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'''エボシガイ'''({{snamei|Lepas anatifera}}) |
'''エボシガイ'''(烏帽子貝<ref>{{Cite book|和書 |title=日本大百科全書 |year=1984~1994 |publisher=小学館}}</ref>、[[学名]]:{{snamei|Lepas anatifera}})は、[[固着性]]の[[甲殻類]]の一種。[[蔓脚類]](広義の[[フジツボ]]類)に分類される。[[流木]]などに付着し、海面を漂って生活する。 |
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== 形態 == |
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貝殻の長さは約3cm、殻の根本には伸縮自在の茶色い柄があり、かなり伸び縮みする。その基部で、流木や[[ブイ]]など、洋上の漂流物や帆船の船底に付着して群生し、[[プランクトン]]を捕食する。柄の長さは個体によって異なる。[[太平洋]]を中心に世界に広く分布し、日本近海でも見られる。 |
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体は5枚の白い[[殻板]]に覆われた頭状部と、殻板のない柄部からなる。殻板は白くて表面はなめらかだが、成長線と呼ばれる筋がある<ref>近似種で、より小型であるカルエボシの殻板には成長線以外に放射状の筋がある([[#so|山口・久恒(2006)]] pp.371)。</ref>。頭状部の大きさは2cmから5cmほど。殻板の中には他の蔓脚類と同じく、蔓脚がある。柄部は肌色・ベージュ色で細長く、長さは個体によって異なるが、10cmを超えることもある<ref name=nishimura>[[#nishimura|西村(1995)]] pp.120-121</ref><ref name=eco>[[#eco|西村・鈴木(1996)]] p.61</ref><ref name=miwaku>[[#miwaku|倉谷(2009)]] p.9</ref><ref name=so>[[#so|山口・久恒(2006)]] pp.371</ref>。また柄部は伸縮するため、ときには30cmほどにまで伸びるとされる<ref name=eco/>。 |
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== 生態と分布 == |
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5枚の殻板で覆われた三角形状の貝殻が[[烏帽子]]を彷彿とさせることからこの呼称が定着した。近縁なものには[[クラゲ]]や[[カニ]]に付着する種類もいる。 |
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== 分類 == |
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[[節足動物]]門・甲殻亜綱の1群である蔓脚類に分類される。[[蔓脚下綱]](亜綱とされることも)は3つの上目(超目)からなるが、エボシガイ類はフジツボ類とともに[[完胸上目]](超目)に含まれる。完胸上目はさらに柄部を持つ[[有柄目]]と持たない[[無柄目]]に二分され、エボシガイを含む[[エボシガイ亜目]]は前述の通り柄部を持つので、有柄目の1群である。本種はそのなかでも[[エボシガイ科]]・[[エボシガイ属]]に分類される<ref name=so/><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.godac.jp/bismal/integrationView.jsf?taxon=9005513|title=Species: ''Lepas anatifera'' Linnaeus, 1758 エボシガイ |work=Biological Information System for Marine Life|publisher=[[国際海洋環境情報センター]]|accessdate=2011-07-08}}</ref> |
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<!--やや冗長ですが、上位分類群の記事が充実していないため詳しく書いておきます。-->。 |
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エボシガイ属には本種の他に、同じく漂流物に付着する[[カルエボシ]]などが含まれる。エボシガイ科にはエボシガイ属以外に5つの属(うち1つは絶滅している)が含まれ、[[クラゲ]]に付着する[[クラゲエボシ]]、[[ウオジラミ]]類に付着する[[スジエボシ]]などさまざまな生態を持つ種が含まれている<ref name=so/>。 |
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== 名称 == |
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和名は、頭状部のかたちが[[烏帽子]]に似ていることから{{要出典|date=2011-7}}。 |
