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アクセシビリティ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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アクセシビリティ: accessibility)とは、近づきやすさやアクセスのしやすさのことであり、利用しやすさ、交通の便などの意味を含む。国立国語研究所外来語」委員会は日本語への言い換えとして「利用しやすさ」を提案している[1][注釈 1]。現代では、広い種類の利用者が製品や建物、サービスなどを支障なく利用できる度合いを指していることが多い。英語本来のアクセシビリティは、ノーマライゼーションの推進の理念から社会のすべてに適用される意味合いがある。日本でのバリアフリーがこれにあたる。

IT分野では、使いやすさや利用しやすさを意味するユーザビリティに近い意味として使われることが多い。この場合、技術に依存せずさまざまな情報端末やソフトウェアから利用できることを目指している。

障害のある人の権利条約ができ、以来しばしば、車椅子の人が利用しやすい建物であるかとか、コンピュータの画面を読み上げるスクリーンリーダーなどの技術を利用している人が利用しやすいウェブのサービスであるかといった、議論がなされる。そのため身体機能が低下しがちな高齢者もその対象とされることが多い。

日本では、「アクセシビリティに配慮する」とか「アクセシビリティを高める」といった表現で用いられる。


ウェブページにおけるアクセシビリティ

ウェブページにおけるアクセシビリティは、高齢者障害者、また異なる情報端末やソフトウェアにおいても、情報を取得あるいは発信できる柔軟性に富んでいること(あるいはその度合い)を意味する。公共サービスでは、障害があっても知る権利を保障する情報保障によって重要となる。

またウェブではコンピュータが情報を判別できることも重要である。検索サイトを作るためのクローラによって効率的に解読されたり、ソフトウェアが情報を判別するのに役に立つ。

ウェブページには、閲覧するためのウェブブラウザを指定したり、解像度を指定したデザイン、またJavaScriptMacromedia Flashのような技術を使用したものがあるが、代替の情報を加えることによって異なる環境でも情報を取得することが出来る。障害者用のソフトウェアは、ウェブページの情報を音声点字によって出力するが、代替情報がない場合に情報が取得できない場合がある。

障害者のインターネット利用状況
障害者のインターネット利用状況は、「利用している」53.0%、「利用していない」46.9%である。障害種別にみると、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由では「利用している」がそれぞれ91.7%、93.4%、82.7%、知的障害では、「利用していない」53.0%である。(総務省, 2012)

アクセシビリティに配慮するためのリニューアルの費用を抑えるため、不自由のある人の使用性を高めるプラグインやASPサービスも普及している。HTMLレベルでのアクセシビリティの実装に膨大な費用が掛かる場合、暫定的な方法となりえる。

いくつかのガイドラインが策定されている。

ウェブに関する主要な国際機関であるWorld Wide Web Consortium(W3C)より、ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)が策定されている。これは1999年にバージョン1.0(WCAG 1.0)が、2008年にバージョン2.0(WCAG 2.0)が策定されている。WCAG 2.0は、2012年10月には国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の技術標準の「ISO/IEC 40500:2012」となっている。

日本工業規格(JIS)のウェブアクセシビリティ

日本工業規格の「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」の規格は、基本規格、共通規格、個別規格の3層構造である。ウェブコンテンツは個別規格の第3部である

日本では日本工業規格(JIS)により企画されている。2004年6月20日にJIS X 8341-3が公表された。

  • X 8341-3:高齢者・障害者等配慮設計指針—情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス—第3部:ウェブコンテンツ

これは一般的にWebコンテンツJISと呼ばれる。2010年8月20日にJIS X 8341-3:2010となり、国際基準のWCAG 2.0とも整合して改訂されている。改訂前と同様に、知覚可能性、操作可能性、理解可能性、堅牢性の4つの原則に整理され、61個の基準が示されている。

ここでの用語、ウェブコンテンツとは、ウェブブラウザ、支援技術などのユーザエージェントによって利用者に伝達されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指す。日本工業規格の情報処理部門が、主に高齢者、障害のある人および一時的な障害のある人に対して、ウェブコンテンツを知覚し、理解し、操作できるようにするためにウェブコンテンツを、制作し検証するために 配慮すべき事項を指針として明示したものである。

JISへの準拠は基本的に任意であるが、工業標準化法の第67条では「国及び地方公共団体は、鉱工業に関する技術上の基準を定めるとき、その買い入れる鉱工業品に関する仕様を定めるとき(中略)日本工業規格を尊重してこれをしなければならない」とあり、尊重義務が発生する。

ウェブアクセシビリティが実現してゆくこと

言語障害など、視力聴力発声といったコミュニケーション上の障害や、運動障害による情報格差を軽減する。これまでになかった多様なコミュニケーションが可能となりえる。

アクセシビリティを向上させることで機能が低下することにも注意が必要である。システムの即応性や、多機能化が必要な場合に、同等の代替手段としてアクセシビリティにも考慮される。特に、人命に関わる情報提供などで議論されてきている。

