月長石 (小説)
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『月長石』(げっちょうせき、The Moonstone)は、イギリスのヴィクトリア朝の小説家ウィルキー・コリンズの長編探偵小説。1868年出版。
T・S・エリオットは「最初の、最長の、最上の探偵小説」、「最大にして最良の推理小説」と称えている。19世紀後半にイギリス小説界で絶大な人気を得た大ヒット作であり、コリンズの代表作である。
盗難を主題とした推理小説は、のちに怪盗ものが流行するものの、捜査視点で一貫している点、長大さの点で今なお隔絶した孤峰となっている。一方で最上(最良)はさておき、エリオットの言う最初・最長・推理小説かどうかは異論もある[1]。
あらすじ
[編集]1799年にインドに進出したイギリス軍の将校が、バラモン教徒の寺院に長く秘蔵されてきた秘宝・ムーンストーンと呼ばれる黄色いダイヤモンドを奪う。その後、ムーンストーンはイギリスに渡るが、その行くところ行くところに謎のインド人が影のように現れる。
主な登場人物
[編集]- ジョン・ハーンカスル卿 - ムーンストーンを手に入れたインド帰りの軍人。
- レイチェル - ムーンストーンを遺言で相続するジョン卿の姪。
- フランクリン・ブレーク - ジョン卿の義甥。遺言執行人。
- カッフ部長 - スコットランド・ヤードの部長刑事。
特記事項
[編集]- 作中のMoonstoneは、黄色のダイヤモンドで、月長石ではない。そのため、初期の翻訳では邦題を「月神の宝石」としているものもある。
日本語訳
[編集]- 『月長石』中村能三訳〈東京創元社 世界大ロマン全集 第12巻〉、1957年
- 改訳版・創元推理文庫(上下)、1970年、改版(全1巻)、1981年。ISBN 978-4488109011
- 1961年に倒産、翌62年に東京創元新社として再興、1970年に東京創元社に社名を戻した。
映像化
[編集]- 映画(1909年米)(The Moonstone(英語版))
- 映画(1914年米)(The Quest of the Sacred Jewel(イタリア語版))
- 映画(1915年米)(The Moonstone(英語版))
- 映画(1934年米)(The Moonstone(英語版))
- TV映画(1952年米)
- TV連続ドラマ(1952年加)(The Moonstone:Tales of Adventure(英語版))(第2シリーズ、全6話)
- TV映画(1954年米)
- TV映画(1955年西独)(Sergeant Cuff kann den Mondstein nicht finden)
- TV連続ドラマ(1959年英)(全7話)(The Moonstone(英語版))
- TV映画(1971年アルゼンチン)(La piedra lunar)
- TV映画(1972年英)(The Moonstone:Masterpiece(英語版)シーズン2、第3話)
- TV連続ドラマ(1972年伊)(La pietra di luna)(全6話)
- TV映画(1974年西独)(Der Monddiamant)(前後篇)
- TV映画(1996年英)(The Moonstone(英語版)、1997年 U.S.公開)
- TV連続ドラマ(2016年英)(全5話)(The Moonstone(英語版))
- 映画(2017年?)(製作中)
脚注
[編集]- ^ エミール・ガボリオの『ルルージュ事件』(L'Affaire Lerouge )が、1866年に発表されている。また、チャールズ・ディケンズの『荒涼館』は邦訳で4巻・1600ページを超す。