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エボシガイ属の学名''Lepas''は[[カサガイ]]を指す[[ギリシャ語]]で、[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]がこの仲間を[[貝]]類とみなしていたことに由来する。種小名''anatifera''は[[ラテン語]]で「[[カモ]]を産む」という意味。同属のカルエボシの種小名''anserifera''も「[[雁|ガン]]を産む」という意味である。これらの名前は、[[中世]][[ヨーロッパ]]でエボシガイ類がガンやカモの[[卵]]であると信じられていたために名付けられた<ref name=eco/>。この仲間を英語でgoose barnacleと呼ぶのも同じ迷信に由来する。特に繁殖地が[[北極]]付近にある[[カオジロガン]]は長い間、ヨーロッパでエボシガイ類から成長したものだと思われていた<ref name="Allaby">{{cite book|author=Michael Allaby|year=2009|title=Animals: from Mythology to Zoology|publisher=[[Infobase Publishing]]|isbn=978-0-8160-6101-3|chapter=Barnacles|pages=75–77|chapter-url=https://books.google.com/books?id=KtKZ12YN9qcC&pg=PT91}}</ref>。 |
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== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
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*{{Cite book|和書|author=西村三郎(編著)|authorlink=西村三郎|title=原色検索日本海岸動物図鑑|volume=II|year=1995|publisher=[[保育社]]|isbn=458630202X|ref=nishimura}} |
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*{{Cite book|和書|author=西村三郎|coauthors=鈴木克美|others=内海富士夫(監修)|title=海岸動物|series=エコロン自然シリーズ|year=1996|publisher=保育社|isbn=4586321059|ref=eco}} |
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*{{Cite book|和書|author=倉谷うらら|title=フジツボ 魅惑の足まねき|series=[[岩波科学ライブラリー]]159 生きもの|publisher=[[岩波書店]]|year=2009|isbn=9784000074995|ref=miwaku}} |
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*{{Cite book|和書|author=山口寿之|coauthors=久恒義之|chapter=フジツボ類の分類および鑑定の手引き|year=2006|title=フジツボ類の最新学 知られざる付着性甲殻類と人とのかかわり|editor=日本付着生物学会|publisher=[[恒星社厚生閣]]|isbn=4769910339|pages=365-390|ref=so}} |
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:この論文は以下にも再録されている。 |
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**{{cite journal|和書|author=山口寿之|coauthors=久恒義之|title=フジツボ類の分類および鑑定の手引き|journal=Sessile Organisms|year=2006|volume=23|issue=1|pages=1-15|doi=10.4282/sosj.23.1}} |
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*{{cite journal|last=Patel|first=B|title=The influence of temperature on the reptoduction and moulting of ''Lepas anatifera'' L. under laboratory conditions|journal=J Mar Biol Ass UK|year=1959|volume=38|pages=589-597|url=http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=4239768|doi=10.1017/S0025315400007013|ref=jmba}} |
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エボシガイ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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エボシガイ。殻板の隙間から蔓脚が見える。
