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ストロベリーポルノシリーズ

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ストロベリーポルノシリーズ』とは、1980年代前半に光栄マイコンシステム(現コーエーテクモゲームス)が8ビットパソコン向けに発売したアダルトゲームのレーベルである。本項では同レーベルよりリリースされた『団地妻の誘惑』(だんちづまのゆうわく)・『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』(オランダづまはでんきウナギのゆめをみるか)に加え、『ナイトライフ』の3作品について詳説する。

シリーズ

『団地妻の誘惑』・『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』の2作品がこのレーベルで発売された[1][2]。この2作品は、それ以前に発売されたアダルトソフト『ナイトライフ』と合わせて「光栄アダルト三部作」とも呼ばれている[3]。ただし『ナイトライフ』は『ストロベリーポルノシリーズ』には含まれない[4]。これら3作が発売された当時、襟川陽一(2017年現在はコーエーテクモゲームスの代表取締役社長、「シブサワ・コウ」という同社の共有名義を用いることもある)が光栄のトップを務めていた[5]

この3作品について、アダルトゲームを批評した書籍『超エロゲー』・著者の多根清史は「シブサワ・コウB面」と表現している[6]。『永久保存版 80年代マイコン大百科』の著者・佐々木潤によれば、2017年現在において、これら3作品を発売した事実は社史上封印されているとしている[7]。一方で、2000年にリリースされた書籍『美少女ゲームマニアックス』内では、光栄がこれらのアダルトゲームをリリースした過去を特に秘匿しておらず、PCゲーム雑誌『ログイン』で触れられたことがあると指摘されている[8]。なお、光栄はこれらの作品の他にも、エニックスから発売された『ロリータ・シンドローム』の続編にあたるアダルトゲーム『マイ・ロリータ』を発売している[7]

ナイトライフ

画像外部リンク
『ナイトライフ』・『団地妻の誘惑』の商品カタログ - ウェブアーカイブarchive.is、2019年1月13日)

『ナイトライフ』は、1982年4月に光栄マイコンシステムが発売したアダルトソフトである[9][10]FM-7/8およびPC-8801版はカセットテープ媒体で、PC-9801版で8インチ2Dもしくは5インチ2DD媒体でそれぞれ販売された[10]日本ファルコムによる『女子大生プライベート』やアスキーによる『Emmy』同様、美少女ゲーム黎明期にPCソフト製造企業がリリースした作品の1つである[9]

本作は夜の夫婦生活をサポートするためのユーティリティソフトという位置づけで、安全日の計算や最適な性交体位の算出(「今日の体位」)[11]、射精に至るまでの時間、体位を記録する機能[10]があった。安全日はオギノ式によって算出される[10]。「今日の体位」の決定者は男性・女性・パソコンの3通りが選択可能で[12][13]、プレイヤーが選ぶ場合には8つの質問に回答することで体位が決定される[14]。体位はシルエットで画面に表示され、設定した所要時間が終了すると画面が暗転し終了となる[14]

いわゆる美少女ゲーム[15]、アダルトゲームの草分け的作品に位置付けられることもあり[7]、2000年にリリースされた歴代の美少女ゲームを収集し批評した書籍『パソコン美少女ゲーム歴史大全1982‐2000』[16]や『美少女ゲームマニアックス』[8]などで日本製アダルトゲームの元祖と紹介されている。一方で、2016年にリリースされたパソコンゲーム誌の編集者・前田尋之による『ぼくたちの美少女ゲーム クロニクル』[17]および2017年にリリースされた宮本直毅による『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』[18]ではハドソンの『野球拳』が日本初のアダルトゲームとされている。とりわけ、前田尋之は『野球拳』が日本初のアダルト「ゲーム」であるのに対し[17]、本作は日本初のアダルト「ソフト」であると位置づけている[10]

評価

このゲームの評価について、長崎大学医学部の教授が光栄に感謝の手紙を送ったというエピソードがある[19]。一方で実用性に関しては懐疑的なコメントも存在する。『超エロゲー』の著者・多根は「ベッドの横にパソコンを置き、指示されるメニューを淡々とこなすダンナサマを、オクサマはどんな目で見るんでしょうか。」とコメントし[13]、パソコンゲーム誌の編集者である前田尋之もゲームの実用性について疑問符を付けている[10]キルタイムコミュニケーションが発行していた中古ゲーム専門誌『ユーズド・ゲームズ』で記事を連載していたライターの大澤良貴は『美少女ゲームマニアックス』に寄せた記事の中で体位の決定をゲームに任せるのはお節介であると述べ、性的なグラフィックを実用的な形態で収録したことについて「実に回りくどい手法のエロゲー」であると表現した[8]

