文野紋
ふみの あや 文野 紋 | |
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別名義 | フミヤぶん[1] |
生誕 |
1996年9月1日(28歳) 日本・神奈川県[2] |
職業 |
漫画家 イラストレーター |
活動期間 | 2020年 - |
文野 紋(ふみの あや、1996年9月1日[2] - )は、日本の漫画家[3]、イラストレーター[4]。神奈川県出身[2]。2020年、『月刊!スピリッツ』(小学館)に掲載された『君の曖昧』でデビュー[5]。2023年より『サイコミ』(Cygames)にて、いつまちゃんの原作による『感受点』を連載[6]。
来歴
[編集]生い立ち
[編集]1996年9月1日、神奈川県にて誕生[2]。横浜の田舎で暮らす[7]。幼稚園のころより絵を好み、家族の絵を描いたり、小学1年から読み始めた『ちゃお』(小学館)の真似をして描いたりしていた[2]。漫画好きな兄からも影響を受け、小学生のころの夢はゲームクリエイターであった[2]。そのころに星新一にハマり、友人と小説を交換して過ごしていた[2]。兄が大の読書好きであったため、「お互いに小説を書いたあと、交換して読む」といったことを小学3年くらいのころに行い、それが初めての創作であった[4]。
中学・高校時代
[編集]中学生になり、勉強を楽しいと感じていた文野は、理系の研究者を目指そうと考えていた[2]。中学3年の時に、『週刊少年ジャンプ』(集英社)に投稿をする[1]。冨樫義博の『幽☆遊☆白書』が好きだったことにより、投稿作は「ヤンキー主人公のラブコメマンガ」という内容であった[1]。落選した際に、画塾に行くことを決意[4]。村田雄介の『ヘタッピマンガ研究所R』のインタビューを真剣に読んでいたが、自身で漫画を制作することは、中学3年以降は行っていなかった[1]。
高校生になりアルバイトを始めた文野は、そのお金で高校2年から画塾に通う[2][4]。文野によると、絵の上達を願う一心で、アルバイトを頑張ることができたという[4]。それにより「背景、バース、鉛筆画」が上達し、「ひとつのものを最後まで仕上げるのがとても好きになった」という[2]。このころは美大や芸大を目指しておらず[4]、海洋研究開発機構で深海生物の研究をすることに憧れていたため、理系へと進む[2]。生物より物理が得意になった文野は、将来エンジニアとして一生を生きられるか考えた時に、「できないかも」と思っていた[2]。「絵を描くのにもっと時間を割きたいな」と考え、高校3年になる前に画塾を辞め、美大予備校に通い始める[4]。自由な絵を描きたくなった文野は油絵を学んだ[2]。そして周囲の勧めもあり、美大を受験しようと考える[2]。このころからTwitterでイラストの発表を開始[2]。
イラストレーターから漫画家へ
[編集]現役、浪人と志望校に不合格となり、アルバイトをしながら2浪目となったころ[2]、Twitterにあげたイラストがバズったことにより[8]、翔泳社の「ILLUSTRATION」シリーズで取り上げられ、小説の表紙やポスターなどのイラストの仕事の依頼が入るようになる[1][4]。この時の名義は「フミヤぶん」であった[1]。
20歳まで東京芸術大学の美術学部油画専攻を目指して浪人していた[9]。油絵が唯一の取り柄だと考えていた文野であったが[8]、3回目の受験の不合格を受けて「経済的にも浪人生活を続けられない」と感じ[4]、美大受験を諦めてフリーターとして生活し[1]、2年が経過した[8]。高校卒業までは、頑張れば絵や勉強が得意でいられたことから、「クラスのちょっと凄いヤツ」だと自覚していた文野にとって、大学の不合格という挫折は大きいものであった[8]。22歳のその時期にはアルバイトから帰ると「自分と同じく腐った人間が世間に毒を吐く生配信」を視聴し、ぼんやりと過ごす生活を送っていた[8]。
大学受験に失敗してフリーターをするより、イラストレーターだけでは生活ができないからフリーターをしているといった方が聞こえがよいと考えていた文野は、イラストの仕事に対して、世間に対する言い訳だと考えていた[8]。しかしイラストで生活することは無理だと考えていた文野は、知り合いのイラストレーターがTwitterに漫画を投稿して、読まれていたところを目撃し、「マンガって見てもらえるんだ」と考える[1]。「油絵をやめて目標を失っていた」という文野は、何かに挑戦したい気持ちと、描く仕事で食べていきたいことからイラストレーター以外のことを行おうと考え[8]、漫画を載せればバズるかもという思いもあり[2]、漫画を描いた[8]。漫画家には「普通にありそうな名前が多い印象」と考えた文野は、予備校時代の恩師に「文野紋」と名づけてもらい、漫画家としての名義を改名する[1]。
