響け! ユーフォニアム
![]() | このページのノートに、このページに関する議論があります。 議論の要約:「登場人物」節の要否について |
小説:響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ | |
---|---|
著者 | 武田綾乃 |
出版社 | 宝島社 |
レーベル | 宝島社文庫 |
発行日 | 2013年12月 |
続刊 | |
| |
漫画:響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ | |
原作・原案など | 武田綾乃(著) アサダニッキ(キャラクター原案) |
作画 | はみ |
出版社 | 宝島社 |
掲載サイト | このマンガがすごい!WEB |
発表号 | 2014年11月 - |
巻数 | 既刊2巻 |
アニメ:響け!ユーフォニアム | |
原作 | 武田綾乃 |
監督 | 石原立也 |
シリーズ構成 | 花田十輝 |
キャラクターデザイン | 池田晶子 |
音楽 | 松田彬人 |
アニメーション制作 | 京都アニメーション |
製作 | 「響け!」製作委員会 |
放送局 | TOKYO MXほか[1] |
放送期間 | 2015年4月[1] - 6月 |
話数 | 全13話 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画・アニメ |
ポータル | 文学・漫画・アニメ |
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』(ひびけ ユーフォニアム きたうじこうこう すいそうがくぶへようこそ)は武田綾乃による日本の小説。2012年のデビュー作『今日、きみと息をする。』に次ぐ武田の2作目となる作品で、宝島社文庫より2013年12月に刊行後、2014年12月にはコミカライズ、2015年にテレビアニメ化された[1][2]。
2015年3月より、続編となる『響け! ユーフォニアム 2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』および『響け! ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』を続けて発刊、シリーズ累計18万部発行のヒット作となる[2]。同年6月には各登場人物のエピソードを書き下ろした短篇集『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』が刊行された[2]。2014年10月18日から2015年3月15日にかけてウェブサイト上で連載された全10編のショートストーリー「北宇治吹部だより」から、最終回を除く9編に書き下ろし5編を加えた全14編の短編が収録されている[2][3]。
概要
武田の出身地である京都府宇治市を舞台に、吹奏楽へ青春を傾ける高校生たちの人間模様が描かれる[2]。あまり練習熱心でなく成績も芳しくなかった架空の公立高校の吹奏楽部員たちが、受験や恋、仲間同士の衝突、親との確執など思春期特有の悩みを抱えつつ、若い新任顧問のもとで吹奏楽コンクールの全国大会出場を目指して奮闘するドラマが軽妙な筆致で展開される[2]。小中学生時代に吹奏楽部へ在籍していた武田は、部活動時代の友人たちや母校である嵯峨野高校の吹奏楽部を取材し、自身の実体験も織り混ぜながら本作の構成を練り上げた[2][4]。京阪宇治駅やあがた祭り、「大吉山」の通称で知られる仏徳山など、宇治市の名所や行事が作品の随所に登場する[2][4]。
あらすじ
北宇治高校吹奏楽部へようこそ
物語の舞台となる京都府立北宇治高校は10年ほど前までは吹奏楽の強豪校だったが、今ではすっかり落ちぶれている。入学式で聞いた校歌演奏は酷いものだったが、小学4年生の時から吹奏楽を続けている黄前久美子(おうまえ くみこ)は級友たちの誘いを断れず吹奏楽部へ入部する。ユーフォニアム演奏歴7年の久美子、全国最上位の強豪中学出身で部内唯一のコントラバス奏者となる
新入部員の中には高坂麗奈(こうさか れいな)の姿もあった。中学3年生の夏、久美子と麗奈のいた北中学の吹奏楽部はコンクールの京都府大会で金賞を獲得したものの、関西大会出場を逃した。当時、全国大会出場という部の目標を真に受けていなかった久美子は悔し涙を流す麗奈に向かって、本気で全国に行けると思っていたのかと冷めた本音を口にしてしまった。しかしそんな毒のある久美子の言動に、麗奈は密かに好感を抱いていた。中学時代は顔見知り程度の仲だった2人は互いに意気投合する。
吹奏楽部の新しい顧問に赴任した滝昇(たき のぼる)は最初に、全国大会出場を目指すか楽しく過ごす部活動にするか、部員たちに選択を求める。部員たちは多数決を採り、前者に決定する。滝の指導は厳しかったが、部員たちは彼の手腕に信頼を寄せていく。コンクールの演奏メンバー選考の結果、ユーフォニアムでは2年生の中川夏紀(なかがわ なつき)が落とされる。中学時代に先輩との軋轢を経験した久美子は動揺するが、夏紀は久美子を気遣う。トランペットパートでは、自由曲の要となるコルネットのソロ奏者に1年生の麗奈が選ばれ、3年生の中世古香織(なかせこ かおり)を推す吉川優子(よしかわ ゆうこ)たち上級生の怒りを買う。香織は優子を諌めようとするが、オーディションで顧問が手心を加えたのではないかと勘ぐられた麗奈は滝が侮辱されたことに激昂する。10年前までこの学校で吹奏楽を指導していた滝の父親とプロの演奏家である麗奈の父とは旧知の仲で、麗奈と滝も以前から面識があった。そして彼に恋愛感情を抱いていることを、麗奈は久美子にだけ打ち明けた。
京都府大会前日、トランペットパートリーダーの香織が突然、滝にソロパートの再オーディションを願い出る。部員たちの前で香織は高度な演奏を披露するが、高校生離れした麗奈との実力差は歴然だった。自身の判断を滝に問われた香織は泣きながら、麗奈がソロを吹くべきだと答える。
