利用者:Omotecho/アシュモレアン 博物館大学エンゲージメント事業
アシュモレアン博物館大学エンゲージメント事業(アシュモレアンはくぶつかんだいがくエンゲージメントじぎょう University Engagement Programme, Ashmolean University)はオックスフォード大学のアシュモレアン博物館が2012年より継続する学際教育事業(略称UEP)。大学がアンドリュー・メロン財団から受けた助成金を資源に運営する。その趣旨は学内展示施設の収蔵資料を大学本来の教育に活用する新しい方策の開拓にある[1][2][3]。
この事業にはそれぞれの専門分野を担う専任の教務学芸員(Teaching Curator)3名と事業監督者(Programme Director)を置き、前者にセンタ・ジャーマン(Senta German ギリシャ考古学 [4])、マリカ・クンベラ・ランドロス(Mallica Kumbera Landrus 南アジアの美術史・建築史[5])、ジム・ハリス(Jim Harris 1350年-1620年前後のヨーロッパ彫刻史[6])、後者にジオヴァンナ・ヴィンテッリ(Giovanna Vitelli 17世紀コロニアル様式建築と当館初期収蔵品 [7])を任命した。教務学芸員の専門性は範囲が広く、当館の各学芸部門[8]、西洋美術、東洋美術、骨董資料とヘバーデン貨幣資料室の特徴を反映する。事業初年度は2012年秋から2013年夏にわたり、本学の3学期制にしたがって事業を進めた[2]。
当館内外において本学教員は資料主体の教育活動を実施し、当事業はその出発点から協働しており、学内のすべての分野の学部との連携を目指す。本事業はその蓄積を発展させて大学のカリキュラムに組み込み、博物館に基盤を置いた学際教育をほどこす構想を掲げている。そのため、まず教員ごとに協議をかわすところから着手することが多く、準備が整うと各教員は担任授業の学生を引率して博物館を見学させ、当事業側は各人の研究課題に直接または間接に光を当てる収蔵品を紹介し、学生に調べさせる機会を設けている。当館の業務の中核は収蔵資料の取り扱いと綿密な検証であり、学生はその現場を訪れて、博物館来館者の立場では得ることのない洞察を体験する。
当館学芸員による教育には長い伝統があるものの、学際的な取り組みを取り入れて以降、学生や教員の来館者数と資料利用者数は大幅に増えた。当事業担当者は事業初年度は通年で大学21部門の学生およそ1200名を教えた。対象は学部の新入学1年生から博士課程(DPhil)まで、また内容は個別指導からセミナーや講義の出講にわたり、あらゆる形式やレベルが含まれた。
2013年夏学期末の時点(大学暦2012年終了時)で本学の主要4部門のうち人文科学 [9]、医学[10][11]、社会科学[11]の3学部の教員と協働し、受け入れ元の教科は古典、英語英文学からイタリア語、サンスクリット語、ヒンディー語と同文学ならびにインドの歴史や美術史、仏教と神学と宗教学、医学分野は神経科学[12]に加え循環器医療、精神医学[13]、実験心理学、あるいは社会科学系の民族学、考古学、教育学、地理学と国際開発にわたる。さらにラスキン絵画・美術研究所( Ruskin School of Drawing and Fine Art )、サイード・ビジネス・スクールと連携した。
当事業はイギリスの大学博物館の取り組みとして最大規模であり、資料主体の学習を教育と研究のツールとしてとらえ、より開かれた協議の場を設けてきた。そのたびに全英大学博物館美術館連盟(University Museums Group UK[14][15])ならびに美術史研究家協会(Association of Art Historians) の参加を得ている[16]。
研究ポータル
[編集]本学人文科学系研究センターの協賛を得て2014年に〈研究ポータル〉(Ashmolean Project Portal)を開設、大学院生が研究を進め、より広い観衆に披露できる場を公開した[3]。初年度に研究課題に取り組んだ院生の専攻は歴史学、宗教学、美術史、東洋研究、英語英文学とさまざまで、その発展形として展示企画「ウィリアム・ブレイク研究(思索と表現の関係)」、「ベンガルの近代化」、「Love Bites」を催した。大学院生9名は公開学習日2日間、研究者見学会7回、あるいはインタラクティブな展示品にはギルレー(Gillray)が描いた戯画に登場する人物の相関関係をデジタル画像で示し、利用者が人間関係を辿れるようにした。別の課題ではウィリアム・ブレイクの作品とその背景にある思索や想像力の源泉としてどんな芸術上の実験があったか探索し、館内で展示する[注 1]など実践してきた[3]。
脚注
[編集]注
[編集]- ^ 宗教学専攻のJ・エドワード・ヨアンダサマス制作(哲学博士課程 J. Edward Youandsamouth)。アシュモレアン=TORCH ポータルに作った展示案内ポータルは、時代を改革する想像力を表現したウィリアム・ブレイクの詩作品を主題にすえ、その源泉としてブレイク自身が自らの発想をどのような考え方の系譜で律したか探る。
出典
