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十代の出産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
15歳から19歳の女性1000人あたりの出産数(2000 - 2009年、国連統計部)

十代の出産(10代の出産、じゅうだいのしゅっさん)は、10歳以上20歳未満の女性妊娠出産することをあらわす。

英語では10代という括りで区分せずに、10歳と11歳を除外したティーンエイジャーの出産英語: Teenage childbirth[1]あるいは思春期の出産(英語: Adolescent childbirth)などと呼ばれることが多い[2]

各国

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一般的には、アフリカやインド[3]などの開発途上国に十代の出産が多い。

医学的側面

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10代の若者が妊娠した場合、妊娠に気づくのが遅くなることが多く、母体および出生前の健康が特に懸念される[4]未熟児低出生体重児の世界的な発生率は、思春期の母親の間で高い[5][6][7]。西ベンガルの農村病院では、15〜19歳の10代の母親の方が、20〜24歳の母親よりも、貧血、早産、低出生体重児を産む場合が多かった[8]

妊娠中の10代の若者は出生前のケアを受ける可能性が低く、仮にあったとしても妊娠3期(妊娠28週から40週までの妊娠末期)に求めることが多い。Guttmacher Institute英語版は、妊娠している10代の3分の1が出生前のケアが不十分であること、年配の女性から生まれた子供よりも、子供のころに健康問題を抱えているか入院している可能性が高いとの報告がある[9]

しかし10代の女性の産科、新生児リスクに関する研究は結果が不揃いであり、特にリスクは高くないと結論している研究も多い[10][11][12][13][14][15]

Shubhashrita Basu(2021)により行われた、18歳未満で妊娠した女性の中に流産により出産に至らず、18歳以降に第一子を出産した女性が居る事を利用して未特定の家庭環境因子をコントロールした研究では、18歳未満の母親の低出生体重児や早産等の新生児リスクの高さは、交絡因子を調整した場合、有意ではなくなる事、18歳未満の母親の子供は健康障害や治療を必要とする状態、医療を必要とする事故や病気に掛かった事を報告する可能性が低い事、晩年の自己申告による健康状態がより良好である事を発見している[16]。従って、従来10代の出産のリスクとされていたものは家庭環境や遺伝的要因等における未特定の交絡因子の調整不足であった可能性がある。

米国では、ラテン系アメリカ人や10代の妊娠の場合、ラテンアメリカの人口がアメリカ合衆国で最も保険をかけられていないグループであることから[17]、医療を受けることを妨げる障壁がある。

質の高い出産ケアを受けている若い母親は、受けていない母親よりもかなり健康な子を産んでいる。 10代の母親に関連する健康問題の多くは、適切な医療へのアクセスの欠如から生じるように思われる[18]

多くの10代の妊婦は、体重を減らす試みのダイエット断食(三食食べない)、フードファディズムスナック菓子、およびファストフードの摂取によって、思春期によく見られる貧しい食習慣による栄養欠乏の危険にさらされている[19]

妊娠中の不適切な栄養摂取は、発展途上国の10代の若者の間でさらに顕著な問題である[20][21]。妊娠の合併症は、発展途上国で毎年推定7万人の10代の少女の死をもたらす。 若い母親とその子も、HIVに感染する危険性が高くなる[22]世界保健機関は、妊娠後の死亡リスクは15〜19歳の少女の方が20〜24歳の女性よりも2倍高いと推定している。 妊産婦死亡率は、10歳から14歳の女児では20歳から24歳の女性よりも最大で5倍高くなる可能性がある。 サブサハラアフリカなどの地域では、違法な中絶も10代の少女にとって多くのリスクとなっている[23]

未発達の骨盤は出産時に困難をもたらす可能性があるため、医学的合併症のリスクは15歳未満の女子の方が大きい。出産時の分娩停止は、通常先進国では帝王切開によって対処される。しかし、医療サービスが利用できない可能性がある発展途上地域では、子癇フィスチュラObstetric fistula)、乳児死亡率、または妊産婦死亡率につながる可能性がある[22][24]。15歳以上の母親にとって、年齢自体は危険因子ではなく、予後不良は生物学的側面よりもむしろ社会経済的要因と関連している[5]

性教育との関連

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日本の性交同意年齢は明治時代から110年以上、13歳であったが、2023年6月16日に同意のない性行為犯罪と明確にするなど、性犯罪の規定を見直す刑法などの改正案が、参議院本会議で可決、成立した結果16歳に引き上げられた[25][26]。改正案の可決、成立以前は、婚姻を前提とした真摯な交際が前提であれば、無論当事者の合意を以て、13歳以上の者が性的行為をしたとしても合法であった。

