山本寛 (アニメ演出家)
山本 寛(やまもと ゆたか、1974年9月1日 - )は、日本の元アニメーション監督・演出家。血液型はO型、乙女座。自称ヤマカン。
人物
大阪府箕面市出身。大阪教育大学附属高等学校池田校舎を経て、京都大学文学部を卒業後、京都アニメーションに入社。その後アニメーションDoに移籍し、そこを退社して後は自ら立ち上げた株式会社「Ordet」の代表取締役を務めていた(2016年3月25日辞任)。主に『フラクタル』、『かんなぎ』のアニメーション監督のほか、2010年には『私の優しくない先輩』で実写映画の監督をつとめた。
『らき☆すた』の監督を降板した際に京都アニメーションが社内判断の理由として用いた「その域に達していない」というフレーズを、手がけた作品のセリフやプロモーションに頻繁に用いている。『ケメコデラックス!』オープニング監督を降板した際には、監督の水島努がブログで「山本さんの枕詞」と、書いている[1]。
同姓同名のアニメーター(『ぼくの地球を守って』『愛天使伝説ウェディングピーチ』などの制作進行を務めた人物)とは全くの別人である。
経歴
大学時代
1997年に京都大学アニメーション同好会にて制作した「怨念戦隊ルサンチマン」に監督として関わる。
京都アニメーション時代
卒業後は京都アニメーション本社に入社。入社直後デジタル映像開発室勤務を経て、演出助手や撮影などを経験した後に『POWER STONE』の第10話「夢で見た赤い月」の演出でデビュー。同社の大阪スタジオであるアニメーションDoに移籍。『あたしンち』や『ジャングルはいつもハレのちグゥ』などの演出を二十数話務める。
その後京都アニメーションが元請を開始するとその作品にも山本は各話演出に参加し、2006年に『涼宮ハルヒの憂鬱』のシリーズ演出に就任する。そして2007年の『らき☆すた』ではアニメ初監督に就任するも、「監督において、まだその域に達していない」との社内判断[2]から第4話をもって降板(第5話からは武本康弘が担当)。そして2007年6月23日をもってアニメーションDoを退社し、フリーとなる。
Ordet設立後
2008年、『月刊ニュータイプ』誌上にて大阪市内にアニメ制作会社・Ordet[注 1]を設立したことを発表、設立後はハルフィルムメーカー、A-1 Picturesからの仕事を多く手がけている。また、第一作目の商業実写映画として2010年夏に公開された『私の優しくない先輩』の監督を手掛け、Ordet初の元請作品OVA版『ブラックロックシューター』において監修を担当した。
『私の優しくない先輩』に関して映画評論家の柳下毅一郎や宇多丸からの批評を受け、ブログにおいて山本自身が反論を行った。
2011年1月より自身初めてのオリジナルアニメ『フラクタル』の監督を務めた。失敗すれば引退も辞さないと宣言した[3]。『フラクタル』放送終了後、自身のTwitterで『引退発言』を撤回した[4]。
2012年3月11日新作アニメーションを発表。『blossom』というタイトルと海外のクリエイターとのコラボレーションによる3.11東北震災チャリティプロジェクトとしてショートアニメーションを制作中と発表し、2012年3月24日の東京国際アニメフェア2012にて予告編の映像が発表され[5]、2012年7月号のメガミマガジンに『blossom』の日本版を収録したDVDが付録として収録された。
2013年には戦勇。のアニメの監督を手がけた他、らき☆すたのスピンオフ作品である『宮河家の空腹』の監督を務めている。
2014年オリジナルアニメ『Wake Up, Girls!』の監督を務め、劇中歌や主題歌の作詞も手がけ、2016年までに掛けてシリーズの劇場版やWebアニメを監督を務めた。
2015年10月30日ウルトラスーパーピクチャーズ取締役辞任[6]。
2016年3月25日株式会社Ordet取締役辞任[7]。
2016年8月21日有限会社アグアに所属したとブログで公表(アグアのホームページには記載なし)
2016年9月8日 ツイッター上で行われた自身への呟きに対してブログにて反論した。 一部抜粋。 「彼女らも、ボクの提案に乗って自主的に応募し、プロジェクトに参加した以上は、全く罪がないわけではない。 彼女たちも「共犯」である、と。」 ここでいう彼女たちというのはWUGメンバーのことを指す。
プライベート
2016年5月30日、自身のTwitterで、体調不良による無期限の休養を発表[8]。
2016年7月23日、震災復興支援や新しい街づくりを試みるボランティアグループ「せんだいみやぎコンテンツプロジェクト」のイベント名を借りた非営利イベント[9]「ヤマカンナイト!大阪編」を大阪日本橋CLUB COCHLEAで行った。 ゲストとして京都アニメーション出身の(現ライデンフィルム京都スタジオ所属で室長)[10]坂本一也が参加した。[11]
