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利用者:MMMiyuki/sandbox

クルマサカオウムをくわえて歩くノネコ

オーストラリアでは、ネコはペットとして一般的に飼育されている。しかし、ネコはオーストラリアの在来種ではなく、1800年代初頭にヨーロッパの人々によって初めて持ち込まれた外来種である。このためオーストラリアの動物たちはネコと共進化を遂げることができず[1]、結果ネコの存在はこの国の自然環境に多大な影響を与えることになった。その被害は他国以上に深刻である。現在、オーストラリア国内にはイエネコ(飼いならされた猫)が約270万匹、ノネコ(野生化した猫)が約210万匹から630万匹いると推定され[2]、双方のネコによる捕食が多くの在来種を絶滅に追いやっている。具体的には、ヨーロッパの人々が上陸して以降オーストラリア固有の哺乳類22種が絶滅しており、これにネコが深く関与していると考えられている[3]

こうした防疫上の理由から、オーストラリアにネコを持ち込む際はオーストラリア農業・水資源・環境省が定める一定の条件を満たしている必要がある。


歴史的背景

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歴史上オーストラリアにネコが持ち込まれたのは1804年ころで、さらにそのネコたちは1820年までにはシドニー周辺で野生化したとされている[4]。1900年代初頭にはネコに起因した問題が拡大し、危惧されるようになった[5]。2010年代に行われた調査によると、ノネコは1匹当たり年間推定740匹の野生動物を仕留めるという[6]


イエネコ

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オーストラリアのイエネコ(飼いならされた猫)は、1匹当たり年間推定75匹の動物を仕留めるという[6]。2016年時点で、オーストラリアの全世帯のうち29%がネコを飼っていた[7]


ノネコ

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生態環境の破壊

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ノネコ(野生化した猫)はオーストラリアで問題となっている侵略的外来種であり、様々な在来種の減少や絶滅に関与している。地上巣営性の鳥類や小型の在来哺乳類に甚大な被害を与えていることもわかっている [8]。また、絶滅危惧種をその種が最後に生息していた土地で再び野生化させる取り組みの障害にもなっている。これは新たに動物を放ってもノネコが即座に殺してしまうためである[9]。さらに、ノネコは熱帯雨林の密生した場所を除きほぼすべての生態系に住み着き、複数の有袋目や有胎盤哺乳動物の絶滅を引き起こしているとみられ、オーストラリアの環境学者たちの多くが「ノネコはオーストラリアにとって生態学的災害の一種である」と主張している[10][11]

西オーストラリアにあるヘイリッソン・プロング保護地区(Heirisson Prong)で、キツネとネコ両方を排除した地区、キツネのみを排除した地区、そして対照区における小型哺乳類の個体数を比較する野外実験が行われた。この実験で研究者らは初めて、ノネコによる捕食が在来哺乳類の個体数減少を引き起こす可能性があるという確証を得た。結果はさらに、キツネの数が減少した際、ネコによる捕食が一層深刻さを増すことも示している[12]。ネコはまた、自身が生態系破壊の原因になっている地域、特に乾燥地帯において、キツネと共に外来種のウサギの数を抑制している可能性があり、オーストラリアの変化した生態系の中である種の役割を担っているとも言える。

ゴクラクインコは、ヨーロッパの人々が入植して以降オーストラリア本土で絶滅した唯一の鳥類であるが、これもネコが原因だったとみられている[13] 。オーストラリアに生息するネコには、ディンゴオナガイヌワシ以外天敵がいない。つまり、両者がいない地域では猫が頂点捕食者となる[14]。またディンゴがいる場合でも、ネコの活動に影響を与えることはない[15]

オーストラリアでは、知識の乏しい目撃者が「ピューマ(もしくは他の大型動物)を見た」と言い張るほど大きなノネコがいるという伝承がある。実際に出くわす可能性はかなり低いが、大型の個体は時おり発見されている。例えば2005年、ビクトリア州ギプスランドで巨大な猫科動物が射殺され[16]、後のDNA検査でノネコであったと判明した[17]