なお、妊娠自体に法的な年齢制限はないため、男女による自然妊娠を前提とした性的同意年齢以上であれば、妊娠と婚姻に直接の関係はない。もっとも、婚姻は妊娠し出産した後の子供の養育や扶養、子供の地位に大きな影響を及ぼす。

民法に定められる女性の婚姻成立可能年齢は、1948年(昭和23年)1月1日から70年以上にわたって満16歳以上であった[27][28]。仮に女性が16~17歳でも法に基づく婚姻が成立している状態であれば、児童福祉法や淫行条例に影響されることはなく性行為および出産のいずれも合法であったが、2018年(平成30年)6月13日の法改正によって施行日の2022年(令和4年)4月1日より婚姻可能年齢は男女とも18歳以上に変更された[29]

いくらかの社会においては、早婚および伝統的な性役割は10代の妊娠の発生率における重要な要素である。10代の結婚が普通でない社会において若い頃の最初の性交においては、避妊具・避妊薬が使われないことがままある。先進国における大部分の10代の妊娠は、そのような理由から予期しない妊娠であることも多い。

経験が乏しい青少年はコンドームの使い方に慣れていない傾向があり、10代の妊娠にたいしてはティーンエージャーの間での性的関係を受け入れ、そして性に関する包括的でバランスのとれた情報を提供することが重要である。

なお1997年の日本産婦人科学会の報告では、平均初潮年齢は12.3歳とされている。

統計上の日本における15~19歳の出産率は大韓民国とともに世界最低レベルである[30]

平成時代までのテレビドラマでは十代の妊娠や出産を取り上げることも普通に見られた[31][32][33]しかし、現在は不良文化の衰退もあって忌避される傾向にあり、少子化や高学歴化(大学進学率の上昇など)とともに十代の妊娠や出産そのものが減少に向かうことが予測されている。[要出典]

10歳以下での出産

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最も若く出産した例としては、1939年に5歳で男の子を生んだリナ・メディナが知られている。以前はギネスブックに記録されていたが、現在は人権上の問題から項目そのものがなく、ギネス世界記録とはみなされていない。[要出典]なお、10歳以下の女性はほとんど月経を経験しておらず、また思春期が始まったばかりの者がほとんどで、十分に妊娠や出産ができる状態になることはほとんどない[34]

