村山浩昭
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村山 浩昭(むらやま ひろあき、1956年12月21日 - )は、日本の弁護士、元裁判官[1][2]。2017年(平成29年)9月30日より大阪高等裁判所部総括判事を務める[2]。2021年(令和3年)12月21日に定年退官[2]。
裁判官としては、冤罪の可能性が高い袴田事件について2014年(平成26年)、静岡地方裁判所で裁判長として、物証が捏造された可能性が高いと指摘して再審開始と元被告人(死刑囚)釈放の決定を出した[1]ことなどで知られる(後述)。
経歴
[編集]- 1975年 - 東京都立小山台高等学校卒業
- 1981年 - 東京大学法学部卒業
- 1983年 - 最高裁判所司法研修所修了(35期)
- 1983年4月12日 - 1985年3月31日:大阪地方裁判所判事補[2]
- 1985年4月1日 - 1986年4月11日:富山地方裁判所・富山家庭裁判所判事補[2]
- 1986年4月12日 - 1988年3月31日:富山地方裁判所・富山家庭裁判所判事補、富山簡易裁判所判事[2]
- 1988年4月1日 - 1991年3月31日:福島家庭裁判所・福島地方裁判所郡山支部判事補、郡山簡易裁判所判事[2]
- 1991年4月1日 - 1993年3月31日:東京地方裁判所判事補・東京簡易裁判所判事[2]
- 1993年4月1日 - 1993年4月11日:東京簡易裁判所判事・東京地方裁判所判事補[2]
- 1993年4月12日 - 1994年3月31日:東京簡易裁判所判事・東京地方裁判所判事[2]
- 1994年4月1日 - 1998年3月31日:長野地方裁判所・長野家庭裁判所諏訪支部判事、諏訪簡易裁判所判事[2]
- 1998年4月1日 - 2002年3月31日:東京地方裁判所判事・東京簡易裁判所判事[2]
- 2002年4月1日 - 2006年3月31日:福島地方裁判所。福島家庭裁判所いわき支部長、いわき簡易裁判所判事[2]
- 2006年4月1日 - 2008年11月16日:東京高等裁判所判事・東京簡易裁判所判事[2]
- 2008年11月17日 - 2012年8月19日:東京地方裁判所部総括判事・東京簡易裁判所判事[2]
- 2012年8月20日 - 2014年7月25日:静岡地方裁判所・静岡家庭裁判所部総括判事、静岡簡易裁判所判事[2]
- 2014年7月26日 - 2015年10月5日:盛岡地方裁判所・盛岡家庭裁判所所長[2]
- 2015年10月6日 - 2017年9月29日:名古屋高等裁判所部総括判事[2]
- 2017年9月30日 - 大阪高等裁判所部総括判事[2]
- 2021年9月30日 - 定年退官
- 2022年 - 弁護士法人法律事務所ヒロナカ入所
主な担当訴訟
[編集]- 1988年2月9日(富山地裁裁判官):富山・長野連続女性誘拐殺人事件の第一審判決(裁判長:大山貞雄、右陪席裁判官:大谷直人)で、左陪席裁判官を担当[3]。共同正犯とされた被告人2人のうち、女1人に死刑(求刑:同)、男性1人に無罪(求刑:無期懲役)をそれぞれ宣告[3]。
- 2009年11月9日(東京地裁裁判官) - 覚醒剤取締法違反(所持および使用)の罪に問われた被告人の酒井法子に対し、懲役1年6か月・執行猶予3年の有罪判決[4][5]。
- 2011年3月24日(東京地裁裁判長) - 秋葉原通り魔事件で殺人罪などに問われた被告人の男(加藤智大)に死刑判決[5]。
- 2014年3月27日(静岡地裁裁判長) - 袴田事件の第二次再審請求審で、再審開始と、死刑囚(袴田巌)への死刑および拘置の執行停止を決定[5]。
- 2016年6月29日(名古屋高裁裁判長) - 全地球測位システム(GPS)端末を無断で対象車両に取り付ける捜査を「裁判所の令状なしでは違法」と判断し[6]、捜査に関する立法措置の必要性に異例の言及をした[5]。なおこの刑事訴訟で窃盗罪に問われていた被告人の男については、第一審・名古屋地方裁判所判決同様、懲役6年の有罪判決を言い渡した[6]。
- 2016年5月8日(名古屋高等裁判長) - 逮捕監禁、自殺ほう助で起訴、有罪判決を言い渡した元中京学院大学准教授に対して、本人より「裁判所に提出された証拠偽造がある」との上申書を受けて「拘留停止」の裁判長決定をする。
- 2016年11月28日(名古屋高裁裁判長) - 収賄事件で起訴された被告人の藤井浩人(美濃加茂市長)に対し、第一審・名古屋地裁の無罪判決を破棄した上で懲役1年6月・執行猶予3年・追徴金30万円の有罪判決を言い渡した[7][5]。
- 淡路島5人殺害事件控訴審(大阪高裁第6刑事部裁判長)[8] - 第一審の神戸地裁(裁判員裁判)で死刑判決を受けた被告人の男に対する審理(2018年9月28日・初公判)にて精神鑑定実施を職権で決定した[9][10][11]。その後、2020年1月27日の控訴審判決公判でその精神鑑定の結果を基に「被告人は犯行当時、責任能力が減退した心神耗弱状態だった」と認定して第一審判決を破棄し無期懲役判決を言い渡した[12]。
