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 49.
- ^ HA Marcus 1.2, 1.4; Birley, Marcus Aurelius, 28; McLynn, 14.
- ^ Dio 69.21.2, 71.35.2?3; Birley, Marcus Aurelius, 31.
- ^ Codex Inscriptionum Latinarum 14.3579; Birley, Marcus Aurelius, 29; McLynn, 14, 575 n. 53, citing Ronald Syme, Roman Papers 1.244.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 29; McLynn, 14.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 31, 44.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 29, citing Pliny, Epistulae 8.18.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 30.
- ^ a b Birley, Marcus Aurelius, 31.
- ^ Farquharson, 1.95?96.
- ^ Meditations 1.1, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 31.
- ^ HA Marcus 2.1 and Meditations 5.4, qtd. in Birley, Marcus Aurelius, 32.
- ^ Meditations 1.3, qtd. in Birley, Marcus Aurelius, 35.
- ^ Meditations 1.17.7, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 35.
- ^ a b Birley, Marcus Aurelius, 33.
- ^ Ad Marcum Caesarem 2.8.2 (= Haines 1.142), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 31.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 31?32.
- ^ Meditations 1.1, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 35.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 35.
- ^ Meditations 1.17.2; Farquharson, 1.102; McLynn, 23; cf. Meditations 1.17.11; Farquharson, 1.103.
- ^ McLynn, 20?21.
- ^ Meditations 1.4; McLynn, 20.
- ^ HA Marcus 2.2, 4.9; Meditations 1.3; Birley, Marcus Aurelius, 37; McLynn, 21?22.
- ^ HA Marcus 2.6; Birley, Marcus Aurelius, 38; McLynn, 21.
- ^ Birley, Later Caesars, 109, 109 n.8; Marcus Aurelius, 40, 270 n.27, citing Bonner Historia-Augusta Colloquia 1966/7, 39ff.
- ^ HA Marcus 2.3; Birley, Marcus Aurelius, 40, 270 n.27.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 40, citing Aelius Aristides, Oratio 32 K; McLynn, 21.
- ^ Meditations 1.10; Birley, Marcus Aurelius, 40; McLynn, 22.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 40, 270 n.28, citing A.S.L. Farquharson, The Meditations of Marcus Antoninus (Oxford, 1944) 2.453.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 42.
- ^ HA Marcus 4.1, 4.2; Birley, Marcus Aurelius, 36.
- ^ HA Marcus 1.10, 2.1; Birley, Marcus Aurelius, 38; "Hadrian to the Antonines", 147. The appellation also survives on inscriptions: Birley cites (at Marcus Aurelius, p. 270 n.24) Prosopographia Imperii Romani2 A 697, and L'Annee epigraphique 1940.62. On the Salii, see: Birley, Marcus Aurelius, 36?37; McLynn, 18?19.
- ^ McLynn, 18, citing Michael Grant, The Antonines (1994), 26 for the characterization of verissimus as an example of Hadrian's waspish wit.
- ^ HA Marcus 4.4; Birley, Marcus Aurelius, 37; McLynn, 19.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 38, 270 n.24.
- ^ HA Marcus 4.5; Birley, Marcus Aurelius, 39?40; McLynn, 24?25; R. Syme, "The Ummidii", Historia 17:1 (1968): 93?94.
- ^ HA Marcus 4.6; Birley, Marcus Aurelius, 41.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 41.
- ^ HA Marcus 4.7; Birley, Marcus Aurelius, 41.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 41?42.
- ^ HA Hadrian 23.15?16; Birley, Marcus Aurelius, 45; "Hadrian to the Antonines", 148.
- ^ Dio 69.17.1; HA Aelius 3.7, 4.6, 6.1?7; Birley, "Hadrian to the Antonines", 147.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 46. Date: Birley, "Hadrian to the Antonines", 148.
- ^ Dio 69.21.1; HA Hadrian 24.1; HA Aelius 6.9; HA Pius 4.6?7; Birley, Marcus Aurelius, 48?49.
- ^ HA Marcus 5.3; Birley, Marcus Aurelius, 49.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 49?50.
- ^ HA Marcus 5.6?8, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 50.
- ^ Dio 69.22.4; HA Hadrian 25.5?6; Birley, Marcus Aurelius, 50?51. Hadrian's suicide attempts: Dio 69.22.1?4; HA Hadrian 24.8?13.
- ^ HA Hadrian 25.7; Birley, Marcus Aurelius, 53.
- ^ HA Pius 5.3, 6.3; Birley, Marcus Aurelius, 55?56; "Hadrian to the Antonines", 151.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 55; "Hadrian to the Antonines", 151.
- ^ HA Marcus 6.2; Verus 2.3?4; Birley, Marcus Aurelius, 53?54.
- ^ Dio 71.35.5; HA Marcus 6.3; Birley, Marcus Aurelius, 56.
- ^ Meditations 6.30, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 57; cf. Marcus Aurelius, 270 n.9, with notes on the translation.
- ^ a b HA Marcus 6.3; Birley, Marcus Aurelius, 57.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 57, 272 n.10, citing Codex Inscriptionum Latinarum 6.32, 6.379, cf. Inscriptiones Latinae Selectae 360.
- ^ Meditations 5.16, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 57.
- ^ Meditations 8.9, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 57.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 57?58.
- ^ Ad Marcum Caesarem 4.7, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 90.
- ^ HA Marcus 6.5; Birley, Marcus Aurelius, 58.
- ^ a b Birley, Marcus Aurelius, 89.
- ^ Ad Marcum Caesarem 5.1, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 89.
