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「五竜岳」の版間の差分

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|名称=五竜岳
|名称=五竜岳
|画像=[[ファイル:goryuu.jpg|300px|五竜岳]]
|画像=[[ファイル:goryuu.jpg|300px|五竜岳]]
|画像キャプション=五竜岳(2005年6月撮影)
|画像キャプション=[[鹿島槍ヶ岳]]から望む五竜岳
|標高=2,814<ref name="kokudo">{{Cite web |url=http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MOUNTAIN/mountain.html |title=日本の主な山岳標高(富山県) |publisher=[[国土地理院]] |accessdate=2011-09-01}}</ref>
|標高=2,814
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|山系=[[飛騨山脈]]([[後立山連峰]])
|初登頂=三枝威之助([[1908年]]7月)<ref name="fukada">{{Cite book|和書 |author=[[深田久弥]] |year=1982 |month=7 |title=日本百名山 |publisher=[[朝日新聞社]] |isbn=4-02-260871-4 |pages=pp.178-181}}</ref>
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}}
}}
'''五竜岳'''(ごりゅうだけ)は、[[飛騨山脈]](北アルプス)[[後立山連峰]]にある[[標高]]2,814mの[[山]]。山体は[[富山県]][[黒部市]]と[[長野県]][[大町市]]にまたがるが、山頂は富山県側に位置する。[[日本百名山]]の一つ。「竜」のみを[[旧字体]]にして'''五龍岳'''と表記されることもある。旧字体による表記は「五龍嶽」。
'''五竜岳'''(ごりゅうだけ)は、[[飛騨山脈]](北アルプス)[[後立山連峰]]にある[[標高]]2,814 [[メートル|m]]の[[山]]。山体は[[富山県]][[黒部市]]と[[長野県]][[大町市]]にまたが、山頂は富山県側に位置する<ref name="watchizu">{{Cite web |url=http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=137.7526786&latitude=36.65839858 |title=地図閲覧サービス(五龍岳) |publisher=国土地理院 |accessdate=2011-09-01}}</ref>男性的な山容で、[[日本百名山]]の一つ<ref name="fukada" />。「竜」のみを[[旧字体]]にして'''五龍岳'''と表記されることもある<ref name="kokudo" />。旧字体による表記は「五龍嶽」。


== 名称の由来 ==
== 概要 ==
[[東日本旅客鉄道|JR東日本]][[大糸線]][[神城駅]]の西8.4 [[キロメートル|km]]に位置し、[[中部山岳国立公園]]内にある<ref>{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/park/chubu/intro/index.html |title=中部山岳国立公園区域の概要 |publisher=[[環境省]] |accessdate=2011-09-01}}</ref>。[[鹿島槍ヶ岳]]と並んで、後立山連峰の主要峰の一つである。両山は丁度吊橋の支柱の様に[[日本三大一覧|日本三大キレット]]の一つである[[八峰キレット]]を挟む形で鎮座している。両山はそれぞれ逆側(鹿島槍ヶ岳は南側から、五竜岳は北側から)からは登りやすいが、両山を縦走するためには、難所である八峰キレットを通過しなければならない。山頂部は濃飛[[流紋岩]]型の[[溶結凝灰岩]]、山腹は[[黒雲母花崗岩]]からなる<ref name="sangakushi">{{Cite book|和書 |author= |year=2005 |month=11 |title=新日本山岳誌 |editor=[[日本山岳会]] |publisher=[[ナカニシヤ出版]] |pages=pp.884-885 |isbn=4779500001}}</ref>。山頂部は[[森林限界]]を越える[[高山帯]]で、[[1952年]](昭和27年)に多くの[[高山植物]]が自生している南斜面は[[白馬岳]]周辺の山域と共に[[白馬岳#白馬連山高山植物帯|白馬連山高山植物帯]]の[[天然記念物#日本における天然記念物|特別天然記念物]]に指定された<ref>{{Cite web |url=http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=137.7458985&latitude=36.64684539 |title=地図閲覧サービス(白馬連山高山植物帯(特)) |publisher=国土地理院 |accessdate=2011-09-01}}</ref>。[[コケ植物]]の[[ナンジャモンジャゴケ]]が、[[1951年]](昭和26年)初めて五竜岳で採取された。[[イワヒバリ]]、[[カヤクグリ]]、[[コマドリ]]などの亜高山帯の鳥が生息している<ref name="jiten">{{Cite book|和書 |author= |year=1992 |month=10 |title=コンサイス日本山名辞典 |publisher=[[三省堂]] |isbn=4-385-15403-1|pages=p.215}}</ref>。
[[深田久弥]]『日本百名山』(新潮文庫/昭和53年発行)によると、古く[[越中国|越中]]側では「餓鬼ヶ岳」と呼んでいたことが、[[元禄]]13年に作られた『奥山御境目見通絵図』に記されているという。また同じ頃の絵図には「後立山(ごりゅうざん)」という名称も見られ、[[近代]]登山界でも論争された。「ごりゅう」が「五竜」に通じることから、今日の「五竜岳」であろうとする説が大勢を占めたが、のちにそれが「[[鹿島槍ヶ岳]]」であることがほぼ確定したとも紹介されている。