ネコの有用性

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ノネコはネズミやウサギの個体数を抑制している可能性があり、ネコの駆除は在来種に間接的損害を与えかねないと主張する研究者もいる[18][19]


経済的損失

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2021年までの60年以上にわたり、オーストラリア国民経済(主に農家の負担)は推定190憶豪ドル弱をネコ対策に費やしているとみられ、そのほとんどが個体数の抑制に投じられている。これは、次いで対策費が高額な侵略的外来種であるウサギの20憶豪ドルを大きく上回る[20]


個体数の管理

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ピントゥピ(Pintupi)族やニリピ(Nyirripi)族といった西オーストラリア州やノーザンテリトリーの西部砂漠地域に暮らす人々は、食糧源または先住民族伝統の治療薬(ブッシュ・メディスン)として数十年にわたりネコを狩猟してきた。2015年からは生態学者とともに、ネコによる絶滅危惧種の捕食を監視、減少させるための活動に協力している[21]

カンガルー島では2016年以降、3000匹から5000匹いるとされる島内のノネコを2030年までに一掃する計画が進められている[22] [23]。2019年から2020年に発生した山火事(ブッシュファイアー)は、後に焼けた叢林(ブッシュ)が徐々に再生していく環境がノネコの繁殖に好条件となり捕獲を困難にした上、駆除計画を繁雑なものにした[24]。しかし、罠とカメラを 用いた最先端技術を使い、2021年末までに少なくとも850匹のノネコが島の西端の焼け跡で駆除されている。さらに、焼けた土地周辺にある一部の私有地にはネコの侵入を防ぐ柵が設置され、カンガルー島ダンナートやサザンブラウン・バンディクート(どちらもオーストラリアに生息する動物で絶滅危惧種)の個体数保護に役立っている[25]


ファントム・キャット(幻の大型猫科動物)

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オーストラリア国内ではファントム・キャット、またはエイリアン・ビッグ・キャットと呼ばれる幻の(本来の生息地ではない場所に現れる)大型猫科動物が数多く目撃されている。「ギプスランドのファントム・キャット(ビクトリア州)」「ブルーマウンテンズのヒョウ(ニューサウスウェールズ州)」といった目撃談がある。


