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093型原子力潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
商級原子力潜水艦から転送)
093型原子力潜水艦(商型)
基本情報
建造所 渤海船舶重工 [1][2]
運用者  中国人民解放軍海軍
建造数 9隻
前級 091型
次級 095型
要目
排水量 6,000t[1]
長さ 106m[3]
11.5m[3]
吃水 7.5m[1]
機関方式 加圧水型原子炉×1基
主機 原子力蒸気タービン2基[1][3]
推進器 スクリュープロペラ×1軸[2]
最大速力 30ノット (56 km/h)(水中)[1][3]
航続距離 無制限
潜航深度 300m
乗員 100名[1]
兵装
ソナー
  • H/SQG-207サイドパッシブアレイソナー(093A型以降)[2]
  • 曳航ソナー(093B型)[1]
  • テンプレートを表示

    093型原子力潜水艦は、中国人民解放軍海軍原子力潜水艦である[3]NATOコードネーム殷王朝の別名に因んで商級(Shang Class)。

    概要

    [編集]

    旧式化した091型(漢級)の後継[4]として開発された中国人民解放軍海軍で2番目の攻撃型原潜である[3]ロシアからヴィクターIII型原子力潜水艦の技術を導入して静粛性の向上を図っている[5]。ただし、セイルの形状はヴィクター型と全く異なり、潜舵もセイル取り付けであるなど、外形は全く異なる[5]アメリカ海軍の評価では、静粛性もヴィクターIII型に劣るとされている[5](ヴィクターIII型の静粛性は、概ねスタージョン級やロサンゼルス級の初期型と同レベル)。

    1番艦「長征7号」は1994年に起工されたが、技術的な問題などで建造に時間がかかり、2006年の就役までに12年を要した[1]2007年になると、この艦の発展型である094型が航海している様子が撮影され、本艦が実戦配備されている可能性が濃厚となった。同年8月には、中国人民解放軍の公式雑誌『現代艦船』で写真が公開され、技術的課題が解決され2006年の12月に1番艦が就役したと伝えた。就役まで12年を要した1番艦に対して、2番艦は2000年建造開始、2007年就役と建造期間は短縮された[5]。しかし3番艦が就役したのは5年後の2012年のことだった[1]

    2015~2016年には、船体を若干延長し水中放射雑音も抑えたほか、曳航ソナーを装備した[1]改良型の093A型が4~6番艦として就役した。さらに、セイル後方を隆起させた[1]改良型の093B型が7番艦・8番艦として2017~2018年に就役した[3]

    同艦型

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    渤海船舶重工で建造されている[1][2]。なお、人民解放軍海軍が発表した写真は修整で個別の艦の識別を困難になっているほか、アメリカ議会の報告では409の艦番号を付与された艦は4隻存在するとされており、実際の建造隻数がより多い可能性が指摘されている[1]

    一覧表

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    艦番号 艦名 建造 起工 就役 所属 運用状況
    093型
    407 長征7号 渤海船舶重工 2002年
    12月24日
    2006年
    12月
    龍坡海軍基地 就役中[6]
    408 長征8号 2000年 2008年 就役中[6]
    409 長征1号 2012年 就役中[6]
    093A型
    410 長征2号 渤海船舶重工 2012年 2014年 龍坡海軍基地 就役中[6]
    415 長征13号 2013年 不明 姜各荘海軍基地 就役中[6]
    416 長征3号 不明 就役中[6]
    417 長征14号 不明 就役中
    418 長征15号 2017年 就役中[6]
    419 長征16号 2018年 就役中[6]
    093B型
    渤海船舶重工 2022年[7] 艤装中
    2023年[7] 艤装中

    運用史

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    中国人民解放軍海軍が技術や兵站上の問題を改善し、潜水艦の遠洋航海に乗り出したのは、事実上2000年代の半ばからと、その期間は未だ長くはない[8]。その中において、093型は遠距離展開を図っており、2014年にはインド洋において哨戒活動を行っている[9][10]

    2018年1月10日から11日にかけて尖閣諸島(沖縄県石垣市)の接続水域を潜没航行した潜水艦1隻が同12日に中華人民共和国の国旗を掲げて東シナ海を浮上航行したことを、日本海上自衛隊が確認した[11]小野寺五典防衛大臣は同15日、この潜水艦が商級であると記者団に説明した。『産経新聞』の報道によると、この潜水艦は商級改良型の可能性があり、その場合、最大射程540kmの巡航ミサイル十数発を搭載可能で、中国海軍がアメリカ海軍の空母部隊に対してとっている接近阻止・領域拒否戦略の一端を担っているとみられる[12]

    2020年、アメリカの企業により、海南島楡林港地下基地に出入りする093型原子力潜水艦を捉えたとする衛星画像が公開されている[13]

    2023年10月、『デイリー・メール』はイギリスの機密文書に記載された内容として、潜水艦417が敵潜水艦を捕獲するために設置した障害物に自ら衝突し、酸素システムが故障し艦長含む将校22人、将校候補生7人、下士官9人、水兵17人の乗員合わせて55人全員が死亡したと報じたが、中国及び台湾は報道の内容を否定しており、イギリス海軍も正式なコメントは出していない[14]。しかし、本型も含め複数の潜水艦が致命的な事故に見舞われたという報道もあり当事故の存在を疑うには余りある[要出典]

    脚注

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    1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 「写真特集 中国軍艦2022」 『世界の艦船』第969集(2022年4月号)海人社 P.23
    2. ^ a b c d 09III型商級攻擊型核潛艇/09IV型晉級戰略型核潛艇(1)”. 2024年2月18日閲覧。
    3. ^ a b c d e f g h 「今日の中国軍艦 原子力攻撃潜水艦「商」型/093・093A・093B型」 『世界の艦船』2021年4月号、海人社、P.23
    4. ^ Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2014,P8,DoD
    5. ^ a b c d 小林正男「攻撃原潜「商」型」 『世界の艦船』2014年6月号 海人社 P.84-85
    6. ^ a b c d e f g h The International Institute for Strategic Studies (2022). The Military Balance 2022. Routledge. p. 257. ISBN 978-1-032-27900-8 
    7. ^ a b China launches second possible Type 093B hull”. janes.com (1 February 2023). 1 February 2023閲覧。
    8. ^ 小原凡司「中国潜水艦運用の現状と課題」 『世界の艦船』2013年10月号 海人社 P.92-95
    9. ^ 中国潜水艦のインド洋進出,海上自衛隊幹部学校コラム,2014-10-06
    10. ^ Exclusive: Indian Navy headless as Chinese nuclear sub prowls Indian Ocean”. indiatoday (2014年3月21日). 2015年2月8日閲覧。
    11. ^ 潜没潜水艦の動向について防衛省・報道発表(2018年1月12日)2018年1月17日閲覧
    12. ^ 尖閣接続水域入域の中国潜水艦は「商」級攻撃型原潜 長射程巡航ミサイル搭載か 防衛相が発表 2018年1月16日付『産経新聞』朝刊
    13. ^ 地下基地に入る中国の原子力潜水艦? 米企業が衛星写真公開”. AFP (2020年8月22日). 2020年8月22日閲覧。
    14. ^ チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版 (2023年10月5日). “中国は「根も葉もないうわさ」と言っていたのに…英機密文書「中国原潜が山東省沖で沈没、乗組員55人死亡」”. www.chosunonline.com. 2024年9月27日閲覧。

    外部リンク

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