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「マルチトラック・レコーダー」の版間の差分

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2005年11月17日 (木) 08:22時点における版

マルチトラッカー(多重録音機, マルチトラックレコーダ, Multi Track Recorder, MTR)とは、録音用機器の一つ。

概要

テープ媒体やディスク媒体を用い、2トラック以上の複数の録音トラックの録音再生を行う事ができる録音機器。通常のステレオ録音再生機と異なり、それぞれのトラックに対し、別個に録音、再生を選択する事ができるのが特徴である。

応用

MTRは音楽ソフト制作上極めて重要な装置である。例えば、複数のパートを各々別のトラックに独立して録音再生することができるので、一旦全パートを仮のレベルで録音した後に、任意のレベル、定位、エフェクト処理下でそれらをミクシングし、最終的なステレオソース(2ミックス)を作る事が可能になる(トラックダウン、ミックスダウン)。また、任意に録音/再生を切り替えられるので、例えばリズムパートを予め録音したテープを再生しながら、他のパートを異なったトラックに録音していくこともできる。このような多重録音の手法により、時間的制約やスタジオの空間的制約が緩和される。更にその後、歌唱を複数のトラックに録音し、出来の良い部分を繋いでいく等も可能であり、一人多重唱なども可能である。トラック数が不足する場合は、複数のトラックを再生しながらミクシングし、少ない数の空トラックに録音すれば、再生したトラックを消去する事ができるようになる。この種の操作をピンポン録音と呼ぶ。

分類

オープンリールMTR

ワイヤーレコーダレコードと異なり、アナログテープレコーダは幅広のテープを用い、複数の磁気ヘッドをテープの幅方向に並べることによって、多くの独立したトラックをもつことができる。業務用としては最大で2インチ幅のテープを用いて16あるいは24トラックの録音再生を行う物が一般的であった。1960年代半ばには、1/4インチ幅テープを用いたオープンリール式の4トラックの機種が登場した。ティアック(TEAC)社の80-8に代表される1/2インチ8トラックの機種やフォステクス(FOSTEX)社の1/4インチ8トラックの機種は小さなスタジオに至るまで広く用いられた。業務用では最大でテープ幅2インチで32トラックの物まで実用化されたがテープ幅に対してトラックが多くなるとSNや歪みの劣化が無視できなくなり対策としてノイズリダクションシステムが用いられるようになった。

カセットMTR : ミキサ内蔵型

1979年に、ティアック社はオーディオカセットテープを使用した、4トラックのマルチトラックレコーダ「TEAC 144 Portastudio」を発売した。この機種は当時広く用いられていたカセットテープを利用する点、ミキサを内蔵していた点、安価(10万以下)な価格設定が特徴で、音楽制作を試みるアマチュアにとって好都合であった。以後他社からもこの種の製品が多数発表された。

これらの機種は多くが次のような特徴を持っていた。

  • カセットテープの限られた性能をできるだけ生かすため
    • クロムテープ(後のTYPE 2テープ)専用設計
    • 倍速(9.5cm/s)
    • 片面仕様。元来のカセットレコーダーが、オーディオカセットテープのA面の左右ステレオの2チャンネルの同時の再生/録音と、あるいは、リバース面(B面)の逆方向左右2チャンネルの同時の再生/録音(リバース再生機能のない機種は、一度テープを取り出して左右を入れ替えて再度セットする。回転方向は一緒。)であるのに対し、それらは、計4チャンネル分のトラックを、同時に一方向だけから使用した。
    • ノイズリダクション。dbxやDolby-Cなどにより、信号対雑音比を稼いだ。
  • ミキサはバス切替機能をもっており、トラック毎に、テープバス/ミキサの入力バスの切替を行う独立したスイッチや、再生/録音機能、再生音の定位を決めるパンポットなどの基本的な機能を有したものであった。

後には、カセットオーディオテープを使用した8トラック製品も現れた。

このミキサ+MTRのスタイルは非常に革新的で、現在単体MTRというと、録音再生機単体(モジュラ型)よりミキサ内蔵型のものが大多数になっている程である。

デジタルMTR

1/4インチまたは1/2インチテープを用いたオープンリール式固定ヘッドデジタルレコーダが作られた。ソニー社のPCM-3324/3348やティアック社のDA-800-24等のDASH規格と三菱・赤井・小谷・AEGのPRODIGI規格がある。これらは2トラックの規格とMTRの規格を含んでいる。

また回転ヘッドを用いたビデオテープレコーダの機構を用いても、多チャネルのデジタル音声信号を同時に記録するだけの帯域を確保する事ができる。ベータマックスビデオテープを使用した、8トラック、及び、16トラックのデジタルマルチトラッカーなども登場した(註;後者は、録音機能だけで、録画機能はない)。現在でも音楽制作、放送用に広く用いられている規格として、米ALESIS社のADATとティアック社のDTRSがあり、前者はS-VHSテープ、後者はHi8テープにそれぞれCD並の音質で8トラックを記録する事ができる。これらのデジタルMTRは強力な同期機能をもっており、映像機器との同期のみならず、16台のDTRS機を同期運転して一台の128チャネル多重録音機として扱う事ができる程である。

ビデオテープに限らず、十分な信頼性とデータ転送速度をもったデジタル記録媒体であれば、いかなるものでもデジタルMTRの媒体となりうる。業務用では5/3.5インチMOディスクを用いたMTRがあり、コンシューマー用としてMD-DATAを用いたMTRも発売された。

2000年を過ぎたあたりからは、コンピュータ技術からの転用が盛んになり、ハードディスクを使用した8トラックから16トラックの単体レコーダ、及び、同機能を有したコンピューターソフトウェアの利用が中心になってきた。共に、直接CD-Rを制作することも可能になるなど実用上の利点が多く、また大量生産されるハードウェアを利用するため、アマチュアでも簡単に入手可能なくらいに安価になってきた(Digital Audio Workstation, DAW)。しかし、2004年現在、24トラック対応機種はまだ高価であり、「アマチュア向け」とはいい難い状態。

商用音楽における利用の歴史

プロ仕様機種に関しては、アメリカ合衆国(以降、「米国」)に於いては1950年代後半、イギリス(以降、「英国」)では1960年代初頭には2トラック録音が主流となった。

1950年代終盤から1960年代前半までには、日本も含めて各国で4トラックが普及し、8トラック録音に関しては、米国では1960年代半ば(代表作品;ビーチボーイズのアルバムペットサウンズ。)、英国に於いては、1960年代後半(代表作品;ビートルズのシングルヘイ・ジュード)あたりから主流となった。日本に於いては、1970年代初頭以降に普及したともいわれている。

以降、1970年代短い16トラックの期間を経て、1970年代半ばから近年までしばらくの間は、24トラックが主流であった。1980年代後半には、コンピューター連動の大型シンセサイザーの一種である、フェアライトシンクラヴィアなどの、複数チャンネルでの長時間サンプリング機能を使用した、初期のデジタル録音といってもよいレコーディングも、一部で行われた。(代表作;イエスの再結成後のアルバム「ビッグ・ジェネレイター」。「シンクラヴィア」使用。)

20世紀終盤以降は、一部の例外以外は、デジタル録音が主流となり、48トラックや72トラック以上の機種が中心となってきている。

映画およびTVなどの映像作品における利用の歴史

  • シネコーダー
  • MAVTR
  • シンクロナイザー
  • 規模の拡大
  • ディスク媒体のデジタルMTR導入

関連項目