改善型タービン・エンジン・プログラム
改善型タービン・エンジン・プログラム(improved Turbine Engine program , ITEP)とは、先進低価格タービン・エンジン(Advanced Affordable Turbine Engine, AATE)プログラムから発展した、アメリカ陸軍のUH-60ブラック・ホークおよびAH-64アパッチ用のGE T700エンジンを更新し、燃料消費率、出力、耐久性およびコストを改善するプロジェクトである。ハネウェル社とプラット・アンド・ホイットニー社は合併事業としてATEC(アドバンスド・タービン・エンジン・カンパニー)を設立してATEC T900を開発し、GEアビエーション社はGE T901を製造した。2019年2月、GE T901がこのプログラムに採用された。
経緯
[編集]2006年12月、アメリカ陸軍の航空応用技術管理部(Aviation Applied Technology Directorate, AATD)は、UH-60およびAH-64に適合する軸出力3,000馬力の先進低価格タービン・エンジン(AATE)への提案を企業に求めた。この際、国防総省、NASAおよびエネルギー省のVAATE(Versatile Affordable Advanced Turbine Engine, 多目的低価格先進タービン・エンジン)プログラムを活用しつつ、特定燃料消費率の25%減 (0.347 lb/hp/h, 211 g/kW/h以下)、パワーウェイトレシオの65%向上 (6.5 hp/lb, 10.7 kW/kg以上)、設計寿命の20%延長 (6,000時間および1万5,000サイクル以上)、生産コスト の35%削減(1台あたり65万ドル以下) および整備コストの35%削減、ならびに開発コストの15%削減を目指すものとされた。[1]
2007年、ハネウェル社及びプラット・アンド・ホイットニー社は、合併事業としてATECを設立し、2008年5月はじめにHPW3000エンジンの開発契約を1億800万USドルで締結した。一方、GEアビエーション社は、GE3000エンジンの開発に関して同様の契約を締結した。[2]
2009年7月、先進低価格タービン・エンジン(AATE)から改善型タービン・エンジン・プログラム(Improved Turbine Engine Program, ITEP)へと変更され、AH-64およびUH-60の高温・高高度性能の向上、および戦闘行動半径の 500 km (270 nmi)増加を図ることとなった[3]。
提案されたエンジンは、いずれも、バッテリー始動が可能なため、APU(補助動力装置)が不要であった[4]。UH-60およびAH-64は、ハネウェル社のGTCP 36-150 APUを搭載している[5]。
ITEPは、統合多用途(Joint Multi-Role, JMR)ヘリコプターに用いることもできる。[6]
双発機である3,000機のブラックホークと1,000機のアパッチ用には、補給用品を含めると1万台のエンジンが必要となる。また、シコルスキー社は、S-97レイダーの単発のGE CT7/T700に代えてこれを搭載することを検討している。[7]
2012年、GE社とATECは、耐久性および性能の双方の実証試験を実施し、4年半にわたる技術開発段階を完了した。[8]
2016年8月、ATECおよびGE社は、2018年後半までの24ヶ月間における基本設計確認の実施に関し、アメリカ陸軍と契約を締結した。2019年2月、アメリカ陸軍は、GE社のT901のITEPプログラムへの採用を決定した。
2020年第2四半期に最終設計審査が開始され、2021年第3四半期には最初のエンジン試験が実施され、じ後、飛行試験が行われて、2024年に生産が決定される予定である。[9]
関連項目
[編集]- Adaptive Versatile Engine Technology (ADVENT)
- List of aircraft engines
脚注
[編集]- ^ “Advanced Affordable Turbine Engine (AATE) Program”. FBO Solicitation Notice. Solicitation #W911W60720002. Loren Data's FBO Daily (Dec 18, 2006). June 21,2019閲覧。
- ^ Stephen Trimble (20 June 2008). “Engine War revival: P&W bounces back with improved F100”. Flightglobal
- ^ “Request for Information (RFI) for Release of Advance Affordable Turbine Engine (AATEP)/Improved Turbine Engine Program (ITEP)”. Federal Business Opportunities (Jul 22, 2009). June 21,2019閲覧。
- ^ Douglas Nelms (1 Sep 2009). “Next Steps For Army AATE/ITEP Program”. Rotor & Wing Magazine: pp. 10-11
- ^ “Military Auxiliary Power Unit”. Honeywell
- ^ “US Army engine competition strained by budget pressures”. Flight International. (27 April 2011)
- ^ Douglas Nelms (April 1, 2012). “Army's ITEP Gets New Impetus”. Rotor & Wing Magazine
- ^ Tony Skinner (4 April 2012). “QuadA2012: Questions linger over next-generation engine funding”. Shephard Press. June 21,2019閲覧。
- ^ Graham Warwick (April 19, 2018). “Anatomy Of U.S. Army Improved Turbine Engine Program”. Aviation Week & Space Technology: 55 .
参考文献
[編集]- Stephen Trimble (25 Apr 2018). “Analysis: US Army's powerful vision for ITEP engine”. Flightglobal