- 2019年10月25日(大阪高裁裁判長) - 生後2か月の孫を揺さぶって虐待死させたとして傷害致死罪に問われた被告人の女性に対し、第一審の大阪地裁で言い渡されていた有罪判決(懲役5年6か月の実刑)を破棄して無罪を言い渡した[13]。判決では「乳幼児揺さぶられ症候群を単純に適用することは機械的で画一的な事実認定を招き事実誤認をする恐れがある」と警鐘を鳴らした[14]。
脚注
[編集]- ^ a b 「袴田さん 元裁判長と対面/9年前に再審・釈放決定」『産経新聞』朝刊2023年5月20日(社会面)2023年5月27日閲覧
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “裁判官情報:村山浩昭”. 新日本法規WEBサイト. 新日本法規出版. 2021年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月10日閲覧。
- ^ a b 富山地方裁判所刑事部判決 1988年(昭和63年)2月9日 、昭和55年(わ)第74号・昭和55年(わ)第128号、『みのしろ金目的拐取、殺人、死体遺棄、拐取者みのしろ金要求被告事件』。
- 判決主文:被告人Mを死刑に処する。被告人Xは無罪。
- 裁判官:大山貞雄(裁判長)、大谷直人、村山浩昭(村山は転補のため署名押印できず)
- 「富山、長野連続女性誘拐殺人事件 共同正犯として起訴された被告人両名に対し、一方の単独犯行であるとして1人に対しては死刑の言渡しをし、他方については犯罪の証明がないとして無罪の言渡しをした事例」『判例タイムズ』第39巻第24号、判例タイムズ社、1988年10月31日、187-264頁、2021年3月29日閲覧。 - 通巻第673号(臨時増刊)
- 「実効正犯及び共謀共同正犯として二人が起訴された連続誘拐殺人事件において、実行正犯とされた者については有罪が認定できるが、共謀共同正犯とされた者については被告人及び共犯者の自白は信用できず有罪とは認定できないとして、一人に死刑、一人に無罪を言い渡した事例――富山・長野連続誘拐殺人事件第一審判決 富山地裁 63. 2. 9 判決」『判例時報』第1288号、判例時報社、1988年12月1日、3-81頁、doi:10.11501/2795299。
- ^ 酒井被告に有罪判決 「覚せい剤に依存性」 東京地裁 懲役1年6月、猶予3年『中日新聞』夕刊2009年11月9日13頁(第一社会面13頁)
- ^ a b c d e 「村山浩昭裁判長 袴田事件再審認める」『中日新聞』朝刊2016年11月29日31頁(第一社会面)
- ^ a b 「令状ないGPS捜査、二審も「違法」 名古屋高裁判決」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2016年6月29日。オリジナルの2016年6月29日時点におけるアーカイブ。2016年12月1日閲覧。
- ^ 美濃加茂市長 逆転有罪 贈賄側証言「信用できる」 名高裁判決 市長側、即日上告『中日新聞』朝刊2016年11月29日1面
- ^ “大阪高等裁判所刑事部 担当裁判官一覧”. 裁判所ウェブサイト (2018年8月1日). 2018年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月28日閲覧。
- ^ 「洲本5人殺害 3度目の精神鑑定へ 控訴審初公判」『神戸新聞NEXT』神戸新聞社、2018年9月28日。オリジナルの2018年9月28日時点におけるアーカイブ。2018年9月28日閲覧。
- ^ 「一審死刑の被告、再鑑定へ=淡路島5人刺殺控訴審-大阪高裁」『時事通信』時事通信社、2018年9月28日。オリジナルの2018年9月28日時点におけるアーカイブ。2018年9月28日閲覧。
- ^ 戸上文恵、遠藤浩二「洲本5人殺害控訴審:再度精神鑑定へ 責任能力の有無争点」『毎日新聞』毎日新聞社、2018年9月28日。オリジナルの2018年9月28日時点におけるアーカイブ。2018年9月28日閲覧。
- ^ 「淡路島5人殺害 死刑破棄 心神耗弱認め無期判決」『東京新聞』中日新聞社東京本社、2020年1月27日、夕刊。オリジナルの2020年1月27日時点におけるアーカイブ。2020年1月27日閲覧。
- ^ 遠藤隆史「「孫揺さぶり死なせた」祖母に逆転無罪判決 大阪高裁」『』2019年10月25日。オリジナルの2020年1月27日時点におけるアーカイブ。2020年1月27日閲覧。
- ^ 「【特集】「乳児虐待捜査」の“恐ろしさ“…気が付けば「無実の人」が有罪に 孫への“揺さぶり”疑われた祖母に『逆転無罪』」『報道ランナー』関西テレビ放送、2019年11月5日。オリジナルの2020年1月27日時点におけるアーカイブ。2020年1月27日閲覧。