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利用者:Ojisan-sennin/sandbox

信楽駅出発信号機の赤固定に関する追加説明

説明中の出発信号機・場内信号機および近接制御子・軌道回路の概略位置を以下に示す(◆は分岐器を表す)。

 出発6RE├○           ←上り方向      下り方向→
──下り線──┐
──上り線──◆◆──草津線 接近制御子12RDA    軌道回路13LCT
  出発8RE├○└┐          ↓  下り出発13R├○ ↓            ┌─────
├─折返し線───◆──単線区間1─※───◆─下り線──◆※────単線区間2───◆
              下り場内12R├○└──上り線─┘             └─────
                       ○┤上り出発12L             ○┤出発22L
   [貴生川駅]              [小野谷信号場]               [信楽駅]

■方向優先てこの機能

単線区間1の運転方向を下り方向に固定する機能を持つ[1]。本てこを操作すると単線区間1の運転方向を上り方向に設定できなくなるので小野谷信号場上り出発信号機12Lは停止現示(赤)に固定される。

■方向優先てこの操作時期

JR西日本が亀山CTCに設置した方向優先てこは標準結線図と異なり省略されている箇所があるため単線区間1の運転方向を下り方向に設定した後でなければ機能しないものであった。そのため亀山CTCの運転指令員は、貴生川駅からの出発列車がなくても出発操作を行い単線区間1の運転方向が下り方向になった事を確認して方向優先てこを操作した後に出発操作を取り消す必要があった。事故当日は遅れている下り直通列車の1本前の貴生川折り返し下り列車の出発操作後に方向優先てこを操作したが、この方が該てこの操作後に出発操作の取り消しをする必要がないからである[2]

■小野谷信号場下り場内信号機12R制御時期の変更

下り列車が小野谷信号場に向かう場合には登り勾配がきつい上、列車が接近制御子12RDAを踏む前に下り場内信号機12Rの停止現示が見えるので減速せざるを得ず、列車が12RDAを踏むと12Rは進行現示(緑)に変わる[3]ので加速する事になる。これでは運転がやりにくいので信楽高原鉄道側は単線区間1の運転方向が下りに設定された時点で12Rを警戒現示(黄黄)にする変更を行った[4]。これにより下り列車は停止現示に出会う事なく信号場へ進入できる様になった。

■小野谷信号場下り場内信号機12Rと下り出発信号機13R間の反位片鎖錠

反位片鎖錠は12Rが反位の時は13Rを反位に鎖錠する機能である。下り列車が小野谷信号場を通過する際、12Rが反位(進行現示)のまま何等かの理由で13Rが反位から定位(停止現示)に復位すると列車が13R手前で停止しきれずに先方の分岐器に達して脱線する恐れがあるので、これを防ぐためのものである[5]

■事故当日の流れ

民事裁判において認定された事故当日の流れは以下の通りである。

時刻不明:亀山CTC指令員は貴生川駅10時13分到着予定のJR下り直通列車の遅延を聞いていた。
9時42分頃:CTC指令員は1本前の貴生川駅折返し9時44分発下り列車に対して出発信号機8REの出発操作を行い、方向優先てこを操作した。
9時44分頃:該下り列車が貴生川駅を出発した。
10時8分頃:CTC司令員の交代時、前司令員は方向優先てこ操作前に単線区間1の下り運転方向表示ランプ点灯を確認したかどうか不安になり、一旦該てこを戻して8REの出発操作をやり直し、該ランプ点灯を確認してから該てこを操作した後に出発操作を取り消した。
10時10分頃:該下り列車が信楽駅に到着した。
10時14分頃:信楽駅の出発信号機22Lに進行現示を出せなくなり、原因を調査していたが不明であった。
10時17分頃:遅延していたJR下り直通列車が貴生川駅に到着した。これを受けてCTC司令員は出発信号機6REの出発操作を行った。
10時19分頃:JR下り直通列車が貴生川駅を出発した。CTC司令員は6REの表示灯が消えた事を確認して方向優先てこを戻した。
10時25分頃:信楽駅では出発信号機22Lの停止現示を無視して上り列車を発車させた。
10時30分頃:JR下り直通列車の運転士は小野谷信号場の下り出発信号機13Rの進行現示を見て信号場を通過した。
10時35分頃:JR下り直通列車と上り列車の正面衝突発生。

下り列車が小野谷信号場の信楽駅寄りにある軌道回路13LCTを通過する以前に貴生川駅出発信号機8REの出発操作を行って方向優先てこを操作すると単線区間1の運転方向が下りに固定され[1]、12Rが反位のままとなり[4]、下り出発信号機13Rは定位に復位できずに反位で固定される[5]。この結果、単線区間2の運転方向を上りに設定する事ができず信楽駅出発信号機22Lは停止現示のままになってしまった[6]


  1. ^ a b 判例時報1717号p.57「(1)方向優先てこ65Rの機能」
  2. ^ 判例時報1717号p.57「(2)方向優先てこ65Rの操作を先行の下り列車の貴生川駅出発時に早期に行った理由」
  3. ^ 列車が12RDAを通過すると小野谷信号場-信楽駅間の運転方向が下りに設定され、小野谷信号場の下り出発信号機13Rが進行現示となり、続いて下り場内信号機12Rも進行現示となる(大阪地方裁判所 平成5年(ワ)9781号 判決 (3)松本陽による分析)。
  4. ^ a b 判例時報1717号p.57「(3)小野谷信号場の場内信号機12Rの自動制御時期の変更」
  5. ^ a b 判例時報1717号p.57「(5)小野谷信号場の信号機の12Rによる13Rの反位片鎖錠」
  6. ^ 判例時報1717号p.57「(4)同変更工事による信楽駅上り出発信号機への影響」