翌日、コンクールの幕が上がる。久美子たちは関西大会進出を果たす。歓喜する部員たちに、目標はここで終わりではないと滝が檄を飛ばす。翌日の練習時間が告げられ、物語は一旦幕を閉じる。
北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏
8月末の関西大会に向け、連日早朝から夜間に及ぶ練習は厳しさを増す。
去年退部した2年生の傘木希美(かさき のぞみ)が姿を見せ、部に復帰したいと願い出る。希美のフルート演奏を聞いた鎧塚みぞれ(よろいづか みぞれ)が突然体調を崩す。吹奏楽部では昨年、希美たち南中学出身の1年生グループが当時の3年生たちの不真面目さに耐えかね、集団で退部する事件があった。希美は当時、既に部の主力メンバーだったみぞれには退部の誘いを持ちかけず、自分が辞めることも知らせなかった。親友に見捨てられたと感じたみぞれは希美の存在がトラウマとなっていた。唯一のオーボエ奏者であるみぞれの状態維持を優先したい副部長のあすかは、みぞれの異変に気づいていない希美に真実を伝えないまま、彼女の再入部を拒み続ける。
関西大会の前日、ソロパートの演奏改善に苦しむみぞれを励まそうと希美が唐突に部室を訪れる。みぞれが逃げ出し、異変に気付いたトランペット担当の優子が後を追う。みぞれたちと同じ南中出身である優子の説得が奏功し、希美とみぞれは関係を修復する。感情に欠けていたみぞれの演奏は見違え、彼女本来の表情豊かな響きを取り戻す。
関西大会から全国大会への出場枠は「三強」と呼ばれる大阪の超強豪3校が毎年独占しているため、順当にいけば今の久美子たちが全国大会に進める可能性はほとんどない。コンクール当日、それでも久美子たち北宇治高校吹奏楽部はこれまでで最高の演奏をする。自分たちの出番が終わり、三強の一角である秀塔大学付属高校の演奏を客席で聴いていた久美子は、彼らが失敗することを願わずにいられない自分に嫌悪を抱く。そのとき、エスクラリネットのソロ奏者がミスをする。会場を出た久美子は、ミスをした2年生部員が腕にギプスを纏った3年生に泣きながら詫びているのを目にする。北宇治高校は2か月後の全国大会への出場を決め、部員たちは歓声に包まれる。
北宇治高校吹奏楽部、最大の危機
2学期が訪れ、北宇治高校吹奏楽部は文化祭や地域のコンサートをこなしつつ、全国大会に向けて練習に励む。
ユーフォニアム担当の3年生、田中あすかの母親が職員室を訪れ、顧問の滝に娘を退部させるよう迫る。母親は受験への悪影響を口にしつつ、音楽家の元夫と同じ楽器を娘が演奏することへの苛立ちを覗かせる。滝は本人が望まない退部は認めないと突っぱねるが、母親に逆らえないあすかは練習を休みがちになる。部の要である彼女の不在に部員たちは動揺する。あすかの欠場に備え、滝は2年生の夏紀を合奏練習に合流させる。
同じ頃、久美子の家庭内では姉の麻美子が両親と揉めていた。好きな吹奏楽を諦めてまで親の期待に応え続けた大学3年生の姉が、親たちの反対を押し切って美容師を目指すという。久美子は姉の姿にあすかを重ねる。あすかは今さら自分が復帰しても良い影響はないと諦めを口にするが、久美子はそれでも一緒に演奏したいと食い下がる。全国30位という驚異的な模試の成績を携え、母を説き伏せたあすかが部活動に復帰する。
コンクール前夜、トロンボーン担当の塚本秀一は長らく渡しそびれていた誕生日プレゼントを幼なじみの久美子へ手渡す。プレゼントは白いひまわりの花をあしらった髪留めだった。この花は滝が亡き妻へのプロポーズの際に贈った花だと久美子に教えられ、秀一は赤面しながら他意はないと取り繕う。
本番の演奏を終え、久美子たちは客席で結果発表を見守る。全国大会出場校の顧問表彰が始まり、場内から各校生徒の声援が飛ぶ。ステージ上の滝に向かって麗奈が「先生、好きです!」と叫ぶ。北宇治高校の受賞結果は銅賞に終わり、久美子は悔しさを覚える。滝は、進藤正和という審査員から預かった伝言と紙片をあすかと久美子に伝える。ユーフォニアムのプロ奏者、進藤正和はあすかの実父である。進藤の紙片にはコンクール審査の最低評価を表す "C" の文字が記されていたが、伝言の内容は長年の努力と今日のユーフォニアム演奏への賛辞だった。あすかはかつてない笑顔を見せ、久美子とじゃれ合う。
卒業式の日、1年前とは見違えた校歌演奏の後、あすかを送り出した久美子が麗奈とともに練習へと向かう場面で物語は終わる。
北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話
受験勉強を理由に退部した斎藤葵と学業でも演奏でも天才の田中あすかとの級友2人による会話劇や久美子、葉月、秀一たちの恋の顛末など、全13話の短編を収録[3]。
登場楽曲
本作では吹奏楽の演奏シーンに実在の曲および架空の楽曲を登場させている。
- キャント・バイ・ミー・ラヴ
- 劇中、太陽公園で行われる架空の吹奏楽パレード「サンライズフェスティバル」での北宇治高校の演目。
- 錨を上げて
- 劇中では、マーチングを得意とする京都府内の強豪校、立華高校吹奏楽部がサンライズフェスティバルで演奏した。
- 三日月の舞
- 劇中において北宇治高校の吹奏楽コンクール課題曲として登場する架空の楽曲。作曲者は堀川奈美恵という京都府出身の音楽家と設定されている。5曲ある選択課題曲のうち演奏の難度が最も高く、冒頭のトランペットメロディー、中盤のオーボエソロ、後半の低音のメロディーが特徴の曲だと説明されている。
- イーストコーストの風景
- 劇中、北宇治高校の吹奏楽コンクール自由曲として第二楽章「キャッツキル山地」と第三楽章「ニューヨーク」から一部をカットした構成で演奏される。本作1作目の物語終盤、第二楽章の要所となるコルネットのソロ奏者に1年生の麗奈が選ばれ諍いの元となる。
- コパカバーナ
- 劇中、A部門のオーディション落選者からなる北宇治高校B部門も副顧問の指揮のもと府大会金賞の成績をおさめる。
- バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第二組曲
