大日本帝国軍爆薬一覧
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大日本帝国軍爆薬一覧(だいにほんていこくぐんばくやくいちらん)は、第二次世界大戦の終結までに大日本帝国陸海軍で使用した爆薬の一覧である。
日本軍での呼称 | 爆薬の材料、名称 | 用途 | 使用した兵器 | 使用した組織 | 要約 |
---|---|---|---|---|---|
黄色薬 下瀬火薬(下瀬爆薬) |
ピクリン酸[1] | 炸薬、伝爆薬 | 爆弾、砲弾 機雷、地雷 |
陸海両用 | 最も広汎に炸薬として使用、圧搾充填。 |
茶褐薬 九二式爆薬 |
トリニトロトルエン(TNT)[1] | 炸薬 | 砲弾、手榴弾 稀に爆弾 |
陸海両用 | 通常、紙で包装されたブロック状の塊を爆破に用いる。海軍40mm機銃弾の炸薬。 |
茶黄薬 | 75% ピクリン酸 25% トリニトロトルエン(TNT) |
炸薬 | 爆弾 | 陸軍 | 稀に用いられた。成形火工時の熔填作業において、TNTは融点が低かった。 |
黄那薬 | 80% ピクリン酸 20% ジニトロナフタリン[2] |
炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | 稀に用いられた。ジニトロナフタリンは成形のために添加された。 |
黄脂薬 | 88% ピクリン酸 12% パラフィン[3] |
炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | 徹甲弾弾頭の先端に用いられた。鈍感な爆薬。 |
塩斗薬 | 81% 塩素酸カリウム 15% ジニトロトルエン 4% パラフィン[4] |
爆破用 | 爆薬 | 陸軍 | 通常、紙で包装されたブロック状の塊を爆破に用いる。 |
硝斗薬 | 70% 硝酸アンモニウム 30% トリニトロトルエン(TNT)[5] |
炸薬 | 手榴弾、地雷 | 陸軍 | 圧搾充填。 |
塩那薬 | 80% 塩素酸カリウム 15% ニトロナフタリン 5% ひまし油[5] |
爆破用 | 爆薬 | 陸軍 | |
硝那薬 | 90% 硝酸アンモニウム 10% ジニトロナフタリン[5] |
炸薬 | 手榴弾、地雷 | 陸軍 | 圧搾充填。 |
茗亜薬 テトリール |
テトリル[1] | 炸薬、伝爆薬 | 陸海両用 | 圧搾充填。海軍25mm機銃弾の炸薬。 | |
硝宇薬 ヘキソーゲン |
トリメチレントリニトロアミン(RDX)[6] | 伝爆薬 | 陸海両用 | 圧搾充填。しばしばパラフィンと共に用いられる。 | |
硝英薬 ペントリット |
ペンタエリトリットテトラニトラート(PETN)[7] | 伝爆薬 | 陸海両用 | 工兵用。導爆索などで爆薬に伝火するための火薬。 | |
灰色薬 | 48% 過塩素酸アンモニウム 25% トリメチレントリニトロアミン(RDX) 20% 硝酸グアニジン 5% パラフィン 2% 木炭[7] |
爆破用 | 爆薬 | 陸軍 | |
平寧薬 | トリニトロフェネトール[8] | 炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | TNTの欠乏を予測して作られた代用薬。 |
茶那薬 | 70% トリニトロトルエン(TNT) 30% ジニトロナフタリン |
炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | 爆薬は熔填する。 |
一号淡黄薬 | 60% トリメチレントリニトロアミン(RDX) 30% トリニトロトルエン(TNT) 10% テトリル[9] |
爆破用 | 爆薬 | 陸軍 | 爆薬は熔填する。 |
二号淡黄薬 | 55% トリメチレントリニトロアミン(RDX) 38% トリニトロトルエン(TNT) 7% テトリル[10] |
炸薬 | 爆弾、砲弾、地雷 破壊筒 |
陸軍 | 爆薬は熔填する。 |
特一号安瓦薬 | 54% 硝酸アンモニウム 36% 硝酸グアニジン 10% トリメチレントリニトロアミン(RDX) |
炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | 弾体に炸薬を熔填する。 |
一号安瓦薬 | 51% 硝酸アンモニウム 34% 硝酸グアニジン 15% トリメチレントリニトロアミン(RDX)[11] |
炸薬 | 砲弾 | 陸軍 | 弾体に炸薬を熔填する。吸湿性あり。 |
二号安瓦薬 | 48% 硝酸アンモニウム 32% 硝酸グアニジン 20% トリメチレントリニトロアミン(RDX)[11] |
炸薬 | 爆弾 | 陸軍 | 弾体に炸薬を熔填する。 |
カーリット 八八式爆薬(二号乙薬) |
75% 過塩素酸アンモニウム 16% ケイ素鉄 6% 木粉 3% 重油[12][1] |
炸薬 | 機雷、爆雷 | 陸海両用 | 粘性のない灰色の粉。摩擦に敏感である。 |
九一式爆薬 | トリニトロアニソール[1] | 炸薬 | 爆弾、徹甲弾 | 海軍 | 爆薬は熔填する。 |
九四式爆薬 | 60% トリニトロアニソール 40% トリメチレントリニトロアミン(RDX)[1] |
炸薬 | 魚雷弾頭 | 海軍 | |
九七式爆薬 | 60% トリニトロトルエン(TNT) 40% ヘキサニトロジフェニルアミン(HND)[1] |
炸薬 | 魚雷弾頭 爆雷 |
海軍 | 爆薬は熔填する。 |
九八式爆薬 | 60% トリニトロアニソール 40% ヘキサニトロジフェニルアミン(HND)[1] |
炸薬 | 爆弾、機雷 爆雷 |
海軍 | 弾体に熔填し、爆薬はブロック状。圧搾充填。 |
一式爆薬 | 81% ピクリン酸アンモニウム 16% アルミニウム粉末 2% 重油 1% 木粉 |
炸薬 | 爆雷 | 海軍 | 粘性のない粉末。 |
二式爆薬 | 60% トリニトロアニソール 40% アルミニウム粉末 |
炸薬、焼夷剤 | 砲弾 | 海軍 | |
- | 60% トリニトロトルエン(TNT) 24% ヘキサニトロジフェニルアミン(HND) 16% アルミニウム粉末 |
炸薬 | 魚雷弾頭 | 海軍 | |
ヘキシル | ヘキサニトロジフェニルアミン(HND) | 炸薬 | 魚雷弾頭 | 海軍 | |
第一焼夷剤 | 50% ペンタエリトリットテトラニトラート(PETN) 50% トリメチレントリニトロアミン(RDX)[13] |
炸薬 | 銃弾 | 海軍 | 7.7mm、7.9mm、三式13mm機銃弾の炸薬。第二焼夷剤と共に用いる。 |
第二焼夷剤 | 50% トリメチレントリニトロアミン(RDX) 50% アルミニウム粉末[13] |
炸薬、焼夷剤 | 銃弾 | 海軍 | 7.7mm、7.9mm、三式13mm機銃弾の炸薬。第一焼夷剤と共に用いる。 |
ペントリール | 50% ペンタエリトリットテトラニトラート(PETN) 50% トリニトロトルエン(TNT) |
炸薬 | 銃弾 | 海軍 | 二式13mm、20mm、30mm機銃弾の炸薬。 |
成型焼夷炸薬 | 60% トリニトロトルエン(TNT) 40% アルミニウム粉末[13] |
炸薬、焼夷剤 | 銃弾 | 海軍 | 25mm機銃弾の炸薬。 |
雷汞 | 雷酸水銀 | 信管、雷管の起爆薬 | 陸軍 | ||
一号爆粉 | 37.5% 雷酸水銀 37.5% 塩素酸カリウム 25% 硫化アンチモン[14] |
雷管の起爆薬 | 陸軍 | ||
二号爆粉 | 16.6% 雷酸水銀 41.7% 塩素酸カリウム 41.7% 硫化アンチモン[14] |
信管の起爆薬 | 陸軍 | ||
三号爆粉 | 雷酸水銀 塩素酸カリウム 硫化アンチモン |
雷管の起爆薬 | 陸軍 | ||
窒化鉛 | アジ化鉛[6] | 信管、雷管の起爆薬 | 陸海両用 | 最も広汎に使用された起爆薬。 | |
- | 塩素酸カリウム 硫化アンチモン |
信管の起爆薬 | 陸海両用 | 信管用としては最も汎用の起爆薬。 |
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h 『[火薬についての試験研究ノート]』。
- ^ 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査仮格例中黄那薬の配合制定の件』昭和5年。
