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'''ルビジウム''' ({{lang-en-short|rubidium}}) |
'''ルビジウム''' ({{lang-en-short|rubidium}})は[[原子番号]] 37 の[[元素記号]]'''Rb'''で表される[[元素]]である。[[アルカリ金属]]元素の一つで、柔らかい銀白色の[[典型元素]]であり、[[原子量]]は85.4678。ルビジウム元素は、例えば空気中で急速に酸化されるなど非常に反応性が高く、他の1属元素に似た特性を有している。ルビジウムの安定[[同位体]]は<sup>85</sup>Rbただ一つのみである。自然界に存在するルビジウムのおよそ28%を占める同位体の<sup>87</sup>Rbは[[放射能]]を有しており、[[半減期]]はおよそ490億年である。この半減期の長さは、推定された[[宇宙の年齢]]の3倍以上の長さである。 |
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又、ルビジウムの単体金属。 |
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1861年、[[ドイツ]]の化学者[[ローベルト・ブンゼン]]と[[グスターブ・キルヒホッフ]]、新しく開発されたフレーム分光法によってルビジウムを発見した。ルビジウムの[[化合物]]は化学よび電子の分野で利用されている。金属ルビジウムは容易に気化し、利用しやすいスペクトルの吸収域を有しているため、原子のレーザ操作のための標的としてしばし用いられる。ルビジウムの生体に対する必要性は知られていない。しかし、ルビジウムイオンは[[セシウム]]のように、カリウムイオンと類似した方法で植物や生きた動物の細胞によって活発に取り込まれる。 |
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==単体の性質== |
==単体の性質== |
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銀白色の極めて軟らかい[[金属]]で、比重は、1.53、[[融点]]は |
銀白色の極めて軟らかい[[金属]]で<ref name="Ohly">{{citation | chapter = Rubidium | title = Analysis, detection and commercial value of the rare metals | last = Ohly | first = Julius | publisher = Mining Science Pub. Co. | year = 1910 | url = http://books.google.com/?id=dGUuAQAAIAAJ}}</ref>、非放射性アルカリ金属元素の中で2番目に[[電気陰性度]]が高い。比重は、1.53、[[融点]]は39.3℃。常温、常圧で安定な結晶構造は、[[体心立方構造]] (BCC)。化合物中の原子価は、+1で、ルビジウムの[[気体]](沸点は、700℃)は、青色である。 |
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[[ナトリウム]]、[[カリウム]]より反応性は強く、空気中で酸化され過酸化物 Rb<sub>2</sub>O<sub>2</sub> および超酸化物 RbO<sub>2</sub> を生成する。[[ハロゲン元素]]と激しく反応し、[[水]]とは爆発的に反応するため、[[消防法]]により[[危険物]]指定されている物質である。 |
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他のアルカリ金属類と類似した性質を有し、[[ナトリウム]]、[[カリウム]]より反応性は強く、空気中で酸化され[[過酸化物]] Rb<sub>2</sub>O<sub>2</sub> および[[超酸化物]] RbO<sub>2</sub> を生成する。[[ハロゲン元素]]と激しく反応し、[[水]]とは反応によって水素が発生し、さらに発生した水素を点火するのに十分な量の反応熱が生じるため爆発的に反応する<ref name="HollemanAF"/>。<!--同様に、ルビジウムよりもわずかに反応性の弱いカリウムや、わずかに反応性の強いセシウムの反応も、通常それが放出する水素ガスに点火するのに十分な量の反応熱が生じる。-->ルビジウムは他のアルカリ金属類と同様に、空気中に発火する<ref name="Ohly"/>。そのため、[[消防法]]により[[自然発火性物質]]として[[危険物]]指定されている物質である。 |
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{{Indent|2 Rb + 2 H<sub>2</sub>O → 2 RbOH + H<sub>2</sub>}} |
{{Indent|2 Rb + 2 H<sub>2</sub>O → 2 RbOH + H<sub>2</sub>}} |
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[[水銀]]には発熱的に溶解して[[アマルガム]]を形成し、[[金]]、[[カルシウム]]、ナトリウム、カリウムとは合金を作る<ref name="HollemanAF">{{citation|publisher = Walter de Gruyter|year = 1985|edition = 91–100|pages = 953–955|isbn = 3-11-007511-3|title = Lehrbuch der Anorganischen Chemie|first1 = Arnold F.|last1 = Holleman|last2 = Wiberg|first2 = Egon |last3 =Wiberg|first3 = Nils|chapter = Vergleichende Übersicht über die Gruppe der Alkalimetalle| language = German}}</ref>。ルビジウムの[[イオン化エネルギー]]は非常に低く、わずか406 kJ/molである<ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=ZOm8L9oCwLMC&pg=PA259 | page =259 | title = Principles of Chemistry: The Molecular Science | isbn = 9780495390794 | author1 = Moore, John W | author2 = Stanitski, Conrad L | author3 = Jurs, Peter C | date = 2009-01-21}}</ref>。2つの元素を識別するために欠くことのできない分光学的方法において、ルビジウムとカリウムは非常に似たすみれ色の[[炎色反応]]を示す。 |
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[[水銀]]には発熱的に溶解して[[アマルガム]]を形成する。 |
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==存在== |
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[[File:Lepidolite-76774.jpg|thumb|left|150px|alt=リシア雲母のサンプル|ルビジウム源である[[リチア雲母]]]] |
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ルビジウムは[[地殻]]中に23番目に多く存在する元素である([[地殻中の元素の存在度]]も参照)。おおよそ[[亜鉛]]と同程度に豊富であり、いくぶんか[[銅]]よりも普遍的である<ref name=USGS>{{cite web|url = http://pubs.usgs.gov/of/2003/of03-045/of03-045.pdf |format = PDF|publisher = United States Geological Survey|accessdate = 2010-12-04|title = Mineral Commodity Profile: Rubidium|first1 = William C.|last1 = Butterman|first2 = William E.|last2 = Brooks|first3 = Robert G.|last3 = Reese, Jr.|year=2003}}</ref>。自然での産出は、白榴石 ([[:en:Leucite|en]])、ポルサイト ([[:en:Pollucite|en]])、カーナライト ([[:en:Carnallite|en]])、[[チンワルド雲母]]などの鉱石に、酸化物として最大で1%ほど含有されている。リチア雲母は0.3%から3.5%のルビジウムを含み、商用ベースのルビジウム源として利用されている<ref>{{citation|title =Trace element chemistry of lithium-rich micas from rare-element granitic pegmatites|volume = 55 |
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| issue = 13|year = 1995|doi = 10.1007/BF01162588|pages = 203–215|journal = Mineralogy and Petrology|first = M. A.|last = Wise}}</ref>。いくつかのカリウム鉱石や塩化カリウムも、商業的に重要な量のルビジウムを含んでいる。 |
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[[海水]]中には、平均して1リットル当たり125マイクログラムのルビジウムが含まれている。同族の他の元素と比較すると、1リットル当たり408ミリグラム含まれるカリウムより大幅に少なく、1リットル当たり0.3マイクログラム含まれるセシウムよりは大幅に多い量である<ref>{{citation|last1 = Bolter|first1 = E|last2 = Turekian|first2 = K|last3 = Schutz|first3 = D|title = The distribution of rubidium, cesium and barium in the oceans|journal = Geochimica et Cosmochimica Acta|volume = 28|issue = 9|pages = 1459|year = 1964|doi = 10.1016/0016-7037(64)90161-9}}</ref>。 |