- 劇中にて、関西の強豪、秀塔大学附属高校吹奏楽部がコンクール自由曲として演奏する。みぞれや希美、優子たちの所属していた南中学校の2年前のコンクール自由曲としても登場し、全国大会を目指しながら府大会で敗退した過去が描かれる。
- 大阪俗謡による幻想曲
- 劇中では全国大会常連の強豪校、明静工科高校のコンクール自由曲として登場する。
- A列車で行こう
- 劇中、北宇治高校が文化祭および京都駅ビルのコンサートで演奏した楽曲。普段は部長らしからぬ大人しい性格の小笠原晴香が、アドリブの効いたバリトンサックスのソロ演奏で聴衆を沸かせる。
- シング・シング・シング
- 劇中で北宇治高校が文化祭および京都駅ビルのコンサートで演奏した曲目のひとつ。
- 響け!ユーフォニアム
- 劇中、3年生の田中あすかが練習の合間に吹いていた架空の曲。あすかの父が高校時代に作曲したユーフォニアムの練習曲という設定で、物語の最後、久美子は同曲の楽譜が書かれた大学ノートをあすかから譲り受ける。
- きらきら星
- 劇中、北宇治高校吹奏楽部で基礎練習に用いられる平易な楽曲。
既刊一覧
- 『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』、2013年12月19日発行、ISBN 978-4-8002-1747-9
- 『響け! ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』2015年3月19日発行、ISBN 978-4-8002-3906-8
- 『響け! ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』2015年4月18日発行、ISBN 978-4-8002-3982-2
- 『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』2015年6月8日発行、ISBN 978-4-8002-4119-1
漫画
第1巻と同じ『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』の表題で『このマンガがすごい!WEB』(宝島社)にて2014年11月より配信されている。作画ははみ。はみ自身も京都に住んでいたことがあり、学生時代には吹奏楽部でトロンボーンを担当していた[5]。原作表紙イラストを描いたアサダニッキがキャラクター原案としてクレジットされている[6]。
- 武田綾乃(原作)・アサダニッキ(キャラクター原案)・はみ(作画) 『このマンガがすごい!comics 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』 宝島社、既刊2巻
- 2015年4月3日発売、ISBN 978-4-8002-3968-6
- 2015年6月3日発売、ISBN 978-4-8002-4183-2
テレビアニメ
スタッフ[7] | |
---|---|
原作 | 武田綾乃 |
監督 | 石原立也 |
シリーズ構成 脚本[8] |
花田十輝 |
キャラクターデザイン | 池田晶子 |
シリーズ演出 | 山田尚子 |
美術監督 | 篠原睦雄 |
色彩設定 | 竹田明代 |
楽器設定 | 高橋博行 |
撮影監督 | 高尾一也 |
音響監督 | 鶴岡陽太 |
音楽 | 松田彬人 |
音楽制作協力 | 洗足学園音楽大学 |
演奏協力 | フレッシュマン・ウインド・ アンサンブル |
音楽監修 | 大和田雅洋 |
アニメーション制作 | 京都アニメーション |
製作 | 「響け!」製作委員会 |
絵コンテ・演出[8] | |
山田尚子 (#1, 4, 13 / #4, 13は絵コンテのみ)
| |
作画監督[8] | |
秋竹斉一 (#1, 8, 10, 13)、引山佳代 (#2, 6, 13)
| |
キャスト[7] | |
黄前久美子 | 黒沢ともよ |
加藤葉月 | 朝井彩加 |
川島緑輝 | 豊田萌絵 |
高坂麗奈 | 安済知佳 |
田中あすか | 寿美菜子 |
小笠原晴香 | 早見沙織 |
中世古香織 | 茅原実里 |
塚本秀一 | 石谷春貴 |
後藤卓也 | 津田健次郎 |
長瀬梨子 | 小堀幸 |
中川夏紀 | 藤村鼓乃美 |
吉川優子 | 山岡ゆり |
斎藤 葵 | 日笠陽子 |
黄前麻美子 | 沼倉愛美 |
松本美知恵 | 久川綾 |
滝 昇 | 櫻井孝宏 |
2015年、『響け! ユーフォニアム』のタイトルで京都アニメーション制作によりアニメ化された[9]。監督は『涼宮ハルヒの憂鬱』、『中二病でも恋がしたい!』などの作品を手掛けた石原立也[9]。さらに『けいおん!』や『たまこラブストーリー』などの監督として受賞歴のある山田尚子がシリーズ演出を担当した[9]。シリーズ演出という山田の役回りについて石原は、監督の参謀役と表現している[10]。
絵コンテ・演出を山田が担当した1話や石原の担当回である2話など、初期の話数ではコミカルな演出も目立っていたが、作品全体としてはリアルな青春ドラマとしてシリアス寄りの作風に仕上がっている[10]。制作開始当時、監督の石原や脚本の花田十輝がよりコミカルな作風も視野に入れていたのに対して、音響監督の鶴岡陽太は当初からリアリティ重視の演出を志向しており、石原は本作の方向性を見定めたのは最初のアフレコ時だったと述べている[11]。脚本の花田は第5話から第8話の時点でシナリオ執筆の方針が定まったと語っている[11]。
脚本・シリーズ構成
小説シリーズ第1作『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』を原作として、短篇集『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』より一部のエピソードが本編に織り込まれるなど、アニメオリジナルの要素を含んだ全13話のストーリーが展開される。