予備校時代に『ミューズの真髄』の舞台である高円寺を初めて訪れる[7]。文野はGOING STEADYや大森靖子の曲を聴いていたことにより高円寺に憧れを抱き、漫画家として駆け出しのころには、高円寺で暮らしていた[7]。
デビュー
[編集]「これまで描いた油絵やデッサン」を捨て、気分を変えていくうちに、Twitterで漫画が評判になった[2]。文野の場合は出版社の方から依頼を受け、商業誌で漫画を描くようになった[4]。描くなら好きな雑誌で描きたいと考えた文野は[2]、『月刊!スピリッツ』(小学館)の新人賞に投稿して[1]、『Mへのラブレター』が佳作に選ばれ、「やわらかスピリッツ」(同)に掲載となる[2]。2020年に『君の曖昧』が『月刊!スピリッツ』に掲載され、デビューを果たす[5]。Twitterにも「彼氏が女装趣味だった話」として投稿されている同作は、文野が漫画に詳しくなかったこともあり、ネーム作りに難航した[1]。悩んでいた時期にCOMITIAに初めて足を運び、衝撃を受ける[1]。そこで強く印象に残った作品として、たいぼくの『ブルーモーメントの娘たち』を挙げている[1]。SNSで10万いいねを得た作品のリメイク『呪いと性春』を同誌に掲載[10]。デビューから約1年の期間で、同作を表題作とした短編集を発売[5][10]。
商業誌用のネームと並行してCOMITIAで描いていた『呪いと性春』を『コミックビーム』(KADOKAWA)の清水編集長が手に取り、それがきっかけで2021年より『ミューズの真髄』を連載するようになる[1][1][11]。同作で連載デビューを果たす[3]。同作の第1話を「美大コンプの女が裸足で家を飛び出す話」としてTwitterで公開したところ、1.3万リツイートの反響を得る[1]。2023年2月、同作が最終回を迎える[12]。
2023年、『サイコミ』(Cygames)にて、いつまちゃんの原作によるオムニバスホラーの『感受点』の連載を開始[6]。
作風
[編集]ライターの古林恭によると[13]、「どこか歪(いびつ)だが美しいキャラクター」を描いている[14]。
文野が「散らかった部屋」や「汚い部屋」を好んで描く理由は、「生活感を描くのが好きだから」であり、「生活感を描くと俄然、リアリティーが出て」くると考え、「リアルな部屋に住む”漫画の主人公にならないような主人公像”を描きたい」と話している[2]。
人物
[編集]ぷよぷよが趣味の一つで、日に10時間プレイしていた時もあり、女子では日本上位ランカーである[2]。セガ公式「第1回 ぷよぷよレディースカップ」でベスト16になったことがある[15]。
影響を受けた作品など
[編集]少年漫画や少女漫画、青年漫画など、どれも好んで読んでいるという[1]。影響を受けた作品に高屋奈月の『フルーツバスケット』、好きな少年漫画に冨樫義博の作品を挙げている[1]。文野によると、青年誌の雰囲気を持つ冨樫の『レベルE』を読み、「こんな面白いマンガってあるんだ!」と衝撃を受け、そこから青年誌にハマり、岩明均の『寄生獣』などを読んだ[1]。
好きな画家はエリザベス・ベイトンとセシリー・ブラウンである[2]。
ドキュメンタリーを観ることも趣味で、「リアルなドキュメンタリーが面白い」という[2]。「テレビ局の漫画を描きたい」と考え、それについて調べていた文野は、東海テレビ放送の『さよならテレビ』というドキュメンタリーに出会ってハマり、影響を受けたと話している[2]。
作品リスト
[編集]連載
[編集]- ミューズの真髄(『月刊コミックビーム』2020年10月号[11] - 2023年3月号[12]、全3巻) - 初連載作品[3]
- 感受点(原作:いつまちゃん、『サイコミ』2023年9月11日[6] - 2024年6月[16]3日[17]、全1巻)
読み切り
[編集]- Mへのラブレター(「やわらかスピリッツ」2019年6月28日[18]) - スピリッツ賞佳作[2]
- 君の曖昧(『月刊!スピリッツ』2020年3月号[19]) - デビュー作[5]
- 血の領域(『月刊!スピリッツ』2020年7月号[20])- 『呪いと性春 文野紋短編集』収録時には「毒は廻る」に改題[10][21]