山頂の北西2.0 kmの餓鬼谷上流部の左岸斜面には、[[1906年]](明治39年)に発見され翌年から鉱山の操業が行われた「大黒[[銅]]山跡」がある<ref name="hut">{{Cite book|和書 |author=柳原修一 |year=1990 |month=6 |title=北アルプス山小屋物語 |publisher=[[東京新聞]]出版局 |pages=p.137 |isbn=4808303744 }}</ref>。そこで[[精錬]]された銅は[[ウシ|牛]]により[[唐松岳]]と八方尾根を経由して運ばれ[[1918年]](大正7年)に閉鎖された<ref name="sangakushi" />。
一方、[[信濃国|信州]]側ではこの地域が[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]に[[武田氏]]の版図にあり、「菱形」の[[雪形]]が武田家の紋章に通じることから、「御菱(ごりょう)」と呼んだ。この「ごりょう」が「ごりゅう」に転訛したという説もあるが、「確かな文献はない」と記している。


== 名称の由来と武田菱 ==
== 概要 ==
[[File:Yukigata of Mount Goryu 1994-05-04.jpg|thumb|left|180px|五竜岳山頂部東面の武田菱の[[雪形]]]]
鹿島槍ヶ岳と並んで、後立山連峰の主要峰の一つである。両山は丁度吊橋の支柱の様に[[日本三大一覧|日本三大キレット]]の一つである[[八峰キレット]]を挟む形で鎮座している。両山はそれぞれ逆側(鹿島槍ヶ岳は南側から、五竜岳は北側から)からは登りやすいが、両山を縦走するためには、難所である八峰キレットを通過しなければならない。
古く[[越中国|越中]]側では'''餓鬼ヶ岳'''と呼ばれていたことが、[[1700年]]([[元禄]]13年)に[[奥山廻り|奥山廻り御用]]によって作られた『奥山御境目見通絵圖』に記されている<ref name="fukada" />。また同じ頃の絵図には「後立山(ごりゅうざん)」という山名も見られ[[近代]]登山界でも論争された。「ごりゅう」が「五竜」に通じることから、今日の「五竜岳」であろうとする説が大勢を占めたが、のちにそれが「鹿島槍ヶ岳」であることがほぼ確定した<ref name="fukada" />。[[1908年]](明治41年)7月に三枝威之助が初登頂して、「五竜」という宛時を行った<ref name="sangakushi" />。


一方、[[信濃国|信州]]側ではこの地域が[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]に[[武田氏]]の版図にあり、「菱形」の[[雪形]]が武田家の紋章に通じることから、「御菱(ごりょう)」と呼んだ。この「ごりょう」が「ごりゅう」に転訛したという説もある。白馬山麓では「割菱ノ頭」と呼ばれていた<ref name="fukada" />。[[1970年]](昭和45年)に第22回[[読売文学賞]]の詩歌俳句賞を受賞した[[野澤節子]]が、「落日の岳残雪の武田菱」の句を詠んでいる<ref>{{Cite book|和書 |author= |year=1992 |month=4 |title=[[日本二百名山|日本200名山]] |publisher=[[昭文社]] |isbn=4398220011 |pages=p.149}}</ref>。
== 登山ルート ==
{{Vertical_images_list |幅=300px
|画像1=Mt. Goryu.JPG
|説明1=五竜岳(小遠見山から撮影)
|画像2=Goryu1.JPG
|説明2=五竜岳(五竜山荘付近より、2008年8月撮影)
|画像3=Goryu2.JPG
|説明3=五竜岳(五竜岳~唐松岳間の縦走路より、2008年8月撮影)
}}
JR[[大糸線]]・[[神城駅]]近くの[[白馬五竜スキー場]]のゴンドラ[[テレキャビン]]を利用し、「とおみ」から「アルプスだいら」まで移動してから、[[小遠見山]]・[[大遠見山]]を経て西上し、[[白岳 (飛騨山脈)|白岳]]からいったん南下し、五竜山荘を越えるのが最短のルートであろう。


