ビゼンニシキ
この記事は「旧馬齢表記」が採用されており、国際的な表記法や2001年以降の日本国内の表記とは異なっています。 |
ビゼンニシキ | |
---|---|
品種 | サラブレッド[1] |
性別 | 牡[1] |
毛色 | 栗毛[1] |
生誕 | 1981年4月26日[1] |
死没 | 1999年7月23日(19歳没・旧表記) |
父 | ダンディルート[1] |
母 | ベニバナビゼン[1] |
生国 | 日本(青森県横浜町[2]) |
生産者 | 明成牧場[1] |
馬主 | 藤田正蔵[1] |
調教師 | 成宮明光(美浦)[1] |
競走成績 | |
生涯成績 | 10戦6勝[1] |
獲得賞金 | 1億4501万7400円[3] |
ビゼンニシキは日本の競走馬。1984年の中央競馬のクラシック戦線をシンボリルドルフとともにリードした。
競走馬として
ビゼンニシキを生産した青森県の明成牧場は成宮明光調教師が運営する牧場で、その母馬も成宮調教師の厩舎に所属していた馬である[4]。
3歳時(1983年)
1980年に、馬産地は伝染性の子宮炎に見舞われて例年よりも種付けが遅くなった[5]。そのため、1981年生まれの世代は軒並みデビューが遅れ、1983年の3歳戦が始まっても、素質馬の登場はあとになると目されていた[5]。そうした中で早くから活躍したのが関東のサクラトウコウとハーディービジョン、関西のロングハヤブサ(最優秀3歳牡馬)で、日本中央競馬会の広報誌『優駿』で行われる「フリーハンデ」ではこの3頭が「3歳3強」と評された[5]。3戦3勝のシンボリルドルフに対しては、重賞出走歴がないにもかかわらず、勝ち方が期待できるとして3強に次ぐ評価を与えるものと[5]、確実に勝てる「楽なレース」を選んでいるとしてそこまでの高評価をしないものがあった[6][注 1]。
ビゼンニシキは3歳秋にデビューして3連勝した。『競馬ブック』誌上で発表される「全日本フリーハンデ」では、ビゼンニシキはようやく現れた「大物」としてシンボリルドルフよりも1kg高く評価した[6]。ただし距離適正には壁があるとして、翌年の日本ダービーは難しいだろうとも評されている[6]。
一方、「フリーハンデ」ではシンボリルドリフと同等とみる声もあったが、シンボリルドルフより1kg低い評価を与えられている[5][6]。この年に同じ評価を受けたものには、トーアファルコン、ヤマノスキー、マーサレッド(最優秀3歳牝馬)、マリキータ、スイートソフィアがいた[5]。
4歳時(1984年)
4歳になると、ビゼンニシキは2月中旬から3週おきに登場、春のクラシック戦線として行われるすべての重賞に出走し、そのうち共同通信杯4歳ステークス、スプリングステークス、NHK杯に勝った[7]。スプリングステークスではサクラトウコウ相手に意表をつく逃げ切り勝ち、NHK杯は楽勝だった[8]。弥生賞と皐月賞ではシンボリルドルフに敗れて2着に終わったが、そのうち皐月賞は勝ったシンボリルドルフに体当たりされるという不利があった[8]。
この不利については、「全日本フリーハンデ」上で、評者の山野浩一は「外国の競馬なら着順変更になっているケース[4]」としながらも、それがなくてもシンボリルドルフには勝てなかっただろうとしている[4]。なお、日本中央競馬会はこのレース後、降着制度の導入の検討を始めたことを明らかにした[4]。
日本ダービーでは大敗し、ビゼンニシキに対しては距離克服に課題があるという見方が再びでた[7][8]。この年から短距離路線の整備が行われたことから[7]、ビゼンニシキは秋は長距離の菊花賞ではなく、短距離のスワンステークスへ挑んだ[9]。しかしそのレース中に故障を発生して引退に追い込まれた[8][9]。
シンボリルドルフがこの年、史上初の無敗での三冠制覇を果たして日本競馬史上で図抜けた競走馬と評価され、さらにジャパンカップでも好走して世界的に高評価を受けたことで、ビゼンニシキにも高い評価が与えられることになった[7]。日本ダービーまではシンボリルドルフ以外には負けておらず、「一方的に負けてばかりなので、はたして本当にライバルといえるかどうかは疑問だが[4]」シンボリルドルフのライバルであるとも評された[4]。
この年のフリーハンデでのビゼンニシキの評価は60kgで、同世代では単独2位の値だった[7][注 2]。「全日本フリーハンデ」は63kgに評価し、例年であればクラシック競走の勝馬と同等以上と位置づけた[4][注 3]。
競走成績
年 | 競馬場 | 競走名 | 格 | 距離 | 着順 | 勝ち馬 /(2着馬) | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1983 | 東京 | 3歳新馬 | 芝1400m | 1着 | (フラワーパーク) | [3] | |
東京 | さざんか賞 | 芝1400m | 1着 | (ニッポースワロー) | [3] | ||
中山 | ひいらぎ賞 | 芝1800m | 1着 | (ハクバテンリュウ) | [3] | ||