ウェブサイトから公的な情報を取得できるようになる。技術の発展によって他者の介助に依存することなく、情報の取得と発信の可能性を拡げる。そのことから期待される。

視覚障害:失視
スクリーンリーダーあるいは音声ブラウザと呼ばれる支援技術を用いる。音声認識合成音声による音訳への対応が課題となる。なお、印刷物に対して光学文字認識(OCR)を行い音声化する方法では、枠線などで読めない場合が多い。
視力障害:重度弱視
重度弱視 (ロービジョン)では、文字拡大の手段と、場合により音声の手段とを使い分ける事が多い。コンピュータ上では画面をルーペで拡大する場合と、ソフトウェアで拡大する場合がある。文字の大きさが小さいと特に読みづらさが増すので、大きめに設計してほしいという当事者もいる。なお、印刷物では拡大読書器などモニターに拡大表示を行う装置が存在する。
音声による手段については、失視と同様である。
聴覚障害
電話の使用が不自由なため、文字が扱えればハンディは軽減される。問い合わせ先には、キー入力が見学習の人を対象としてファクシミリの番号の掲載があると望ましい。
上肢運動障害
ウェブページ上で操作上の工夫があれば、スイッチやリンクからの閲覧や移動が可能である。
盲聾
全盲聾(ぜんもうろう)では、点字ディスプレーは優れているが高価すぎ、また文字数などレスポンスは良いとはいえない。介助通訳者が閲覧をアシストし説明しやすいサイト構造、また見出しが短く工夫されてゆくと良いようにみえる。

同じように主に文字を用いたユーザーインターフェースの2つのスクリーンショット。上のものは赤、緑、青を使用している。下のものは赤と緑にほぼ同じ色を使用しているもので、赤い文字は緑の背景の中でほとんど見えなくなっている。
赤緑色覚異常が視認性にどう影響するかを示しているスクリーンショット

望まれる方法

  • 画像への代替テキスト。(<img alt="画像が見えない場合の説明" />
  • 重複する表記の省略:タイトルやメニューの一覧などを、スクリーンリーダー音声ブラウザでジャンプする。(<a href="#mainText">本文へジャンプ</a>・・タイトル・メニュー・・・<a id="mainText">本文</a>)
  • リンクの範囲を大きく( tabindex や、アクセスキーの使用)
  • 文字サイズの可変性:文字の大きさを特殊なソフトを使用しなくても拡大できる。文字の大きさを絶対サイズではなく、相対サイズで定義すれば、汎用ブラウザで拡大ができる。
  • スタイルシートの解除や、ユーザスタイルシートに対応した属性の定義。
  • 色覚異常(第一、第二、第三、全色盲)への配慮を可能な限りする。赤・緑・黄・水色などにウェブデザイナーが注意する。

課題

アクセシビリティというカタカナの訳語自体が、理解されにくいのではないかという指摘もある。「アクセシビリティ対応」などと書いていても、万人が理解しやすいとはいえない点も考慮する必要がある。

明確な基準がない中で、十分なアクセシビリティを確保していなくても「アクセシビリティに配慮した」という表現を行うケースもある。実情に即した対応を行うには、知識だけのアクセシビリティではなく、障害当事者を交えて改善を行っていく必要がある。

HTMLCSSなどのコーディング規格は、英語圏を中心に標準化されており、日本語の表現をそのままコーディングできない現状もある。

建造物におけるアクセシビリティ

建物と、建物に至る経路において、高齢者や障害者を含む誰もが、支障なく利用できることあるいはその度合いをいう。建物は、建物に至る移動経路等の都市設計上の配慮がなされて初めて利用可能となることから、建物のみでなく建物利用に至る経路を含めてアクセシビリティに配慮することが望まれる。ただし、その過程で、セキュリティの低下を伴うことがあるため、状況によっては新たにバリアが設けられ、結局施設管理者による介助がなければ施設が利用できないような場合もでてくる(例えば、施設内に進入されることが望ましくない自転車などの軽車両やキックボード等の遊具の通行を阻止するために車椅子用スロープに通行禁止用の柵が設けられ施錠されるなど)。バリアフリー新法も参照の事。

サービスにおけるアクセシビリティ

助成制度や補助制度などのサービスを、高齢者・障害者を含む誰もが、支障なく利用できることあるいはその度合いをいう。サービスは、利用による便益が、これを享受するための手間を凌駕してこそ利用価値があることから、サービス利用による便益享受に至るまでがアクセシビリティの評価対象となる。

脚注

注釈

  1. ^ 2006年3月に発表

出典

参考文献

  • 総務省, 2012, 障がいのある方々の インターネット等の利用に 関する調査研究 [結果概要]平成24年6月, 総務省 情報通信政策研究所調査研究部
  • 情報バリアフリーのための情報提供サイト, 2011, 情報アクセシビリティJISの構成<http://www2.nict.go.jp/ict_promotion/barrier-free/103/jis/frame/index.html>(2012年12月23日)
  • 田中正躬編, 2010, 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3 部:ウェブコンテンツ JIS X 8341-3:2010, 日本規格協会

関連項目

外部リンク