== 白馬五竜高山植物園 ==
また同線・[[白馬駅]]から「八方」に出て、[[ゴンドラアダム]]と[[アルペンクワッド]]とを乗り継いで八方池山荘まで上がり、[[八方尾根]]を[[唐松岳]]方面まで進んでから、唐松岳頂上山荘の分岐を南に取って[[大黒岳]]・白岳経由で山頂を目指すルートも人気が高い。
[[File:Dicentra peregrina Komakusa in Enzanso 2002-7-27.jpg|thumb|right|140px|後立山連峰の稜線に自生する[[高山植物]]の[[コマクサ]]]]
五竜岳の登山口でもある[[白馬五竜スキー場]]のアルプス展望ペアリフトの下部(標高1,500~1,600 m)には、[[2001年]](平成13年)に開設された白馬五竜高山[[植物園]]がある。[[コマクサ]]、[[ナデシコ|タカネナデシコ]]、[[ニッコウキスゲ]]など200種以上100万株の高山植物の花々が初夏から秋を通じて見られる<ref>{{Cite web |url=http://www.hakubaescal.com/green/ap_garden/index.html |title=白馬五竜高山植物園 |publisher=株式会社五竜 |accessdate=2011-09-01}}</ref>。[[ヒマラヤ山脈|ヒマラヤ]]の青い[[ケシ]]や[[セイヨウウスユキソウ|エーデルワイス]]のなどの世界の高山植物が見られる<ref>{{Cite web |url=http://www.nhk.or.jp/kotabi/konkai_110710.html |title=夏 きらめきのゲレンデ |publisher=[[日本放送協会|NHK]][[小さな旅]] |accessdate=2011-09-01}}</ref>。開園期間は6月下旬から9月上旬まで、冬期は[[豪雪地帯]]のため雪に埋もれる。


== 登山 ==
さらには[[白馬岳]]方面から[[扇沢]]方面に抜ける縦走路もある。[[杓子岳]]・[[鑓ヶ岳]]・不帰嶮と続く天狗尾根をたどって[[唐松岳]]に至り、五竜岳直下の難所G4・G5を越えてキレット小屋付近の八峰キレットから吊尾根の危険個所を通過し、[[鹿島槍ヶ岳]]・冷池山荘・[[爺ヶ岳]]から柏原新道を下って扇沢に出る。あるいは種池山荘から下りずに、[[岩小屋沢岳]]・[[鳴沢岳]]・[[赤沢岳]]・[[スバリ岳]]を経て[[針ノ木岳]]に出るコースもある。針ノ木岳からは扇沢へも出られるし、[[黒部湖]]・[[七倉ダム]]へ、また北アルプス南部へ抜ける[[裏銀座]]コースへも続いている。
1908年7月に三枝威之助が白馬岳から鹿島槍ヶ岳へ縦走した際に登頂したのが最初の登頂記録である<ref name="sangakushi" />。[[1931年]](昭和6年)3月に[[京都大学]]の登山パーティーが唐松岳から鹿島槍ヶ岳への積雪期初登頂を行い、[[立教大学]]の堀田弥一らが[[宇奈月温泉]]から鹿島槍ヶ岳と五竜岳の越中側からの積雪期初登頂を行った<ref name="sangakushi" />。[[1973年]](昭和48年)に白馬五竜スキー場ゴンドラが敷設されると、遠見尾根からの入山が従来よりも容易となった。山頂直下の北側の急斜面の岩場には鎖が設置されている。山頂の岩場は360度の展望で、西に[[黒部川]]を挟んで対峙している[[立山連峰]]、南には鹿島槍ヶ岳を望むことができる。
=== 登山ルート ===
[[File:Mt. Goryu.JPG|thumb|200px|小遠見山から望む五竜岳]]
大糸線神城駅西の白馬五竜スキー場のゴンドラテレキャビンを利用し、「とおみ」から「アルプスだいら」まで移動してから、遠見尾根から後立山連峰の主稜線の[[白岳 (飛騨山脈)|白岳]]に達し五竜山荘を経由するルートが、最短ルートである。