1984 | 東京 | 共同通信杯4歳S | GIII | 芝1800m | 1着 | (リキサンパワー) | [3] |
中山 | 弥生賞 | GIII | 芝2000m | 2着 | シンボリルドルフ | [3] | |
中山 | スプリングS | GII | 芝1800m | 1着 | (サクラトウコウ) | [3] | |
中山 | 皐月賞 | GI | 芝2000m | 2着 | シンボリルドルフ | [3] | |
東京 | NHK杯 | GII | 芝2000m | 1着 | (トウホーカムリ) | [3] | |
東京 | 東京優駿 | GI | 芝2400m | 14着 | シンボリルドルフ | [10] | |
京都 | スワンS | 芝1400m | 12着 | ニホンピロウイナー | [11] |
- 全10戦6勝、2着2回[3]。
種牡馬として
競走馬を引退後、シンジケート・ビゼンニシキ会が結成され、1985年より北海道浦河郡浦河町の浦河スタリオンセンターにて種牡馬として繋養された[3]。初年度の種付け料は150万円と発表されている[12] [注 4]。父馬のダンディルート、母の父ミンスキーともに種牡馬として成功しながら早死しており、ビゼンニシキにはダンディルートの後継種牡馬として期待が寄せられた[8][9]。1年目の49頭を皮切りに、例年50頭以上の繁殖牝馬を集めた[14]。
特に2世代目となる1987年生まれの産駒33頭の中からは、ダイタクヘリオス、ハシノケンシロウ、パッシングルート、ビゼンツカサと4頭の重賞勝ち馬が出て、世代別の種牡馬ランキングで日本4位となった[14][15]。特に1991年には産駒が年間87勝をあげて日本の年別種牡馬ランキングで14位となった[14][15]。このほか、1990年から2000年まで勝利数はコンスタントに80勝前後をあげ、1989年から1998年のあいだランキング上位100位に入っていた[14][15]。
晩年は九州の種牡馬場に移り、1999年の種付けシーズン終了後、7月23日に死亡した。[要出典]
主な産駒
- 重賞競走2着馬および賞金5000万以上のもの(獲得賞金の単位は万円)を採録。
馬名 | 生年 | 性別 | 獲得賞金 | 主要戦績 |
---|---|---|---|---|
ダイタクヘリオス[16] | 1987 | 牡 | 68,995 | マイルチャンピオンシップGI2回、マイラーズカップGII2回、毎日王冠GII、高松宮杯GII、クリスタルカップGIII[17] |
ハシノケンシロウ[16] | 1987 | 牡 | 25,453 | カブトヤマ記念GIII、新潟大賞典GIII、福島記念GIII[18] |
パッシングルート[16] | 1987 | 牡 | 16,122 | (公営・山形)上山優駿樹氷賞重賞、東北サラブレッド大賞典重賞2着)、(中央)平安ステークスOP、栗東ステークスOP[19] |
リターンエース[16] | 1988 | 牡 | 28,534 | 京都大障害・春重賞、阪神障害ステークス・春重賞、東京障害特別・春重賞、金鯱賞GIII2着[20] |
リンデンニシキ[16] | 1992 | 牝 | 7,822 | (公営・佐賀)開設記念重賞、サガ・クイーン賞重賞2回、サラブレッドGP重賞、佐賀菊花賞重賞[21] |
ムラノタニカゼ[16] | 1989 | 牡 | 2,341 | (公営・山形)こまくさ賞(上山ダービー)重賞[22] |
コンメンダトーレ[16] | 1994 | 牡 | 18,451 | (公営・佐賀)佐賀記念重賞[23] |
キーニシキ[16] | 1995 | 牡 | 9,762 | (公営・岐阜)スプリンター争覇重賞[24] |
ビゼンツカサ[25] | 1987 | 牝 | 4,267 | (公営・石川)3歳優駿重賞[26] |
マンノチャレンジ[16] | 1991 | 牡 | 13,747 | 中日新聞杯GIII2着、中日新聞杯GIII3着[27] |
セイクビゼン[16] | 1995 | 牡 | 4,341 | スプリングステークスGII2着[28] |
タヤスウイング[25] | 1993 | 牡 | 3,958 | (公営・南関東)埼玉新聞杯重賞2着[29] |
ミナミツルギ[25] | 1988 | 牡 | 4,559 | (公営・石川)白山大賞典重賞2着、北国王冠重賞2着、スプリンターズC重賞2着[30] |
オリオンジャガー[25] | 1987 | 牡 | 4,976 | (公営・南関東)大井記念重賞2着、かしわ記念重賞2着[31] |
トーエイブルー[25] | 1986 | 牡 | 10,510 | (公営・南関東)埼玉新聞杯重賞2着、(中央)潮騒特別、釧路特別、まりも特別[32] |
マルシゲサーパス[25] | 1998 | 牡 | 2,065 | (公営・佐賀)吉野ヶ里記念重賞2着、サラ系3歳優駿重賞2着[33] |