- ^ 牛島満『火薬製造要領及検査仮格例中改正追加の件』昭和7~8年。
- ^ 陸軍技術本部『火薬制造要領及検査假格例中追加並改正の件』昭和5年。
- ^ a b c 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査假格例中規定及改正の件』大正11年。
- ^ a b 牛島満『火薬製造要領及検査仮格例中改正並追加の件』昭和11年。
- ^ a b 陸軍技術本部『陸軍制式火薬表中追加の件』昭和13年。
- ^ 陸軍技術本部『平寧薬制定の件』昭和14年。
- ^ 陸軍技術本部『陸軍制式火薬表(秘密の部)中追加修正の件』昭和13年。
- ^ 陸軍航空本部『2号淡黄薬制定の件』昭和14年。
- ^ a b 陸軍航空本部『2号安瓦薬制式制定の件』昭和13年。
- ^ 海軍『浅野カーリット株式会社(1)』昭和11年。
- ^ a b c 豊川海軍工廠『別冊 3 機械調書昭和20年12月29日引渡完了 豊川地区 接収物件目録 豊川海軍工廠』昭和20年。
- ^ a b 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査格例改正案審議の件』大正9~10年。
参考文献
[編集]- TM 9-1985-4 Japanese Explosive Ordnance (Bombs, Bomb fuzes, Land mines, Grenades, Firing Devices and Sabotage Devices). Departments of the Army and the Air Force. (March 1953)
- TM 9-1985-5 Japanese Explosive Ordnance (Army Ammunition, Navy Ammunition). Departments of the Army and the Air Force. (March 1953)
- 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査格例改正案審議の件』大正9~10年。アジア歴史資料センター C02031023100
- 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査假格例中規定及改正の件』大正11年。アジア歴史資料センター C02031083400
- 陸軍技術本部『火薬製造要領及検査仮格例中黄那薬の配合制定の件』昭和5年。アジア歴史資料センター C01003915100
- 陸軍技術本部『火薬制造要領及検査假格例中追加並改正の件』昭和5年。アジア歴史資料センター C01001185300
- 牛島満『火薬製造要領及検査仮格例中改正追加の件』昭和7~8年。アジア歴史資料センター C01007541200
- 牛島満『火薬製造要領及検査仮格例中改正並追加の件』昭和11年。アジア歴史資料センター C01005020800
- 海軍『浅野カーリット株式会社(1)』昭和11年。アジア歴史資料センター C05035290800
- 陸軍技術本部『陸軍制式火薬表中追加の件』昭和13年。アジア歴史資料センター C01001622300
- 陸軍航空本部『2号安瓦薬制式制定の件』昭和13年。アジア歴史資料センター C01001619500
- 陸軍技術本部『陸軍制式火薬表(秘密の部)中追加修正の件』昭和13年。アジア歴史資料センター C01004540400
- 陸軍航空本部『2号淡黄薬制定の件』昭和14年。アジア歴史資料センター C01001741300
- 陸軍技術本部『平寧薬制定の件』昭和14年。アジア歴史資料センター C01001744500
- 陸軍兵器本部『兵器臨時価格表(乙)』昭和18年。アジア歴史資料センター A03032158000
- 豊川海軍工廠『別冊 3 機械調書昭和20年12月29日引渡完了 豊川地区 接収物件目録 豊川海軍工廠』昭和20年。アジア歴史資料センター C08010952500
- 『[火薬についての試験研究ノート]』。アジア歴史資料センター A03032029300