なお、前田の公式サイト「電脳世界のひみつ基地」でライターを務める松田によれば、本作は他のアダルトゲームなどと比較して一風変わった内容と指摘されており、アダルトゲームの前例が無い中で制作側のおふざけや手探りで制作されたものではないかと推察している[12]。一方、宮本直毅はゲーム冒頭の「今日の体位」を決定するシステムには「選択肢進行のゲームに通じるところがある」と評し、ゲーム性が垣間見えると指摘した[14]

団地妻の誘惑

『団地妻の誘惑』は、1983年6月に光栄マイコンシステムによって発売された[20]シミュレーションゲームである[21]。『ストロベリーポルノシリーズ』の1作目に当たる[21]。FM-7/8、MSX、PC-8801版はカセットテープ媒体で、PC-9801版で8インチ2Dもしくは5インチ2DD媒体でそれぞれ販売された[20]

セールスマンの主人公が団地に住む女性に避妊具を売り込み、会社が設けたノルマを達成しなければならないという設定である[21][22]。主人公には各種ステータスが設定されており、精力や男性シンボルの角度などもステータス化されていた[4][20]。ゲーム開始時にこれらのパラメータをルーレット方式で決定する、『信長の野望』と同様の手法が採用されている[23]。プレイヤーは主に移動・交渉・戦闘といったコマンドを入力することでゲームが進行し[24]、主人公は3Dのダンジョン形式で描画された建物内を移動する[5]。主人公が女性宅を訪問する度に精力のパラメータが増えるシステムで、100を超えると性交渉に移ることができるが、時には女性側から性交渉を迫られることもある[4]。一方で、ニューハーフの部屋を訪問するとレイプされたり、団地の廊下などで幽霊やチンピラが登場したりと、セールスの妨害を行うゲーム要素もある[4][20]。また、手に入れると知性のパラメータが下がってしまうパソコン雑誌のアイテムも登場し[20][21]、これらの敵やアイテムはランダムで配置が決定するシステムとなっている[21]。Hシーンでは交渉相手と主人公それぞれの快感度を示すグラフが描画され、それを基にキーで操作して相手を先に絶頂に至らせることが出来ればクリアとなる[5]。発売当時アダルトゲームへの規制が無かったものの、性行為中のシーンには「パソリンカット」という文字で検閲が入った[21]

評価

ゲーム中に女性キャラクターのヌードシーンは登場しないが、独自性の強いアイデアと自由度の高さから、ゲーム性自体も高く評価されている[23]。プレイごとに主人公のパラメータを変更できる点、エロティシズムとゲーム性が両立された作風のため、長く遊べるロングセラー作品として愛好されていた[23]

その一方、『超エロゲー』の著者・多根はゲームの設定に関して「80年代の日活ポルノをうろ覚えしてコピーしたようなご機嫌さ」と批評している[4]。前田尋之の公式サイト「電脳世界のひみつ基地」上でライターの松田は、バカゲーではあるがゲーム難易度は高いとし、ただ下心の赴くままに行動しているとゲームをクリアできない点について「この妙なリアルさが悔しくて、ついついもうワンプレイしたくなってしまうのが憎い」と評した[21]。宮本直毅はプレイヤーが操作するHシーンのゲームシステムを肯定的に評価し、3Dダンジョン形式は1981年にリリースされた『ウィザードリィ』の影響を受けていると指摘した[5]

本作はフロッピーで7,800円(8インチ2D)もしくは6,800円(5インチ2DD)、テープは4,800円で販売されており[20]、『パソコン美少女ゲーム歴史大全1982‐2000』に収録された、美少女ゲーム作品の価格相場を批評する記事の中で、黎明期の代表例として『団地妻の誘惑』が取り上げられている[25]。その中で、ライターの紀田伊輔はプラットフォーム間での互換性がなかった時代に機種専用版のゲームソフトを制作せざるを得なかった時代背景に触れつつも、データ容量が1MBにも満たないわりにはフロッピー版の価格設定が割高であると指摘している[25]

オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?