アニメ1話あたり原作30ページ程度のペースで、全体として尺にゆとりを持たせたストーリー構成となっている[11]。全話の脚本とシリーズ構成を担当した花田は当初から、劇中で吹奏楽部の顧問が赴任して部活動が本格的に始動するまでに2話を費やすなど、近年のアニメ脚本としては比較的スローペースの構成案を提案していた[11]。監督の石原も同じ意向を持っていたため、この基本プランがそのまま採用される形となった[11]。
原作では主人公たちの所属する吹奏楽部の部員数は81人とされているが、テレビアニメでは64人に変更された[12]。原作に登場しない人物を含め全ての部員に名前とキャラクターが設定されており、花田は全員に登場機会を割り振りながら脚本を執筆した[11]。
舞台設定
原作は京都府宇治市が主な舞台となっており、関東出身の主人公など一部の登場人物を除いて作中の台詞に宇治訛りの京都弁が使われているが[2]、テレビアニメでは標準語に変更されている。
監督である石原の認識としては本作の舞台設定はあくまで架空のものというスタンスであるが、本作の製作にあたっては監督をはじめ主要スタッフが実際の吹奏楽コンクール会場や宇治川、仏徳山(大吉山)ほか実在の舞台地に赴いて現地取材を実施し、脚色や作画に反映している[13]。主人公である久美子の通学シーンは原作の描写に沿って、自宅の最寄り駅である京阪宇治駅から友人の葉月が乗降する黄檗駅を経て六地蔵駅までの電車通学という設定で描かれる[14]。主人公たちが通う北宇治高校の所在地については原作者の大まかなイメージに基いており、学校の最寄り駅は原作には登場しないが、京阪宇治線の黄檗駅から中書島駅間で通学路に茶畑の描写があることなどから六地蔵駅をアニメ用の設定として採用した[14]。本作の制作プロダクションである京都アニメーションの主要スタジオはこれら主な舞台地の近隣に位置しており、作画用の資料写真が不足した際には容易に現地へ赴き撮影することができたため、ロケーションとしては好都合だったと石原は述べている[14]。
映像・作画
吹奏楽部のメンバー全員を含む登場人物のデザインを池田晶子が担当した[15]。監督である石原のオーダーに合わせ、各キャラクターは全体的に可愛らしさを重視したデザインとなっている[15]。本作に限らず、池田が作成するキャラクター表には池田自身がイメージした各キャラクターの簡単な性格付けやプロフィール設定が書き添えられ、作画スタッフがキャラクターの芝居を描く際の参考として用いられている[15]。
キャラクターデザインの作業に着手した段階では原作小説の既刊が第1作のみしかなく、ライトノベルのような挿絵イラストの類も挿入されていないため、当初はアサダニッキによる第1作の表紙装丁イラスト1点のみを唯一のビジュアル資料として主要キャラクターの検討が進められた[15]。数ある登場人物のうち、石原が安心感のある可愛いさと評する小笠原晴香部長のデザインがいち早く仕上がった[15]。劇中で吹奏楽部のマドンナと称される中世古香織も目元にほくろを入れたデザインをシリーズ演出の山田が気に入り、比較的早い段階で決定した[15]。主要キャラクターのうち加藤葉月と川島緑輝については、アニメ用のオリジナル設定としてそれぞれツインテールとくせ毛のロングヘアーに髪型を変更する方向でデザインの調整を進めていたが、最終段階で原作の描写に沿った短い髪型へと方針を転換した[15]。作中で長身の美人として描写される田中あすか副部長については、池田の念頭にはより大人びた路線の選択肢もあったが、石原の方針に沿って可愛さに振ったデザインが採られた[15]。副顧問の松本美知恵はアサダがアニメ用に新規イラストを描き起こし、そのイメージをベースにデザインを行った[15]。顧問の滝昇はシリーズ演出の山田からの具体的な要求に沿って、若者らしくない地味な眼鏡、コンクール演奏時の正装とは落差のある普段の風貌、柔らかい質感の髪、柔和な表情といった要素を取り入れたデザインが採用された[15]。
石原はこれまでに刊行されたアサダの漫画作品を全て揃え、本作のキャラクター作画の方向性を探る参考とした[15]。シリアスな描写の多い本作でも一部のコミカルなシーンではギャグ漫画風のキャラクターの崩し顔を使用しているが、アサダの画風に倣って頭身を大きく変えない作画を基本としている[15]。
美術監督の篠原睦雄は、女性キャラクターが多数を占める作画との対比を意図して、全体的にコントラストを強調した力強さのある背景美術の描き方を採用した[14]。空の色は微かに緑がかった色合いを出している[14]。屋内のカットでは蛍光灯などによる室内の光源を弱め、窓からの自然光がより強調されている[14]。石原が好んで用いる演出手法として、逆光を利用した構図を多用している[14]。
音響・音楽
劇中に登場する演奏シーンの音源は洗足学園音楽大学の1年生で編成されたバンド、フレッシュマン・ウインド・アンサンブルが担当した[16]。並以下の高校の吹奏楽部がドラマを重ねながら上達してゆく過程を音響面でも表現するため、各場面に合わせて意図的にクオリティを下げた演奏を再現しながら音源の収録が行われた[16]。第1話での高校吹奏楽部の演奏シーンでは、吹奏楽に詳しくない視聴者にも演奏クオリティの低さが明瞭に分かるよう、意図的に収録した演奏ミスやテンポのずれた演奏を強調するなどの編集加工が加えられている[16]。
作中に登場するオリジナルの楽曲と劇伴の作曲は松田彬人が担当している[16]。頻出する吹奏楽演奏シーンの楽器音との混同を避けるため、本作の劇伴は管楽器を使用せずに作られている[16]。劇伴の使用シーン自体も絞り込まれており、音響面の演出傾向としては全体的に静かな作品に仕上がっている[16]。
