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利用者:ProfessorPine/Essay/プライバシー・名誉棄損問題を見つけたら

どのような内容をWikipedia記事に加筆したら名誉棄損プライバシー侵害 (以下「権利侵害」) に該当するのでしょうか? 当文書では2020年9月現在施行されている各種法令とその公的ガイドラインや判例 (以下「関連法規」) に基づき、Q&A方式で回答していきます。一部の回答は、現在の「Wikipedia:削除の方針」(2020年8月28日 (金) 02:40 UTC版) の記述と反するものであり、「#ケース B-2:プライバシー問題に関して」の節は、公の関連法規に従って改正されるべきとの私見を含みます。

Q&A一覧 早見表

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Q1. 「権利侵害」の対象となる加筆内容にはどのようなものがありますか?

日本の プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン 第4版に基づくと、権利侵害に該当しうるコンテンツは3つのタイプに分類されます。なお、当文書 (私論) の説明便宜上タイプ番号を振っていますが、一般に通用する呼称ではありません。

  • タイプA: 個人の氏名・住所・電話番号など、私生活に関わる個人情報[1]
  • タイプB: 学歴・前科前歴・病歴など、過去の履歴に関わる個人情報[2]
  • タイプC: 批判的な評価コメントの一部など[3]

また、同じタイプ情報であっても、「一般私人」と「公人等」で扱いは異なります。

Q2. 「一般私人」と「公人等」はどうやって分類すれば良いですか?

Wikipedia:独立記事作成の目安」を満たして人物伝記事が作成されている人はほぼ「公人等」です[注 1]。「公人等」には「準公人」も含まれることから日本の関連法規の「公人等」は範囲が広く、たとえば産婦人科医の住居不法侵入の前科前歴は「公人等」に分類されています[5]

Q3. 「一般私人」と「公人等」で権利侵害のボーダーラインはどう違いますか?

一般私人はタイプA・B共にアウトで削除すべき[6][注 2]。公人等はタイプAは一般私人と同様ですが、タイプB (特に前科前歴など公共性の高い情報) は掲載しても問題ない場合があります[5]。タイプCについては、そもそもどこまでが正当な批判で、どこからが名誉棄損なのか曖昧です。

Q4. Wikipedia上での掲載と新聞、Google検索、TwitterなどのSNS発信で権利侵害のボーダーラインはどう違いますか?

たとえばタイプBの前科前歴の場合、刑期を終えてもなおWikipediaに記載が残ると「忘れられる権利」に抵触する可能性があります。速報性の高いメディアより情報蓄積型のWikipediaの方が権利侵害認定されやすいと言えるかもしれません[注 3][注 4][注 5]

Q5. Wikipediaを運用しているWikimedia財団は米国法人ですが、どこの国の法律が適用されるのでしょうか? (いわゆる準拠法の問題)

日本で活躍する人物に対する名誉棄損やプライバシー侵害の場合、権利侵害をやった場所ではなく、侵害によって被害が発生した場所の法律。つまり米国法人やフランス人Wikipedia編集者でも、被害者が日本の裁判所に訴えれば日本法が適用されます[11]。詳細は、日本の民事訴訟法第3条の3第8号を参照して下さい。

Q6. Wikimedia財団以外に法的リスクを負う人はいますか?

権利侵害コンテンツを書き込んだWikipedia編集者 (直接侵害者) と財団 (場を提供した二次的侵害者) が最もリスクが高いです。しかし書き込み除去を差し戻したWikipedia編集者、削除依頼に存続票を投じた人、削除依頼を存続でクローズした管理者・削除者も多少ながらリスクを負います。

Q7. 他言語版Wikipediaでは同じことを書いても削除されないのに、日本語版Wikipediaだけ削除されるのはなぜですか?

単に日本の関連法規を知らないだけの可能性があります。ただし侵害によって被害が発生した場所の法律が適用されることを忘れないで下さい。日本語が主体の日本国では、他言語Wikipediaに権利侵害コンテンツが掲載されても、発生する実際の被害というのは軽微です。よって他言語版で日本の個人を権利侵害しても、実質的な法的リスクは小さいという事情もあります。

Q8. 問題となる編集があったら、版指定削除 (過去の版を不可視可) と編集除去 (除去しても過去の版から閲覧可能)、どちらで対応すべきですか?