ミヤノテイオー[25] | 1996 | 牡 | 928 | (公営・佐賀)ジュニアチャンピオン重賞2着[34] |
ウインキャリイ[35] | 1986 | 牝 | 3,756 | (公営・石川)読売杯重賞2着[36] |
カイシュウニシキ[35] | 1992 | 牡 | 7,891 | 船橋S準OP、レインボーS準OP、千葉日報杯準OP[37] |
メドレー[35][8] | 1986 | 牝 | 9,814 | TUF杯準OP、高尾特別[38] |
グランシェール[35] | 1994 | 牝 | 6,314 | 初風特別[39] |
ボヘミアンドリーム[35] | 1991 | 牡 | 6,894 | 八坂特別[40] |
ファンシーボール[35] | 1988 | 牡 | 8,987 | 北摂特別[41] |
トーワビゼン[35] | 1987 | 牡 | 7,358 | 五頭連峰特別、北方特別[42] |
ナムラボレロ[35] | 1986 | 牡 | 12,139 | ゴールデンサドルT、由布院特別[43] |
センダン[35] | 1997 | 牡 | 6,363 | 赤湯特別[44] |
エベリン[35] | 1989 | 牝 | 5,309 | 洞爺湖特別[45] |
血統表
ビゼンニシキの血統 | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父 *ダンディルート Dandy Lute 1972 鹿毛 |
父の父 Luthier1965 黒鹿毛 |
Klairon | Clarion | |
Kalmia | ||||
Flute Enchantee | Cranach | |||
Montagnana | ||||
父の母 Dentrelic1965 栗毛 |
Prudent | My Babu | ||
Providence | ||||
Relict | Relic | |||
Fakhry | ||||
母 ベニバナビゼン 1975 栗毛 |
*ミンスキー Minsky 1968 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Flaming Page | Bull Page | |||
Flaring Top | ||||
母の母 カツハゴロモ1971 鹿毛 |
*サウンドトラック Sound Track |
Whistler | ||
Bridle Way | ||||
*ワイルドライフ Wild Life |
Big Game | |||
Clarinda | ||||
母系(F-No.) | (FN:3-o) | [§ 2] | ||
5代内の近親交配 | Djebel 5×5 | [§ 3] | ||
出典 |
脚注
注釈
- ^ 翌年の全日本フリーハンデでは、このシンボリルドルフに対する低評価は失敗だったと認めている[4]。
- ^ シンボリルドルフは歴代1位の67kgと離れているが、60kgは前年のメジロモンスニー、1978年の皐月賞馬ファンタストと等しく、1976年の菊花賞馬グリーングラスやテンポイントと1kg差である[7]。
- ^ 全日本フリーハンデでの評価では、日本ダービー馬カツラノハイセイコ(1979年)、サクラショウリ(1978年)、クライムカイザー(1976年)などと同点であり、アズマハンター(1982年皐月賞馬)、ミナガワマンナ(1981年菊花賞馬)、ファンタスト(1978年皐月賞馬)などよりも高評価である[4]。
- ^ 150万円という種付け料は、同じ浦河スタリオンセンターに繋養されていたスティールハート(ニホンピロウイナーの父)と同額である[12]。このほか同じ浦河地区ではテスコボーイ、トウショウボーイも150万円だった[13]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ 基本情報2016年2月16日閲覧。
- ^ 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第8巻,p155-156「ビゼンニシキ」
- ^ a b c d e f g h i j k 『日本の種牡馬録5』p384-385「ビゼンニシキ」
- ^ a b c d e f g h i 『全日本フリーハンデ1983-1988』p205-240
- ^ a b c d e f 『フリーハンデ史 優駿1962-1994年』p129-135
- ^ a b c d 『全日本フリーハンデ1983-1988』p49-72
- ^ a b c d e f 『フリーハンデ史 優駿1962-1994年』p137-143
- ^ a b c d e f 『サラブレッド血統事典』(1991),p538-539
- ^ a b c 『全日本フリーハンデ1983-1988』p241-255
- ^ netkaiba.com 第51回東京優駿 2016年2月17日閲覧。