- ドキドキ★ZOOM(『ビッグコミックスピリッツ』2020年35号[22]) - Twitterで発表したイラストをもと描いたショート作品[22]、『呪いと性春 文野紋短編集』収録時には「秘密の花園PINK」に改題[10][21]
- 呪いと性春(『月刊!スピリッツ』2020年11月号[23]、2020年12月号[24]) - 前後編[23][24]、『呪いと性春 文野紋短編集』収録[10]
- 僕ら地獄の逃避行(「やわらかスピリッツ」2020年12月26日[25]) - 短編集発売記念読み切り[25]、『呪いと性春 文野紋短編集』収録[10]
- 神様の心臓(COMITIA頒布作品[21]) - 『呪いと性春 文野紋短編集』収録[10]
- 序幕(『ビッグコミックスピリッツ』2021年7号[26])- 『呪いと性春 文野紋短編集』収録[27]
- 君には才能があるから(『月刊コミックバンチ』2023年11月号付録「死役所公式アンソロジー」[28][29])
- 逆情。(『ビッグコミックスペリオール』2024年2号[30])
- 下北哀歌。(『ビッグコミックスペリオール』2024年7号[31])
その他
[編集]- 文野紋のドキュメンタリー日記 〜現実(リアル)を求めて〜(「logirl」2022年7月27日[32] - )
- イラスト(『CINEMATIC ILLUSTRATION 心を揺さぶる瞬間を描く新世代のイラストレーター』収録[33]、2022年)
- 非日常な彼女 イラスト(『月刊!スピリッツ』2023年4月号[34])
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “「ミューズの真髄」文野紋インタビュー|トラウマに夢でうなされる、克服できていないコンプレックスがある……。そういう人に届けたい”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年2月21日) 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 「非日常な彼女 156.文野紋」『月刊!スピリッツ』2023年4月号、小学館、2023年2月27日、485頁、ASIN B0BVBYRD8Z。
- ^ a b c “文野 紋(漫画家)”. マンガペディア. 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 若林理央 (2023年4月6日). “芸大浪人を重ねた挫折を経て漫画家の道へ、文野紋さんが語る「コンプレックスの生かし方」”. フムフムニュース. 主婦と生活社. 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b c d “文野紋”. コミックナタリー (ナターシャ) 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b c “いつまちゃん&文野紋がタッグで描くオムニバスホラー「感受点」サイコミ新連載”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年9月11日) 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b c “高円寺が舞台のマンガ「ミューズの真髄」 主人公や登場人物が高円寺で奮闘”. 高円寺経済新聞. ホットワイヤーグループ (2022年2月24日). 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 文野紋『呪いと性春 文野紋短編集』小学館、2021年1月17日、206頁。ISBN 978-4-09-860779-2。
- ^ “【漫画】娘の人生を“失敗”と罵る母親。美大受験に落ちた女性の生きづらさを描いた物語が胸に刺さる”. webザテレビジョン. 2022年11月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g “自分を“神様”にしてくれるストーカーに執着…文野紋の短編集にSNS話題作など収録”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年1月12日) 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b “美大に落ちた女子のリスタート描く文野紋の新連載、志村貴子「ラヴ・バズ」番外編も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年9月20日) 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b “野火けーたろのお悩み解決ギャグがビームで、「アラタの獣」「ミューズの真髄」は完結”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年2月10日) 2023年2月10日閲覧。