各演奏シーンで使われる楽曲は原作とは異なる。テレビアニメでは劇中のマーチングイベントでの演目がビートルズの『キャント・バイ・ミー・ラヴ』からイエロー・マジック・オーケストラの『ライディーン』に変更され[17]、第5話で本番の演奏シーンが描かれるまでは同曲を視聴者に聞かせないという演出上の意図により、本番までの練習シーンでは同曲を演奏する描写を避けるよう脚色されている[11]。主人公たちのコンクール課題曲として原作に登場する架空の楽曲『三日月の舞』がアニメでは自由曲という設定に変更されており[18]、原作での自由曲『イースト・コーストの風景』のコルネットソロ奏者の人選をめぐるエピソードは、アニメでは『三日月の舞』のトランペットソロを巡る騒動に置き換えられている。上級生の中で最も演奏の上手い3年生部員と超高校級の新入部員がトランペット演奏の優劣を決めるという当該エピソードの演奏録音では、それぞれ大学生とプロの奏者を起用して劇中での実力者同士の力量差を実演奏の音色の違いで直接表現した[16]。
主題歌
- オープニングテーマ「DREAM SOLISTER」(第2話 - 第12話)
- 作詞 - 唐沢美帆 / 作曲・編曲 - 加藤裕介 / 歌 - TRUE
- エンディングテーマ「トゥッティ!」(第1話 - 第7話、第9話 - 第12話)
- 作詞・作曲 - ZAQ / 編曲 - 高田暁 / 歌 - 北宇治カルテット[黄前久美子(黒沢ともよ)、加藤葉月(朝井彩加)、川島緑輝(豊田萌絵)、高坂麗奈(安済知佳)]
- メモリアルエンディングテーマ「DREAM SOLISTER (Wind Orchestra Ver.)」(第13話)
- 作曲 - 加藤裕介 / 編曲 - 松田彬人
放送
2015年4月よりTOKYO MXほかにて放送された[1]。
放送期間 | 放送時間 | 放送局 | 対象地域 [20] | 備考 |
---|---|---|---|---|
2015年4月7日 - 7月1日 | 水曜 0:30 - 1:00(火曜深夜) | TOKYO MX | 東京都 | |
サンテレビ | 兵庫県 | |||
KBS京都 | 京都府 | |||
水曜 1:35 - 2:05(火曜深夜) | テレビ愛知 | 愛知県 | ||
2015年4月8日 - 7月2日 | 木曜 0:00 - 0:30(水曜深夜) | BS11 | 日本全域 | 『ANIME+』枠 |
2015年4月10日 - | 金曜 23:00 - 23:30 | AT-X | 日本全域 | リピート放送あり |
配信期間 | 更新時間 | 配信サイト |
---|---|---|
2015年4月11日 - | 土曜 23:00 - 23:30 | ニコニコ生放送 |
土曜 23:30 更新 | ニコニコチャンネル | |
2015年4月12日 - | 日曜 12:00 更新 | dアニメストア |
アニメ放題 | ||
2015年4月19日 - | U-NEXT | |
2015年4月20日 - | 月曜 0:00 更新 | バンダイチャンネル |
2015年4月23日 - | 木曜 12:00 更新 | アニメパス |
BD / DVD
巻 | 発売日 | 収録話 | 規格品番 | |
---|---|---|---|---|
BD | DVD | |||
1 | 2015年6月17日 | 第1話 - 第2話 | PCXE-50531 | PCBE-54861 |
2 | 2015年7月15日 | 第3話 - 第4話 | PCXE-50532 | PCBE-54862 |
3 | 2015年8月19日 | 第5話 - 第6話 | PCXE-50533 | PCBE-54863 |
4 | 2015年9月16日 | 第7話 - 第8話 | PCXE-50534 | PCBE-54864 |
5 | 2015年10月21日予定 | PCXE-50535 | PCBE-54865 | |
6 | 2015年11月18日予定 | PCXE-50536 | PCBE-54866 | |
7 | 2015年12月16日予定 | PCXE-50537 | PCBE-54867 |
映像特典
DVD&Blu-ray 各巻に映像特典としてショートエピソード『吹奏楽部の日常』を収録している。
話数 | サブタイトル | 脚本 | コンテ | 演出 | 作画監督 |
---|---|---|---|---|---|
その① | 楽器をお掃除だフォ! | 田中敦子 | 石原立也 | 丸木宣明 | |
その② | こんなあだ名は嫌だチュー! | 石原立也 | 石原立也 山田尚子 |
瀬崎利恵 | |
その③ | 吹奏楽部男子の日常だボーン! | 石原立也 | 秋竹斉一 | ||
その④ | チューバ君は王子様なのバス! | 山田尚子 | 瀬崎利恵 |
CD
発売日 | タイトル | 備考 |
---|---|---|
2015年4月22日 | DREAM SOLISTER(歌:TRUE) | オープニング主題歌 |
2015年5月13日 | トゥッティ!(歌:北宇治カルテット) | エンディング主題歌 |
2015年7月1日 | キャラクターソング Vol.1 黄前久美子(CV. 黒沢ともよ) | |
2015年7月8日 | おもいでミュージック | オリジナルサウンドトラック |
2015年7月8日 | キャラクターソング Vol.2 加藤葉月(CV. 朝井彩加) | |
2015年7月15日 | キャラクターソング Vol.3 川島緑輝(CV. 豊田萌絵) | |
2015年7月22日 | キャラクターソング Vol.4 高坂麗奈(CV. 安済知佳) | |
2015年8月19日 | TVアニメ『響け! ユーフォニアム』ドラマCD | ドラマCD |
2015年8月19日 | TVアニメ『響け! ユーフォニアム』ラジオCD「響け! ユーフォラジオ」 | ラジオCD |
Webラジオ
『響け!ユーフォラジオ』のタイトルで2015年4月13日より音泉にて配信されているWebラジオ番組[21]。毎週月曜に更新。パーソナリティは黒沢ともよ(黄前久美子 役)、朝井彩加(加藤葉月 役)、豊田萌絵(川島緑輝 役)、安済知佳(高坂麗奈 役)が務める。
エピソードリスト
# | タイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 楽器作監 |
---|---|---|---|---|---|---|
第一回 | ようこそハイスクール
| 花田十輝 | 山田尚子 | 作画監督:秋竹斉一 | 楽器作監:高橋博行 | |
中学校の吹奏楽コンクール予選。主人公・黄前久美子は「ダメ金」(上位大会に出場できない金賞)の結果に悔し泣きする高坂麗奈に不用意な言葉をかけ、彼女を激怒させてしまう。心機一転、北宇治高校に入学した久美子は、新入生を歓迎する吹奏楽部の演奏を耳にして、そのレベルの低さに落胆する。その後、同じクラスの加藤葉月や川島緑輝に誘われ、見学に訪れた吹奏楽部で麗奈と再会。久美子は、彼女との関係や吹奏楽部の現状に悩んで入部をためらう。しかし早々とマウスピースを買ってしまった葉月や無邪気で一途な緑輝を見て吹奏楽部への入部を決意する。 | ||||||
第二回 | よろしくユーフォニアム | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:石原立也 | 作画監督:引山佳代 | 楽器作監:高橋博行 | |
久美子は麗奈との和解を模索するものの、なかなかきっかけがつかめない。吹奏楽部には、同じ中学だった塚本秀一や幼なじみの斎藤葵の姿もあった。新入部員の担当楽器決めで、コントラバス経験者の緑輝は自身の熱望とコンバス不在の部の実情が合致したことでコンバス担当に決定、葉月は副部長の田中あすかにまるめ込まれチューバ担当に決定、久美子はトロンボーンを希望していたものの、ユーフォニアム(ユーフォ)経験者であることがばれ、しぶしぶユーフォ担当になる。トランペット希望の麗奈は音出しだけでその実力と素質で先輩たちを驚かせる。そして北宇治高校吹奏楽部の面々の前に新たな顧問の教師滝昇が着任。滝は着任早々部員たちに楽しい部活にするか、全国を目指すために厳しい部活の内容にするかの決断を部員たちに迫る。部員たちは戸惑いながらも、部の目標は「全国大会を目指す」ことに決定した。 | ||||||
第三回 | はじめてアンサンブル | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:山村卓也 | 作画監督:池田和美 | 楽器作監:高橋博行 | |
新入生を交え楽器別のパート練習に入った吹奏楽部。しかし久美子は、パートによって練習に対する温度差があることに気づく。はじめて滝の前で合奏した「海兵隊」は、案の定ひどい出来であった。滝はパート練習ができておらず指導以前の問題であると温和な口調で厳しく指摘。来週の合奏でまともなレベルになっていなければマーチングイベント「サンライズフェスティバル(サンフェス)」も出場させないと言い渡す。久美子たちは秀一から、去年「やる気のある1年生(現2年生)」が大量退部したため、2年生が少なく不真面目な練習態度につながっていると聞かされる。滝のやり方に一部の部員が猛反発、このため翌日は練習自体が中止になってしまう。なすすべない久美子たちに聞こえてきたのは麗奈が一人トランペットで奏でる「新世界より」だった。 | ||||||
第四回 | うたうよソルフェージュ | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ:石原立也、山田尚子 | 演出:雪村愛 | 作画監督:植野千世子 | 楽器作監:高橋博行 |
部員からの不満を受けて開かれたパートリーダー会議で、来週の合奏後サンフェス出場許可が下りなければ正式に抗議すると決定する。だが音楽室にやってきた滝は穏やかな態度で部員たちに徹底した練習指導を行う。グラウンドでの走りこみ、呼吸法、正確なチューニング、音にあわせて声を出すソルフェージュ…。今まで経験したことのない厳しさに泣き出す者、反発する者。秀一が久美子に滝の指導力をぼやいていると通りがかった麗奈が激しい口調で滝をかばう。翌日麗奈は久美子を呼び出し昨日の暴言を謝る。久美子もうろたえながら麗奈のトランペットで元気が出たと伝え、わだかまりが少し解けたと感じる。部員たちの滝への不満は団結力へと変わり、全パートが熱心に練習に取り組む。そして2回目の合奏。滝はその上達ぶりをほめ、サンフェスの練習メニューを配布する。 | ||||||
第五回 | ただいまフェスティバル | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:三好一郎 | 作画監督:丸木宣明 | 楽器作監:高橋博行 | |
サンフェスを1週間後に控え吹奏楽部は練習の日々。「海兵隊」合奏以後、部員たちに「頑張れば良くなる」という空気が生まれ、練習でも自ら延長を申し出るほどになった。そして迎えたサンフェス当日。プログラムでは、北宇治高校は強豪校の立華高校と洛秋高校に挟まれており、部員たちの緊張は一気に高まる。久美子は会場で立華高校に進学した旧友佐々木梓と再会。彼女から麗奈が立華からの推薦を蹴り北宇治高校に入学したことを知る。立華の見事な演奏にどよめく観客、ますます緊張する北宇治の部員たち。それを鎮めたのは麗奈のルール違反のトランペット一声だった。滝に促され、北宇治高校吹奏楽部は堂々たる演奏を披露、会場の観客の注目を集めた。 | ||||||
第六回 | きらきらチューバ | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:河浪栄作 | 作画監督:引山佳代 | 楽器作監:高橋博行 | |
サンフェスも無事成功し、コンクールの練習がスタート。滝はオーディションで出場メンバーを決めると宣言。上級生から順にメンバーを決める慣例の否定に部員から反発の声もあったが、実力があればいいという正論にはかなわない。初心者の葉月は受かるのは無理とあきらめていたが、あすかに叱咤激励され、重いチューバを持ち帰ってまで練習に打ち込む。中学時代テニス部で挫折していた葉月はチューバだけはうまくなりたいと思うようになっていた。さらに久美子と緑輝と共に練習のモチベーションを見つけようと同じチューバ担当の後藤卓也や長瀬梨子に相談するが、答えは見つからない。低音パートチームで話し合っているうち、葉月は基礎練習ばかりで一度も合奏したことがないのに気がつく。久美子と緑輝は葉月に3人で合奏を行うことを提案。「きらきら星」を合奏した葉月は「めっちゃ楽しい!」と笑顔を見せた。 | ||||||
