牛の首
牛の首(うしのくび)は、古くから伝わる都市伝説の一つである。
概要
[編集]「『牛の首』というとても恐ろしい怪談があり、これを聞いた者は恐怖のあまり身震いが止まらず、三日と経たずに死んでしまう。怪談の作者は、多くの死者が出たことを悔い、これを供養するため仏門に入り、人に乞われても二度とこの話をすることは無く、世を去った。この怪談を知るものはみな死んでしまい、今に伝わるのは『牛の首』と言う題名と、それが無類の恐ろしい話であった、ということのみである」というもの [1]。
解説
[編集]ここで挙げられている「牛の首」という怪談自体は存在しない。しかしその形骸が「今まで聞いたこともない怖い話」として語り継がれることがこの話の特徴である[要出典]。
超常現象研究家の並木伸一郎は「怖いもの見たさの好奇心が生み出した、幻の都市伝説」と自著の中で述べている[2]。「無類の恐ろしい話」と謳われる怪談の内容を知りたいという好奇心から、次々と噂が流布され、「実態の無い恐怖の増殖」が繰り返されていく様が「牛の首」そのものと言って差し支えない。[独自研究?]
代表的な都市伝説の一つとして語り継がれている。
1965年に執筆された小松左京による同名・同内容の短編小説が存在するため、そこから流布したとする説もあるが[3][4]、小松によれば出版界にもともとそうした小咄があったという[5]。
この小咄を広めたのは、「牛の首」を今日泊亜蘭から聞いて、1973年に世界一怖い怪談として『夕刊フジ』連載のエッセイで紹介した筒井康隆との説もあるが[6]、真偽は定かではない。都市伝説蒐集家の松山ひろしは「作家仲間内のネタが、筒井氏のエッセイをきっかけに世間に広まった」と分析している[7]。
なお、インターネット上には「牛の首の真の内容」と称される話がいくつか出回っているが、いずれも一次資料による裏付けがなく、本物と証明されたものはない。[独自研究?]
小松左京の小説
[編集]『サンケイスポーツ』1965年(昭和40年)2月8日号に掲載されたショートショート。『ある生き物の記録』(ハヤカワ・SF・シリーズ、1966年、集英社文庫、1982年)、『鏡の中の世界』(ハヤカワJA文庫、1974年、角川文庫、1978年)、『小松左京ショートショート全集』(勁文社、1995年)、『小松左京全集 完全版 25』(城西国際大学出版会、2017年)他に再録。
- あらすじ
- 怪談好きの「私」は、「牛の首」という恐ろしい怪談がある、という話を聞きつけ、その内容を教えてもらおうとあちこち尋ねてまわるが、誰もが異口同音に「あんな恐ろしい話はきいたことがない」と言うばかりで、内容を話してくれない。そのうちに「私」は真相に気づいて震え上がる。
実在の怪談「牛の首」
[編集]都市伝説との関連は不明であるが、同名の「牛の首」という怪談が実在する。大正15年(1926年)刊行の『文藝市場』第2巻第3号に、石角春洋(石角春之助)が父親から聞いた話として同名の記事を執筆している[8]。
関連項目
[編集]- くだんのはは
- 件
- 赤い洗面器の男
- ズンドコベロンチョ
- しろうるり
- 鮫島事件 - 2ちゃんねる版の「牛の首」といえる創作
- 殺人ジョーク - 「聞いただけで笑い死ぬ話」を軸にしたモンティ・パイソンのスケッチ。テレビ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』で放送
出典
[編集]- ^ 並木伸一郎『最強の都市伝説』 3巻(初版)、経済界、2009年6月、p.108頁。ISBN 978-4-7667-8450-3。
- ^ 並木伸一郎『最強の都市伝説』 3巻(初版)、経済界、2009年6月、p.110頁。ISBN 978-4-7667-8450-3。
- ^ 松山ひろし『3本足のリカちゃん人形 真夜中の都市伝説』イースト・プレス、p.213
- ^ 宇佐和通 『THE都市伝説』 新紀元社、2004年、p.93
- ^ 小松左京「インタビュー」『午後のブリッジ―小松左京ショートショート全集』 〈5〉、角川春樹事務所。ISBN 978-4758430739。
- ^ 筒井康隆「恐怖」『狂気の沙汰も金次第』新潮文庫、1976年、p.260
- ^ 松山ひろし 『3本足のリカちゃん人形―真夜中の都市伝説』 イースト・プレス、2003年、p.216
- ^ 【ムー妖怪コラム】娘の死を知らせる牛の首――大正時代の書物から妖怪研究家・黒史郎が幻の妖怪を発掘!、GetNavi web、2016年12月4日。