座間9人殺害事件
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座間9人連続殺人事件 | |
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場所 | 日本・神奈川県座間市緑ケ丘[1] |
日付 | 2017年10月31日(発覚)[2] |
死亡者 | 若い男女9人[2] |
容疑 | 男(事件当時27歳、職業不詳)[3] |
対処 | 警視庁が逮捕[3] |
影響 | 国会閣議で再発防止策を検討[4] |
管轄 | 警視庁高尾警察署[1] |
座間9人連続殺人事件(ざま くにんれんぞくさつじんじけん)は、2017年(平成29年)10月31日に発覚した[注釈 1]死体遺棄事件[2]。
神奈川県座間市緑ケ丘の当時27歳の男が住むアパート室内で、若い女性8人、男性1人の、計9人とみられる複数人の遺体が見つかっている。殺害、遺体損壊を行った期間は8月22日から10月30日までの期間で、全て遺体が発見された室内で行われたとみられている[5] 。
事件の概要
以下では事件当時27歳だった男が逮捕された後の供述により明らかになった事件の全容を時系列に沿って記述する。
現場アパート入居以前
逮捕された当時27歳の男は座間市の一戸建て住宅で幼少期を過ごし、おとなしく目立たない存在で、両親、妹と4人家族だったが事件発覚の数年前に母親、妹と別居し父親が1人で自営業を営んでいた[6]。事件より少し前までは東京都新宿区歌舞伎町にある職業紹介会社で風俗店などに女性を派遣する仕事をしており[6]、2017年2月には職業安定法違反の疑いで茨城県警に逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定していた[7][8]。
この判決以降はほとんど仕事をしておらず、後に「楽して生活したかった」などと供述している[8]。
また、男はTwitter(ツイッター)上で「首吊り士」を名乗るほか、複数のtwitterアカウントを保有しており、「首吊り士」のアカウントでは自殺志願者に方法などを助言するような投稿や、「死にたい」と投稿したアカウントに対して個別にメッセージを送るといったことをしており、積極的に自殺志願者たちと連絡を取り合っていたようであった[9]。
現場アパートへ入居、殺害の開始
男は遺体が発見された現場の座間市緑ケ丘の小田急小田原線の線路に面した木造2階建てアパートの一室[5]を8月18日に賃貸契約[10]し、同月22日に入居した[8]。このアパートは賃貸契約の際に口座に一定額を所持している必要があり、そのため最初の犠牲者となった神奈川県の20代女性に50万円を振り込ませたことを被疑者は供述している[8]。また、アパートの入居手続きは父親が済ませたが、その際はとても慌ただしい様子だったとアパートの管理人は語っている[5]。
この間に男はインターネット上の自殺サイトなどを利用したり、インターネット上で自殺の道連れを求める書き込みを行った女性と知り合った可能性がある[5]。また、9人の大半とは「Twitterで知り合った」と供述している[2]。
男は複数のツイッターアカウントを保有しており、そのうち「首吊り士」を名乗ったアカウントでは自殺志願者に方法などを助言するような投稿を盛んに発信し、また「死にたい」と投稿したアカウントに対しては個別にメッセージを送るなどしており[9]、積極的に自殺志願者たちと連絡を取り合っていた様子があった[9]。自殺志願者に対しては自殺前に家族や友人、SNSに連絡をしないことを勧めることもしていた[9]。そして、男はTwitterで自殺幇助を称しつつ自殺志願者と接触しており、相手を殺害後は新たな自殺志願者を装う目的で複数のアカウントを使い分け、相手を次々に誘い出していた可能性がある[11]。
解体に用いた道具として男はのこぎりなどを準備しており[12]、これをアパート入居前に遺体の解体準備として事前に購入していた[12]。遺体の切断方法についてもスマートフォンを利用して検索し調べていた[12]。
その後、8月22日に同アパートに入居して以降、Twitterでメッセージを送った女性らを自宅に招き入れ[2]、睡眠薬や酒を飲ませた後に殺害した[8]。殺害方法については「ロフトから垂らしたローブで首をつった」などと供述している[2]。また、殺害した被害者の言動として「本当に死のうと考えている人はいなかった」とも話しているという[2]。
1人目の被害者は女性であり、2人目は男性を殺した、と男は後に供述している[13]。この1人目の女性犠牲者と2人目の男性犠牲者はカップルであり、8月末に1人目の女性を殺害、その後、女性を捜していた交際相手の男性に女性の行方を尋ねられ、警察への事件発覚を恐れて部屋に誘い込み殺害した[13]。また、1人目の殺害後には新たな準備として女性や箱の拘束に使ったとしている結束バンドなどを購入していた[14]。
遺体の解体は室内で行っており「浴室で解体、遺体の肉と内臓はゴミとして捨てた」と供述し[1]、また殺害と遺体の損壊目的についても「私が殺害し、その遺体を証拠隠滅の意図でやったことに間違いありません」と供述している[5]。遺体の切断そのものについては負担であったことも併せて述べている[12]。
最後の被害者の動きと逮捕まで