ケースB事由ならば、Wikipedia内部規定ではなく、公の関連法規に則って削除依頼を出して下さい。Wikipediaの方針は往々にして公の法改正や判例が反映されずに劣化していることが多いです。また、プライバシー等の保護は公共性や表現の自由と常にバランスがとられており、「とりあえず削除」でケースB削除依頼を出さないで下さい。判断に迷うなら、コメント依頼利用案内といった質問の場を活用して下さい。なお、2020年6月の東京高裁判決の判旨を読む限りでは[10]、そもそも日本法ではケースB-2事由による版指定削除そのものが不要とも解することができるかもしれません (理由は後述)。

Q9. 削除の方針ケースB (法的問題がある場合) はケースB-1 (著作権) とケースB-2 (プライバシー) がありますが、法律ではどう違いますか?

国をまたぐ案件の場合、どこの裁判所で裁かれるかが違います。著作物の場合は国を超えやすいですが、プライバシーの場合は属人的で知名度にも依存するため、被害が発生する物理的位置が限定されがち。日本語版Wikipediaであれば、プライバシー関連は日本法をまずは中心に解釈していくと良いでしょう。

Q10. 特に参考になる判例はありますか?

  • 『宴のあと』事件」(東京地裁、1964年) -- プライバシー侵害成立の3要件を掲げた日本のプライバシー関連リーディングケース[12][13]
  • ノンフィクション「逆転」事件」(日本最高裁、1994年) -- 一般私人の前科前歴の実名記載削除が認められた例[14]
  • 俳優Walter Sedlmayr殺害事件英語版」(欧州人権裁判所、2018年) -- 一般私人の前科前歴の実名記載削除が棄却されたドイツおよび欧州連合の例[注 4]
  • 「(仮称) 2012年建造物侵入事件」(東京高裁、2020年) -- TwitterとGoogle検索で異なる権利侵害ボーダーライン基準を設けた例[10]
  • 「(仮称) カジノ会社役員名誉棄損事件」(日本最高裁、2016年) -- 国際案件の準拠法を巡る例で、日本人個人と米国ネバダ州企業の争い[15]

これらは付記した出典の中身を是非じっくり読んでみて下さい。一部は「#判例解説」の節でも後述します。

回答詳細解説

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プライバシーや名誉保護が常に優先されるわけではない

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最初に覚えておいて下さい。法律のことがよく分からないから「とりあえず削除」の姿勢は改めましょう。個人のプライバシーや名誉といった観点は人格権の一つとして保障されています。その一方で、Wikipedia記事の執筆者には表現・報道の自由があり、憲法で保障されている権利です。過度に名誉棄損やプライバシー侵害を恐れ、社会一般で認められている表現・報道の自由を委縮させてはならないとされています。換言すると、表現・報道の自由を制限してでも非公表にしなければならない正当な理由があるか、ケースバイケースで判断しなければなりません。

個人の氏名・住所・電話番号 (タイプA) のほか、学歴・前科前歴・病歴 (タイプB) などをWikipediaに加筆すると、名誉棄損やプライバシー侵害で民事訴訟の対象になりえます。しかし、この個人が「一般私人」の場合はWikipediaから厳密に削除が必要ですが、「公人等」の場合は表現・報道の自由が優先されて、Wikipedia記事に掲載し続けても問題ない場合があります。

公人等の定義は広い

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関連法規による「公人等」の定義はとても広く、たとえば産婦人科医が女性宅に侵入して逮捕された実際の事件では、この産婦人科医は「公人等」に分類され、犯罪報道は許容されています。また学校の教師が生徒にいたずらした事件でも、教育に携わっているとの理由で「公人等」扱いです。したがって、Wikipedia上で既に「Wikipedia:独立記事作成の目安」を満たして人物伝が作成されている個人であれば、ほぼ「公人等」に分類されると考えて問題ないでしょう[注 1]。特にこのような犯罪にまつわる公人等の情報は、マスコミが大々的に実名報道しても訴訟を起こされないことからも類推できます。ただし注意すべきは、事実を淡々とWikipediaに記すことです。犯罪報道にかこつけて、人格を否定・罵倒するような評論や不確実な陰謀論 (タイプC) までWikipediaに書き込んではなりません。このようなタイプCは、たとえ公人等であっても版指定削除の対象となりえます。

また公人等であっても、職務などに関連しない自宅の住所・電話番号 (タイプA) まで公開されてしまうと、私生活を平穏に送るのに支障をきたしてしまいます。ですから公人等であっても、全てのプライバシー情報を公開して問題ないわけではないのです。そして住所・電話番号のような情報が仮に虚偽情報だったとしても、間違われた住所に住み電話番号を使っている別人に被害が生じますので、情報の真偽にかかわらず版指定削除する必要があります。

