小田急電鉄の車両検修施設
小田急電鉄の車両検修施設(おだきゅうでんてつのしゃりょうけんしゅうしせつ)では、小田急電鉄が検査・修理等の作業を行う施設について記す。
概要
[編集]現在、小田急電鉄において稼動している車両検修施設は、以下の各施設である。
- 大野総合車両所(←大野工場、海老名検車区大野出張所)
- 喜多見検車区
- 喜多見検車区唐木田出張所(←経堂検車区唐木田出張所)
- 海老名検車区
- 海老名検車区小田原出張所
かつて、小田急電鉄が業務を行っていた車両検修施設は、以下の各施設である。
- 経堂工場(経堂車庫)
- 経堂検車区
- 経堂検車区新原町田出張所
- 経堂検車区小田原出張所
- 経堂検車区片瀬江ノ島出張所
- 相武台工場
- 足柄車庫
現行の検修施設
[編集]大野総合車両所
[編集]出入庫駅:相模大野駅
神奈川県相模原市南区東林間1丁目1-18に「大野工場」として1962年(昭和37年)10月19日に開設された[1]。敷地面積は、33,832平方メートルである[1]。全般検査および重要部検査が行われている[1]。2000年(平成12年)11月17日に「ISO14001」を取得した[1]。なお、本工場開設に伴い、経堂工場および相武台工場は閉鎖された。
2009年(平成21年)12月には大野工場と海老名検車区大野出張所が組織統合され、大野総合車両所として発足した[2][3]。
現在、大野総合車両所には「検修職場」「検査職場」「検車職場」があり、事務所内にはスタッフ部門として「環境総務」「資材」がある。業務の一部は小田急エンジニアリングが行っている。
1年に一度、親子向け見学会が開かれている[4]。
2014年6月19日午後6時10分頃、出庫線から出庫した6両編成の電車が脱線、小田急線全線で運転を見合わせた。この脱線の影響で架線が切れ、停電も発生した[5]。
総合車両所としてはやや手狭であり、設立当初主力であった4両編成を前提とした設計であることから、現在主力の10両編成の検査には車両の分割や屋外作業を要する[6]。運用を続けながらの拡張を行う余剰地はなく、また経年が60年を超え設備の老朽化も進んでいることから、小田急電鉄は伊勢原市にある約150,000平方メートルの土地へスマート新駅を作るとともに当総合車両所を移転する計画の検討をしている[7][8][9]。
喜多見検車区
[編集]出入庫駅:成城学園前駅
東京都世田谷区に1994年3月27日に、複々線化事業の一環として経堂検車区に代わり開設された。同時に、従来、経堂検車区の出張所であった唐木田出張所は、本区の所属となった。
本区は構造物の屋上に世田谷区の区立公園であるきたみふれあい広場が開設されており、車両は屋内での留置となるため、風雨に曝されることは無い。
上記のような構造を持つことと留置スペースの余裕から、かつては保存車両の留置にも用いられており、21番線に新宿方から20301 3221×6 2670 9001 2201×2 10(1形)が、22番線には10001×3 20001×2が留置されていた。
2013年12月6日、テレビ朝日系の深夜番組『タモリ倶楽部』内の企画で、タモリらタレントが訪問し、上記の保存車である3100形NSE車の運転台や富士急行への譲渡を控えた20000形RSE車を見学する様子が放送された。
しかし、2018年3月のダイヤ改正に伴う列車増発のため、留置スペース確保の観点から保存車両を搬出する必要が生じた。2017年6月のHiSE10001×3を皮切りに大野総合車両所への移送が始まり、2019年3月までに全車両の搬出が完了した。
その後、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症による旅客需要の減少などもあり、一転して保有車両数の削減が方針として発表され前述の問題が覆った事もあり、2024年8月時点では2023年12月をもって完全引退となった50000形VSE車が2編成共に完全な状態で留置されている。
線路は成城学園前駅につながっており、回送列車や早朝・夜間には成城学園前駅発・行きの出入庫列車が運行されている。なお、施設自体の位置は成城学園前駅よりも隣の喜多見駅に近い。
- 敷地面積 68300平方メートル
- 収容能力 約150両
- 所属車両 8000形、1000形、5000形、クヤ31形、ロマンスカー50000形VSE、ロマンスカー70000形GSE
業務の一部は小田急車両工業(2013年3月31日業務終了)が行っていたが、2008年7月より完全直営に戻った。
喜多見検車区唐木田出張所
[編集]出入庫駅:唐木田駅
東京都多摩市に1990年3月27日、小田急多摩線の唐木田駅延伸にあわせて開設された。当初は「経堂検車区唐木田出張所」であったが、1994年3月27日から「喜多見検車区唐木田出張所」となった。
東端の2本は正確には本線の扱いとなっているが、これは将来の多摩線延伸を考慮した措置と思われる。現在のところ、新型車両の試運転の折り返しなどに用いられている。
- 敷地面積 43271平方メートル
- 収容能力 176両
- 留置線10線、洗浄線1線、列車検査線2線、引き上げ線1線(各線とも10両編成・210 m以上の有効長[10])
- 所属車両 なし
海老名検車区
[編集]出入庫駅:海老名駅
神奈川県海老名市に1972年12月18日、将来の在籍車両数増加を見込み、開設された。