最後の八王子市内の被害者女性は、10月21日に勤務先の福祉作業所の同僚が女性宅を訪れて面会した[15]のを最後に行方不明となっていた[16]。同月23日にJR八王子駅と、男が賃貸した現場アパートに近い小田急小田原線相武台前駅の防犯カメラに2人が共に撮影されている[5]。
翌24日に被害者の兄が警視庁高尾警察署に捜索届を提出し[16]、これ以降同署は捜査を開始していた[1]。また、同日中に兄はTwitterに被害者の状況を説明した[16]。このとき、逮捕時に囮役を行った女性が兄に対しTwitter上で情報提供している[16]。
10月30日になり、兄に情報提供した女性が男を誘い出し[6]、その間に男の賃貸したアパートに踏み込んだ捜査員が室内で遺体の一部が入っていた多数のクーラーボックスを発見[17]。翌日31日に男を死体遺棄容疑で逮捕した[1]。
室内にはクーラーボックス3つ[12]、大型の収納箱4つ[12]など8つの箱があり、1つは空で、残りの7つにバラバラに解体された遺体が入っており、一部は腐乱していた[1]。発見された遺体の部位は9人の頭部のほか、約240本の骨があった[12]。また、このとき室内から被害者名義のキャッシュカードや女性用の靴、カバンが複数発見されていた[2]。箱から発見された遺体にはネコのトイレ用の砂が被せられており、これは後に証拠隠滅のために行った行動だったことを男は認めている[18]。
また、発見された1つの空箱[注釈 2]について、男は犯行のたびに箱を準備していたことを供述しており、この空箱は10人目の被害者を狙う計画のために準備されていたと警視庁はみている[14]。
遺体の切断などに使用した道具類を捨てずに持っていた理由については事件発覚を恐れて捨てられず保管していたもの、とみられている[12]。
逮捕後
逮捕後の尋問にて、男は被害者の年齢層について「10代後半4人、20歳くらい4人、20代後半1人」[19]、殺害時期を「8月に1人、9月に4人、10月に4人」[19]、部屋に置いてあった冷蔵庫の内部から血液反応が出たことについては「1人目と2人目は解体に時間がかかり冷蔵庫に入れたが、3人目以降は入れていない」と供述している[20]。
2017年11月6日には最後の被害者の身元が判明し警視庁は同日発表、残る被害者8人についても、同月9日までに遺体の鑑定に家族の協力を経てDNA型鑑定を使用し全員の身元が判明、それぞれが1都4県の15 - 26歳の男女だった[2]。身元の特定にはDNA型鑑定以外に、現場から見つかった身元を示すカード類などを併用した[2]。
影響
事件後多くの海外メディアが報道した。
韓国では、KBSテレビや京郷新聞が「猟奇殺人」、「アパートの一室で何が」と報道した[21]。アメリカでは、ニューヨーク・タイムズは「連続殺人犯か」と報道し、AP通信は相模原障害者施設殺傷事件などを引き合いに出し、「日本は世界有数の治安が保たれた国だが最近、注目を集める事件が起きている」と報道した[21]。
事件に使用されたSNSのTwitter(ツイッター)を運営するTwitter社の日本法人は2017年11月7日に運用ルールに新項目を追加し、「自殺、自傷行為をほのめかす投稿を発見した場合は助長や扇動を禁じます」との文言を追加したことを明らかにした[22]。違反があればツイートの削除やアカウント凍結の措置を取るとしている[22]。
日本政府
2017年11月7日には厚生労働相の加藤勝信が閣議後の会見で当事件に言及、「インターネットがきっかけになった」とした上で[23]、ICT(情報通信技術)を活用し自殺予防策を強化する考えを示した[24][注釈 3]。
また同月10日午前には「SNSを利用した犯罪の再発防止策を強化するための関係閣僚会議」を開催し、年内にツイッターの規制検討も含めた再発防止策をまとめる方針で、「事件の全容解明と関係省庁の情報共有」「および自殺に関する不適切なサイトや書き込みの対策強化」「インターネットで自殺願望を発信する若者の心のケアの対策充実」の3点を官房長官の菅義偉は指示し、また菅は同席上で「政府一体の対策強化と再発防止の徹底」を強調した[4]。
脚注
注釈
出典
以下の出典で記事名に被疑者の実名が使われている場合、その箇所を××で表記する。また、被害者名は○○とする。
- ^ a b c d e f 深津誠; 春増翔太; 山本佳孝 (2017年10月31日). “座間死体遺棄:アパートに9遺体、容疑の27歳男を逮捕”. 毎日新聞 (毎日新聞社). オリジナルの2017年10月31日時点におけるアーカイブ。 2017年10月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “座間9遺体、1都4県の15~26歳と確認 警視庁発表”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年11月10日)
- ^ a b “【座間複数遺体】室内に9人分の頭部と大量の骨、27歳男を逮捕 肉や内臓は「ごみとして捨てた」(1/2ページ)”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2017年10月31日). オリジナルの2017年10月31日時点におけるアーカイブ。 2017年10月31日閲覧。
- ^ a b “政府、ツイッター規制検討=座間9遺体事件で年内に再発防止策”. 時事通信社 (2017年11月10日). 2017年11月10日閲覧。