Wikipediaは新聞やTwitterとは異なる性質のメディア

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では、情報を伝達するメディア別に法的リスクは違いがあるのでしょうか? 一般的には新聞やTwitterなどの速報性の高いメディア (フロー型メディア) と異なり、Wikipediaといった情報を1つにまとめて蓄積しているメディア (ストック型メディア) では、同じ内容を報じても「権利侵害」の判定基準が異なります。特に前科前歴の場合は「忘れられる権利」にも関連します。過去の失態をいつまでも蒸し返されては、その個人の更生努力や将来生活が脅かされるためです。したがって、新聞で報じられた内容だからというだけで、そのままWikipediaに無差別に掲載してしまうと、そのWikipedia加筆者はしばらく経過してから訴訟を起こされる可能性があります。この忘れられる権利は、どこまで認めるかは国によって、また判例によってバラつきが大きいです。

誰がどこの国の法律で訴えられるのか?

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ところで、訴訟とはどのように起こるのでしょうか? つまりどこの国の法律に基づいて、誰が誰を訴えることができるのでしょうか? 訴訟の相手となりうるのは、(1) Wikipediaに権利侵害コンテンツを書き込んだユーザ本人、(2) その書き込みを誰かが除去したのに再び差し戻し (内容復帰) させた人、(4) 削除依頼が提出されたのに反対票を投じた人、(5) その反対票に基づいて削除せずと判定したWikipedia管理者・削除者、(6) そしてWikipediaを運営している米国法人のWikimedia財団です。特に (1) 書き込んだ本人と、(6) サイトを運営する財団 (いわゆるプロバイダー) の2者です。

もし権利侵害されたと感じる個人が日本を中心に活動・居住している場合、権利侵害したとされる相手が外国籍・外国法人であっても日本の裁判所で訴訟を起こせます。これは日本の民事訴訟法第3条の3第8号で定められています。この条項は、権利侵害を行った場所 (書き込んだユーザやWikimedia財団の本拠地) に関係なく、権利侵害で被害が発生した場所が日本であれば、日本の法律で裁くことができると規定されています[11]。これは、削除の方針ケースB-1で定められた著作権侵害とは考え方が異なります。一般的に著作権の準拠法では「属地主義」がとられており、著作物を無断利用して権利侵害を行った場所の法律が適用されると解されます。そのため、著作権侵害で米国法人のWikimedia財団を訴える場合、まずは米国法が適用されると推定されます。しかし名誉棄損やプライバシー侵害の場合は、たとえばWikimedia財団であっても米国外 (権利侵害された人が日本在住なら日本法) で裁かれます。実際のケースとして、ドイツ人の殺人犯が英語版Wikipediaから実名除去を求めて提訴したのはドイツの裁判所であり、最終的には欧州人権裁判所で判決が下っています[注 4]

ここで注意して欲しいのが、日本語版Wikipedia (または他言語版Wikipedia) で規定された各種方針や利用規約は、裁判では全く問われないということです。裁判官がWikipediaの方針や利用規約に基づいて、勝訴・敗訴を下すことはありえません。そして公の関連法規は常に変化し続けるのに対し、Wikipediaの削除方針「#ケース B-2:プライバシー問題に関して」がその変化に追いついていないという実情もあります。ですからWikipediaの内輪ルールのみを強固に過信し、それを他者に不当に押し付けることがないよう、必ず公の関連法規を参照するようにして下さい。

判例解説

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『宴のあと』事件 (東京地裁、1964年 (昭和39年9月28日、下民集15巻9号2317頁掲載))

公人に関するプライバシー侵害のリーディングケースとしては、「『宴のあと』事件」(東京地裁、1964年) が知られています[13][12]。これは三島由紀夫の小説『宴のあと』に登場する人物が、元外務大臣・東京都知事候補の有田八郎をモデルとしていて、有田が三島と出版社を提訴した事件です[16][13]。この判例ではプライバシー侵害を認め、損害賠償を命じています[13]

『宴のあと』事件ではプライバシー侵害の成立要件として以下の3つを掲げており、これは後の司法判断にたびたび用いられています[12]

  1. 【私事性】私生活上の事実またはそれらしく受け取られるおそれがあること
  2. 【秘匿性】一般人の感覚で、その人の立場に立ったら公開して欲しくないであろう情報であること
  3. 【非公知性】一般の人に未だ知られていない情報であること

