吹奏楽のための交響曲 (ヒンデミット)
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ヒンデミット/吹奏楽のための交響曲 - 岡田渉指揮ヒネモス・ウインド・オーケストラによる演奏。ヒネモス・ウインド・オーケストラ公式YouTube。 |
吹奏楽のための交響曲変ロ調(Symphony in B♭ for Concert Band )は、パウル・ヒンデミットが1950年から1951年にかけて作曲した吹奏楽のための交響曲。吹奏楽のために作曲された古今の交響曲のうちでも、とりわけ重要な作品に位置づけられ、またこのジャンルにおける傑作の一つとされる。
当時ヒンデミットはアメリカへ亡命中で、ワシントンD.C.のアメリカ陸軍軍楽隊から指揮者として客演の依頼を受けた際に「ちょっとしたもの」(a little something) を書くことが話題になり、結果的にこの交響曲が書かれた[1]。軍楽隊隊長のヒュー・カーリー中佐(Lit. Col. Hugh Curry)は、ヒンデミットは以前から吹奏楽曲の構想を持っていて、客演の申し出がいいきっかけになったと証言している[2]。初演は1951年4月5日、この軍楽隊をヒンデミット自身が指揮してワシントンD.C.にて行われ、楽譜は翌1952年にショット社から出版された。
ヒンデミット自身の指揮ではまた、フィルハーモニア管弦楽団(1956年)、バイエルン放送交響楽団(1959年)との録音が残されている。
楽器編成
[編集]1926年のドナウエッシンゲン音楽祭のために作曲した『吹奏楽のための協奏音楽』作品41が金管楽器を充実させた、いわゆるドイツ式の編成を想起させるのに対し、この曲ではアメリカの軍楽隊の委嘱で書かれたこともあって、アメリカ式のコンサート・バンド編成が採られている(題名も正確に訳すと『コンサート・バンドのための交響曲変ロ調』である)。
- 木管楽器
- ピッコロ、フルート2、オーボエ2、ファゴット2、E♭クラリネット、ソロB♭クラリネット、B♭クラリネット3、E♭アルト・クラリネット、B♭バス・クラリネット、E♭アルト・サクソフォーン2、B♭テナー・サクソフォーン、E♭バリトン・サクソフォーン
- 金管楽器
- 打楽器
楽曲構成
[編集]3つの楽章からなる。演奏時間は約19分。古典的な形式を意識したことが強く窺えるほか、ヒンデミットが得意とした対位法の技術が全編に活用されている。
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第1楽章 Moderately Fast, With Vigor | |
第2楽章 Andantino Grazioso - Fast and Gay | |
第3楽章 Fugue Timothy W. Foley指揮アメリカ海兵隊軍楽隊による演奏。アメリカ海兵隊軍楽隊(United States Marine Band)公式YouTube。 |
- 第1楽章 Moderately Fast, With Vigor
- 変ロ調、3/2拍子。ソナタ形式。序奏はなく、広い音域を持つ第1主題がトランペットとコルネットによって力強く奏し出される。第2主題はオーボエによってやや抒情的に、第3主題は木管楽器の裸のユニゾンで提示される。
- ゲネラルパウゼを挟んで、展開部はサクソフォーンに始まるフーガで構成される。それが頂点に達するとクラリネットのパッセージが残り、第1主題と第2主題が木管楽器の高音と低音を用いて同時に再現される。第3主題が続いて再現され、コーダとなり終わる。
- 第2楽章 Andantino Grazioso - Fast and Gay
- ト調、2/2拍子。三部形式。緩徐楽章とスケルツォが組み合わされた楽章。主部は落ち着いた伴奏に乗って、コルネットとアルトサクソフォーンによるカノン風の二重奏が続く。中間部は12/8拍子となり、木管楽器を中心に各楽器が快活に動き回る。主部が再現される際には中間部の楽想が同時に奏され、この2つの要素が拮抗したままコーダに到る。
- 第3楽章 Fugue
- 変ロ調、2/2拍子。精巧な二重フーガ。冒頭に奏される快活な主題と、後に現れる三連符が特徴的な息の長い主題をそれぞれフーガで扱っていく。2つの主題が同時進行する二重フーガとなると、それに乗って第1楽章の第1主題が回帰し、全曲を統一する。最後はF-D-E♭-C#の動機を強調しながら叩きつけるように終わる。
脚注
[編集]- ^ Morin, Chase (2016), Paul Hindemith's Symphony in B flat and Septet: a conductor's analysis, Colorado State University, p. 24
- ^ 樋口幸弘. “樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第151話 ヒンデミット・コンダクツ・ヒンデミット”. 吹奏楽マガジン「バンドパワー」. 2022年10月26日閲覧。
参考文献
[編集]- Richard K. Hansen (2005) "The American Wind Band: A Cultural History" GIA Publications
- Jason Leo Curley (2010) Revealing structural aspects of Paul Hindemith's Symphony in B-flat for Concert Band through a map: Music Analysis Profile アリゾナ大学のレポジトリ、2013年7月22日閲覧
外部リンク
[編集]- 吹奏楽のための交響曲変ロ調の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- Symphony in B flat - Fondation Hindemith