また同線・[[白馬駅]]から「八方」に出て、[[八方尾根スキー場]]のゴンドラアダムとアルペンクワッドとを乗り継いで八方池山荘まで上がり、[[八方尾根]]を[[唐松岳]]方面まで進んでから、唐松岳頂上山荘の分岐を南に取って大黒岳・白岳経由で山頂を目指すルートも人気が高い。
== 宿泊施設 ==
* 唐松岳頂上山荘
* 五竜山荘
* キレット小屋


さらには白馬岳方面から[[扇沢駅|扇沢]]方面に抜ける縦走路もある。[[杓子岳]]・[[鑓ヶ岳]]・不帰嶮と続く天狗尾根をたどって唐松岳に至り、五竜岳直下の難所G4・G5を越えてキレット小屋付近の八峰キレットから吊尾根の危険個所を通過し、鹿島槍ヶ岳・冷池山荘・[[爺ヶ岳]]から柏原新道を下って扇沢に出る。あるいは種池山荘から下りずに、[[岩小屋沢岳]]・[[鳴沢岳]]・[[赤沢岳]]・[[スバリ岳]]を経て[[針ノ木岳]]に出るコースもある。針ノ木岳からは扇沢へも出られるし、[[黒部湖]]・[[七倉ダム]]へ、また北アルプス南部へ抜ける[[裏銀座]]コースへも続いている。
== スキー場 ==

* '''白馬五竜スキー場からのルート'''
:白馬五竜スキー場 - 地蔵の頭 - 遠見尾根(小遠見山 - 中遠見山 - 大遠見山 - 西遠見山 - 白岳 - 五竜山荘 - '''五竜岳'''
* '''八方尾根からのルート'''
:八方尾根スキー場 - うさぎだいら - 八方池山荘 - 八方池 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - '''五竜岳'''
* '''後立山連峰縦走路'''
:[[親不知]]が起点となる白馬岳方面 - 杓子岳 - 鑓ヶ岳 - 天狗山荘 - 不帰嶮 - 唐松岳 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - '''五竜岳''' - キレット小屋 - 鹿島槍ヶ岳 - 冷池山荘 - [[爺ヶ岳]] - 種池山荘 - 岩小屋沢岳 - 新越山荘 - 鳴沢岳 - 赤沢岳 - スバリ岳 - 針ノ木岳 - 針ノ木峠(針ノ木小屋)へ続く(北アルプスの主稜線の縦走路は[[槍ヶ岳]]を経由して[[焼岳]]へと続く)

=== 周辺の山小屋 ===
[[File:Goryu1.JPG|thumb|right|200px|五竜岳山荘から望む五竜岳]]
稜線の鞍部などの登山道には、[[山小屋]]と[[キャンプ]]指定地がある<ref name="tizu">{{Cite book|和書 |year=2011 |month=3 |title=鹿島槍・五竜岳 |series=山と高原地図 2011年版 |publisher=昭文社 |pages= |isbn=9784398757753}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |year=2010 |month=12 |title=山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011) |publisher=山と溪谷社 |pages=pp.158-159、[[ASIN]] B004DPEH6G }}</ref><ref name="guide">{{Cite book|和書 |year=2008 |month=5 |author=中西俊明 |title= 白馬・後立山連峰 |series=ヤマケイ アルペンガイド9 |publisher=山と溪谷社 |pages=pp.160-161 |isbn=9784635013536}}</ref>。登山シーズン中の一部期間に有人の営業を行っている。最寄りの山小屋は[[1951年]](昭和26年)に[[白馬山荘]]の経営者であった松沢恒久により新設された五竜山荘である<ref name="hut" />。積雪量の多い地域であり、営業期間外には閉鎖される。
{| class="wikitable"
|-
!名称
!所在地
![[標高]]<br />([[メートル|m]])
!五竜岳からの<br />方角と[[距離]] ([[キロメートル|km]])
!収容<br />人数
!キャンプ<br />指定地
!備考
|-
|'''唐松岳頂上小屋'''
|唐松岳南東の肩
|style="text-align:right;"|2,465
|{{direction|N}}北 3.1
|style="text-align:right;"|350
|テント30張
|1933年開業
|- style="background-color:#ccc"
|'''五竜山荘'''
|白岳と五竜岳との鞍部
|style="text-align:right;"|2,490
|{{direction|NE}}北東 0.9
|style="text-align:right;"|300
|テント30張
|1951年開業
|-
|'''キレット小屋'''
|八峰キレット
|style="text-align:right;"|2,470
|{{direction|S}}南 2.8
|style="text-align:right;"|100
|なし
|1933年開業
|}