関連項目

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脚注

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  1. ^ Cute killers: Cats kill more than 1.5 billion Australian native animals a year”. www.cdu.edu.au. 2021年1月12日閲覧。
  2. ^ Legge, S.; Murphy, B.P.; McGregor, H.; Woinarski, J.C.Z.; Augusteyn, J.; Ballard, G.; Baseler, M.; Buckmaster, T. et al. (February 2017). “Enumerating a continental-scale threat: How many feral cats are in Australia?”. Biological Conservation 206: 293–303. doi:10.1016/j.biocon.2016.11.032. 
  3. ^ Aguirre, Jessica Camille (2019年4月25日). “Australia Is Deadly Serious About Killing Millions of Cats (Published 2019)” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2019/04/25/magazine/australia-cat-killing.html 2021年1月10日閲覧。 
  4. ^ Abbott, Ian; Department of Environment and Conservation (2008). “Origin and spread of the cat, Felis catus, on mainland Australia: re-examination of the current conceptual model with additional information”. Conservation Science Western Australia Journal (7). http://www.dec.wa.gov.au/images/stories/nature/science/cswa/articles/23.pdf 11 February 2013閲覧。. [リンク切れ]
  5. ^ “THE CAT PROBLEM in AUSTRALIA.”. Sunday Times (Perth, WA : 1902 - 1954) (Perth, WA: National Library of Australia): p. 8 Edition: Christmas Number, Section: Third Section. (22 December 1912). http://nla.gov.au/nla.news-article57743624 21 January 2016閲覧。 
  6. ^ a b Feral and pet cats killing 'billions' of native animals each year, research finds” (英語). www.abc.net.au (2019年7月14日). 2021年1月12日閲覧。
  7. ^ Animal Medicines Australia (2016), Pet Ownership in Australia 2016, Animal Medicines Australia, https://animalmedicinesaustralia.org.au/wp-content/uploads/2016/11/AMA_Pet-Ownership-in-Australia-2016-Report_sml.pdf 
  8. ^ Dickman, Chris (May 1996). Overview of the Impacts of Feral Cats on Australian Native Fauna. The Director of National Parks and Wildlife - Australian Nature Conservation Agency - Institute of Wildlife Research. ISBN 0-642-21379-8. オリジナルの4 March 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160304040904/http://secure.environment.gov.au/biodiversity/invasive/publications/pubs/impacts-feral-cats.pdf 11 February 2013閲覧。 
  9. ^ The Threat Of FeralCats
  10. ^ Robley, A.; Reddiex, B.; Arthur, T.; Pech, R.; Forsyth, D. (September 2004). Interactions between feral cats, foxes, native carnivores, and rabbits in Australia. Arthur Rylah Institute for Environmental Research. オリジナルの17 March 2011時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110317105943/http://www.environment.gov.au/biodiversity/invasive/publications/pubs/interaction.pdf 12 February 2013閲覧。 
  11. ^ Davies, Wally; Prentice, Ralph (March 1980), “The feral cat in Australia”, Wildlife in Australia 17 (Mar 1980): 20–26, 32, http://trove.nla.gov.au/work/39234425 21 January 2016閲覧。 
  12. ^ Risbey, Danielle A.; Calver, Michael C.; Short, Jeff; Bradley, J. Stuart; Wright, Ian W. (2000). “The impact of cats and foxes on the small vertebrate fauna of Heirisson Prong, Western Australia. II. A field experiment”. Wildlife Research 27 (3): 223. doi:10.1071/WR98092. 
  13. ^ Psephotus pulcherrimus — Paradise Parrot”. Department of Sustainability, Environment, Water, Population and Communities (13 March 2012). 14 February 2013閲覧。
  14. ^ Moseby, Katherine E., et al. "Interactions between a top order predator and exotic mesopredators in the Australian rangelands." International Journal of Ecology 2012 (2012).
  15. ^ Fancourt, Bronwyn A., et al. "Do introduced apex predators suppress introduced mesopredators? A multiscale spatiotemporal study of dingoes and feral cats in Australia suggests not." Journal of Applied Ecology 56.12 (2019): 2584-2595.
  16. ^ Engel Gippsland big cat”. 18 July 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。2 May 2008閲覧。
  17. ^ "Feral Mega Cats"
  18. ^ Arian D. Wallach, 2014, Wild cat, Dingo for Biodiversity Project
  19. ^ Dana M. Bergstrom, Arko Lucieer, Kate Kiefer, Jane Wasley, Lee Belbin, Tore K. Pedersen, Steven L. Chown, 2009, Indirect effects of invasive species removal devastate World Heritage Island, Journal of Applied Ecology, 46(1), pp.73 - 81, DOI:10.1111/j.1365-2664.2008.01601.x, British Ecological Society
  20. ^ Khan, Jo (29 July 2021). “Invasive species have cost Australia $390 billion in the past 60 years, study shows”. ABC News. Australian Broadcasting Corporation. 31 July 2021閲覧。
  21. ^ Wahlquist, Calla (2015年10月27日). “Traditional hunters and western science join forces in the fight against feral cats” (英語). The Guardian. 27 October 2015時点のオリジナルよりアーカイブ2021年1月17日閲覧。
  22. ^ 'They're highly evolved predators': Kangaroo Island's plan to be cat-free” (2016年10月6日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  23. ^ Kangaroo Island Feral Cat Eradication Program - Landscape South Australia - Kangaroo Island
  24. ^ Campbell, Claire (2020年9月12日). “Endangered species 'looking at extinction' on Kangaroo Island as feral cats roam” (英語). ABC News. 13 September 2020時点のオリジナルよりアーカイブ2021年1月14日閲覧。
  25. ^ Hughes, Megan (30 December 2021). “Hundreds of feral cats removed from Kangaroo Island in bid to protect endangered native species”. ABC (Australian Broadcasting Corporation). 4 January 2022閲覧。


外部リンク

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