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Lepas anatifera Linnaeus, 1758 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エボシガイ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Pelagic Goosneck Barnacle |
エボシガイ(烏帽子貝[1]、学名:Lepas anatifera)は、固着性の甲殻類の一種。蔓脚類(広義のフジツボ類)に分類される。流木などに付着し、海面を漂って生活する。
形態
[編集]体は5枚の白い殻板に覆われた頭状部と、殻板のない柄部からなる。殻板は白くて表面はなめらかだが、成長線と呼ばれる筋がある[2]。頭状部の大きさは2cmから5cmほど。殻板の中には他の蔓脚類と同じく、蔓脚がある。柄部は肌色・ベージュ色で細長く、長さは個体によって異なるが、10cmを超えることもある[3][4][5][6]。また柄部は伸縮するため、ときには30cmほどにまで伸びるとされる[4]。
生態と分布
[編集]流木などの漂流物や船底に集団で付着して生活し、全世界の海洋に広く分布する[3] [4]。他の固着性生物に比して外洋性が強い場所での漂流物への付着が見られ、沿岸域ではあまり見られない[7]。漂流物とともに海岸に流れ着き、漂着物として採集されることもある[5]。
蔓脚を用いて小型のプランクトンを食べる[8]。雌雄同体だが自家受精はせず、陰茎を通じて他個体に精子を渡して繁殖する[8]。
分類
[編集]節足動物門・甲殻亜綱の1群である蔓脚類に分類される。蔓脚下綱(亜綱とされることも)は3つの上目(超目)からなるが、エボシガイ類はフジツボ類とともに完胸上目(超目)に含まれる。完胸上目はさらに柄部を持つ有柄目と持たない無柄目に二分され、エボシガイを含むエボシガイ亜目は前述の通り柄部を持つので、有柄目の1群である。本種はそのなかでもエボシガイ科・エボシガイ属に分類される[6][9] 。
エボシガイ属には本種の他に、同じく漂流物に付着するカルエボシなどが含まれる。エボシガイ科にはエボシガイ属以外に5つの属(うち1つは絶滅している)が含まれ、クラゲに付着するクラゲエボシ、ウオジラミ類に付着するスジエボシなどさまざまな生態を持つ種が含まれている[6]。
名称
[編集]和名は、頭状部のかたちが烏帽子に似ていることから[要出典]。
エボシガイ属の学名Lepasはカサガイを指すギリシャ語で、リンネがこの仲間を貝類とみなしていたことに由来する。種小名anatiferaはラテン語で「カモを産む」という意味。同属のカルエボシの種小名anseriferaも「ガンを産む」という意味である。これらの名前は、中世ヨーロッパでエボシガイ類がガンやカモの卵であると信じられていたために名付けられた[4]。この仲間を英語でgoose barnacleと呼ぶのも同じ迷信に由来する。特に繁殖地が北極付近にあるカオジロガンは長い間、ヨーロッパでエボシガイ類から成長したものだと思われていた[10]。
脚注
[編集]- ^ 『日本大百科全書』小学館、1984~1994。
- ^ 近似種で、より小型であるカルエボシの殻板には成長線以外に放射状の筋がある(山口・久恒(2006) pp.371)。
- ^ a b 西村(1995) pp.120-121
- ^ a b c d 西村・鈴木(1996) p.61
- ^ a b 倉谷(2009) p.9
- ^ a b c 山口・久恒(2006) pp.371
- ^ 林育夫. “漂流木材に付着した海産動物は語る” (PDF). 水産研究・教育機構. 2024年11月19日閲覧。
- ^ a b Patel (1959)
- ^ “Species: Lepas anatifera Linnaeus, 1758 エボシガイ”. Biological Information System for Marine Life. 国際海洋環境情報センター. 2011年7月8日閲覧。
- ^ Michael Allaby (2009). “Barnacles”. Animals: from Mythology to Zoology. Infobase Publishing. pp. 75–77. ISBN 978-0-8160-6101-3
参考文献
[編集]- 西村三郎(編著)『原色検索日本海岸動物図鑑』 II、保育社、1995年。ISBN 458630202X。
- 西村三郎、鈴木克美『海岸動物』内海富士夫(監修)、保育社〈エコロン自然シリーズ〉、1996年。ISBN 4586321059。
- 倉谷うらら『フジツボ 魅惑の足まねき』岩波書店〈岩波科学ライブラリー159 生きもの〉、2009年。ISBN 9784000074995。
- 山口寿之、久恒義之 著「フジツボ類の分類および鑑定の手引き」、日本付着生物学会 編『フジツボ類の最新学 知られざる付着性甲殻類と人とのかかわり』恒星社厚生閣、2006年、365-390頁。ISBN 4769910339。
- この論文は以下にも再録されている。
- 山口寿之、久恒義之「フジツボ類の分類および鑑定の手引き」『Sessile Organisms』第23巻第1号、2006年、1-15頁、doi:10.4282/sosj.23.1。
- Patel, B (1959). “The influence of temperature on the reptoduction and moulting of Lepas anatifera L. under laboratory conditions”. J Mar Biol Ass UK 38: 589-597. doi:10.1017/S0025315400007013 .