アニメーション
京都アニメーション・アニメーションDo
- 1998年 Dancing Blade かってに桃天使! [デジタル制作]
- 1998年 ジェネレイターガウル [11話演出助手]
- 1999年 Dancing Blade かってに桃天使!II 〜Tears of Eden〜 [撮影]
- 1999年 POWER STONE [演出助手、18話絵コンテ・演出、10話演出]
- 1999年 天使になるもんっ! [20話演出助手]
- 1999年-2000年 週刊ストーリーランド [「季節はずれのクリスマス」「ぼくたちの卒業式」絵コンテ・演出]
- 2000年 OH!スーパーミルクチャン [制作進行、デジタルアニメーション]
- 2000年 ゲートキーパーズ [撮影]
- 2001年-2004年 ジャングルはいつもハレのちグゥ [(無印:8,20話絵コンテ・演出 4話演出)(デラックス(OVA):3,9,10話絵コンテ・演出)(FINAL(OVA):3,9,10話絵コンテ・演出)]
- 2001年 リアルバウトハイスクール [演出助手]
- 2001年-2002年 旋風の用心棒 [16話絵コンテ・演出、22話演出]
- 2002年- あたしンち [5,6,15,16,25,26,39,40,51,52,63,64,79,80,87,88,99,100,111,112,123,124,173,174,185,186話絵コンテ・演出、196,197,220,221話絵コンテ、135,136話演出]
- 2003年 MUNTO(OVA) [演出助手]
- 2003年 フルメタル・パニック? ふもっふ [2話絵コンテ・演出、9話演出]
- 2005年 MUNTO 〜時の壁を越えて(OVA) [演出補佐]
- 2005年 AIR [2,5,8話絵コンテ・演出]
- 2005年 フルメタル・パニック! The Second Raid [10話脚本、6話脚本・絵コンテ・演出、2,11話絵コンテ・演出]
- 2006年 涼宮ハルヒの憂鬱 [シリーズ演出、エンディング絵コンテ・演出、1,12話脚本・絵コンテ・演出(演出補佐に渡邊政治)(12話の絵コンテは門脇聡と連名)、3,5話脚本、9話絵コンテ、劇中歌作詞、CM出演]
- 2006-2007年 Kanon [5,11話絵コンテ・演出(11話は演出補佐に高雄統子)]
- 2007年 らき☆すた [監督(第1-4話)、エンディング脚本、4,10,23話脚本(23話は待田堂子が修正)、オープニング、エンディング絵コンテ・演出、1話絵コンテ・演出、2,18話絵コンテ(18話は武本康弘と連名)]
フリー
- 2007年 おおきく振りかぶって [エンディング2絵コンテ・演出]
- 2006年- 家庭教師ヒットマンREBORN! [エンディング5原画]
Ordet設立後
- 2007年 撲殺天使ドクロちゃんセカンド(OVA) [3話絵コンテ・演出]
- 2007年 スケッチブック 〜full color's〜 [11話演出]
- 2007年-2008年 灼眼のシャナII(Second) [オープニング2絵コンテ]
- 2008年 PERSONA -trinity soul- [6話絵コンテ]
- 2008年 ポルフィの長い旅 [11話絵コンテ(望月智充と連名)]
- 2008年 図書館戦争 [8話絵コンテ]
- 2008年 ケメコデラックス! [2話脚本・絵コンテ・演出、7話脚本]
- 2008年-2009年 かんなぎ [監督、オープニング・エンディング絵コンテ・演出、1,13,14話絵コンテ・演出(13話の絵コンテは吉野宏と連名)、7話絵コンテ、声優(学生役)]
- 2009年 となりの801ちゃんR [監督(オープニング)]
- 2009年 BLACK★ROCK SHOOTER -PILOT Edition- [監修]
- 2009年 鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST [エンディング3絵コンテ(第27話 - 第38話)]
- 2010年 ちゅーぶら!![第6話絵コンテ]
- 2010年 BLACK★ROCK SHOOTER [監修]
- 2011年 フラクタル [原作(東浩紀、岡田麿里と連名、マンデルブロ・エンジン名義)、監督、1,11話絵コンテ・演出(11話の絵コンテは吉岡忍、牧原亮太郎と連名)オープニング・エンディング絵コンテ・演出]
- 2012年 blossom [監督、脚本、原案]
- 2012年 ブシロードCM『しよ子シリーズ第4弾「お花見編」』[監督]
