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合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク
Combining Diacritical Marks for Symbols
範囲 U+20D0..U+20FF
(48 個の符号位置)
基本多言語面
用字 Inherited
主な言語・文字体系
割当済 33 個の符号位置
未使用 15 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
1.0.0 18 (+18)
3.0 20 (+2)
3.2 27 (+7)
4.1 28 (+1)
5.0 32 (+4)
5.1 33 (+1)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
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合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(ごうせいかのうなダイアクリティカルマーク、英語: Combining Diacritical Marks for Symbols)は、Unicodeの76個目のブロック

解説

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ダイアクリティカルマークのうち、数学記号などの記号に付けられたり、囲み文字などのように文字と結合して記号を形成するものが収録されている。

本ブロックに含まれる文字は全てダイアクリティカルマークのため、文字幅を持たない結合文字である。

Unicodeのバージョン1.0においては単に「記号用ダイアクリティカルマーク(Diacritical Marks for Symbols)」というブロック名で制定されていた[1]

収録文字

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コード 文字 文字名(英語) 用例・説明
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク
U+20D0 COMBINING LEFT HARPOON ABOVE
U+20D1 COMBINING RIGHT HARPOON ABOVE 数学物理学においてベクトル[2]の表記に用いられる。

手書き文書などで見られる字形で、U+20D7 ⃗ COMBINING RIGHT ARROW ABOVEがより正式な字形である。

U+20D2 COMBINING LONG VERTICAL LINE OVERLAY 数学記号と共に用いられ、否定[2]を表す。

国際標準では数学記号の否定にはこの記号が用いられ、例えば含有を表す∈の否定は∉と表されるが、日本においてはしばしばこの記号の代わりにU+0338 ̸ COMBINING LONG SOLIDUS OVERLAYが用いられる。

U+20D3 COMBINING SHORT VERTICAL LINE OVERLAY 否定を表すU+20D2のまれな異体字[2]
U+20D4 COMBINING ANTICLOCKWISE ARROW ABOVE
U+20D5 COMBINING CLOCKWISE ARROW ABOVE 回転を表す[2]
U+20D6 COMBINING LEFT ARROW ABOVE
U+20D7 COMBINING RIGHT ARROW ABOVE 数学物理学においてベクトル[2]の表記に用いられる。

また、ナブラ記号(U+2207 ∇ NABLA)に付いて勾配を表す。

U+20D8 COMBINING RING OVERLAY 積分記号(∫)に結合して線積分面積分を表す。
U+20D9 COMBINING CLOCKWISE RING OVERLAY U+20D8について線積分の回転方向を指定する場合に用いられる。
U+20DA COMBINING ANTICLOCKWISE RING OVERLAY
U+20DB COMBINING THREE DOTS ABOVE ニュートン力学において3階の微分[2]を表す。
U+20DC COMBINING FOUR DOTS ABOVE ニュートン力学において4階の微分[2]を表す。
囲み文字用ダイアクリティカルマーク
U+20DD COMBINING ENCLOSING CIRCLE 丸囲み文字を形成するために用いられる。

丸囲み文字は主に手順の順序や、教育における問題の小問を表すのに用いられる。

キリル文字ではキリル数字の表記で1万の桁を表す[2]

拡張IPAでは不明瞭な音素を表すのに用いられ、例えばⒸであれば不明瞭な子音(consonant)を、Ⓝであれば不明瞭な鼻音(nasal)を表す。

ジョン・ドルトン元素記号ではいくつかの元素が丸囲み文字で表される。

漢字に付けられるとしばしば書類などの分類のための略号として用いられることがある。

U+20DE COMBINING ENCLOSING SQUARE 四角囲み文字を形成するために用いられる。

四角囲み文字は主に新聞におけるテレビ放送チャンネルや、教育において問題の大問を表すのに用いられる。

U+20DF COMBINING ENCLOSING DIAMOND 菱形囲み文字を形成するために用いられる。

菱形囲み文字は主に警告を表すシンボルとして用いられる。

U+20E0 COMBINING ENCLOSING CIRCLE BACKSLASH 禁止[2]を表すシンボルを形成するために用いられる。
追加の記号用ダイアクリティカルマーク
U+20E1 COMBINING LEFT RIGHT ARROW ABOVE 数学においてテンソルを表す[2]
追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク
U+20E2 COMBINING ENCLOSING SCREEN コンピュータUIなどにおいて、複数のディスプレイなどのスクリーン装置がある場合に数字と結合して何番の画面であるかを表すために用いられる。
U+20E3 COMBINING ENCLOSING KEYCAP コンピュータのキーボードについてどのキーであるかを表現するために用いられる。
U+20E4 COMBINING ENCLOSING UPWARD POINTING TRIANGLE 三角囲み文字を形成するために用いられる。