- ^ “古林恭”. 集英社オンライン. 集英社. 2022年11月19日閲覧。
- ^ “でも、だって、仕方ない…。ダメ出しばかりの人生をリスタートする決意の物語『ミューズの真髄』”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA (2022年2月5日). 2022年11月19日閲覧。
- ^ “セガ公式「第1回 ぷよぷよレディースカップ」オンライン予選 決勝トーナメント進出者決定! 決勝トーナメントは1月22日(土)に開催!”. PR TIMES. 2022年11月17日閲覧。
- ^ “『来世ちゃん』作者が贈る、至極のオムニバスホラー『感受点』など「サイコミ」7月の紙書籍3タイトル発売情報!!”. PR TIMES (2024年7月18日). 2024年7月18日閲覧。
- ^ いつまちゃん 2024年6月3日のポスト、2024年7月18日閲覧。
- ^ “Mへのラブレター”. やわらかスピリッツ. 小学館 (2019年6月28日). 2022年11月19日閲覧。
- ^ 『月刊!スピリッツ』2020年3月号、小学館、2020年1月27日。目次より。
- ^ 『月刊!スピリッツ』2020年7月号、小学館、2020年6月3日。目次より。
- ^ a b c 文野紋『呪いと性春 文野紋短編集』小学館、2021年1月17日、207頁。ISBN 978-4-09-860779-2。
- ^ a b “スピリッツ作品への思いを140字で綴ろう、40周年記念の読書感想文プロジェクト”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年7月27日) 2022年11月19日閲覧。
- ^ a b 『月刊!スピリッツ』2020年11月号、小学館、2020年9月26日。目次より。
- ^ a b 『月刊!スピリッツ』2020年12月号、小学館、2020年10月27日。目次より。
- ^ a b “僕ら地獄の逃避行”. やわらかスピリッツ. 小学館 (2020年12月26日). 2022年11月19日閲覧。
- ^ “「呪いと性春」文野紋とZOC・香椎かてぃが“執着”や“拗れる恋”について語り合う”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年1月18日) 2022年11月19日閲覧。
- ^ 文野紋『呪いと性春 文野紋短編集』小学館、2021年1月17日、2頁。ISBN 978-4-09-860779-2。
- ^ “「死役所」10周年、作家20人による公式アンソロジーがバンチ付録に”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年9月21日) 2023年9月21日閲覧。
- ^ 「君には才能があるから」『月刊コミックバンチ』2023年11月号付録「死役所公式アンソロジー」、新潮社、2023年9月21日、86頁、ASIN B0CHC92FZ1。
- ^ “ビッグコミックスペリオール第2号”. ビッグコミックBROS.NET. 小学館. 2023年12月22日閲覧。
- ^ 「CONTENTS 2024」『ビッグコミックスペリオール』2024年7号、小学館、2024年3月8日。目次より。
- ^ “文野紋のドキュメンタリー日記 〜現実(リアル)を求めて〜”. logirl. テレビ朝日. 2023年3月10日閲覧。
- ^ “日常のささやかな美しさを描くイラストレーター24名、珠玉の作品集。『CINEMATIC ILLUSTRATION(シネマティック・イラストレーション)』11月発売”. PR TIMES (2022年10月19日). 2022年11月19日閲覧。
- ^ 「月!SPI イラストギャラリー 非日常な彼女 156.文野紋」『月刊!スピリッツ』2023年4月号、小学館、2023年2月27日、2頁、ASIN B0BVBYRD8Z。
外部リンク
[編集]- 文野 紋/ふみのあや (@bnbnfumiya) - X(旧Twitter)