利用者:Torumyax/Nursing ethics
看護倫理(Nursing ethics)とは、応用倫理のひとつで、看護の分野を扱う。看護ケア、及び臨床場面での判断やコミュニケーションにおいて指針となる道徳価値観である。
看護倫理は、医療倫理と多くの共通性を持ち、無加害原則、与益原則、自主尊重原則(自己決定権)などの、 医療倫理の原則を共有するが、主に、人の関係性、個人の尊厳、そしてコラボレーティブケアなどに重点を置いている点が異なる。
発展
[編集]看護の本質は、看護倫理が看護師と患者との間の日常的な相互作用を探り、「治癒」よりも、むしろ「ケア」の倫理を探求するものであることを意味する[1] [2]。歴史的には、医師への忠誠を含む優れた看護師としての美徳に焦点を当てて看護倫理を定義すべく模索が行われていた[2] 。それは看護師とケア対象者との関係性における行動に焦点を置くものではなかったのである。近年では、看護倫理もまた、患者の人権と尊厳を尊重するという看護師の義務へとシフトしてきており、これは 国際看護師協会による看護師のための最新の規範などに示されている通りである[3] [4]。
独自性
[編集]看護倫理の多くは医療倫理に似ているように見えることがあるが、それを区別するいくつかの要素が存在する。 Breier-Mackie(Breier-Mackie, Sarah PhD) [5]は、看護師が病気の治療ではなくケアに焦点を当てることで、独自の倫理観が得られると示している。さらに、看護倫理は道徳的なジレンマよりも日常生活の倫理を重視する[2]。看護倫理は、与益原則や公平・正義原則などのより広い原則よりも、思いやりのある関係を築くことに重点を置く[6]。例えば、与益原則に基づいて処置を施すべきという、伝統的な医療に見られた父権主義的パターナリズムの観点からの主張が出される場合もある。しかし、このアプローチは看護倫理に見られる患者中心の価値観に反しているとする議論も可能なのである[7]。
独自性はまた別の理論的な角度からも検討することが出来る。 一部の人々は、道徳義務論的なテーマへの動きにもかかわらず、やはり看護倫理における美徳倫理[8]への重きや、一部の者はケアの倫理への支持し続けている[6]。これは、抽象的な概念や原則よりも、患者との関係性を強調しており、それ故、他の倫理的見解よりもより正確に看護におけるケア関係を反映している、とその提唱者達が考えているからである。また、看護師の尊重と思いやりのある姿勢を強調し促進すべきである、と患者の尊厳を強調するテーマ(アドボカシー"患者の代弁者・患者の権利の提唱者")なども一般的に見受けられる。
看護倫理におけるいくつかのテーマ
[編集]看護師は、自分たちの世話をしている人々の尊厳を守るべきもの達であるべきである[9]。脆弱な状況と立場におかれる患者に尊厳のあるケアを提供するということは、この分野の重要な概念である[10]。
一般的な倫理学的理論のレベルでも、人の尊厳を尊重することは、人々に対する尊重と共に、他人から影響を受けない自主的な選択を尊重する(autonomy)、ということに関係している。 それ(autonomy)がなければ人は自分の治療についての判断をすることが出来ないからである。なかでもインフォームド・コンセントの実践は看護師によって尊重されるべきでり、それは自主尊重原則が根拠となっているからである[7]。ただ、ほとんどの場合、議論の多くは自分の治療について選択をすることができない無意識状態に陥っている人のケースや、判断に影響を与える精神的な病を患っているケースについてである。患者の自主尊重を維持するために提案されている方法は、患者が自主尊重を失った場合、自分自身がどのように扱われることを望むかを概説する「意思表明書」を事前に書面にしておくこととなっている。
もう一つのテーマは機密保持(つまり守秘義務)、これは多くの看護倫理規定における重要な原則である。これは、生命に係るために共有することなどを除き、その人に関する情報がその人の許可を得て初めて他人と共有されるということである[7]。情報提供に関連するのは、ケアを受けている患者との対話における真実の語り方に関する議論である。自主的な決断を下すのに必要な情報を持つ人々と、真実に不必要に悩まされる人々という二種類があり、バランス必要となります。一般的に自主性を尊重するために真実を語ることが推奨されていますが、しばしば真実は語られないように頼むか、あるいはその真意を察することができない場合もある[11]。ここで最後に、 記述倫理学(comparative・empirical ethics)の役割が近年顕著になっていると指摘されている[10]。
上記のテーマを考慮することによって、看護師は倫理的な方法で看護実践するように努めることができます。 看護実践における結果は、時にはリソース不足、政策、または環境的な障害にぶつかり[9]それが道徳的な悩みにつながる可能性があるからである[2]。
- 看護におけるいじめ
- 臨床統治(Clinical governance)
- 患者アドボカシー(Patient advocacy)患者擁護代弁
- ヘルスケアの哲学
参考文献
[編集]- ^ Hunt, G. (1998). Craig E. ed. Routledge Encyclopedia of Philosophy. 7. London: Routledge. pp. 56–57. ISBN 978-0-415-18712-1
- ^ a b c d Storch, J.L. (2009). “Ethics in Nursing Practice”. In Kuhse H & Singer P.. A Companion to Bioethics. Chichester UK: Blackwells. pp. 551–562. ISBN 9781405163316
- ^ McHale, J; Gallagher, A (2003). Nursing and Human Rights. Butterworth Heinemann. ISBN 978-0-7506-5292-6
- ^ “The ICN Code of Ethics for Nurses”. International Council of Nurses (2012年). 2017年7月19日閲覧。
- ^ Breier-Mackie, Sarah (March–April 2006). “Medical Ethics and Nursing Ethics: Is There Really Any Difference?”. Gastroenterology Nursing 29 (2): 182–3. doi:10.1097/00001610-200603000-00099 2 February 2012閲覧。.
- ^ a b Tschudin, Verena (2003). Ethics in Nursing: the caring relationship (3rd ed.). Edinburgh: Butterworth-Heinemann. ISBN 978-0-7506-5265-0
- ^ a b c Rumbold, G (1999). Ethics in Nursing Practice. Balliere Tindall. ISBN 978-0-7020-2312-5
- ^ Armstrong, Alan (2007). Nursing Ethics: A Virtue-Based Approach. Palgrave Macmillan. ISBN 978-0-230-50688-6
- ^ a b Baille L; Gallagher A.; Wainwright P. (2008). Defending Dignity. Royal College of Nursing
- ^ a b Gastmans, C. (2013). “Dignity-enhancing nursing care: A foundational ethical framework”. Nursing Ethics 20 (2): 142–149. doi:10.1177/0969733012473772. PMID 23466947.
- ^ Tuckett, A. (2004). “Truth-Telling in Clinical Practice and the Arguments for and Against: a review of the literature”. Nursing Ethics 11 (5): 500–513. doi:10.1191/0969733004ne728oa. PMID 15362359 .
外部リンク
[編集]- 英国サリー大学国際医療倫理展望台
- 看護師と人権 [1]アムネスティ・インターナショナルより
- 看護倫理 [2]この分野の著名なジャーナル
- Widener大学の看護倫理規定を理解する
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