毎年10月中旬にはファミリー鉄道展が開催され、一般客も入る事が可能である。
2021年には、本区に隣接する敷地にロマンスカーミュージアムが開館した。ミュージアムの建設途中、展示物となるロマンスカー車両を建物内に収容するため、本区の留置線から対象の車両をクレーンで吊り上げ、トレーラーに載せて運搬するという作業が行われた。
なお、本区の小田原寄りには倉庫が存在し、内部には引退した通勤型車両の一部が保存されている。収容車両は新宿寄りから2670号車 9001号車 2201号車の3両で、当検車区にてイベントが開催されると一般客に公開される事がある[11]。
- 敷地面積 56413平方メートル
- 収容能力 約300両
- 所属車両 1000形、2000形、3000形、4000形、ロマンスカー30000形EXE、ロマンスカー60000形MSE
喜多見検車区同様、業務の一部を小田急車両工業が行っていたが、2008年7月より完全直営に戻った。
当検車区の立地が相模川が氾濫した際に浸水する可能性があることから、星野晃司社長は将来的に、大野総合車両所の跡地(前述)へ当検車区を移管する「アイデア」があると明かしている[12]
海老名検車区小田原出張所
[編集]小田原駅から箱根湯本駅方面に電車に乗ると左手に見えてくる。留置線は2本あり、基本的には小田原駅止まりの列車の折り返しに使われる。
過去の検修施設
[編集]経堂工場
[編集]経堂検車区
[編集]出入庫駅:経堂駅
1950年に業検査と交番検査を行なう現業機関として発足した。1994年3月27日に、複々線化工事に伴い、喜多見検車区が設置され、本区は廃止された。
経堂駅の新宿寄り北側にあったが、線路を挟んだ南側と4番ホームと小田急経堂アパートの間にいくつかの留置線があった。経堂駅の新宿駅方面に設置されている留置線はこの名残である。
旧小田急経堂アパートがあった場所に工場建屋が建っていた。跡地は経堂テラスガーデンとして再開発され、スポーツクラブ&スパ ルネサンス経堂が入居する経堂スポーツクラブビルや小田急不動産が運営する賃貸マンションであるリージア経堂テラスガーデンが建設された。
相武台工場
[編集]出入庫駅:相武台前駅
1927年の小田急小田原線開業と同時に開設された。主に電気機関車と貨車の各種検査を担当した。しかし、在籍車両数の増加に伴い、工場が狭くなったため、1962年に大野工場を開設し、廃止された。現在の相武台前駅の留置線は、本工場の名残である。本工場廃止後、本線用電気機関車・貨車は海老名検車区の所属となったが通常は引き続きこの留置線を基地として運用され[13]、月検査等の際にのみ所属区へ回送されていた。
足柄車庫
[編集]出入庫駅:足柄駅
1927年の小田急開業と同時に開設された。現在の足柄駅の留置線は、本車庫の名残である。
海老名検車区大野出張所
[編集]出入庫駅:相模大野駅
神奈川県相模原市に1954年9月に「大野検車区」として開設されたが、2002年に大半の業務を海老名検車区に移管、「海老名検車区大野出張所」となる。前述したが、2009年12月に大野総合車両所へと統合された[2]。
- 敷地面積 24647平方メートル
- 収容能力 約170両
脚注
[編集]注釈・出典
[編集]- ^ a b c d 小田急電鉄の地球環境保全への取り組み。大野工場で「ISO14001」認証を取得(小田急電鉄ニュースリリース・インターネットアーカイブ・2001年時点の版)。
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』2010年1月臨時増刊号「小田急電鉄特集」参照
- ^ 「総合車両所」を名乗る検修施設はJRグループ(特にJR西日本)に多く見られ、私鉄では小田急の大野総合車両所が唯一となっている。
- ^ 「小田急線の車両整備見学しよう 相模原で来月26日」 - 『毎日新聞』朝刊2019年2月26日(東京面)2019年2月28日閲覧。
- ^ 詳細は日本の鉄道事故_(2000年以降)#小田急小田原線相模大野駅構内車両脱線事故を参照のこと
- ^ “「神奈川県のド真ん中」に小田急線の巨大車両基地ができる!? “スマート新駅”も計画中”. 乗りものニュース (2024年9月27日). 2024年9月27日閲覧。
- ^ “伊勢原市×小田急電鉄 都市計画道路田中笠窪線と新たな総合車両所を契機とした「持続可能なまちづくりを推進する連携協定」を締結”. 伊勢原市・小田急電鉄 (2023年3月8日). 2023年4月26日閲覧。
- ^ “小田急電鉄 神奈川 伊勢原に小田原線の新駅建設を検討”. NHK NEWSWEB (2023年2月24日). 2023年2月24日閲覧。
- ^ “小田急車両基地「伊勢原に新設」で起こる大再編”. 東洋経済オンライン (2023年3月13日). 2023年3月18日閲覧。
- ^ 日本地下鉄協会『SUBWAY』1989年7月号現場から2「小田急多摩線延伸工事(小田急多摩センター - 唐木田間) 」pp.28 - 31。
- ^ かつてはロマンスカー3000形SE・SSEが保存されていたが、これはロマンスカーミュージアムの開館に伴い、移設されている。
- ^ “小田急車両基地「伊勢原に新設」で起こる大再編”. 東洋経済オンライン (2023年3月13日). 2023年3月18日閲覧。
- ^ 生方良雄・諸河久 『カラーブックス530 日本の私鉄5 小田急』 保育社、1981年、85ページ