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ルビジウムはそれなりに大きな[[イオン半径]]を有しているため、「不適合元素 ([[:en:Incompatible element|en]])」の一つである<ref>{{citation|url = http://books.google.com/books?id=385nPZOXmYAC&pg=PA224 |page = 224|title = Cosmochemistry|isbn = 9780521878623|author1 = McSween, Harry Y|author2 = Jr,|author3 = Huss, Gary R|year = 2010}}</ref>。[[マグマ]]の結晶分化の間、ルビジウムはルビジウムより重く類似した性質を持つセシウムとともに液相に濃縮され、最後に結晶化する。したがってルビジウムおよびセシウムは、これらの濃縮過程によって形成される[[ペグマタイト]]鉱物に堆積する。ルビジウムはマグマの結晶化においてカリウムと置換するため、セシウムの場合ほど効果的には濃縮されない。ポルサイトのようにセシウム鉱床とするに十分な量のセシウムを含むペグマタイト鉱石や、[[リチウム]]鉱石であるリチア雲母は、副生物としてのルビジウム源でもある<ref name=USGS/>。 |
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2つのルビジウムの重要な産出源は、[[カナダ]]の[[マニトバ州]]にあるBernic Lakeの豊富なポルサイト鉱床および、[[イタリア]]の[[エルバ島]]で産出されるルビジウムを17.5%含んだルビジウム微斜長石([[:en:Rubicline]]、(Rb, K)AlSi<sub>3</sub>O<sub>8</sub>)<ref>{{citation|url = http://ammin.geoscienceworld.org/cgi/content/abstract/83/11-12_Part_1/1335| title = Rubicline, a new feldspar from San Piero in Campo, Elba, Italy|journal = American Mineralogist|volume = 83|issue = 11–12 Part 1|pages = 1335–1339|last1 = Teertstra|first1 = David K.|first2 = Petr |last2 = Cerny|first3 = Frank C. |last3 = Hawthorne|first4 = Julie |last4 = Pier|first5 = Lu-Min |last5 = Wang |first6 = Rodney C.|last6 =Ewing|year = 1998}}</ref>である。これらはセシウムの産出源でもある。 |
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==生産== |
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ルビジウムは地殻中においてセシウムより豊富に存在するが、用途が限られていることやルビジウムを豊富に含む鉱石の不足から、ルビジウム化合物の年間生産量は2から4トン程度である<ref name=USGS/>。カリウムからルビジウムおよびセシウムを分離するにはいくつかの方法がある。ルビジウム・セシウム[[ミョウバン]](Cs, Rb)Al(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・12H<sub>2</sub>からの分別晶出によって純粋なルビジウム・ミョウバンが得られる。2つの他の方法の報告では、[[塩化スズ]]法およびフェロシアン酸塩法の文献がある<ref name=USGS/><ref>{{citation|url = http://books.google.com/?id=1ikjAQAAIAAJ&q=ferrocyanide+rubidium&dq=ferrocyanide+rubidium|publisher = United States. Bureau of Mines|title = bulletin 585|year = 1995}}</ref>。1950年代および60年代の数年間は、Alkarbと呼ばれるカリウム製品の副産物がルビジウムの主要な産出源であった。Alkarbには21%のルビジウムとごくわずかなセシウムが含まれ、残りはカリウムである<ref>{{citation|title = Cesium and Rubidium Hit Market|journal = Chemical & Engineering News |volume = 37|issue = 22|pages = 50|year = 1959|doi = 10.1021/cen-v037n022.p050}}</ref>。現在では、例えばカナダのマニコバ州にあるTanco Mineのようなセシウムの大きな生産者によって、ポルサイトからの副産物としてルビジウムは生産されている<ref name=USGS/>。 |
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== 用途 == |
== 用途 == |
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[[File:USNO rubidium fountain.jpg|thumb|left|ルビジウムを用いた[[原子時計]]([[アメリカ海軍天文台]])]] |
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ルビジウム87([[同位体]])は、[[半減期]]488億年<ref>杉村新、中村保夫、井田喜明 『図説地球科学』 岩波書店、1988年、Rb−Sr法による放射年代測定法</ref>の[[放射性同位体]]であり、[[ベータ崩壊]]して[[ストロンチウム|ストロンチウム87]]となる。これを使って、年代測定が可能である(ルビジウム-ストロンチウム法)。炭酸ルビジウム (Rb<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>) を原料に混ぜた[[ガラス]]は丈夫で電気絶縁性に優れているため、[[ブラウン管]]用ガラスとして用いられる。 |
ルビジウム87([[同位体]])は、[[半減期]]488億年<ref>杉村新、中村保夫、井田喜明 『図説地球科学』 岩波書店、1988年、Rb−Sr法による放射年代測定法</ref>の[[放射性同位体]]であり、[[ベータ崩壊]]して[[ストロンチウム|ストロンチウム87]]となる。これを使って、年代測定が可能である(ルビジウム-ストロンチウム法)。炭酸ルビジウム (Rb<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>) を原料に混ぜた[[ガラス]]は丈夫で電気絶縁性に優れているため、[[ブラウン管]]用ガラスとして用いられる。 |
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通常、ルビジウムは[[土壌]]中において非常に低[[濃度]]である反面、[[植物]]によって[[吸収]]されやすく、[[カリウム]]に似た挙動を示す。このため、[[トレーサ]]として既知[[濃度]]のルビジウム[[水溶液]]を土壌に注入、一定期間後に植物体を収獲しルビジウム濃度を[[測定]]することで、その時点における[[根]]の活性を推定できる(ルビジウムトレーサ法)。また、[[農作物]][[害虫]]の[[生態]]調査における[[標識]]として用いられた事例もある。 |
通常、ルビジウムは[[土壌]]中において非常に低[[濃度]]である反面、[[植物]]によって[[吸収]]されやすく、[[カリウム]]に似た挙動を示す。このため、[[トレーサ]]として既知[[濃度]]のルビジウム[[水溶液]]を土壌に注入、一定期間後に植物体を収獲しルビジウム濃度を[[測定]]することで、その時点における[[根]]の活性を推定できる(ルビジウムトレーサ法)。また、[[農作物]][[害虫]]の[[生態]]調査における[[標識]]として用いられた事例もある。 |
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ルビジウム化合物は時折、[[花火]]に紫の色を付けるために用いられる<ref>{{citation|first = E.-C.|last = Koch|title = Special Materials in Pyrotechnics, Part II: Application of Caesium and Rubidium Compounds in Pyrotechnics|journal = Journal Pyrotechnics|year = 2002|volume = 15|pages = 9–24|url=http://www.jpyro.com/wp/?p=179}}</ref>。 |
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ルビジウムは[[磁気流体力学]]の原理を応用した熱電変換材料への使用が検討されている<ref>{{citation|url = http://books.google.com/?id=59XvAAAAMAAJ&q=%22rubidium%22+%22magnetohydrodynamic%22&dq=%22rubidium%22+%22magnetohydrodynamic%22|page = 193|title = Chemical principles|isbn = 9780060408084|author1 = Boikess, Robert S|author2 = Edelson, Edward|year = 1981}}</ref>。高温の熱でルビジウムをイオン化し[[磁場]]を通過させることによって、それらは電気を伝導し、発電機の[[電機子]]のように働くことで電流が発生する。 |
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ルビジウム、特に気化された<sup>87</sup>Rbは、[[レーザー冷却]]や[[ボース=アインシュタイン凝縮]]の用途において、最も一般的に使用される原子種の一つである。この用途における望ましい性質は、関連した波長における安価な[[半導体レーザー]]がいつでも利用できる点および、適度な温度で十分な蒸気圧を得ることのできる点である<ref>{{citation|journal = Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology|url =http://nvl.nist.gov/pub/nistpubs/jres/101/4/cnt101-4.htm|year = 1996|volume = 101|issue = 4|pages = 419–618}}</ref>{{要出典|title=この論文の号には20の記事があるが、どれが該当しているのか?|date=2011-3}}。 |
