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イエバエ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
家蠅から転送)
イエバエ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : ハエ亜目(短角亜目) Brachycera
下目 : ハエ下目 Muscomorpha
上科 : イエバエ上科 Muscoidea
: イエバエ科 Muscidae
亜科 : イエバエ亜科 Muscinae
: イエバエ属 Musca
: イエバエ M. domestica
L., 1758

イエバエ(家蠅、Musca domestica、英名:Housefly)はイエバエ科に属すハエの一種。世界に広く分布し、名の通り人家に多く発生し、ヒトが暮らす多くの場所で最も目に付くハエの一つである。ヒトの排泄物腐った食物などを好み、多くの感染症を媒介する。

形態

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体長は4~9mm程度[1]、開張は13~15mm程度。メスは特に大きさが多様であり、高緯度になるに従い大型化する傾向がみられる[2]

他のイエバエ類と同様、オスは頭部中央部で複眼が相接するが、メスでは明瞭に分離する。口器は液体をすするという採餌様式によく適応している。全体に灰色で、胸部背面に黒色帯を4条具える。腹部は基部両脇が淡褐色で、背面には1本の黒条が縦走する。

生活環

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成虫寿命は約1か月で、50~150個の卵塊を4~5回産む。卵期間は0.5~1日、幼虫)期間は約7日、期間は約4日で、産卵から成虫が羽化するまでおよそ12日間を要する。成虫で越冬し、条件が揃えば年に何度も発生を繰り返す。なお、卵の表面にはグラム陰性桿菌のクレブシエラ・オキシトカKlebsiella oxytoca共生しており、栄養塩競合によって真菌の増殖を抑制しているとの研究がある[3]

イエバエの成長過程
イエバエの幼虫。尖っている側に黒く見えるのが顎。幅広い側にある黒色の2点は気門。

生態

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生ゴミや家畜を好む。近年は畜産施設やゴミ処理場で発生することがある[4][5]

分布

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おそらく世界で最も広範囲へ拡散した昆虫種の一つであり、人が生活している場所であれば、ほぼどの地域にもみられる[6]。なお、原産地は中東と推定されている。

被害

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病原性大腸菌O-157を媒介することが知られる[4]

利用

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有機ゴミを分解して動物性タンパク質を生成する効率に優れていることから、旧ソ連では有人火星探査にあたって乗組員の糞便の処理と食糧確保のためにイエバエを用いる計画が存在していた。現在は、飼育に適応した系統を引き継ぎ、日本の企業「ムスカ」が養殖事業を手掛けている。旧ソ連時代からの選別交配は2020年時点で50年以上に及ぶ[7][8]

脚注

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  1. ^ 槐真史 編『日本の昆虫1400 2 トンボ・コウチュウ・ハチ』伊丹市昆虫館監修、文一総合出版〈ポケット図鑑〉、2013年、313頁。ISBN 978-4-8299-8303-4 
  2. ^ Alves, Sueli María; Bélo, Muracy (August 2002). “Morphometric variations in the housefly, Musca domestica (L.) with latitude”. Genetica 115 (3): 243–251. doi:10.1023/a:1020685727460. ISSN 0016-6707. PMID 12440563. 
  3. ^ Lam, Kevin; Thu, Kelsie; Tsang, Michelle; Moore, Margo; Gries, Gerhard (2009). “Bacteria on housefly eggs, Musca domestica, suppress fungal growth in chicken manure through nutrient depletion or antifungal metabolites”. Naturwissenschaften 96 (9): 1127–1132. Bibcode2009NW.....96.1127L. doi:10.1007/s00114-009-0574-1. 
  4. ^ a b イエバエ Musca domestica LINNE. どんな虫にお困りですか?”. 2019年11月21日閲覧。
  5. ^ 志村隆, ed (2005). 日本産幼虫図鑑. 学習研究社 
  6. ^ Hewitt, C. Gordon (2011). The House-Fly: Musca Domestica Linn: Its Structure, Habits, Development, Relation to Disease and Control. Cambridge University Press. pp. 5–6. ISBN 978-0-521-23299-9. https://books.google.com/books?id=2FYiIGjMsuYC 
  7. ^ MUSCAホームページ”. 2019年11月21日閲覧。
  8. ^ 【START up X】虫テック 世界に羽ばたけ/コオロギ・蚕・ハエ…無視できない栄養価/効率飼育・味もアップ「たんぱく質危機」に福音『日経産業新聞』2020年2月21日1面

外部リンク

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  • ウィキメディア・コモンズには、イエバエに関するメディアがあります。