== 地理 ==
=== 周辺の山 ===
[[File:Goryudake to Syakushidake from Kitazyo 1996-1-2.jpg|thumb|right|250px|[[白馬村]]北城から望む五竜岳から[[杓子岳]]へと連なる後立山連峰]]
[[File:Mount Shirouma and Mount Goryu from Mount tsurugi 1994-10-10.jpg|thumb|right|200px|[[剱岳]]から望む[[白馬岳]]から五竜岳へと連なる後立山連峰]]
後立山連峰の中央付近に位置し、西北西の東谷山へと尾根が延びる。北東1.0 kmに位置する白岳からは、東南東に遠見尾根が延びる。遠見尾根には西遠見山、大中遠見山、中遠見山、小遠見山のピークがある。東面には岩峰がある。 
{| class="wikitable"
!山容
!山名
![[標高]]<ref name="kokudo" /><ref name="kijyun">{{Cite web |url=http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/ |title=基準点成果等閲覧サービス |publisher=国土地理院 |accessdate=2011-09-01}}</ref><br>([[メートル|m]])
![[三角点]]等級<br />基準点名<ref name="kijyun" />
!五竜岳からの<br />方角と距離([[キロメートル|km]])
!備考
|-
|[[File:Shiroumadake from maruyama 26 2000 7 30.jpg|80px]]
|[[白馬岳]]
|2,932.<small>24</small>
| 一等<br />「白馬岳」
|{{direction|N}}北 11.1
|後立山連峰の[[最高峰]]、<small>日本百名山</small><br />[[白馬山荘]]、[[白馬岳頂上宿舎]]
|-
|[[File:Karamatsudake from Kitazyo 1996-1-2.jpg|80px]]
|[[唐松岳]]
|2,695.<small>8</small>
| 二等<br />「唐松谷」
|{{direction|N}}北 3.2
|<small>八方尾根、唐松岳頂上山荘<br />[[日本三百名山]]</small>
|-
|[[File:Shiratake and Hut from Goryudake 1994-9-4.jpg|80px]]
|[[白岳 (飛騨山脈)|白岳]]
|2,541
|
|{{direction|NE}}北東 1.0
|五竜山荘<br />遠見尾根の分岐点
|- style="background-color:#ccc"
|[[File:Goryudake from Karamatsudake summer 1994-9-4.jpg|80px]]
|'''[[五竜岳]]'''
|2,814
|
|{{direction|O}} 0
|<small>[[日本百名山]]</small>
|-
|[[File:Kashimayarigatake from jiigatake 2001-11-20.jpg|80px]]
|[[鹿島槍ヶ岳]]
|2,889.<small>08</small>
| 二等<br />「鹿島入」
|{{direction|S}}南 3.8
|キレット小屋<br /><small>日本百名山</small>
|}

=== 源流の河川 ===
以下が源流となる[[河川]]で、[[日本海]]へ流れる<ref name="tizu" /><ref name="watchizu" />。
* 餓鬼谷・東谷 (黒部川の[[支流]]で黒部湖に流れる)
* 鹿島川の支流のシラタケ沢 ([[高瀬川 (長野県)|高瀬川]]の支流)

=== 周辺のスキー場 ===
* [[白馬五竜スキー場]]
* [[白馬五竜スキー場]]
* [[Hakuba47ウィンタースポーツパーク]]
* [[Hakuba47ウィンタースポーツパーク]]