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ルビジウムは、核スピンを一定の方向に整列させた大量の磁化<sup>3</sup>Heガスを生産する際に、<sup>3</sup>[[ヘリウム|He]]に[[スピン偏極]]を与えるために用いられる。ルビジウムの蒸気は、レーザーによる光ポンピング ([[:en:Optical pumping]])によってスピンが偏極し、それが[[超微細構造]]に影響を与えることで<sup>3</sup>Heの核スピンを一定の方向に整列させる<ref>{{citation| url=http://nvl.nist.gov/pub/nistpubs/jres/110/3/j110-3gen.pdf|journal=Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology |title=Polarized <sup>3</sup>He spin filters for slow neutron physics| volume=100 |pages=299–304|first1 = T. R.|last1 = Gentile|first2= W. C.|last2= Chen |first3= G. L. |last3 =Jones |first4= E. |last4= Babcock |first5 = T. G.|last5= Walker}}</ref>。スピンが偏極化した<sup>3</sup>Heは、中性子偏極測定やその他の用途のための偏極中性子ビームを発生させる用途に一般化されてきている<ref>{{Cite web| url=http://www.ncnr.nist.gov/AnnualReport/FY2002_html/pages/neutron_spin.htm |publisher=NIST Center for Neutron Research 2002 Annual Report|title=Neutron spin filters based on polarized helium-3 |accessdate=2008-01-11}}</ref>。 |
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ルビジウムは、セル・サイト送信機や他の電子的な送信機、情報網および試験装置における周波数の精度を保つための二次周波数標準器の主要部品である(ルビジウム発振機)。このルビジウム標準器は[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]において、より正確でセシウム標準器よりも安価な「一次周波数標準器」を製造するためにしばし用いられる<ref>{{citation|url = http://books.google.com/books?id=jmfkJYdEANEC&pg=PA32|page = 32|chapter = GPS|title = Measurement, control, and communication using IEEE 1588|isbn = 9781846282508|author1 = Eidson, John C|date = 2006-04-11}}</ref><ref name="Clock">{{citation|url = http://books.google.com/books?id=ttYt5bZqX0AC&pg=PA300|page = 300|chapter = Rubidium and crystal oscillators|title = Data network engineering|isbn = 9780792385943|author1 = King, Tim|author2 = Newson, Dave|date = 1999-07-31}}</ref>。ルビジウム標準機は、データ通信産業のために大量生産されている<ref>{{citation|url = http://books.google.com/books?id=LesrjSVQMPQC&pg=PA72|chapter = Rubidium Vapor Cell|title = Advances in electronics and electron physics|isbn = 9780120146444|author1 = Marton, L|date = 1977-01-01}}</ref>。 |
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ルビジウムの他の可能性もしくは現在の用途としては、蒸気タービンにおける作動流体や[[真空管]]における残留ガスの吸着剤 ([[:en:Getter]])、[[光検出器]]の部品などがある<ref>{{citation|url = http://books.google.com/books?id=GEVt3kpFw64C&pg=PA274|page = 274|title = Introduction To Nuclear And Particle Physics|isbn = 9788120336100|author1 = Mittal}}</ref>。ルビジウムの[[エネルギー準位]]の超微細構造を利用して原子時計の共鳴元素に用いられる<ref name="Clock"/>。ルビジウムはまた、特殊ガラスの成分や酸素雰囲気下での燃焼によって生じる超過酸化物の生産、生物学におけるカリウム[[イオンチャネル]]の研究、原子磁気センサーの蒸気の発生などに用いられる<ref name="MAG">{{citation|title=Parametric modulation of an atomic magnetometer|journal=Applied Physics Letters| volume=89| year=2006|issue=13 |pages=134105 |doi=10.1063/1.2357553 |last1=Li |first1=Zhimin |last2=Wakai |first2=Ronald T. |last3=Walker |first3=Thad G.}}</ref>。<sup>87</sup>Rbは現在、スピン偏極の緩和レートを小さくした状態を利用した磁気センサー(spin exchange relaxation-free (SERF) magnetometer [[:en:SERF|en]])の開発において、他のアルカリ金属類とともに使用されている<ref name="MAG"/>。 |
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<sup>82</sup>Rbは陽電子放射断層撮影に用いられている。ルビジウムはカリウムと非常に似ているため、カリウムを多く含んだ生体細胞は放射性ルビジウムも蓄積する。主要な用途の一つは心筋血流イメージング ([[:en:Myocardial perfusion imaging|en]])である。76秒という非常に短い半減期であるため、患者の近くで<sup>82</sup>Srの崩壊から<sup>82</sup>Rbを生み出す必要がある<ref>{{citation|url = http://books.google.com/books?id=FhkLE8MC71IC&pg=PA59|page = 59|chapter = Rubidium-82|title = Clinical PET and PET/CT|isbn = 9781852338381|last1= Jadvar|first1= H.|last2 = Anthony Parker | first = J.|year = 2005}}</ref>。[[脳腫瘍]]において、[[血液脳関門]]でのルビジウムとカリウムの置換の結果、ルビジウムは通常の脳組織よりも脳腫瘍の部分に多く集まるため、[[シンチグラフィ]]によって放射性同位元素の<sup>82</sup>Rbを検出することで、脳腫瘍を画像化することができる<ref>{{citation|last1 = Yen|first1 = CK|last2 = Yano|first2 = Y|last3 = Budinger|first3 = TF|last4 = Friedland|first4 = RP|last5 = Derenzo|first5 = SE|last6 = Huesman|first6 = RH|last7 = O'Brien|first7 = HA|title = Brain tumor evaluation using Rb-82 and positron emission tomography.|journal = Journal of nuclear medicine : official publication, Society of Nuclear Medicine|volume = 23|issue = 6|pages = 532–7|year = 1982|pmid = 6281406}}</ref>。 |
