国鉄気動車の車両形式
国鉄気動車の車両形式(こくてつきどうしゃのしゃりょうけいしき)では、日本国有鉄道(国鉄)及び国鉄分割民営化により国鉄の車両を引き継いだJR各社が保有する気動車の形式番号の付与法則について記述する。
気動車の場合、キハ181系気動車以降の新系列気動車と、それ以前の在来形気動車とで形式の付番方法が異なり、電車と同様に在来形のものは形式数字が2桁、新系列(電車の場合は新性能と呼称)のものは3桁となっている[1]。国鉄時代には、新系列気動車は特急形気動車と事業用車しか製造されず、特急形以外(急行形・一般形[2])の車両は在来車との連結運転を優先して2桁の形式の車両が製造された。民営化後は特急形以外にも3桁の形式が登場している。
また、JR九州キハ72系気動車やJR東海キハ75形気動車、キハ85系気動車などのように、JR化後もあえて2桁の形式を用いている場合もある。
新系列気動車
[編集]構造別記号 | 用途別 記号 |
形式数字 | - | 車両番号 | 形式 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キ | ○ | ● | A | B | C | XXXX | ||||
1.国鉄製造車両 | キ | サ | シ | 1 | 8 | 0 | - | 13 | 国鉄キハ181系気動車キサシ180形車両 | |
2.JR東海製造車両 | キ | ハ | 8 | 5 | - | 5 | JR東海キハ85系気動車キハ85形車両 | |||
クモ | ハ | 8 | 5 | - | 1 | JR東海HC85系気動車クモハ85形車両 | ||||
3.JR東日本製造車両 | キ | ハ | E | 2 | 0 | 0 | - | 1 | JR東日本キハE200形気動車 | |
HB- | E | 3 | 0 | 0 | - | 1 | JR東日本HB-E300系気動車 ハイブリッド気動車 | |||
GV- | E | 4 | 0 | 0 | - | 1 | JR東日本GV-E400系気動車 電気式気動車 | |||
4.JR西日本製造車両 | キ | サ | イネ | 8 | 6 | - | 501 | JR西日本87系気動車キサイネ86形車両 | ||
DEC | 7 | 0 | 0 | - | 1 | JR西日本DEC700形気動車 電気式気動車 |
JR九州(一部の車両)とJR西日本(一部の車両)、JR東海ではAが省かれた以外は、新系列気動車と同じ表記となっているが、HC85系については電車と同じくクモ・モで表記される。
構造別記号
[編集]- キについては気動車(JR東日本ではキハE200形を除き液体式)、HBについてはハイブリッド気動車を、GVとDECは電気式気動車をそれぞれ指す。
- ○については主に付随車の車種を表す記号を表す。
記号 | 車種 | 補足 |
---|---|---|
(なし) | 動力車 | 運転台の有無を問わず、動力(走行用エンジン)の有る車両。 |
ク | 制御車 | 運転台は有るが、動力を有さない。 |
サ | 付随車 | 運転台も無く、且つ動力を有さない。 |
用途別記号
[編集]単独で、また合造車の場合は下記の順番で重ねて使用される。なお、合造車とは、2つ以上の用途の室内設備を1つの車両に収めたものを指す。
記号 | 用途 |
---|---|
イネ | 一等寝台車[3] |
イテ | 一等展望合造車[3] |
ロ | グリーン車 |
ハ | 普通車 |
シ | 食堂車 |
ラ | ラウンジカー[3] |
ユ | 郵便車[4] |
二 | 荷物車[4] |
ヤ | 職用車 |
形式数字
[編集]Aは機関方式(JR東日本とJR西日本では駆動方式[5][1])、Bは車両用途・構造を、CについてはA・Bに付随して定義される数字を指す[1] 。
機関方式(駆動方式)
[編集]形式番号 | 機関方式 |
---|---|
(なし)・1・2・3・4 | ディーゼル機関 |
3 | ガスタービン機関 |
JR東日本ではキハE200形以降、百の位は駆動方式を表す記号として用いており、以下のように付番している[5]。また、同形以降の車両はこの数字の前にE(Eastの頭文字)がつく。
形式番号 | 機関方式 | |
---|---|---|
1 | 液体式気動車 | |
2・3 | 電気式気動車 | ディーゼルハイブリッド車(記号が「HB」の車両とキハE200形) |
4 | ディーゼルエレクトリック車(記号が「GV」の車両) |
JR西日本では2005年度以降、百の位は駆動方式を表す記号として用いており、以下のように付番している[1]。ただし、電気式気動車はキハではなくDECが付けられる。
形式番号 | 機関方式 |
---|---|
1・2 | ディーゼル機関(キハ) |
3・4・5・6 | 予備 |
7・8 | 電気式気動車(DEC) |
車両用途・構造
[編集]形式番号 | 車両用途・構造 |
---|---|
0 - 2 | 通勤形・近郊形 |
3 ・ 4 | 国鉄時代には車両設計なし |
5 - 7 | 急行形 |
8 | 特急形 |
9 | 試作車・試験車 |
JR化後に新製された形式の形式番号は以下の通り。
形式 番号 |
車両用途・構造 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
