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適応主義(てきおうしゅぎ、Adaptationism)は、生物の特徴は自然淘汰によって進化した適応であると想定する、生物学上の考え方[1][2][3]。適応論ともいう。適応万能論、適応万能主義と呼ぶこともあるが、この語は批判的に用いられることが多い[4]

概要

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生物は自然淘汰の結果として、環境のなかで生存し、繁殖するのに適した形質を身に付けるように進化してきた。したがって、生物の持つさまざまな形質がなぜ存在するのかという問いに対し、その形質がどのように生物の繁殖成功(適応度)を高めるという観点から答えることができる。この答え(究極要因)を研究するのが適応主義アプローチ(適応論的アプローチ)である[5]

たとえば、ヒイラギという発光器を持ち、腹から下側に向けて光を発することができる。このことは適応主義の立場から、以下のように説明できる[6]。魚が海中を泳いでいると、上から光が当たるために、影ができてしまう。ヒイラギは腹部を光らせることで影を消し、下にいる捕食者から自分の姿が見えにくいようにしている。よりうまく捕食者から逃れられる個体はより多くの子孫を残すだろうから、発光は自然淘汰によって進化してきたものとして理解できる。

ただし、発光器を形成し、維持するには多かれ少なかれエネルギー物質を必要とするだろう。捕食を逃れることの利益がこれらのコストを上回らなければ、発光する個体の適応度は高くならない。適応主義者は、経済学から転用された費用便益分析などの手法を用いて、適応に関する仮説を立て、検証する[7]。ある形質が自然淘汰によって進化するためには、最低限利益がコストよりも大きくなければならない。そらに進んで、ありうるさまざまな形質のなかから、コストを差し引いた正味の利益が最大になるものを特定する手法を最適化モデル(最適性理論、最適性モデル)[3][2][7]という。一例として、フンバエ交尾行動についての研究がある[2]。フンバエのは、交尾後もしばらく防衛する。これは、雌が他の雄と交尾するのを防ぐためであると考えられる。さらに、交尾時間が長ければ長いほど、多くの受精させることができることもわかっている。しかし、交尾や防衛をしている間は他の雌を探しにいくことができない(すなわち、時間というコストがかかる)。そこで、時間あたりの繁殖成功を最大化する交尾時間を理論的に算出すると41分となり、実際の交尾時間の平均である36分とかなり近くなった。ある形質の適応度が他個体の形質によって決まる場合、単純に最適解を求めることはできない。そのような場合には、進化ゲーム理論を用いて、進化的に安定な戦略を解析する[7]

適応に対する制約

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適応主義においては、生物はありうるなかで最適な形質を持つと想定される。しかし、生物の進化においては、完全な適応の実現を妨げるさまざまな要因がある。

脚注

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  1. ^ 岩波生物学辞典
  2. ^ a b c ソーバー (2009)
  3. ^ a b ステレルニー・グリフィス (2009)
  4. ^ 生物学辞典
  5. ^ 内井 (2001)
  6. ^ ウィリアムズ, ジョージ・C『生物はなぜ進化するのか』草思社〈サイエンス・マスターズ9〉。ISBN 479420809X 
  7. ^ a b c Alcock, J (2005). Animal Behavior: An Evolutionary Approach (8th ed. ed.). Sinauer Associates. ISBN 0878930051 

参考文献

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