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汎用人工知能(Artifitial General Intelligence;AGI)とは架空の人工知能技術であり、しばしば人工知能技術の目指すべき到達目標、未来学に於ける出現の予測される技術、またフィクションに登場する技術である。
概要
人工知能とは人間の知能を模倣させることに到達目標があり、その究極点が汎用人工知能に当たる。しばしば汎用人工知能は人間のように振る舞うプログラムであると説明される。テレビ、映画、文学などのフィクション作品(特にサイエンスフィクション)では取り扱われるトピックであり、その影響などを巡って議論の的となることもある。
定義
弱いAIや狭いAI、特化型AIなどと呼ばれる技術が2023年現在の人工知能技術が全てを占めており、汎用人工知能技術は架空の存在を指す言葉としての域を出ていない。
哲学
強いAIと弱いAI#強いAIを参照
スワンプマン問題を参照
人間の知能を完全に(または外部からは完全に見えるように)模倣した人工知能は人間と同様の意識を持っているのか、ヒトとは異質の意識なのか、或いは言葉や文化をなぞりただ単に意識があるように見せかけているだけなのか、という議論がある。
歴史
人工知能#歴史を参照
人工知能の歴史を参照
近年いわゆる第三次AIブームというものによって盛んに投資と研究、誇大広告が行われた結果、汎用人工知能の実現が俄に囁かれ始めた。しかし実際の汎用人工知能確立の研究進展は非常に限定的なのが現実であり、そもそも何が人間を人間たらしめるのか、汎用人工知能が汎用人工知能たらしめるのか判然としていない。過去には汎用人工知能の実現を確信されて行われた投資、楽観的未来予測があり、それに沿って研究も行われたが、そうした過去の予測に反して何十年という時間を既に消費してしまっている。2023年現在のところ、実現までに何年掛かるのかさえ分かっていない。
研究
主なアプローチとしては人間の脳の精密なモデルを作製しシミュレーションによって実現を目指すというボトムアップと呼ばれる手法と、知識を記したプログラムコードや最適化された弱いAIを統合したものによって汎用人工知能の実現を目指すトップダウンと呼ばれる手法に大別できる。それ以外の方法としてはネットワークに知能の種となるプログラムを撒いてそれが汎用人工知能や超知能となるのを待つ方法や進化的アルゴリズムを利用して最適化を待つ方法が考案されている。
研究機関
以下の機関が汎用人工知能の実現を明示的に、または暗黙的に目指している。
シミュレーション
前述したボトムアップの手法に於いてシミュレーションは重要な位置を占める。
人間の脳の仕組みが詳しく分かっていないという問題もあるが、そもそも脳を詳しく調べる外科的な、或いは非侵襲な、又は倫理的な手法が問題を抱えている。MRIやCTスキャンといった生きた生体脳を観察する方法では粒度が大き過ぎ神経活動が見えない、また死体の脳を観察する方法では脳は死後自己破壊と萎縮が起こり同時に神経活動も失われる為に実際に記述したい神経活動などが分からないという問題がある。そもそも人間の脳は巨大過ぎて死んだ脳を薄くスライスして顕微鏡に翳し記録するだけでも膨大な時間が掛かる。生きた人間の脳を侵襲的な方法で研究するのには大いに倫理的に問題がある。また神経活動などをどの様にプログラムコードとして置き換えるのかという問題や、分子レベルで十分なのか細胞レベルで十分なのかという細粒度の問題、スーパーコンピュータにおける必要な性能、メモリ、並列システムに係る通信、実行時間の問題もある。これらが全て解決出来たとしても実際のシミュレーションではシミュレーションを開始するに当たっての脳の初期状態を決める電気的(化学的)信号が分からなかったり、シミュレーションの結果から意味のある結果を複雑すぎて見出だせない可能性もある。
実現可能性
脳を基にした研究は遅々として進んでいないが、近年弱いAIは目覚ましい進歩を遂げている為それを以て汎用人工知能の実現は近いとされることもあるが、実際には汎用人工知能を実現するための手掛かりさえ分かっていない。たとえば明日誰かが発明する可能性もあり、数十年後に実現する可能性もある。悲観的な予想では、数百年後やそもそも未来永劫に実現不可能だとするものさえある。
悲観的予測に対する反論
人間の脳が純粋に物理的な存在で、数学的に計算可能で、人間が絶滅しない限り未来のいつかの時点では汎用人工知能は必ず作れるとする反論がある。「人間の脳が純粋に物理的な存在である」とは、霊魂や輪廻といったスピリチュアルな存在を否定し、アカシックレコードは存在せず、臓器移植による記憶・性格の転移の説明を拒否し、説明不可能な臨死体験の可能性を排除するということである。
判定方法
有名なところではチューリングテストがある。但しチューリングテストは100%言語に依存している為エキスパートシステムを始めとするSiri等の定型文章を返答するシステムでも工夫によってはある程度人間を騙し突破することは可能である。より高度で様々な機能を試すテストとしてウォズニアックテストや大学生テストなどが考案されている。但し汎用人工知能プログラムが完成したとしてそのプログラムの処理可能な仕事の万能性・多様性をもって汎用人工知能とするのか、或いは超人的なスピードやパフォーマンスを以てそれとするのか、人間の様な意識を以てそれとするのか、その全てを必要とするのかは判断が分かれるところである。
超知能
一部の未来予測やフィクションによっては超知能の出現を予測するものがある。超知能は得てして超人的であり、人間と汎用人工知能の計画、推論、予測、計算、知識、自然言語による意思疎通、問題解決などの能力を遥かに超えて備えているとされる。GODLIKE MACHINEと呼ばれ、そうした機械知能が人間を管理すると描く作品もある。
技術的特異点
ある未来予測では汎用人工知能、又は超知能が現れた社会では技術的特異点と呼ばれるエポックメイキングな事象が起こり、人類全体に不可逆的な社会的変動があるとされる。
社会的影響
人類に反旗を翻し人類を絶滅させるという予測や、悪人の使用によって核攻撃を基にした最終戦争よりも酷い破滅が起こるとする説、潤沢社会(アバンダンス)の到来、ロボットをパートナーとしたり、セックスロボットとしたり、家事を行うメイドロボットや、経済活動の労働源としたり、ロボット兵士として戦争の道具として利用したり、宇宙を開拓するなど様々な予測が展開されている。
批判
技術的特異点という概念を社会的に広めたレイ・カーツワイルが自身の寿命を逃れる為に考案したアイデアである、非科学的(宗教的)なアイデアである、人間は複雑すぎて人間の脳を理解できない、そもそも人間はそんなに万能(=汎用)じゃない、汎用人工知能ロボットを奴隷のように労働させるのは倫理的に如何なものか等の批判がある。技術的な観点から実現可能性を疑うものやスピリチュアルな観点からの批判もある。
作品
以下が汎用人工知能、あるいは人間のように振る舞うプログラムやアプリが出てくるフィクションである。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
カテゴリ