[編集]- ^ “News & Events” (英語). Ashmolean.org. アシュモレアン博物館. 2013年10月8日閲覧。
- ^ a b “New Ashmolean programme to bring collections to students [アシュモレアン博物館の新機軸、収蔵品を学生に近づける試みへ]” (英語). Campaign.ox.ac.uk. オックスフォード大学. 2013年10月8日閲覧。
- ^ a b c “Academic Excellence : Case Study — the Ashmolean Project Portal” (英語) (PDF). Ashmolean Review. 2014/15. アシュモレアン博物館. (2015). pp. 34-38. "(前略)[2014年には本学人文科学系研究センターの協賛を得て、大学院生が研究を進め、より広い観衆に披露できる場〈研究ポータル〉(Ashmolean Project Portal)を開設しました。]"
- ^ “Departments: University Engagement Programme: Senta German- Ashmolean Museum”. web.archive.org (2013年10月4日). 2023年3月28日閲覧。
- ^ “Departments: University Engagement Programme: Mallica Kumbera Landrus- Ashmolean Museum”. web.archive.org (2013年10月5日). 2023年3月28日閲覧。
- ^ “Departments: University Engagement Programme: Jim Harris- Ashmolean Museum”. web.archive.org (2013年10月5日). 2023年3月28日閲覧。
- ^ “Departments: University Engagement Programme: Giovanna Vitelli- Ashmolean Museum”. web.archive.org (2013年10月5日). 2023年3月28日閲覧。
- ^ “DEPARTMENTS” (英語). www.ashmolean.org. 2023年3月28日閲覧。
- ^ “Humanities”. Divisions. 2013年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月1日閲覧。
- ^ “Medical Sciences - University of Oxford”. web.archive.org. オックスフォード大学 (2013年12月10日). 2013年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月28日閲覧。
- ^ a b “Medical Sciences”. Divisions. 2013年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月1日閲覧。
- ^ “Ashmolean Museum University Engagement Programme/Medical School Collaboration, Trinity 2013 — Neuroscience”. Neuroscience.ox.ac.uk (2013年7月31日). 2013年10月8日閲覧。
- ^ “Emotion and Ageing in Art - Sessions for Psychiatrists at the Ashmolean, Oct 23rd, 29th & Nov 27th”. Psych.ox.ac.uk. Department of Psychiatry (2013年8月13日). 2013年10月8日閲覧。
- ^ Devine. “University Museums Group UK | UMG represents the interests of university museums, galleries and collections in England, Wales and Northern Ireland”. Universitymuseumsgroup.wordpress.com. 2013年10月8日閲覧。
- ^ “What are University Museums for? | Oxford ASPIRE”. Oxfordaspiremuseums.org (2013年3月7日). 5 October 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月8日閲覧。
- ^ “Collaboration with Museums Events | AAH - Association of Art Historians”. AAH (2013年3月21日). 2013年10月8日閲覧。
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