以下の定積分をそれぞれ、第一種、第二種、第三種の楕円積分(だえんせきぶん、英: elliptic integral)という。ただし、である。
定数を母数(modulus)、を特性(characteristic)という。母数の代わりにパラメーター、あるいはモジュラー角を用いることもあり、慣れない人を混乱させる種になっている。日本語の場合は、特性を助変数(通常はparameterの訳語)と称することもあるので更に注意が必要である。
楕円の弧長など、三次式、或いは四次式の平方根の積分や五次以上の高次方程式は楕円積分に帰着し、初等的に求まらないことが知られている。
最初に示したものはヤコービの標準形であるが、ヤコービの標準形において積分変数と置けば(置換積分)、幾らか簡単なルジャンドルの標準形が得られる[1]。
の場合は逆三角関数に、の場合は逆双曲線関数になる[2]。
ただし、は逆グーデルマン関数である。また特にのとき、第三種楕円積分は第二種楕円積分で表すことができて、
となる。
第一種完全楕円積分は、ルジャンドルの標準形における第一種楕円積分の積分範囲をまでとしたものである[3]。
のテイラー級数に展開した後、ウォリスの公式を用いて項別に積分すると
となる。ただし、[4]と定義する。
第二種完全楕円積分は、ルジャンドルの標準形における第二種楕円積分の積分範囲をまでとしたものである[5]。
のテイラー級数に展開した後、ウォリスの公式を用いて項別に積分すると
となる。ただし、と定義する。
次の恒等式をルジャンドルの関係式という。
次の恒等式をランデン変換という。
次の恒等式をガウス変換という。
楕円の弧長は、
となる。離心率を用いれば、上式は、
となり、第二種楕円積分が現れる。
したがって、楕円の円周上で座標がの点から座標がの点までの弧長はとなる。
ここでとすれば楕円は真円になり、弧長はとなる(ここではが軸の方向になっていることに注意すること。)。
- ^ ルジャンドルの標準形のφとヤコービの標準形のxとの間には、の関係がある。詳しくは置換積分を参照。
実際に置換積分を行う際には、より、となり、と変形されることに留意せよ。
- ^ 第二種楕円積分では、k=1と置くと双曲線関数でもない一次式のxとなる。
- ^ ヤコービの標準形においては、積分範囲はまでとなる。
- ^ 詳しくは二重階乗の記事を参照。
- ^ ヤコービの標準形においては、積分範囲はまでとなる。
- 森口繁一・宇田川銈久・一松信『岩波 数学公式I 微分積分・平面曲線』(新装版)岩波書店、1987年、140-151頁。ISBN 978-4000055079。
- 竹内端三「楕円函数論」岩波全書(1936年5月15日)、ISBN 978-4-000213271.
- Cody, W. J.: "Chebyshev approximations for the elliptic integrals K and E", Math. Comp., vol.19, pp.105-112 (1965).
- Roland Bulirsch: "Numerical calculation of elliptic integrals and elliptic functions", Numer.Math.,vol.7, pp.78–90 (1965).
- Toshio Fukushima: "Fast computation of complete elliptic integrals and Jacobian elliptic functions", Celest Mech Dyn Astr, vol.105, pp.305328 (2009).
- Fredrik Johansson: "Numerical Evaluation of Elliptic Functions, Elliptic Integrals and Modular Forms" (2018).