小説『宴のあと』では、登場人物の名前は変更しているものの、有田をモデルだと当時の読者は容易に想定できます。そして私生活を描いた部分は創造・フィクションが含まれるものの、実在・存命の人物である有田のキャリアに依拠したストーリー展開となっています。読者にとっては、どこからがフィクションでどこまでが事実なのか、区別がつきません[16][13]。ですから、1番目の私事性に引っかかります。

なお、日本の3要件と類似するものとして、米国では以下の要件が理論定義されています[17]

  1. 【侵襲性】私的領域への侵入 (物理的あるいは精神的な領域に対する監視・覗き見・盗聴や尋問を含む)
  2. 【秘匿性】他者に知られたくない私事の無断公開
  3. 【誤認性】他者に誤解されるような印象を与える情報の公開
  4. 【利得性】氏名や肖像を他者の利得のために使用・盗用すること
大手消費者金融会長の入院報道事件 (東京地裁、1990年 (平成2年5月22日、判時1357号93頁掲載))

「公人等」に該当する企業経営者の病状は、プライバシー情報に該当するのでしょうか?

この裁判は、入院している事実を本人は秘匿したかったにもかかわらず、その意に反して入院先病院の廊下で車椅子姿を隠し撮りされ、雑誌に報じられた事件です。この人物が会長を務める大手消費者金融会社は当時、その経営手法などが問題視されていた背景がありました[18]

被告 (雑誌の出版者ら) は病院の廊下が私的な空間ではなく、一般人が通行できる場所で写真撮影されたとしてプライバシー侵害に抗弁しました。しかし判決では、病院では病歴や私事の細部を医師に見せ、医師は診療目的以外で患者に関する情報を公開してはならない守秘義務があることから、私宅と同じく病院の廊下であってもプライバシー領域に該当すると判示されています[18]

この消費者金融会長は、「公人等」に分類され、細かくは「準公人」とみなされています[19]。しかし、『宴のあと」事件で示された私事性、秘匿性、非公知性の全てに該当しますし、米国基準4つのうち侵襲性、秘匿性、利得性の3つに該当すると考えられます。このような病歴や写真は、やはりWikipedia上でも記述されるべきではないでしょう。

削除の方針ケースB-2の問題点

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以下は私見・提案ですが、2020年9月時点の最新版「Wikipedia:削除の方針」(2020年8月28日 (金) 02:40 UTC版) の一部は公の関連法規と矛盾しており、改定が必要と考えられます。

前科前歴の実名記入がケースB-2に該当すると規定されていますが、これは一般私人と公人等を混同しています。削除の方針では最高裁判例 (最判平成6年2月8日民集48巻2号149頁) を根拠としていますが、これは「ノンフィクション「逆転」事件」(1994年)[14]」を指しており、一般私人のケースです。したがって、「Wikipedia:独立記事作成の目安」を満たして人物伝記事が作成されている公人等にまで、この判例を拡大適用するのは不適当でしょう。先述のドイツ人殺人犯の実名除去を巡っては[8]、2018年に除去不要の判決が欧州人権裁判所で下っています[9]。ドイツのケースでは、殺人犯は一般私人でしたが、殺害された被害者は著名な俳優です。一般的に忘れられる権利がより広く認められている欧州[注 3]であっても、そして殺人犯は2007年に仮釈放されのちの2009年に実名除去の提訴に踏み切ったにもかかわらず、実名除去は認められなかったのです[9]

また、削除の方針では著名人の人物伝記事内で、「著名活動に多大な影響を与えたとは考えられない逮捕歴・裁判歴・個人的情報など」はケースB-1事由の削除対象だとしています。しかしながら例示されている「大学教授が車庫法違反で罰金」のように、キャリアに多大な影響を与えない事象であれば、それは特筆性がないため編集除去で対応すべきでしょうが、削除までは不要であり、削除の方針を改定すべきでしょう。最初に申し上げた通り、表現の自由を制限してまでも守るべきプライバシーとは言えないからです。むしろ、他者がそのような軽微な前科前歴を知ることがキャリアに影響しないのであれば、それは『宴のあと』事件で示された秘匿性の要件を満たしておらず、プライバシー侵害としてWikipedia上から削除する理由になりえないとも考えられます。