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ルビジウムの[[双極性障害]]や[[うつ病]]に対する影響についての試験が行われている<ref name="manic">{{citation|last1 = Paschalis|first1 = C|last2 = Jenner| first2 = F A|last3 = Lee|first3 = C R|title = Effects of rubidium chloride on the course of manic-depressive illness.|journal = J R Soc Med. |volume = 71|issue = 9|pages = 343–352|year = 1978 |pmid = 349155|pmc = 1436619}}</ref><ref>{{citation|last1 = Malekahmadi|first1 = P|title = Rubidium in psychiatry: Research implications|journal = Pharmacology Biochemistry and Behavior|volume = 21|pages = 49|year = 1984|doi = 10.1016/0091-3057(84)90162-X}}</ref>。[[人工透析|透析]]患者にはルビジウムの消耗がみられ、したがってルビジウムのサプリメントは憂うつを助けるかもしれない<ref>{{citation| last1 = Canavese| first1 = Caterina| last2 = Decostanzi| first2 = Ester| last3 = Branciforte| first3 = Lino| last4 = Caropreso| first4 = Antonio| last5 = Nonnato| first5 = Antonello| last6 = Sabbioni| first6 = Enrico| title = Depression in dialysis patients: Rubidium supplementation before other drugs and encouragement?| journal = Kidney International| volume = 60| issue = 3| pages = 1201–1201| year = 2001| doi = 10.1046/j.1523-1755.2001.0600031201.x}}</ref>。いくつかの試験において、ルビジウムは最高720ミリグラムの塩化ルビジウムとして与えられた<ref name="isbn1-58890-299-4">{{citation| last = Lake | first = James A. | title = Textbook of Integrative Mental Health Care | publisher = Thieme Medical Publishers | location = New York | year = 2006 | pages = | isbn = 1-58890-299-4 | oclc = | doi = | url = http://books.google.com/?id=Bt5euqMwbpYC&lpg=PA164&pg=PA165#v=onepage&q=}}</ref>。 |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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1861年に[[ローベルト・ブンゼン]]と[[グスターブ・キルヒホッフ]]によって発見された。 |
1861年に[[ローベルト・ブンゼン]]と[[グスターブ・キルヒホッフ]]によって[[ドイツ]]の[[ハイデルベルグ]]において[[鉱石]]の[[リチア雲母]]から[[分光器]]を用いることでルビジウムは発見された。発光スペクトルで赤色の光線を示すことから、[[ラテン語]]で暗赤色を表わすrubidusよりルビジウムと名付けられた<ref name="BuKi1861">{{citation|title = Chemische Analyse durch Spectralbeobachtungen |pages = 337–381 |first1 = G.|last1 = Kirchhoff, |first2 = R.|last2 = Bunsen|doi = 10.1002/andp.18611890702 |journal = Annalen der Physik|Annalen der Physik und Chemie |volume = 189 |issue = 7|year = 1861}}</ref><ref name="Weeks">{{citation|title = The discovery of the elements. XIII. Some spectroscopic discoveries |pages = 1413–1434|last = Weeks|first = Mary Elvira|doi=10.1021/ed009p1413|journal = Journal of Chemical Education |volume =9 |issue =8 |year = 1932}}</ref>。 |
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[[File:Kirchhoff Bunsen Roscoe.jpg|thumb|left|[[グスターブ・キルヒホッフ]] (左)と[[ローベルト・ブンゼン]] (中央)は分光器によってルビジウムを発見した。右側の人物は[[ヘンリー・エンフィールド・ロスコー]]。| alt= Three middle-aged men, with the one in the middle sitting down. All wear long jackets, and the shorter man on the left has a beard.]] |
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ルビジウムはリチア雲母に少量含まれる物質として存在する。キルヒホッフとブンゼンは、酸化ルビジウム (Rb<sub>2</sub>O)をわずかに0.24%のみ含むリチア雲母を150キログラム処理した。カリウムおよびルビジウムは、[[ヘキサクロロ白金酸]]によって不溶性の塩を与えるが、これらの塩類は温水中で可溶性にわずかな差を示す。その結果、[[ヘキサクロロ白金酸カリウム]]よりも溶解度の低い[[ヘキサクロロ白金酸ルビジウム]]が分別晶出によって得られた。水素によるヘキサクロロ白金酸塩の還元の後、炭酸塩のアルコールに対する溶解度の差によってルビジウムの分離に成功した。このプロセスによって更なる研究に用いるための[[塩化ルビジウム]]が0.51グラム得られた。セシウムとルビジウムの初めての大規模な分離は、キルヒホッフとブンゼンによって44,000リットルのミネラルウォーターから行われ、7.3グラムの[[塩化セシウム]]と9.2グラムの塩化ルビジウムが分離された<ref name="BuKi1861"/><ref name="Weeks"/>。ルビジウムは、キルヒホッフとブンゼンによって分光器が発明されてからわずか1年後、セシウムの直後に発見された第2の元素であった<ref name="autogenerated1">{{cite web|url=http://pubs.acs.org/cen/80th/print/rubidium.html |title=C&EN: It's Elemental: The Periodic Table – Cesium |publisher=American Chemical Society|accessdate=2010-02-25|first=Stephen K.|last = Ritter |year = 2003}}</ref>。 |
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[[1995年]]、E. A. コーネル (Eric A. Cornell) とC. E. ワイマン (Carl E. Wieman) はルビジウム原子の[[ボース=アインシュタイン凝縮]]に成功した。この功績により、彼らは[[2001年]]度の[[ノーベル物理学賞]]を受賞した(W. ケターレ (Wolfgang Ketterle) と共同受賞)。 |
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キルヒホッフとブンゼンは、新しい元素の[[原子量]]を推定するために、このようにして得られた塩化ルビジウムを用い、その結果ルビジウムの原子量は85.47であると見積もられた(現在一般に認められている値は85.47である)<ref name="BuKi1861"/>。彼らは溶融させた塩化ルビジウムの電気分解によってルビジウムの[[単体]]を生成しようとし、肉眼での観察においても顕微鏡での観察においても金属物質であるというわずかな痕跡も示さない、青色の均一な物質を得た。彼らはそれを亜塩化物(Rb<sub>2</sub>Cl)であるとしたが、それは恐らく金属ルビジウムと塩化ルビジウムとの、[[コロイド]]状の混合物である<ref>{{citation|last=Zsigmondy|first=Richard |title=Colloids and the Ultra Microscope|publisher=Read books|year=2007|isbn=978-1-4067-5938-9|page=69|url=http://books.google.com/books?id=Ac2mGhqjgUkC&pg=PAPA69|accessdate=2010-09-26}}</ref>。金属ルビジウムを得るための2回目の実験においてブンゼンは、酒石酸ルビジウムの焼成によってルビジウムを還元することができた。蒸留されたルビジウムは発火性の物質であったが、ルビジウムの密度と融点を明らかにすることができた。1860年代に行われた研究の品質は、現在一般に認められている数値と比較して、密度の違いが0.1 g/cm<sup>3</sup>未満であり<!--1.52-->、融点の違いも1度未満である<!--38.5°C-->ことから、評価されている<ref>{{citation|last1 = Bunsen|first1 = R.|title = Ueber die Darstellung und die Eigenschaften des Rubidiums.|journal = Annalen der Chemie und Pharmacie|volume = 125|issue = 3|pages = 367|year = 1863|doi = 10.1002/jlac.18631250314}}</ref>。 |
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1908年、ルビジウムのわずかな[[放射能]]が発見されたが、1910年代に[[同位体]]元素の理論が確立する前であり、10<sup>10</sup>年を超える長い[[半減期]]のために活性が低いため、その説明は困難であった。現在証明された、[[ベータ崩壊]]によって安定な<sup>87</sup>Srとなる<sup>87</sup>Rbの崩壊は、1940年代後期にはまだ議論中であった<ref>{{citation| doi = 10.1080/14786441008520248}}</ref><ref>{{citation | unused_data= Proceedings of the Cambridge Philosophical Society | last1= Campell| first1 = N. R.| last2= Wood | first2= A. | year = 1908 | volume = 14 | page = 15}}</ref>。 |