JR北海道 | JR東日本[6] | JR東海 | JR西日本[1] | JR九州 | ||
JR化当初 | 2005年度以降 | |||||
0 | 通勤形 | 一般形 | 設定なし | 通勤形・近郊形 (0、1は設定なし) |
一般形 (0、1、3は2012年時点では設定なし) |
一般形 |
1 | 設定なし | 一般形 | 設定なし | |||
2 | 一般形 | |||||
3 | 一般形 | 設定なし | 設定なし | 設定なし | ||
4 | 設定なし | 事業用車 | ||||
5 | 急行形 (設定なし) |
一般形 (2012年時点では設定なし) | ||||
6 | 一般形・特急形 | |||||
7 | 設定なし | 一般形 | 急行形・特急形 (7および急行形は2012年時点では設定なし[7]) |
特急形 | ||
8 | 特急形 | 特急形 | 特急形 | |||
9 | 設定なし | 試験車・事業用車 | 試作車・試験車 (設定なし) |
試作車・試験車 (2012年時点では設定なし) |
試験車・事業用車 (2012年時点では設定なし) |
なお、上記のC(A・Bに付随して定義される数字)にあたる数字は、特急形の場合基本的には運転台のある車両に奇数を用い、運転台の無い車両にはその数字より1減じた偶数を用いる(系列を表す場合は奇数を用いる)。ただし、キハ183系気動車では新しく設定された中間電源車に「キハ184」という形式を与え、1系列で3つの形式数字(「182」・「183」・「184」)を使用している。このため、その後に登場したキハ185系気動車の運転台の無い車両には、系列を表す数字より1増した偶数「186」が使用された。また、キハ189系気動車では、運転台の無い車両は1減じた偶数(「188」)に戻っている(これはキハ187系気動車が運転台付のキハ187形(番台区分あり)のみであったため)。
製造番号
[編集]基本的には1から始まる番号を用いるが、細かな設計変更などで番台を変更して用いる場合もある。
在来形気動車
[編集]この現在に連なる称号規程は、1957年(昭和32年)4月に制定されたものである。それ以前は、客車の番号体系の中に含まれており、二軸車および片ボギー車は5000番台、ボギー車は40000番台を称した(いずれも例外あり)。
構造別記号 | 用途別記号 | 形式数字 | - | 車両番号 | 車両形式 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キ | ○ | ● | A | B | XXX | |||
付随車の例 | キ | ク | ハ | 3 | 5 | - | 301 | キハ35系気動車キクハ35形車両 |
動力車の例 | キ | ハ | 5 | 8 | - | 1107 | キハ58系気動車キハ58形気動車 |
このうち、キについては気動車を指し、○については車種を表す記号、●については用途を、Aは車両用途・構造を、Bについては運転台による区別を表す形式番号を指し、Xは製造番号を表す。また、_は空白を表す。
- 構造別記号 : 新系列気動車と同じ。
- 用途別記号 : 新系列気動車と同じ。
- 動力装置方式を表す形式数字 (A)
形式番号 | 動力装置方式 |
---|---|
0 | 機械式、電気式(例外あり) |
1 - 4 | 液体式機関1台 |
5 | 液体式機関2台 |
6・7 | 大出力機関 |
8 | 特急形 |
9 | 試作車 |
- 運転台による区別を表す形式数字 (B)
- 特急形以外
形式番号 | 種類 |
---|---|
0 - 4 | 両運転台(例外あり) |
5 - 9 | 片運転台、運転台無し |
- 特急形は上記の規準に則らず、「運転台の無い車両(付随車も含む)・運転台付きの車両」の順に追番で付与する。
JR四国の車両
[編集]JR四国が所有している車両のうち、JR化後に新製された車両(電車・気動車)には、形式と車両番号が一体となった4桁の数字のみの表記が用いられており、気動車には千位が1か2の形式番号が使用されている(国鉄から継承した車両とJR他社から購入した車両、およびそれらの改造車は国鉄時代の付番方法のままである)。
脚注
[編集]- ^ a b c d e 「データで見るJR西日本 2024」、西日本旅客鉄道広報部、2024年、国立国会図書館書誌ID:000010470853。
- ^ 普通列車用の気動車の中には、通勤形・近郊形として製作された車両もあるが、新系列電車とは異なり実際には区別されずに混用されているため、本稿では特に断りがない限り一般形とする。
- ^ a b c JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」用として登場
- ^ a b 新系列気動車では、新製時及び改造車種としても存在せず。
- ^ a b 渡邊龍太郎「JR東日本 GV-E400系気動車」『鉄道ファン』第58巻6(通巻687)、交友社、2018年6月1日、54-61頁。
- ^ JR東日本が特急用の気動車を製作したのは、「秋田リレー」用として製作したキハ110系300番台のみで、「秋田リレー」運行終了後には一般形へ改造されている。
- ^ JR西日本における気動車急行は2009年3月の「つやま」を最後に廃止されたため、急行形気動車の今後の導入は見込めない模様である。
- ^ メーカーから出場した日時順とは必ずしも一致しない。