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- ^ Dio 71.36.3; Birley, Marcus Aurelius, 89.
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- ^ HA Pius 10.2, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 91.
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- ^ Cf., eg.: Ronald Mellor, review of Edward Champlin's Fronto and Antonine Rome, The American Journal of Philology 103:4 (1982): 461 and passim.
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- ^ Ad Marcum Caesarem 4.6 (= Haines 1.80ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 76.
- ^ Ad Marcum Caesarem 4.6 (= Haines 1.80ff); Birley, Marcus Aurelius, 76?77.
- ^ Ad Marcum Caesarem 3.10?11 (= Haines 1.50ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 73.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 73.
- ^ Champlin, "Chronology of Fronto", 138.
- ^ Ad Marcum Caesarem 5.74 ( =Haines 2.52ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 73.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 77. On the date, see Champlin, "Chronology of Fronto", 142, who (with Bowersock, Greek Sophists in the Roman Empire (1964), 93ff) argues for a date in the 150s; Birley, Marcus Aurelius, 78?79, 273 n.17 (with Ameling, Herodes Atticus (1983), 1.61ff, 2.30ff) argues for 140.
- ^ Ad Marcum Caesarem 3.2 (= Haines 1.58ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 77?78.
- ^ Ad Marcum Caesarem 3.3 (= Haines 1.62ff); Birley, Marcus Aurelius, 78.
- ^ Ad Marcum Caesarem 3.3 (= Haines 1.62ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 79.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 80.
- ^ Ad Marcum Caesarem 4.13 (= Haines 1.214ff), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 93.
- ^ Ad Marcum Caesarem 4.3.1 (= Haines 1.2ff); Birley, Marcus Aurelius, 94.
- ^ Ad Marcum Caesarem 4.3, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 69.
- ^ De Eloquentia 4.5 (= Haines 2.74), qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 95. Alan Cameron, in his review of Birley's biography (The Classical Review 17:3 (1967): 347), suggests a reference to chapter 11 of Arthur Darby Nock's Conversion (Oxford: Oxford University Press, 1933, rept. 1961): "Conversion to Philosophy".
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 94, 105.
- ^ HA Marcus 3.5?8, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 94.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 95; Champlin, Fronto, 120.
- ^ Champlin, Fronto, 174 n. 12.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 94?95, 101.
- ^ Champlin, Fronto, 120.
- ^ Meditations 1.7, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 94?95.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 103.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 206?7.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 206?7.
- ^ Meditations 9.40, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 207.
- ^ Meditations 10.34, tr. Farquharson, 78, 224.
- ^ HA Verus 2.9?11; 3.4?7; Birley, Marcus Aurelius, 108.
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- ^ Barnes, 66. Poorly compiled: eg. Barnes, 68.
- ^ Barnes, 68?69.
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- ^ Birley, Marcus Aurelius, 112.
- ^ 引用エラー: 無効な
<ref>タグです。「Birley, Marcus Aurelius, 114」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ^ HA Pius 12.4?8; Birley, Marcus Aurelius, 114.
- ^ Dio 71.33.4?5; Birley, Marcus Aurelius, 114.
- ^ HA Marcus 7.5, qtd. and tr. Birley, Marcus Aurelius, 116.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 116. Birley takes the phrase horror imperii from HA Pert. 13.1 and 15.8.
- ^ Birley, "Hadrian to the Antonines", 156.
- ^ HA Verus 3.8; Birley, Marcus Aurelius, 116; "Hadrian to the Antonines", 156.
- ^ HA Verus 4.1; Marcus 7.5; Birley, Marcus Aurelius, 116.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 116?17.
- ^ Birley, Marcus Aurelius, 117; "Hadrian to the Antonines", 157 n.53.
- ^ Birley, "Hadrian to the Antonines", 157 n.53.
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- ^ HA Comm. 1.3; Birley, Marcus Aurelius, 119.
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- ^ Birley, Marcus Aurelius, 122?23, citing H.G. Pfalum, Les carrieres procuratoriennes equestres sous le Haut-Empire romain I?III (Paris, 1960?61); Supplement (Paris, 1982), nos. 142; 156; Eric Birley, Roman Britain and the Roman Army (1953), 142ff., 151ff.
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関連項目
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マルクス・アウレリウス・アントニヌス
アントニヌス朝
ネルウァ＝アントニヌス朝家分家
| ||
| 爵位・家督 | ||
|---|---|---|
| 先代 アントニヌス・ピウス |
ローマ皇帝 161年-180年 (共同皇帝ルキウス・ウェルス 161年-169年) |
次代 コンモドゥス |
| 公職 | ||
| 先代 アントニヌス・ピウス、ガイウス・ブルッティウス・プラエセヌス、ルキウス・フルウィウス・ルスティクス |
執政官（同僚執政官アントニヌス・ピウス） 140年 |
次代 ティトゥス・ホエニウス・セウェルス、マルクス・ペドゥカエウス・ストロガ・プリスキヌス |
| 先代 ロルリアヌス・アウィトゥス、ティトゥス・スタティリウス・マキシムス |
執政官（同僚執政官アントニヌス・ピウス） 145年 |
次代 セクストゥス・エルキウス・クラルス、ガエヌス・クラウディウス・セウェルス・アラビヌス |
| 先代 アッピウス・アンニウス・アティリウス・ブラドゥア、ティトゥス・クロディウス・ウィビウス・ウァルス |
執政官（同僚執政官ルキウス・ウェルス） 161年 |
次代 ユニウス・ルスティクス、ルキウス・ティトゥス・プラウティヌス・アクアリヌス |
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