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ルビジウムは、1920年代以前にはごくわずかな産業的価値しかなかった<ref>{{cite web|title = Mineral Commodity Profiles Rubidium|first1 = W.C.|last1 = Butterman|first2 = R.G.|last2 = Reese, Jr.|url = http://pubs.usgs.gov/of/2003/of03-045/of03-045.pdf|accessdate = 2010-10-13|publisher =United States Geological Survey}}</ref>。以降のルビジウムのもっとも重要な用途は、主に化学および電子の分野における研究開発用途であった。[[1995年]]、E. A. コーネル (Eric A. Cornell) とC. E. ワイマン (Carl E. Wieman) は<sup>87</sup>Rbを用いてルビジウム原子の[[ボース=アインシュタイン凝縮]]に成功した<ref>{{Cite web|title = Press Release: The 2001 Nobel Prize in Physics|url = http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2001/press.html|accessdate = 2010-02-01}}</ref>。この功績により、彼らは[[2001年]]度の[[ノーベル物理学賞]]を受賞した(W. ケターレ (Wolfgang Ketterle) と共同受賞)<ref>{{Cite web|last = Levi|first = Barbara Goss|title = Cornell, Ketterle, and Wieman Share Nobel Prize for Bose-Einstein Condensates|work = Search & Discovery|publisher = Physics Today online|year = 2001|url = http://www.physicstoday.org/pt/vol-54/iss-12/p14.html|accessdate = 2008-01-26 |archiveurl = http://web.archive.org/web/20071024134547/http://www.physicstoday.org/pt/vol-54/iss-12/p14.html <!-- Bot retrieved archive --> |archivedate = 2007-10-24}}</ref>。 |
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==分析法== |
==分析法== |
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==化合物== |
==化合物== |
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塩化ルビジウムは、恐らく最も使われているルビジウム化合物である。[[生化学]]において、[[細胞]]から[[DNA]]を取り出すのに用いられ、少量で容易に生体に取り込まれてカリウムと置換するため[[生物指標]]としても用いられている。他の通常のルビジウム化合物としては腐食性の[[水酸化ルビジウム]] (RbOH)があり、これは光学ガラスに用いられる[[炭酸ルビジウム]] (RbCO<sub>3</sub>)や[[ルビジウム硫酸銅]] (Rb<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>・CuSO<sub>4</sub>・6H<sub>2</sub>O)など、大部分のルビジウムをベースとした化学反応の出発原料として用いられている。[[ヨウ化銀ルビジウム]] (RbAg<sub>4</sub>I<sub>5</sub>)は、他のどんな既知の[[イオン結晶]]よりも高い室温[[伝導率]]を有し、薄膜バッテリーなどの用途に利用されている<ref>{{citation|url = http://books.google.com/?id=pVw98i6gtwMC&pg=PA176|title = Solid state chemistry: an introduction|chapter = RbAg<sub>4</sub>I<sub>5</sub>|first = Lesley|last = Smart|coauthor =Moore, Elaine|publisher = CRC Press|year = 1995|isbn = 9780748740680|pages = 176–177}}</ref><ref>{{citation|title = Relationship of structure and ionic mobility in solid MAg<sub>4</sub>I<sub>5</sub>|first = J. N.|last = Bradley|coauthor = Greene, P. D.|journal = Trans. Faraday Soc.|year = 1967|volume = 63|pages = 2516|doi = 10.1039/TF9676302516}}</ref>。 |
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* [[塩化ルビジウム]] (RbCl) |
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* [[臭化ルビジウム]] (RbBr) |
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ルビジウムは、金属ルビジウムが空気に曝されることで[[酸化ルビジウム]] (Rb<sub>2</sub>O)、Rb<sub>6</sub>O、Rb<sub>9</sub>O<sub>2</sub>などを含むいくつかの酸化物を生成し、過剰な酸素雰囲気下では[[超酸化物]] RbO<sub>2</sub>を生成する。ルビジウムはハロゲンと反応して[[フッ化ルビジウム]] (RbF)、塩化ルビジウム(RbCl)、[[臭化ルビジウム]] (RbBr)おおび[[ヨウ化ルビジウム]] (RbI)を生成する。 |
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* [[水酸化ルビジウム]] (RbOH) |
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== 同位体 == |
== 同位体 == |
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{{main|ルビジウムの同位体}} |
{{main|ルビジウムの同位体}} |
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自然に存在するルビジウムは、安定同位体である<sup>85</sup>Rb (72.2%)および放射性同位体である<sup>87</sup>Rb (27.8%)の2つの同位体元素から成っている<ref name="Audi">{{citation| last = Audi|first = Georges|title = The NUBASE Evaluation of Nuclear and Decay Properties|journal = Nuclear Physics A|volume = 729| issue = 1|pages = 3–128| publisher = Atomic Mass Data Center|year = 2003| doi=10.1016/j.nuclphysa.2003.11.001}}</ref>。このようなルビジウムは1グラム当たりおよそ670[[ベクレル]]の固有の放射能を有しており、110日で写真フィルムを著しく感光させるのに十分な強さである<!--CRC ruber bibleでは30日から60日とされているが、文献ソースが見つけられない--><ref>{{citation | last1 = Strong | first1 = W. W. | title = On the Possible Radioactivity of Erbium, Potassium and Rubidium | journal = Physical Review (Series I) | volume = 29 | issue = 2 | pages = 170–173 | year = 1909 | doi = 10.1103/PhysRevSeriesI.29.170}}</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=6khCAQAAIAAJ | pages = 4–25 | title = CRC handbook of chemistry and physics: a ready-reference book of chemical and physical data | isbn = 9780849304767 | author1 = Lide, David R | author2 = Frederikse, H. P. R | date = 1995-06}}</ref>。ルビジウムの同位体は24種類あり、<sup>85</sup>Rbと<sup>87</sup>Rb以外のものは半減期が3ヶ月未満である。それらのほとんどは非常に強い放射能があり、用途はほとんどない。 |