三角囲み文字は主に注意を表すシンボルとして用いられる。

元々欧州の道路標識で警告の表示は三角形の看板で行われており、そこから派生して感嘆符(!)を三角形で囲んだ記号が一般的に注意が必要であることを意味するようになった。様々なものについての注意を表すため、感嘆符以外にも色々な記号と結合できるように結合記号として符号化されることとなった[3]。(例えばハザードシンボルのように)

但し、現在三角囲みの感嘆符は26A0 ⚠ WARNING SIGNとして個別の文字としても符号化されている。

Adobe Korea 1-2には漢字の「補」を三角で囲った補⃤という文字が含まれている。

追加の記号用ダイアクリティカルマーク
U+20E5 COMBINING REVERSE SOLIDUS OVERLAY
U+20E6 COMBINING DOUBLE VERTICAL STROKE OVERLAY Z言語において有限関数を表す[2]
U+20E7 COMBINING ANNUITY SYMBOL 保険数理学において年金を表すのに用いられる[2]

また、日本語音韻論において高低アクセント下降ステップが現れる箇所であることを表す。

U+20E8 COMBINING TRIPLE UNDERDOT
U+20E9 COMBINING WIDE BRIDGE ABOVE 縮約演算子[2]

基字の幅全体に橫に広がって付けられる[2]

U+20EA COMBINING LEFTWARDS ARROW OVERLAY
U+20EB COMBINING LONG DOUBLE SOLIDUS OVERLAY
U+20EC COMBINING RIGHTWARDS HARPOON WITH BARB DOWNWARDS
U+20ED COMBINING LEFTWARDS HARPOON WITH BARB DOWNWARDS
U+20EE COMBINING LEFT ARROW BELOW
U+20EF COMBINING RIGHT ARROW BELOW
U+20F0 COMBINING ASTERISK ABOVE

小分類

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このブロックの小分類は「合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク」(Combining diacritical marks for symbols)、「囲み文字用ダイアクリティカルマーク」(Enclosing diacritics)、「追加の記号用ダイアクリティカルマーク」(Additional diacritical mark for symbols)、「追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク」(Additional enclosing diacritics)の4つとなっている[2]。本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。また、収録文字が1文字しかない小分類については小分類名が単数形で表現されているが、本記事では単数形か複数形かによる小分類名の表記ゆれについては別の小分類として扱わず、同一の小分類として扱うこととする。

合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(Combining diacritical marks for symbols

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この小分類には主に数学物理学Z言語などで用いられる、記号に結合するダイアクリティカルマークが収録されている。

囲み文字用ダイアクリティカルマーク(Enclosing diacritics

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この小分類には数字やラテン文字などに結合して囲み文字を形成するために用いられるダイアクリティカルマークが収録されている。

追加の記号用ダイアクリティカルマーク(Additional diacritical mark for symbols

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この小分類には数学や物理学、Z言語などで用いられる、記号に結合するダイアクリティカルマークが収録されている。

追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク(Additional enclosing diacritics

[編集]

この小分類には数字やラテン文字などに結合して囲み文字を形成するために用いられるダイアクリティカルマークが収録されている。

文字コード

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合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(Combining Diacritical Marks for Symbols)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+20Dx
U+20Ex
U+20Fx
注釈
1.^バージョン16.0時点


履歴

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以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
1.0 U+20D0..20E1 18
3.0 U+20E2..20E3 2 L2/97-206 Unicode (5 August 1997), Proposal to encode two symbols (create combining screen and combining keycap) (英語)
3.2 U+20E4 1 L2/98-056 McGowan & Geoffrey Sampson (24 February 1998), Proposal Triangular Overlay Character (英語)
U+20E5..20E8 4 L2/00-119 SC2/WG2 N2191R (19 April 2000), Proposal for mathematical symbols in 10646 (英語)
U+20E9..20EA 2 L2/01-142 Barbara Beeton; Asmus Freytag (2 April 2001), Additional Mathematical Symbols (replaces L2/01-088 == SC2/WG2 N2318) (英語)
4.1 U+20EB 1 L2/03-194 Asmus Freytag (9 June 2003), Additional Mathematical and Letterlike Characters (英語)
5.0 U+20EC..20EF 4 L2/04-406 Asmus Freytag (15 November 2004), Progress report on Mathematical Symbols (英語)
5.1 U+20F0 1 L2/07-011 Asmus Freytag; Barbara Beeton (15 January 2007), 29 Additional Mathematical and Symbol Characters (WG2 N3198) (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

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  1. ^ 3.8: Block-by-Block Charts”. The Unicode Standard. Unicode Consortium. 2024年11月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o "The Unicode Standard, Version 15.1 - U20D0.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2024年11月13日閲覧
  3. ^ McGowan & Geoffrey Sampson (1998年2月24日). “Proposal Triangular Overlay Character” (英語). Unicode. 2024年11月13日閲覧。

関連項目

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