爪切り事件
爪切り事件(つめきりじけん)とは、2007年6月に福岡県北九州市の北九州八幡東病院の看護師が同病院に入院中の患者の爪を剥がしたと誤認され傷害罪で逮捕された事件。控訴審で正当な医療行為であったと認められ無罪判決となった[1]。
概要
[編集]2007年6月に北九州八幡東病院で看護師の内部告発により、看護師が認知症の高齢者の爪を剥いだとし、「意思疎通が困難な患者に対し、家族、医師、同僚に知らせずに出血を伴う行為をすることは医療倫理に反する」とし、高齢者虐待が疑われる事案と発表した。
同年7月に傷害罪で逮捕。入院中の89歳女性と70歳女性の計2人の足の爪計3枚を深く切り、出血を伴う約10日の怪我をさせた傷害罪で起訴された。北九州市の第三者機関・尊厳擁護専門委員会が看護師による爪切りを虐待認定した。
看護師は公判では自白調書の内容を一転否認したものの、1審の福岡地裁は、出血を生じても看護行為ならば傷害罪にはならないとしながらも、当初は医師や上司や患者家族に対して自分の関与を否定する虚偽の説明をしていたことや「爪切り自体に楽しみを覚えていた」などと書かれていた供述調書を採用して、動機に問題があったとして懲役6月執行猶予3年の有罪判決を下した。
2010年9月16日、福岡高裁は判決において、結果として微小な出血が生じ、事後の観察もせず放置し、当初は医師や上司や患者家族に対して虚偽の説明をしたことなど被告の不適切さを認定したが、一方で看護行為として必要性があり、手段や方法も相当であり正当業務行為として違法性が阻却されるとして無罪判決を下した[2]。また被告の行為にあわない表現が多いとして自白調書の信用性を否定された。
検察は上告を断念して無罪判決が確定した。