== 近隣 ==
== 五竜岳風景 ==
{| class="wikitable"
* [[蓮華岳]]
|-
* [[爺ヶ岳]]
|[[File:Mount Goryu and Mount Kashimayari from Mount Tate 1995-08-20.jpg|x110px]]
* [[鹿島槍ヶ岳]]
|[[File:Goryu2.JPG|x110px]]
* [[鳴沢岳]]
|[[File:Goryudake from Karamatsudake spring 1996-5-4.jpg|x110px]]
* [[赤沢岳]]
|[[File:Goryudake from Kitazyo 1996-1-2.jpg|x110px]]
* [[スバリ岳]]
|-
* [[針ノ木岳]]
| <small>[[立山]]から望む五竜岳と[[鹿島槍ヶ岳]]</small>
* [[牛首山]]
| <small>唐松岳方面から望む</small>
* [[布引岳]]
| <small>唐松岳から望む</small>
* [[大遠見山]]
| <small>白馬村北城から望む</small>
* [[白岳 (飛騨山脈)|白岳]]
|}
* [[唐松岳]]
* [[白馬岳]]
* [[杓子岳]]
* [[鑓ヶ岳]]


== 外部リンク ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
* [http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=363930&l=1374510 国土地理院 地図閲覧サービス 2万5千分1地形図]
{{reflist}}


== 関連項目 ==
* [[中部山岳国立公園]]
* [[飛騨山脈]] - [[後立山連峰]]
* [[日本の山一覧 (高さ順)]]・第57位
* [[雪形]](武田菱)

== 外部リンク ==
{{commonscat|Mount Goryu}}
* [http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=137.7526786&latitude=36.65839858 地図閲覧サービス(五龍岳)] (国土地理院)
* [http://tenki.jp/mountain/famous100/point-153.html 五竜岳の登山天気] ([[日本気象協会]])


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2011年9月2日 (金) 03:16時点における版

五竜岳
五竜岳
鹿島槍ヶ岳から望む五竜岳
標高 2,814[1] m
所在地 富山県黒部市長野県大町市
位置 北緯36度39分30秒 東経137度45分10秒 / 北緯36.65833度 東経137.75278度 / 36.65833; 137.75278座標: 北緯36度39分30秒 東経137度45分10秒 / 北緯36.65833度 東経137.75278度 / 36.65833; 137.75278[1]
山系 飛騨山脈後立山連峰
初登頂 三枝威之助(1908年7月)[2]
五竜岳の位置(日本内)
五竜岳
五竜岳の位置
プロジェクト 山
テンプレートを表示

五竜岳(ごりゅうだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)後立山連峰にある標高2,814 m。山体は富山県黒部市長野県大町市にまたがり、山頂部は富山県側に位置する[3]。男性的な山容で、日本百名山の一つ[2]。「竜」のみを旧字体にして五龍岳と表記されることもある[1]。旧字体による表記は「五龍嶽」。

概要

JR東日本大糸線神城駅の西8.4 kmに位置し、中部山岳国立公園内にある[4]鹿島槍ヶ岳と並んで、後立山連峰の主要峰の一つである。両山は丁度吊橋の支柱の様に日本三大キレットの一つである八峰キレットを挟む形で鎮座している。両山はそれぞれ逆側(鹿島槍ヶ岳は南側から、五竜岳は北側から)からは登りやすいが、両山を縦走するためには、難所である八峰キレットを通過しなければならない。山頂部は濃飛流紋岩型の溶結凝灰岩、山腹は黒雲母花崗岩からなる[5]。山頂部は森林限界を越える高山帯で、1952年(昭和27年)に多くの高山植物が自生している南斜面は白馬岳周辺の山域と共に白馬連山高山植物帯特別天然記念物に指定された[6]コケ植物ナンジャモンジャゴケが、1951年(昭和26年)初めて五竜岳で採取された。イワヒバリカヤクグリコマドリなどの亜高山帯の鳥が生息している[7]

山頂の北西2.0 kmの餓鬼谷上流部の左岸斜面には、1906年(明治39年)に発見され翌年から鉱山の操業が行われた「大黒山跡」がある[8]。そこで精錬された銅はにより唐松岳と八方尾根を経由して運ばれ1918年(大正7年)に閉鎖された[5]

名称の由来と武田菱

五竜岳山頂部東面の武田菱の雪形

古く越中側では餓鬼ヶ岳と呼ばれていたことが、1700年元禄13年)に奥山廻り御用によって作られた『奥山御境目見通絵圖』に記されている[2]。また同じ頃の絵図には「後立山(ごりゅうざん)」という山名も見られ近代登山界でも論争された。「ごりゅう」が「五竜」に通じることから、今日の「五竜岳」であろうとする説が大勢を占めたが、のちにそれが「鹿島槍ヶ岳」であることがほぼ確定した[2]1908年(明治41年)7月に三枝威之助が初登頂して、「五竜」という宛時を行った[5]

