呉汁
呉汁(ごじる)は、大豆を磨砕したもの[1]。豆腐の製造工程において加熱濾過する前(豆乳に加工する前)の状態のものである[1](豆腐を参照)。また、大豆を水に浸し、擂り潰したペーストを呉(ご)とし[2]、この呉に味噌汁に入れたものを呉汁ということもある[2]。
一方、染色工芸の分野では大豆タンパクの作用を利用し、染料の布への染着性を高めることなどを目的に呉汁(大豆汁)が用いられる[3]。
郷土料理
[編集]日本各地に伝わる郷土料理である[4]。秋に収穫された大豆が出回る秋から冬が旬[5]で、呉汁に入れる大豆以外の具材は、人参、大根、牛蒡、玉葱等の根菜類、豆腐、厚揚げ、油揚げ等の大豆加工品、葱、芹、唐辛子等の薬味、芋がら、こんにゃく、椎茸、煮干し、鶏肉等で地域毎に様々である。擂り潰した大豆と野菜類が豊富に入った呉汁は栄養価が高く体が温まり、冬場の郷土料理として日本各地で昔から親しまれている[2]。報恩講において食べられることもある[6]。
擂り潰した枝豆を入れた味噌汁は青呉汁あるいは枝豆呉汁という[4]。
由来
[編集]呉汁の起源は諸説あり定かでない[4]。呉汁の「呉」は擂り潰した大豆を意味し、音からの当て字であり、中国の呉王朝や広島県呉市とは無関係である[4]。
各地の呉汁
[編集]宮城県
[編集]大豆の収穫時期・体が温まることから冬に食べられている[7]。日常的に家庭料理として食べられている[7]。
大豆を水に浸してふやかしたものをすり鉢等ですりつぶし、「呉」を作る.野菜の入った味噌汁の中に「呉」をいれる[7]。
福井県
[編集]報恩講において振舞われる精進料理の一つであるほか、結婚式や法事等でも出される[8]。
染色工芸
[編集]染色工芸の分野では、染料の布への染着性を高めるため、模様を描くやすくするため、にじみを抑えるために呉汁(大豆汁)が用いられる[3]。手芸染色の描染刷毛染の場合、呉汁を布に塗っておくと、紙の上のような描きやすさになり、染着もよく、にじみも抑えられる[9]。ただし濃度や塗布回数は習慣や経験に基づいて利用されていることが多い[3][9]。
岐阜県の郡上本染(岐阜県重要無形文化財)では鯉のぼりの制作に呉汁が用いられている[10]。
参考文献
[編集]- ^ a b 下橋淳子、寺田和子「豆乳の加熱条件と木綿豆腐のテクスチャーとの関係について」『駒沢女子短期大学 研究紀要』第32巻、駒沢女子短期大学、1999年3月3日、25-29頁。
- ^ a b c “呉汁 宮城県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2022年5月27日閲覧。
- ^ a b c 稲垣和子「染色に於ける呉汁の研究(第一報)」『奈良学芸大学紀要』第9巻第2号、奈良学芸大学、1960年2月15日、77-81頁。
- ^ a b c d “呉汁/ごじる”. 語源由来辞典. 2022年5月27日閲覧。
- ^ “呉汁ごじる”. 自然人.netコミュニティ. 2022年5月27日閲覧。
- ^ “ほんこさん/報恩講料理 福井県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2022年5月27日閲覧。
- ^ a b c “呉汁 宮城県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2022年6月2日閲覧。
- ^ “呉汁 福井県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2022年6月2日閲覧。
- ^ a b 長野まつ、阿部けい子「手芸染色に於ける大豆汁の応用について」『大阪女子学園短期大学紀要』第1巻、大阪夕陽丘学園短期大学、1957年、9-12頁。
- ^ “郡上本染”. 日本伝統文化振興機構. 2024年6月24日閲覧。