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<sup>87</sup>Rbの半減期は4.88 × 10<sup>10</sup>年であり、それは13.75 ± 0.11 ×10<sup>9</sup>年である[[宇宙の年齢]]の3倍以上である<ref name="NASA">{{cite web | title = Seven-Year Wilson Microwave Anisotropy Probe (WMAP) Observations: Sky Maps, Systematic Errors, and Basic Results | url = http://lambda.gsfc.nasa.gov/product/map/dr4/pub_papers/sevenyear/basic_results/wmap_7yr_basic_results.pdf|format=PDF|publisher=nasa.gov|accessdate=2011-02-01}} (see p. 39 for a table of best estimates for various cosmological parameters)</ref>。<sup>87</sup>Rbは原生核種 ([[:en:Primordial nuclide]])の一つである。ルビジウムは[[鉱石]]において容易にカリウムと置換するため、広範囲に広く分布している。そのため、ルビジウムは[[放射年代測定]]に広範囲で用いられている。<sup>87</sup>Rbは[[ベータ粒子]] (β<sup>−</sup>)を放出して安定した<sup>87</sup>[[ストロンチウム|Sr]]に崩壊する。マグマの結晶分化の間、Srは[[斜長石]]に集まる傾向があり、Rbは液相に残る。ゆえに、マグマ残液中のRb / Srの比率は時間とともに増加し、漸進的分化によってRb / Sr比の高い石が形成される。この比率が最も高いものでは、10以上になる[[ペグマタイト]]がある。ストロンチウムの初期量が知られているか、もしくは添加することができれば、ルビジウムとストロンチウムの濃度比および、<sup>87</sup>Srと<sup>86</sup>Srの比をそれぞれ測定することで年代を決定することができる。この方法は、その後石が変化していない場合においてのみ鉱石の正確な年齢を示す([[ルビジウム-ストロンチウム年代測定法]] [[:en:Rubidium-strontium dating]]を参照)<ref>{{citation|url = http://books.google.com/?id=k90iAnFereYC&pg=PA162|chapter = Rubidium-Strontium Dating|title = Isotopes in the Earth Sciences|first1 = H. -G.|last1 = Attendorn|first2 = Robert|last2 = Bowen|publisher = Springer|year = 1988|isbn = 9780412537103| pages = 162–165}}</ref><ref>{{citation|url =http://books.google.com/?id=cYWNAZbPhMYC&pg=PA383|title = Essentials of geochemistry|first1 =John Victor|last1 =Walther|publisher =Jones & Bartlett Learning| year = 1988 2009|isbn =9780763759223| chapter =Rubidium-Strontium Systematics| pages = 383–385}}</ref>。 |
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自然に存在しない同位体の一つである<sup>82</sup>Rbは、半減期が25.36日である<sup>82</sup>Srの[[電子捕獲]](β崩壊の一種)によって生み出される。半減期が76秒である<sup>82</sup>Rbのそれ以降の崩壊は[[陽電子放出]](β崩壊の一種)によって引き起こされ、安定した<sup>82</sup>[[クリプトン|Kr]]を生み出す<ref name="Audi"/>。 |
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==予防措置と生物学的影響== |
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[[File:RbMetal.JPG|thumb|right|アンプルに封入された金属ルビジウム]] |
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ルビジウムは水と激しく反応するため、火災を引き起こす危険がある。安全性と純度を確保するため、この金属は乾いた鉱油中で保存され、通常は不活性雰囲気のガラスアンプル中に封入される。ルビジウムは鉱油中の少量の空気への露出でさえ過酸化物を形成するため、金属カリウムの保管と類似した過酸化物形成の予防措置が取られる<ref>{{cite book|url = http://books.google.com/books?id=vKBqqiCTB7MC&pg=PA215|page = 215|chapter = Rubidium|title = Chemical risk analysis: a practical handbook|isbn = 9781903996652|author1 = Martel, Bernard|author2 = Cassidy, Keith|date = 2004-07-01}}</ref>。 |
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ルビジウムはナトリウムやカリウムのように、水に溶解しているときには+1価の[[酸化]]状態を取り、これは全ての生体中での状態も含む。人体はRb<sup>+</sup>イオンをカリウムイオンとして処理する傾向があるため、ルビジウムは体の[[細胞内液]]、すなわち細胞の内部に蓄積する<ref>{{cite journal|last1 = Relman|first1 = AS|title =The physiological behavior of rubidium and cesium in relation to that of potassium|url = http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/13409924|journal = The Yale journal of biology and medicine|volume = 29|issue = 3|pages = 248–62|year = 1956| pmid = 13409924|pmc = 2603856}}</ref>。ルビジウムイオンは特に有毒ではない。70kgの人間は平均0.36グラムのルビジウムを含んでおり、この量を50から100倍に増加させても被験者に悪影響は見られなかった<ref>{{cite journal|last1 = Fieve|first1 = Ronald R.|last2 = Meltzer|first2 = Herbert L.|last3 = Taylor|first3 = Reginald M.|title = Rubidium chloride ingestion by volunteer subjects: Initial experience|journal = Psychopharmacologia|volume = 20|issue = 4|pages = 307|year = 1971|pmid = 5561654|doi = 10.1007/BF00403562}}</ref>。人体における生物学的半減期は、31から46日である<ref name="manic"/>。しかし、ルビジウムによるカリウムの部分的な置換は起こり得ることであり、筋組織においてカリウムの50%以上がルビジウムに置換されたネズミは死亡した<ref>{{cite journal | last1 = Meltzer | first1 = HL | title = A pharmacokinetic analysis of long-term administration of rubidium chloride. | url = http://jcp.sagepub.com/content/31/2/179 | journal = Journal of clinical pharmacology | volume = 31 | issue = 2 | pages = 179–84 | year = 1991 | pmid = 2010564}}</ref><ref>{{cite journal|author = Follis, Richard H., Jr.|title = Histological Effects in rats resulting from adding Rubidium or Cesium to a diet deficient in potassium |url = http://ajplegacy.physiology.org/cgi/pdf_extract/138/2/246|journal = AJP – Legacy|volume = 138|issue = 2|pages = 246|year = 1943}}</ref>。 |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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[[af:Rubidium]] |
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[[an:Rubidio]] |
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[[ar:روبيديوم]] |
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[[az:Rubidium]] |
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2011年5月17日 (火) 13:06時点における版
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一般特性 | |||||||||||||||||||
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名称, 記号, 番号 | ルビジウム, Rb, 37 | ||||||||||||||||||
分類 | アルカリ金属 | ||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 1(IA), 5 , s | ||||||||||||||||||
密度, 硬度 | 1532 kg/m3, 0.3 | ||||||||||||||||||
色 | 銀白色 | ||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||
原子量 | 85.4678 u | ||||||||||||||||||
原子半径 | 235 (265) pm | ||||||||||||||||||
共有結合半径 | 211 pm | ||||||||||||||||||
VDW半径 | 244 pm | ||||||||||||||||||
電子配置 | [Kr]5s1 | ||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 18, 8, 1 | ||||||||||||||||||
酸化数(酸化物) | 1 (強塩基性) | ||||||||||||||||||
結晶構造 | 面心立方構造 | ||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||