第七回 | なきむしサクソフォン | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:武本康弘 | 作画監督:西屋太志 | 楽器作監:高橋博行 | |
ある日久美子は、葵が受験勉強のため退部するという話を耳にする。秀一は先輩に聞いた話として昨年の部員退部騒動に関係があるのではないかという。合奏練習中、滝から練習不足を指摘された葵は「部活やめます。今のままでは志望校に行けないから。」と言って音楽室を出る。葵は、引き止めにきた部長の小笠原晴香に、高校受験に失敗したため大学受験に力を入れなければならず、さらに退部騒動を止められなかった自分が全国を目指すことはできないと吐露。晴香はショックで翌日学校を欠席する。久美子たちは2年生の中川夏紀から、去年練習を求める1年生を3年生が無視し続け大量退部に至った話を聞く。晴香の見舞いに訪れた中世古香織は「晴香が部長を引き受けてくれたから今の部がある」と励ます。次の日出席してきた晴香のもと吹奏楽部はさらに練習に励む。 | ||||||
第八回 | おまつりトライアングル | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:藤田春香 | 作画監督:秋竹斉一 | 楽器作監:高橋博行 | |
葉月は久美子と緑輝に秀一に好意を抱いていることを打ち明ける。緑輝は「あがた祭り」に誘って告白することを提案。祭りの日が近づき吹奏楽部員たちも浮き足だっていた。祭りに行く気のなかった久美子だが、秀一に誘われ、断るためとっさに通りがかった麗奈の手をつかんで「この子と行くことにしてて」と言ってしまう。いつもどおり部活が終わり、部員たちは思い思いに祭りに出かける。久美子は麗奈の指示どおりユーフォを背負って待ち合わせ場所へ。麗奈と大吉山に登る。「特別になりたい。だからトランペットをやってる。」と語る麗奈の魅力に圧倒される久美子。頂上の展望台についた二人はトランペットとユーフォで合奏。一方秀一を誘い出すことに成功した葉月は自分の思いを打ち明けるが振られてしまう。あきらめて明るく別れた葉月だったが、心配して待っていた緑輝の前で号泣する。 | ||||||
第九回 | おねがいオーディション | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:北之原孝將 | 作画監督:瀬崎利恵 | 楽器作監:高橋博行 | |
葉月の失恋に責任を感じる緑輝は練習に身が入らず、低音パートリーダーのあすかをいらだたせる。葉月に説得され緑輝はようやく元気を取り戻す。トランペットパートの中世古香織は高校最終学年であるためソロパートの練習に余念がなかった。そして、オーディション当日、久美子はやる気のなさそうだった2年生の中川夏紀のユーフォの上達ぶりに驚き、あらためて部全体が本気でコンクールを目指しているのだと気づく。オーディションは音楽室に一人ずつ呼ばれて行われた。後日の結果発表で、久美子のいる低音パートは初心者の葉月と夏紀の2人以外は全員合格。トランペットのソロパートは1年生の麗奈に決定し、部内に衝撃が走る。 | ||||||
第十回 | まっすぐトランペット | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:山村卓也 | 作画監督:池田和美、秋竹斉一 | 楽器作監:高橋博行 | |
久美子の中学時代の苦い記憶。それはコンクールメンバーに選ばれたことで先輩から「あんたがいなければコンクールで吹けたのに」と言われたことだった。放課後、夏紀は久美子を呼び出し、やる気になれたことを感謝して久美子の楽譜に応援メッセージを書く。夏紀の心遣いに涙しようやく気持ちがほぐれる久美子。一方、香織を慕う2年生の吉川優子は香織がソロをはずされたことに納得できず、部員全員の前で滝と麗奈が以前から知り合いだったこと、贔屓(ひいき)をしたのではないかと滝を問い詰める。部内で滝に対する不信感が高まる。麗奈は滝を慕って北宇治に進学したと久美子に打ち明ける。事態打開のため、滝は公開で再オーディションを行うと発表、希望者を募る。手を挙げたのは香織だった。 | ||||||
第十一回 | おかえりオーディション | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ・演出:雪村愛 | 作画監督:植野千世子 | 楽器作監:高橋博行 | |
再オーディションに向けて練習する香織と麗奈。しかしその実力差は優子にも明らかだった。思いつめた優子は麗奈を呼び出し自分のせいにしていいから香織にソロを譲ってやってほしいと懇願するが、麗奈はきっぱり拒絶する。練習のため借りたホールで行われた再オーディション。孤立する不安をもらした麗奈に、絶対味方になると誓う久美子。ステージ上で全力を尽くした演奏を披露した香織だが、麗奈はそれをはるかに上回っていた。滝からソロを吹きたいかと問われた香織は「高坂さんが吹くべきだと思います」と答える。客席では優子が泣き崩れていた。 | ||||||
第十二回 | わたしのユーフォニアム | 脚本: 花田十輝 | 絵コンテ・演出: 三好一郎 | 作画監督: 丸木宣明 | 楽器作監: 高橋博行 | |
再オーディションも終わり、吹奏楽部はコンクールに向けて最後の追い込みに入る。滝は「三日月の舞」でユーフォ担当のあすかと久美子に別のフレーズを吹くよう指示。あすかは難なく吹いてみせるが久美子はうまく吹けない。滝からできるようになるかと聞かれ「できます」と答えた久美子。しかし後日の練習では、滝はそのフレーズをあすか一人で吹くように指示する。帰り道「うまくなりたい」と叫び悔し泣きする久美子は中学時代の大会で悔し涙を流していた麗奈の気持ちをようやく理解する。学校に忘れた携帯を取りに戻った久美子は鍵を開けてくれた滝から「できます」と言った自分の言葉を信じていると聞き、やる気を取り戻す。 | ||||||