画像外部リンク
「ストロベリーポルノ第二弾」というキャッチコピーと共に掲載された広告 - ウェブアーカイブarchive.is、2019年1月13日)

『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』は、1984年11月に光栄マイコンシステムによって発売された[26]。ジャンルとしてはロールプレイングゲームアドベンチャーゲームに分類される[1]。FM-7版はカセットテープ、5インチ2D、3.5インチ2DD媒体で、PC-9801版は5インチ2DD媒体で、PC-8801版はテープもしくは5インチ2D媒体でそれぞれ販売された[20]。タイトルの元ネタはフィリップ・K・ディックの長編SF小説アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』である[5][13][16][26][27]。リリース当時、光栄の社長だった襟川陽一がゲーム中に収録されているグラフィックスの制作も手掛けた[27]

私立探偵である主人公が火星から脱出し人間になりすましたダッチワイフ「北極6号」3体を捜索する設定となっており[5]、プレイヤーは聞き込みや調査の過程で性行為に及ぶことが出来る[26]。上述した『団地妻の誘惑』・『信長の野望』と同じく、主人公のパラメータをルーレットで決定するシステムをとっており、プレイヤーはマップ画面上に表示される主人公を操作して移動し、画面に表示されているキャラクターと会話を行うことで情報を入手する[1]。マップ内の店に入るとアドベンチャー画面に移行し、コマンドを選択してゲームを進めていくことになる[1]。プレイヤーは性行為を行うことでダッチワイフと人間を判別できるが、無防備の状態でダッチワイフとセックスすればすぐさま射精へ至りゲームオーバーとなるため、登場するアイテムなどを利用して攻略する必要がある[5]

評価

主人公が街中でナンパする設定となっているが、警官にも性交を迫れるシステムとなっており、『超エロゲー』の著者・多根は「マンガ『デトロイト・メタル・シティ』を20年以上も先取り」した内容と評価し、襟川の発想力に脱帽している[13]。前田尋之はタイトルの元になった『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を踏まえた上で、本作は「SFというより『すこしふしぎ』なゲーム」と形容した[20]。宮本直毅は作品の内容に関しても「念の入ったパロディ」と表現した上で、平面マップを移動するシステムについて1979年にリリースされた『ウルティマ』による2Dフィールド型RPGの流れを汲んでいるとした[5]

脚注

  1. ^ a b c d 『アソコン 2』, pp. 10 - 13.
  2. ^ 宮本 2017, p. 21.
  3. ^ 木谷誠 (2017年8月10日). “あの超有名なメーカーが「エロゲー」を作っていた!? 「エロゲー」が世間にナニをもたらしたか”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). オリジナルの2019年1月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190113095411/https://ddnavi.com/news/392936/a/ 2019年1月13日閲覧。 
  4. ^ a b c d e 多根 2006, p. 10.
  5. ^ a b c d e f g h 宮本 2017, p. 24.
  6. ^ 多根 2006, p. 9.
  7. ^ a b c 佐々木潤 (2017年7月19日). “ホビーユースとして第一線で活躍した「PC-8801シリーズ」の後期モデルと、シミュレーションゲームの雄「光栄」”. AKIBA PC Hotline! (インプレス). オリジナルの2017年10月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171016072918/https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/retrosoft/1069592.html 2019年1月13日閲覧。 
  8. ^ a b c 大澤 2000, p. 66.
  9. ^ a b 「今だから振り返ってみたい美少女ゲームの世界 1981 - 2016 美少女ゲームの歴史① 黎明編」, 『月刊ゲームラボ 2016年6月号』, pp. 65 - 66.
  10. ^ a b c d e f 前田 2016, p. 8.
  11. ^ 『アソコン 1』, p. 47.
  12. ^ a b 松田 (2019年1月10日). “とんがりギャルゲー紀行 第61回:ナイトライフ”. 電脳世界のひみつ基地. チアソル. 2019年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月24日閲覧。
  13. ^ a b c d 多根 2006, p. 11.
  14. ^ a b c 宮本 2017, p. 22.
  15. ^ Jones 2005, p. 295.
  16. ^ a b はまぐち 2000, p. 74.
  17. ^ a b 前田 2016, p. 6.
  18. ^ 宮本 2017, pp. 18 - 19.
  19. ^ 『光栄ゲーム用語事典』, p. 188.
  20. ^ a b c d e f g h 前田 2016, p. 10.
  21. ^ a b c d e f g 松田 (2017年11月9日). “とんがりギャルゲー紀行 第2回:団地妻の誘惑”. 電脳世界のひみつ基地. チアソル. 2019年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月10日閲覧。
  22. ^ 多根 2006, pp. 9 - 10.
  23. ^ a b c 『アソコン 1』, pp. 14 - 17.
  24. ^ 宮本 2017, p. 23.
  25. ^ a b 紀田 2000, p. 78.
  26. ^ a b c 前田 2016, p. 15.
  27. ^ a b 『光栄ゲーム用語事典』, p. 72.

参考文献

関連文献