The Backrooms
The Backrooms(ザ・バックルームズ)は、オフィスルームがいくつもランダムに生成されて出来上がった無限に続く迷路状の空間についての都市伝説、インターネット・ミーム、クリーピーパスタである。 物語の中では、濡れた絨毯の臭い、黄色一色の壁、蛍光灯のブーンという音がこの空間の特徴として紹介されている。
起源と概要
The Backroomsは、2019年5月12日の4chanの投稿が由来である[注釈 1]。この掲示板で、とある匿名ユーザーが不安をあおる画像の投稿を他のユーザに呼びかけた[1]。そこで最初にアップロードされたのが黄色い廊下の少し傾いた画像である。この画像のコメント欄に、他の匿名ユーザがThe Backroomについて書き込んだストーリーが都市伝説となった[1][2]。4chanの投稿が有名になった後、インターネットユーザはThe Backroomsに関するホラーストーリーを書き始めた。さらに、多くのミームが作成され、ソーシャルメディアによって広められ、クリーピーパスタとしてさらに有名になった[3]。不安を掻き立てるような風景や写真(リミナルスペース)の流行も、この物語を広める一因となった[1]。
特徴
階層
The Backroomsの内部の空間は「階層」(Level) と呼ばれる。階層の種類には以下のようなものがある。
- 通常階層 (Normal Level) - 階数の番号が整数のもの
- 番外階層[注釈 2] (Anomalous Level[注釈 3]) - 整数ではなく、単純な呼称や記号が階数とされているもの
- 亜階層[注釈 4] (Sub Level) - 階層の番号が小数点を含む実数であり、整数部分が同一である通常階層と性質が類似しているもの
- またバックルームの階層は無限に存在していると言われている
生存難易度
The Backroomsでは生存難易度 (Survival Difficulty[注釈 5]) というシステムにより、各階層の危険度が示されている。基本的には0〜5の数字で示されるが、HabitableやDeadzoneなど例外的な表記も存在する。
人気
シェアワールドコンテンツ
The Backroomsは生まれてすぐさまRedditで人気を博し、そこで他のレベルやエンティティなどの概念が生まれた。2019年6月、FandomにBackrooms Wikiが設立され、そこでThe Backroomsについての創作が行われるようになった。しかし、このウィキには投稿の質をコントロールする仕組みがなかったため、2020年3月、WikidotにThe Backrooms Wikiが新たに設立された。これらのウィキには多くの作品が投稿されている。
また、日本語版やポーランド語版、ロシア語版、中国語版、スペイン語版、タイ語版などのBackrooms Wikiも存在する。日本語版やポーランド語版には本家と完全に分離した独自の階層群が存在する[4]。
映画
2022年1月、16歳のケイン・パーソンズ監督は自身のYouTubeチャンネルに、「 The Backrooms(FoundFootage) 」というタイトルの短編ホラー映画をアップロードした[5]。1991年、1人のティーンエイジャーが突如The Backroomsに迷い込み、奇妙な怪異から逃げ惑うという内容である[6]。 この映画は、実写映像と3D Blenderレンダリングに加え、手ぶれやVHSフィルターなどでエフェクトを加えている[7]。 一部の人はこれを「アナログホラー」に分類している[8]。米ラジオ局のWPSTに投稿されたコメントではこの映画を「インターネット上で一番怖い動画だ」と評価した[要出典]。 ホラーコンテンツのウェブサイト「ドレッドセントラル」はコンピュータゲーム『Control』(2019年発売)と比較した [9]。
2023年2月、上記短編ホラー映画をアップロードしたケイン・パーソンズがA24、アトミック・モンスター・プロダクションズと共に長編映画を製作し、監督デビューすることが発表された。
ゲーム
この都市伝説をモチーフとしたコンピュータゲームは複数存在する。1つめは、2020年にインディーゲームスタジオのPie on a Plate Productionsが発売したホラーゲーム『The Backrooms Game』である[10]。同作はThe Backroomsに来てしまった一般人を主人公としており、怪物に追われながらフロアからの脱出を目指す内容である[1]。同作には正気度の概念があり、30秒ごとに腕時計を見ることでこれが保たれる設定である[1]。奇妙な壁で行われるミニゲームをクリアすることで脱出成功となる一方、歩行距離を競うやりこみ要素も存在する[1]。ブラッディ・ディスガスティングのライター、マイケル・L・サンダルは、この作品を作家のシャーロット・パーキンス・ギルマンの作品と比較して、その恐怖感を賞賛した[11]。GuruGamerの作者であるSigmaKlimは『ゆめにっき』(2004年)と比較して、ほとんどのホラーコンテンツでは「陳腐で使い古されたモチーフ」であるのに、このゲームはどこかユニークなものだと語った[12]。 ドイツの雑誌「PCMag」は、このゲームを「不安」と「狂気」の雰囲気により、「最高の無料Steamゲーム」ランキングの中での「選外佳作」として紹介している[13]。