一方、信州側ではこの地域が戦国時代武田氏の版図にあり、「菱形」の雪形が武田家の紋章に通じることから、「御菱(ごりょう)」と呼んだ。この「ごりょう」が「ごりゅう」に転訛したという説もある。白馬山麓では「割菱ノ頭」と呼ばれていた[2]1970年(昭和45年)に第22回読売文学賞の詩歌俳句賞を受賞した野澤節子が、「落日の岳残雪の武田菱」の句を詠んでいる[9]

白馬五竜高山植物園

後立山連峰の稜線に自生する高山植物コマクサ

五竜岳の登山口でもある白馬五竜スキー場のアルプス展望ペアリフトの下部(標高1,500~1,600 m)には、2001年(平成13年)に開設された白馬五竜高山植物園がある。コマクサタカネナデシコニッコウキスゲなど200種以上100万株の高山植物の花々が初夏から秋を通じて見られる[10]ヒマラヤの青いケシエーデルワイスのなどの世界の高山植物が見られる[11]。開園期間は6月下旬から9月上旬まで、冬期は豪雪地帯のため雪に埋もれる。

登山

1908年7月に三枝威之助が白馬岳から鹿島槍ヶ岳へ縦走した際に登頂したのが最初の登頂記録である[5]1931年(昭和6年)3月に京都大学の登山パーティーが唐松岳から鹿島槍ヶ岳への積雪期初登頂を行い、立教大学の堀田弥一らが宇奈月温泉から鹿島槍ヶ岳と五竜岳の越中側からの積雪期初登頂を行った[5]1973年(昭和48年)に白馬五竜スキー場ゴンドラが敷設されると、遠見尾根からの入山が従来よりも容易となった。山頂直下の北側の急斜面の岩場には鎖が設置されている。山頂の岩場は360度の展望で、西に黒部川を挟んで対峙している立山連峰、南には鹿島槍ヶ岳を望むことができる。

登山ルート

小遠見山から望む五竜岳

大糸線神城駅西の白馬五竜スキー場のゴンドラテレキャビンを利用し、「とおみ」から「アルプスだいら」まで移動してから、遠見尾根から後立山連峰の主稜線の白岳に達し五竜山荘を経由するルートが、最短ルートである。

また同線・白馬駅から「八方」に出て、八方尾根スキー場のゴンドラアダムとアルペンクワッドとを乗り継いで八方池山荘まで上がり、八方尾根唐松岳方面まで進んでから、唐松岳頂上山荘の分岐を南に取って大黒岳・白岳経由で山頂を目指すルートも人気が高い。

さらには白馬岳方面から扇沢方面に抜ける縦走路もある。杓子岳鑓ヶ岳・不帰嶮と続く天狗尾根をたどって唐松岳に至り、五竜岳直下の難所G4・G5を越えてキレット小屋付近の八峰キレットから吊尾根の危険個所を通過し、鹿島槍ヶ岳・冷池山荘・爺ヶ岳から柏原新道を下って扇沢に出る。あるいは種池山荘から下りずに、岩小屋沢岳鳴沢岳赤沢岳スバリ岳を経て針ノ木岳に出るコースもある。針ノ木岳からは扇沢へも出られるし、黒部湖七倉ダムへ、また北アルプス南部へ抜ける裏銀座コースへも続いている。

  • 白馬五竜スキー場からのルート
白馬五竜スキー場 - 地蔵の頭 - 遠見尾根(小遠見山 - 中遠見山 - 大遠見山 - 西遠見山 - 白岳 - 五竜山荘 - 五竜岳
  • 八方尾根からのルート
八方尾根スキー場 - うさぎだいら - 八方池山荘 - 八方池 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - 五竜岳
  • 後立山連峰縦走路
親不知が起点となる白馬岳方面 - 杓子岳 - 鑓ヶ岳 - 天狗山荘 - 不帰嶮 - 唐松岳 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - 五竜岳 - キレット小屋 - 鹿島槍ヶ岳 - 冷池山荘 - 爺ヶ岳 - 種池山荘 - 岩小屋沢岳 - 新越山荘 - 鳴沢岳 - 赤沢岳 - スバリ岳 - 針ノ木岳 - 針ノ木峠(針ノ木小屋)へ続く(北アルプスの主稜線の縦走路は槍ヶ岳を経由して焼岳へと続く)