- ^ netkaiba.com 1984年スワンS 2016年2月17日閲覧。
- ^ a b 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第8巻,p221
- ^ 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第8巻,p219-220
- ^ a b c d 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ 種牡馬情報:世代・年次別(サラ系総合)2016年2月17日閲覧。
- ^ a b c 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ サイアーランキング2016年2月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ 主な産駒2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ダイタクヘリオス 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ハシノケンシロウ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System パッシングルート 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System リターンエース 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System リンデンニシキ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ムラノタニカゼ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System コンメンダトーレ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System キーニシキ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ 主な産駒2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンツカサ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System マンノチャレンジ 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System セイクビゼン 基本情報2016年2月17日閲覧。
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- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ミナミツルギ 基本情報2016年2月17日閲覧。
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- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ウインキヤリイ 基本情報2016年2月17日閲覧。
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- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System センダン 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System エベリン 基本情報2016年2月17日閲覧。
- ^ a b c 日本軽種馬協会 Japan Bloodstock Information System ビゼンニシキ 5代血統表2016年2月16日閲覧。
参考文献
- 『日本の種牡馬録5』白井透・著,サラブレッド血統センター・刊,1987,ISBN 4-87900-003-5
- 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第8巻,日本中央競馬会・刊,1985
- 『フリーハンデ史 優駿1962-1994年』,日本中央競馬会審判部,1995
- 『サラブレッド血統事典』山野浩一・編著,宇佐美恒雄・石崎欣一・著,二見書房,1989,1991(6版),ISBN 4-576-89016-6
- 『全日本フリーハンデ1983-1988』,山野浩一・著,リトル・モア・刊,1997,ISBN 4-947648-47-3
外部リンク
- 競走馬成績と情報 netkeiba、JBISサーチ
- EQUINE LINE Bizen Nishiki(JPN)