もう一つは、Cosmic Crow CreationsがSteamを通じて発売した「Enter The Backrooms」(2021年)である[1]。こちらはストーリーやエンディングは存在しないものの、キャンペーンモードは2022年3月時点で8階(ステージ)まで実装されている[1]。同作は、先人の残した物品やメモなどを拾いながら探索するローグライクに近いシステムを採用している[1]。4Gamer.netの早苗月 ハンバーグ食べ男は、この作品のグラフィックが安っぽいものの積極的なアップデートで階層が増えていて、物量作戦のようで面白いと述べている[1]。
2023年2月には、「バックルーム探索支援シミュレーター」というTwineで作成されたゲームブックが公開された[14]。数日後には、別の作者から日本版の階層に対応したのも公開されている[15]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k Inc (2022年3月15日). “あなたは黄色い部屋,好きですか? この世界から“noclip”して「The Backrooms」で超常的存在と楽しく遊ぼう!”. 4Gamer.net. Aetas. 2022年3月15日閲覧。
- ^ “/x/ - Paranormal » Thread #22661164”. archive.4plebs.org. 2022年2月13日閲覧。
- ^ “The Backrooms: an eerie phenomenon lies behind these familiar hallways” (英語). Happy Mag (2021年8月3日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ “Lista poziomów”. 2022年12月9日閲覧。
- ^ “16歳監督によるオカルト短編映画が1300万再生を記録 “黄色い異空間の部屋”に世界が熱狂”. ねとらぼ (2022年2月9日). 2022年3月15日閲覧。
- ^ (日本語) The Backrooms (Found Footage) 2022年2月13日閲覧。
- ^ “'The Backrooms' Is the Viral Horror Short Shaking the Internet Up” (英語). No Film School (2022年2月1日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ “See Attack on Titan Through the Eyes of Backrooms Director Kane Pixels” (英語). Otaku USA Magazine (2022年2月7日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ “'The Backrooms' Is A Found Footage Nightmare Freaking Out The Internet” (英語). Dread Central (2022年1月14日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ Johnson, Astrid (2019年8月16日). “Reviews Roulette: The one with Tony Hawk on a unicycle” (英語). Rock, Paper, Shotgun 2022年2月13日閲覧。
- ^ S, Michael L. (2020年4月30日). “‘The Backrooms Game’ Brings a Modern Creepypasta to Life [What We Play in the Shadows]” (英語). Bloody Disgusting!. 2022年2月13日閲覧。
- ^ “Test Your Nerve With This Eerie Title – The Backrooms Game” (英語). GuruGamer.com (2019年8月12日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ Zamora, Gabriel (2019年8月12日). “The 15 Best Free Steam Games” (英語). PCMag Australia. 2022年2月13日閲覧。
- ^ “バックルーム探索支援シミュレーター”. Backrooms Japan. 2023年2月7日閲覧。
- ^ “バックルーム日本版探索支援シミュレーター”. JapaneseNomad. 2023年2月7日閲覧。
関連項目
- クリーピーパスタ
- きさらぎ駅
- Local 58
- 紙葉の家
- インザバックルーム syudouの曲。PVや歌詞がThe Backroomsを彷彿とさせる。
- SCP財団 ホラー系のシェアードワールド作品。SCP財団も元は一枚の芸術作品にストーリー性を生み出し、シェアードワールドにまで派生していった。