相 | 固体(常磁性) | ||||||||||||||||||
融点 | 312.46 K (39.31 ℃) | ||||||||||||||||||
沸点 | 961 K (688 ℃) | ||||||||||||||||||
モル体積 | 55.76 ×10-6 m3/mol | ||||||||||||||||||
気化熱 | 72.216 kJ/mol | ||||||||||||||||||
融解熱 | 2.192 kJ/mol | ||||||||||||||||||
蒸気圧 (312.6 K) | 1.56 × 10-4 Pa | ||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | 1300 m/s (293.15) K | ||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||
クラーク数 | 0.03 % | ||||||||||||||||||
電気陰性度 | 0.82(ポーリング) | ||||||||||||||||||
比熱容量 | 363 J/(kg·K) | ||||||||||||||||||
導電率 | 7.79 ×106/m·Ω | ||||||||||||||||||
熱伝導率 | 58.2 W/(m·K) | ||||||||||||||||||
第1イオン化エネルギー | 403.0 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第2イオン化エネルギー | 2633 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第3イオン化エネルギー | 3860 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第4イオン化エネルギー | 5080 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第5イオン化エネルギー | 6850 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第6イオン化エネルギー | 8140 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第7イオン化エネルギー | 9570 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第8イオン化エネルギー | 13120 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第9イオン化エネルギー | 14500 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第10イオン化エネルギー | 26740 kJ/mol | ||||||||||||||||||
(比較的)安定同位体 | |||||||||||||||||||
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注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。 |
ルビジウム (英: rubidium)は原子番号 37 の元素記号Rbで表される元素である。アルカリ金属元素の一つで、柔らかい銀白色の典型元素であり、原子量は85.4678。ルビジウム元素は、例えば空気中で急速に酸化されるなど非常に反応性が高く、他の1属元素に似た特性を有している。ルビジウムの安定同位体は85Rbただ一つのみである。自然界に存在するルビジウムのおよそ28%を占める同位体の87Rbは放射能を有しており、半減期はおよそ490億年である。この半減期の長さは、推定された宇宙の年齢の3倍以上の長さである。
1861年、ドイツの化学者ローベルト・ブンゼンとグスターブ・キルヒホッフ、新しく開発されたフレーム分光法によってルビジウムを発見した。ルビジウムの化合物は化学よび電子の分野で利用されている。金属ルビジウムは容易に気化し、利用しやすいスペクトルの吸収域を有しているため、原子のレーザ操作のための標的としてしばし用いられる。ルビジウムの生体に対する必要性は知られていない。しかし、ルビジウムイオンはセシウムのように、カリウムイオンと類似した方法で植物や生きた動物の細胞によって活発に取り込まれる。
単体の性質
銀白色の極めて軟らかい金属で[1]、非放射性アルカリ金属元素の中で2番目に電気陰性度が高い。比重は、1.53、融点は39.3℃。常温、常圧で安定な結晶構造は、体心立方構造 (BCC)。化合物中の原子価は、+1で、ルビジウムの気体(沸点は、700℃)は、青色である。
他のアルカリ金属類と類似した性質を有し、ナトリウム、カリウムより反応性は強く、空気中で酸化され過酸化物 Rb2O2 および超酸化物 RbO2 を生成する。ハロゲン元素と激しく反応し、水とは反応によって水素が発生し、さらに発生した水素を点火するのに十分な量の反応熱が生じるため爆発的に反応する[2]。ルビジウムは他のアルカリ金属類と同様に、空気中に発火する[1]。そのため、消防法により自然発火性物質として危険物指定されている物質である。
2 Rb + 2 H2O → 2 RbOH + H2
水銀には発熱的に溶解してアマルガムを形成し、金、カルシウム、ナトリウム、カリウムとは合金を作る[2]。ルビジウムのイオン化エネルギーは非常に低く、わずか406 kJ/molである[3]。2つの元素を識別するために欠くことのできない分光学的方法において、ルビジウムとカリウムは非常に似たすみれ色の炎色反応を示す。
存在
ルビジウムは地殻中に23番目に多く存在する元素である(地殻中の元素の存在度も参照)。おおよそ亜鉛と同程度に豊富であり、いくぶんか銅よりも普遍的である[4]。自然での産出は、白榴石 (en)、ポルサイト (en)、カーナライト (en)、チンワルド雲母などの鉱石に、酸化物として最大で1%ほど含有されている。リチア雲母は0.3%から3.5%のルビジウムを含み、商用ベースのルビジウム源として利用されている[5]。いくつかのカリウム鉱石や塩化カリウムも、商業的に重要な量のルビジウムを含んでいる。
海水中には、平均して1リットル当たり125マイクログラムのルビジウムが含まれている。同族の他の元素と比較すると、1リットル当たり408ミリグラム含まれるカリウムより大幅に少なく、1リットル当たり0.3マイクログラム含まれるセシウムよりは大幅に多い量である[6]。
ルビジウムはそれなりに大きなイオン半径を有しているため、「不適合元素 (en)」の一つである[7]。マグマの結晶分化の間、ルビジウムはルビジウムより重く類似した性質を持つセシウムとともに液相に濃縮され、最後に結晶化する。したがってルビジウムおよびセシウムは、これらの濃縮過程によって形成されるペグマタイト鉱物に堆積する。ルビジウムはマグマの結晶化においてカリウムと置換するため、セシウムの場合ほど効果的には濃縮されない。ポルサイトのようにセシウム鉱床とするに十分な量のセシウムを含むペグマタイト鉱石や、リチウム鉱石であるリチア雲母は、副生物としてのルビジウム源でもある[4]。
2つのルビジウムの重要な産出源は、カナダのマニトバ州にあるBernic Lakeの豊富なポルサイト鉱床および、イタリアのエルバ島で産出されるルビジウムを17.5%含んだルビジウム微斜長石(en:Rubicline、(Rb, K)AlSi3O8)[8]である。これらはセシウムの産出源でもある。
生産
ルビジウムは地殻中においてセシウムより豊富に存在するが、用途が限られていることやルビジウムを豊富に含む鉱石の不足から、ルビジウム化合物の年間生産量は2から4トン程度である[4]。カリウムからルビジウムおよびセシウムを分離するにはいくつかの方法がある。ルビジウム・セシウムミョウバン(Cs, Rb)Al(SO4)2・12H2からの分別晶出によって純粋なルビジウム・ミョウバンが得られる。2つの他の方法の報告では、塩化スズ法およびフェロシアン酸塩法の文献がある[4][9]。1950年代および60年代の数年間は、Alkarbと呼ばれるカリウム製品の副産物がルビジウムの主要な産出源であった。Alkarbには21%のルビジウムとごくわずかなセシウムが含まれ、残りはカリウムである[10]。現在では、例えばカナダのマニコバ州にあるTanco Mineのようなセシウムの大きな生産者によって、ポルサイトからの副産物としてルビジウムは生産されている[4]。
用途
ルビジウム87(同位体)は、半減期488億年[11]の放射性同位体であり、ベータ崩壊してストロンチウム87となる。これを使って、年代測定が可能である(ルビジウム-ストロンチウム法)。炭酸ルビジウム (Rb2CO3) を原料に混ぜたガラスは丈夫で電気絶縁性に優れているため、ブラウン管用ガラスとして用いられる。
光で励起したルビジウムは原子時計に用いられている。セシウム原子時計に比べ正確さは劣るが、小型で低価格であるため、ルビジウム原子時計は広く利用されている。
通常、ルビジウムは土壌中において非常に低濃度である反面、植物によって吸収されやすく、カリウムに似た挙動を示す。このため、トレーサとして既知濃度のルビジウム水溶液を土壌に注入、一定期間後に植物体を収獲しルビジウム濃度を測定することで、その時点における根の活性を推定できる(ルビジウムトレーサ法)。また、農作物害虫の生態調査における標識として用いられた事例もある。
ルビジウム化合物は時折、花火に紫の色を付けるために用いられる[12]。
ルビジウムは磁気流体力学の原理を応用した熱電変換材料への使用が検討されている[13]。高温の熱でルビジウムをイオン化し磁場を通過させることによって、それらは電気を伝導し、発電機の電機子のように働くことで電流が発生する。
ルビジウム、特に気化された87Rbは、レーザー冷却やボース=アインシュタイン凝縮の用途において、最も一般的に使用される原子種の一つである。この用途における望ましい性質は、関連した波長における安価な半導体レーザーがいつでも利用できる点および、適度な温度で十分な蒸気圧を得ることのできる点である[14][要出典]。
ルビジウムは、核スピンを一定の方向に整列させた大量の磁化3Heガスを生産する際に、3Heにスピン偏極を与えるために用いられる。ルビジウムの蒸気は、レーザーによる光ポンピング (en:Optical pumping)によってスピンが偏極し、それが超微細構造に影響を与えることで3Heの核スピンを一定の方向に整列させる[15]。スピンが偏極化した3Heは、中性子偏極測定やその他の用途のための偏極中性子ビームを発生させる用途に一般化されてきている[16]。
ルビジウムは、セル・サイト送信機や他の電子的な送信機、情報網および試験装置における周波数の精度を保つための二次周波数標準器の主要部品である(ルビジウム発振機)。このルビジウム標準器はGPSにおいて、より正確でセシウム標準器よりも安価な「一次周波数標準器」を製造するためにしばし用いられる[17][18]。ルビジウム標準機は、データ通信産業のために大量生産されている[19]。