最終回 | さよならコンクール | 脚本:花田十輝 | 絵コンテ:山田尚子 | 演出:河浪栄作 | 作画監督:引山佳代、秋竹斉一、瀬崎利恵 | 楽器作監:高橋博行 |
京都府吹奏楽コンクール当日、オーディション落選組は手作りのお守りをレギュラー部員に配り激励する。緊張の中、迎えた本番のステージ。「全国へ行きたい」の思いを胸に演奏する久美子たち。結果は金賞。そして関西大会出場校は……。笑顔の集合写真で物語は幕を閉じる。 |
出典
- ^ a b c d “「響け! ユーフォニアム」コミカライズ1巻、TVアニメ開始間近の吹奏楽ドラマ”. コミックナタリー (2015年4月3日). 2015年8月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “宇治に光、吹奏楽部小説がヒット…同大4年武田さん作”. 読売新聞 (2015年5月27日). 2015年6月27日閲覧。
- ^ a b 武田綾乃『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』宝島社、2015年、pp.3, 270。 “あらすじ・新刊情報”. 宝島社特設サイト「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」. 宝島社. 2015年8月25日閲覧。
- ^ a b “宇治舞台に吹奏楽部の青春描く 同大生で作家の武田さん”. 京都新聞 (2014年1月6日). 2015年4月7日閲覧。
- ^ はみ『このマンガがすごい!comics 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』第1巻あとがき
- ^ “吹奏楽部の青春描く「響け! ユーフォニアム」はみ作画でマンガ化”. コミックナタリー (2014年12月3日). 2015年8月26日閲覧。
- ^ a b “STAFF/CAST”. TVアニメ 「響け!ユーフォニアム」 公式ホームページ. 2015年8月30日閲覧。
- ^ a b c “STORY”. TVアニメ 「響け!ユーフォニアム」 公式ホームページ. 2015年8月30日閲覧。
- ^ a b c 成馬零一「『響け! ユーフォニアム』とは?」『CD Journal』2015年8月号、音楽出版社、p.7。 “アサダニッキ装画の小説「響け! ユーフォニアム」京アニ制作でアニメ化”. コミックナタリー (2014年12月28日). 2015年8月26日閲覧。
- ^ a b 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第1巻、第1話スタッフコメンタリー(石原立也、山田尚子)。
- ^ a b c d e f g 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第1巻、第2話スタッフコメンタリー(石原立也、花田十輝)。
- ^ 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第1巻、第2話スタッフコメンタリー、同ブックレット p.7。
- ^ 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第1巻、第2話スタッフコメンタリー。同 第2巻、第4話スタッフコメンタリー。
- ^ a b c d e f g 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第2巻、第4話スタッフコメンタリー(石原立也、篠原睦雄)。
- ^ a b c d e f g h i j k l 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第2巻、第3話スタッフコメンタリー(石原立也、池田晶子)。
- ^ a b c d e f g 成馬零一「スタッフ座談会で読み解く『響け! ユーフォニアム』」『CD Journal』2015年8月号、音楽出版社、pp.8-9。
- ^ 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第3巻、第5話スタッフコメンタリー(山田尚子、斎藤滋)。
- ^ 『響け! ユーフォニアム』(ブルーレイ版)第3巻ブックレット、p.12。
- ^ a b “ON AIR”. TVアニメ 「響け!ユーフォニアム」 公式ホームページ. 2015年8月30日閲覧。
- ^ テレビ放送対象地域の出典:
- 政府規制等と競争政策に関する研究会 (2009年10月9日). “放送分野の動向及び規制・制度(資料2)” (PDF). 通信・放送の融合の進展下における放送分野の競争政策の在り方. 公正取引委員会. p. 2. 2018年10月24日閲覧。
- “基幹放送普及計画”. 郵政省告示第六百六十号. 総務省 (1988年10月1日). 2022年5月11日閲覧。
- “地デジ放送局情報”. 一般社団法人デジタル放送推進協会. 2022年8月5日閲覧。
- ^ “響け!ユーフォラジオ”. 音泉. 2015年4月10日閲覧。
外部リンク
- 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ - 宝島社特設サイト
- 漫画「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」 - このマンガがすごい!WEB
- TVアニメ「響け!ユーフォニアム」公式サイト
- TVアニメ「響け!ユーフォニアム」 (@anime_eupho) - X(旧Twitter)