利用者:Satltsdw/バルクハウゼン効果
強磁性体にかかる磁場が変化するとき、その強磁性体の磁気的出力上の雑音をバルクハウゼン効果と呼ぶ。ドイツの物理学者ハインリッヒ・バルクハウゼンが1919年に発見した。この現象は磁区(強磁性体内で同じ方向に磁化された領域)の大きさの急激な変化が原因である。
バルクハウゼンの音響および磁性に関する研究によってこの現象が発見された。この発見は、1906年にピエール・ワイスが提唱した強磁性体の磁区に関する理論を支持する主要な実験的証拠となった。バルクハウゼン効果は、磁化あるいは脱磁化の連続的過程の間に生じる、強磁性磁区の大きさおよび方向の一連の急激な変化である(前段落第3文で既出)。バルクハウゼン効果は、それ以前に理論的に主張された強磁性磁区の存在の直接の証拠である(この段落第2文で既出)。H. バルクハウゼンは、鉄のような強磁性体試料にかけた磁場を、ゆっくりとなめらかに増加させると、その物質は連続的ではなく微小なステップで階段状に磁化していくことを発見した(この段落第一文とまとめて述べるべき)。
バルクハウゼン雑音
[編集]たとえば鉄棒に磁石が近付いたり離れたりすることで、強磁性体を貫く外部磁場が変化すると、その物質の磁化は不連続変化の連続によって変化して、その結果としてその物質を貫く磁束に跳びが現れる(図2)。この現象は、コイルを強磁性体に巻いて、増幅器とスピーカーに接続することで検出できる。その物質の磁化が急に変化することによってコイルに生じた電流パルスが、増幅器で増幅されてスピーカーで音を発する。このパリパリという音はキャンディの包み紙を開く音、ライスクリスピーズ、あるいはたき火の音にたとえられる。この音がバルクハウゼン雑音である。同じような現象が、検出用コイル中の物質に力学的応力だけをかけた場合にも観測される。
磁化の跳びは磁区のサイズまたは方向の不連続な変化により生じる。磁区サイズの変化は、磁壁付近のスピンが隣の磁区のスピンに揃う過程により磁壁が移動することで起こる。これは完全結晶内では連続的過程であるが、現実の結晶には不純物原子や転移などの局所的欠陥があってスピンの変化の妨げとなり、磁壁が結晶欠陥にひっかかることになる。欠陥におけるエネルギー障壁をこえるほど磁場の変化が大きくなると、一群のスピンが同時に方向を変えることになり、磁壁は欠陥を一気に乗り越える(図3)。物質を通過する磁束の不連続な変化は、このような磁化の急激な変化による。
欠陥を越えて磁壁が移動することに関するエネルギー損失は、強磁性体のヒステリシス曲線の原因となる。保磁力の大きい強磁性体はこのような欠陥を持っていることが多く、同じ磁束の変化でも他の物質に比べて多くのバルクハウゼン雑音を生じる。欠陥を除去する過程を経た変圧器に使われるケイ素鋼などの保磁力が小さい物質は、バルクハウゼン雑音をほとんど出さない。
実用
[編集]物質のバルクハウゼン雑音の量は、その物質の不純物や結晶転移の量に関係しており、その物質の機械的特性の良い指標となる。したがって、頻繁な力学的応力や高エネルギー粒子にさらされた物質あるいは切削によるダメージを受けた高強度鋼といった、磁性体の力学的特性の劣化を、非破壊評価する方法としてバルクハウゼン雑音を利用できる。こういった目的に用いる単純な非破壊検査の仕組みの模式図を図4に示した。
バルクハウゼン雑音を用いて、反応性イオン・エッチングやイオン・ミリング[1]のようなさまざまなナノ加工過程によって薄膜構造が受けた物理的ダメージを知ることもできる。
ウィーガンド・ワイヤは巨視的に単一の巨大な磁区としてふるまうので、ウィーガンド効果はバルクハウゼン効果の巨視的拡張であると言える。ウィーガンド・ワイヤ外殻内の多数の小さな高保磁力を持つ磁区は雪崩的に切り替わり、ウィーガンド効果の高速な磁場変化を生み出す。
- ^ Fukumoto, Yoshiyuki; Kamijo, Atsushi (2002-02-15). “Effect of Milling Depth of the Junction Pattern on Magnetic Properties and Yields in Magnetic Tunnel Junctions”. Japanese Journal of Applied Physics 41 (Part 2, No. 2B): L183–L185. doi:10.1143/JJAP.41.L183 .