コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

顕性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Maulits (会話 | 投稿記録) による 2017年2月8日 (水) 15:11個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (優性の法則から転記 改名提案より)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

トウモロコシの草丈の遺伝の研究(1917年)

優性の法則(ゆうせいのほうそく)は、有性生殖遺伝に関する遺伝学法則であるメンデルの法則の1つ。 形質の現れやすいほう(優性dominant)と現れにくいほう(劣性recessive)がある場合、異なる遺伝子が一個体に共存したとき、優性の形質が表現型として表れること。

一般的な植物動物においては、遺伝子は両親からそれぞれ与えられ、ある表現型について一対を持っている。この時、両親から同じ遺伝子が与えられた場合、その子はその遺伝子をホモに持つから、その遺伝形質を発現する。しかし、両親から異なる遺伝子を与えられた場合には、子は異なる遺伝子を持つが、必ず一方の形質が発現するとき、その形質を優性形質、このような遺伝の性質を、優性の法則という。

2倍体の生物において、性染色体以外の常染色体親と親から受け継いだ対の遺伝子を有する。対立遺伝子をAとaの二種とした場合、子の遺伝型はAA・Aa・aaの3通りがある。Aとaの影響が等しければ子の表現型がAaであったときにAAとaaの中間等になるはずだが、多くの場合そうはならず、一方に偏った表現型となる。この時にAaの表現型がAAと同様の場合、aaの表現型を劣性形質といい、Aはaに対して優性遺伝子、aはAに対して劣性遺伝子という。

対立形質を持つ純系同士の交配で、子の代で片方の性質のみが現れる場合も、劣性が遺伝していないわけではない。孫の代では3:1の割合で両者の性質が現れる。

優性、劣性は表現型としての表れやすさの力関係のことである。形質の優劣という意味ではない。

メチルマロン酸血症常染色体劣性遺伝疾患である。青が健常者、紫が発症しない保因者、赤が発症者。

図のように、両親共遺伝型が優性遺伝子と劣性遺伝子のヘテロ接合型で表現型が優性形質の場合、生まれる子は、遺伝型が両親と同じヘテロになる確率が1/2、優性遺伝子のホモ、劣性遺伝子のホモになる確率がそれぞれ1/4で、表現型が優性形質になる確率が3/4、劣性形質になる確率が1/4である。

ヒトABO式血液型は、A型、B型、O型、AB型の4つとそれらの亜種がある。これは、両親から受け継ぐ、遺伝子の組み合わせを基に決定される。ABO式血液型の対立遺伝子には、A・B・Oの3種類があるが、組み合わせの遺伝型がAAまたはAOになった時にはA型BBまたはBOになった時にはB型OOになった時にはO型ABになった時にはAB型という表現型にそれぞれなる。この時、A型とB型はO型に対して優性形質であり、遺伝子Oが劣性遺伝子、AとBはOに対して優性遺伝子であるが、AとBの間には優劣関係が無い。また、血液型AB型の場合は、A型とB型の中間の形質というより、合わせた(足して2で割らない)形質である。

伴性遺伝の場合、例えば多くの哺乳類では、にはX染色体が1つしか存在しないため、劣性遺伝子があれば必ず形質が発現する。その一方ではX染色体を2つ持つため、その両方に劣性遺伝子が存在しなければ発現しない。したがって、雌雄で形質の発現に差が出る。ヒトの色覚異常などがある。

優性

ある対立形質に着目し、その純系の親世代Pにおいて交雑して出来た一遺伝子雑種に現れる形質優性(ゆうせい)もしくは優性形質、現れない形質を劣性もしくは劣性形質と呼ぶ。 優性遺伝とは、遺伝による形質発現の種類の一つ。「優性」という言葉がそちらの方が優れているかのような誤解を招きやすいことから、近年では顕性遺伝と呼ぶ場合もある。

優れた形質を受け継ぐ、という意味ではなく、次世代でより表現されやすいという意味である。 しかし、優生学のように、この言葉をそのまま優れた形質の意味に使う例もある。このような場合、それは遺伝学の用語とは全く異なるものである。

劣性

劣性(れっせい、: Recessive)は、対立形質において、ある形質が双方の純系同士の交配においては現れない形質のことを指す[1]。その形質のことを劣性形質という。この交配で現れる形質を優性形質と呼ぶ。 劣性形質を支配する遺伝子劣性遺伝子という。

突然変異によって生じた形質は往々にして劣性である。

「劣った性質」という意味ではなく、表現型として表れにくい事を意味する。たとえば品種改良の際などは優れていると認められる形質は往々にして劣性であり、園芸植物などでは往々にして劣性形質の方が喜ばれる。

不完全優性

不完全優性の例。赤花の遺伝子Rと白花の遺伝子rが交配して、ヘテロ接合Rrで中間のピンク色の花となっている。

優劣関係が明瞭ではなく、ヘテロ接合の表現型がホモ接合のそれとは異なる場合、不完全優性という。例えば、赤い花をつける純系品種(RR)のキンギョソウと、白い花をつける純系品種(rr)を交配すると、中間のピンク色の花をつける(Rr)。ピンク色の花を自家受粉させるとRR:Rr:rr=1:2:1 となる。

法則の詳細

初代の両親を優性遺伝子のホモAAと劣性遺伝子のホモaaとすると、次のように遺伝する。

1代目から2代目への遺伝

a a
A Aa Aa
A Aa Aa

2代目から3代目への遺伝

A a
A AA Aa
a Aa aa

2代目は全て、遺伝型はヘテロAaで表現型は優性形質となる。3代目からは優性遺伝子Aを持たないものが出てくるため、劣性形質が現れる。

エンドウの種子の「優性、劣性」

エンドウの対立形質として種子の形が丸いものとしわになったものがある。ただし、丸いものとしわのものの中間の形はないものとする(この例は厳密ではない。)。

親世代として純系の丸いエンドウと純系のしわエンドウを交雑し、雑種第一代の一遺伝子雑種の種子を得ることが出来た。この雑種の種子の形質はすべて丸い形質であった。

したがって、丸い形質が優性形質で、しわ形質は劣性形質であると考えられる。

現代的解釈

現代の知識を以てこれを解釈すれば、大抵の場合、優性の性質はその種の普通の形質であり、劣性のものはそうではなく特殊なものである例が多い。これは、たとえば一遺伝子一酵素説で考えれば分かりやすい。

この説では、遺伝子は酵素の設計図であると見る。その酵素が作れることでその生物はある形質を発現できる。劣性の遺伝子はその設計図が壊れたものと考えれば良い。その遺伝子をもつ生物はその酵素を作れないので、その形質を発現できず違った形になる。これが劣性の形質である。

優性の遺伝子をもつ個体と劣性の遺伝子をもつ個体とが交配すれば、その子は優性遺伝子と劣性遺伝子をヘテロに持つことになる。その体内には正しい設計図と壊れた設計図が共存するので、正しい酵素と壊れた酵素が同時に作られる。その結果、数が少なくはなっても正しい酵素が作られることにより、その形質は発現できることになるであろう。つまり見掛け上は劣性の形質は出現しない。

ヒトの例

体の部位 優性 劣性
虹彩の色
耳垢 湿
波状形 直状毛
二重 一重
巻ける(立つ) 巻けない(立てない)
親指 曲がらない 曲がる
指紋 渦状紋・流状紋 弓状紋
つむじ 右巻き 左巻き

脚注

  1. ^ [1]

関連項目