墓場派
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墓場派(はかばは、墓地派、Graveyard Poets, Graveyard School , Churchyard Poets)とは、18世紀イングランドの、墓場を背景として、死すべき運命についての憂鬱な瞑想や、「骸骨と棺、墓碑銘と蠕虫」(ブレア『The Grave』23)を特徴とした、前ロマン主義の詩人たちを指す。後の「墓場派」詩人たちはさらにこれに、崇高かつ神秘的な感覚や、古代イングランドの詩形や民謡詩への関心を付加した。しばしば「墓場派」はゴシックの先駆けと見なされる。
墓場派の代表的詩人
[編集]墓場派に含まれるのは以下のような詩人たちである。
- トマス・パーネル(Thomas Parnell, 1679年 - 1718年)
- エドワード・ヤング(Edward Young, 1683年 - 1765年)
- ロバート・ブレア(Robert Blair, 1699年 - 1746年)
- トマス・グレイ(Thomas Gray, 1716年 - 1771年)
- ウィリアム・コリンズ(William Collins, 1721年 - 1759年)
- マーク・エイケンサイド(Mark Akenside, 1721年 - 1770年)
- ジョゼフ・ワートン(Joseph Warton, 1722年 - 1800年)
- トマス・ワートン(Thomas Warton, 1728年 - 1790年)
- トマス・パーシー(Thomas Percy, 1729年 - 1811年)
- ジェームズ・マクファーソン(James MacPherson, 1736年 - 1796年)
- トーマス・チャタートン(Thomas Chatterton, 1752年 - 1770年)
- ヘンリー・カーク・ホワイト(Henry Kirke White, 1785年 - 1806年)
ジェームズ・トムソン(James Thomson, 1700年 - 1748年)が墓場派に加えられることもある。
例
[編集]墓場派最初の詩と言われているのは、トマス・パーネルの『A Night-Piece on Death』(1721年)で、死の王がその骨の王国から挨拶する。
- "When men my scythe and darts supply
- How great a King of Fears am I!" (61-62)
- (大意「我が大鎌と矢が与えられる時、我は何と偉大な恐怖の王であることか!」)
後の特徴的な詩では、墓場にいる孤独な旅人が哀れさを誘う、エドワード・ヤングの『Night Thoughts』(1742年)がある。
- The vale funereal, the sad cypress gloom;
- The land of apparitions, empty shades! (117-18)
- (大意「葬送の谷、憂鬱なイトスギ、幽霊の地、空虚な影!」)
ロバート・ブレアの『The Grave』(1743年)は、さらに暗く、ぞっとする趣向と結びついている。
- Wild shrieks have issued from the hollow tombs;
- Dead men have come again, and walked about;(51-2)
- (大意「狂ったような悲鳴がうつろな墓からあがった。死者が蘇り、あたりを歩き回る」)
しかし、トマス・グレイの『墓畔の哀歌(Elegy in a Country Churchyard)』(1750年)[1]の有名な冒頭の韻文は、より瞑想的で落ち着いた雰囲気を為し得ている。
- The curfew tolls the knell of parting day.
- The lowing herd winds slowly o'oer the lea,
- The ploughman homeward plods his weary way,
- And leaves the world to darkness and to me. (1-4)
- (大意「晩鐘が日暮れを告げる。モーモー泣く牛の群がゆっくりと草地を進み、農夫は重い足取りで家路をたどり、世界を暗闇と私にゆだねる。」)
「墓場派」の詩人たちは、一般読者の心をかきたて、18世紀後半の英語詩の雰囲気と形式に変化を起こし、その変化は最終的にはロマン主義を導いた。
参考文献
[編集]- Noyes, Russell (Ed.) (1956). English Romantic Poetry and Prose. New York: Oxford University Press. ISBN 0-19-501007-8