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10-メタクリロイルオキシジヒドロジェンホスフェート | |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 85590-00-7 |
特性 | |
化学式 | C14H27O6P |
モル質量 | 322.33 g mol−1 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
10-メタクリロイルオキシジヒドロジェンホスフェート(略称:MDP)は、歯科用接着材の接着性成分として用いられるリン酸エステル系接着性モノマーであり、株式会社クラレの歯科用接着技術への取り組みにより1981年に開発された[1]。
別称
[編集]10-Methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate
10-MDP
合成
[編集]1,10-デカンジオールとメタクリル酸を反応させて10-ヒドロキシデシルメタクリレートを得た後、オキシ塩化リンを反応させ、その後、P-Cl結合を水で加水分解する[2]。
背景
[編集]1970年代後半、歯科接着技術の研究開発により、歯質に対して接着性を有するリン酸エステル系接着性モノマー:2-メタクリロイルオキシエチル フェニルリン酸(Phenyl-P)が開発された[3]。一方で同時期、歯質のみならず金属に対しても接着性を有する4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4-META)が開発されたことから[4]、接着性モノマーの接着機序の解析と化学構造の最適化を目指した検討が実施され、その結果、歯質ならびに金属双方に対して高い接着性を発現する接着性モノマーの化学構造の一つとしてMDPが選択された[5]。
研究
[編集]MDPとアパタイト、歯質との相互作用
[編集]MDPのアパタイトへの化学的相互作用をX-ray Photoelectron Spectroscopyにて分析した結果、アパタイトへの化学的吸着が確認され、atomic absorption spectrometryで測定されたMDP-Ca塩の水への低い溶解性と関連付けた説明がなされている。[6]。
MDPを接着性モノマーとして含有する歯科用接着材のウシ象牙質に対する長期接着耐久性が100,000 回のサーマルサイクル試験で評価された結果、接着強さの有意な低下は認められず、MDPのアパタイトとの化学的相互作用が関与していると報告されている。[7]。
MDPのコラーゲンとの相互作用
[編集]MDPのコラーゲンへの相互作用をSaturation Transfer Difference NMRにて評価した結果、結合の強度は4-METAよりもMDPの方が強く、要因として「MDP」の疎水性基とコラーゲンの疎水性表面との相互作用によるものと示唆されたと報告されている[8]。
MDPの歯科用金属への接着
[編集]MDPを50wt%エタノールに3種類の濃度で溶解したプライマーを用いてTiに対する接着強さが評価され、MDPによるTi表面改質の効果が示唆されている[9]。
MDPのジルコニアへの接着
[編集]MDPをエタノールに2種類の濃度で溶解したプライマーを用いてジルコニアに対する接着強さが評価され、MDPはジルコニアに対して接着性を有することが報告されている[10]。
また、MDPを含有する歯科用レジンセメントはジルコニアに対して高い接着強さを示すことも報告されている[11]。
利用・用途
[編集]歯科用接着材
歯科用レジンセメント
歯科補綴材料用プライマー
関連項目
[編集]接着性モノマー
リン酸エステル系モノマー
歯科用接着材
歯科用レジンセメント
参考文献
[編集]- ^ 小村育夫, 山内淳一, 長瀬嘉則, 植村富美子, "(メタ)アクリロイルアルキルジハイドロジェンホスフェート", 特公昭63-13435 (出願人:株式会社クラレ).
- ^ 小村育夫, 山内淳一, 長瀬嘉則, 植村富美子, "リン酸モノエステルの製造法", 特公平02-051437 (出願人:株式会社クラレ).
- ^ J. Yamauchi, N. Nakabayashi, E. Masuhara, “Adhesive Agents for Hard Tissue Containing Phosphoric Acid Monomers”, ACS Polymer Preprints, Vol. 2 (1), 594-595 (1979).
- ^ 竹山守男, 橿渕伸郎, 中林宣男, 増原栄一, "歯科用速硬性レジンに関する研究(第17報), 歯質および歯科用金属に接着するレジン", 歯科理工学雑誌19(47)1978、179-185.
- ^ I. Omura, J. Yamauchi, “Correlaion Between Molecular Structure of Adhesive Monomer and Adhesive Property”, International Congress on Dental Materials, 356 (1989).
- ^ Y. Yoshida, K. Nagakane, R. Fukuda, Y. Nakayama, M. Okazaki, H. Shintani, S. Inoue, Y. Tagawa, K. Suzuki, J. De Munck, and B. Van Meerbeek, "Comparative Study on Adhesive Performance of Functional Monomers", J Dent Res 83(6):454-458, 2004.
- ^ S. Inoue, K. Koshiro, Y. Yoshida, J. De Munck, K. Nagakane, K. Suzuki, H. Sano, and B. Van Meerbeek, "Hydrolytic Stability of Self-etch Adhesives Bonded to Dentin", J Dent Res 84(12):1160-1164, 2005.
- ^ N. Hiraishi, N. Tochio, T. Kigawa, M. Otsuki, and J. Tagami, “Monomer-Collagen Interactions Studied by Saturation Transfer Difference NMR”, J Dent Res 92(3):284-288, 2013.
- ^ Y. Tsuchimoto, Y. Yoshida, A. Mine, M. Nakamura, N. Nishiyama, B. Van Meerbeek, K. Suzuki, T. Kuboki, "Effect of 4-MET- and 10-MDP-based Primers on Resin Bonding to Titanium", Dental Materials Journal 25(1):120-124, 2006.
- ^ M. Takei, S. Yamaguchi, "Effect of Functional Monomers on Tensile Bond Strength to Zirconia", 87th General Session & Exhibition of the IADR, April, #519, 2009.
- ^ M. Kern, S. M. Wegner, "Bonding to zirconia ceramic: adhesion methods and their durability". Dental Materials. 14: 64-71, 1998.