- 2012年 超訳百人一首 うた恋い。 [2話演出][注 2]
- 2012年 マギ [8話絵コンテ]
- 2013年 戦勇。 [監督1,2,3話絵コンテ、5,6,9,10話脚本、エンディング絵コンテ・演出]
- 2013年 宮河家の空腹 [監督、1,2,3話絵コンテ、TV版&BD版コンテ・演出(TV版コンテは川口敬一郎、鹿田勝男、坂本一也と共同、TV版演出は有冨興二、追崎史敏と共同)、エンディング絵コンテ・演出]
- 2013年 戦勇。第2期 [監督、25,26話絵コンテ、エンディング絵コンテ・演出]
- 2014年 TVアニメWake Up, Girls! [監督、12話絵コンテ(中山奈緒美と共同)、5・12話演出(5話の演出は有冨興二、榎本守、橋口洋介と連名、12話の演出は有冨興二、伊藤祐毅、中山奈緒美と連名)、脚本(OVA)]
- 2014年 劇場版Wake Up, Girls!七人のアイドル [監督、絵コンテ・演出(演出は久保田雄大、有冨興二、榎本守と連名)]
- 2014年 うぇいくあっぷがーるZOO! [監修(待田堂子と共同)]
- 2015年 Wake Up, Girls!続・劇場版 青春の影 [監督、絵コンテ(山崎雄太と共同)、演出(山崎雄太・有富興ニ・渡邊政治・村田光と共同)]
- 2015年 Wake Up, Girls!続・劇場版 Beyond the bottom [監督、絵コンテ(山崎雄太・渡邊政治と共同)、演出(村田光・白石道太・山崎雄太・たかたまさひろと共同)]
- 2016年 Wake Up, Girls!の宮城PRやらせてください![総監督、脚本]
- 2016年 うぇいくあっぷがーるZOO! 宮城PRでGO![原案、監修]
アニメーション外
映画
- 監督
- 私の優しくない先輩(2010年夏公開)
小説
- 連載
単行本
- アインザッツ(ウィンクルム他収録CD付属)(2010年10月27日発行、学研パブリッシング発行 ISBN 978-4-05-404749-5)
その他
- 連載
- 妄想ノォト出張版(洋泉社刊、オトナアニメ)
- 2009年GEISAI審査員
- 月刊ComicREX誌上通販かんなぎドラマCDVol,1 [脚本]
- Otakon 2009ゲスト
- Anime Central 2014ゲスト
- Anime Expo 2014ゲスト
- Akumakon 2015ゲスト
受賞歴
- 2010年度(第2回)TAMA映画賞 最優秀新進監督賞(私の優しくない先輩)
脚注
注釈
- ^ "Ordet" という社名は「オース」と読む。デンマークの映画作家カール・テオドア・ドライヤーの作品『奇跡』のデンマーク語題名「Ordet」(オッア、「言葉」という意味)に由来する。
- ^ エンディングクレジットではOrdetの共同ペンネームである三間カケル名義であるが、ニコニコ動画超訳百人一首 うた恋い。第2話公式配信(2012年7月24日配信、2012年7月25日閲覧)とアニメージュ2012年7月号では山本寛名義であるため、本人名義を優先した。
出典
- ^ [1]。
- ^ TVアニメーション作品「らき☆すた」監督交代のお知らせ(京都アニメーション) (Internet Archive)。
- ^ “監督メッセージ”. フラクタル公式サイト (2010年8月10日). 2011年10月26日閲覧。
- ^ “山本寛監督が「ツイッター」で引退を撤回”. ニコニコニュース (2011年7月26日). 2012年3月13日閲覧。
- ^ 東日本大震災チャリティアニメ、山本寛監督新作「blossom」ワールドプレミア-GIGAZINE-(2012年3月25日配信、2013年4月5日閲覧)
- ^ 株式会社ウルトラスーパーピクチャーズ登記簿記載事項
- ^ 株式会社Ordet登記簿記載事項
- ^ “アニメ監督・山本寛氏、無期限の休養を発表「理不尽な事案が重なった」”. ORICON STYLE. (2016年5月31日) 2016年5月31日閲覧。
- ^ https://twitter.com/ymknnightosaka/status/749096981096636417
- ^ http://lidenfilms.jp/
- ^ http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01r9e9y9zjw1.html
外部リンク
- 山本寛 (@yamacane_0901) - X(旧Twitter)
- 山本寛 (yutaka.yamamoto.944) - Facebook
- blossom‐株式会社テイク・ワイ 事業実績
- Luvits!インタビュー
- 山本寛監督インタビュー(アキバ総研)