- ^ a b c d e f “神奈川 座間のアパートで複数遺体 男逮捕へ 警視庁”. NHKニュース (日本放送協会). (2017年10月31日). オリジナルの2017年10月31日時点におけるアーカイブ。 2017年10月31日閲覧。
- ^ a b c “座間9遺体 「男に心当たりある」別の女性証言で発覚”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2017年10月31日)
- ^ “【座間9遺体】××容疑者「このスカウトに注意!」とネットに顔写真 入居急ぎ、直後から異臭”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2017年11月1日). オリジナルの2017年11月1日時点におけるアーカイブ。 2017年11月1日閲覧。
- ^ a b c d e “座間9遺体 入居費用振り込ませる 最初の被害女性に”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2017年11月6日) 2017年11月9日閲覧。
- ^ a b c d “××容疑者「首吊り士」名乗りSNS投稿 座間9人遺体”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年11月2日). オリジナルの2017年11月5日時点におけるアーカイブ。 2017年11月5日閲覧。
- ^ “座間 9人遺体 管理会社「容疑者は入居急いでいた」”. NHK NEWS WEB (2017年11月1日). 2017年11月6日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “「首吊り士」SNSで名乗る 座間9遺体”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2017年11月2日)
- ^ a b c d e f g h “××容疑者「遺体切断、負担だった」 発覚恐れて保管か”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年11月9日) 2017年11月9日閲覧。
- ^ a b “「カップルの女性 最初に殺害」 座間9遺体 容疑者「捜しに来た男性も」”. 東京新聞WEB (中日新聞社). (2017年11月1日)
- ^ a b c “10人目狙う計画か、容疑者アパートに空箱 9遺体事件”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2011年11月8日)
- ^ 深津誠; 春増翔太; 山本佳孝 (2017年10月31日). “座間死体遺棄:アパートに9遺体、容疑の27歳男を逮捕”. 毎日新聞 (毎日新聞社). オリジナルの2017年10月31日時点におけるアーカイブ。 2017年10月31日閲覧。
- ^ a b c d “明らかになった遺体が発見されるまでの経緯 兄がネットで追跡しアパートを突き止めた”. 読売新聞(東洋経済オンライン) (東洋経済新報社). (2017年11月1日). オリジナルの2017年11月5日時点におけるアーカイブ。 2017年11月5日閲覧。
- ^ 深津誠 (2017年10月30日). “死体遺棄容疑:男自宅に複数?遺体 八王子の不明女性か”. 毎日新聞 (毎日新聞社). オリジナルの2017年10月31日時点におけるアーカイブ。 2017年10月31日閲覧。
- ^ “9遺体発見、××容疑者(27)を逮捕「殺害した遺体を証拠隠滅、間違いない」”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2017年10月31日)
- ^ a b “【座間9遺体】被害者「10代後半が4人、20代は5人」 殺害「8月に1人、9月に4人、10月に4人」××容疑者が供述”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2017年11月1日). オリジナルの2017年11月1日時点におけるアーカイブ。 2017年11月1日閲覧。
- ^ “冷蔵庫に遺体保管か=「2人入れた」血液反応-アパート9遺体・警視庁”. 時事ドットコムニュース (時事通信社). (2017年11月4日) 2017年11月5日閲覧。
- ^ a b “男のアパートに自殺願望?女性ら9遺体 遺棄容疑で逮捕”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2017年11月1日). オリジナルの2017年11月5日時点におけるアーカイブ。 2017年11月5日閲覧。
- ^ a b “自殺助長の禁止明記=ツイッター社、9遺体事件受け”. 時事ドットコムニュース (時事通信社). (2017年11月7日)
- ^ “ネット上の自殺対策強化を 加藤勝信厚生労働相、座間の事件受け”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2017年11月7日)
- ^ a b “政府、自殺対策に情報通信技術活用へ 9遺体事件受け”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年11月7日)