脚注

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出典

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  1. ^ Teen childbirth poses big risks for baby and mom : Shots - Health News : NPR (英語)
  2. ^ Adolescent childbirth remains linked to poor outcomes for both mother and child in Cote d'Ivoire (英語)
  3. ^ 【海外発!Breaking News】病院が受け入れ拒否 17歳少女、路上で出産を強いられる(印”. news.livedoor.com. news.livedoor.com. 2021年10月27日閲覧。
  4. ^ 三宅婦人科内科医院“思春期" 10代の妊娠 - ウェイバックマシン(2015年12月8日アーカイブ分)
  5. ^ a b Makinson C (1985). “The health consequences of teenage fertility”. Family Planning Perspectives 17 (3): 132–139. doi:10.2307/2135024. JSTOR 2135024. PMID 2431924. 
  6. ^ Not Just Another Single Issue: Teen Pregnancy Prevention's Link to Other Critical Social Issues(The National Campaign to Prevent Teen Pregnancy. (2002)) - ウェイバックマシン(2007年9月28日アーカイブ分)
  7. ^ Scholl TO, Hediger ML, Belsky DH (1994). "Prenatal care and maternal health during adolescent pregnancy: A review and meta-analysis". The Journal of Adolescent Health. 15 (6): 444–456. doi:10.1016/1054-139X(94)90491-K. PMID 7811676
  8. ^ Banerjee B, Pandey G, Dutt D, Sengupta B, Mondal M, Deb S (2009). "Teenage pregnancy: A socially inflicted health hazard". Indian Journal of Community Medicine. 34 (3): 227–231. doi:10.4103/0970-0218.55289. PMC 2800903. PMID 20049301
  9. ^ Guttmacher Institute. (1999, September).Teen Sex and Pregnancy Archived 2005-04-03 at the Wayback Machine.. Retrieved May 29, 2006.
  10. ^ Age at First Birth and Birth Outcomes, James McCarthy &Janet Hardy
  11. ^ Honorato DJP, Fulone I, Silva MT, (2021-04-09), “Lopes LC. Risks of Adverse Neonatal Outcomes in Early Adolescent Pregnancy Using Group Prenatal Care as a Strategy for Public Health Policies: A Retrospective Cohort Study in Brazil.”, Front Public Health., doi:10.3389/fpubh.2021.53634, PMID 33898367, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33898367/ 
  12. ^ Abu-Heija A, Al Haddabi R, Al Bash M, Al Mabaihsi N, Al-Maqbali NS. Early Teenage Pregnancy: Is it Safe? J Obstet Gynaecol India. 2016 Apr;66(2):88-92. doi:10.1007/s13224-014-0649-6. Epub 2014 Dec 25. PMID 27046961; PMC 4818837.
  13. ^ Trivedi AN. Early teenage obstetrics at Waikato Hospital. J Obstet Gynaecol. 2000 Jul;20(4):368-70. doi:10.1080/01443610050111968. PMID 15512586.
  14. ^ Zeteroglu S, Sahin I, Gol K. Cesarean delivery rates in adolescent pregnancy. Eur J Contracept Reprod Health Care. 2005 Jun;10(2):119-22. doi:10.1080/13625180500131600. PMID 16147817.
  15. ^ Katz Eriksen JL, Melamed A, Clapp MA, Little SE, Zera C. Cesarean Delivery in Adolescents. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2016 Oct;29(5):443-447. doi:10.1016/j.jpag.2016.01.123. Epub 2016 Feb 1. PMID 26836505.
  16. ^ Basu S, Gorry D. Consequences of teenage childbearing on child health. Econ Hum Biol. 2021 Aug;42:101019. doi:10.1016/j.ehb.2021.101019. Epub 2021 May 27. PMID 34091239.
  17. ^ Sterling, Sandra P. (2009). “Contraceptive Use Among Adolescent Latinas Living in the United States: The Impact of Culture and Acculturation”. Journal of Pediatric Health Care 23: 4. 
  18. ^ Raatikainen K, Heiskanen N, Verkasalo PK, Heinonen S (2005). "Good outcome of teenage pregnancies in high-quality maternity care". The European Journal of Public Health. 16 (2): 157–161. doi:10.1093/eurpub/cki158. PMID 16141302
  19. ^ Gutierrez Y, King JC (1993). "Nutrition during teenage pregnancy". Pediatric Annals. 22 (2): 99–108. doi:10.3928/0090-4481-19930201-07. PMID 8493060
  20. ^ Sanchez PA, Idrisa A, Bobzom DN, Airede A, Hollis BW, Liston DE, Jones DD, Dasgupta A, Glew RH (1997). "Calcium and vitamin D status of pregnant teenagers in Maiduguri, Nigeria". Journal of the National Medical Association. 89 (12): 805–811. PMC 2608295. PMID 9433060
  21. ^ Peña E, Sánchez A, Solano L (2003). "Profile of nutritional risk in pregnant adolescents". Archivos Latinoamericanos de Nutricion. 53 (2): 141–149. PMID 14528603
  22. ^ a b Mayor S (2004). “Pregnancy and childbirth are leading causes of death in teenage girls in developing countries”. BMJ 328 (7449): 1152. doi:10.1136/bmj.328.7449.1152-a. PMC 411126. PMID 15142897. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC411126/. 
  23. ^ Locoh, Therese (1999). “Early Marriage And Motherhood In Sub-Saharan Africa”. African Environment 3–4 (39–40): 31–42. doi:10.4314/ae.v10i3.22558. http://www.ajol.info/index.php/ae/article/view/22558. 
  24. ^ Adolescent pregnancy - UNFPA - United Nations Population Fund”. UNFPA. 2019年7月24日閲覧。
  25. ^ 「不同意性交等罪」を創設、性交同意年齢は引き上げ。改正刑法が成立、どう変わる?”. ハフポスト (2023年6月16日). 2023年6月16日閲覧。
  26. ^ 【速報】「同意なしの性行為は処罰対象」改正刑法が参院本会議で可決・成立 “性交同意年齢”は「13歳以上」→「16歳以上」に引き上げ”. TBSテレビ. 2023年6月16日閲覧。
  27. ^ 昭和22年法律第222号抄(民法の改正)
  28. ^ 昭和22年法律第222号附則
  29. ^ 法務省: 民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について
  30. ^ "Teenage birth rate (most recent) by country" NationMaster, 2010年6月10日閲覧
  31. ^ 『3年B組金八先生』の全8シリーズ&スペシャルをParaviで完全初配信決定‼ | プレミアム・プラットフォーム・ジャパンのプレスリリース
  32. ^ 14才の母~愛するために 生まれてきた~ | 日本テレビ
  33. ^ 『グッド・ドクター』 - フジテレビ
  34. ^ 思春期とは – 日本産婦人科医会

関連項目

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10代の妊娠を題材にした映像作品

外部リンク

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