逆に公人等であっても削除すべき情報とは何でしょうか。大手消費者金融会長の入院報道事件のように、病歴は医師の守秘義務が発生する内容であることから、Wikipedia上での記載には注意が必要でしょう。このような事例は削除の方針で例示すべきです。特に「Wikipedia:信頼できる情報源」に該当しない大衆紙やネットメディアが憶測で書いた病歴の噂話は、『宴のあと』事件で示された私事性の要件に合致しますので、真偽にかかわらず削除対象に含めておかしくありません。現時点では編集除去だけで済ませることが多く、判例とWikipedia上での運用が一致していません。

注釈

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  1. ^ a b 「ほぼ」とお茶を濁したのは、青少年による犯罪の場合です。未成年でも著名な活動を行ってWikipediaに人物伝記事が立項される人はいますが、少年法など特別の法規で守られていますので、青少年の場合は特段の注意が必要です[4]
  2. ^ タイプBの前科前歴については、既に実名報道されている場合はそれをWikipediaに書き込んでも問題ありません。しかし刑の執行が終わった後も蒸し返すように前科前歴を拡散してはならないとされています[4]。Wikipediaの場合は新聞報道などと異なり、この「蒸し返し」が容易なメディア媒体ですから、後から版指定削除の必要が出てきます。そのため、最初からアウト (掲載した版は見つけたら速やかに削除) が妥当と考えられます。
  3. ^ a b 忘れられる権利は主に欧州連合 (EU) で部分的に認められていますが、日本では法律の条文上、明文化されていません。ただし日本においても、一般的な人格権の保護の文脈で忘れられる権利もカバーされうると解釈されています[7]
  4. ^ a b c ドイツでは2009年に一般私人で刑期を終えた元殺人犯が、英語版Wikipediaから実名除去を求めてドイツの裁判所に提訴しています[8]。しかしながらドイツ連邦裁判所はこの訴えを棄却しており、さらに2018年には欧州人権裁判所もドイツ連邦裁を支持する形で実名削除の訴えを退けています。これは報道の自由とのバランスをとったこと、またマスコミ報道の一部は有料購読であったことも加味されています[9]
  5. ^ 日本においては東京高裁が2020年、一般私人の前科前歴がGoogle検索でヒットしなければ、Twitter上の検索でヒットしても削除は不要であると判示しています[10]

出典

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  1. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, pp. 9–10.
  2. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, pp. 13–14.
  3. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, pp. 26–27.
  4. ^ a b プロ責法ガイドライン 第4版 2018, p. 23.
  5. ^ a b プロ責法ガイドライン 第4版 2018, p. 25.
  6. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, pp. 10, 23.
  7. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, p. 24.
  8. ^ a b Kravets, David (2009年11月12日). “「実名の記述」でWikipediaを提訴:有罪判決を受けた殺人犯”. Wired. 2020年9月15日閲覧。
  9. ^ a b c Europe Court Rejects Online Anonymity Suit By German Murder Convicts” [欧州の裁判所、ドイツの殺人犯による実名除去の訴えを退ける] (英語). Independent.ng (2018年6月29日). 2020年9月15日閲覧。
  10. ^ a b c 逮捕歴の投稿削除認めず、プライバシー保護か公表利益か 東京高裁”. 日本経済新聞 (2020年6月29日). 2020年9月15日閲覧。
  11. ^ a b 實川 2019, p. 154.
  12. ^ a b c 實川 2019, p. 9.
  13. ^ a b c d e 「宴のあと」事件 第一審判決”. 京都産業大学. 2020年9月15日閲覧。
  14. ^ a b ノンフィクション『逆転』事件 上告審判決”. 京都産業大学. 2020年9月15日閲覧。
  15. ^ 實川 2019, pp. 151–153.
  16. ^ a b 清水陽平 (弁護士) (2015年9月28日). “プライバシー侵害の基準となっている「宴のあと事件」とは”. シェアしたくなる法律相談所. 2020年9月15日閲覧。
  17. ^ 上机 2019, pp. 13–14.
  18. ^ a b 上机 2019, pp. 15–16.
  19. ^ プロ責法ガイドライン 第4版 2018, p. 16.
引用文献
  • プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会 (2018-03). プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン (PDF) (Report) (第4版 ed.). 一般社団法人 テレコムサービス協会 (TELESA). {{cite report}}: |date=の日付が不正です。 (説明) -- 第3版まではプロバイダー責任制限法を所管する総務省がガイドラインを公表しており、第4版でも多くを踏襲している

関連項目

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