周辺の山小屋

五竜岳山荘から望む五竜岳

稜線の鞍部などの登山道には、山小屋キャンプ指定地がある[12][13][14]。登山シーズン中の一部期間に有人の営業を行っている。最寄りの山小屋は1951年(昭和26年)に白馬山荘の経営者であった松沢恒久により新設された五竜山荘である[8]。積雪量の多い地域であり、営業期間外には閉鎖される。

名称 所在地 標高
(m)
五竜岳からの
方角と距離 (km)
収容
人数
キャンプ
指定地
備考
唐松岳頂上小屋 唐松岳南東の肩 2,465 北 3.1 350 テント30張 1933年開業
五竜山荘 白岳と五竜岳との鞍部 2,490 北東 0.9 300 テント30張 1951年開業
キレット小屋 八峰キレット 2,470 南 2.8 100 なし 1933年開業

地理

周辺の山

白馬村北城から望む五竜岳から杓子岳へと連なる後立山連峰
剱岳から望む白馬岳から五竜岳へと連なる後立山連峰

後立山連峰の中央付近に位置し、西北西の東谷山へと尾根が延びる。北東1.0 kmに位置する白岳からは、東南東に遠見尾根が延びる。遠見尾根には西遠見山、大中遠見山、中遠見山、小遠見山のピークがある。東面には岩峰がある。 

山容 山名 標高[1][15]
m
三角点等級
基準点名[15]
五竜岳からの
方角と距離(km)
備考
白馬岳 2,932.24  一等
「白馬岳」
北 11.1 後立山連峰の最高峰日本百名山
白馬山荘白馬岳頂上宿舎
唐松岳 2,695.8  二等
「唐松谷」
北 3.2 八方尾根、唐松岳頂上山荘
日本三百名山
白岳 2,541 北東 1.0 五竜山荘
遠見尾根の分岐点
五竜岳 2,814  0 日本百名山
鹿島槍ヶ岳 2,889.08  二等
「鹿島入」
南 3.8 キレット小屋
日本百名山

源流の河川

以下が源流となる河川で、日本海へ流れる[12][3]

  • 餓鬼谷・東谷 (黒部川の支流で黒部湖に流れる)
  • 鹿島川の支流のシラタケ沢 (高瀬川の支流)

周辺のスキー場

五竜岳の風景

立山から望む五竜岳と鹿島槍ヶ岳 唐松岳方面から望む 唐松岳から望む 白馬村北城から望む

脚注

  1. ^ a b c d 日本の主な山岳標高(富山県)”. 国土地理院. 2011年9月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e 深田久弥『日本百名山』朝日新聞社、1982年7月、pp.178-181頁。ISBN 4-02-260871-4 
  3. ^ a b 地図閲覧サービス(五龍岳)”. 国土地理院. 2011年9月1日閲覧。
  4. ^ 中部山岳国立公園区域の概要”. 環境省. 2011年9月1日閲覧。
  5. ^ a b c d e 日本山岳会 編『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月、pp.884-885頁。ISBN 4779500001 
  6. ^ 地図閲覧サービス(白馬連山高山植物帯(特))”. 国土地理院. 2011年9月1日閲覧。
  7. ^ 『コンサイス日本山名辞典』三省堂、1992年10月、p.215頁。ISBN 4-385-15403-1 
  8. ^ a b 柳原修一『北アルプス山小屋物語』東京新聞出版局、1990年6月、p.137頁。ISBN 4808303744 
  9. ^ 日本200名山昭文社、1992年4月、p.149頁。ISBN 4398220011 
  10. ^ 白馬五竜高山植物園”. 株式会社五竜. 2011年9月1日閲覧。
  11. ^ 夏 きらめきのゲレンデ”. NHK小さな旅. 2011年9月1日閲覧。
  12. ^ a b 『鹿島槍・五竜岳』昭文社〈山と高原地図 2011年版〉、2011年3月。ISBN 9784398757753 
  13. ^ 『山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011)』山と溪谷社、2010年12月、pp.158-159、ASIN B004DPEH6G頁。 
  14. ^ 中西俊明『白馬・後立山連峰』山と溪谷社〈ヤマケイ アルペンガイド9〉、2008年5月、pp.160-161頁。ISBN 9784635013536 
  15. ^ a b 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2011年9月1日閲覧。

関連項目

外部リンク