ルビジウムの他の可能性もしくは現在の用途としては、蒸気タービンにおける作動流体や真空管における残留ガスの吸着剤 (en:Getter)、光検出器の部品などがある[20]。ルビジウムのエネルギー準位の超微細構造を利用して原子時計の共鳴元素に用いられる[18]。ルビジウムはまた、特殊ガラスの成分や酸素雰囲気下での燃焼によって生じる超過酸化物の生産、生物学におけるカリウムイオンチャネルの研究、原子磁気センサーの蒸気の発生などに用いられる[21]。87Rbは現在、スピン偏極の緩和レートを小さくした状態を利用した磁気センサー(spin exchange relaxation-free (SERF) magnetometer en)の開発において、他のアルカリ金属類とともに使用されている[21]。
82Rbは陽電子放射断層撮影に用いられている。ルビジウムはカリウムと非常に似ているため、カリウムを多く含んだ生体細胞は放射性ルビジウムも蓄積する。主要な用途の一つは心筋血流イメージング (en)である。76秒という非常に短い半減期であるため、患者の近くで82Srの崩壊から82Rbを生み出す必要がある[22]。脳腫瘍において、血液脳関門でのルビジウムとカリウムの置換の結果、ルビジウムは通常の脳組織よりも脳腫瘍の部分に多く集まるため、シンチグラフィによって放射性同位元素の82Rbを検出することで、脳腫瘍を画像化することができる[23]。
ルビジウムの双極性障害やうつ病に対する影響についての試験が行われている[24][25]。透析患者にはルビジウムの消耗がみられ、したがってルビジウムのサプリメントは憂うつを助けるかもしれない[26]。いくつかの試験において、ルビジウムは最高720ミリグラムの塩化ルビジウムとして与えられた[27]。
歴史
1861年にローベルト・ブンゼンとグスターブ・キルヒホッフによってドイツのハイデルベルグにおいて鉱石のリチア雲母から分光器を用いることでルビジウムは発見された。発光スペクトルで赤色の光線を示すことから、ラテン語で暗赤色を表わすrubidusよりルビジウムと名付けられた[28][29]。
ルビジウムはリチア雲母に少量含まれる物質として存在する。キルヒホッフとブンゼンは、酸化ルビジウム (Rb2O)をわずかに0.24%のみ含むリチア雲母を150キログラム処理した。カリウムおよびルビジウムは、ヘキサクロロ白金酸によって不溶性の塩を与えるが、これらの塩類は温水中で可溶性にわずかな差を示す。その結果、ヘキサクロロ白金酸カリウムよりも溶解度の低いヘキサクロロ白金酸ルビジウムが分別晶出によって得られた。水素によるヘキサクロロ白金酸塩の還元の後、炭酸塩のアルコールに対する溶解度の差によってルビジウムの分離に成功した。このプロセスによって更なる研究に用いるための塩化ルビジウムが0.51グラム得られた。セシウムとルビジウムの初めての大規模な分離は、キルヒホッフとブンゼンによって44,000リットルのミネラルウォーターから行われ、7.3グラムの塩化セシウムと9.2グラムの塩化ルビジウムが分離された[28][29]。ルビジウムは、キルヒホッフとブンゼンによって分光器が発明されてからわずか1年後、セシウムの直後に発見された第2の元素であった[30]。
キルヒホッフとブンゼンは、新しい元素の原子量を推定するために、このようにして得られた塩化ルビジウムを用い、その結果ルビジウムの原子量は85.47であると見積もられた(現在一般に認められている値は85.47である)[28]。彼らは溶融させた塩化ルビジウムの電気分解によってルビジウムの単体を生成しようとし、肉眼での観察においても顕微鏡での観察においても金属物質であるというわずかな痕跡も示さない、青色の均一な物質を得た。彼らはそれを亜塩化物(Rb2Cl)であるとしたが、それは恐らく金属ルビジウムと塩化ルビジウムとの、コロイド状の混合物である[31]。金属ルビジウムを得るための2回目の実験においてブンゼンは、酒石酸ルビジウムの焼成によってルビジウムを還元することができた。蒸留されたルビジウムは発火性の物質であったが、ルビジウムの密度と融点を明らかにすることができた。1860年代に行われた研究の品質は、現在一般に認められている数値と比較して、密度の違いが0.1 g/cm3未満であり、融点の違いも1度未満であることから、評価されている[32]。
1908年、ルビジウムのわずかな放射能が発見されたが、1910年代に同位体元素の理論が確立する前であり、1010年を超える長い半減期のために活性が低いため、その説明は困難であった。現在証明された、ベータ崩壊によって安定な87Srとなる87Rbの崩壊は、1940年代後期にはまだ議論中であった[33][34]。
ルビジウムは、1920年代以前にはごくわずかな産業的価値しかなかった[35]。以降のルビジウムのもっとも重要な用途は、主に化学および電子の分野における研究開発用途であった。1995年、E. A. コーネル (Eric A. Cornell) とC. E. ワイマン (Carl E. Wieman) は87Rbを用いてルビジウム原子のボース=アインシュタイン凝縮に成功した[36]。この功績により、彼らは2001年度のノーベル物理学賞を受賞した(W. ケターレ (Wolfgang Ketterle) と共同受賞)[37]。
分析法
ルビジウムの分析はフレーム原子吸光法またはフレーム発光法が最も簡便である。ルビジウムは低いイオン化エネルギーのため、フレーム中でのイオン化が激しく、定量値が低くなる(負の誤差)。このため、試料液にイオン化抑制剤として高濃度のカリウムやセシウム等を加え、比較的低温度の空気-プロパン炎で分析するのが望ましいが、前述のトレーサ法で得られた植物試料など比較的高濃度(最終濃度0.5mg/L以上)のルビジウムを含む試料では、一般的に用いられる空気-アセチレン炎でも十分な精度・感度で分析できる。
植物体中のルビジウム分析法の例を示す。 植物体中のルビジウムは希酸で大部分が抽出されるため、高濃度試料では塩酸抽出でも十分であるが、微量かつ全量分析の場合は強酸分解が望ましい。なお、イオン化抑制剤としてセシウムを用いた場合は、同時にカリウムの分析も可能である。
- 植物体の乾燥粉砕試料を採る。
- 希塩酸を加え 振とう抽出する。
- 乾燥ろ紙でろ過、ろ液を適宜希釈する。
- 希釈液に規定量のセシウムを加える。
- 原子吸光で780nmの吸光度を測定する。または炎光光度計で780nmの発光強度を測定する。
化合物
塩化ルビジウムは、恐らく最も使われているルビジウム化合物である。生化学において、細胞からDNAを取り出すのに用いられ、少量で容易に生体に取り込まれてカリウムと置換するため生物指標としても用いられている。他の通常のルビジウム化合物としては腐食性の水酸化ルビジウム (RbOH)があり、これは光学ガラスに用いられる炭酸ルビジウム (RbCO3)やルビジウム硫酸銅 (Rb2SO4・CuSO4・6H2O)など、大部分のルビジウムをベースとした化学反応の出発原料として用いられている。ヨウ化銀ルビジウム (RbAg4I5)は、他のどんな既知のイオン結晶よりも高い室温伝導率を有し、薄膜バッテリーなどの用途に利用されている[38][39]。
ルビジウムは、金属ルビジウムが空気に曝されることで酸化ルビジウム (Rb2O)、Rb6O、Rb9O2などを含むいくつかの酸化物を生成し、過剰な酸素雰囲気下では超酸化物 RbO2を生成する。ルビジウムはハロゲンと反応してフッ化ルビジウム (RbF)、塩化ルビジウム(RbCl)、臭化ルビジウム (RbBr)おおびヨウ化ルビジウム (RbI)を生成する。
同位体
自然に存在するルビジウムは、安定同位体である85Rb (72.2%)および放射性同位体である87Rb (27.8%)の2つの同位体元素から成っている[40]。このようなルビジウムは1グラム当たりおよそ670ベクレルの固有の放射能を有しており、110日で写真フィルムを著しく感光させるのに十分な強さである[41][42]。ルビジウムの同位体は24種類あり、85Rbと87Rb以外のものは半減期が3ヶ月未満である。それらのほとんどは非常に強い放射能があり、用途はほとんどない。
87Rbの半減期は4.88 × 1010年であり、それは13.75 ± 0.11 ×109年である宇宙の年齢の3倍以上である[43]。87Rbは原生核種 (en:Primordial nuclide)の一つである。ルビジウムは鉱石において容易にカリウムと置換するため、広範囲に広く分布している。そのため、ルビジウムは放射年代測定に広範囲で用いられている。87Rbはベータ粒子 (β−)を放出して安定した87Srに崩壊する。マグマの結晶分化の間、Srは斜長石に集まる傾向があり、Rbは液相に残る。ゆえに、マグマ残液中のRb / Srの比率は時間とともに増加し、漸進的分化によってRb / Sr比の高い石が形成される。この比率が最も高いものでは、10以上になるペグマタイトがある。ストロンチウムの初期量が知られているか、もしくは添加することができれば、ルビジウムとストロンチウムの濃度比および、87Srと86Srの比をそれぞれ測定することで年代を決定することができる。この方法は、その後石が変化していない場合においてのみ鉱石の正確な年齢を示す(ルビジウム-ストロンチウム年代測定法 en:Rubidium-strontium datingを参照)[44][45]。
自然に存在しない同位体の一つである82Rbは、半減期が25.36日である82Srの電子捕獲(β崩壊の一種)によって生み出される。半減期が76秒である82Rbのそれ以降の崩壊は陽電子放出(β崩壊の一種)によって引き起こされ、安定した82Krを生み出す[40]。
予防措置と生物学的影響
ルビジウムは水と激しく反応するため、火災を引き起こす危険がある。安全性と純度を確保するため、この金属は乾いた鉱油中で保存され、通常は不活性雰囲気のガラスアンプル中に封入される。ルビジウムは鉱油中の少量の空気への露出でさえ過酸化物を形成するため、金属カリウムの保管と類似した過酸化物形成の予防措置が取られる[46]。
ルビジウムはナトリウムやカリウムのように、水に溶解しているときには+1価の酸化状態を取り、これは全ての生体中での状態も含む。人体はRb+イオンをカリウムイオンとして処理する傾向があるため、ルビジウムは体の細胞内液、すなわち細胞の内部に蓄積する[47]。ルビジウムイオンは特に有毒ではない。70kgの人間は平均0.36グラムのルビジウムを含んでおり、この量を50から100倍に増加させても被験者に悪影響は見られなかった[48]。人体における生物学的半減期は、31から46日である[24]。しかし、ルビジウムによるカリウムの部分的な置換は起こり得ることであり、筋組織においてカリウムの50%以上がルビジウムに置換されたネズミは死亡した[49][50]。
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外部リンク
- ルビジウムと水の爆発反応(動画)
- Rubidium - Encyclopedia of Earth「ルビジウム」の項目。
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